2017年2月26日

非日常の王国で 15

 気がつくとあたりはすっかり暗くなり、ショールームには煌々と蛍光灯が灯っていました。

「・・・すっかり長居してしまいました・・・」
 耳の中にフェードインしてくるようなお声が聞こえるほうへ目を向けると、倉島さまたちがテーブルの傍らに集まっていらっしゃるのがボーッと見えました。

 その視線を下げて自分の姿に目を移すと、まだあの椅子に拘束されたまま。
 後ろ手錠でM字開脚、ずいぶんと緩んでしまった菱縄縛りのままでした。
 頭の中がボーッとしていて、なんだか事態が飲み込めません。

「あ、マゾ子、気がついたみたい」
 お声にもう一度テーブルのほうを見ると、メグさまが私を指さしています。
「まったくねー。気持ち良さそうにイキまくるだけイキまくって、コトンと寝ちゃうのだもの、いい気なものよね」
 里美さまがイジワルっぽくおっしゃいました。

「そう言えばマゾ子に、鍵を落としてしまったことについてのお仕置きを、まだしていなかったわね」
 里美さまが私に近づいてきます。
「今日はたくさんお買上げいただいたから、最後に特別サービスしちゃう」
 嬉しそうなお顔で私の顔を覗き込んでくる里美さま。

「記念写真を撮りましょう。本当はショールームでのお客様の店内撮影は上から固く禁じられているのだけれど、あなたたちは特別よ」
「マゾ子も倉島さんたちに服従を誓ったんだものね?」
「えっ?」
 里美さまのお言葉に不穏な感覚を覚え、思わず聞き返しました。

「あら?忘れたとは言わせないわよ?さっき、もっともっとってイキまくりながら彼女たちに、セイドレイになります、何でもしますって喘ぎながら宣言したじゃない?」
「ヨーコさん、だっけ?のお部屋がここから徒歩10分くらいで、そこが耽美研の溜り場にもなっているから池袋でよく遊ぶ、っていう話から盛り上がって」
「マゾ子もウィークディは仕事でこのへんウロウロしているから偶然会っちゃうかもね、っていう話になって」

「もし街中でマゾ子をみつけたら、わたしに連絡さえくれれば、好きに拉致していいってことになったじゃない?ヨーコさんちや女子大に」
「マゾ子も、よろしくお願いしますぅ、って喘ぎながら嬉しそうだったわよ」

「そ、そうなんですか?」
 まったく覚えていませんでした。

「その代わりラブトイズ類は必ずうちのショップで買うってことで、うちと耽美研とのあいだで契約成立したのよ?今更反故には出来ないわ」
 
 里美さまがお店の中をあっち行ったりこっち行ったりしながら説明してくださいました。
 私もようやく頭が回り始め、ドキドキオロオロしてきました。

「でも今日のマゾ子は普段のOL姿とはぜんぜん違う髪型だから、みなさんには不公平かな、と思ったのよ。だから記念写真」
「写真を一枚渡しておけば、髪型違っていても幾分探しやすいでしょう?ただし、あなたたちが違う人に声かけて騒ぎになってもわたしは一切関知しないわよ?」
 お三かたにイタズラっぽく告げた里美さま。

「どなたかケータイ貸してくださる?カメラ機能の性能がいいやつがいいと思うわ」
 里美さまのお声にご相談されるお三かた。
 やがてメグさまが一台、おずおずと差し出してきました。

「あら、最新のスマホじゃない。さすがに今どきの女子大生はいいもの持っているのね」
 受け取った里美さまが使い方をメグさまにお聞きになっています。

 私、こんな姿で写真撮られちゃうんだ・・・
 それも、今日会ったばかりの歳下の女子大生さんのケータイで。
 この数時間で数え切れないほどイきまくったからだが、性懲りもなくまたムズムズしてきます。

「マゾ子にもアドバンテージあげる。すぐにみつかっちゃって、彼女たちがうちのショールームに遊びにこなくなったらつまらないしね」
 後ろ手に何かを隠した格好で、里美さまが近づいてきました。

「さっき声のことでヨーコさんが興味あるって言っていたご趣味を満たすグッズよ。口を開けなさい」
 里美さまのご命令で恐る恐る口を開けると、グイッと何かを押し込まれました。
 ところどころ穴の空いたピンポン玉のような赤い玉、ボールギャグでした。

「んぐっ!」
 両方のほっぺを通る細いベルトの金具を頭の後ろに留められて、みるみる口の中に唾液が湧いてきました。

「それと、これね」
 背後に立つ里美さまの手からぶら下がった2つの鈎状の金具に、私の鼻の穴がひとつづつ釣り上げられる感覚があり、そのままグイッと引き上げられました。
そのままベルトがおでこを通り、これも頭の後ろで固定されてしまいます。

