2015年4月12日

面接ごっこは窓際で 09

 天井照明に煌々と照らし出されたオフィスビルの無機質なフロアを、お姉さまのお背中を追って歩き始めました。
 
 一歩踏み出すたびに、内腿のあいだを空気が直にスーッと撫ぜてきます。
 どうしてもうつむきがちになってしまう自分の視界で、今現在自分が置かれている状況が否応無しに思い知らされます。
 オフィスを出てここまで来るとき、あんなに頼りなく感じた一枚のバスタオルでさえ、有ると無いとでは大違いでした。

 だって今の私は、全身の素肌を一切隠せない、すべてを剥き出しにした生まれたままの姿。
 いいえ、もっと悪いことに、率先して隠さなければならない部位を目立たせるかのように飾り立てた、破廉恥極まる姿でした。

 左右のおっぱい先端に大きなチャームをぶら下げ、性器も粘膜部分を左右に押し開くようにクリップで留め、更に一番敏感な肉の芽をテグスで絞って露出させて。
 首から下げた細いチェーンがそれらをすべて繋いでいます。
 青いバケツを持った私の右手が小刻みに震えているのは、その中になみなみと満たされたお水の重さのせいだけではありませんでした。

「ここが給湯室。モップとかバケツは入ってすぐ右側の扉の用具入れだから」
 おトイレから出てすぐにある扉の前で、お姉さまが教えてくださいましたが、私の心は羞恥だけに満たされて上の空。

「普段見慣れたオフィスの廊下を、そんなふうに素っ裸の女の子が歩いているのを見るのって、なんだかシュールで不思議な感じ」
 あと少しでオフィスの入口、というところでお姉さまが振り返り、私のからだをまじまじと見つめながらおっしゃいました。
「ありえないっていう意味で非現実ぽいて言うか、見方を変えれば、ある種のアートっぽい感じさえするわね」
「これはぜひ、写真に残しておかなくちゃ。そこでちょっと待ってて。カメラ取って来る」
 
 お姉さまがオフィスへのドアを開けようとしてふと動きが止まり、もう一度振り返りました。
「そうだ。そのあいだ直子は、そこでバケツぶら下げて立っている、っていうのはどう?」
 オフィスのドアの少し右側、天井照明の真下の一際明るく照らし出された一画を指さされました。
「ほら、昔の子供向けマンガとかによくあるじゃない。学校でイタズラっ子が先生に叱られて、反省するまで廊下で立ってなさい!なんて。立たされ坊主」
 愉しそうに微笑むお姉さま。

「失敗したな。もう一個バケツ持って来るんだった。ああいうシーンはたいがい両手にバケツ持っているものよね?片手が手ぶらじゃサマにならないもの」
「給湯室戻って取ってくるのもめんどくさいし、まあいいや。そっちの手にはこれを持ってなさい」
 使用済みタオルを詰め込んだビニールのショッパーの持ち手を、左手に握らされました。

「森下直子さん、先生が戻るまで、そこでじっくり反省なさい!」
 お芝居っぽく言い捨ててオフィスのドアを開け、モップだけ持ってスタスタと中へ消えたお姉さま。
 ドアがバタンと閉じられました。

 しんと静まり返ったフロアに、ひとりぼっちで取り残されました。
 これはつまり、放置プレイ?
 壁を背にして右手には重いバケツ、左手には軽いショッパーをぶら下げ、休め、の足幅で立ち尽くします。

 うつむくと自分の尖った乳首と、剥き出しの股間へと消えていく三本の細いチェーンが目に飛び込んできます。
 私、なんでこんなところで、裸になっているのだろう?
 ここに来てから何度も思った被虐感溢れるそんな疑問が心をマゾ色一色に染め上げ、胸を締めつけるような恥辱感に全身が昂ぶります。

 先ほどお姉さまは、今このフロアにはあたしたちしかいない、って断言されていたけれど、それでもやっぱりここは、有名なオフィスビルのパブリックなスペースなのです。
 誰でも、ではないでしょうが、少なくともこの階のフロアにオフィスを構えている他の会社の方々やビル管理の警備員のかたなら、自由に出入り出来るはずです。
 それに、お姉さまの会社のスタッフのみなさまだって、急なご用事でいらっしゃるかもしれません。
 もし、万が一、私がこんな姿で立たされているのを、お姉さま以外のかたに目撃されてしまったら・・・
 私のこれからの人生は、どうなってしまうのでしょう。

 イジワルなお姉さまは、なかなか戻ってきてくれません。
 オフィスに入られて、もう4、5分経っているはずです。
 カメラを取ってくるだけのことに、こんなに時間がかかるワケありません。
 絶対ワザとです。

 心細さが募り、頭の中で勝手に始まった妄想の中では、エレベーターホールのほうからカツカツとヒールの音が近づいていました。
 誰か来る!誰かが来ちゃう!
 私のこんな、恥ずかしい性癖丸出しの姿を見られちゃう!
 その人がお姉さま以上にイジワルだったら、私はこの姿を写真に撮られ、それをネタに一生脅されて言いなりにならなければいけないんだ・・・

 近づいて来る人を、さっきのトイレでの妄想でご登場いただいたおばさまにするか、来てすぐに写真を見せていただいたお姉さまのお仲間の美貌デザイナー、早乙女部長さまにするか決めかねていたら、オフィスのドアがバタンと開きました。

「お待たせ。って、直子、また妄想に耽ってたわね?見事なマゾ顔になってる」
 右手に持った小さなデジタルカメラで私を正面から、パシャッとシャッターを切るお姉さま。

「今度はどんな妄想をしていたの?」
 お姉さまが角度を変えて何度もシャッターを切りながら、尋ねてきます。
「あの、えっと、エレベータホールのほうから足音が近づいて来る、ていう」
 立たされ坊主の姿勢のまま、顔だけお姉さまに向けてお答えします。
「へー。また例の薬局のお水おばさん?」
「あ、はい・・・」
 まだ配役は決めかねていましたが、早乙女部長さまのことを言うとややこしくなりそうなので、そうお答えしました。

「それで、その後直子はどうなっちゃうの?」
 ひっきりなしにシャッターを切りながらのお姉さまのお尋ね。
「えと、まだそこまで進んではいなかったのですが、たぶん、写真を撮られて、それを元に脅されて・・・」
「なるほど。そのおばさんの慰み者になっちゃうわけね?」

「いいわ。わかった。だったらあたしが、そのおばさんの役、やってあげる。バケツ下ろしていいわよ。ショッパーもね」
「あ、はい」
 膝だけ曲げてバケツとショッパーを床に下ろし、空いた両手は自然と後頭部へ。
「いい心がけ。マゾ女の鏡ね」
 おっしゃりながらお姉さまは、ショッパーの中をガサゴソされています。

「ここに来て四つん這いになりなさい」
 ショッパーの物色を終えたお姉さまが、ご自分の足元を指さしておっしゃいました。
「は、はい・・・」
 おずおずとお姉さまに近づき、両膝を床に落としてから両手も床に着き、お姉さまを見上げました。
「ううん。膝は着いちゃだめ。両手両足の四つん這い。お尻を高く突き上げて、両脚は開き気味に、お尻の穴まで丸出しになるようにね」
「は、はい・・・」

