横断歩道を渡り切ると、舗道を行く人影はずいぶん減りました。
ビニール傘がパタパタとリズミカルに音をたてるくらいの雨が降る中を、お姉さまに寄り添って歩きます。
ときどき思い出したように、車が車道を走り抜けていきます。
「やっぱり予想通り、閑散としているわね?平日だったらこの辺りも、サラリーマンとOLがひっきりなしなのに」
お姉さまが私のほうを向いておっしゃいました。
「ここはどの辺りなのですか?」
「方向的には、来るときに乗った地下鉄の駅へ戻っている感じね。ちなみにこの右側の広くて大きな建物は最高裁判所」
「えーっ!?そうだったのですか?」
「今日は休日だからそうでもないけれど、普段はもっとものものしいわよ。入口ごとにケイカンだらけみたいな感じで」
灰色の建物に横目を遣ると、ちょうど入口のところで、ひとりのオマワリサンが傘もささずに仁王立ちしているのが見え、ビクンとからだが震えました。
「ここを過ぎれば、もう公的な建物もないから、オマワリサンにビクつくこともなくなるわ」
オマワリサンを見て、お姉さまにからだをいっそうスリ寄せた私をなだめるような、お姉さまのおやさしいお声。
「それにしても本当に人がいないのね。こんな感じなら、直子をここで裸にしちゃってもいいくらい」
周りを見回すようにしてから、私の顔を覗き込んでくるお姉さま。
剥き出しの奥がキュンと疼きました。
街並は、低めのビルが立ち並ぶ、よくあるビジネス街っぽくなっていました。
時折、お弁当屋さんやレストランぽい建物が混じり始めてはいるのですが、みんなシャッターが下りてお休みみたい。
通り全体が静まり返り、聞こえてくるのは雨の音ばかり。
この通りに入ってから見かけた人影は3人だけ。
どなたも傘を低くさしてうつむきがち、私たちを一顧だにしませんでした。
「でもやっぱり、こんな街中で直子を丸裸にするのは、あたしにとってもちょっとハードル高いから、その代わりゲームをしましょう」
お姉さまが前方を向いたままおっしゃいました。
「そうね・・・あたしたちの傍らをタクシーが通り過ぎたり、すれ違うたびに、直子のワンピのボタンをひとつ外す、っていうのはどう?」
どう?とおっしゃられても、私には拒否権が一切ないわけですし。
前方10メートルくらいにタクシーが一台こちら向きに、ライトをピカピカさせて停車していました。
お姉さまったら、あのタクシーを見て思いついたに違いありません。
あのタクシーが走り出すか、私たちがあそこまでたどり着いたとき、私はワンピのボタンをひとつ外すことになるわけです。
私がコクンとうなずくのが合図だったかのように、停車していたタクシーがこちらへ向かって走り出しました。
「最初は胸元のボタンね。次からは直子の好きなところを外していいわ」
タクシーが私たちの横を通り過ぎるとお姉さまが立ち止まり、私はご命令通り、胸元上から三つ目のボタンを外しました。
胸元の圧迫感が消え、胸の谷間が乳輪まで、大胆に露出しました。
「うふふ。おっぱい出たわね。まあ、これからは、なるべく人も車もいなそうな路地を歩いてあげるから、安心して」
再び歩き始めたお姉さまが愉しげにおっしゃいました。
「この辺から左のほうへずっと歩いていくと、大きめな公園があるはずなの。草木がこんもり茂って小高い山みたいになった自然公園」
「そこで直子にオールヌードになってもらうのが、あたしの当初の計画だったの。でも、この雨だから人が全然いなそうなのよね」
「視てくれる人が全然いないのもつまらないわよね?だから、そのときはボーナスステージ。あたしがたっぷり直子のからだをイタズラしてあげる。持ってきたオモチャで、イかせてあげるわ」
「直子は、都心の公園で丸裸になって、緑の自然の中でイっちゃうわけ。もちろん声だけはがまんすることになるけれど」
「どう?愉しみでしょ?」
お姉さまがおっしゃったことを、頭の中で妄想してみます。
雨の降りしきる森みたいな場所で、真っ裸になってお姉さまにイクまで辱められる自分・・・
からだがはしたなく火照ってきました。
車道を左のほうへ渡ろうとして立ち止まった私たちの目の前を、黒塗りのタクシーが通過していきました。
「意識して見ると、タクシーって意外と走っているものね。あ、また来た」
道路渡るまでに2台のタクシーと遭遇し、私はボタンをふたつ外さなければいけないことになりました。
一番影響が少なそうなおへそから股間のあいだのふたつを外しました。
残るボタンは4つ。
公園に着くまで、裾の一番下、実質的には下から2番目と、胸元4番目のボタンだけは死守したいところです。
道路を渡り左に折れる路地に入ると、通りは見事に閑散としていました。
車一台だけ通れそうな通りには、人っ子一人なく、ただ雨が地面を打つ音だけが響いています。
その雨が、かなり強くなってきていました。
さっきまでパラパラだったのが、今はザーザーッという感じ。
おまけに風も出てきて、私たちが進む方向には向かい風となっていました。
お姉さまが傘を前向きに傾け、風に逆らうように進みますが、傘をすり抜けた風が私のワンピースをはためかせ、Vゾーンを押し開きます。
あれよあれよという間に、左右の乳首ともお外に飛び出していました。
裾も完全に左右に割れっぱなしで、肌色が丸出し。
ああん、いやんっ!