「むぐっ!んぶぁーっ」
 ボールギャグを埋め込まれた口では、言葉にならない呻き声にしかなりません。

「ノーズフックは初めて?みっともない豚っ鼻になっちゃった。でも仕方ないわよね、これはお仕置きでもあるのだから」
 里美さまが私の目の前に、わざわざ手鏡をかざしてくださいました。

 鼻先が押し上げられ、ふたつの鼻の穴が正面を向いて豚さんそっくり。
 赤い玉を咥えて半開きの唇をよだれで濡らしたツインテール。
 屈辱と恥辱にまみれた女の顔が、そこにはありました。

「えーっ!?これじゃあかえって素顔がわからなくなっちゃったじゃないですかぁー」
 ヨーコさまがカン高いお声で抗議のお声をあげました。
 だけどお顔はニコニコでとても愉しそう。
 肘で里美さまの腕をつつくように里美さまに擦り寄っています。

「でも、マゾ子の顔をこうしてみたかったんでしょう?大丈夫よ。街で似た子みつけたら、ちょっと鼻の頭上げてもらっていいですか?って声をかけて、写真と見比べればいいじゃない」
 笑いながらご冗談で返す里美さま。
 お三かたと里美さま、今日一日でずいぶん仲良しさんになられたみたい。

「それで仕上げはこれね。やっぱりセイドレイ女の記念写真なんだから、大事なところをちゃんと中までお見せしなくちゃね」
 里美さまがケースから取り出した瞬間にヨーコさまがお声をあげられました。
「あっ、クスコ!」

「そう。正確にはクスコ式膣鏡。さっき言ったネットショップ次回アップデートの、オトナのお医者さんごっこ、特集のメインアイテムになる予定よ」
「膣鏡は英語でスペキュラムっていうのだけれど、クスコ式だけじゃなく、今回世界中からいろんな種類のスペキュラムを集めたの。スペキュラム大特集、ぜひ見てね」
 おっしゃりながら指で私のマゾマンコを無造作に押し開く里美さま。

「んぐぅ」
「ほら、挿れるから力抜きなさい」
 ステンレスらしき冷たい感触がラビアを擦ります。
 やがて左右の膣壁がステンレスに押され、じりじりと穴が広がっていくのがわかりました。

「んーーっ、んぶぁ-」
 いやー、と言いたいのにボールギャグのせいで滑稽な唸り声にしかなりません。

「このくらいでいいか」
 里美さまの指が離れ、膣の中まで外気に晒されて明らかにスースーしている感触がありました。

「さあ、みなさんマゾ子の周りに集まって。3人だからひとりはマゾ子の後ろに回るといいわ」
 しばらくガヤガヤした後、一番背の高い倉島さまが私の背後に、右側にヨーコさま、左側にメグさまと配置が決まりました。

「うん、いい感じ。倉島さんは後ろから手を伸ばしてマゾ子の勃起乳首を引っ張るっていうのはどう?」
「あ、はいっ!」

 弾かれたようなお返事と共に、倉島さまの両手が伸びてきて、左右の乳首を指先でつままれました。
「んむぅ」
 倉島さまはすでにグローブを脱がれていて、少し汗ばんだ素手の感触にゾクッ。

「両隣のふたりはマゾ子のお尻をスパンキングね」
「あ、こんな感じですか?」
 パッチーンと大きな音をたててヨーコさまの素手が右の尻たぶに炸裂。

「んむぅー!」
「おお、キレイな手形がついた。いい感じよ」
 すかさずメグさまの素手もパチーン。
「むぅー!」

「それじゃあ撮るわよ。みんな笑顔でこっち見てねー」
 私も目線をカメラに向けます。
 倉島さまに両乳首を引っ張られ、ヨーコさまメグさまに尻たぶをバチンバチンひっぱたかれている合間に、カシャカシャと5、6回ほどシャッター音が聞こえました。

「おっけー。ちょっと待っててね」
 里美さまがスマホのディスプレイを凝視しつつ何やら操作されています。
「こっちかな、うーん、こっちか、やっぱこれかな・・・」
 数枚の内のベストショットを選んだのでしょう、やがてディスプレイをこちらに向けて近づいてきました。

「ほら、なかなか良いデキじゃない?」
 私もその写真を見ることが出来ました、

 横向けにしたディスプレイ画面長方形の中央に私。
 全裸に赤い首輪、だらしなく緩んだ亀甲縛りロープだけの全裸。
 口に赤いボールギャグ、ノーズフックの豚鼻、眉根にシワを寄せた悩ましくも醜いツインテールのマゾドレイ女が少し顎を上げ、虚ろに宙空を見ています。

