2010年12月18日

図書室で待ちぼうけ 10

土曜日の午前中。
私は、相原さんのお家へ行くのに何を着ていこうか、迷っていました。
相原さんは、火曜日の別れ際に、ジーンズではなくてスカートを穿いてきて、って指定してきました。
その言葉の裏には、二人でえっちなことをしようね、っていう意味が隠されているような気がします。

私にも、ある程度の覚悟は出来ていました。
相原さんのツルツルのアソコをさわらせてもらって、相原さんも私のからだをさわってくる・・・
私も裸にされちゃうのでしょうか?
いずれにせよ、くっつきあったりもつれあったりしちゃいそうです。
あまりヒラヒラしてるお洋服を着ていくと、しわくちゃになっちゃいそう。

いろいろ考えた末、薄めなデニムの膝丈フレアスカートに、ふんわりしたコットンの七分袖、前開きブラウスを合わせることにしました。
下着は、上下おそろいで水色のレース。
足元は、素足に裸足で低めのプラットフォームサンダル。
新しいお友達のお家に遊びに行く、と母に伝えたら用意してくれた、クッキーの詰合せが入った紙袋を持って、お気に入りの赤いショルダーポーチを肩からななめにかけて、お家を出ました。
6月にしては、カラリと晴れあがった青空が気持ちいい、過ごしやすそうなお天気です。
相原さんのショーツは、丁寧に手洗いしてから注意深くアイロンをかけて、きれいにたたんでポーチに入れてあります。

約束の時間の5分前にコンビニ前に着きました。
まだ相原さんは、来ていないみたい・・・
と思ったら、通りの反対側で信号待ちをしている相原さんをみつけました。
黒いセル縁のメガネをかけています。
あれ?相原さんって目が悪かったのかな?
なんて考えてると信号が変わり、相原さんが小走りに近づいてきます。
「お待たせー」
「ううん。私も今来たばっかり」
「あっ、ちゃんとスカート穿いてきてくれたんだ。そのブラウスと合ってる。森下さん、すっごくカワイイ」

相原さんは、浅いラウンドネックでなめらかそうなニットの、鮮やかなオレンジ色のワンピースを着ています。
半袖で、胸元から膝のちょっと上くらいの裾まで、10個くらいのボタンで留める前開きのワンピースです。
ウエストを同じ色の紐で縛っていて、腰から下はゆったりしていますが、上半身は、ややフィット気味。
胸元にだけ白くボーダーのラインが幾筋か入ったデザインなので、相原さんのたおやかなバストのふくらみが白いラインの凹凸で強調されています。

「相原さんて、目、悪かったの?」
私は、相原さんの胸のあたりにチラチラ視線を走らせながら、聞きます。
「ううん。これは度が入っていないファッショングラス」
そう答えてから、私の耳に顔を近づけてきました。
「わたし今、これの下は素肌なの。身に着けてるのはこのワンピ一枚だけ。ちょっと恥ずかしいから、ちょっと変装」
「このボタン、全部はずしたら即、オールヌード」
照れてるみたいに笑っています。
「こんな恰好で外に出るの初めて。すごくドキドキしてる」
そう言われて私は、どうしてもまた相原さんの胸のあたりに視線が戻ってしまいます。
「でもだいじょうぶ。私の家、ほんとすぐそこだから。さ、行こ」
相原さんが私の背中を軽く押して、さっき相原さんが渡ってきた横断歩道をまた戻りました。

相原さんのお家は、本当にすぐそばでした。
横断歩道を渡って、10メートルも歩かないところに建っている大きなマンション。
バレエ教室に行くとき、駅のホームからいつも見えている、駅前の高級マンションでした。
エントランスをカードキーで通過して、エレベーターに二人で乗り込みます。
相原さんがメガネをはずしました。
襟元のボタンを一つはずして、そこにメガネのつるをひっかけます。
相原さんの白い胸元が少し覗きます。
「あの監視カメラさえなければ、ここでもう脱いじゃって森下さんに見せちゃうのになあ」
エレべーターの天井に付いている防犯カメラを指さして、相原さんが冗談めかしてそんなことを言って、私を見て笑っています。
相原さんのお家は8階でした。