 両膝を浮かせ、足の裏を床に着くと腰の位置が上がり、自然とお尻を上に突き出すような格好になりました。
 徒競走のクラウチングスタート二段階目みたいな格好。
 乳首のチャームが床に垂直に垂れ下がり、重力で乳首を下へと引っ張ってきます。
「おーけー。お尻をこっちに向けて。いくわよ?」
 方向転換をすると、目の前には誰もいない廊下が広がり、突き出したお尻はお姉さまの眼下です。

「ほら、取ってきなさい!」
 ご命令と同時に、背後から何か黒いものが私の頭上をヒラヒラと超え、数メートル先にパサッと落ちました。
「直子の大好きな、お姉さまの汚れたパンツよ。はら、早く取ってきなさい」
 突き上げたお尻の右側の尻たぶをピシャリと叩かれました。
「はぅっ。はいぃっ」

 冷たいリノリュームを腰高の四つん這いでペタペタ進み始めます。
 まるで床を雑巾がけしているような格好です。
 乳首のチャームがブラブラ大げさに揺れています。
「うわー。凄い眺め。肛門も具も丸見えよ。おまけにおツユまでポタポタ滴らせちゃって」
 背後でカメラを構えているのであろうお姉さまのからかい声が、私の昂ぶりを煽ります。
 シャッターを切るカシャカシャと言う音が、喩えようの無い屈辱感となってマゾの炎に油を注いできます。

 目標にたどりつきました。
 目の前に転がっているのは紛れも無く、先ほどお姉さまがおトイレでお脱ぎ捨てになった黒いショーツでした。
 両サイドを軽く縛って丸めてあり、私の目前に、一目で湿っているとわかるクロッチ部分が表になって転がっていました。

「もちろん手なんて使ってはだめよ。口に咥えて持ってらっしゃい。ドエムな直子らしくサカったメス犬みたいにね」
 四つん這いのまま床に転がったショーツをじっと見つめている私に、お姉さまの嘲るようなお声が浴びせられました。
 躊躇無く丸めたショーツの真ん中を咥えました。
 じんわりと口腔に広がる、大好きなお姉さまのしょっぱ苦いようなジュースのお味。
 咥えたまま急いで方向転換すると、視線の先がカメラのレンズとぶつかりました。
「うん。いい表情だわ。さあ、さっさと戻ってらっしゃい」

 お姉さまに促され、来た道を戻ります。
 リノリュームの床には水滴が、ポツンポツンと元居た場所までつづいていました。
「こんな場所で、四つん這いの裸でパンツを咥えた女の子、なんて写真は滅多に撮れるもんじゃないわよね?」
 そんなことをおっしゃいながら、お姉さまが容赦なくシャッターのシャワーを浴びせてきました。

「はい、良く出来ました」
 お姉さまの傍らまで戻り、咥えてきたショーツを口からもぎ取られると、お姉さまが私の頭を撫ぜ撫ぜしてくださいました。
「いい写真が撮れたわ。確かにこんな恥ずかしすぎる写真撮られたら、もうその相手の慰み者になるしか生きていく道は無いわよね」
 愉快そうなお姉さまがショーツを再びショッパーに放り込み、まだ四つん這いの私を見下ろします。

「だけどあたしは優しいから、あなたにご褒美を上げるわ。呆れちゃうほどのヘンタイぶりを披露してくれた森下直子さんにね」
 お姉さまがニッと笑って、いったんお言葉を切りました。

「ここでオナニーしていいわよ」
「えっ!?」
「ここでイきなさい、って言ったの」
「えっと・・・いいのですか?」
「だって、直子の顔見たら、もう行き着くとこまで行かないと収まりつかない淫乱マゾ顔だもの。だったらいっそここでやってもらうのも面白いから」
 お姉さまがカメラを構えました。

「モップも雑巾もあるから、汚したって拭けばいいだけだし、この環境だと新鮮でしょ?」
「このビルが出来てどのくらい経つのかは知らないけれど、オフィスフロアの廊下で素っ裸でオナニーした女なんて、今までたぶんいないでしょうね」
「直子がその第一号になるの。ギネスものよ。そしてあたしはそれを記録に残す立会人」
 冗談とも本気ともつかないお姉さまのお声に、私は未だおっしゃる意味の真意がよく飲み込めていません。

「ただし、念のために声は極力抑えてよね。あ、そうじゃなくて、喘ぎ声は一切禁止。口を真一文字に結んで、歯を食いしばって、がまんしながらイキなさい」
「そういうときのほうが直子、いい顔するもの。試着室のとき、あたしそれですごく興奮したし」
「まあ、この状況なら、少し弄ればあっさりすぐにイっちゃうだろうから。さあ、始めて」
 カメラを構え直すお姉さま。
「ほら、早く!」

 お姉さまの促すお声に、さっきから自分のからだを弄りたくて仕方なかった右手が床を離れ、知らず知らず下半身に伸び始めます。
「四つん這いのままじゃだめよ!顔がよく見えないもの。こっち向いてしゃがんじゃいなさい」
 お姉さまからのダメ出しにビクンとして、右手が引っ込みました。

 あらためて、野球のキャッチャーさんみたいな姿勢にしゃがみました。
「いいわね。オマンコも適度に開いて何もかも丸見えで。その姿勢をキープして自分を慰めなさい。ただし声は絶対出さずに、ね」

 再び右手を股間に伸ばし、腫れ上がったクリトリスに指の腹を当てました。
「んふぅう」
 ぎゅっとつぐんだ唇から脱出できなかった熱い吐息が、仕方なく鼻のほうへと活路を見出したようです。
「くふうぅぅ」

 クリットに触れると同時に理性のたががはずれ、親指と人差し指でクリットをつまみながら残りの指は膣口へと、ジュブッと挿し込まれました。
 左手はおっぱいを揉みながら乳首を潰し、下半身へとつづくチェーンを引っ張ります。
 理性は失くしてもお姉さまからのお言いつけは絶対なので、悦びの声を一生懸命押し殺していると、そのぶん眉間のシワが深くなり、目尻に涙が浮かんできます。
「んふぅぅーっ!ん、ん、ん、ん、んーっ」

 ジュブジュブ音をたてる股間の真下の床に、ポタポタポタポタ、白濁したおツユの水溜りが広がっていきます。
「いい顔よ。そう、イキなさい、イッちゃいなさい」
 カシャカシャというシャッター音に混じって、お姉さまも押し殺したお声で、私の昂ぶりを応援してくださいます。
「んぐっ!んぅ、ぅぅぅ、んぬぅぅぅーーーっ!」
 ふんふん囀る鼻息がどんどん早くなってきます。
「んんんんんんーーーーっ、いぃぃぃぃっ!!!」

 床にペタンと裸のお尻を着いて、その周辺は粘液の水溜り。
 お姉さまの予言どおり、始めて数分で、あっさり強烈にイってしまいました。
 自分の意志とは関係なく、時折腰がヒクヒク痙攣しています。