 背後に立たれた倉島さまは、満面の笑顔で両手を前面に伸ばし、指先で私の左右の乳首をつまみ上げています。
 硬そうな乳首がグインと上向きに引っ張られて伸び切り、ふたつのおっぱいが下乳ごと不格好に持ち上がっています。

 左右に立たれたメグさま、ヨーコさまもカメラに向けて愉しそうな笑顔。
 右側のヨーコさまの右手と左側のメグさまの左手は、バックスイングの位置から振り下ろされるタイミングでブレていて、すごい躍動感。

 私の尻たぶは、左右ともに手の形に赤くなり、その中央にクスコで押し広げられたマゾマンコ。
 クスコの銀色がフラッシュの光で綺麗な星型の輝きを作り、クスコの穴の奥のピンク色も、そのすぐ下の菊の窄みも鮮明に写っていました。

「とてもマゾ子らしい写真が撮れた。はい。あなたからみんなにメールで送ってあげて」
 里美さまがメグさまにスマホをお返ししながらおっしゃいました。

「その写真、どう使っても結構よ。お友達に見せるもよし、印刷して部室に飾るとかね」
「うわー」
 一斉にピョンピョンはしゃがれるお三かた。

「あ、ネットにあげちゃうのもありですか?」
 ヨーコさまがお声を弾ませてお尋ねされました。
「うーん・・・ま、いいでしょう」
 里美さまが少し考えてからうなずかれました。

「その写真なら素顔のマゾ子を知っている人でもわからないくらいの変顔になってるし、位置情報とかも全部オフっといたから」
「んんぬーっ、むぅぐぬぅーーーっ!」
 そのお言葉をお聞きして、いてもたってもいられません。
 顔を左右にブンブン振り、言葉にならない唸り声をあげて精一杯抗議しました。

「あら、ずいぶん悦んでくれるのね?ネットで大勢の人にマゾ子の抉じ開けられたマゾマンコを見られちゃうのが、そんなに嬉しい?」
 イジワル度満点な里美さまの笑顔。

「心配しないで。ネットにあげるときは、ちゃんとモザイクかけるから。そうしないとあげたアタシらが捕まっちゃうでしょ?」
 ヨーコさまもニヤニヤ笑って愉快そう。
「アタシらだって、ネットに素顔なんて晒したくないから、ちゃんとボカスわよ。マゾ子の顔と裸以外はね」

 お三かたがお帰りの支度をされているあいだ、私はそのままの格好で放置されました。
 さっき撮られた写真での私の顔は無様に変形していて、普段私と接している人でも、被写体が私と分かる人はいないでしょう。
 でも、そんな破廉恥過ぎる姿がインターネット上に晒されてしまうかも、という不安と被虐が私を疼かせていました。

「それでは今日は、ありがとうございました。すごく勉強になりました。また近いうちに遊びにきますね」
 来られたときにはお持ちでなかった大きな紙袋を提げた倉島さまが、里美さまにペコリとお辞儀されています。

「はーい。こちらこそ今日はたくさんのお買上げ、ありがとうございました。また何か欲しいものあったらいつでも寄って」
 里美さまも満面の笑顔でご対応。
 それからヨーコさまのほうを向いてつづけました。

「池袋でマゾ子を探せ、ううん、最近の流行りで言うとマゾ子Goかな、まあ、なんでもいいけれど、がんばってね。あのオフィスビルのショッピングモールなんか要チェックな出現ポイントよ」
 するとメグさまが横からお口を挟んできました。

「ワタシ、自信あります。小さい頃から人の顔覚えるの、得意なんです」
 そうおっしゃって、じーっと私のほうを見つめてから里美さまに向き直りました。

「さっきの写真は確かに参考になりませんし、ヘアスタイルの変化もムズいんですが、パーツの中で特徴的なポイントを押さえておけばいいんです」
「とくにこうして実際に間近で見た人なら、背格好とか雰囲気も知っていますから、今度会ったら95パーセントくらいの確率でゲットする自信があります」
 私に向けてニコッと微笑まれるメグさま。

「そうなんだ。もしみつけたら拉致る前にわたしに必ず連絡ちょうだいね。一応、マゾ子のお姉さまの許可を取るから」
「はい、必ずそうします。それは別としても、必ず近いうちにまた、マゾ子にレクチャーしてもらいに来ます。今度はお医者さんごっこかな」
 ヨーコさまが私の股間を見ながらおっしゃいました。

「それじゃあ、もう暗いから、気をつけて帰ってね」
「はーい」
 ぞろぞろとショールームの出入り口ドアへと向かうみなさま。

 ショールームをお出になる前に、みなさまがもう一度私のほうを振り返り、お声をかけてくださいました。
「じゃーねー、またねー」
「マゾ子、また今度ねー」
「また遊ぼうねー、モリシタナオコさーん・・・」
 おっしゃってからクスクス笑いつつ、ドアのお外へと消えたお三かた。