「誰もいないから、遠慮しないで。さ、どうぞ」
「おじゃましまーす」
玄関口で一応大きな声で言ってから、サンダルを脱ぎます。

玄関を入ると廊下がつづいています。
相原さんの先導でいくつかのドアを通り過ぎます。
うっすらとローズ系のいい香りがただよっています。
一番奥のベランダに面したところが広いリビングになっていました。
「広いお家ねえ。相原さんて、ご家族大勢いらっしゃるの?」
「ううん。うちはボシカテイ。母親とわたしだけ」
「えっ?あっ、ご、ごめんなさい」
「別にいいよ。気にしないで。ちょっとそこに座って待ってて」
リビングの中央にある柔らかそうなソファーを指さして、相原さんはダイニングのほうに消えました。

私は、ソファーに浅く腰掛けて、広いリビングを見回しました。
あまり物が置いてなくて、スッキリした感じの落ち着いた雰囲気です。
天井にある照明が豪華。
枠に複雑な模様が施してあって、金色にキラキラ輝いています。
窓が広く大きくとってあって、ここは8階ですから、少し開いたカーテンの向こうに見渡すばかりの青空が覗いています。
壁には何枚か、賞状のようなものが飾ってありました。

相原さんが銀色のトレイを両手で持って、戻ってきました。
「はーい。今日はいらっしゃいませえ。とりあえずケーキ、食べよう、ね」
イチゴの乗った美味しそうなミルフィーユと紅茶が入ったカップをテーブルに置いて、私の向かい側のソファーに座りました。
「ありがとう。美味しそう」
「それでは、いっただきまーす」

「わたしが小学校二年のとき、両親が離婚したの」
相原さんがフォークで慎重にケーキを削り取りながら話し始めました。
「原因が父親の浮気だったから、慰謝料やわたしの養育費でずいぶんお金もらえたみたい。父親の実家もお金持ちみたいだったし」
「わたしにとっては、普通に優しくていい父親だったんだけど、ね」
「それで、うちの母親はなんでだか知らないけど突然、占いの勉強を始めたの。通信教育で」
「そのうち、デパートの催事場とかの仕事が入るようになって、それなりに人気も出たみたい」
「その間も何人かの男とつきあってたはず。ちゃんと聞いたことないけど、ときどき家に知らないおじさんが何人か遊びに来てた」

「で、わたしが小学校六年になりたての頃、あるパーティで母親が、とある政治家と知り合ったらしいの」
「母親に口止めされてるから、森下さんにも名前は教えてあげられないんだけど、このあたりでは有名な人。年齢はけっこういってる」
「それからうちの母親は、その人専属の占い師になったの。表向きは秘書って肩書きだけど、実際は愛人」
「それまで東京に住んでたのだけれど、その政治家の地元に近いこの町に引越しすることになった。中学進学と同時に」
「それ、私と同じだ」
「森下さんも中学校からこの町なの?」
「うん。最初はクラスの誰も知らないから、不安で仕方なかった」
「それ、すっごくわかる」

「その政治家のコネで、うちの母親、最近はテレビにも出てるみたい」
「ほんと?すごーいっ!」
相原さんが教えてくれた相原さんのお母さまの芸名は、テレビをほとんど見ない私には、聞いたことあるような・・・って感じでしたが、すごいことは事実です。
「相原さんのお母さまがそんなにスゴイ人だなんて、私全然知らなかった」
「それはそうよ。わたし、こんなこと今まで誰にも話したことないもの。今初めてしゃべった。あと、うちの母親は別に全然すごくないし」
相原さんは、私の顔を見つめてニコっと笑いました。

「来週の土曜日に、その政治家の後援会のパーティがあるの。沿線の大きな街で。有名なタレントとか歌手とかも集まるらしい」
「わたしも連れて行くって母親は言ってるんだけど、気が進まなくて・・・」
「えーーっ?なんで?芸能人と一緒のパーティでしょ?そんなチャンス、めったにないじゃない?」
「そうなんだけどさ・・・なんだか、そういう人たちって無駄にギラギラしてそうで、苦手って言うか・・・」
「きれいなドレスとか、着せてもらえるんでしょ?いいなあ。憧れちゃう。絶対行ったほうがいいよ」
「ふーん。森下さんて意外とミーハーなんだ、ね」
相原さんがまた、ニっと微笑みました。

