2021年10月3日

肌色休暇二日目~いけにえの賛美 12

「直子ちゃんにシャワーを急がせたのは、受け持ってもらいたいお仕事があるからなのよ」

 ニヤニヤ笑顔の中村さまが立ち上がりつつおっしゃいました。
 中村さまと同じような笑顔のお姉さまが中村さまのお隣に並ばれ、私をじっと見つめつつ不自然なくらい大げさにご自身の顎を上にしゃくられました。

 ドキン!
 お姉さまからその合図をされたら、私は服従ポーズを取るしかありません。
 恥ずかしさで顔が上気してくるのを感じながらヴィーナスの誕生ポーズだった両手をゆっくりと外し、いったんお腹の前で両手を組んだ後、両腋を徐々に開いて後頭部へ。

 全裸のなにもかもを剥き出しのままみなさまの眼前に。
 お姉さま以外のお三かたのお顔が、一様に唖然とされたお顔に変わります。

「直子にジョセフィーヌのお散歩係を受け持って欲しいそうなの。ここに滞在させてもらっているあいだ、ずっとね」

 中村さまが覗き込まれていたビニールバッグの中から、何か青くて丸い円盤状のものとワンちゃんのリードらしき紐を取り出されたお姉さま。
 円盤状のものを団扇のようにパタパタ揺らしながらつづけられます。

「朝の8時前と夕方の今頃、つまり5時半くらいの一日二回。明日と明後日、つまりあたしたちがおいとまするまでね」
「今日の当番は中村さんだそうだから、最初だけついて行ってくださるって。それで手順を覚えて、明日からはひとりで、ね」

 私の首輪にリードを繋いでくださるお姉さま。
 リードはあるじさまが使われていたのと同じような縄状ロープでしたが、あるじさまのよりも長めで、持ち手が私の脛のところくらいまで垂れています。

 それからお姉さまの手に導かれて服従ポーズが解かれ、右手に渡された青い円盤。
 近くで見てわかったのですが、それはプラスティック製のフリスビーでした。
 滑らかな表面のあちこちに小さな凸凹、たぶんジョセフィーヌさまの歯型、噛み痕でしょう。

「それじゃあさっさと行こうか」

 中村さまがビニールバッグを手に取られ、私を見ます。
 えっ!?あの、ちょ、ちょっと待って…

「あの、あの私、私は、裸のままで、ですか?…」

 私のリードを掴もうと伸ばされてきた中村さまの手より一瞬早く、自分の右手でリードの途中を握って後ろ手に隠します。

「大丈夫よ。ここら一帯は私有地だから一般の人は入って来れないことになっている、って教えたじゃない?」

 お姉さまが、忘れちゃったの?とでもおっしゃりたげなお顔で、私の顔を覗き込んでこられます。

「でもでもあるじさまが、郵便屋さんや宅配便屋さんがいらっしゃることがある、って…」

 全裸でワンちゃんとお外をお散歩する、という行為は露出マゾの私にとって凄く刺激的で魅力的な冒険なのですが、初めて訪れた知らない土地ですし、お姉さまもご一緒してくださらないようなので、生来の臆病が顔を出して怖気づいてしまっています。

「あるじさまって?ああ、先生のことか。配達の人たちは、ここがそういう屋敷だって知っているから、もう慣れっこになってるし、そもそも今日はもう郵便、来てるよ」
「それにもし万が一、知らない誰かに絡まれたとしても、ジョセが守ってくれるって。あの子ああ見えて、不審な人物には敏感で、人が、じゃなくて犬種が変わったみたいに獰猛になるから」

 焦れったそうにおっしゃる中村さまの背後から、寺田さまが近づいていらっしゃいました。
 一見、エプロンの下に何も着ていらっしゃらないように見える妖艶な寺田さま。
 おそらくあるじさまの助手をされていたときに召されていたレオタードのままなのでしょう。

「でもまあ直子ちゃんが尻込みしちゃうのもわかるわ。今日来たばっかりだし、この屋敷の周辺がどんな感じなのかも知らないでしょうし」

 おやさしくおっしゃりながら、着けていたエプロンの紐を解き始められました。

「だから今日はこれを貸してあげる。真っ裸で出るよりも、いくらか気分も落ち着くでしょう?」

 外したばかりのエプロンを私に手渡してくださる寺田さま。
 私の予想は外れて着替えていらっしゃいました。
 エプロンを取られた寺田さまの着衣は、黒のキャミソールにデニムのショートパンツ、変わらずのナイスバディなボン・キュッ・ボン。

「悪いわね、うちの直子がわがままで。ほら、直子、裸エプロンも大好きでしょ?ちゃんとお礼をなさい」

 お姉さまのニヤニヤ笑いが止まりません。

「あ、はい。ありがとうございます…」

「あたしが紐を結んであげる」

 お姉さまが私の素肌にエプロンを纏わせ、首後ろとウエストの紐をきつく結んでくださいました。
 布地にうっすらと寺田さまの体温がまだ残って生温かい。
 エプロンの丈は私の太股半分くらいまで、胸当ての左右から横乳が三分の二くらい覗いています。
 もちろんお尻は丸出し。

「あら可愛い。そのままメイド喫茶で働けるわね」

 からかうような寺田さまのお声。

「ほら行くよ。たぶんもうジョセが焦れて玄関の外で待ってる」

 中村さまがあらためて私のリードを手にされ、グイッと引っ張られます。
 どうやら有無を言わさずこの格好でお外に連れ出されるみたい。

「直子?フリスビーは剥き出して持っていてね。それで空いている手でそのバッグを持って」

 中村さまにご指示され、何やらごちゃごちゃ詰め込まれているビニールバッグを手にします。
 中村さまからも呼び捨てに変わりました。
 そんな中村さまは片手に私のリード、もう片方の手にはお姉さまのハンディビデオカメラ。

「あ、ちょっと待って。ジョセのおやつは入っているけれど、直子用のおやつも入れてあげなきゃだよね」

 寺田さまが出てこられたドアの向こう側に優雅なお足取りで消えられ、すぐに戻っていらっしゃいます。
 手にされた黄色いバナナ三本が連なった房が、私が提げたビニールバッグの一番上に乗せられました。

 意味有りげにお顔を合わせられ、ニッと小さく笑い合わられるお三かた。
 中村さまが玄関方向へと一歩踏み出され、私の首輪も同じ方向へと引っ張られます。

「いってらっしゃーい。気をつけて、ごゆっくりー」

 明らかに愉しまれているお姉さまと寺田さまのお声を背中に聞きながら、ホールを抜けて玄関口へと出て、スリッパからサンダルに履き替えました。

 外開きの扉を開けた途端に、力強く、ワンっ!のひと吠えが。
 ジョセフィーヌさまが尻尾ブンブン、お口ハアハアで待ち構えていらっしゃいました。

 お外は陽射しがずいぶん弱まったものの、まだまだ充分な明るさ。
 裸エプロンがちょうどいいくらいの暑くもなく寒くもなく。
 そよそよそよぐ風が素肌に気持ちいい夏の夕方。

