2014年11月16日

就職祝いは柘榴石 09

 ゴージャスなブルーベルベットの上に横たわっていたのは、2種類の、数珠、のような形状の一見ブレスレットぽいオブジェでした。
 ひとつは、直径1センチから2センチくらいのえんじ色の珠が徐々に大きくなるように連らなった、全長20センチくらいのもの。
 もうひとつは、直径1センチから最大4センチくらいの珠が凸凹ランダムに連らなっている、やっぱり全長20センチくらいのもの。
 えんじ色の珠は、どれもツヤツヤピカピカ、壮麗に輝いています。

「うわー、綺麗!」
 思わずつぶやいてしまいました。
「でしょ?ガーネット、和名だと柘榴石のカーバンクルよ。石も仕上げも質が良いから、本来ならこのままブレスとか、大きいのはカットして指輪やペンダントトップにするべき宝石なのだけれどね」
 シーナさまが意味ありげに微笑みました。

「それで直子さん、これが何だかわかる?」
「えっ?」
 シーナさまに尋ねられ、あらためてその数珠っぽいものをじっくり見つめました。
 宝石、っておっしゃったから、きっと何かアクセサリーの一種なのかな?

 どちらの数珠にも、片方の先端に直径3センチくらいのゴールドのリングが付いています。
 指とか何かにひっかけて、ぶら下げるためなのでしょうか?
 でも、そんなアクセ、聞いたこともない。
 何だかわかる?と尋ねるくらいですから、見た目どおりの数珠やブレスレットではないでしょう。
 ひとつのほうは、珠の大きさもバラバラだし・・・

 そこまで考えたとき唐突に、以前ネットで見たことのある、とあるえっちな画像が頭の中に浮かびました。
 裸の四つん這いで、お尻から数珠状のものを尻尾のように垂らしていた女性の画像。
「あっ!」
 私が声をあげると、シーナさまが嬉しそうにニッと唇の両端を上げました。
「さすがヘンタイ直子さん。お気づきになったようね」
 
 シーナさまが、まっすぐなほうの数珠状のものを手に取り、私の目の前にダランとぶら下げました。
 珠と珠とのあいだは、ぴっちりと詰められていないようで隙間が出来、珠をつないでいる糸の全長だと25センチくらいあるみたい。

「これはね、俗に言う、アナルビーズ、として作らせたの。つまり、この綺麗なカーバンクルが直子さんのお尻の穴を出たり入ったりする、ってわけ」
 シーナさまは、数珠、いえ、いささか高級過ぎる柘榴石で作ったアナルビーズを私の目の前でブラブラ揺らしながら、ニンマリと笑いました。

「直子さんは初心者だから、最初はこの一番小さな珠から始めて、開発されてきたら、こっちの大きな凸凹で存分に愉しむといいわ」
 もう一方の、珠の大きさランダムなアナルビーズも手に取り、ブラブラさせるシーナさま。
 開発、というお言葉に被虐心がズキュンと震えてしまいます。
 私、お尻の穴を、開発、されちゃうんだ・・・
 いたたまれない恥ずかしさに、真っ赤になってうつむきました。

「あら、ずいぶんと嬉しそうじゃない?もちろん、実際に開発するのはエミリーの役目。今日のわたしは、そのとっかかりのコーチ役」
「エミリーもね、直子さんのアナル開発にはとっても興味がおありのようよ。このあいだお会いしたとき、お話がはずんちゃったものね?」
「はい。あたし、その手のプレイは今まであまりやったことがないので、ワクワクしています」
 お姉さまがアナルビーズと私の顔を交互に見つつ、切れ長な瞳を煌々と輝かせています。

「これ、現地でも評判な、腕利きのジュエリー職人にわざわざ作ってもらったのよ。さっきも言ったように、最初はうちのメス犬用に、ピンクサファイアで」
「こっちの珠がランダムなやつをね。あいつ用のは、全体にもうひと回り珠が大きいけれどね」
「その職人、わたしのデザイン画見て、いったいこれは何なんだ?って怪訝そうな顔をしていたわ」
 思い出し笑いのシーナさま。

「それがあまりにも出来が良くて加工賃も妥当だったから、直子さん用のも作ることにしたの。でも、直子さん、初心者だから小さいのから二種類作らなきゃならないし、それだと、ピンクサファイアでは石のお値段張り過ぎるでしょ?ちょうどそのアトリエに程度のいい大きな柘榴石の原石の塊があったから、それから削り出してもらったの」
「ストリングスもまず切れることの無い高品質ナイロンテグスだし、このリングは18金だし、お尻の穴に挿れて遊ぶにしては、あまりにも贅沢すぎる一品よ?」
 シーナさまがからかうようにおっしゃり、その高級アナルビーズを私の鼻先でブラブラ揺らしました。

「現地でずっとガイドしてくれた子がすっごく興味持っちゃって、何に使うんだ?アクセサリーなのか?って、ずっとうるさかったのよ」
「だから、現地を離れる前の夜のパーティの席で、こっそり彼女にだけ教えてあげたの。うちで飼っているセックススレイブのアヌスに突っ込んで愉しむんだ、って」
「彼女、一瞬ギョッとした顔してから、大声で笑い出したわ。大受け。ひとしきり笑い転げて、やっぱりニッポンジンは、アブノーマルなヘンタイばっかりだ、って半ば感心、半ば呆れの、目に涙溜めた笑顔で言われちゃった」

「デザイン画、そのアトリエにおいてきちゃったから、ひょっとしたら今頃、現地の日本人向けお土産のラインナップに加わっているかもしれないわね、これ。安めの石を加工して」
 お姉さまとシーナさまがお顔を合わせて、しばらくクスクス笑っていました。

「そんなわけで、これから直子さんのアナル開発を始めるのだけれど、直子さん?最近、お通じのほうはどう?」
 シーナさまに突然お通じ状況を尋ねられ、ビクンとわななく私。
 アナル開発、という淫らでヘンタイ過ぎる語感が、私のマゾ性を刺激し過ぎて、全身が疼いて疼いてたまりません。