「気がすんだ?」
「はぁ、はぁい・・・」
「よかった。声もずいぶんがまんして、偉かったわ。最後は、いいい、とか言っちゃってたけれど」
 笑いながら手を差し伸べてくださるお姉さま。
「さあ、いい写真もたくさん撮れたし、帰る支度をしましょう。そろそろ日付が変わりそうよ」
 お姉さまの手に縋って立ち上がり、よろよろとオフィスに入りました。

「さっき直子を廊下に放置していたときに、あらかた掃除しちゃったから、もうほとんどやることは無いの」
 社長室、すなわちお姉さまのお部屋に戻ると、私が汚した床もテーブルも、キレイに拭き取られていました。
「直子はバケツの水でその雑巾を濡らしてゆすいで、もう一度テーブルを拭いといてくれる?あたしはそのあいだに、廊下をモップで拭いてくる」
「あ、はい」

 お姉さまがお部屋を出ていき、私はお言いつけ通り、窓際のテーブルを丹念に拭き掃除しました。
 全身に纏っていたムラムラがさっきの廊下でのオナニーで一掃され、なんだか身軽になったようでした。
 ショッパーからおトイレで使ったタオルを引っ張り出してからだを拭いていると、お姉さまがお戻りになりました。

「とうとう日付が変わっちゃったわね。おはよう直子。今日は日曜日よ」
 お姉さまが苦笑いを浮かべ、ご自分のデスクらしき場所の、このお部屋で一番立派な椅子に、背もたれに背中を預けるようにドスンと腰掛けられました。

「もうここまで来ちゃったら、もう少しくらい遅くなっても同じよね。コンベンションは夕方からだから、昼頃までは眠れるし、新幹線で寝たっていいし」
 独り言みたいなお姉さまのつぶやき。
「だからここは、自分の欲求に素直になっていいと思うの。ねえ、直子もそう思わない?」
 急に尋ねられ、きょとんとする私。
「あの、えっと、そうですね・・・」

「そうよね?よし、決めた。直子、こっち来て」
 お姉さまが座ったまま手招き。
「は、はい」
 きょとんとしたままお姉さまの傍らに近づきました。

「あたしもだいぶ直子のスケベさに毒されちゃったみたい。自分のオフィスを初めてノーパンでうろうろして、直子の廊下オナニーを見て、また疼いちゃったみたいなのよ」
「ほんの数時間前に直子にスッキリさせてもらったばかりなのにね」
 自嘲気味な笑顔の後、お姉さまの瞳がトロンと蕩けました。
 
 お姉さまの両手が動いた、と思ったらタイトスカートの裾に指がかかり、そのまま自らその裾をたくし上げました。
 今はノーパンのお姉さまですから、白い下腹部とかっこよく揃えられたお姉さまのヘアが露になりました。

「舐めて、直子。今度は舐めてあたしを気持ち良くして」
 椅子の背もたれにそっくり返るように身を沈めるお姉さま。
 そのぶん下半身を前に突き出すような格好になり、緩く開いた両腿のあいだが濡れて光っているのまでわかりました。

「はい。お姉さま、よろこんで!」
 お姉さまの太腿のあいだにひざまずき、喜び勇んで顔を股間に埋めます。
 お姉さまの香り、お姉さまのお味、お姉さまのぬめり。

 ピチャピチャピチャ
「あん、そう、そこよ・・・」
 ピチャピチャピチャ
「そう、もっともっと、奥までぇ・・・」
 ピチャピチャピチャ
「そこそこそこ、もっと、もっとぉぉ・・・」
 ピチャピチャピチャ
「いいっ、いいっ、いいいーーっ!」
「あーーーーーーーーっ!!!」

 先ほどよりもたくさん濡れていたお姉さまは、私の廊下オナニーと同じように、ほんの数分で全身を震わせながら歓喜のお歌を高らかに謳いあげられました。

 しばらく背もたれに身を任せ、ぐったり横たわっていたお姉さまが、やがてむっくり起き上がりました。
「ああ気持ち良かった。直子って本当に上手よね、指も舌も。シーナさんが手放したくない気持ちもわかる気がするわ」
 スカートの裾を直して、立ち上がりました。
「これでスッキリ。帰ったらグッスリ眠れそうよ。ありがとね、直子」

「さあ、掃除用具を戻して、とっとと帰りましょう!」
 デスクに置いてあったバーキンを手に取り、ロッカーからスーツジャケットを取り出すお姉さま。
「直子は悪いけれどバケツとショッパー持ってね。お洗濯もお願いね。私物はある?忘れ物しないようにね」
 テキパキとご指示くださり、モップを手に取り、スタスタとお部屋を後にするお姉さま。

 えっと、着てきたショートジャケットとハンドバッグは応接のお部屋に置いたきりだったっけ?・・・
 そこまで考えたとき、もっと根本的な問題が残っていることに気がつきました。

「ちょ、ちょっと待ってくださいお姉さま!」
 あわててお部屋を飛び出し、のんきにカーテンや戸締りの確認をされていたお姉さまに詰め寄りました。
「あら、どしたの?はい、これが直子の上着とバッグね。これでもう忘れ物はない?」
 明らかに気がついているクセに、確信的にとぼけていらっしゃるお姉さま。
 目と唇が愉しそうに笑っています。

「わ、私に、こんな姿のまま何も着ないで帰れ、という、ご、ご命令なのですか?」
 自分で言った被虐的な科白に、性懲りも無くズキンと疼いてしまう自分のからだがうらめしい。
「そうねえ。直子が着てきたニットワンピはもうこのバッグにしまっちゃったし。そうなるかしらねえ」
 あくまでもイジワルなお姉さま。

「そのジャケットがあるじゃない。それを羽織れば、おっぱいだけは隠せるのじゃなくて?」
 確かにその通り。
 丈がウエストにも届かないこんなジャケットでは、おっぱいだけしか隠せません。
 下半身丸出しです。

「それにここからは、まずオフィスを出て、エレベーターに乗るでしょう?エレベーターは地下の駐車場まで直通だし、駐車場まで行っちゃえばあたしの車に乗るだけ。車に乗っちゃえば下半身は外から見えないわ」
「車に乗るまでに誰かに会う可能性は無いわよね?問題になるのは、エレベーターホールとエレベーターと、たぶん駐車場にもある監視カメラ」
「でも直子って、目立つヘアが無いツルツルパイパンだし、肌も白くてハリもあるから、ジャケット羽織っていれば下半身はベージュのレギンスとかスパッツ穿いているようにも見えなくはないんじゃないかしら。遠目なら」

「あと考えられる危険は、エレベーターに他の階から誰か乗って来ちゃったとき。そうなったら完全にアウトだわねえ。それと、直子が車を降りて、自分の部屋に入るまで。こっちはあたしの知ったことではないけれど、マンション入り口までは責任持って送ってあげるつもりよ」
「けっこうリスク低いと思わない?どう?やってみたくなってきたでしょう?露出狂ヘンタイマゾの森下直子さん?」
 私をからかうのが愉しくて仕方ないご様子のお姉さまは、饒舌です。

