2024年4月21日

彼女がくれた片想い 12

 それにしても彼女に話しかけてしまったのはつくづく失敗だった。
 あれ以来彼女は、テニスの時は必ずショーツの上からアンダースコートを穿くようになり、木曜日も午前中で帰ってしまうことが続いている。

 更に、彼女が会釈をくれても目を逸らすといった塩対応を続けていた結果、最近では何かの拍子で視線が合っても彼女の方から気弱な笑みで先に目を逸らす、というギクシャクした関係に陥っていた。
 その上、彼女が私を一個人として認識してしまったという事実は変わらないので、うかつに彼女の姿を追うことも出来ず、監視まがいの行動が思うように出来なくなっていた。

 ただ、私も彼女の行動を注視するよりも心惹かれる悩ましい遊びをみつけていた。
 講義中のトイレで人知れず全裸になることに嵌ってしまったのだ。
 あの日初めて行なって以来、その背徳感と恥辱感、そしてみつかったら終わりだという薄氷を踏むようなスリルの虜になってしまっていた。

 講義と講義の間の空き時間は今までならどこかの空き教室に忍込み専ら読書に耽っていたのだが、今ではいそいそと誰もいないトイレに赴き、個室で全裸になるようになっていた。
 自慰行為までは出来なくても全裸になって佇むだけで得も言われぬ陶酔が感じられる。

 また、今までは三限や四限でその日の講義が終わったらそそくさと学校を後にしていたのだか、最近は五限目の時間まで学内に居残ってトイレに籠もることも普通になった。
 火曜日と水曜日は一限ないしは二限目からびっしり五限まで講義があるが、月曜日は四限以降、木曜日は三限と五限、金曜日も二限と四限以降がお愉しみタイムとなった。

 トイレ個室全裸デビュー翌日金曜日の二限目が空き時間となった私は講義開始のチャイムとともに三階のトイレに入った。
 五つ空いた個室のうち出入口から一番遠いいつもの個室に入り鍵を掛ける。
 すぐに想像上の彼女の命令によって衣服を脱いでいく。

 今日の服装は昨日と同じジーンズにモスグリーンのフリルブラウス。
 下着はオーソドックスな白のフルカップブラにフルバックのショーツにした。
 普通のありふれた下着の方が脱いで裸になった時との落差が大きくてより興奮出来ると思ったからだ。

 下着姿になってから一呼吸置き、おもむろにブラジャーとショーツを脱いでいく瞬間は、全身の細胞が総毛立つようにゾクゾクと感じてしまう。
 全裸になってしばし後ろ手を組んで佇んでからスマホを取り出して記念撮影。

 前回はスマホをバッグにしまい込んでしまったため時間配分がよくわからなかったので、今回からスマホを手元に置いておくことにした。
 うちの大学は90分授業、その時間内で終了チャイムが鳴る前に退散するための安全策だ。

 しゃがみ込んで右腕を伸ばし恥ずかしい自撮り開始。
 これから必ず自分の変態行為をセルフィーで撮影し、自分の黒歴史ライブラリーを貯めていこうと自虐的に決めていた。

 シャッター音が鳴るたびに股間の粘膜がヒクヒク疼いてくる。
 左手は当然のように陰毛の上、大きく割った両腿の中心部分をコソコソと愛撫している。

 私は今、恥ずかしい自慰行為を撮影されている…
 そう考えただけでもう我慢は効かず、中指と薬指が膣中深くに吸い込まれていく。

 二度三度と身体の奥から蕩けそうなほどの絶頂感を味わった後、小休止。
 弾む吐息が収まるのを待ってから今度は個室の外に出てみようと思い個室の鍵に手を伸ばす。

 その時、バタンとトイレ出入口のドアが開閉する音がした。
 伸ばした手をすぐに引っ込めて昨日のようにしゃがみ込むまではいかないが、やはり盛大にドキドキしている。
 すぐにどこかの個室が閉まるバタンという音も聞こえてきた。

 さっきすぐに外へ出ていたら危なかった。
 全裸の私と見知らぬ誰かが完全に鉢合わせしていたはずだ。
 収まらないドキドキで性的に翻弄されながら個室からの退出を待つ。

 ジャーという水洗の水音で退出間近と心躍った瞬間、また別の物音、トイレ出入口のドアが開閉するバタンという音が聞こえてきた。
 また別のトイレ利用者のようだ。
 個室のドアを閉じるような開くような音が立て続けに二回聞こえ、しばらくしてトイレの出入口ドアがバタンと閉まる音がした。

 昨日とは違ってどうにも落ち着かない。
 個室のドアの鍵をそっと外し、ドアも少しだけそっと開けて顔だけ覗かせ通路を見ると真ん中の個室のドアが閉じていた。
 それだけ確認して顔を引っ込め個室の鍵をそっと掛けた。
 スマホで確認すると時刻は11時42分。