「あの、え、えっと、ふ、ふつう、です・・・」
「今日は?」
「あ、はい、午前中に一度、ふつうに・・・」
「そう。一度出した後は、何食べた?」
「え、えっと、お昼にバナナ一本とヨーグルトを食べて、夕方にお姉さまとお逢いして、サラダとパスタとピザをご馳走になって、それから今、アイスクリーム・・・」
「ふーん。今11時前か。一応もう一度出しておいたほうが無難なようね。直子さんも、あまりエレガントでないのは、お好きではないでしょう?」
 イタズラっぽい口調のシーナさま。
「あ、はい・・・」
 エレガントに虐められたいなら、まず、エレガントとは対極な自分の姿を、おふたりにご披露しなければならないようです。

「おっけー。やっぱり一度出しておきましょう。エミリー、直子さんをバスルームに連れて行って。わたしもすぐに行くから」
 シーナさまが私の首輪から垂れている鎖リードの先端をお姉さまの右手に握らせて立ち上がり、おひとりでサンルームのほうへスタスタ歩いていかれました。
 シーナさまのお言葉が何を意味しているのかわかった私は、これから訪れるであろうみじめ過ぎる恥辱にグングン昂ぶりながら、無言でお姉さまのお顔を、すがるように見つめました。

「さ、直子?行くわよ?」
 お姉さまが立ち上がり、私も立ち上がり、お姉さまがクイッとリードを引っ張ったのを合図に、私は腰を沈めて床に四つん這いになりました。
 お姉さまのTバックのカッコイイお尻を見上げつつ、棒枷で抉じ開けられた丸出しの股間とお尻をフラフラ上下させて、フローリングの床をワンちゃんのように進みます。
 鎖を引かれて膝を交互に動かすたびに、粘膜が擦れて溢れ出したおツユが腿を滑り落ちるのがわかりました。

 バスルームの横開きな扉をお姉さまが開き、そのままスタスタと中へ入りました。
 私の両手のひらと両膝に触れる感触が、フローリングから濡れたタイルに変わります。
 先ほどお姉さまがシャワーされたので、バスルームの中はまだほんのり温かく、ソープ類の良い香りがして、全体に湿っていました。
 大きめの鏡は全体に曇っていて、私たちの姿もぼんやりぼやけて映っています。

「これからあたしは、ここで直子の排泄姿を見せられる、っていうことよね?」
 お姉さまが振り返り、四つん這いの私を見下ろして静かにおっしゃいました。
「出逢ってから3度目、つきあい始めて2回目でのそんな姿、って、どう考えたってアブノーマルよね?」
 お姉さまは、普通に世間話するような口調で、私に尋ねてきます。
「さ、さあ?・・・」
 何てお答えすればいいのかわからず、ボーっとお姉さまを見上げる私。
「まあ、初対面でオナニー姿、このあいだはオシッコ姿視ちゃったのだから、妥当なのかな?あたしたちみたいな仲なら」
 ニコッと微笑まれたその瞳は、好奇心で爛々と輝いていました。

「ねえ、直子はどう?あたしにそういう姿視られちゃうのって、嬉しいの?それとも恥ずかしい?」
「恥ずかしいです!すっごく恥ずかしいです!お見せしたくないですぅ!」
 被虐に全身を震わせて、泣きそうな顔でお姉さまを見上げました。
「本当?直子は、そういう姿を視て欲しくてたまらない種類の人間のくせに」
 お姉さまがイジワルにおっしゃり、リードをクイッと引っ張りました。

「あうっ!本当ですぅ。お姉さま、どうか私がみっともない姿を、お下品な姿をお見せしても、どうか嫌いにならないでください。お願いしますぅ」
 お姉さまからのお言葉責めに、私のマゾ心は狂喜乱舞、心の底から恥辱のヒロイン役に酔い痴れていました。

「シーナさんたちには、何回くらい視られたことあるのよ?」
 お姉さまの口調が一転して冷ややかに変わりました。
 ドキンとした私も、急にオドオドしてしまいます。
「あ、えっと、お浣腸姿は、やよい、いえ百合草先生に2回・・・オシッコ姿だと3回か4回か、えっと5回か・・・」
「へー。そんなに視られちゃっているんだ?はしたない子ねえ」
 お姉さまの心底軽蔑したようなお声。

「そんなに視られているなんて、嬉しいからとしか思えないわ。やっぱり直子は、排泄姿を見せつけてオマンコ濡らしちゃうようなヘンタイ娘なんじゃない!」
「シーナさんたちには負けられないから、今日はあたしもじっくり視させてもらうわ!何もかもっ!」
「あうぅぅ!」
 リードをグイグイ引っ張られ、私の顎は天井に向いています。

「それに、これから直子のお尻と肛門は、あたしだけのものになるのだからね?無闇にあたし以外に視せたり弄らせたりしたら、あたしたちのスール関係は即、解消するから。いい?わかった?」
 思い切り冷たい口調で投げつけられ、お尻をバチンと叩かれました。
「ひぃっ!はいぃっ!直子はお姉さまだけのものですぅぅ・・・」
 四つん這いのまま、お姉さまをすがるように見上げると、お姉さまが裸足の右足を私の目の前に突き出してきました。
 私はその濡れた親指を口に含み、じゅるじゅるしゃぶりました。

「あらあらー、仲がおよろしいことで」
 シーナさまが何か荷物を片手にバスルームに現われ、お姉さまがササッと右足を引っ込めました。
「お待たせー。さあ、さくさくやっちゃいましょう。とりあえずまず、エミリーにはこれね」
 シーナさまがお姉さまに何か手渡しました。
 お姉さまの手に乗っているのは、果実の形をしたおなじみのお浣腸薬と、薄でのゴム手袋。
「一応その手袋着けて、直子さんに浣腸してあげて」
 シーナさまがお姉さまにご指示されました。
 いよいよ、と思った私の心臓はドッキドキ。