 私は、そんなお姉さまを半泣きのジト目でじっと見つめていました。
 どうかお許しください、という気持ちと、お姉さまと一緒なら、そんな大冒険も案外すんなり果たせそうという好奇心が小さく鬩ぎ合っていました。
 だけどやっぱり、ここから自分の家まで、ずっと下半身丸出しで帰る、という行為は無謀過ぎる、という臆病風が気持ちの大半を占めていました。

「そんな辛そうな目で見られると、直子の場合、ますます虐めたくなっちゃうけれど、あたしも無駄にそんな社会的にリスキー過ぎることを命令するほどバカな経営者じゃないわ」
「直子はうちの大切な社員だし、あたしのかわいいスールでもあるのだもの」
 お姉さまが私の顔を覗き込んで、ニコッと笑ってくださいました。
 あ、いえ、ニヤッだったかもしれません。

「さっきそのロッカーでいいものみつけたのよ。去年の秋もののサンプルなのだけれど」
「直子はこれを着て帰りなさい。もちろんチェーンは着けたままで」
 お姉さまが壁際のロッカーから何か取り出しました。
 

面接ごっこは窓際で 10


2015年4月5日

面接ごっこは窓際で 08

 お姉さまのおみあしを丁寧にお拭きした後、同じタオルで自分のからだを拭き始めました。
 テグスで絞られている敏感乳首がタオル地のザラッとした感触に擦れて性懲りも無く、いっそう硬く大きく、尖ってしまいます。

「拭き終わったらタオルちょうだい。持って帰って洗濯しておくから」
 お姉さまが窓辺のロールカーテンを降ろしながらおっしゃいました。
「あ、はい」
「もう11時過ぎていたのね。すっかり長居しちゃった。さくっと後片付けして帰りましょう」
 床やテーブルの上に視線を走らせるお姉さま。
 そこかしこに私のはしたない水溜りが残っていました。

「掃除用具を取ってこなくちゃ。ついてきて」
 お返ししたタオルを手にツカツカとお部屋の出口へ向かうお姉さまを、あわてて追いました。
 
 ドアを開けると、デスクやOA機器が整然と並ぶ明るく健全なオフィス。
 その日常的な光景を目にした途端、そんな場所で裸になっている自分の非常識さに、今更ながら立ち眩みしそうなほどの羞恥が襲い掛かってきました。

「あの、お姉さ、あ、いえ、チーフ・・・私、本当にこのまま、廊下に出なくてはいけないのですか?」
 水道やおトイレといった水周りは、オフィス外にある、というお話でした。
「最初に言ったじゃない?いくら汚してもいい代わりに、あなたが裸で用具を取ってくるのよ、って」
「はい。それはそうなのですけれど・・・でも、だいじょうぶ・・・なのですか?」

「種明かししちゃうと、ここのフロアって、うち以外どこも暇そうなの。平日でも人をあまり見かけないくらい」
「夕方の六時過ぎにはどこも電気が消えているし、土日祝日に誰か来ているの、見たことない。まるでお役所仕事」
「それでちゃんとお給料貰えるなら、羨ましい限りよね」
「だから100パーセント、今このフロアにはあたしたちしかいないって断言できるわ」
 お姉さまがなんだかフクザツそうに笑って、つづけました。

「まあ、リスクが無い分、スリルも無いけれどね。でも、このビルのフロアを真っ裸で歩くなんて、そうそう経験出来るものではないでしょう?」
「嬉しいのではなくて?露出狂ヘンタイマゾの森下直子さんにとっては」

 確かに今の種明かしを聞いて、やってみたい気持ちがグングン膨らんでいました。
 だけど、これだけお膳立てを整えていただいてもまだ一抹の不安を感じて、尻込みしてしまうのが私の臆病者たる所以です。

「でも、ひょっとしたら監視カメラとか、えっと防犯カメラかな、そんなようなのが廊下に設置されていたり・・・」
 オフィスの壁際に置かれたクロゼットみたいのを開けてゴソゴソやっていたお姉さまの動きが、ピタッと止まりました。

「それは一理あるわね。ここのセキュリティ、凄いから。一階に警備センターがあるのよ。監視モニターがずらっと並んだ」
 お姉さまが振り返りました。
「あそこに乳首からチェーンを垂らしただけの全裸の女が映ったりしたら、大騒ぎになりそうね」
 お姉さまったら、すっごく愉しそうなお顔。

「だけどやっぱり、めんどくさいことになったら困るから、一応何か一枚羽織って行くのが無難かな。何かあったかしら?」
 クロゼットに向き直ったお姉さまが、少しのあいだ中を物色されてから、扉を閉じました。

「ここには普通ぽい服しか入っていないわ。そんなのわざわざ着るのもつまんないし」
「それでしたら、あの、さっきまで着ていたニットワンピを・・・」
「あれはだめよ。持って帰って、直子専用にギリギリまで裾上げして、超ヘンタイエロワンピに魔改造するのだもの。もうあたしのバッグの中にしまっちゃったわ」
「えっ!?」
 そうなると私は、一体どんな姿でお家まで帰ることになるのでしょう・・・

「あ、なんだ。これでいいじゃない。とりあえずこれ巻いておきなさい」
 お姉さまが差し出してきたのは、さっきからだを拭いたキャラクター柄のバスタオルでした。
「これ、ですか?」
「そう。直子のいやらしいおツユがいっぱいしみ込んだバスタオル。あ。あたしのもついてるか」

 手渡された、全体にじっとり湿ったバスタオルを広げ、両腋の下から巻き付けました。
「お風呂上りみたいで、何かヘンじゃないですか?」
「ううん。ばっちりよ。監視カメラなんて、たいして画質良くないはずだし、きっとベアトップのワンピでも着ているみたいに見えるはずよ」
「夏場なら、うちにはもっとキワドいファッションでキメたモデルの子とか来ているからね。今までそれでビル管理側から何か言われたこともないわけだし」
「さ、行きましょう」
 数枚の新しいタオルをビニールの大きなショッパーに詰めて肩に提げたお姉さまが、私の右手を取りました。

 フロアの廊下にも煌々と電気が点いていました。
「ここって24時間、出入り出来るのですか?」
「それはそうよ、会社だもの。仕事したいときにオフィスに入れなかったら仕事にならないじゃない」
「電気代が大変ですね?」
「ああ、そういう意味ね。このフロア内にどこのオフィスの社員が残っているのか、ということは、さっきエレベーターでかざしたカードで警備センターに把握されているの。オフィスに入るときもかざしたでしょ」
「だから、その社員が帰ってオフィスが施錠されない限りは、周辺の通路にも電気が点いているっていうわけ」

 オフィスの出入り口からおトイレらしき一画までは、すぐでした。
 20歩も歩かないくらい。
 お風呂上りみたいなバスタオル一枚の裸足で、近代的なビルの明るく照らされたリノリュームをぺたぺた歩いていると、自分が何かとんでもない事件、たとえば誘拐とか人質とか、に巻き込まれて、犯人に無理矢理着衣を奪われ、従わされているような妄想が浮かび、ゾクゾクと興奮してしまいました。