 ジョセフィーヌさまはまず、中村さまのお足元を嬉しそうにグルグル回られてご挨拶。
 それから私のほうを見遣り、持っていたフリスビーに気づかれたのでしょう、尻尾の揺れが一際激しくなられました。

 リードに引かれた私のもとへと飛びかかってこられるジョセフィーヌさま。
 白いエプロンの胸元に前肢をお掛けになり、爪先立ちで私の顔を舐めようと長い舌を伸ばしてこられます。
 
「あぁんっ…」

 それから今度は私の背後に回られ、足元にまとわりつくようにおからだ擦り寄せつつ、剥き出しの背中やお尻をペロペロ舐めてこられます。
 
「そうよジョセ、今日からしばらくはこの人がおまえの遊び相手。仲良くなれるといいね」

 私の数歩先を歩かれつつ振り向かれた中村さまが、ジョセフィーヌさまにそんなふうにお声掛け。
 その右手のお姉さまのビデオカメラのレンズが、私とジョセフィーヌさまに向いています。
 玄関先の庭園を抜け、間もなく私たちが来るときに車で走って来た山道に出ようとしています。

「あのう…お散歩って、お屋敷の外に出るのですよね?」

 先ほどからずっと気になっていたことを、我慢しきれず中村さまのお背中に問い掛けます。

「そうよ。犬のお散歩だもの…」

 あたりまえじゃない、とでも呆れられたようにつづきそうな、振り向かれた中村さまのお顔。

「ジョセフィーヌさまにリードを付けなくてもいいのですか?」

 そうお声がけすると中村さまのお足取りがピタッと止まりました。
 数歩で追いついた私。
 そこからは中村さまと肩を並べて歩くことになりました。

「ジョセはいいのよ。ここでは放し飼い。何度も言うようだけれどここら一帯はワタシらの私有地だから」

 中村さまを真ん中に左に私、右にジョセフィーヌさまという並びで、どんどんお屋敷の建物から離れていきます。
 敷石の舗道もそろそろ終りとなり、もう少しで山道に出るはずです。

「ジョセが夏をここで過ごすのも4年目だからね、ジョセにとってここら一帯はまさに、勝手知ったるなんとやら、なのよ」
「ワタシらが用事で散歩につきあえないときは、時間になるとひとりでここらへんを散策しているみたい。なんか知り合いも増えているみたいだし」

 おひとりで可笑しそうに含み笑いされる中村さま。
 
 お散歩の道順は、まさしく私たちが車でやって来た山道を、逆に辿っています。
 ジョセフィーヌさまは山道に入った途端に、その緩やかな下り坂をタッタッタッと軽やかに駆けていかれ、十数メートルくらい先に行ったところで立ち止まられて振り向かれ、早くおいでよ、とでもおっしゃりたげなお顔で私たちを待つ、というのをくりかえされています。

 同じ首輪の身ながら、自由奔放に振る舞われるジョセフィーヌさまと、中村さまのリードに繋がれたままの裸エプロンの私。
 私ってここではワンちゃんよりも地位の低い存在として扱われるんだ…
 そんなふうに考えた途端、甘美な被虐の電流が下半身をつらぬき、キュンキュン感じてしまいます。

「寺っちから聞いたよ、あなた、先生にずいぶんしつこく虐められたそうじゃない?」

 中村さまがビデオカメラのレンズをこちらへ向けながら尋ねてこられます。

「あ、いえ、そんな…」

「四つん這いでずいき咥えさせられて、シャワーでイカされて、イラクサでイカされて、ジョセにイカされて。本気のビンタで涙まで落としてたって」
「エミリー、それ聞いてとても嬉しそうにしてたわよ?あなたたちって本当に理想的な主従カップルなのね」

 なんてお答えしていいのかわからず、ただモジモジうつむくだけの私。

「あなたと遊んで先生もノッちゃったみたいで、あれからずっと仕事部屋に籠もりっきりよ」

 そのお言葉をお聞きした途端、私が一番知らなくちゃいけないことがあったことを思い出しました。
 ここに着いてからのあれこれがいちいち強烈で、すっかり失念していました。

「あのう、教えて欲しいことがあるのですが…あるじさま…先生って、何の先生なのですか?…」

 私が中村さまにそう単刀直入にお尋ねすると、中村さまのおみ足が再度ピタリと止まりました。
 それまで私のからだのあちこちに向けられていたビデオカメラのレンズも下ろされます。

「呆れた。そんなことも知らずに今まで先生に好き放題にされていたんだ?てっきり知っててファンだから悦んでいるんだと思ってた。エミリー教えてくれてなかったの?」

「はい…お姉さまからは、とにかく偉い先生ということだけで…あと、容赦無く責める怖い人、だとも…」

「ふーん、エミリーらしいわね。当たらずとも遠からず、ってとこ」

 私たちが立ち止まってしまったのでご心配されたのでしょう、ジョセフィーヌさまが私たちの足元まで戻って来られ、怪訝そうに見上げられています。
 そのお顔に促されるように中村さまが再び歩き始められました。
 
 左右に立ち並ぶ木々の葉っぱで翳った陽光が遮られ、昼間のときよりずいぶん薄暗く感じます。
 でも却ってそれが神秘的と言うか幽玄な感じと言うか、非日常っぽい絵画の世界に迷い込んでしまったかのようでもあり、幻想的。
 この感じなら私の裸エプロン、意外と合っているかも、なんて…

「あなた、百合薔薇学園サーガ、っていう小説シリーズ、知ってる?」
 
 中村さまからの妙に具体的なご質問で現実に引き戻されます。

「あ、はい。学生の頃に何冊か読んだことがあります。確か…鬼百合と姫小百合…っていうタイトルだったと思いますけれど、あのお話の印象が鮮烈で…」

 その小説は私が受験を控えた高三のとき、ピアノを個人レッスンしてくださっていた妙齢の女性が貸してくださったものでした。
 全寮制の女子学院を舞台にした百合小説で、そのお話は寮長である美貌の女性教諭が新入生の可憐な美少女をSM的な展開で言いなりドレイに調教していく、という、私の性癖のド真ん中をジャストミートなものでした。
 
 お借りした当時、そのピアノの先生との甘酸っぱい関係性とも相俟って大いに感化され、夜毎ページを繰ってはオナニーに耽ったものでした。
 何年かぶりに思い出して、自然と顔が火照ってしまいます。

「ははーん、その顔は直子もあの話でオナってたくちでしょ?あのシリーズの作者先生よ」
「ライトノベルがまだジュブナイルなんて呼ばれていた頃から少女小説の連載を何本も持たれ、その後はSFや時代小説、BLやエッセイなど手広く手掛けて、近年は正統的な甘酸っぱい百合小説と女性主従のレズビアン官能小説をメインに執筆されている名塚毬藻先生」