「浣腸プレイならエミリーもしたことあるんだったわよね?お尻の穴ほぐして突き挿すだけだから。ローションが必要だったら直子さんの愛液を肛門になすりつければいいわ。直子さんって、本当、ローション要らずで捗るのよね」
 おっしゃりながら、シャワーをひねって床を流し始めるシーナさま。
 私の両手と両膝がみるみるぬるま湯に浸ります。

 お姉さまは私の背後に回り、突き出しているお尻の穴をゴム手袋のひんやりした指が撫ぜ始めました。
 さわられるたびに、穴の円周のヒダヒダがヒクヒク動いてしまうのが、自分でわかります。

「あふぅん・・・」
「あら、直子さん、もう気分出しているの?いくらでも悶えていいわよ、今は」
 シーナさまのからかい口調で、お姉さまの指遣いがより激しくなりました。
「あうっ!んんんぅー」
 穴を広げるように、皮膚が引っ張られたり撓まされたり。
 穴周辺を激しく揉みしだかれ、甘えるような声が出てしまう私。

「やっぱり直子さん、根っからのヘンタイだけあって、そこの感度も超敏感みたいね」
 シーナさまの蔑んだ口調が私の耳を心地よくくすぐりました。

「いくわよ直子。肛門の力を抜きなさい」
「あ、はいぃ」
 お姉さまのご命令に従って下半身の力を抜いたと同時に、お浣腸容器の先端がプスリと突き刺さる感触がありました。
 
 シーナさまは、バスルームの鏡にもシャワーをかけ、曇りを完全に消していました。
 大きな鏡には、全裸四つん這いでお尻を高く突き上げた私と、エナメルボンデージ姿でお浣腸容器を私のお尻に突き立てているお姉さまのお姿、そして、片手に持ったハンディビデオカメラを私のお尻に向けているシーナさまのお姿が、鮮明に映し出されていました。

「あうううっ・・・」
 お尻の穴から内部に、冷たい液体が侵入してくる感触がしばらくつづき、やがて肛門に挿さっていたものが抜かれたのがわかりました。

「終わったようね。これから5分間、直子さんは、何があってもがまんすること。膝立ちになりなさい」
 シーナさまにうながされ、上半身を起こします。
「直子さんがギブアップするまでのあいだに、さっきエミリーが言ってたロープの扱い方をちょっと説明しておくわ」

 ビデオカメラをお姉さまに渡し、シーナさまが愛用の麻縄を一束つかみ、膝立ちになった私の前に立たれました。
 シーナさまがロープを手にして目前にいらっしゃると、何も言われなくても反射的に、私の両手は後頭部で組まれ、マゾの服従ポーズになってしまうのです。


就職祝いは柘榴石 10


2014年11月2日

就職祝いは柘榴石 08

 お姉さまは、私の両手首と両足首を繋いでいるジョイントをそれぞれ外してくださり、まず両腕が自由になりました。
 それから、私のアソコの目前にしゃがみ込み、ラビアにとりついている悪魔のオモチャを取り外し始めました。
 
 噛みついたクリップのねじが緩むたびに、ラビアに血流が戻りズキンと痛みます。
 クリップが全部はずされ、オレンジ色のリングが取り除かれて、私のアソコはようやく唇を閉じることが出来ました。
 棒枷は、外していただけませんでした。

「直子の柏餅、まだちょっと半開き状態ね」
 お姉さまがからかうみたいに笑い、手に持った悪魔のオモチャを私の顔の前で揺らします。
 リングやクリップに着いていた私のおツユの雫が、私の顔に数滴、降りかかりました。

「リビングのテーブルにアイス用意するから、行きましょう。飲み物のグラスを適当に借りるわよ」
 シーナさまは、勝手知ったる他人の家、という感じでスタスタとリビングのほうへ消えていきます。

「わかりました。ほら、直子、立てる?」
 差し伸べられたお姉さまの右手にすがりつき、仰向けの上半身を起こしました。
 それから両足を踏ん張って、ヨロヨロ立ち上がります。
 腰全体が重いのにフワフワもしているみたいで、ヘンな感じ。
 立ち上がると今度は、上半身のほうが重く感じてフラフラとよろけてしまいました。

 自由になった両手で髪をかき上げると、顔中汗びっしょり。
 不自由だったとき気になっていた部分、おっぱいや乳首やアソコやお尻を、実際に手で触れて、無事を確かめます。
 
 お尻がまだ少しヒリヒリしている以外は、異常無し。
 乳首もおマメも敏感なまま。
 ただし、全身が汗やいろんな体液でヌルヌルでした。

「あの、お姉さま?私もちょっとシャワーを浴びてこようかと思うのですが・・・」
 立ち上がってからの私の振る舞いを、傍らでずっと無言で眺めているお姉さまに、おずおずとお願いしました。
「ああ、確かにからだ中ベトベトね。でもいいわよ、浴びなくて。どうせ休憩の後、またすぐ同じ状態になっちゃうのだから」
 お姉さまに、取り付く島も無い口調で却下されました。

「このタオルで軽く拭いとけばいいわ」
 私の頭部分の下敷きになっていたバスタオルを手渡してくだいました。
「それにあたし、匂いフェチのケもあってね。直子がヌルヌルになったときに鼻をくすぐる、なんて言うか、だらしのない臭い?も意外と好きなのよ」
 お姉さまがイタズラっぽく笑い、私の手からバスタオルを取り上げてお顔を埋めました。

「さあ、行きましょう、シーナさんがお待ちかねよ」
 お姉さまに左手を引っ張られ、私はツツッと前につんのめります。
 両足に棒枷を施されたままの私は、ズルズル摺り足のロボット歩行しか出来ないのです。