「ねえ、相原さん?」
「なーに?」
「余計なお世話だとは思うんだけど、相原さんはお母さまのこと、あんまり好きじゃないの?」
「・・・なんでそう思うの?」
「ずっとお母さまのこと、母親、って他人事みたいに呼んでるし、お母さまのお話してても冷めてるって言うか・・・」
「うーんと・・・ある意味正解かな。うちは、お互いに干渉しない、って言うか、無関心なの。お互いに対して」
「母親は、家に帰ってこないこともよくあるし。そういうときは、食事も掃除も洗濯もわたし一人でやってる」
「でも、母親のこと嫌ってるわけじゃない。わたしも一人でいるの好きだし。母親と二人でいるときは、それなりに普通の親子っぽいと思う」
「それに、うちの母親は、一人の女としてエライと思う。ちゃんとわたしを女手一つで、占い師なんていう水商売でここまで育ててくれたんだから。そこは尊敬している」

少しの沈黙。
二人ともケーキを食べ終わり、紅茶も飲み干していました。
「さ、一息ついたし、そろそろわたしの部屋へ行こう、ね?」
相原さんが立ち上り、ワンピースの胸元のボタンをもう一つ、はずしました。


図書室で待ちぼうけ 11

2010年12月12日

図書室で待ちぼうけ 09

その日の帰り道の話題は、相原さんがインターネットで見て印象的だった露出プレイの写真や動画のことでした。
もちろん、小さな声でひそひそと、です。

「普通に人通りが多い道路にある、ガラス張りの電話ボックスの中で着替えるの。セーラー服からスクール水着に」
「監督みたいな人がケータイで遠くから指示を出して、いったん裸になってから、よし、って言われるまで水着に着替えちゃいけないの」
「意外とそばを歩いてる人は気づかないみたい。でも車を通りに停めてじーっと見てる人とかもいたり」
「私はノーパンです、って書いた紙を背中に貼られて、繁華街を歩かされてる人もいた」
「ファミレスで胸をはだけさせられたまま食事をしたり」
「あと、クリスマスシーズンに前開きのサンタ服の下にハイレグのレオタード着て、繁華街でチラシ配りするんだけど、レオタードの乳首のところだけ穴開いていて、乳首だけ外に出ていたり」
相原さんは、ゆっくり歩きながら熱心に説明してくれます。

「そういうのを見ていると、そのモデルやっている女の人たちって、家族や知り合いにバレる心配はしないのかなあ、って最初は思ったのだけれど」
「でも、彼女たちが本当にそういうことをしたいのなら、それはそれでいいんだろうなあ、って」
「不特定多数の人たちの前で裸になるってことなら、タレントがヌード写真を発表するのも同じことだし、ね」
「普通は裸になっちゃいけないところでなるから、余計恥ずかしくてドキドキしちゃうんだろうな」

「もちろん、わたしは、まだそんなふうに割り切ることはできないから・・・」
ちょうど人通りが途切れたところで立ち止まり、相原さんはまわりをキョロキョロした後、私に向かってお尻を突き出しました。
「こうやって森下さんに見てもらうくらいが、ちょうどいいの」
スカートの後ろを自分でピラっとめくり上げました。
通いなれた通学路の見慣れた風景の中、西日を受けた住宅街をバックに相原さんの真っ白いお尻が私の目に飛び込んできます。
「ちょ、ちょっと、相原さん」
私のほうがどきどきして、私のほうがキョロキョロしてしまいます。
でも今日は、やめようよ、って言うほどびびってはいませんでした。
すっかり相原さんのペースに巻き込まれていました。

その後も相原さんは、人通りが無いのを見届けてから、頬を染めながら、電信柱や自動販売機の陰でコッソリとアソコやお尻を見せてくれました。

「ねえ、相原さん?・・・」
「うん?」
「そ、そこの毛がないと、どんな感じなの?」
私は、さっきお教室で見たときから聞いてみたくて仕方なかったことを、とうとう聞いてしまいました。
まったく毛が無くてツルツルな相原さんのアソコが、すごく綺麗でえっちに思えたんです。
「うーん・・・なんて言うかヘンな感じ。いつもよりもっともっとえっちな気分になる、って言うか・・・」
「自分でさわってるとすっごく気持ちいいの。ツルツルでスベスベで、小学生に戻ったみたい」
「ふーん・・・」
「だけど、これから夏だから、プール授業のときとか着替えに気をつけないと・・・誰かに見られたら絶対ヘンなウワサたてられちゃう」
「たぶん1ヶ月くらいで元通りになると思うから、9月の修学旅行はだいじょうぶと思うけど・・・」
私は、相原さんもやっぱりいろいろちゃんと考えているんだなあ、と思いました。