 お名前をお聞きしても申し訳ないのですが、ああ、あのお話はそんなお名前の作者さまだったな、くらいの印象でした。
 教えていただいて思い出したくらいな…
 
 なにしろ、そのピアノの先生がその頃の私くらいのご年齢のときにご感銘を受けた作品です。
 ピアノの先生と私に10歳くらいの年齢差がありましたから、その頃には新品が本屋さんには売っていませんでした。
 お借りした本も夜毎の酷使でだいぶくたびれていましたので、もう一冊買っておこうとご近所の古本屋さんをこまめにチェックしてやっと買えたくらいでした。
 
 そのときシリーズの他の巻も数冊一緒に買いました。
 それらは百合小説として普通に充分面白かったのですが、えっちな描写はどれもなぜだか控えめで、私にとっては一冊目ほどのインパクトはありませんでした。
 
 それでも、あのお話を書かれた先生、というのは驚きで、何か運命の綾みたいなものを感じます。
 そんな先生って、今おいくつなんだろう?…

「ワタシは某出版社に勤めていて先生の担当編集者だったの。でも連載している文芸誌の編集長が変わって、先生の担当も変えるって言い始めて揉めて。先生も、中村とじゃなきゃ書かない、っておっしゃってくださって」
「それで編集長と喧嘩みたいになって出版社飛び出して今はフリーの編集。文芸誌にはきっちり連載終わりまで半年分の原稿を先生が預けてくれた」

「先生は毎年夏はここに来て、読み切りの作品をいくつか仕上げるの。出版社からの依頼じゃなくてご自分で書きたいと思う小説ね」
「今年は女子校の女教師転落陵辱ものとご令嬢誘拐のサスペンスもの、あと大奥を舞台にした時代物を何か書きたいって言ってる」

「女教師ものは先週来ていたM女がいいインスピレーションになったみたい。で、今日はご令嬢もので臨まれたみたいね。それで直子のドマゾっぷりが見事にツボに嵌ったみたい」

 先生、あるじさまのことになるとご饒舌になられる中村さま。
 もう10分くらいは歩いたでしょうか、気がつけば見覚えのある道、来る途中のランチタイムでお姉さまに虐められた芝生広場から車へと戻る際にお姉さまと手を繋いで歩いた細い脇道、に入っていました。
 ということは、お散歩のゴールもあの広場なのかな。

「それにしても、レズビアンでSM寄りの性癖持ちって、もれなく、鬼百合と姫小百合、の洗礼を受けているみたいね。ワタシや寺っちとイガちゃんはもちろんだけど、直子もだって言うし、先週のM女だって…」

 中村さまがそこまでおっしゃったとき、あの広場の入口に着きました。
 木々が途切れた四角形のただっ広い芝生広場なので、陽光もまだ充分に射して山道とは段違いの明るさ。
 一足先に辿り着いていたジョセフィーヌさまが私たちの顔を見上げてワンッ!

「ああ、いいよー、いっといでー」

 中村さまがおやさしくおっしゃり、広場の入口から真向かいのほうをまっすぐ指さされます。
 その指さされたほうへとまっしぐらに駆け出して行かれるジョセフィーヌさま。

 ジョセフィーヌさまは広場中央の木陰も突っ切られ向こう側の草むらにお姿を消されます。
 私たちは入って左手の屋根が付いた東屋でひと休み。

 私が持っていたビニールバッグをテーブルの上に置き、中村さまが中からいろいろ取り出されます。
 バッグの中に入っていた学校の体操着入れくらいな大きさの巾着袋に、何かチューブみたいなものやらをいろいろ詰め込まれ、それを手首に掛けられてその手には園芸用みたいな金属製のシャベル。

「ジョセはね、ここに来たら真っ先にさっきみたいに草むらに飛び込んでうんちするんだ。どうやらお気に入りの場所があるみたい。直子はフリスビーだけ持ってついてきて」

 笑いながらおっしゃる中村さまが、シャベルを持たれた手の指先に私のリードの持ち手も引っ掛けられ、ジョセフィーヌさまが先ほど消えられた草むらのほうへと私を引っ張っていきます。
 中村さまの空いたほうの手にはしっかり、お姉さまのビデオカメラ。

「明日からは直子もジョセと一緒に、したかったらしちゃっていいからね」

 途中振り向かれた中村さまがイタズラっぽく、そうおっしゃいました。


2021年9月26日

肌色休暇二日目~いけにえの賛美 11

  目隠し越しでも、私の目の前にどなたかがいらっしゃるのが気配でわかります。
 おひとりではなくおふたりかお三かたか、もしかしてそれ以上かも。
 ふうわり嗅ぎ慣れないフローラル系パフュームの香りも漂ってきていますので、女性のかたたちだけだと思いたいのですが…

「あうっ!」

 無言のまま、いきなり右おっぱいを鷲掴みにされました。
 そのまま乱暴にわしわしと揉みしだかれ、更に乳首をギュッとつままれ痛いほど引っ張られます。

「あんっ、いたいぃ…」

 快感よりもやっぱり怯えと不安のほうが勝っています。
 郵便か宅配便の配達員のかたなのかしら…

「あんっ、や、やめてくださいっ!な、なんなんですか、あなたがたはっ!」

 あるじさまのお話では、お庭のM女に手を出すのはお約束違反なはず。
 憤りと恐怖で私には珍しく声を荒げてしまいました。

「おーおー、素っ裸の晒し者マゾ女が何かイキガッているなー。大人しくしてりゃあ悪いようにはしねーよ」

 聞き馴染みのないドスの効いた低めなお声。
 だけどなんだか女性がわざと低くお下品に作られたお声にも聞こえます。

「なかなかいい乳してるじゃねーか。おいっ、あんまり暴れるなっ!泥水が跳ねるだろが」

 左おっぱいも鷲掴まれ揉みしだかれ始めます。
 右おっぱいのより、包まれた感触が少し小さい?
 両方とも手のひらの感触がしなやかで、乳首をつまむ指も女性の指っぽい。

「あんっ、あーっ、あんっ、や、やめてくださいぃ…」

 自由に動かせる左腕で払いのけることも出来るのですが、左手に握り締めている肥後ずいきさまを見られるのが恥ずかしくて腕ごと背中側に隠しています。
 それをいいことに乱暴に嬲られまくる私の無防備おっぱい。

 性的刺激に身悶えしながらも、どんなかたの仕業なのか見てやろうと思い、目隠しを取ることに決めます。
 素顔写真を撮られてしまうかもしれませんが、ここで事件にしてしまえば悪用も出来ないはず。
 男性がひとりでも混ざって居たら、ありったけの大声であるじさまと寺田さまをお呼びしようと心に決めます。

 自由に出来る私の左手には使用済みの肥後ずいきさま。
 でもこのヌメヌメ濡れそぼった肥後ずいきさまを、泥濘んだ地べたに置きたくはありません。

 少し考えて、お座敷のときみたいにいったん口に咥えることにし、隠していた左手をそっと口元に持っていきます。
 肥後ずいきさまの側面に軽く噛み付いたとき、あっ、咥えたら叫べないな、と遅ればせながら思い至ります。