胸元や裾を直すことは禁じられているので、そのまま歩くしかありません。
「本格的に降ってきちゃったわね。これじゃちょっと、傘一本じゃキツイ感じ」
「あの庇の下で、とりあえず雨宿りしましょう。あたし、カッパ着るから」
お休みのお店屋さんらしきシャッター前の軒下を指さすお姉さま。
私たちが庇の下にたどり着くのを待っていたかのように、雨はいっそう激しく、ザンザン降りになりました。
「せっかく直子が、とんがり乳首とマゾマンコ剥き出しの、こんなにいやらしい格好をして雨宿りしているのに、この雨と風じゃ誰も外に出てこなそう」
傘を閉じたお姉さまが恨めしげにお空を見上げました。
私の胸元は、おっぱいが乳首もろとも完全に露出しているので、通りに背を向けて立ちました。
「バッグ貸してくれる?」
「あ、はい」
雨が強くなってからは左腕で庇うように提げていたので、バッグはビニールの表面以外、そんなに濡れていませんでした。
バッグの中から半透明の白い包みを取り出すお姉さま。
どうやらそれがお姉さまのレインコートのようです。
「直子用にも透明のビニールのコートをもってきたのだけれど・・・」
そこまでおっしゃり、瞳を閉じて少し考えるような仕草をされるお姉さま。
それからお顔を上げ、ふたつの瞳にたっぷりのイジワルな光をたたえて、こうつづけました。
「もしも直子もレインコートを着たいのなら、そのワンピは脱いで、素肌に直に着てもらうことにするわ」
「それか、今の格好のまま、傘さして歩くか。好きなほうを選ばせてあげる」
折りたたまれたご自分のレインコートを広げながら、お姉さまがイタズラっぽく笑いかけてきました。
軒先から出っ張っているビニールらしき庇を、雨粒がザザザザッとやかましく打ちつける音の中で、私はしばし考え込みました。
「お姉さま?質問、いいですか?」
「どうぞ」
「そのレインコートって、完全に透明なのですか?」
「そうよ。このビニール傘と同じようなもの。丈はそのワンピより若干長いと思う」
「これから行く公園ていうのは、遠いのですか?」
「うーん、10分も歩けば着くのではないかしら。でももう少し小降りになってくれないと、行く気しないわね」
「そこに行くまでに、また信号待ちとかありますか?」
「どうだったっけかな?わからないけれど、たぶんありそうね」
「途中で雨がやんでも、そのままなのですよね?」
「そうね。公園でヌードになった後なら、着替えさせてあげてもいいかな」
お姉さまは、バッグから取り出した白いバスタオルで、濡れたバッグの表面を拭きながら答えてくださいました。
真剣に悩みました。
全裸に透明レインコートっていうのも、すっごくやってみたい気にはなっていました。
確か、やよい先生との初野外露出のときも、ユマさんと一緒に大雨の中で透明レインコートを着ていたっけ・・・
束の間、懐かしくも恥ずかしい思い出がよみがえりました。
だけど、いくら大雨で人が通らないと言っても、ここは天下の往来で、時間もまだ午後の4時過ぎ。
これから10分間歩くあいだ、誰にも会わないという保証はどこにもありません。
曇っているとはいえ充分明るいですから、透明ビニールの下が全裸であれば、視線を向けさえすれば一目瞭然で、その肌色の意味を知られてしまうことでしょう。
途中に信号待ちがあって、隣に誰か並ばれでもしたら・・・
「やっぱり、今のまま、このワンピースにしておきます・・・」
「そう。わかったわ。それなら、まだゲームもつづいている、ということでいいわね?こっちを向きなさい」
ご命令に振り返ると、お姉さまがハンディカメラをこちらに向けていました。
見知らぬお店の軒先でおっぱいを丸出しにしている私のふしだらな姿が、映像記録として残されました。
そして目の前の通りを、黄色いタクシーが二台つづけてゆっくりと横切っていきました。
今やみぞおちと土手の上しかボタンが留まっていない、私の頼りないミニワンピース。
もう金輪際、一台のタクシーも目前に現われないで、と祈る他はありません。
雨宿りを始めたときより、雨も風も格段に強くなっていました。
「直子が傘さすなら、バッグは濡れないように、あたしが持ったほうがよさそうね」
左肩にビニールトートを提げて、その上からレインコートを羽織るお姉さま。