「ねえ、森下さん?・・・」
相原さんがひっそりした声で聞いてきます。
「うん?」
「さわってみたい?わたしのツルツルな、ココ・・・」
「・・・」
私は、少し迷った後、コクンとうなずきます。
ちょうど先週寄った公園への路地にさしかかったところでした。
私たちは、何も言わずにどちらからともなく手をつなぎ、公園へ向かう路地を曲がりました。

でも・・・
公園には先客がいました。
お買い物帰りらしい若めの奥様が三人、買い物袋を足元に置いて、桜の木の周辺でおしゃべりをしていました。
公園内では、その奥様たちのお子さんなんでしょう、4、5歳くらいの可愛い女の子が三人、スベリ台のまわりをはしゃぎまわっています。
私たちは、すごくがっかりして、それでも一応ベンチに並んで腰掛けました。

遊んでいた女の子たちがちょこちょこって近づいてきて、ニコニコしながら、
「こんにちわー」
って口々に挨拶してくれます。
私たちも、
「はいはいー。こんにちはー」
って返します。
相原さんが両膝に力を入れてピッタリ閉じて、警戒して座っているのがなんだか可笑しいです。

「ほらほら、なおちゃんたち。お姉さんたちのおじゃましちゃ、ダメでしょう?」
おしゃべりをしていた奥様のうちの一人が大きな声で女の子たちに注意しました。
ふいに、なおちゃん、と呼ばれて私は思わず返事しそうになってしまいました。
奥様三人が私たちのほうを見て、ニッコリ笑って会釈してくれます。
全員ちょっとお化粧派手めですが、キレイなお母さまたちです。
「はーい。それじゃあねえー。バイバイー」
女の子たちは、小さな手を振りながら、またスベリ台のほうに駆けていきました。
相原さんと二人、顔を見合わせてクスクス笑ってしまいます。
残念ながら今日の公園は、えっちなお話やアソビが出来る雰囲気ではありません。

相原さんは、女の子たちが去って、ようやく膝の力を抜いたようです。
「なんだか先週から、わたしの話ばかりしててごめんね。森下さんは休みの日、何してるの?」
「うーんと、本読んだり音楽聴いたり、バレエの練習したり・・・」
好きな音楽や映画や作家さんのお話を一通りしました。
私と相原さんは、意外と趣味が合うことがわかりました。

「川上さんたちと遊びに行ったりは、するの?」
「うん。たまに。ショッピングとか遊園地とか映画とか・・・」
「森下さんは、どんなファッションが好きなの?」
「やっぱりカワイイ系のが好きかなあ。でもお家ではたいがいシンプルなワンピース。外出するときは、動きやすいようにジーンズが多いかなあ」
「ふーん。森下さんの私服姿、見てみたいなあ」

相原さんは、ちょっと考えてから、思い切ったように言いました。
「ねえ森下さん?今度の土曜日は予定ある?」
「ううん。別に無いけど」
「よかったら、わたしの家に遊びに来ない?その日はちょうど母親も夜までいないし」
「わたしの家に来れば、CDも貸してあげられるし、インターネットも見せてあげられる・・・」
「土曜日かあ・・・行ってみたいけれど・・・ご迷惑じゃ・・・」

私は、迷っていました。
公園に来る前までのお話の流れから言って、相原さんのお家に行ったら、きっとえっちなことが始まる気がします。
相原さんがする分にはかまわないのですが、私も、ってことになったら・・・
どうしよう・・・
怖い気もするし、相原さんともっと親密になってみたい気もします。

考え込んでしまった私を相原さんは何も言わず、ずっと待っていてくれました。
私の隣に寄り添うように座っている相原さん。
相原さんも私の答えを待って、どきどきしているような気がしました。
ここで、このお誘いを断ってしまったら、相原さんとの関係もなんとなく終わってしまう気もしました。
それはイヤだな・・・
私は、行くことに決めました。

「それじゃあ、お邪魔しちゃって、いいかな?」
「ほんと?うれしい!」
相原さんは、不安がはじけたようにニコニコ笑って、私の手を握ってきました。
「美味しいケーキを用意しておくね。あと紅茶も」
相原さんが元気良くスクっとベンチから立ち上がりました。
手を握られたままの私も立ち上ります。

お別れの交差点までの道すがら、駅の南口のコンビニの前に午後一時半集合、って決まりました。
相原さんが信号を渡る寸前、また先週のように耳元に唇を寄せてきます。
「土曜日は、ジーンズじゃなくて絶対、スカート穿いてきて、ね」
私のからだをまたゾクゾクさせて、相原さんは横断歩道を渡っていきました。

帰り道。
何気なくブレザーのポケットに手を入れると、相原さんのショーツが入ったままでした。
返しそびれちゃった・・・
お家に帰って広げてよく見てみると、綺麗な薄いブルーで質の良さそうなシルクの可愛いビキニショーツでした。

その夜。
私がそのショーツを穿いて激しくオナニーをしてしまったことは、言うまでもありません・・・よね?