「まずトイレ入って、もう一度かからだを拭いたほうがいいわね。タオル濡らして」
 お姉さまが女子トイレのドアを押しました。

「はい。このタオル濡らして拭いて。ブラシもあるから髪の毛もちゃんと直しなさい」
 ショッピングモールにあるのと同じくらい、いえ、それ以上に清潔でゴージャスな広いおトイレに唖然としている私を、洗面台と言うよりパウダールームと呼ぶべき大きな鏡の前に立たせたお姉さまは、当然のようにスルッと、私のバスタオルを剥ぎ取りました。
「ああん、いやんっ」

 大きなチャームをぶら下げて恥ずかしく尖りきった私の乳首を、曇りひとつ無いピカピカな鏡面が生々しく映し出しました。
「ここには絶対、監視カメラなんてあるはずないからね。もしあったら、それは別の意味で大問題だわ」
 ニヤニヤ笑いのお姉さまが、鏡の中の私をじっと見つめてきます。
「直子の裸って、本当にエロいわよね。またいたずらしたくなっちゃうけれど、そうやってると、いつまでたっても帰れないから、残念だけれど早く終わらせちゃいましょう。からだ拭いちゃって」

 鏡に映った全裸にチェーンだけ垂らした私と、ブラウスにタイトスカート姿のお姉さま。
 水道からお水を流してタオルを濡らし、おのおの顔やからだを拭き始めました

「そっちの乾いたタオルも使っていいからね。使い終わったらそのショッパーに入れといて。持って帰って洗濯してくるから」
「あ、そんなの私がやります。私が持って帰りますから」
「そう?なら頼んじゃおうかな。直子の家のほうがここから近いしね」
 お顔を洗い、髪を直し、おみあしも拭き終わったお姉さまがそうおっしゃって、それから少し思案顔。

「ああ、やっぱりもう我慢出来ない!」
 お姉さまがイヤイヤするみたいにお顔を振りながら突然おっしゃいました。
「えっ?どうされたのですか?」
 ひょっとして、私へのいたずらが我慢出来なくなったのかも、なんてえっちな期待を込めてお尋ねしました。

「さっきからずっとモヤモヤしていたのよ。ほら、あたしのパンツ、濡れたままじゃない?」
 お姉さまが眉をしかめて、本当にイヤそうなご様子でおっしゃいました。
「歩くと内股にまとわりついちゃって、本当に気持ち悪いの。おまけに直子にクロッチの脇から手を入れられたおかげで伸びちゃってるみたいだし」
「いっそ脱いじゃったほうがスッキリしそう。ノーパンになっちゃうけれど、真っ裸の直子よりはマシよね」
 おっしゃるなり、タイトスカートの裾を少しズリ上げ、両手でスルスルッと黒いショーツを下ろされました。

「うわー、ベットベトのよれよれ。これもみんな直子のせいなんだからね」
 サイド部分を右手の指先でつままれ、私の目前にぶら下げられた黒くて小さな布片。
「もう捨てちゃうしかないかな?気に入ってたんだけどなあ」
 お姉さまが薄く笑いながら私の顔の前で、その黒い布片をぶらぶら揺らしました。

「だめです!もったいないです。私がお洗濯してきます」
 ねこさんが目の前でねこじゃらしを振られたみたいに、反射的に手が出て、その布片を掴んでいました。
 クロッチのところをもろに掴んだので、手のひらがべっとり濡れました。

「うふふ。そんなこと言って、家に帰ったらあたしのパンツをおかずにしてまたオナニーする気でしょう?」
 お姉さまのショーツをそそくさとショッパーに仕舞い込む私の背中に、お姉さまのからかうようなお声が突き刺さりました。
 私はみるみる全身がカァーッ。

「ほんと直子って面白い。いいわ。お洗濯、頼んだわよ。ビデで洗ってくる」
 お姉さまが個室に向かいます。
「あ、それなら私も」
「あら直子、オシッコ?」
「はい」
「だったら、し終わったらラビアクリップも着け直しなさい。やっぱり3本繋がっていたほうがエレガントだもの」
「・・・はい」

 お姉さまとお隣同士の個室に篭り、まずはオシッコ。
 垂れ下がっているチェーンにかからないように手で持っていると、強く引っぱりたい衝動に駆られますが、じっと我慢。
 終わったらビデで洗浄、温風で乾燥。
 テグスに絞られたクリットをも温風が激しく撫ぜて、いつまででも浴びていたいほど。

 それから、便座に腰掛けたまま両脚をより大きく広げました。
 お姉さまからのお言いつけを守らなければなりません。

 股間を覗き込むと、表面はすっかり乾いたスジが楕円形にパックリ割れていました。
 中は相変わらずヌルヌル潤って、爆ぜた石榴みたい。
 最初にお姉さまが着けてくださった箇所と同じビラビラを指でつまみ、イヤーカフのような形状のラビアクリップに噛ませました。
「はうっ!」
 忘れかけていた疼痛がよみがえり、思わず声が出てしまいました。

「こら直子!中でヘンなことしているんじゃないでしょうね?」
 一足早く個室からお出になっていたお姉さまのお声が、私の個室のドア越しに聞こえてきました。
「あ、いえ、今、ラビアクリップを・・・」
「ああ。そうだったの。あたし、給湯室行ってバケツとモップ取ってくるから、戻るまで待ってて。クリップ着けたら余計なことしてないで、早く出てくるのよ」
「はーい」
 足音が遠ざかり、やがてバタンという音が聞こえました。

 ラビアクリップを左右着け終えると、体温が数度、上がった気がしました。
 ムラムラが懲りもせず盛大に込み上げてきました。
 大開脚したまま温風を当ててみます。
「はうんっ!」
 勢いのある温風がラビアに噛み付いたクリップとチェーンを揺らし、剥き出しの粘膜の奥まで風に煽られます。
「んんーっ」
 風がやんだとき、開いた粘膜から一滴、粘性の雫が糸を引いて便器の水溜りに落下し、水面にピチョンと波紋を広げました。

 個室から出ても、お姉さまはまだ戻られていませんでした。
 鏡の前で手を洗い、自分のからだを映してみます。
 鏡から2メートルくらい離れると下半身まで映りました。

 両乳首にチャーム、アソコのスジの中へ消えていく3本のチェーン。
 身に着けているものはそれだけ。
 昨日まで来たことも無かったオフィスビルのトイレに、ひとりぼっちで全裸の私。

 このままお姉さまが戻って来られなかったらどうしよう・・・
 そんな不安がふと頭をよぎります。
 放置プレイ・・・
 鏡の中の自分をじっと見つめていたら、無意識のうちに両手が動き、頭の後ろに組んでいました。

「あら、また鏡に見惚れていたの?森下ナルシス直子さん」
 このままここに放置されて出るに出られず、夜が明けてたまたま出社した他の会社のお局OLさまに発見され、根掘り葉掘りねちっこく言葉責めされる妄想は、お姉さまのその呼びかけで途切れました。

「あ、いえ、そんなんじゃ・・・」
 ポーズは崩さずにお姉さまのほうへ向きました。
 お姉さまは、片手に青いバケツ、もう片方にモップを持っていらっしゃいました。

「うわ。直子、あなた、また発情しちゃってるでしょ?顔に大きくマゾって書いてある。さてはまた、何かいやらしいことしていたわね?」
「あの、いえ、ちょっと妄想が・・・」
「へー。どんな?」

