お姉さまが降りてしまったので、仕方なく私もドアを開け、薄暗い駐車場のコンクリートの床に降り立ちました。
小ぶりなクラッチショルダーだけ持ったお姉さまが、ツカツカと近づいてきました。
「なかなか可愛いわよ。ブルーのワンピと赤い首輪のコントラスト」
頭のてっぺんから爪先までジロジロ見つめてくるお姉さまに、私は気をつけのままモジモジ。
「でもずいぶんきっちりボタン留めちゃったのね?ちょっと暑苦しくない?開けなさい。そうね、上からふたつ」
「は、はい・・・」
せっかく喉元まで留めていたワンピースのボタンを、少し震える指で外していきます。
ふたつ外すと、バストの膨らみ始めがちょこっと覗くようになってしまいました。
「うん、いい感じ。ちょっぴりエロっぽくなった。ついでにちょっと、裾もまくってみせて」
「こ、ここで、ですか?」
「大丈夫よ。ほら、今ここには誰もいないじゃない。直子の剥き出しマゾマンコ、なぜかしら急に無性に見たくなっちゃったのだもの」
お姉さまのお芝居がかった、からかうようなお声。
確かに広めの駐車場なのに車は少なくガランとして、しんと静まり返っています。
お姉さまの車の横には、大きめな黒いワゴン車。
その隙間に隠れるように向かい合っているふたりですから、もしも誰かが来たとしても、お隣の車の人でない限り注目されるようなことは無いでしょう。
覚悟を決めてワンピースの裾に手をかけました。
「はいストップ。そのままにしていなさい」
両手で持ったワンピースの裾を胸元くらいまで引き上げたとき、お姉さまからのお声がかかりました。
剥き出しとなった下半身に、外気が直に触れているのがわかります。
私、こんなところでアソコを出しちゃっている・・・
お姉さまが一歩近づいてきてしゃがみ込みました。
下から覗き込むように浴びせられるその視線が恥ずかし過ぎて、思わず目をつぶってしまいます。
「こんなに薄暗くても、濡れちゃってるのが分かるくらい、マゾマンコの周辺がテラテラ光ってる」
下のほうからお声が聞こえてきます。
「こんな調子じゃ、買い物中もよだれダラダラ垂らしちゃいそうね?唇の端に今にもこぼれ落ちそうな雫がしがみついているもの。この後だって、どうなることやら」
お姉さまが立ち上がられた気配。
「でもまあそれも直子次第ね。スーパーの床汚して、店員さんに叱られないようにがんばりなさい」
そんなことをわざわざおっしゃるお姉さまは、お買い物中、いったい私に何をなさるおつもりなのでしょう。
目をつぶったまま不安と期待の鬩ぎ合いにゾクゾクしていたら、不意に左手を取られ、裾がパサリと戻りました、
「さあ、行きましょう」
おずおずと瞼を開いて見えたお姉さまのお顔には、エスモードに入ったときにだけお見せになる、冷ややかな薄い笑顔が宿っていました。
「エレベーターもあるけれど、どうせだから歩いて行きましょう。スーパーは一階だし」
私の手を引いたお姉さまが、ツカツカとさっき下りてきた駐車場への短いスロープを上がっていきます。
歩き始めると内腿が粘性のおツユで擦れ、歩いているだけでクチュクチュ音がしちゃいそう。
お外へ出ると、もう夜と呼んでいいほど暗くなっていました。
規則正しく並んだ街路灯の周りだけが、明るく照らし出されています。
私たちが立っているのは、池袋のビルほどではありませんが、ずいぶんと高いビルのふもとでした。
「この辺りはね、大きな病院と大学がいくつか集まっている一帯なの。それで最近出来たのがこのビル。上のほうはオフィス棟」
「だから、駅からほど近いのに、休日だとあまり人がいないのよ。落ち着いていて、いい感じでしょう?」
「春になると沿道の桜が満開になって綺麗なのよ」
ビル敷地内の遊歩道に入るとお姉さまが歩調を緩め、のんびりしたお声でおっしゃいました。
大きな建物を囲むように植えられた緑と綺麗な石畳、全面ガラス張りのカフェテラスや、時折置かれているクラシカルなベンチなど、確かに都会的な、オシャレな雰囲気に満ちていました。
「さすがに日が暮れると気温が若干下がるわね。少し風も出てきたし。直子は大丈夫?寒くない?」
お姉さまが立ち止まり、私を振り返りました。
私はさっきから、その風が気になって仕方ありませんでした。