図書室で待ちぼうけ 10

2010年12月11日

図書室で待ちぼうけ 08

そんな私の衝動は、突然、廊下のほうから聞こえてきた、ソリャーーッとかフゥーフゥーッとかいう奇声と、ドドドドッと廊下を駆け抜けて行ったらしい数人の男子たちの足音に掻き消されてしまいました。
相原さんは、物音が聞こえた瞬間、さっとしゃがみ込んで机の陰に身を潜めました。

「まったく・・・バカ男子たちときたら・・・たぶんどっかの運動部の連中」
ようやく立ち上がった相原さんの服装は、ブラウスもスカートも元通りになっていました。
「でも、このスリルがたまらないのも、事実なんだけど、ね」
相原さんは、自分の席に座り直しました。
私も相原さんの前の席に腰掛けます。

「先週は、あれからもう、からだがどうにかなっちゃったみたいに疼いちゃって、森下さんとのこと思い出しながら、何回も何回もひとりえっち、しちゃった」
相原さんがえっち全開の艶かしい目で私を見つめます。
「森下さんは、ひとりえっち、したことある?」
「えっ!?」
私の頭の中がめまぐるしく高回転して、適切な答えを探します。

中三にもなって、えっ?何ソレ、知らない、って言うのもなんだか白々しいし・・・
うん、て素直にうなずいちゃうと、あれこれ追求されそうだし・・・
知ってるけど、したことないって言うのが無難かな・・・

私が黙ってうつむいてモジモジしていると、相原さんがつけ足しました。
「オナニーのこと、森下さんだって、その言葉くらい、知ってるでしょ?」
「う、うん・・・」
私は、うつむいたまま少しだけ首を縦に動かします。
「で、でも、知っているけど、ちゃ、ちゃんとしたことは、まだ、ない・・・」
私は、小さな声でそれだけ、言いました。
ブラの下で乳首が尖ってきていて、ショーツの下で少しずつ潤んできているクセに、とんだ嘘つきです。

相原さんは、しばらくそんな私を見ていましたが、ふいに視線を逸らして話題を変えました。
「この間は、わたしが春先に新しいアソビをしてみた、っていうところでチャイムが鳴っちゃったのよね?」
「・・・うん」
私は、ホっとして顔を上げました。
相原さんがニッコリ笑いかけてくれます。

「そのアソビっていうのは、女子トイレの個室に入って服を全部脱ぐこと、なの」
「休み時間の短い間に、個室に入って、ブレザーもブラウスもスカートも全部脱いで、ブラもパンティも取って、服を全部便器のふたの上に置いて、しばらく裸でその場にじっとしているの」
「最初はそこまでだったけど、すぐに靴下も上履きも全部いったん脱ぐことにした。正真正銘のすっぽんぽん」
「それだけで、なんだかすごく悪いこと、いけないことをしている気持ちになって、ゾクゾクしちゃうの」
「休み時間には、何人もの女子がトイレしに来るでしょ?外がガヤガヤしているところで、ドアの薄い木を一枚隔てたこっちで、自分がまっ裸で立っているのが、すごくコーフンするの」
「当然、わたしが入っている個室もトントンってノックされる・・・」
「そのたびに裸でコンコンってノックを返して」
「それで、しばらくしてからまた一枚ずつ服を着て、何事も無かったように個室を出て教室に戻って授業を受けるの。調子のいいときは、パンティだけ穿き忘れて」

「一度、あんまり長く入っていて外の女子たちに心配されちゃったことがあったの。何かここ、ずーっと使用中だよねえ、ってヒソヒソと。あのときは本当にドキドキした」
「マズイけれど、注目されていると出るに出られないからチャイムが鳴るの待って、次の授業にも遅れちゃった」
「人があんまり来なそうなときは、わざと鍵かけなかったり、1階や3階や体育館の女子トイレでやってみたり、刺激を求めていろいろ試した。先生用の女子トイレにも忍び込んでみたり」
「男子用のトイレでもやってみたかったんだけど、小学校の頃って、男子の誰かが個室使ったのわかると、バカみたいに囃し立ててイジメられてたじゃない?こいつ、学校で大きいほうしたー、って」
「中学男子がどうなのかは知らないけど、男子トイレで個室閉まっているとやっぱり目立つだろうなあ、って考えて、あきらめた」
相原さんがクスっと笑いました。