「ねえねえ、早く来ないと、アイス溶けちゃうわよ?どうせふたりでイチャイチャしているんでしょ?まったく!つきあい始めのカップルは、サカリのついた猫と一緒なんだから・・・」
 待ちかねたらしいシーナさまが、サンルームに戻っていらっしゃいました。
 摺り足ロボット歩行でちまちま進み始めた直後でした。

「何しているの?足に棒枷着けているドレイが、立って歩こうなんてナマイキよ?」
 シーナさまったら、私の姿を見た途端、愉しそうな罵声です。
「ちょっとそのまま待ってて」
 
 シーナさまは、床に散らばっているお道具の中から、何かを拾い上げ、私に近づいてきました。
 手にされているのは細い鎖。
 私の赤い首輪の正面のリングに鎖の端のジョイントをカチリと繋ぎ、もう片方の端をお姉さまに握らせました。

「ほら、直子さんは四つん這いになって、エミリーはそのリードを引っ張って。それが飼い主とドレイの正しい関係よ」
「わかったらさくさく、リビングに集合しなさい」
 それだけ言い渡すと、再びスタスタ、リビングのほうへ戻られました。

「なるほどね。直子?」
「あ、はい」
 お姉さまの問いかけに、その場でしゃがみ込んで両手を床に着けました。
 お姉さまがグイッと鎖を引っ張ると、私は四つん這いで歩き始めます。
 右手、右膝、左手、左膝と順番に出せば、摺り足より断然早いのは確かです。

 四つん這いになると、突き上げている腰と、棒枷によって無理矢理開かれている無防備な股間への羞恥心が増大します。
 室内のあちこちにある鏡やガラスに、お姉さまに鎖で引かれて四つん這いで歩く、自分のみじめな全裸姿が映ります。
 住み慣れた自分の部屋なのに、私、どうしてこんな格好をしているのだろう?
 左右に切れよく揺れるお姉さまのかっこいいヒップを見上げながら、私の被虐心がみるみる満たされていきました。

 リビングに着くと、L字ソファーの前のテーブルにアイスクリームと飲み物がセッティングされていました。
 シーナさまはすでに腰掛けられています。
「やっと来たわね。ほら座って座って。直子さんも、今は休憩だから立ち上がっていいわよ」
 飲み物は、シャンパンらしきボトルとスポーツドリンクのペットボトル。
 アイスクリームは、何やら高級そうなカップアイス。

 お姉さまがL字のもう一方の奥へ、私はそのお隣に、棒枷の足で苦労して腰掛けました。
「このアイス、なぜだかけっこうシャンパンに合うのよ。さ、とりあえず乾杯しましょう」
 シーナさま自ら、それぞれの細いシャンパングラスに注いで、かんぱーい!チーンッ!
 私は死ぬほど喉が渇いていたので、一気にゴクゴク飲み干してしまいました。

「ああ、やっぱりね。直子さんたちはきっと死ぬほど喉が渇いていると思ったから、もう一本冷やしてあるの」
「あ、でも直子さんは、それだけにしておいたほうがいいわ。この後も大変だから。あとはこのスポーツドリンクを好きなだけお飲みなさい」
 私のグラスにスポーツドリンクを注いでくださりながら、シーナさまが愉しそうにおっしゃいました。

 そのアイスクリームは、フルーツの果肉やチーズクリームとかも詰まっているようで、濃厚なのにさわやかで、すっごく美味しかった。
 まだ充分に固いアイスをスプーンで突っつきつつ、スポーツドリンクを何杯もゴクゴク飲んで、おふたりのお話に耳を傾けました。

「それにしてもエミリー、見事なご主人さまっぷりじゃない?充分よ。わたしが教えることなんて、もう無さそう」
「いえいえ、まだぜんぜん自信が無くて。だからこの後、シーナさんにいろいろご教示いただこうと思っています」

「部屋に入って、直子さんの姿を一目見たとき、やるなー、って思ったわよ。この子のマゾ心を的確に突いた拘束具合だったもの」
「あたしなりにけっこう考えたんですよ。直子に悦んで欲しくて」
「おおお、いいわねー、お熱いこと!」
 シーナさまにおどけてひやかされ、お姉さまと私が盛大に照れます。

「やっぱりロープの使い方はマスターしたいな、って思っています。直子が好きそうだし。あとは責めの加減がまだまだわからなくて」
「それは、場数をこなせばだんだんわかってくるはず。直子さんは、かなりハードにしてもネを上げないし」

「そうそう、鞭って、愉しいですね。ふるっているうちにどんどん興奮しちゃって、止まらなくなりそうでした」
「それを愉しめるのなら、もう立派なエスよ。素質充分」
「最初は、打たれてどんどん赤くなるお尻が痛々しくて、可哀想に思えていたのに、だんだんと、もっと赤くしてやるっ、てなっちゃう」
「わかるわかる。その上、直子さんて、ゾクゾクするほどいい声あげるでしょ?あの声聞くと、もっと啼かせてやるっ、てなるわよね?」

「あの鞭はお高いのですか?すごくしっかりとした造りですよね?」
「ああ、わかる?あれはかなりいいものよ。バラ鞭も乗馬鞭も職人手造りの一点もの。もともと直子さんのために用意したものだから、これからも自由に使っていいわよ」
「本当にいいのですか?」
「うん。エミリーにあげる。わたしからのお祝いと思って。あとで名前も入れてあげるわ」
「うわー。ありがとうございます」
 私も一緒にお辞儀をします。

「そう言えば、直子のオモチャ箱を見て思ったのですけれど、口枷類、ボールギャグとかは、まったくありませんでしたね?」
「ああ、気がついた?わたしはあまり、その手は好きではないのよ。エミリーは、そういうの、してみたいほうなの?」
「あ、いえ、あたしはイキ顔フェチですから、相手の顔面を故意にいじくるのは好きではないです。口枷とかマスクとか」
「へー。そのへんでもわたしたち、気が合うようね。直子さんもその手は好きじゃないみたいよ。せいぜい手ぬぐいで猿轡とか、舌を洗濯バサミで挟むくらいでしょ?許容範囲」
 突然私に問いかけられて、はいっ!と、あわてて答えます。