それほど強くはない風なのですが、素肌にゆったりめのワンピース一枚、それも裾がかなり短め、という心細いいでたちの私にとって、時たま裾をふんわり揺らしてくるその風に、気が気ではありませんでした。
いくら暗くて人もまばらとは言え、駐車場を出てからここまで来るあいだ、4、5人の人たちとすれ違っていました。
左手はお姉さまに握られているので、右手でお尻の右側を押さえながら、うつむきがちにびくびく歩いていました。
もちろんからだはこの状況に、ドキドキウズウズ疼いているので、気温なんか感じている余裕もありません。
「だ、大丈夫です・・・」
うつむいていた顔を上げ、お姉さまにお答えしました。
「そうみたいね。頬がピンクに上気しているもの。ノーパンノーブラに興奮しちゃっているのでしょう?」
「えっ?いえ、そんな・・・」
「そんなにモジモジしていると、却って悪目立ちするわよ?目立ちたくないのなら、普通にしていることね。ま、あたしはどっちでもいいけれど、注目されちゃうのは直子なのだから」
お姉さまがイジワルクおっしゃってニッと笑い、再び前を向いて歩き始めました。
「着いたわ。あそこよ」
ほどなくガラス張りのスーパー入口が、明るく光っているのが見えました。
お洒落なスーパーとしてよくお名前を聞くチェーン店。
想像していたよりも小さめっぽい。
お外から見た限りでは、中に他のお買い物客の姿は見えません。
「駅ビルにもっと大きなスーパーもあるのだけれど、駅ビルは休日でも混んでいるからね。直子のノーパンノーブラショッピング・デビュー戦には、このくらいのお店でいいかな、と思ったの」
おっしゃりながらお店に近づいていくお姉さま。
足元がどんどん明るくなり、うつむいた目に自分の服装がどんどんクッキリ見えてきます。
ふうわりふくらみ気味のワンピース、開いた胸元、短い裾から覗く生足。
「そのカートを押して、あたしの後を着いてきてね」
入口前に並んだショッピングカートを指さすために、握っていたお姉さまの手が離れました。
「それから」
自動ドアの手前で立ち止まったお姉さまが、振り向いておっしゃいました。
「お店に入ったら、あたしの言葉すべてに従うこと、でも、だって、は一切禁止。すぐにさくっと従って。モジモジしてヘンな動きをすると万引きとかを疑われて、もっとひどいめに遭うのは直子自身なのだから」
「こういうお店には監視カメラとか鏡とか、挙動をチェックする目がいっぱいあるのを忘れないで、あくまでも普通にお買物すること。わかった?」
そのお姉さまの語気があまりに鋭かったので、びっくりしてすぐにお答え出来ませんでした。
「返事は?」
苛立ったようなお声が追いかけてきました。
「はいっ!」
その迫力に煽られて、うつむいていた背中がピシッと伸びました。
お店の中は眩しいくらい明るく、左胸のシミがまだ乾ききっていないことを再確認しました。
他にもワンピースのところどころに、シミっぽい痕が。
そして、歩くたびに両胸の先端に突起が浮いては隠れしていることも。
「まずは、全体をざっと巡ってみて、何を作るか決めましょう」
お姉さまは入口に近い一番端から、色とりどりの商品が左右に整然と並べられた川の字みたいなレイアウトの店内通路を、ゆっくりと歩き始めました。
「今夜は、どうせ帰ったらすぐ寝てしまうでしょうし、お手軽なものでいいわ。明日も昼過ぎまでは起きないつもりだから、食べるのはランチと夕食。最終日の夕食は外で食べましょう」
歩きながらお姉さまが、少しヒソヒソ気味に語りかけてきます。
「連休終わったら、次いつ帰れるかわからないし、材料余らせて腐らせちゃってももったいないから、あまり手の込んだものはやめておいたほうが無難かもね」
「ワインは確か、開けてないのが一本あったな。調味料類はどうだったかな?」
「ま、余ったら直子が持って帰ればいいし、そんなに深刻に考えることも無いか」
「どう?何かいいメニュー、思いついた?」
ところどころにある鏡やガラスに映る自分の首輪姿ばかり気になっていた私は、とてもそこまで気がまわりません。
それでもなんとか頭を働かせ、口から出任せのご提案。
「それでしたらやっぱり、パスタとかサンドウィッチとか・・・あとはサラダや卵のお料理とか・・・」
「うん、いいわね。いつだったか直子がくれたサンドウィッチ、芥子バターにチーズとハムが挟んであったやつ、美味しかったもの。あとコールスロー、あれ作ってよ」
