2010年7月3日

グノシエンヌなトルコ石 03

「それじゃあ、少し質問していい?」
「・・・はい・・・」

カーテンを閉めて戻って来たやよい先生は、私の隣には座らず、キャスター付きの椅子をひっぱってきて私の正面にガラスのテーブルをはさんで座りました。
やよい先生のほうが私より、上半身分くらい高い位置です。
私はさっきから、やよい先生のノーブラ、タンクトップな胸が気になって仕方ありませんでした。
今は、目の前にある、短パンの裾から奥のほうでチラチラ見え隠れしている、日焼けしていない白い肌が気になって、気になって・・・

「うっうんっ!」
一つ喉を鳴らしてから、やよい先生がおもむろに尋問を始めます。

「あなた、今まで男の子との経験は・・・?」
そこまで言って、あ、そうだった!って顔になります。
「あるわけないわね。ごめん。あなた、男のアレがだめだったんだよね」
私は、小さくうなずきます。
「じゃあ、こういうのも、だめね?」
やよい先生は、椅子の背もたれにひっかけたビニール袋からなにやら取り出しました。
それは、男の人のアレを模した形の大きなバイブレーターみたいでした。
私の心臓がギュっと縮まります。
キレイなピンク色をしていましたが、私は、見た瞬間に、両目をぎゅっとつむり、顔を背けました。
「そうだよね。ごめんね。これは却下、と」
そう言って、またガサガサしています。
どうやら、椅子の背もたれのもう一方にかけてある、空っぽのビニール袋のほうに入れてくれたみたいです。
「もうだいじょうぶよ。こっち向いて」
私は、恐々と視線をやよい先生に戻します。
「なおちゃんのトラウマ、だいぶ重症みたいね。でもあたしは、それって嬉しいけど」
やよい先生がやさしく微笑みます。
すごくキレイな笑顔です。

「じゃあ、なおちゃん。あなたのアソコに、あなたの指以外、何を入れたことある?」
私は真剣に考えます。
「エンピツと・・・リップクリームの容器と・・・体温計と・・・バ、バターナイフと・・・」
「バターナイフ?」
「は、はい。ひんやりして、気持ちいいかな?って・・・」

「あ。あと小さい楕円形のやつで、電池でぶるぶる震えるやつ・・・」
「ローターね。あなたそんなもの、持ってるの?」
「いいえ・・・」
私は、恥ずかしさに震えながら、中学三年前半に経験した同級生の相原さんとのことを、正直に告げました。
「そっかー・・・なおちゃん、初レズじゃないのね・・・ちょっと残念・・・」
「ご、ごめんなさいっ!」
私はあわてて、またうなだれます。
「だからー、いちいち反応しなくていいからさー」
やよい先生が笑いながら言ってくれます。
「指は何本?」
「さ、三本まで・・・」

少しの間、思案気な顔だったやよい先生は、私に顔を近づけて、ひそひそ話のような声で聞いてきました。
「なおちゃん、SMって、知ってる?」
「は、はい・・・。痛くしたり、恥ずかしい格好したり、させたり、縛ったり、縛られたり・・・」
クーラーは良く効いているのに、私のからだは、ぽかぽかしています。
シャンパンがまわってきたのかも・・・でもぜんぜん眠くはありません。
「なおちゃん、よく知ってるねー。で、なおちゃんは、S?それともM?。苛めたい?苛められたい?」
「えっと・・・。た、たぶん・・・エ、Mじゃ、じゃないかな?・・・」
「そうだよね。良かったー」
やよい先生がにこにこ笑っています。

「あたしの今のパートナー、ドMなのよ」
「だから、あたしも期待に応えられるように日夜勉強してるの」
やよい先生は、おどけるような口調でつづけます。
「秋から冬にかけて、ちょっと寒くなったら、あたしと外で逢うときは、いっつもコートの下は裸なの。見せたがりのクセに恥ずかしがりや・・・」
「自分でおっぱいと、アソコをロープで痛そうに縛ってきて」
「で、コートのポケットは、いつもあたしと腕を組む右側だけ、穴が開いているの。あたしがいつでもアソコをさわれるように、って。全部のコートがだよっ!」
「・・・そういうの見てると、すっごくかわいいなあ、この子、て思うのね・・・」
「あたしもずいぶん、縛るの上手くなったわ・・・」