「あたしが見たいのは、可愛い顔が苦痛や快感で淫らに歪む様子なので、顔は絶対見えていなきゃだめだし、声も、ボールギャグとかで塞ぐのではなくて、がまんさせるほうが好みです」
「うん。わたしも同じ感じ」
「欧米のボンデージものとか見ていると、絶対すぐに、ボールギャグとか口枷をかましますよね?縛りものはどれも。その上、ひどいのになると目隠しやら全頭マスクまで」
「うんうん。でも、あちらの人は、ヨガリ声も大きいから、口塞いでおかないとうるさくて仕方ないのかもしれないわよ?、ビデオの収録だと」
 シーナさまが笑いながらの相槌。

「せっかく綺麗なモデルさん使っているのに、真っ先に顔崩してどうする!? ってあたしなんか思っちゃいますけれど」
「欧米のエスエムは、ドミネーションアンドサブミッション、支配と服従だから、口答えの自由なんて真っ先に封じたいのかもしれないわね」
「もったいないなー、って、いつも思います」
「まあ、あちらだと、それが、正統派ボンデージ、っていう風潮があるみたいだからね。とくにラバーコスチューム系フェチにとっては、肉体すべてを覆って無機質になること、が最上らしいし」
「ああ、なるほどねー」

「このあいだ他の人と似たような話題をしたときに出たのだけれど、鼻フック、ってあるじゃない?鼻の穴に引っ掛けて豚鼻にしちゃうやつ」
「はい、わかります」
「あれってオトコの発想だよねー、って話になって」
「あれもあたしは、嫌いです。あんなの、何が愉しいんだろ?」

「女同士であれをすると、相手の顔を醜くしてやりたい、っていう、やる側の願望が露骨に見てとれちゃうから、責めている側が一回り小さく見えちゃう。嫉妬?コンプレックス?みたいな。それか、愛の無いエスエム、ただのイジメプレイ。単純に醜くなった相手を嘲笑するっていう」
「日本のエスエムは、一部を除いてイジメっぽいのがはびこっていますからね。愛のある責め、が一番見受けられる日本のフィクションて、たぶん女性作家が書いたボーイズラブの世界なんじゃないかな?薦められたのをいくつか読んだだけだけれど」

「まあ、でも、知り合いには、けっこう美人なのに、あの手のプレイを好むマゾ女もいるから、一概には言えないけれどね」
「へー」
「それが言うには、こんなに醜くされた顔を世間様に見られて恥ずかしい、っていう美人ゆえの自虐の愉悦らしいけれどね。ある意味高慢」
「ふーん。そういうのもあるのですね」
「わたしも、どうでもいい相手なら、全身拘束してボールギャグに鼻フックで鏡の前に放置プレイ、ってラクでいいな」
 シーナさまとお姉さまが、あはは、と笑いました。

「ところで直子さんは、エミリーの会社にお世話になること、決めたの?」
「えっ?あっ、えっと・・・」
 シーナさまとお姉さまのエスエム談義に、真剣に聞き入っていた私は、突然の話題転換に面食らってしまいました。

「一応勧誘して、資料渡して、返事は後日、ということになっています」
 お姉さまが代わって答えてくださいました。
「ふーん。直子さんは、迷っているの?」
 私をじっと見つめて、シーナさまが尋ねます。
「あ、いえいえ。ぜんぜん迷ってないです。お話を伺ったときから、お世話になることに決めていました」
 本心をありのままに、焦り気味早口でお答えしました。

「そう。よかった。エミリーの会社なら、わたしもたまに出入りしているし、わたしと直子さんとは、まだまだ友情を深められるというわけね」
「シーナさんには、海外のアパレルの動向や生地の買いつけなんかで、何かとお世話になっているのよ。このあいだもインドネシアからすっごくいい生地をひいてもらって」
「ああ、あれね。どんなドレスになるのか、楽しみだわ」
 お姉さまとシーナさまが仲睦まじく微笑み合います。
 そっか、おふたりには、そんな接点もあったんだ。

「だったらこれは、就職祝い、として渡せるわね。わたしから直子さんへの手切れ金かな?」
 冗談めかして笑いながら、シーナさまがネックレスケースのような大きめな紫のビロードの平たい宝石箱を取り出し、テーブルの上に置きました。

「最初に、上のメス犬用に、わたしのデザイン画を渡して現地の職人に作らせたの。そしたらその出来栄えがすごくいいから、ふと思って、直子さん用のもついでに作ってもらったの。冬に南アジアを巡ったときのお土産よ」
 シーナさまが天井に顎をしゃくりながらおっしゃっいました。
 メス犬というのは、このマンションの階上に住んでいらっしゃるお金持ちなマゾおばさまで、シーナさまのパトロンさん兼ドレイさん兼恋人さんです。

「ただ、これ作っても、わたしが直子さんにこれを使う機会は来ないとも思っていたのよ。百合様との約束があるから」
「でも、直子さんにちゃんとした恋人が出来る気配も無いし、わたしも使ってみたくてウズウズしてきて、百合様には内緒でこっそり使っちゃおうか、って考えていた矢先だったから、エミリー、あなた超ラッキーよ」

「それで、直子さんが選んだパートナーがエミリーだったおかげで、百合様との約束は破らずに、わたしもその場に立ち会えるというわけ。世の中って意外と上手くできているものね」
「うちのメス犬に使った感じだと、かなり具合いいみたいよ?ヒーヒー啼いて悦んでいたわ」
「でも直子さんの場合は、未知との遭遇だからねー。どうなるのかしら?」