ふぅ、なんとかごまかせたみたい。
お外からは誰もいないように見えた売り場内には、それでも10名前後のお客様がお買物されていました。
お年を召したご夫婦、OLさん風二人連れ、学生さん風男性おひとり客、ベビーカーを押した若奥様風・・・エトセトラエトセトラ。
ジャズピアノ風のゆったりしたBGMが流れる中、そんな人たちのあいだを私とお姉さまは、まるで私のインモラルな首輪姿をお披露目しているみたいに、しずしずと歩き回りました。
すべての川を巡り終えてたどり着いた、入口の側の一番奥まったところがお会計レジになっていました。
そのとき、レジ周辺にお客様は皆無でした。
みっつあるレジには、スーパーのレジ係さんにしてはお洒落な制服を召した奇麗な女性がおひとりづつ、曖昧な笑顔を浮かべて所在無げに、お客様の到来を待ち受けていたようでした。
私たちがその場に姿を見せた途端、いらっしゃいませー、と奇麗なハーモニー。
一斉にじっくりと注目されているのがわかりました。
お姉さまは余裕たっぷりで会釈を返し、そのまま近くの飲み物類のコーナーに向かいました。
私もあわてて追いかけます。
レジ係のお三方すべての視線が、私の赤い首輪に集中しているように思えて仕方ありません。
数秒後に、いらっしゃいませえー、と背後からお声が聞こえ、誰か他のお客様がレジに来たことがわかりました。
レジに背中を向け、飲み物を選ぶお姉さまの背中を見つめつつ、早くこの場から逃れたくて、居ても立ってもいられませんでした。
そんな私の気持ちも知らずお姉さまは、外国ビールのパックと白ワインを二本、じっくり選んでカートに入れ、ついでみたいな感じでお水とソフトドリンクの大きなペットボトルも2本、カートに入れました。
「さ、入口に戻って、今度は食材を選んでいきましょう」
お姉さまのお声に弾かれたように、一刻も早くこの場を去るためにカートを押して先を行く私。
お姉さまは、ゆっくりと後から着いてこられました。
レジから離れた入口のところに戻って一安心。
と思った途端に新しいお客様がご来店。
私のドキドキは休まる暇がありません。
「そのワンピ、明るいところで見たらあちこち、シミだらけね」
お姉さまが私の耳に唇を近づけ、ヒソヒソ教えてくださいました。
「お尻のところに、まあるくシミが広がっているの。まるでお漏らししたみたいに」
えーーっ、と思わず大きな声をあげそうになって、あわてて口を押さえました。
「座っていたから乾くヒマがなかったのね。感じまくっていた直子の自業自得よ」
からかい声のお姉さま。
ということは、さっき私がレジ前で背中を向けていたとき、レジのお姉さんたちに、私のお漏らしシミのお尻をずっと誇らしげにお見せしていたんだ。
私の中で何かがパチンと弾けた気がしました。
「さてとまず、野菜類ね。コールスローならキャベツとニンジン。あと、適当にサラダも欲しいから、レタスとキュウリ、タマネギも押さえておこうか」
入口近くのお野菜と果物のコーナー。
お姉さまがキャベツとレタスを見繕ってカートに入れました。
「キュウリとニンジンは直子に選ばせてあげる。直子が挿れたい太さのにしていいわよ」
もうっ!イジワルなお姉さま。
私が適当なのをカートに入れようとすると、
「あれ?そんなのでいいの?こっちのほうが太いわよ?」
なんておっしゃるのです。
「バナナもいいわね。あら、そこにゴーヤもあるわよ」
「ゴーヤ、気持ち良かったのでしょう?直子言ってたじゃない。帰ったら料理する前にあたしにやって見せてね」
矢継ぎ早の淫靡なお言葉たちにジワジワと翻弄され、私の理性はどんどん隅っこに追いやられつつありました。
その代わりに頭の中を支配し始めたのは、欲情。
ゴツゴツしたゴーヤを手にした途端、奥がキュンと疼き、雫が内腿を滑り落ちるのがわかりました。
もはや風前の灯火な理性では、自分のはしたない欲情をコントロール出来ないところまできていました。
公衆の面前で赤い首輪を着けて、裸の上に短いワンピース一枚の、見るからにマゾな私。
辱められて悦ぶ私なのだから、こんな状況を作ってくださった最愛のお姉さまに、精一杯お応えしなければいけないんだ。
私の首輪に、何人のお客様が気がついてくださったかな?