 うちの学校の学食が11時から始まるので、それに合わせて早めに昼食を摂る学生や午後から講義の学生が空いているトイレを探してここを利用するのかもしれない。
 そんな風に考えた矢先にまたトイレ出入口のドアがバタンと開閉する音が聞こえてきた。
 もうあと30分くらいで二限終了のチャイムが鳴って昼休みとなるし、ここではもう落ち着けそうにないと判断した私は名残惜しいけれど着衣して早々と退散することにした。

 空いた学食で早めの昼食を摂り、少し長めの昼休みはいつものように読書で潰した。
 三限目の講義で彼女と一緒になった時、友人らに向けたいつも通りの彼女の笑顔を盗み見て、なぜだか少し気恥ずかしく感じた。

 四限目以降、暇となった私は三階の例のトイレより人の出入りが少なくて落ち着ける場所があるかもしれないと思い、他の階のトイレも見て回ることにした。
 四階建ての本校舎には各階のほぼ同じ位置にトイレがある。
 もちろんその他にも教職員用や来客用のトイレも点在していたが、それらに忍び込むほどの度胸は無かった。

 一階は正面玄関があり講義中、休み時間を問わず人の出入りが不規則でトイレにも時間を問わず頻繁に出入りがあるようだった。
 二階には各教授の研究室と呼ばれる小部屋が集まっており、ここも時間を問わず出入りがあり、また万が一変態遊びが学生以外に露見してしまった時のリスクが大き過ぎる。
 四階は比較的に閑散としてはいるのだが、講義の空き時間に利用できるピアノの練習室が五部屋と歓談出来る広いラウンジルームがあるため、トイレ利用者も時間を問わずのランダムとなる。

 結局、講義のための教室だけが集まった三階が講義中であれば一番落ち着いて利用出来るトイレであった。
 彼女がそこまで見極めて三階を利用したのであれば慧眼だなとあらためて彼女のことを見直してしまった。

 明けて月曜日は四限目から暇となるので私はいそいそと三階トイレに向かった。
 例によって全個室ガラ空きの一番端に入り込み鍵を掛ける。
 想像上の彼女の命令によって衣服を脱いでいく。
 その間中、私は前回や前々回よりもひどく興奮していた。

 実は前日、正確に言うと休日だった土曜日の夜に自宅のバスルームで全裸になり、自ら陰毛を剃り上げていた。
 土曜日の午前中にネットで安全な陰毛の剃毛について調べ、午後に繁華街の家電量販店等でシェーバー他を買い求め、夜間に決行したのだ。

 夕飯後の午後七時過ぎ、全裸になってバスルームに入った。
 まずはハサミで伸びすぎた陰毛を五分刈り程度に剪定する。
 下半身をシャワーのぬるま湯で洗浄し、よく拭き取った後、慎重にシェーバーを当てていく。

 みるみる赤裸々となる私の恥丘。
 肛門周りまで生え茂ったヘアーは、ネットに書いてあった、手鏡を床に置き、その上にしゃがみ込む、という恥ずかし過ぎる方法で行なった。
 バスルームのタイルの床に置かれた手鏡に映った陰毛で囲まれた性器と肛門をしげしげと覗き込み、ラビアをあちこち引っ張って赤面しつつシェイブした。
 終わる頃には滲み出た愛液で性器の周囲がヌルヌルになっていた。

 すっかり剃り終えると衝撃の事実が待っていた。
 私の小陰唇は左右対称ではなかったのだ。
 今までは毛に隠れっぱなしで気にすることはなかったが、赤裸々になると一目瞭然だった。

 自分から見て左側の小陰唇が右よりも全体的に2センチ位長めで、普通に真っすぐ立っても割れ筋から1センチ位、常時外にはみ出しているのだ。
 おそらく積年の自慰行為がもたらした結果なのだろうが、ワレメからラビアがはみ出ているという事実を目の当たりにして自分がやはりかなりふしだらな女だったのだと思い知らされた。

 性器を無毛にしたことで確実に性感は上がってしまい、日曜日は一日中部屋に籠もり頻繁に下半身に右手を滑らせてツルツルな感触を愉しみ、結局自慰行為に至ってオーガズムを貪るというくり返しだった。
 剥き出しになった性器はかなり恥ずかしく、それでいて淫靡にエロティックだ。

 そんな週末を過ごした翌月曜日、待ちに待った個室に籠った私であるから、その興奮ぶりもわかってもらえるだろう。
 ブラジャーを外す前から両乳首が尖りきっているのがわかる。
 ホックを外し緩んだ瞬間に、そんなに大きな乳房ではないが、布地を撥ね付けるようにプルンと弾むのがわかった。