やよい先生は、愛おしそうに、目をつぶります。
私は、いいなあー、って、うらやましくなります。

「あっ。あたしの話は、まあいいや」
照れているやよい先生の顔が、カワイイです。

「で、なおちゃんは、縛られたいって、思う?」
「は、はいっ!」
「痛いのは、だいじょうぶ?」
私は、洗濯バサミを、自分の腿やおっぱいにはさんでオナニーしてること、でもまだ乳首には、工夫してゆるくした洗濯バサミでしかはさめないこと、ネットでいろいろ読んで妄想してることを、正直に、たどたどしく、告白しました。
「ふ~ん・・・そうやってオナニーしてるんだ・・・」
やよい先生は、ふんふん、とうなずきながら私を見おろしています。

「あと、なおちゃん、お尻は?」
「え、えっと、ちょっと苦手・・・かな?」
「お尻の穴になんか入れたこと、ある?」
「い、いいえ・・・」
「入れてみたいと、思う?」
「えーと、す、すこしだけ・・・」
「ふ~ん・・・」
やよい先生が、少し黙り込みます。
私は、あわててつづけます。

「でもでも、今日ここに来る前に、お家のトイレで小さいお浣腸してきました。だ、だからキレイだと、お、思いますっ!」
「なおちゃんて、マゾの鏡ね。すごくいい心がけっ!」
「でもでも私、あんまりお浣腸とか好きじゃないんです。がんばってがまんしてるときとか、がまんしてがまんして、やっと出すのは気持ちいいんだけど、なんか後に、あのにおいがお部屋にこもっちゃって・・・」
私は、初めて自分のお部屋でお浣腸をして、がまんできずに、ビニールシートの上に漏らしてしまった日を思い出していました。
「じゃあ、なおちゃん、自分でときどきやってるんだ」
「は、はい、誰かの前でやったことはないですけど・・・」

「お家に一人のとき、お風呂場でやることは、たまにあります。すごく気持ちいいんだけど、やった後のにおいがイヤで・・・なんかえっちな心が萎えちゃうんです。だから最近はぜんぜんしてません・・・」
「なるほどね。確かにそれはあるよね。下手にこぼしちゃうと、現状復帰するの大変だし・・・」
「でもね、あんまりにおい残さないやり方も、あるには、あるんだけどね」
「でも確かにあたしも最近は、家のバスルームか、どっかのラブホでしか、そういうプレイ、してないなあ・・・。ねだられなきゃ、やんないし・・・ほんと、後始末が萎えるんだよねー」

「じゃあ、お尻にちょっと何か挿れるのくらいは、おっけー?」
「は、はい・・・」
私は真赤になって、モジモジしながら、答えました。

「わかった。だいたいのプランがまとまったわ」
やよい先生が言いました。
「じゃあ、あっちの部屋でこれに着替えて」
何か柔らかいものが入った小さな紙袋を渡されました。
「本当は、あたしの目の前で一枚ずつ脱いでもらおうかと思ってたんだけど、なおちゃんの、そのきれいな私服、汚しちゃったら悪いからね」
私はちょっとがっかり。

「それからね」
やよい先生が私の目を見ながら、つづけます。
「これから、なおちゃんといろいろするんだけど、その途中であたしが、怖いこととか、乱暴な言葉とか、下品な言葉を使うと思うの」
「あと、なおちゃんがイヤがっても、かまわずに痛くしたり、乱暴に扱ったりもするかもしれない・・・」
「でもね、それは、あたしがなおちゃんのこと大好きだからなの」
「だから、なおちゃん。あたしの言葉とか、いちいち真に受けて考え込んだりしないでね。なおちゃん、素直だから・・・」
「これからやることは、全部ゲーム。二人で気持ち良くなるためのゲームなの」
「SMってね、お互いにしっかりした信頼関係がないと、成り立たないの。SとMの信頼関係がなかったら、それはただのイジメ」
「それで、これから今日一日、あたしはご主人様で、なおちゃんは、なんでも言うことをきかなきゃいけない奴隷ね」
「だいじょうぶ。なおちゃんが本当にイヤがることは絶対しないから。あたしがするのは、なおちゃんがして欲しがってることだけ」
「わかった?」

私は、真剣に大きくうなずきました。

「そう。じゃあさっさとあっちの部屋で、着替えなさい」


グノシエンヌなトルコ石 04

グノシエンヌなトルコ石 02

私に汗を拭くためのタオルを渡しながら、やよい先生がつづけます。

「せっかく、なおちゃんが来るんだから、いつもの部屋のままにしておこうって思ったんだ」
「ってゆーか、この大好きだった部屋の最後の思い出が、なおちゃんと、ってことが、すっごく嬉しいんだ」
「もちろん、あたしのパートナーは、明日からもしょっちゅう来るけど、ね」