「でも、それもそのうち飽きてきちゃって・・・もっと刺激が欲しくなっちゃって」
「でも、誰かに見られたり、みつかってイジメられたりするのは絶対イヤだから、いろいろ考えて・・・」
「一般生徒の下校時刻になるまでは普通に学校内をうろうろして時間潰して、それから最終下校時刻までの間が人も少なくなって、意外と自由に遊べる、っていうことがわかったの」
「二年生のときにいた2階のトイレで、その時間に個室で丸裸になって、トイレ内に誰もいないようだったら個室の外まで出てきて、洗面台の鏡に自分の裸、映したり・・・だんだん大胆になってきた」
「運動部の人たちは、ほとんど校庭か体育館にいるし、文科系のクラブは専門教室か部室棟じゃない?普通の教室には、本当にほとんど誰もいないの」
「二年の終わりまでは、そんな感じで遊んでたの」
「わたし、前の三年生の卒業式の日も、二年の三学期の終業式の日も、一日中ずーっとノーパンだったんだよ。通知表もらうときも」
相原さんは、私の顔を覗き込むように見て、目をクリクリさせて笑いました。

「三年になって、この教室になって、ラッキーって思った」
「ほら、この教室、女子トイレにすごく近いじゃない?これは使えるな、って思ったの」
「しばらくの間、クラスメイトが遅い時間に教室に戻って来ないか、とか、先生たちが校内を見回るタイミングなんかを注意深く観察して、絶対だいじょうぶそうな曜日が、火曜日と木曜日だったの」
「4月の終わりに初めてやってみた。まず女子トイレに入ってパンティとブラを取ってから、また教室に戻ってきて、ブラウスはだけたり、スカートまくったりするの。一人で」
「窓のカーテンを少しだけ閉めて、その後ろに立ってブラウス脱いでみたり、全部脱いで裸になったり、教壇の下でひとりえっちしたり・・・」

「その次のときは、教室で裸になって、廊下に出て女子トイレに入ってみたり。その逆をやったり。もちろん裸になる前に教室にも女子トイレにも誰もいないことを確認してから」
「だから、服を脱いでいるときのわたしの耳は、すっごく敏感。どんな小さな音も聞き逃さないように」
「いつも自分のバッグに脱いだ服を入れて、それを持ちながら裸でうろうろしていたのだけれど、そのうちバッグは、教室に置いておいてもだいじょうぶかな、って思えてきて」

「先週の火曜日も、そんなアソビをしていたときのことなの」
「わたしがそこのトイレの個室に裸でいたら、森下さんがトイレに入ってきたの」
「個室に入っていたのに、なんで私ってわかるの?っていう顔をしてるわね?」
「あのとき森下さん、小さくハミングしていたでしょ?ビートルズの曲」
「えっ?そうだった?」
「うん。ペニーレイン。二年のときにも森下さんがハミングしてるの、何度か聞いたことがあった」
私の大好きな曲です。
「それで、森下さんが個室のドアを閉めたタイミングで私は、外に出たの。裸のまんま」
「廊下に出て、そのまま教室に戻るつもりだったんだけど、図書室のドア、開けっ放しだった」
「そーっと覗くと図書室には誰もいなかった。そう言えば森下さん、図書委員だったなあ、って思い出して。それでなぜだか図書室の中に入っちゃった」

「森下さんがすぐ戻ってきちゃったんで、わたしはあわてて奥に逃げ込んだ」
「そしたら、森下さん、電気消して帰ろうとするから、わたし、すっごく焦っちゃった」
「中からなら鍵は開けられるから、閉じ込められる心配はないけれど、明日の朝、図書室の鍵が開いていた、って騒ぎになったら森下さんに迷惑かけちゃうなあ、って」
「そしたら、また森下さんが戻ってきたから・・・」
相原さんは、そこで言葉を切り、私をまっすぐ見つめます。

「わたし、森下さんにみつけて欲しかったんだと思う」
私が何か言おうとしたところで、予鈴のチャイムが鳴り響きました。

「これから暑くなって、ブレザー着れなくなっちゃったら、学校でノーブラも出来なくなっちゃうなー」
相原さんは、ブレザーに袖を通しながらそう言って、ガタリと音をたてて席から立ち上がりました。


図書室で待ちぼうけ 09