 次はいよいよショーツだ。
 ウエストゴムに指を掛けただけで性器の奥が潤むのがわかった。
 思い切ってそのまま膝辺りまで一気にずり下げる。
 無毛の土手を個室内の空気が直に触れてくる。

 …あら?この間まであった毛が無くなってるじゃない?どうしたの?…

 想像上の彼女が目ざとく気づき、からかうように詰問してくる。

 …綺麗サッパリ剃り落としちゃって。自分で剃ったの?やっぱりソコをよーく視てもらいたいからなのかしら…
 …あら、普通に立っていてもビラビラがはみ出しちゃっているじゃない。オナニーのしすぎでラビアが伸びちゃったのね…
 …ふしだらなおまえにはよーくお似合いの変態ぶりだこと。ほら、もっと足を広げて中身まで見せなさい…

 ますます下品になった想像上の彼女の嘲りを浴びながら後ろ手全裸の私は屈辱に震える。
 悔しいのに、あがらいたいのに、気持ちの良い電流が全身を駆け巡る。

 スマホを手に取り自撮り棒を取り付ける。
 これも土曜日に家電量販店で買って用意しておいたものだ。
 これでしゃがみ込まなくても全身をカメラに収めることが出来る。

 想像上の彼女に命令されるまま恥ずかしいポージングで撮影が始まる。
 全身、大股開き、M字開脚、無毛な局部のドアップ、自らの指で開いた膣口と肛門のドアップ…
 シャッターが鳴るたびに性感がグングン高ぶり、遂には自慰行為に埋没してしまう。

 幾度かのオーガズムの余韻の後、個室の外に出てみようと考える。
 今日は幸運なことにこれまで一人も闖入者がいない。
 個室の鍵を外し顔を覗かせても他の個室の扉はすべて開いたままだ。

 自撮り棒の付いたスマホを持って個室を出てトイレの通路に立つ。
 出入口脇の洗面台上の鏡に裸の自分のおへそから上、乳房から上気した顔までが映っている。
 外廊下の様子に注意深く聞き耳を立てつつ自撮りしながら鏡に近づいていく。

 こんなところにまで全裸で出てしまう自分。
 洗面台に足を掛け、無毛の性器を鏡に映す。
 すぐ横に出入口のドアがあることに気づき、あわてて後ずさる。

 性器から愛液が零れて太腿伝いに床へと滑り落ちる。
 自分で剃り上げてツルツルに露出した剥き出しのふしだらな性器。
 そんな行動の一つ一つをつぶさに、客観的に見せてくれる鏡とセルフィーのカメラ。
 私って本物の変態だ…

 我慢しきれなくなり、その場で立ったまま性器を弄り始める。
 トイレ通路のほぼ真ん中。
 自撮り棒は三脚にもなるのでカメラは動画にして自分の股間に向け、私は鏡で自分の顔を視ながら声を殺して快感を貪る。

 …あれ、こんなところでもオナニー始めちゃうんだ。誰か来ちゃっても知らないよ…
 …クチュクチュクチュクチュ凄い音だこと。またラビアが伸びてもっとはみ出しちゃうんじゃない?…
 …ほら、もっとおっぱい揉んで、乳首つねって、クリトリスつまんでオマンコ掻き回しなさい…
 …おまえ本当はそんな浅ましい姿、誰かに視られたいんじゃないの?視られて破滅したいんじゃないの?…

 イッてもイっても湧き上がるオーガズムの渇望。
 足下に小さな水溜りが出来るほど愛液を垂れ流して身悶えていたとき…

 キーンコーンカーンコーン…

 突如チャイムが鳴り響いた。
 最初のキの音が聞こえたときにビクンとはしたが、それが何を意味する音なのかはわからなかった。

 が、次の瞬間、これは四限目終了を告げるチャイムの音だと瞬時に理解し、それからは早かった。
 目の前に置いた三脚代わりの自撮り棒をひったくるように片手に持ち一目散に端の個室に逃げ込んだ。
 個室の鍵を掛けるのとトイレ出入口のドアが開く音が聞こえたのがほぼ同時だった。

 心臓が飛び出てしまいそうなほどの危ういスリルと同じくらいに高ぶる性的興奮。
 他の個室に利用者が居るのはわかっているのに性器を弄ることが我慢出来ない変態の性。
 喉奥から迸る歓喜の喘ぎを必死に押し殺しつつ断続的なオーガズムに身を委ねる自分…

 そんな感じで、暇をみつけては禁断の個室遊戯に耽っていた私は回を重ねるごとに自分に課す要求も自虐的にどんどんエスカレートしていった。


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