「つまりね、あたしもなおちゃんのこと、ずっと前から、気になってたんだ・・・うん。本当に」
「いつか、二人きりで、その、遊びたいな、って思ってた・・・」
「片付けなんて、来週の頭から、ささっとやれば、ぜんぜん間に合うし・・・」
やよい先生は、言葉を選びながら丁寧に説明してくれました。
私は、すっごく嬉しい気持ちになりました。

「ふー。クーラーつけっぱなしで出かけて良かった。このクーラー、一回消すとなかなか仕事再開しないから・・・ちょっとそのへんに座ってて」
やよい先生は、ダイニングのほうに大股で歩いて行きます。
そのへんと言われて、きょろきょろすると、前にガラスのテーブルが置いてある柔らかそうな黒い大きなソファーがあったので、そこに失礼して、端っこに浅く腰掛けました。
「お腹は空いていない?」
遠くから声がします。
「はい。食べてきましたから」
私も、大きな声で返事をします。
遅い朝食を食べてから出てきたので、本当のことです。

「はい。あらためて、いらっしゃいませー」
やよい先生が、お盆に何か飲み物とグラスとお菓子を乗せて、戻ってきました。
「もっと真ん中に座りなさい」
私のウエストに手をやってソファーの中央までずるずるひきずってから、私のすぐ横に座りました。
「お、おじゃましてまーす。 あ、これ、母からよろしくと」
私は、ウエストに手をかけたままピッタリと寄り添ってくるやよい先生にどぎまぎしながら、アイスクリームの袋を渡しました。
「わ。これアイスじゃん。うれしー。開けてみよう!」

ワイワイ言いながら、やよい先生はチョコ味、私はヨーグルト味を選びました。
やよい先生が持ってきた飲み物を手に聞いてきます。

「えーと、なおちゃん。あなた、お酒は飲んだことは?」
「・・・たぶん、すごく弱いと、思います」
パっと浮かんだ、昔の思い出を振り払いながら、答えました。
「ってことは、飲んだことはあるのね。じゃ、だいじょうぶね」
「・・・」
「これはシャンパン。うーんと・・・ワインを炭酸で割ったようなもの。ほら、よく外国の映画で、なんかいいことあると、スポーンって栓が飛ぶお酒でカンパイしてるでしょ?あーれ」
「そんなにアルコール分強くないから、たぶん、なおちゃんもだいじょうぶ。飲もっ!」

やよい先生がシャンパンの瓶を持って、慎重に栓を止めているワイヤーをゆるめていきます。
「じゃあ、いくよ、なおちゃんっ!」
言うや否や、瓶の栓のところを二人が座っている場所から一番長い距離がある、玄関のドアの上ほうに向けました。
栓を抑えていたやよい先生の指がはずれると同時に、シャンパンの栓は、ポンって、すごく大きな音をたててヒュンって飛んでゆき、玄関ドアの上のほうにコツンと当たって落ちました。
同時にシャンパンの飲み口からシュワシュワと泡が溢れ出てきて、やよい先生があわてて唇で塞ぎます。
「きゃはははは~」
私は、なんだかすごくそれがおかしくて、大きな声で笑ってしまいました。

やよい先生が、小さなグラスにシャンパンを注いでくれます。
二人でグラスを持って高く掲げます。
「それでは、あたしとなおちゃんの初めてのお泊りデートに、カンパーイ!」
おどけた大きな声で言います。
「カンパーイッ!」
私も負けずに大きな声で言いました。

美味しいーっ。
ずっと前に飲んだ白ワインより甘くてシュワシュワしてて、すごく美味しい。

二人でアイスをスプーンで舐めながら、さっき車の中でしていたお話のつづきを、また面白おかしくやよい先生がしてくれます。
私は、声を出して笑いながら、聞いています。
やよい先生は、カンパイの後は冷蔵庫から出してきた白ワインに切り替えて、ちびちび飲んでいます。
私のグラスが空くたびに、シャンパンを私のグラスに注いでくれます。
小さな瓶でしたが、とうとう私が全部飲んでしまいました。
でも眠くなる気配もないし、なんだかどんどん楽しい気分になっています。