「あの、私がここに放置されて、知らない女性にみつけられて虐められるっていう・・・」
「呆れた。直子、そういうふうにして欲しいの?お望みならばしてあげるよ?」
「いえ、あくまでも妄想ですから。現実になったら怖過ぎます・・・」
「それで、その妄想のお相手は誰だったの?あたしの知っている人?」
「いいえ。ご中年のおばさまで・・・」

 そのとき思い浮かべたのは、大学一年の秋、初めて裸コートをした勢いで調子に乗り、お浣腸のお薬を対面で買う、という課題を自分に課して訪れた薬局のお優しげなおばさまとやりとりしているとき、お客様として来られた水商売らしきおばさまでした。
 そのおばさまは、なんて言うか、何でも見透かしているふうで、そのときも、私が裸コートなことにたぶん気づかれてしまった、と思わされたのでした。
 その印象が強烈だったので、それ以降も、被虐的な妄想に耽るときの一番非情な女性、言わばラスボスとして、頻繁にご登場いただいていました。

「ふうん。裸コートの話は聞いていたけれど、その薬局での話は初耳だわ」
「そうだと思います。今まで誰にもお話したことないですから。シーナさまにも」
「そうなんだ?百合草女史にも?」
 私の白状を聞いて、シーナさまにもお教えしなかったお話と知って、お姉さまが俄然、興味を持たれたようでした。

「・・・はい」
「なんで?」
「あの、えっと、何て言うか、シーナさまにお話したら、すぐにもう一度その薬局さんに連れて行かれると思ったので・・・」
「あの人ならそうするでしょうね。だから言わなかったんだ?それなら今度、あたしと行こうか?」
「あ、えっと・・・」
「うふふ。冗談よ。直子って、そんな感じでまだまだ自分の胸だけにしまっている秘密がありそうね」
 お姉さま、なんだか愉しそう。

「それに、今の話を聞いて直子ってやっぱり、心の奥底でもっともっと絶望的な、破滅的な状況を欲しているみたいにも感じたわ。取り返しのつかない事態に陥りたい、滅茶苦茶になってみたい、みたいな」
 私の目をじーっと覗き込んでくるお姉さま。

「あの、えっと、それは・・・」
「まあ、とりあえずあたしは、直子が百合草女史やシーナさんからされたことの記憶を、あたしの手でひとつひとつ丹念に上書きすることが当面の目標なの」
「縛られたり、鞭打たれたり、浣腸されたり、人前で裸になったり、そういうときに真っ先に思い出すのがあたしの顔になるように、直子を変えていくつもり」
「そうしているうちに、やがて直子が心の奥底で望んでいるような状況にもたどりつくはずだから、直子は安心して、ずっとあたしのそばにくっついていなさい」

 それって、いつかお姉さまが私を滅茶苦茶にするおつもり、ということなのでしょうか・・・
 お姉さまが淡く微笑みながら右腕を伸ばし、5点留めチェーンをクイッと引っぱりました。
「ああんっ、お姉さまぁぁ!」

「ま、それはそれとして、早く掃除しちゃいましょう。直子は重いけれどそれを持って」
 床に置かれた、お水をなみなみとたたえた青いバケツを指さしました。
 もう少しチェーンで虐められることを期待していた私は、渋々ショッパーを覗き込み、バスタオルを引っ張り出そうとしました。

「ううん。バスタオルはいらないわ。そのままオフィスに戻るの」
「えっ?でも・・・」
「さっき給湯室に行きがてら、監視カメラがあるかどうか、フロアをじっくり見てきたのよ」
 お姉さまがショッパーに突っ込んだ私の手を取って戻し、つづけました。

「結論から言うと、カメラがあるのはエレベーターホールと避難階段入口の二箇所だけ。ここからオフィスまで戻るだけなら映らないの」
「だから直子は、その破廉恥な格好でフロアを歩き回ってもぜんぜん大丈夫だったのよ」
 ニコッと微笑むお姉さま。
 右手でモップの柄を掴み、左手に使用済みタオル類の詰まったショッパーを持ちました。

「バケツ持ってね。さあ行きましょうか、露出狂ヘンタイマゾの森下直子さん?」
 お姉さまがおトイレのドアを勢い良く開けました。


面接ごっこは窓際で 09


2015年3月29日

面接ごっこは窓際で 07

 テーブルの上で横座りにへたりこみ、はあはあと肩を上下させている私。
 焦らしに焦らされた見返りは、めくるめく強烈なエクスタシーでした。

 テグスで絞られて敏感になり過ぎた3箇所の突起は、少し触れただけでもその瞬間に快感が全身を駆け巡り、からだ中の細胞が溶けて流れ出してしまいそうなほどの恍惚感。
 だからこそ、より強く、より激しく、より痛く。
 どんなに嬲っても淫らな悲鳴しかあげない貪欲なからだを夢中で甚振りつづけ、つづけざまに何度も何度も甘美な絶頂を味わいました。

 早鐘のようだった鼓動がようやく収まり、伏せていた顔を上げてみました。
 乳首とクリトリスを繋いでいるチェーンは、はずれずにそのまま私のからだを飾っていました。
 充血が落ち着いたからでしょう、3箇所ともテグスの絞る力が弱まっている気がしました。
 ラビアを抉じ開けていたクリップは、いつのまにかふたつともはずれ、だらしなくぶら下がっていました。
 テーブル上の私が腰を着けていた一帯が、粘性の液体でヌルヌルに濡れていました。

「いい写真が撮れたわよ」
 傍らにいらしていたお姉さまが、私の鼻先に履歴書を突きつけてきました
「ほら、いい顔でしょ?これこそ本当の、あなたらしい表情よね?」
 履歴書の写真の欄、リクルートスーツで心細そうな顔をした自分の写真が貼ってある場所のその上に、本来の写真を覆い隠すように、一枚のチェキがペーパークリップで留めてありました。

 眉間に悩ましくシワを寄せ、顎が上がってのけぞり気味な私の顔のどアップ。
 両目とも大きく見開かれ、半開きになった唇の端からはよだれが一筋垂れています。
 汗ばんだ額や頬に髪がまばらにへばりつき、顔全体が興奮で紅潮しています。
 荒くしているであろう鼻息、喉の奥から洩れているはずの喘ぎ声まで今にも聞こえてきそうなほど、生々しい写真でした。
 自分がイッている、まさにその最中の顔だということが一目でわかりました。

「何度目かにあなたが、イっちゃぅー、って叫んだときのものよ。これがベストショットね」
「どう?この表情。えっちとかすけべなんて次元はとっくに通り越して、まさに淫乱、卑猥そのものって感じよね」
 愉快そうにおっしゃりながら、私の顔を覗き込んでくるお姉さま。

 お姉さまと視線を合わせると、お姉さまの.瞳が爛々と輝いているのがわかりました。
 その妖しい輝きの意味を、まだ数回だけのお姉さまとの逢瀬でしたが、私はすでに理解していました。
 お姉さまも発情されている。
 ご自分の昂ぶりを発散したがっていらっしゃる。
 あたしも気持ち良くしなさいとご命令されている。