 最後のお声は、ヨーコさまだったでしょうか?
 なんで?なんで知っているの?
 一瞬、頭の中がパニックになりました。

「おつかれさまー」
 お三かたを送り出して戻ってこられた里美さまが、スタスタと私に近づいてこられました。
 私の背後に回りテキパキとノーズフックを外し、つづいてボールギャグも外されました。

「直子ちゃんががんばってくれたおかげで、今日は大助かり。三人で5~6万くらい使ってくれたのよ」
 マゾマンコのクスコを外しながら教えてくださいました。
「やっぱり私立の女子大生ってお金持っているのね。部費でタイマーボックスとウイップ一本キャッシュで買った以外はカード支払いだったけれど」

「なんで、なんであのかたたちが私の名前、知っているのですか?」
 ボールギャグが外されて自由になった唇で、息せききってお尋ねしました。
「やっぱり気づいてなかったんだ?でもそれって直子ちゃんのミスよ」
 足枷の鎖を外してくださるためにひざまづいていた里美さまが、上体をひねってテーブルのほうを指さされました。

「あそこの椅子の上に、直子ちゃんがロープを入れてきた巾着袋を置きっ放しにしたでしょう?それに小さくだけれどバッチリ書いてあったわよ、ローマ字で、NAOKO MORISHITA、って」
「あっ!」

 そうでした。
 母があの体操服袋を作ってくれたとき、袋の下の方に目立たない感じで小さく名前を刺繍してくれたのだっけ。
 流麗な筆記体がカッコよくて、すごく嬉しかったことを不意に思い出しました。
 ずっと何かを入れて膨らんでいることが多く、そこまで目が届かずにすっかり失念していました。

 そうしているあいだにもテキパキと足枷と手錠も外され、晴れて自由の身。
 放置されているとき、お三かたがお帰りになった後もまだこのままで、今度は里美さまだけでじっくり、いろいろ虐められちゃうのかな、とドキドキしていたので、なんだか拍子抜けでした。

「ロープは自分で解いて、お手入れをしたら、ここで干しておくといいわ。月曜日にでもわたしがオフィスに持っていってあげる。お姉さまや早乙女部長さんへの、今日のご報告も兼ねてね」
 すっかりビジネスのお顔に戻られた里美さまに急かさられるように、自分のからだを這う菱沼縛りを解き始める私。

「あの子たち、かなり直子ちゃんにアテられていたわよ?倉島さんなんて瞳が妖しく潤んじゃって」
「たぶんヨーコさんちに行って、それからくんずほぐれつね。ターゲットは倉島さん。あの子が一番エムっぽいし、他のふたりからよってたかってだと思うわ。バイブをいくつも買っていったし、麻縄もあるし」
 愉快そうにおっしゃった里美さまが、白いバスタオルを差し出してきました。

「あのドアの向こうでシャワー浴びれるから。トイレ共用のユニットバスだから狭いけれど、浴びないよりはマシでしょう?床ビショビショにしないように、ちゃんとシャワーカーテン掛けてね」
「直子ちゃんがシャワーしているあいだに、ここ片付けておくから、一息ついたらどこかに晩ご飯食べに行きましょう。直子ちゃんは今日の売上の功労者だから、わたしが奢っちゃう」

 おやさしくてお仕事のデキる、いつものクールな里美さま。
 お三かたとご一緒に、ついさっきまでドエス全開だったのに、その見事な豹変ぶりにドギマギしつつも、謎の部分が多い里美さまに俄然興味が湧いてしまいます。
 差し出されたバスタオルを手に全裸でオフィス部分に足を踏み入れ、シャワーをお借りしました。

 小さなバスタブの内側にシャワーカーテンを施し、シャワーのコックを捻りました。
 少しぬるめなシャワーの水滴が勢い良く肌を滑り、汗や色々なヌルヌル体液をキレイに流してくれます。

 二の腕やおっぱいの裾野にうっすらと縄の痕。
 まだ熱を持っているお尻と性器。
 そういったところを手で撫ぜていると、今日みなさまの前で行なった恥ずかし過ぎるあれこれがまざまざと脳裏によみがえってきました。

 お姉さまの会社に勤め始めてから、あきらかに私のマゾ度は上がりました。
 より自虐的に、より淫らに、より貪欲に。
 
 それまでは自分ひとりで自分のお部屋で、こっそりと行なっていた非日常的ヘンタイ行為。
 そんな行為をする場所が勤務中のオフィス、イベントショーのステージ、街中のカフェ、今日のように他人様のお店のショールームと、どんどん広がっていました。
 日常的だった場所が、どんどん非日常に侵食されているのです。