 シーナさまの一方的な思わせぶりで謎だらけのご説明に、私とお姉さまの目は、ビロードの宝石箱に釘付けです。
 いったい何が入っているの?
 私たちふたりのワクワクな様子にご満悦な笑みを浮かべたシーナさまが、おもむろにケースの金具をパチリと外しました。


就職祝いは柘榴石 09


2014年10月26日

就職祝いは柘榴石 07


「はぁうぅぅっ!」
 パンパンに腫れ上がったおマメにキュッと吸い付いたクリットローターの強烈な刺激に、思わず腰がビクビクンと跳ねました。
 おマメを覆うカバーの内側には、ヘアブラシのようなケバケバがついていて、それが、充血し切って超敏感になっている表皮をザワザワと擦ってきます。
「あーんっ、いやぁー、だめぇー!」
 あっ、という間に天国への階段を駆け登っていきます。

 ブゥゥゥーーーン。
 悪魔のオモチャで抉じ開けられた穴の中には、ローターがふたつ、互いに身を寄せ合うように震えているので、その振動にプラスティック同士も共鳴して、びっくりするくらい大きな音となり、私の股間から淫らに鳴り響いてました。

「あーーっ、あーーーっ、あーーーーっ!」
 視界が閉ざされた暗闇の中だからこそ、他の四感が研ぎ澄まされ、中でも触覚が突出して敏感になっているようです。
 膣壁を擦るように震えるローターの振動が直接脳に響き、脳から全身へと快楽信号が伝達されていきます。
「イくぅぅ、イぃますぅ、おねえまさぁぁ、イきますぅぅ!!」
 お姉さまとのお約束通り叫ぶように宣言し、階段のてっぺんから身を躍らせました。
「んんーーーーーーっ!!!」

 一度イってからは、たてつづけに二度、三度、四度と小さくイって、最後に一番大きな絶頂感がやって来ました。
 頭の中が真っ白にスパークして意識が吹っ飛びます。
「イクっ、イクイクイクイグぅんぐうんぅーーーーーぐぅーーっ!!!」
 あまりの気持ち良さに、自分のからだが溶けて消えてしまったよう。
 五感すべても消え去って、残ったのは快感だけ。
 ヌメヌメの液体のようなからだで、そのまま快感の海をフワフワ漂いました。

 そんな至福の静寂も長くはつづかず、やがて、ブゥゥゥーーン、という低い持続音がフェイドインしてきました。
 再び、自分の窮屈な肉体を思い出します。
 私の脳裏には、さらに数倍も高い、天国への階段がそびえ立っていました。
 アソコへの物理的な陵辱はまったく緩むことなく、プルプルサワサワ私を苛んでいます。

「あうっ、んんんんぅー」
 さらなる高みに到達するために、再び一歩一歩、快感の蓄積。
 からだに四感が戻り、私は身悶え、喘ぎ始めます。

 このような、不自由に拘束されての強制的な連続オーガズム放置責め、を、私は今までに何度か体験していました。
 最初はシーナさまから、アイスタイマーあそびの一環として教わって、その後ひとりで何回かやってみて、より大きな快感が得られる方法を、自分なりに編み出していました。
 その方法とは、今、自分がこうしてみじめに拘束放置責めされている姿が、大勢の見知らぬ人たちの見世物にされている、と思い込むことでした。
 
 私の周りに何十人もの人たちが好奇の目を光らせて、その淫乱ぶりを観察している、という妄想。
 ケダモノのように何度も何度もイク姿を、見ず知らずのみなさまに視られてしまう、なんて、女性にとって何よりも浅ましく恥ずかしいことです。
 だから、なるべくはしたなく身悶えたり暴れたりせずに、出来る限りじっと、イキそうになってもがまんにがまんを重ねること。
 自分がヘンタイマゾ女であるということを、最後の最後まで隠すこと。

 そんな妄想で、被虐感や陵辱感、自分のみじめさや可哀相さをより高めると、否応なくからだに与えられ蓄積されていく物理的な快感との相乗効果となって、いずれどうしてもがまん出来なくなって迎え入れざるをえない絶頂時の快楽とカタルシスが、何倍にも、何十倍にも膨らむのです。

 最初の大きな波が去ったあと、そのことを思い出し、その妄想をしようと思いました。
 だけど、頭の中に思い浮かぶのはお姉さまのことだけ。
 敏感な箇所をノンストップで陵辱しつづけているローターたちの刺激も、お姉さまからの乱暴な愛撫と変換されていました。
 もはや、余計な妄想など必要無く、お姉さまを想いながら、感じるままからだに任せればそれだけで、妄想の力を借りたとき以上の快楽を得られるようになっていました。

「ああ、もうだめぇ、許してくださいぃ、お姉さまぁぁ」
 ひたすらがまんしつつ、被虐やみじめさをも感じて高まっていくのは妄想のときと一緒なのですが、妄想では得られなかった、ある種の幸福感さえも同時に感じながら、幾度も幾度もグングン昇りつづけました。

「ああっ、またくるぅ、きちゃう、イっちゃうぅ、おねえさまぁ!!!」
「だめぇ、もうだめぇ、いやいや、イちゃうぅ、おねえさまぁ、イきますぅ!!!」
「ごめんなさい、ごめんなさい、おねえさま、またくる、またくるぅぅんぐうんぅーーーーーっ!!!」

 何度イったのかわからないくらいの何度目かの天国の後、股間への振動がすべて止まっているのに気がつきました。
 からだはぐったり、意識は朦朧。
 うるさいくらいに聞こえていたローターの唸りも途絶え、しんと静まり返った中、自分のハアハア荒い息遣いだけが聞こえています。