 素早く目隠しを取って状況を確認して、再び肥後ずいきさまを手にしてから叫べばいいんだ…
 そんなふうな段取りを頭の中で組み終えたとき、一足早くどなたかの手で目隠しがあっさり外されました。

「まったく、こんな泥水の上に中途半端に吊るされちゃって、何をされていたんだろうねえ、この淫乱マゾ娘は」

 背後から聞こえる呆れたようなお声は、聞き覚えありまくる麗しの声音。

「ふぁっ、ふぉっふぇーさまっ!」

 私の間の抜けた叫び声で、おっぱいに伸びていた手たちがスッと引いていきました。
 思わず叫んだ途端に咥えていた肥後ずいきさまがポロリと口中から転げ落ち、足元の泥濘んだ芝生へ。
 そこから斜面を尚もコロコロ転がり、小さめな泥水溜りで止まりました。
 あーん、ごめんなさい、肥後ずいきさま…

 それはさておき、私の背後におられたのは紛れもなく愛しのお姉さま。
 お姉さまが目隠しを外してくださったようです。
 行きの電車個室内で愛し合う前におトイレで着替えられた、黒地に白いストライプのスウェットスーツをお召しになられています。

 私の右おっぱいを揉みしだかれていたのは、立ち位置から言って中村さま。
 大広間で出会ったときと同じTシャツにジャージ姿で、カーキ色の薄めなブルゾンを羽織られています。

 そして、私の左おっぱいに取り付かれていたのは…

「あ、こちらはあたしも初対面の五十嵐ショーコさんね、通称イガちゃん。町のスーパーで買い物中にバッタリ会ったの。地元在住で中村さんのプー太郎仲間なんだって」

 お姉さまがご説明してくださいます。

「中村さんが、今日からしばらくうちに露出狂のうら若いマゾ娘が泊まっていくよ、って誘ったら、ナニソレ面白そー、ってノッちゃって、遊びに来てくださったの」
「イガちゃん、これが噂のマゾ娘、直子。あたしのプティスール兼マゾペット。可愛い子でしょ?でもね、ドン引きしちゃうくらいのド助平なんだ」

 私の紹介の仕方がヒドすぎる気もしますが、五十嵐さまに視線を合わせ無言でペコリと頭を下げました。

 五十嵐さまは赤とグレイのボーダー柄VネックTシャツにスリムジーンズ、麦わらのパナマハットをかぶられています。
 ショートカット細面でボーイッシュな感じのキツネ顔美人さん、バストは控えめでからだ全体がスリムな感じ。
 一瞬、美少年系の男性か、とも思ったのですが、手から腕の感じが明らかに女性でしたし、嗅ぎ慣れないパフュームも五十嵐さまから香っていました。

「イガちゃんは趣味の同人で漫画を描いてらっしゃるんだって。エロいのばっかりだそうだから、直子は絶対ネタになるはずよ」

 私の右手右足の拘束ベルトを外してくださりつつ、お姉さまがおっしゃいます。

「うん。来るなりいきなりこれだもんね。うちも何度かここにお邪魔しているけれど一番インパクトあった。どんなことされたのか、後で詳しく聞かせて欲しいな」

 少し低めだけれど耳触り良くてよく通る五十嵐さまのお声。
 そのお声をお聞きして、最初に男性風の作り声で脅かしてこられたのも五十嵐さまだな、と思いました。

「それにしても直子、酷い格好だねぇ」

 お姉さまがおふたりのほうへと戻られ、正面からしげしげと見つめてこられます。
 両手足首のベルトが外され、首輪とそこに繋がるリード、そして両足に泥まみれのハイソックスを履いただけの全裸で皆様の前に立たされた私。

 五十嵐さまが不意に数歩お下がりになられ、水溜りから肥後ずいきさまを拾い上げてくださり、持ち手のところの端っこをつまむようにお持ちになって、私のところへ持って来てくださいました。

「はいっ。これ、大事なものなんでしょ?」

 イタズラっぽく探るような笑顔で渡してくださる五十嵐さま。

「あ、ありがとうございます…」

 小さな声でお礼をお返しし、仕方なく再び左手に握ります。
 みなさまの前で、裸で肥後ずいきさまを大事そうに持っていることがなんだか凄く恥ずかしい…
 肥後ずいきさまは、粘液でヌメっている先端部分のほうがベットリ泥で汚れています。

 そんなふたりのやり取りを眺めてご愉快そうな笑顔のお姉さまが、私のからだを指差しつつ、つづけられます。

「下半身ヌルヌルにして裸のあちこちに泥まみれな犬の足跡付けちゃって、まるでお犬様にレイプされた直後みたいじゃない」
「それにずいぶんと長いあいだ、全裸で炎天下に放置されたんじゃない?恥ずかしい日焼け跡が周りの日焼け肌と同化し始めてる」

 ご指摘いただいて自分の乳首に目を落としてみると、確かに乳輪の周りを目立たせるように白く残っていた日焼け跡が淡くピンクに色づいていて、薄い小麦色との区別が曖昧になっています。
 この感じで旅行中晴天がつづいてくだされば、お尻上の恥ずかし過ぎる自己紹介も、東京に戻る頃には判読出来なくなっているかもしれません。

「まあ、なんにしても直子ちゃんは、このままじゃ屋内に入ることは出来ないわね」

 やれやれという感じで呆れたようにおっしゃる中村さま。
 そのお言葉になんとなくイジワルっぽいニュアンスを感じて不安になる私。
 まさかこの後ずっと、お庭にある大きめな犬小屋でジョセフィーヌさまと一緒に裸で寝起きしなさい、なんてことになったりして…

「あら?そんなに怯えた顔しないでよ直子ちゃん。別に一晩中このまま裸で閉め出す、っていう意味じゃないから」

 薄く笑いながらお庭の隅の一角、表玄関に近い建物の壁のほうを指さされた中村さま。

「あそこに庭から直で入れるシャワールームがあるから、そこで汚れをキレイに落として、それから室内に入ってね、っていうこと」
「最初はワタシが教えてあげるから、先生に庭で虐められたときは、次からは頃合いを見計らって自分の判断で汚れ落としてから屋内に入ってね」

 ということは、ここに滞在中はずっと、あるじさまからの屋外調教がつづく、ということでしょうか…
 思わずお姉さまのお顔を、助けを求めるみたいに見つめますが、お姉さまはニヤニヤ見つめ返してくださるだけ。