 そして、私がヘンタイ行為を、そういった開かれた場所でご披露するたびに、私を辱める権利を持つ人たちが増えていきます。
 今日も初めて出会った倉島さま、ヨーコさま、メグさまが、その権利を得ました。
 街で出会って何かご命令されたら、私は服従しなければなりません。
 私は、そういう人間、だとお三かたに認識されてしまったのですから。
 
 まるで王様ゲームで、ひとり負けつづけの罰ゲーム狙い撃ち状態。
 私の非日常的行為を目撃されたかたたちが次々に王様となり、私に恥辱たっぷりのご命令を下してくるのです。
 最愛のお姉さまが全体を統べる非日常な王様だらけの王国で、たったひとりだけドレイな私・・・

 激しいシャワーに肌を打たれながら、そんなイメージが湧き上がっていました。
 そしてその王国を私は、とても居心地良く感じていました。
 被虐が欲情となり、肌が上気してきます。
 今夜、この後お家に帰り着くまでこの身を委ねる王様に、想いを馳せます。

 里美さまは、どこへお食事に連れていってくれるのかな?
 普通にお食事するだけなのかな?
 お食事中に何か恥ずかしいご命令をくださるかな?
 あれほどイキまくって一時は眠ってしまったほどなのに、性懲りもなくマゾの血が滾り始めていました。

 もしも私が王様ゲームに勝って命令の権利を得たとしても、王様を辱めるような命令を下すことでしょう。


三人のミストレス 01

2017年2月19日

非日常の王国で 14

 椅子の背もたれに背中を押し付け、動かせないからだを小刻みに捩りつつ、果てたと思ったらまたすぐ昇りつめる、をくりかえします
 クネクネと身悶えるたびに、汗とよだれを吸った縄地が、濡れた素肌をヌルヌルと擦っています。
 
 どれだけイッても、二穴一豆責めのバイブレーターたちは動きを止めてくれません。
「あっ、あーっ!いやっ、またっ、あっ、あんっ、あーーっ!!」

「マゾ子のいやらしいヨガリ声、ちょっとうるさくないですか?」
 私のお尻をバチンバチン叩きながら、ヨーコさまが里美さまに尋ねました。

「そう?わたしはとくに気にならないけれど・・・」
 ビデオカメラのレンズを私の股間に向けたまま、里美さまのお答え。

「こういう調教プレイだと、真っ先にボールギャグとかかませて言葉を奪っちゃうじゃないですか?とくに海外のボンデージものなんか」
 ヨーコさまが幾分不服そうにお言葉をつづけました。

「そういうのも支配欲ていうか隷属感が出ていいな、とも思うんですよね。でもテーブルの上に口枷とかマスクの類が見当たらなかったから・・・」

「ああ、声がうるさくないか?って聞いたのはそういう意味だったんだ」
 里美さまが構えたレンズをスーッと私の顔のほうへと上けつつ、おっしゃいました。

「それはね、マゾ子のお姉さまのご要望でもあるの、今日の様子を記録して後で見せるように言われているから」
「彼女はね、ボールギャグとか目隠しとかドレイの顔を弄るプレイは好みじゃないのよ。前頭マスクなんてもってのほか」

「普段取り澄ましている顔が、責められることによってどのくらい浅ましいスケベ顔になるのかを視て愉しむ、根っからの顔フェチなのよ」
「それに言葉で辱めて会話しながら弄ぶタイプでもあるから、めったに口は塞がないらしいわ。このマゾ子はそういうお姉さまに躾けられているの」
 
 あなたたちのことは何でも知っているのよ、とでもおっしゃりたげな、はっきり私に向けての里美さまのお言葉。

「そうなんですか・・・アタシは、そういう、ドレイをモノ扱いする、みたいなシチュも好物なんすけどね」
 ちょっぴり未練がましくおっしゃったヨーコさまが、気を取り直すようにつづけました。

「ただ、ボールギャグ云々以前に、マゾ子の喘ぎ声が大き過ぎてご近所、お隣とか上の部屋まで聞こえちゃわないか、っていう心配もあるんですが・・」
「ああ、その点は心配いらないわ」
 里美さまが間髪を入れずにお応えされました。

「ここはね、以前喫茶店だったのよ。夜営業でカラオケ入れていた時期もあったらしくて、防音はしっかりしているの」
「でなきゃわたしも、こんなに自由にマゾ子を喘ぎっ放しにはさせとかないわ。たちまちご近所から苦情が出ちゃう・・・」