 視界が無いので、自分のからだが今どんな状態なのかもわからず、とくに下半身を中心にジンジン痺れているのだけ、感じられました。
 意識がだんだんハッキリしてきて、興奮状態の全身の熱が、まず皮膚に戻ってきました。
 つづいて早鐘のような心臓の鼓動。
 汗やよだれに濡れているのであろう肌の感覚。
 棒枷に繋がれて自由に動かせない両方の手と足。
 そんなふうにひとつひとつ、現実の自分を認識していきます。
 天空から地上へと、徐々に舞い降りてくる感覚です。

「ぉ、お姉さま?」
 ローターたちが停止したのだから、きっとお姉さまが戻って来て、スイッチを止められたのだろう。
 それに、微かに我が家のシャンプーの香りもしたので、嬉しくなって声をかけました。
 でも、お返事はありません。
「お姉さま?戻られたのですよね?」
 気配のするほうへ顔を向けて発した私の声は、かなり掠れていました。

「あぅっ!」
 そのとき、突然私のアソコから、ふたつのローターが一緒にスポンと抜かれました。
「はぁうっ!」
 つづけてクリットローターが引っ張られ、おマメが伸びる感覚とともにスポッと抜けました。
「ああんっ、お姉さまのイジワルぅぅ」
 媚びるような私の声と同時に、明らかに人の指の感触で、再びおマメがつままれました。

「あうっ、お姉さま、そこは、そこはもう・・・」
 言い終わらないうちに、穴にも指が二本、挿入されました。
「あっ、いや、だめですぅ、お姉さまぁ、さっきいっぱいイったから、もう、もうぅ・・・」
 おマメはプニプニ弄られ、アソコの穴もおそらく二本の指でグリグリ掻き回され始めました。
「本当にもう、だめぇ、許して、ゆるしてくださぁいぃ、おねぇさまぁ・・・」
 言っていることとは裏腹に、性懲りも無く昂ぶり始めました。
 ローターではない、本物のお姉さまの指、お姉さまのいたぶり。
「あっ、お姉さま、もっと、もっとつよぉくぅ・・・」

 そのとき、今度は私の胸を、何かパラパラした紐状のものが撫ぜてくるのを感じました。
 これはきっとバラ鞭・・・

 えっ!?
 お姉さまってば、片手でアソコを嬲って、もう片方の手でバラ鞭を操ろうとされているの?
 下半身を嬲られる快感にグングン高まりながらも、必死に考えようとします。
 でも、クリットは間違いなく指二本に挟まれているし、アソコの中にも指が二本から三本、入っている感覚なのに・・・
 おっぱいを撫ぜるバラ鞭はユラユラ揺れて、両乳首の洗濯バサミをフルフル揺らしてきます。
 どういうことなの???

 クリットをつまむ指と、膣内を描き回す指のピッチが上がり、グングン昂ぶっていきます。
「あっ、お姉さま、イ、イキそうですぅ、いいっ、いいっ!」
 その瞬間、バラ鞭がパサッと、私のおっぱいを軽く打ちつけてきました。
「はうっ!いい、もっとぉ!」
 私の懇願とは裏腹に、バラ鞭の感触はおっぱいに戻りません。

「ほら、直子。イっていいわよ」
 唐突なお姉さまのお声は、私の股間のほうからでした。
「あっ!お姉さま!イキますっ、イってもいいですかぁ?」
「いいわよ、ほらっ!」
 クリットを爪で引っ掻かれました。
 ヒュンッ!
「あふぅっ!ぎゃぁっ!!」

 激痛がからだをつらぬき、全身がビクンビクン跳び跳ねました。
 お姉さまの、ほらっ、というお声を合図に、おマメにギュッと爪を立てられ、同時にヒュンという空気を切り裂く音とともに、鞭、おそらく乗馬鞭の切っ先が私の左乳首を噛んでいた洗濯バサミを弾き落としたのです。

「うんうん。いい啼き声だわ。瞬間、直子の膣がギュッと締まったわよ?こんなに無理矢理抉じ開けられているにも関わらず」
 お姉さまの愉快そうなお声は、相変わらず股間のほうから。
 そのあいだ乗馬鞭のベロが、ジンジン痺れて痛痒い私の左乳首を慰めるみたいに、サワサワ愛撫してくれていました。

「イったの?ねえ直子、今のでイった?」
 アソコを責める指は止めずに、お姉さまが尋ねてきます。
「あぅっ、え、えっと、イったような、ちがうような・・・んっ、んーっ・・・」
 あまりに唐突な激しい痛みに、瞬間すべてが真っ白く逝ってしまい、快感は間違いなく感じたのですが、自分でもよくわからない状態。
 からだはまだまだ、どんどん昂ぶっています。

「そう。でも大丈夫よ、もうひとつあるから。今度こそちゃんとイきなさいね?いい?」
「は、はい。お姉さまぁ・・・イ、イカせてくださいぃ」

 再びあの激痛がやってくる。
 唐突なのはもちろんですが、来るとわかっているのも、それはそれで怖いもの。
 あの痛みは、まぎれもなく快感でした
 だけど、出来れば何度も味わいたくない種類の激痛でもありました。
 恐怖と快楽は紙一重。
 左おっぱいの疼痛が薄れると、右おっぱいの洗濯バサミの疼痛に意識が集中して、ドキドキが止まりません。

「さあ直子、イクときはどうするのだっけ?」
「はい。お姉さま、イカせてください、マゾでヘンタイのどうしようもない直子を、どうか、どうかイカせてくださいぃ」
「ふふふ。からだが小刻みに震えているのは、気持ちいいからだけではなさそうね?」
 お姉さまの愉しそうなお声に覚悟を決めて、アイマスクの下でギュッと目をつむります。

 鞭を操っているかたの見当はついていました。
 こんなに見事に乗馬鞭を操れるのは、あのかたくらいしかいらっしゃらない。
 憶えのあるパフュームも微かに香っているし。
 でも、なぜ今日ここへ?