「じゃあワタシは直子ちゃんをシャワールームにお連れするから、悪いけれどイガちゃんとエミリーは買ってきた食材を車から厨房まで運んでおいてくれない?」

 中村さまが私の首輪から垂れたリードの先端に手を伸ばされながらおっしゃいます。
 が、不意にその手をスッと引っ込められて、

「あ、そうか。はい、これ車と玄関の鍵。イガちゃん、厨房の場所わかるよね?」

 キーホルダーが付いた鍵束をポーンと、五十嵐さまに向けて放り投げられる中村さま。

「勝手知ったる他人のお屋敷、ってね」

 嬉しそうにおっしゃりながらナイスキャッチされた五十嵐さま。
 お姉さまと肩を並べられ、お庭を隔てる目隠し樹木のほうへと歩き始められます。

「入ったら玄関の鍵は締めなくていいからね、ワタシもすぐ行くから」

 おふたりのお背中にそんなお声掛けをされた後、リードがグイッと引っ張られます。
 泥濘んだ芝生を二歩、三歩トトトっとつんのめる私。

「このリードもベッチョベチョね。これって、ジョセのよだれでしょう?」

 私の首輪に繋がったリードを引いて数歩先を歩かれる中村さま。
 泥に汚れたハイソックスのみの全裸でリードに引かれトボトボついていく私。

「は、はい…」

 中村さまとは着いたときにお顔を合わせただけで、そのときもほとんど会話が無かったので、人見知りモードを発症している私。
 裸でいることが凄く恥ずかしくて、言葉少なになってしまっています。

 建物の壁沿いと表玄関への目隠し樹木との境目の角に、ポツンとプレハブハウス的な小屋が建っています。
 外観はレンガ柄で正面も側面も大きなガラス窓、大きさは街で見かける標準的な交番くらい。
 
 正面の殆どを占める大きな素通しガラス二枚のスライドドアを開けると、内部はまさにバスルーム。
 床は全面タイル張りで、隅の方に薄いシャワーカーテンで仕切った脱衣スペースに収納チェスト。
 
 お部屋の正面奥は、これまた大きな素通しガラスのスライドドアで仕切られたユニットバス一式。
 ワンルームマンションにあるようなトイレと洗面が一緒になったタイプです。

「先生がゲストのM女を庭に連れ出すの好きなんだよね。でも外でプレイした後、屋内のバスルームまで連れていくと廊下とか壁とか汚しがちじゃない?」
「だから外にも建てたの。ここでならエネマプレイだって仕放題」
 
 中村さまが脱衣スペースのチェストからいろいろ出しながらご説明くださいます。

「どうせM女しか使わないから、って外から覗けるシースルー仕様にしたんだ。公然猥褻バスルーム。わざわざ湯気でも曇りにくい特殊なガラス使ってるんだ。風情のない露出M女専用露天風呂だね」

 確かに建物の入口もバスルームの入口も大きな素通しガラスのスライドドアですから、お庭から中の様子はまさに交番みたいに丸見えです。
 
「ソックスとリードは軽く水洗いしてからこの袋に入れて脱衣籠に入れておいて。後でまとめてワタシらが洗濯するから。そのずいきも洗って乾かせばまた使えるわ。で、これ、ボディソープね」
「今、5時5分過ぎか。シャンプーしている暇は無さそうね。じゃあ、これがバスタオルでこっちがカラダ洗う用タオル。これも使用後は一緒に袋に入れておいてくれればいいから」

 首輪からリードを外してくださり、私にいろいろ手渡してくださる中村さま。
 すべて渡し終え、あらためて私の全身、顔からおっぱい、下腹部、無毛な恥丘の裂け目まで舐めるようにご覧になった後、フッと視線を逸らされます。

「シャワーの使い方はわかるよね?これがスイッチで、お湯の温度はパネルに出るから適当に調節して。こっちは換気扇。終わったらこっちのスイッチ押せば全部落ちるから」

 バスルームに入られ、すべての段取りを整えてくださいます。

「ということで5時20分、遅くとも25分までには広間のホールに戻ってきてね。このバスルームからはご覧の通り館内には入れないから、いったん外に出て、すぐ脇にある木々を突っ切ると表玄関のほうに出るから、そこから玄関目指して。鍵は掛けていないから」

 必要なことだけをおっしゃると、そそくさとバスルーム小屋から出ていかれました。
 寺田さまに比べて打ち解けた感じとか、からかってくるような雰囲気もありませんでした。
 
 中村さまも人見知りの気がお有りなのかな、それとも私のあまりのマゾっぷりに呆れられて軽蔑されちゃったのかな、なんて考えつつハイソックスを脱ぎリードを外し、少し迷ってから首輪も外しました。

 シャワーを少しぬるいくらいの温度に設定して、まずはハイソックスとリードのお洗濯。
 バスボウルにお湯を溜めてそれぞれ浸すとみるみるお湯が泥色に濁っていきます。
 
 何度かくりかえすとあまりお湯は濁らなくなりましたが、白いハイソックスにはまだ薄茶色のシミが点々と。
 やっぱり洗剤を使わないと真っ白には戻らないみたい。
 
 その合間に、肥後ずいきさまの汚れをシャワーの水流で洗い流します。
 こちらはあっさりと泥は落ちましたが、濡らしているあいだはヌメヌメが増すばかり。
 リードのヌメヌメは感じられなくなったので、まあいいか、とお洗濯を切り上げ、次は自分のからだです。

 髪を上にまとめてから、肩から下に強めのシャワー。
 タオルにボディソープを染み込ませ、全裸の全身を撫ぜ回します。

「あんっ…」

 だいぶ落ち着いたとは言え、まだ肌の敏感状態が少し残っているみたい。
 そう言えば、あれほどしつこかったイラクサさまの皮膚一枚内側からの痛痒さは、それが嘘だったみたいにすっかり消えていました。
 消えてしまうと、それが名残惜しく感じてしまうのは、私が根っからのマゾ体質だからでしょうか。

 肥後ずいきさまが膣内に残されたムズムズする痒さはまだ少し感じていたので、シャワーを強めにして至近距離から直接マゾマンコに当てました。

「あんっ!」

 指で膣口を開き、水流が直接粘膜を洗い流すように当てていると、徐々に気持ち良くなってきます。
 このままちょっとオナニーしちゃおうか…という不埒な考えがよぎりますが、私には時間がありません。
 
 15分間から20分間で大広間に戻るようにとのご指示なのですが、見渡したところここに時計は無く、もちろん私も持っていないので体感で計って間に合わせるしかないんです。
 余計なことに時間を費やしていると、ご指示を破りかねません。

 左手で至近距離からマゾマンコに強いシャワーを当て、右手の指を膣口に潜らせて指先で愛液を掻き出すみたいに膣壁を引っ掻き、最後にクリトリスをギューッとつまんで、大急ぎでビクンと小さくイキました。
 それだけでもかなりスッキリ。

 だけど私の体感では、バスルームに入ってから確実に10分間は過ぎている感じ。
 大急ぎでシャワーを止めスイッチを切り、洗い物たちを持って脱衣所に戻ります。

 脱衣籠の中には白いバスタオルが一枚。
 当然のように着替え的なものは下着を含めて何一つ用意されていません。

 でもまあそれも想定内。
 バスタオルでからだの水滴を拭いつつ、ハイソックスなどをご指定通り所定の位置に収めます。
 それから髪を下ろして首輪をし直し、バスタオルを胸元からきつく巻き付けて出口へ。
 スライドドアの向こう側には、ピンク色のサンダルがお約束どおり用意されていました。