 そこまでおっしゃって何かを思いついたらしく、考えを整理するような少しの間の後に、再び里美さまのお声が聞こえてきました。

「あなた、面白いことに気づかせてくれたわね。マゾ子のいやらしい声を黙らせる遊びを思いついちゃった。ボールギャグなんか使わなくても」
 お言葉の後にニヤリと唇を歪ませたお顔までが見えるような、里美さまの嗜虐的なお声。

「わたしがマゾ子と最初に出会ったのは、とあるファッションビルに入ったランジェリーショップだったのよ」
 里美さまがビデオカメラを私から逸らしたのは、おそらく録画を中断されたのでしょう。

「マゾ子と今のお姉さまが一緒にフィッティングルームに入って、ランジェのフィッティングにかまけて何やらイカガワシイ行為を愉しんだのね、他のお客様がひっきりなしに出入りする営業中に」

「わたしはそのときお店のレジにいて、確か一時間以上もふたりで篭ってた。ふたりが出てきた後、フィッティングルームの中に何とも言えないメスクサい、いやらしい臭いが充満していたわ」
 里美さまが私の顔を覗き込み、ニッと笑いました。

「それがマゾ子とお姉さまの幕開けだったのよ。後から聞いたら、薄っぺらな板で囲まれた狭いフィッティングルームの中で、マゾ子だけ全裸になってマンコ弄られてたみたい」

「売り場との境界も薄っぺらなカーテン一枚よ?その中で真っ裸。試しにお姉さまがカーテン閉めずに売り場に出て放置してみたら、マゾ子、ガタガタ震えながらも健気に表に裸晒したままお姉さまのお帰りを待っていたんだって。その頃から露出狂のドマゾだったのね」

 ヨーコさまに私の声を咎められたときから、私はなるべく悦びの声を我慢するように努めていました。
 もちろんそのあいだも下半身の三点責めバイブレーターは容赦なく私の秘部を蹂躙しつづけていました。
 
 その上、私の恥ずかし過ぎる過去を喜々としてみなさまにご披露しちゃう里美さま。
 物理的刺激に精神的恥辱が加わってオーガズムのインターバルが短かくなり、イッちゃだめ、と思うのにイッちゃうイキっぱ状態。

 それでもなんとか唇を噛み締めて声を押し殺し
「んーーー、んぐうぅ、んっ!!!、はぁはぁはぁ・・・」
 のくりかえし。

「あのときマゾ子は必死に声を我慢していたはずよ。あのとき出来たのだから、それを今もやればいいだけでしょ?」
 イジワルくおっしゃった里美さまが再びビデオカメラを構えられました。

「あっ、今気がついたのだけれど、タイマーボックス、とっくに解除になっていたみたい。もう6時をずいぶん過ぎちゃってる」
 確かにお部屋内がけっこう翳ってきていましたし、里美さまのビデオカメラにもいつからかライトが灯っていました。

「そういうことだから、最後にヨガリ声を押し殺したまま、マゾ子に盛大にイッてもらいましょう」
「ぁぅっ!」
 里美さまが片手のカメラを私に向けたまま、もう片方の手で器用に私の右乳首にさっきの舌鉗子を挟みました。

「どなたか手の空いている人、わたしが合図したらそこの窓を開けてくれる?」
 私の左乳首にも舌鉗子を噛ませた後、私の顔の右横にある窓を指差す里美さま。
 
 お向かいのビルの窓に明かりが灯っているのが見えました。
 その向こうにはいくつかの人影もあるような。
 
 えっ、あの窓を開けちゃうの・・・
 今にもその窓が開いて、ひょっこり誰かお顔を出しそうな気になってきます。
 そこから覗かれたら私の姿は何もかも丸見え・・・
 ああん、そんな・・・
 不安な心とは裏腹に、からだがグングン昂ってビクンビクン!!!

「あの窓を開けたら、あなたのヨガリ声が表の通りに筒抜けになるのは、わかるわよね?」
 里美さまがレンズを向けたまま尋ねました。

「んんーーーっ!!!はぁ、はぁ、はいぃ・・・」
 小さく喘いででうなずく私。
 ちょうどイったタイミングなので息も絶え絶えです。

「今も必死に声を我慢しているみたいだけれど、もしもいやらしく大きな喘ぎ声出したら、通りからこのビルが注目されちゃうわよね?」
 大きく肩で息をしながらうなずく私。

「えっちな声って耳を引くから、誰かがこの部屋に踏み込んできたり、向かいのビルの窓が開いちゃうかもしれない」

「それでヘンな噂がたって、わたしのショップがこのビルから追い出されたりしたら、あなたのお姉さまはとても悲しむわよね?」
「んっ、んーーっ、は、はいぃぃ」
 性懲りもなくまたまた高まっていく私。