「ねえ、なおちゃん。そのシャンパン、すっごく高いの、知ってる?」
「えっ!?」
私はまた、不安そうな顔になったんだと思います。
「あ。違うの、そういう意味じゃなくて・・・」
やよい先生があわてて言いました。
「つまり、そのシャンパンを開けるのは、あたしがすごく好きな人が来たときだけ・・・」
「今日、なおちゃんが部屋に来てくれて、あたし、すごくワクワクしてるの。ね。わかるでしょ?」
私は、なんて答えればいいか、どぎまぎしてわかりませんでした。

「それで、どうする?もうちょっと暗くなるまで、まったりする?映画でも見よっか?」
「・・・」
「それとも・・・すぐ、はじめて、みる?」
私は、コクンとうなずきました。

「そうね。早く始めれば、いっぱいできるもんね。暗くなきゃ、暗くしましょう、ほととぎす・・・」
やよい先生は、なんだかヘンなことを言ってソファーを立ち、部屋中のカーテンを全部閉めてから、お部屋の電気を夏の夕方くらいの暗さに調整しました。


グノシエンヌなトルコ石 03

2010年6月27日

グノシエンヌなトルコ石 01

私が初めて、本格的な『レズビアンSM』 を体験したときのお話です。

お相手をしてくれたのは、私が中学一年のときから通っていたバレエ教室で、私のレッスン担当講師だった、百合草やよい先生。
他の生徒さんたちは、ほとんど『ゆり先生』 と呼んでいましたが、私はずっと『やよい先生』 と呼んでいたので、ここでもその名前で呼ばせてください。

やよい先生は、私が中二のときに遭遇したある出来事で男性恐怖症みたいなことになってしまったとき、親身になって相談相手になってくれました。
その出来事や、その後のあれこれについては、あらためて読んでいただこうと思っているので、ここでは、やよい先生のかんたんなプロフィールだけ。

年齢は、当時たぶん20代中頃か、ちょっと上?
ごめんなさい、聞いたことありませんでした。
身長は、普通。
たぶん160センチいかないくらい。
今の私と同じくらい。
髪は、耳が隠れるくらいのベリーショート。
目が大きくてぱっちりしていて睫も長め、口も大きめ。
ちょっと上向きでぽってりした上唇が肉感的。
エキゾチックな感じがする超美人さんです。
なんて言うか、美少女というより美少年、っていう顔立ちでした。

からだは、全体に細め。
でも、レオタード姿になると、出るところはバランスよく出ていました。
腕や脚の筋肉もゴツゴツしているんじゃなくて、しなやか。
つまり、プロポーションがすごく良くて、背は高くないのに、スラっとした印象。
とくに、踊り始めると、その動きの一つ一つが優雅でありながら迫力もあって、しなやかで、実際の背の何倍も大きく見えました。
私たち生徒にも、気さくに接してくれて、すごく頼りになるお姉さんという感じ。
私はいつも、尊敬と憧れの目で、やよい先生を見ていました。

そして、やよい先生は、真性のレズビアンでした。

そんなやよい先生が、バレエの講師の仕事をやめて、パートナーの人と一緒に東京でお酒を飲ませるお店をやることになりました。
やよい先生との最後のレッスン終了後に、私は一人で講師室を訪ね、特別にお願いして、この町を出て行く前に二人だけで逢う約束をもらいました。
その日付は、私が高校二年の夏休みに入ったばかりの、金曜日のことでした。

私は、やよい先生のお部屋に向かうために、電車に乗っています。
良く晴れた、とても蒸し暑い夏の真昼。
冷房は苦手なほうなのですが、効き過ぎな感じもある電車のクーラーが、今は気持ちいいです。
私は、お土産に、と母が用意してくれたアイスクリームの詰め合わせとドライアイスの入ったビニール袋を片手に、一応、着替えなど、お泊りセットを入れた小さなボストンバッグを、もう片方の手に持って、窓際に立っていました。
電車は空いていて、座ろうと思えば座れますが、なんか心臓がどきどきしているので、外の景色を眺めていようと思ったんです。

母もやよい先生には何度も会っているので、今日最後の思い出にお泊りに行く、と告げると、
「ご迷惑おかけしないようにね。バレエがじょーずに踊れるコツを、じっくり教えてもらいなさいね」
って、笑って送り出してくれました。