「これで履歴書も完璧。今の面接で、あなたがどんな女性なのかも充分わかったし、おーけーよ。あなた、採用してあげる」
 高飛車におっしゃて、お部屋の入口ドア近くまでゆっくり歩いていかれました。
 そこに置かれている、パソコンの大きなモニターが設置された立派なデスクの上に私の履歴書を置き、再び私が横たわるテーブルの傍らへ優雅な足取りで戻ってこられたお姉さま。
 私を見下ろして、お言葉をつづけました。
「最後に、あたしへの絶対の忠誠心を示してくれる?あたしのため、そして会社のためなら何でもやります、っていう覚悟のほど、みたいなのをね」

 唇の端だけで微笑んだお姉さまは、それまで座っていた椅子をテーブルから離すように後方へ移動させてから、その椅子にストンと腰を下ろされました。
 それから右脚だけ軽く跳ね上げ、ベージュのストッキングを優雅に脱ぎ始めました。
 濃茶のタイトスカートが割れて、お姉さまの股間が覗けそう。
 テグスの締め付けもさほど感じられないくらい大人しくなっていた私の3箇所に血流が戻り、テグスが突起に食い込み始めるのがわかりました。

 右脚のストッキングだけ脱ぎ去ったお姉さまは、そのスラッとした生美脚をまっすぐ私に向けてきました。
 左脚は床に下ろしたまま右脚だけを伸ばしているので、タイトスカートの奥の黒っぽい下着までうっすら見えていました。

「舐めなさい」
 足先を私に向けたままでの、はっきりとしたご命令口調。
「そこから降りて、床にひざまづいて、あたしの足をあなたの舌でキレイにしなさい」
 抑えたような低い声音のご命令に、私のマゾ性がゾクゾクっと完全復活しました。

「は、はいっ!よろこんで、精一杯ご奉仕させていただきます」
 あわてて上体を起こすと、乳首からぶら下がったチャームふたつが大げさに揺れ、じれったい疼痛がぶり返してきます。
 テーブルの端まで裸のお尻を滑らせて、慎重に床に降り立ちました。

 正座するようにお姉さまの足元にひざまずくと、お姉さまは私の口元まで、足先を下げてくださいました。
 目の前に突き出されたお姉さまの右足の親指に、口を大きく開けてむしゃぶりつきました。

 最初は少し酸っぱいような味が口中に広がり、すぐにしょっぱく感じるようになって、やがて甘くなりました。
 お姉さまの右足首に軽く手を添えて、親指から小指まで一本一本丁寧に頬張ります。
じゅる、じゅる、じゅる。
 ひと通りしゃぶり終えてから、今度は足の裏、踵、爪、足の甲まで、よだれを滴らせては舌でベロベロと舐め上げました。

 ご奉仕しながら目線を上げると、お姉さまはうっとり、気持ち良さそうに目を閉じていらっしゃいました。
 最初はピンと一直線に伸ばしていらしたおみあしも、私に足首を取られて膝が大きく折れています。
 その結果、タイトスカートの裾が腰のほうへとせり上がり、スカートの奥がハッキリ見えていました。
 私はもちろんご奉仕の舌は止めずに舐めまわしながら、お姉さまのスカートの奥に目を凝らしました。
 一見して分かるほど、黒いショーツのシースルーっぽい薄い布地が、肌に貼り付くようにベッタリと濡れていました。

「そのくらいでいいわ」
 お姉さまのその部分に、今すぐにでも手を伸ばしたい欲求と必死に戦っていた私の頭上から、お声が降ってきました。
「一度やってみたかったのよね、ひざまづいて足をお舐め、って。気持ち良かった」
「最後にあたしの右脚、好きなだけ貸してあげるわ。今日の面接で頑張ったご褒美よ。そこにしゃがみなさい」
 お姉さまの右足がクイクイっと、手招きならぬ足招きをしました。

 正座を解き、両足裏を床に着けてしゃがみました。
「もう少し前に来なさい。そう。それと両膝は思い切り広げておきなさい。あなたのご自慢のパイパン性器を見せびらかすみたいにね」
 右脚をぶらぶらさせて、からかうようにおっしゃるお姉さま。

「あら、ラビアチェーンは両方ともはずれちゃったんだ」
「あ、着け直したほうがよいですか?」
 しゃがむと同時に両手を後頭部で組んでしまう、根っからマゾな私。
「ううん。そのままでいいわ」
 おっしゃりながら、しゃがんだ私の股間と床とのあいだの20センチくらいの空間に、お姉さまの右足が侵入してきました。

「はぁうっ!」
 不意にお姉さまの足の甲が、私の股間にペタンと押し付けられました。
「うわ、熱い。それにヌルヌル。あなた、さっきあれだけイったのに、もうこんなに復活していたんだ。呆れた」
 お姉さまが足の甲で私の股間を軽く蹴り上げるみたいに、グイグイと圧し着けてきます。
 爪先が私のアナルの辺り、そして足の甲から足首までで私の性器全体を包み込むみたいに密着させ、小刻みに擦り付けてきます。
「あんっ、あんっ、あんっ」
 気持ち良さに堪えきれなくなった私は、後頭部の両手を解いて床に後ろ手を突き、下半身をグッと突き出す形になりました。

「ああぁーーっ!」
 股間に密着していた足がいったん引き、今度は私の膣穴めがけて、爪先が進入して来ました。
「ほら、あたしの足であなたの性器を犯してあげる。直子がジュルジュルしゃぶってキレイにしてくれた、あたしの足の指でね」
 お姉さまの足の親指から中指くらいまでが、私のアソコにズブリと挿さっています。

「直子の淫乱マンコでも、さすがに足の指全部は咥え込めないみたいね」
 わざとイジワルくお下品におっしゃって、足先を乱暴にぎゅうぎゅう押し込んでくるお姉さま。
「あ、いいっ、もっと、もっとぉ」
「ヌルヌルのジュブジュブね。ほら、直子も自分で腰動かして、もっと気持ち良くなれるように工夫なさい」
「はいぃ、あんっ、そこそこそこぉ」

 お姉さまの足先をもっと深く迎え挿れようと、お尻を上下させながら喘ぎます。
 からだを揺らすと乳首のチャームも揺れて、突起がますます硬くなり、テグスが食い込んできます。
「中がすっごく熱くなっているわね。どう?イキそう?」
 お姉さまの足がますます乱暴に粘膜を蹂躙してきました。
「もうちょっと、ああ、もっと、もっとぉー」
 両手を後ろ手に突いているので、思うように自分のからだをまさぐれないもどかしさ。

「ねえ直子?あたし、脚上げているの疲れちゃった。あとは自分で持ってやってよ。太腿まで自由に使っていいから」
「あ、はいっ!」
 そのお言葉を待っていました。
 急いでからだを起こし、しゃがみ姿勢に戻りました。