白濁した半透明のレインコートはポンチョっぽい形で、フードをすっぽりかぶったお姉さまは、妙にスラッとしたテルテル坊主さんみたいでした。
「ゲリラ豪雨なのかしらね?ぜんぜんやむ気配が無いのだけれど」
私にカメラを向けたまま、退屈そうなお姉さまのお声。
大雨で誰も通らないとは言っても、昼間の街角におっぱい剥き出しで突っ立っているという状況は、あまりにもスリリング。
充血した乳首を風が撫ぜるたびに、背筋がムズムズ感じていました。
「ここでただボーっと、雨がやむのを待っているのも、芸が無いわね」
お姉さまがいったんカメラを下ろし、私のおっぱいを舐めるように見つめてきました。
「そうだ!直子、傘さして道路の向こう端まで行って、ゆっくりこっちに歩いてきてよ。それを撮影するから」
「篠突く雨の中、おっぱい丸出しで歩いてくる赤い首輪の女の子、なんて、なんだかアートっぽくない?」
ご自分のご提案に、満足そうにうなずくお姉さま。
再びカメラを私に向けてきました。
「わかりました。お姉さまがそうおっしゃるのなら」
立てかけてあったビニール傘を手に取り、お外のほうへ一歩踏み出しました。
庇の先端まで行って通りを見渡します。
数メートル先も霞むほどの勢いで、雨粒の群れが地面を打ちつけていました。
人も車も通る気配はまったくありません。
街全体がされるがまま、ひたすらこの雨が通り過ぎるのを待っているような雰囲気でした。
これなら大丈夫。
傘を広げました。
庇から一歩出た途端、頭上から盛大な騒音が響いてきました。
見た目より風も強いようで、襟ぐりが孕み、ワンピースが素肌から浮き上がります。
剥き出しの乳首を乱暴に愛撫する風と雨。
湿度が高いためか、さほど寒くは感じないのが救いでした。
ゆっくりと道の端まで歩き、回れ右をしました。
今度は、軒先で構えているお姉さまのカメラレンズに向かって、ゆっくりと近づいていきました。
さっきとは逆に左からとなった風が、胸元を容赦なくいたぶります。
裾も大きく風を孕み、下腹部あたりまで露出しています。
今、そんな自分の姿が記録されているんだ・・・
下半身がジンジン痺れるように疼きました。
そのときでした。
突風が渦巻くようにヒューと鳴き、持っていた傘が飛ばされそうになって手にギュッと力を入れた刹那、あっという間にオチョコになっていました。
ここぞとばかりに全身に襲い掛かる雨粒たち。
一瞬にしてズブ濡れ。
壊れた傘のビニールがハタハタとはためき、私は大慌てで軒先に駆け戻りました。
「あらあら、とんだ災難だったわね、全身ズブ濡れじゃない?」
至近距離でカメラを向けつづけるお姉さま。
素肌にぺったり、ワンピースの布地が貼りついたおっぱいや下半身を撮っているようです。
「すっごくエロいわよ。ワンピが肌に密着しちゃって、からだのライン、クッキリ丸わかり」
「でも直子、ここでズブ濡れになったのって、ある意味ラッキーだったのかもよ?」
ようやくカメラを下ろしたお姉さまが、謎なことをおっしゃいました。
「通りにカメラ向けてズームを弄っていたらね、近くに面白いものがあるのを発見しちゃったの」
「こんな雨なら、たぶん誰も来ないから、ゆっくり出来ると思うわ、いろいろと」
お姉さまはカメラをポンチョのポケットにしまい、フードを深くかぶり直しました。
「あそこの赤い庇のところね。あそこまで一気に走るわよ」
さされた指の先十数メートルのところに、雨に煙って確かに赤い庇が見えました。
「その傘はたぶんもう使い物にはならないでしょうけれど、ここに置いていったらご迷惑だから、持ってきなさい」
「直子は、もうそれだけびしょ濡れなのだから、そのままでも平気よね?思う存分濡れちゃいなさい」
「あの、えっと・・・」
「安心なさい。すぐにサッパリ、気持ち良くなれるから。行くわよ?」
私のほうを向いていたお姉さまがお外に向き直り、間髪を入れず軽やかに大雨の中へ飛び出していきました。
「あ、お姉さまっ!待ってください!」
私もあわてて、壊れた傘を片手にお姉さまの背中を追いかけました。
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*オートクチュールのはずなのに 22へ
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