私が住んでいる家の最寄の駅から3つめの駅が、このあたりでは一番栄えているターミナル駅。
そこの駅前にバレエ教室があります。
その駅を通り越して、二つめの駅が、今私が通っている女子高。
そのまた二つ先の駅が、やよい先生の住んでいる町です。
駅の改札を出たところで、やよい先生と待ち合わせしています。

約束の時間の10分くらい早く着いて、改札を出ます。
照りつけるお日様を避けるために、駅の屋根がある日陰で文庫本を読んでいると、約束の5分前に、やよい先生が私をみつけてくれました。

「今日は、あっついねーっ。相変わらず、なおちゃんは真面目だねえ。まだ5分前だよ」
やよい先生が、明るく声をかけてくれます。
「あっ、先生。今日はよろしくお願いします」
私は、あわてて頭を下げます。
「うん。まあね。それより暑すぎっ。さ、早く車に乗って」
そう言って、やよい先生は、たったったった、と駆け出しました。
私もあわてて後を追います。

迎えに来てくれたやよい先生の格好は、おへそが出てるカラフルな縞柄のピチピチタンクトップ、たぶんノーブラ、に、マラソンの選手が履くような薄手の短パンで、素足にぺったんこのサンダル。
長くて細い手足が軽快かつリズミカルに走っていきます。
少し日焼けしています。
すごくカッコイイです。

今日の私の格好は、濃いブルーのシンプルなデザインでウエストから下がざっくりとした膝丈のノースリーブワンピース。
そして白い綿のつばが広い日除け帽子。
ワンピースは、背中のジッパーを下ろして肩紐を両方はずせば、すぐパサっと下に落ちてしまうでしょう。
これは、脱ぎやすくて、すぐ裸になれるように、と選びました。
下着は、シンプルな白レースのブラとショーツ。
あと、素足にヒール低めな白いサンダル。

やよい先生の愛車は、駅の近くにエンジンをかけたまま路駐していました。
色は真っ赤、小さめで丸っこい、なんだか、かわいい感じの車でした。

クーラーの良く効いた車の中で、やよい先生は、お店を開くことが、いかに急に決まったか、それからお引越し先決めるまで、いかにあたふたしたか、を面白おかしく話してくれました。
私は、大笑いしながら、黙って聞いていました。
車の中ではずっと、レゲエっぽい、ゆったりしたリズムな外国の曲が低く流れていました。

車をマンション地下の駐車場に入れてから、エレベーターでやよい先生の部屋に向かいます。
エレベーターの中で、やよい先生が私に聞きました。

「なおちゃん、なんか無口ね。緊張してるの?」
「は、はい・・・少し・・・」
「怖いの?それとも楽しみで?」
「どっちも・・・です・・・」
「あは。だいじょうぶ。心配しないで。あたしがちゃんとやって、あ・げ・る・っ」

やよい先生の部屋は7階でした。
「このマンションでは一番上。この部屋の窓から見下ろすこの町の景色、すごくキレイで、せつなくて、あたし、かなり気に入ってたんだ」
やよい先生が、ドアに鍵を挿しながら、ぽつんと言いました。

「お掃除しといたから、裸足でどうぞ」
やよい先生のお部屋は、私が根拠もなく予想していた通り、シックな感じの色調でまとめられた、2LDK。
家具や調度品、壁の色、床のマットが、バランス良く純白とグレイと茶と黒、それにシルバーとゴールドでまとめられていて、いかにも大人の女の部屋、って感じです。
フローリングのリビングには、日当たりのいい大きな窓が2箇所あって、そこにかけられているカーテン、今は左右にタッセルでまとめられています、だけ、鮮やかだけれども落ち着いたグリーン、まるで快晴の日に見上げた森の木々の葉っぱの色。
やよい先生、センスいい。
部屋に香っている芳香剤も、ナチュラルな感じのネイチャー系。
リラックスできる香りが、そこはかとなく漂っています。

やよい先生は今月末には、ここを出て行くと聞いていましたから、お引越し準備の真っ最中で、部屋の中もごたごたかな?みたいな予想をしていました。
そんな中に、無理にお願いしてお泊まりにいくのは悪いかな、って思ってました。
そう正直に伝えると、やよい先生は、

「ほんと、なおちゃんはやさしいねえ。あたしも、何もなかったら、さっさと片付け始めるタイプだから、そう考えてたんだけどさ・・・」
「ご、ごめんなさい・・・」
やっぱり、と思い、私はうなだれます。
「そうじゃなくてね。ほんと、なおちゃんは素直だなあ・・・」


グノシエンヌなトルコ石 02