「だったらあなたがどうすべきか、わかるわね?」
 そうおっしゃって、タイマーボックスから手錠の鍵を取り出された里美さま。

「我慢なさい。何をされてもいやらしい声を出さず、ひたすら我慢しながら昇りつめなさい。あのランジェリーショップのときみたいに」
 水飲み鳥のお人形見たく、ひたすら頭をコクコク前後させてうなずく私。

「窓を開けたら、あなたの手にこの鍵を握らせてあげるから、自力で手錠を外しなさい。手錠が外れたら今日のお役目終了よ。外せなかったり鍵を落としてしまったら、別のお仕置きを考えるから」
 イジワルっぽくおっしゃって、私から少し離れました。

「さあ、あなたたちもラストスパートで遠慮せずに思い切り虐めちゃって。マゾ子が声を我慢出来ないくらいに」
「はーい!」
 嬉しそうなお声があがり、メグさまが早々と窓辺に駆け寄りました。

「おーけー。それじゃあ窓開けて。全開ね」
 里美さまのお声にザザーッというサッシを開ける音がつづき、街の雑踏がお部屋を満たします。
 
 6時過ぎと言えばオフィス街の退社時刻。
 このビルは地下鉄駅にほど近い通りに面していますから、聞こえてくる人々のおしゃべりや靴音、車のエンジン音やクラクションなど日常的な喧騒と、今の自分の破廉恥過ぎる状況とのギャップが、羞恥心や背徳心を大いに掻き立ててきます。

「はい、これが手錠の鍵ね」
 椅子の背もたれ越しに括られた右手に、小さな金属片が握らされました。
「マゾ子が脱出するまでに何回イカせられるかチャレンジー、はじまりー」
「んんーーーっ!」

 里美さまの号令とともに私のからだに群がる何本もの手。
 ラテックスの感触に乳房を揉みしだかれ、お尻を撫ぜられ。
 
 今までよりもずいぶん積極的に動き回るお三かたの愛撫で、みるみる昇りつめていく敏感過ぎる肉体。
 右手の鍵を握り締めたまま、しばらくは声を我慢することに必死でした。

 どなたかの手が膣のバイブを捏ね上げ、どなたかの手がアヌスのバイブを抜き挿し、どなたかの手が乳首の舌鉗子を引っ張り。
「んぐっ、ん、むぅ、ぬぅ、んんぅぅ、んっっ、んっ、ぐぅぅっ!!!」

 いくら口を真一文字につぐんでも喉の奥から歓喜のわななきが洩れてしまいます。
「んぬぅぅーーーっ!!!」
 早くも今日何度目なのかもはやわからない、ラストスパートでの最初のオーガズム。

 それから右手の鍵を闇雲に左手首の手錠の側面に擦りつけ始めました。
 どこかに鍵穴があって、そこに嵌りさえすれば手錠が外れるはず・・・
 だけど鍵の先端は虚しくスチールの上を滑るばかり。
 そうしているうちに高まりがあっさりピークに達します。

「んんーーっ、ぁ、ぅ、ぅぅぅ、んぁ、んあぁっーーーーー!!!」
 どなたかの指でクリトリスを思い切り引っ張られ、思わず大きな声が。
 その拍子に右手から鍵がポロッ!

「あっ、マゾ子、鍵落としちゃったみたいですよ?」
 どなたかのお声が聞こえて初めて、私もしてしまったことの重大さに気がつきました。

「はぁ、はぁ・・・はぁぅうーーんっ!」
 我慢しようとしても、喉の奥から嗚咽のような嘆息が漏れてしまいます。

「あーあ。これは窓開けておくとヤバそうね。この子もう、理性ゼロのケダモノぽい」
 里美さまの呆れきったお声が聞こえました。

「マゾ子はもう解放される術を自分から放棄しちゃったのだから、とことんイッて壊れてもらうしかないでしょうね」
 心底蔑んだお声とともに窓が閉じられ、街の喧騒がピタッと聞こえなくなりました。

「ほら、もう声我慢しなくていいよ。マゾ子のして欲しいこと、なんでも言ってごらん?」
 里美さまが私の顎を乱暴に掴んで真正面から見据え、頬を軽くパチンとぶたれました。

「あん、はいぃ、もっと、もっとください、もっと直子をめちゃくちゃにしてくださぃぃ・・・」
 鍵を落としてしまったのを知った途端、すっごく悲しい気持ちになっていました。
 涙がポロポロと落ちるのに、からだは疼いて疼いて仕方なく、更なる刺激と陵辱を求めていました。

「ごめんなさいぃ、もっと、もっとしてくださいぃ、やめないでぇ、いじめてくださいぃぃ・・・」
 唇が勝手に動いていました。
 して欲しいことがスラスラと口をついていました。
 ぶってください、つねってください、開いてください、噛んでください、突っ込んでください・・・
 