 スライドドアを開けてサンダルを履き、素肌にバスタオル一枚でお庭に降り立ちます。
 だいぶ陽が落ちましたがまだまだ明るい晩夏の夕方。

 あらためてバスルーム小屋を見遣ると、見事なまでに中のバスタブまで丸見え。
 シャワーを浴びていたときは湯気で少し曇っていたようにも見えたガラス戸も、すっかり曇り一つ無い素通し状態。
 確かにこれは公然猥褻バスルームです。

 ご指示通りに、すぐそばの目隠し樹木に入ります。
 ほんの数本の木々のあいだをくぐり抜けるとすぐに、着いたときに見渡せた立派なほうの庭園、ロックガーデンが目の前に広がりました。

 えっ、表玄関からこんなに近かったの!?
 私の感覚では、表玄関前の大庭園とあるじさまのお庭とはずいぶん離れているように思っていたのですが、目隠し樹木を挟んで隣り合わせ、と言ってもいい近距離でした。
 この感じだったら、私がお庭でアンアン喘いでいた声も、この辺りまで筒抜けだったのだろうな、と今更ながらの恥ずかしさがぶり返してしまいます。

 砂利道、敷石と歩いて、あの立派な正面玄関扉の前へ。
 重い外開き扉をグイッと開けると、何とも言えない洋食系の美味しそうな匂い。
 ホール入口の内扉も開け放されていて、その奥からお声がかかりました。

「あーきたきた、直子ちゃーん、早くこっちに上がってきて。お姉さまがお待ちかねだよー」

 五十嵐さまのよく通るお声。
 用意されていたスリッパに履き替えてホールに入ると、着いてすぐにみなさまとシャンパンで乾杯した、向かって右寄りのソファーコーナで五十嵐さまが右手を振っておられます。
 そのお隣には中村さまがビニールバッグのようなものの中を覗き込んでおられます。

 私が近づいていくと、不意にもっと右側壁際の扉が開き、寺田さま、つづいてお姉さまが出ていらっしゃいました。
 おふたりともヴィクトリア調と呼ぶのでしょうか、両肩のところとウエスト部分がヒラヒラフリルで飾られた格調高めな純白のエプロンを着けられています。
 いい匂いはそちらから漂っていますから、おそらく厨房でお夕飯のためのお料理をされていたのでしょう。

「おーおー、湯上がり直子は一段とエロっぽいねー」

 おふたりとほぼ同時にソファーコーナーに到着した私。
 寺田さまからそう冷やかされたと思ったら、スーッと伸びてきたお姉さまの右手で、さも当然のようにからだに巻き付けたバスタオルを引き剥がされます。

「あんっ、いやんっ!」

 みなさまの前に再び全裸姿を晒す私。
 私の左腕はバストを庇い、右手は股間なヴィーナスの誕生ポーズ。

「何が、いやんっ、よ。今更隠したって仕方ないでしょうに。右内腿の会陰近くに小さなホクロがあることだって、ここにいる全員がもう知っているわよ?」

 お姉さまのイジワルいお言葉にワッと沸いたみなさまのご愉快そうな笑い声が、天井の高いホール内に響き渡りました。


2021年9月20日

肌色休暇二日目~いけにえの賛美 10

 シュルルルルという音を立てて、一直線の強烈な水流が私の胸元を襲ってきます。
 右おっぱい、左おっぱいと小刻みに標的を変えながら左右のおっぱいを揺らしてくる激水流の陵辱。
 為す術もなくプルプル翻弄される私の乳房。

 水飛沫が派手におっぱいを揺らしているときは、確かにあの意地の悪い疼痛を忘れることが出来ましたが、水流が移動してしまうと元の木阿弥。
 皮膚の表面ではなく、ごく薄く一皮残したくらいの内部からジンジンシクシクと疼かせてくるイラクサの陵辱がまだしつこく残っています。

「あーーーーっ!!!」

 やがて水流は私のマゾマンコへ。
 粘膜と肉芽を執拗に嬲られ、何度か達してしまう私。
 それでも疼きの消えないイラクサさまの威力。

 あやつり人形はもはや、手足をジタバタさせる気力も失せて力無く頭を垂れ、ダランとうなだれるばかり。
 首輪から垂れ下がったリードの持ち手が、地面スレスレでプランプラン揺れています。

 水音の蹂躙が過ぎ去り、素肌に静寂が訪れます。
 素肌を水滴が滑り落ちていく微かな感触の内側で弱まったとは言え、まだ消え失せてくれないイラクサさまの痺れ。

「んふうぅっ…」

 水流の物理的刺激で幾度か達していたはずなのに、秘部三ヶ所をまだ疼かせてくる微熱が貪欲に新たな刺激を欲しています。
 うなだれていた顔を上げ、眼前に立たれているあるじさまと寺田さま、それにジョセフィーヌさまに向かって、媚びるように身をクネクネ捩らせてしまいます。

「どうした?満足出来たのだろう?寺田の放水に犯されてジタバタ踊り狂ってイキ果てていたじゃないか」

 あるじさまが乗馬鞭のベロで、私の相変わらずな勃起右乳首をペロンと撫ぜ下ろされます。

「はうんっ!」

 そんな軽い愛撫にさえビクンと反応してしまう今の私のからだ。

「それとも、まだ足りないのかい?」

 今度は左乳首をペロン、私は、あんっ!

「は、はい…イ、イラクサ、さまの痛痒さがまだ、まだ治まらないんです…どうか、どうかもっとソコを弄ってください、虐めてください…罰をお与えください…」

 静寂が深まるとともにジンジンシクシクと威力を盛り返されるイラクサさま。
 その焦燥から一刻も早く逃れたくて、恥も外聞もなく懇願します。

「やれやれ。とんだド助平なご令嬢がいたものだ。淫乱という概念は、おまえの為にあるのだろうな」

 おっしゃりながらあるじさまが寺田さまに目配せ。
 ススっと私に近寄ってこられた寺田さまが、吊り上げられていた私の左足首のベルトに繋いだ縄を解いてくださいました。

 久しぶりに地面を踏みしめる自由となった左足。
 体勢がずいぶん楽になりました。
 右足と両手はまだ拘束されたままなので、ここから逃げ出すことは出来ないのですが。

「おまえのような好色なドマゾ女はわたくしの手にも余る。そんなに虐められたいのなら、オナ子のもうひとりのあるじさまにお願いすればいい」

「ぁふぅぅーんっ」

 あるじさまの乗馬鞭が私の両脚のあいだに滑り込み、お尻のほうから前方へとベロで擦るように撫ぜていかれます。
 より的確に粘膜と肉芽に当たるようにと、自由な左脚を大きく開いてしまう私。

 ベロですくい取られた私の恥ずかしい愛液をジョセフィーヌさまの鼻先にあてがうあるじさま。
 クンクンお鼻を鳴らされ、ペロペロとベロを舐められ、ブンブンと尻尾を振られるジョセフィーヌさま。
 私の顔を嬉しそうに見つめ、今にも飛びかかってきそうな前傾姿勢なジョセフィーヌさまのお背中を、あるじさまがお優しく撫でつつなだめられています。