 お姉さまの足が私の性器から離れ、だらんと床に着地する寸前に、両手でそれを捕まえました。
「直子って、あたしの膝小僧、大好きよね?いつもオマンコ、グイグイ圧し付けてくるもの」
 ふたりで眠る前とか、普通にベッドで愛し合うときは、私が仰向けに寝そべり、お姉さまが覆いかぶさる形でからだを重ねていました。
 いつも最初にするのは、重なってキスをしながら、お姉さまの膝で私の両脚が割られ、私の性器をその膝頭でグイグイ虐めていただくことでした。

「それではお姉さま、おみあしを失礼させていただきます」
 お姉さまから私への呼びかけが、あなた、から、直子、に変わったことで、面接ごっこは終了し、プライベートタイムに入ったと判断した私は、思い切って、お姉さま、と呼びかけました。
 お姉さまからお咎めは無く、私を見つめて薄く笑っています。

 安心した私は、お姉さまの右足首を左手で持ち、ゆっくり立ち上がりました。
 お姉さまの右脚も上に上がって、大開脚状態になりました。
 お姉さまのタイトスカートは、すでにすっかり腰骨辺りまでせり上がり切り、白い内腿とその奥を隠す黒い布地全部が露になっています。
 それでもお姉さまは薄く笑っていらっしゃるだけ。
 これはもう、完全に誘っていらっしゃるのでしょう。

 脛に跨って股間に押し付けました。
「はうんっ」
 私が持っているお姉さまの足首は私の愛液でベトベト、お姉さまのスリムな脛はスベスベです。
 そのスベスベの脛に股間の唇を圧し付け、滑らせるように腰を前後に振り始めます。
「あん、あん、あーんっ」
 お姉さまの滑らかな脛に私のいやらしいラビアと粘膜をヌルヌル擦り付けます。
「あ、いいっ、あん、あん」
「いやらしいダンスだこと。腰をカクカクさせて、サカッたワンちゃんみたい」
 私をじっと見たまま、からかい口調のお姉さま。

 お姉さまの生脚に性器を擦りつけて感触を愉しみつつ、私はジリジリとお姉さまに近づいていきました。
 膝小僧まで進むと、その丸みが粘膜の奥まで圧迫してきて、その気持ち良さから離れ難く、少し長めに停泊してしまいました。
「あん、あん、あぁんっ」
 腰を前後するたびに、ラビアが摩擦されクリトリスが引っぱられ、どんどん昂ぶってきます。

 でも、ちゃんとお姉さまにも悦んでいただなくては。
 今度はお姉さまと一緒にイカなくちゃ。
 もうすぐ、もうすぐ手が届く。

 お姉さまの太腿に跨るような形になると、ふたりはもうくっついているといっても良いくらいの至近距離でした。
 お姉さまのお顔がすぐそこにあります。
 相変わらず私をまっすぐ見つめ、薄く微笑んでいらっしゃいます。
 私も見つめ返しながら、恐る恐る右手をお姉さまの股間に伸ばしていきました。

 もう触れる、というときに唇が塞がれました。
 もちろん、お姉さまの唇で。
「んふぅぅぅ」
 重ね合った唇の中で、お姉さまの一際熱い吐息を感じたのは、私の指がお姉さまの濡れたショーツに触れた瞬間でした。

 お姉さまのソコもグッショリでした。
 濡れた薄い布越しに、クリトリスが勃起しているのがわかりました。
 お姉さまの太腿の上で腰を小刻みに滑らせながら、しばらくは布の上から、お姉さまの性器を擦りました。
 指の腹でやさしく、慈しむように。
 お姉さまが両手を私の背中に回し、ぎゅっと抱きしめてきました。
 私も空いている左手を、お姉さまの背中に回します。
 唇はずっと重ねたまま。

「んんんーっ」
「んぐぅぅぅ」
 私がショーツのクロッチ脇から内部に指を侵入させると、お姉さまも右手をふたりのからだのあいだに潜り込ませて来ました。
「んぁうぅぅ」
「むむぅぅぅ」
 私の指が、濡れそぼったお姉さまの性器を直にまさぐって膣を割るのと、お姉さまの指が、私のテグスで絞られたクリットをつまむのとが、同時でした。
「あはぁぁーんっ」
「いいいぃぃぃ」
 さすがに互いに頭が後ろにのけぞって唇が離れ、思いがけないほど大きなふたりの喘ぎ声が室内に響きました。

「ああん、お姉さまぁ、もっと、もっとぉ」
「いい、直子、いいわ、そこ、そこよ」
「もっとぎゅっと、もっとぎゅーっとつぶしてぇ」
「あ、あ、いい、そこぉ、奥まで、奥までぇ」
 ふたりして、唇を離し何かを訴えては、すぐにまた相手の唇を求め、貪り合います。

「お姉さま、気持ちいいですか?、いいですか?」
「んんー、直子、かきまわして、もっともっと」
「あ、イキそうです、お姉さま、一緒に、一緒にぃ」
「いいわよ、一緒にイこぉ、一緒にぃ」

 ピチャピチャは上の唇、クチュクチュは下の唇。
 ブラウス越しに、お姉さまの体温がどんどん上がっていくのがわかります。
 それがすごくしあわせ。

「あっ、あっ、イクゥ、いくぅ、いっちゃうぅー・・・!!!」
「いい、いい、いい、の、いく、いくいくいくぅ・・・!!!」

「あーあ。やっぱり服を全部脱いでからすればよかったかな。ブラウスもスカートもよれよれのベトベト」
 抱き合ったまましばらくぐったり、昂ぶりの余韻がようやく引いた頃、お姉さまがお顔を上げて小さくつぶやきました。

 そのお声に、私があわててお姉さまの腿から降りると、お姉さまも立ち上がりました。
「あ、あの、ごめんなさい・・・」
 確かにお姉さまの純白のブラウスは、あちこちよだれに濡れて肌に貼り付いていました。
 濃茶のタイトスカートにも、飛び散ったふたりの愛液らしきシミがそこここに出来ています。
 申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。

「直子が謝ることではないわ。自分の職場でえっちなことするために自ら裸になることに、なんだかワケの分からない罪悪感を感じてそうしなかった、全部あたしのせいだもの」
「直子にはわからないでしょうけれど、自分が普段働いている見慣れたオフィスで全裸になるのって、けっこう勇気がいることなのよ。背徳感って言うか」
 苦笑いしながら、お姉さまが左脚のストッキングもお脱ぎになりました。
「片方だけ穿いてるのって、おかしいものね」
 今度は愉快そうな笑顔のお姉さま。

「直子はいいわよね。真っ裸だからタオルで拭くだけでいいんだもの。はい」
 お姉さまから、海沿いのレジャーランドのキャラクターが描かれた可愛らしいバスタオルを差し出されました。
 お姉さまも同じような柄のタオルで、ご自分の右脚を拭き始めます。
「あ、だめです。私がやります」
 私は急いでお姉さまの足元にひざまずき、自分に渡されたタオルでお姉さまの右脚を拭き始めました。

「あら、気が利くのね」
「いえ当然です。だって私はチーフのドレイ秘書ですから」
「今、この部屋って、すっごくいやらしいふたりの臭いが充満しているのでしょうね」
 お姉さまが久しぶりに、真夏の向日葵のようにニッコリ艶やかに微笑まれました。


面接ごっこは窓際で 08