「さあ、イクわよ、さん、にー、いち、ぜろっ!」
 お姉さまの、ぜろっ、の掛け声でさらに目をギュッと強くつむると、ワンテンポ、いいえツーテンポ遅れて、ヒュンと鞭が鳴りました。
「ぎゃあっ、あぁーーーーーっ!!!」
 
 フェイント大成功。
 来るっ!と思ったら来なくて、あれっ?と思った瞬間、緊張が途切れた瞬間を、激痛が見事に襲いました。
 そのあいだ中、クリットが潰され引っ張られ、膣内は滅茶苦茶に掻き回され、弾け跳んだ洗濯バサミが転がる音に間髪入れず、バラ鞭がバシバシッとおっぱいを乱れ打ってきました。
 私のからだは、触覚がヘンになったみたく、どこもかしこも感じまくっていました。
 後から後から快感の波が全身に押し寄せてきます。

「あっ、あっ、まやイク、またイク、イっちゃうーーーっ!!!!」
「いやっ、だめっ、もう、もうっ、いやーーーっ!!!!」
「イクイクイクイクイクぅーーーーっ、くるくるくるくぅーーっ!!!」

 私の意識は、この日最大級の快楽の大波に遠くまでさらわれ、からだの機能もすべて失われ、今度はしばらく戻ってきませんでした。

「ごきげんよう。おひさしぶりね、直子さん。お元気そうで何より」
 目を開けると、アイマスクはすでにはずされていました。
 仰向けの私の視界に、覗き込むように私を見下ろすシーナさまのお姿がありました。

 シーナさまは、黒のエナメルっぽいビスチェと、同じ素材らしいTバックを身に着けていらっしゃいました。
 あとは、素肌に素足。
 こういうちゃんとした、と言うのもおかしいですが、本格的なボンデージファッションに身を包んだシーナさまを拝見するのは、ずいぶん久しぶりな気がします。

「ご、ごきげんよう、シーナさま。あの、えっと、お久しぶりです・・・」
 一応ご挨拶を返す私の姿は、赤い首輪に手枷足枷の全裸で仰向け。
 おまけに両足は棒枷で大きく広げられたまま、左右とも手首と足首を繋がれた超M字状態。
 さらにとどめで、アソコは相変わらず悪魔のオモチャでポッカリ抉じ開けられたまま。
 そんな私の姿を、シーナさまがニヤニヤ見下ろしていました。

「あたしが無理言ってお呼びしたのよ。いろいろアドバイスいただこうと思って」
 おそらく私が不思議そうな声を出したからでしょう。
 視界の届かないところからお姉さまのお声が聞こえ、やがてお姿も視界に入りました。

 お姉さまもシーナさまとお揃いのボンデージファッションでした。
 シャワー上がりらしく、いつもはサイドに垂らしているワンレングスをセンター分けして後ろに束ねたお姿は、とても知的で切れそうな感じ。
 ボンデージ姿とも相俟って、一段とクール、この場合は意味通りに冷酷、に見えました。

「これはエミリーのブランドの商品なのよ。私も出た頃一着作ってもらって愛用しているの。すごくいい感じよ」
「ありがとうございます。シーナさんにそうおっしゃっていただけると、あたしも一安心です」
 
 お姉さまがにこやかに、シーナさまの後ろに立たれました。
 お揃いのボンデージファッションの女王さまがおふたり。
 ふたりの女王・・・あれ?あっちは王女だったかな?・・・そう言えば、お姉さまのお見立てだとシーナさまは、月影先生だったな・・・

「だから、まあ、今日はそういうことなの。直子さんの所有権の移譲と、引き継ぎもろもろね」
 シーナさまがお姉さまを振り返り、おふたりで、うん、と頷かれました。
「それと、一応おめでとうも言いにきたのよ。直子さんにもやっと、ステディな恋人が出来たのだから」
「あ、ありがとうございます・・・」
 私はまだ、なんだかドギマギしながら、小さくお礼を言いました。

「それにしても、こんなに大歓迎されるとは思ってもいなかったわ。わたしがこの部屋に入るなり、直子さんはいやらしい声でイクイク喘いでいるし、そばに寄ったらオマンコ、こっちが恥ずかしくなるほど大きく開きっぱにしちゃっているし」
「こういうの、ネットでは、くぱぁ、って呼ぶのよね」

「エミリーがまだシャワー中だったから、しばらくそばで見ていたのよ?そしたら、アンアン喘ぎながらも、お姉さま、お姉さまって、ひっきりなしにエミリーのこと呼んでいて、お熱いったらありゃしない」
「こういうのはネットで、リア充爆発しろ、っていうのよね」
「あたしが見ていた限りでも直子さん、最低3回はイっていたわね。あ、あたしがまざってからのは除いてよ」

 シーナさまは、なぜだかネット用語の注釈を挟みながら、いつものイジワルなお声で私をからかってきます。
 その毒舌口調がニクタラシクも懐かしくて嬉しいのですが、反面、私への呼び方が、直子、から、直子さん、へ戻っているのに気がついて、一抹の寂しさも感じました。
 お姉さまを見ると、お姉さまはシーナさまと私を交互に見ながら、シーナさまのお話にニコニコうんうん頷いていました。
 シーナさまはお姉さまのこと、エミリー、って呼んでいるんだ・・・

「ま、とりあえず、一休みしましょうよ。直子さんもイキ疲れてぐったりしているようだし。わたし、美味しいアイスクリーム買ってきたから」
 シーナさまが、私とお姉さまのお顔を交互に見ておっしゃいました。
「そうですね。このあとの予定もありますし」
 お姉さまも賛成され、私を見てニッと笑いました。

「そうそう。このあと直子さんは、さらなる未体験の快感に打ち震えることになるのだから。夜はまだまだ、これからだもの」
 シーナさまが愉快そうにおっしゃって、録画装置に付いているデジタル時計のほうに視線を遣りました。
 私もつられてそちらを見たら、時刻は22時22分でした。


就職祝いは柘榴石 08