「ジョセフィーヌ、ステイ、まだだ。オナ子?」

「は、はい…」

「どうした?ジョセフィーヌにお願いすることはないのか?遊んで欲しくはないのか?」

「…はい、遊んでいただきたいです…」

「ふん、お前の場合は、もて遊んで、だろうがな。それならちゃんとお願いしなけりゃだめだろ?」

「はい、ジョ、ジョセフィーヌさま…ど、どうか、直子を、あ、いえ、オナ子を、も、もて遊ばれてくださいませ…」

 私が、ジョセフィーヌさま、とお名前をお呼びした途端にピクンと動かれたジョセフィーヌさまの両耳。
 それに気づいたのと、あるじさまが小さく、ジョセフィーヌ、オーケー、ゴー、とつぶやかれたのが同時でした。

 5メートルくらい離れた位置から私に向かって、一直線に駆け寄ってこられるジョセフィーヌさま。
 その勢いに気圧されて思わず内股になって腰を引いてしまう私。
 その引っ込めた両脚の付け根部分にジョセフィーヌさまがグイグイと、その毛むくじゃらなお顔を突っ込んでこられます。

「あっ、あんっ、あんっ!」

 私の股のあいだをくぐり抜けたジョセフィーヌさまがお尻をペロペロ舐めてくださいます。
 少し開いた内腿と内腿のあいだに舌を挿し込むようにされ、私の肛門から陰唇、恥丘にかけてのこそばゆい愛撫。

「んっ、あっ、あんっ、あーんっ…」

 ジョセフィーヌさまは忙しなく動き回られ、お尻と言わず腿と言わず、私の下半身の至るところを舐め回してくださいます。
 足元は先ほどからの放水で小さな水溜りが出来るくらい泥濘んでいますが、そんなことはお構いなしなジョセフィーヌさま。
 私の左足ハイソックスにも泥水が跳ねてグズグズ。

 寺田さまがお澄まし顔をされて正面から私に近づいてこられます。
 寺田さまのミラーサングラスに今の私の姿が映り込んでいます。
 自ら左脚を宙に高く上げ、股間に潜り込まれたジョセフィーヌさまの舌使いにクネクネ身を捩らせている私の姿が。

 寺田さまは左手に歯磨き粉みたいなチューブ状の容器を持たれ、そこからひねり出したペースト状の粘液質な何かを左手に受けられています。
 ほんのり香リ来るチーズのような匂い。
 ジョセフィーヌさまもその香りに気づかれたのか、私から離れて寺田さまへとまっしぐらに飛びつかれます。

 後ろ肢立ちのジョセフィーヌさまでも届かないくらい左腕を高く掲げられた寺田さまが、私のすぐ前まで来られました。
 やおらその左手を私のお腹に当てられ、そのペースト状のクリームを私の素肌になすり付けてこられます。
 寺田さまの左手のひらが上へと滑り、遂に私の右おっぱいを包み込んでくださいました。

「ああーんっ」

 つづいて横にずれて左おっぱいも。
 私の上半身はペースト状クリームでヌルヌル。
 チーズのような匂いもずいぶん強くなっています。

 すかさず私に飛びついてこられるジョセフィーヌさま。
 泥に汚れた前肢を私のお腹に当てられ後肢立ちになられ、その長い舌をベロンベロンと突き出しながら私のおっぱいを一生懸命舐めてくださいます。
 全身が性感帯となっている今の私にとって、その執拗な愛撫の気持ち良さと言ったら…

「あーっ、あんっ、あんっ!あーーーんっ!」

 私の素肌に舌を這わせてくださりながら、ハアハア荒い息を吐かれているジョセフィーヌさま。
 本当にジョセフィーヌさまからご奉仕、別の言い方をすれば征服されているみたい。
 ジョセフィーヌさまの一挙手一投足に翻弄される私のマゾ性とドマゾなからだ。

 後肢立ちはお疲れになるのでしょう、時折前肢を下ろされ私の周りをグルグルお回りになられます。
 ふくらはぎや腿をフワフワ撫で回す柔らかな体毛。
 
 それから私の脚やお尻を丁寧に舐めてくださり、やがて再び後肢立ちとなられ脇腹やおっぱいまで執拗に舐め回してくださる長い舌。
 それらの感触全てが私にとって至上の愛撫です。

 寺田さまも適宜、私の素肌にペーストを追加してくださり、そのたびに素早く追い掛けて舐め取ってくださるジョセフィーヌさまの長い舌。
 私の頭の中では、どこでどなたに教わったのか自然にネットで覚えたのか、バター犬、という単語がグルグル渦巻いていました。

「あんっ、あんっ、そこっ、あーーっ、もっと、そう、そこ、もっとぉ…」

 あられもなく淫声をほとばしらせる私。

「あんっ、あーーっ、あんっ…えっ!?…」

 そのときフッと視界を奪われました。
 目の前が真っ暗。
 どうやらまた目隠しをされてしまったみたい。

 そんなことにはお構い無しなジョセフィーヌさまからの舌責めはつづいています。
 私の太股、内腿、お尻、女性器、脇腹、おへそ、下乳、乳頭、胸元まで、唾液ダラダラな滑らかな舌で執拗に愛撫されています。

 いつの間にか私の両手を幹から吊るしていた縄の結び目が緩められていたようで、自分でしゃがみ込める程の長さになっていました。
 と言っても相変わらず、両手は手錠の形に拘束されたままですが。

 いつしか私は、ジョセフィーヌさまがより舐めやすいようにと、中腰ガニ股に大きく股を広げ、ジョセフィーヌさまを迎え入れていました。
 おそらく傍から見れば凄く浅ましくもみっともない格好。
 
 そんな私にお応えくださるかのように、鎖骨から顔面までベロベロ舐めてくださるジョセフィーヌさま。
 舐められるたびに、そんな格好で全身をプルプル震わせている私。

「あんっ!そこっ!あーんっ、そうっ、そうっ、そこをもっと、あっ、だめっ、もっとぉーっ!」

 もはやジョセフィーヌさまは私のかけがえのないパートナーさまのおひとりです。

「ふん、踊りにキレが戻ってきたじゃないか。ペットはペット同士、心ゆくまでそうして戯れるがいい」

 真正面からあるじさまのお声。

「さて、私は仕事に戻るとするか。寺田?あとは貴方がよしなにするがいい。任せたぞ」

「承知いたしました、先生」

 寺田さまのキリッとシャープなお声でのご返事。
 そのあいだも私はアンアン喘ぎっ放し。

「そうだ、オナ子にひとつだけ教えておいてやろう」

 少し遠ざかられた感じなあるじさまのお声。

「おまえはさっきから安心しきったようにアンアン喘ぎ声を上げているがな、この屋敷にも郵便や宅配便は届くぞ?」

 そんなお言葉が聞こえ、あわててムッと口をつぐむ私。

「来るとしたら今頃の時間帯だ。郵便屋や宅配便の配達員のあいだで噂になっているらしいな、この屋敷の裏庭には時々素っ裸の若い女が無防備に吊るされている、って」
「そのせいで奴等のあいだでは、この屋敷への配達が争奪戦となっているという話だ。ポストは表玄関だが、裏庭と言っても表側から目隠しとなっている木々のあいだから覗き込めば、ここら一帯丸見えだからな」