あ、あの女、マゾなんだ、って蔑んでくれていたらいいな・・・
そんな、被虐と恥辱の願望ばかりが、どんどんどん膨らんできていました。
お野菜類を選んだ後は、サンドウィッチ用のパンを選び、卵のパックを選び、今夜のお夜食用の冷凍食品をいくつか選びました。
移動するたびに何人かのお客様とすれ違います。
チラチラとこちらに投げかけられてくる、見知らぬ人からの視線。
ついさっきまでは、ひたすら恥ずかしいとしか感じられなかったその視線が、恥ずかしさと同時に、からだの奥を甘く切なく気持ち良く震わせてくるようになっていました。
チーズの売り場に移動して、そのゲームは始まりました。
「さっき冷凍食品売り場で、あたしお気に入りのピザはどれでしょう、って直子に選ばせたとき、直子、当てられなかったわね?」
「あ、はい・・・ごめんなさい」
「それは、直子があたしのことを真剣にわかろうと思っていない証拠よ。悲しいことに」
「いえ、そんなことは決して・・・」
「ううん。そうに決まってる。だから今後は、間違えたら罰を与えることにした。さ、あたしの好きなチーズを選んで」
厳しいお言葉とは裏腹に、薄く笑みを浮かべたお姉さまに促され、たくさん並んだチーズを真剣に見渡しました。
私はゴーダが好きだけれど、お姉さまがさっき選んだピザはモッツァレラ、でも同じものでは飽きちゃうっておっしゃるかもしれないし・・・
真剣に悩んで、一番一般的なチェダーチーズを指さしました。
「ぶー。何よ、さっきせっかく直子の作ったハムとチーズのサンドウィッチが美味しかった、って褒めてあげたのにさ。直子が使ったチーズは何?」
「ゴーダチーズです・・・」
「そう。あたしもゴーダが好きなの。ほら、それ取って」
お姉さまがショーケースに並べられたゴーダチーズを指さしました。
私の膝くらいの高さのショーケースから目的のものを取り出すには、前屈みにならなければなりません。
私たちの背後では、社会人ぽいカップルさんが、まったりとジャム類の棚を眺めていました。
もしも私が屈んだとき、その人たちが振り返ったら、突き出してせり上がったワンピースの裾から、お尻の中身まで覗けてしまうかもしれません。
一瞬のうちにそう考えて、それもいいかも、とも考えたのですが、結局私は、両膝を軽く曲げ、しゃがむように素早く屈んでゴーダチーズを取り、カートに入れました。
「はい。それでおっけーよ。でも間違えたからペナルティひとつね。上からみっつめのボタンを外しなさい」
「えっ?」
「ここに入る前にあたしが言った忠告と言うか命令、忘れちゃった?でももだってもえっも無し。ほら、さっさとしなさい」
「・・・はい」
右手を胸元に持っていき、素早くボタンを外しました。
襟元が前よりも開き、膨らみの肌がより目立つようにりました。
全身がキューッと火照りました。
「次はハムを選びましょう。ハム類は確か、こっちだったはず」
お姉さまが歩き出そうとして、ふと立ち止まり、私の耳に唇を寄せてきました。
「それと、今度から前屈みになるときは、両膝を曲げるの禁止ね」
耳の奥に熱い息をフーッと吹きかけられ、下の奥が盛大にヌルンと潤みました。
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*オートクチュールのはずなのに 08へ
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