 そのあいだもジョセフィーヌさまからの陵辱は止まりません。
 必死に口をつぐんで、あるじさまのお声に耳をそばたてる私。

「何年前だったか、そんな配達員のひとりが、そのとき吊るされていた全裸のM女に不埒な悪戯をしようとしたのだな。幸い未遂で終わったが、そのときこんな取り決めをした」
「ここが私有地である限り、庭で女がどんな格好をしていようとも手を出すのは紛れもなく犯罪だ。ただし、わたくしどもとて、余り褒められた行為をしているわけではない」

「だから妥協案としてこう決めたのだ。ここで面白い見世物を見つけても手を出すのは問答無用でアウト。こちらからそれなりの法的手段に訴えてその行為の落とし前はつけてもらう」
「その代わり、運良くその場に居合わせたなら、見物したり撮影するのはセーフ。その後その写真や動画がどう使われようが、それはそのM女の運の無さだ、ってな」

「だから今、オナ子に目隠しをしてやったのさ。運良く誰かに撮影されたとしも、素顔までは晒されないように、という親心でな」

 それっきりあるじさまのお声は聞こえてきません。
 おそらくお言葉の通り、お仕事に戻られたのでしょう。
 
 気がつけばジョセフィーヌさまからの愛撫もあっさりと消えていました。
 おそらく最愛のあるじさまに着いて行かれたのでしょう。

「直っちってば、凄いね。あんなにノリノリな先生、先週のM女に匹敵するわ」

 突然左耳に息を吹き込むような掠れた寺田さまのお声。
 その熱い吐息にビクンとからだを震わせる私。

「そんなに貪欲な若いドマゾ娘、そうそうはいないわよ?アタシまでゾクゾク濡れてきちゃったもの。直っち、ううん、畏敬の念を込めて直子って呼び捨てにさせてもらうわ」
「直子、まだまだ満足し切れていないのでしょう?まだまだ乳首とクリット、ぴんこ勃ちだし」

 からかうようにハスキーにおっしゃった後、私の左耳たぶを軽く噛むようにしゃぶってくださる寺田さま。

「はうんっ!は、はい…ジョセフィーヌさまにも何度かイカせていただいたのですが、や、やっぱり直子のマゾマンコに強烈な陵辱が欲しいのです…」

 このかたなら私をキチンとイカせてくださるかもしれない、という一縷の望みを込めて、寺田さまに懇願してしまいます。

「いいよ。アタシもそろそろみんなの夕食の準備に取り掛からなければならないし、直子もこのままでは可哀想だものね」

 お優しいお言葉をくださった寺田さまのおからだが離れる気配がし、すぐに吊るされている両手から左手だけがベルトごと、解放されました。
 
 自由になった左手に手探りで握らされた、ちょうど良い握り心地な感触。
 それは紛れもなく、私がお座敷からお庭に出るまでずっと口に咥えさせられていた、あの肥後ずいきの太めな胴体。

「ほら、それを自分でオマンコに突っ込んで、心ゆくまで自分で自分を慰めなさい。アタシはそろそろ戻らなくてはならないけれど、直子はいつまででもここで愉しんでいていいから」

 それきり寺田さまのお声も聞こえなくなりました。
 いつの間にか目隠しの向こう側に感じる晩夏の陽射しも、幾分薄暗くなっているような気がします。

 私の左手には肥後ずいき。
 気がつけば、あんなにしつこかったイラクサさまの蹂躙もずいぶん薄らいでいました。
 
 それでもまだまだ新たな性的刺激を欲している私のからだ。
 この期に及んで肥後ずいきさまをマゾマンコに突き立てない、という選択肢はありえませんでした。

 ジュブっ!

「あーーーーっ!!」

 左手で握った肥後ずいきさまを手探りでマゾマンコに突き立てました。
 久々に膣口全域を満たしてくださる異物の感触。
 すぐに私のマン汁が繊維質に溶け合い、粘膜を熱くさせてくださる肥後ずいきさま。

「あんっ、あんっ、あんっ、あーんっ…」

 先ほどのあるじさまからのご忠告もどこへやら、制御の効かない淫声を撒き散らす私。
 私の左手はピストン運動を延々とくりかえし、イラクサさまとはまた違ったむず痒さをマゾマンコに与えてくださる肥後ずいきさま。

 右手が拘束されているので、おっぱいを弄れないのがもどかしい…
 それに、ここにジョセフィーヌさまからのおっぱいへの愛撫があれば…
 無い物ねだりなことを思いつつもジュブジュブと卑猥な音を立てつづける私のマゾマンコ。

「あーーっ!あーーーーーっ!!…あーーーーーーーっ!!」

 まっしぐらに昇り詰めている最中に、ふっと自動車のエンジン音のような音が聞こえた気がしました。
 えっ!?と思うのですが、私の左手はもう止まりません。
 同時によみがえる先ほどのあるじさまからのご忠告。

 えっ?この音って郵便屋さま?それとも宅配便さま?
 心の片隅ではそう思うのですが、一方で大丈夫大丈夫イッちゃえイッちゃえ、と楽観的な私。
 あるじさまを信じるなら写真を撮られるくらいだし、素顔がわからないように目隠しも施してくださったし…

 そうしているあいだにエンジン音はどんどん近づいて来て、ついに表玄関に停まったみたい。
 エンジン音が消え、バタンバタンとドアを開く音。
 その音と一緒に私はイキ果てていました。

 泥濘んだ泥水の中にお尻ごと突っ込みへたり込んでいる私。
 頭の中が真っ白になってハアハア息を荒げている使い物にならない耳朶をくすぐってくる微かな足音。

 それもおひとりだけではないみたい。
 だんだんとその聴力を取り戻した私の耳に聞こえ来るその足音は、どう聞いても複数。
 その足音たちが石畳を踏まれ砂利道を踏まれ、やがて木々の葉っぱがザワザワとさんざめきながら、草と土を踏まれる音に変わります。

 もちろん今なら、左手左足は拘束されていませんから、左手から肥後ずいきさまを手放しさえすれば、自分で右手右足の戒めを解き、目隠しをも取り去って、その場から一目散に逃げ出すことも出来るでしょう。
 だけどなぜだか、そうする気持ちにはなれませんでした。

 右手右足拘束で目隠しもそのままに、その場にほぼ全裸姿で怯えている私。
 その足音たちは明らかに、私のほうへと近づいて来られています。

 不意に目隠し越しにもわかる眩い光が真正面から浴びせられます。
 立てつづけに閃光が数回。
 眼前が眩むたびにゾクゾクっと戦慄する私の全身。
 
 近づいて来られたどなたかから、私の恥ずかし過ぎる写真を数枚撮られてしまったのは確かなようでした。