 それからはよく覚えていません。
 里美さまには、何度かビンタをされ、そのたびに激しいくちづけをくださった気がします。
 すべてのバイブが抜かれた後、そこからはみなさまの指であらゆるところを陵辱されたと思います。
 どなたかに鞭を振るわれ、ひどいお言葉をたくさん投げつけられ、みなさまに謝りながら何度も潮を撒き散らしたはずです。

「いい、そこそこ、もっと、奥まで、いやーっ、ああ、イッちゃう、イッちゃうぅぅぅ!!!」
 
 喉がカラカラに涸れるほど喘ぎまくり、イキまくりました。


非日常の王国で 15


2017年1月29日

非日常の王国で 13

 股下が空洞になっている卑猥な椅子に、思い切り恥ずかしい格好で戒められている私。
 これからされることへの不安と期待で胸が張り裂けそう。
 M字に広げられた両腿の向こうに、テーブルに群がったお三かたのキャピキャピはしゃぐお姿が見えています。

「うわー。何?このイボイボ」
「これってたぶん、吸いつくんだよね?」
「あ、これがお尻用じゃない?」
「こんなの入るのかしら?」

 弾んだお声とは裏腹な、妄想を徒にかきたてる不穏なお言葉がどんどん聞こえてきて、ゾクゾク震えてしまいます。
 からだは熱いのに鳥肌が立っているみたいに、全身の皮膚が戦慄いています。

 やがてお三かたが私の傍らに戻っていらっしゃいました。
 手に手にカラフルなラブトイズを嬉しそうに握って。

 里美さまがキャスターの付いた、いかにも病院に置いてありそうなステンレスのワゴンを運んできて、私の傍らに据えました。
 一番上段のトレイには真っ白なタオルが敷いてあります。

「あ、それを選んだんだ。なかなか良いセンスよ」
 里美さまが、メグさまのお持ちになった赤色のバイブレーターらしきアイテムに目を遣り、愉快そうにおっしゃいました。

「それを試すのだったら、やっぱりみんな、これを身に着けておいたほうがいいかもね」
 里美さまがワゴンの下段に積んであった箱から何か取り出されました。

「このマゾ子はね、感極まってイキまくると、だらしなく潮まで吹いちゃうらしいのよ」
「あなたたちの綺麗なお洋服が、こんな淫乱マゾ子の潮まみれでグショグショになっちゃうなんて嫌でしょう?」
「これ、使い捨てのエプロン。これも医療用なの。トイズはいったん、そのトレイの上に置いて着るといいわ」

 里美さまがみなさまに手渡したのは、半透明な水色の薄いポリエチレン製らしきエプロンでした。
「介護現場とかで使われる本格的なものよ。これなら万が一マゾ子が潮噴射しても、みんなのお洋服を汚さずに済むはずよ」
 おっしゃりながら私の足元にもシーツらしき布地を敷く里美さま。

「アタシ、誰かが潮吹くの見るなんて、初めてっ!愉しみっ」
「あ、これ、ちゃんと袖まである。それに袖口にゴムが入っているんだ。すごーい」
「こんなの着ちゃうと、ますますアブノーマルな人体実験ムードが高まってきちゃうよね」
「うん。本格的に、お医者さんごっこ、っていう感じがしてきた」

 ポリエチレン地がガサガサいう音に混じって、お三かたの愉しそうなお声が聞こえてきます。
 背中の紐をお互いに結びっこして、やがて再び私の周りに集まっていらっしゃいました。

 背もたれを挟む形で後ろ手に、手錠拘束された両腕。
 椅子の肘掛けを跨ぐ形で大きくM字に開かれたまま、鎖に繋がれた両脚。
 ソックスと首輪以外全裸のからだを、菱縄縛りで締め付ける麻縄。
 麻縄に絞られたおっぱいの先端二箇所にぶらさがる、無機質に光る舌鉗子。
 そして絶望的広げられた股間を更に恥ずかしく粘膜の奥まで白日のもとに晒し上げている、ラビアに噛み付いた2本の舌鉗子。

 そんな格好で身動きの出来ない私を、まじまじと見つめてくる好奇に満ち溢れた6つの瞳。
 そのうちのいくつかはすでに、好奇から嗜虐へと輝きが妖しく変わっている気がしました。

 私、これからこのかたたちに、自分が浅ましく喘ぎ悦ぶ痴態のすべてを視られてしまうんだ・・・
 何をされてもあがらえない、こんな無様な姿のまま、みなさまが飽きるまで弄ばれ、嬲られ、辱められるんだ・・・
 被虐が極まり過ぎて、もうその視線だけでイッてしまいそう・・・
 
 その後ろには、里美さまの心底愉しそうなふたつの瞳が見えました。

「グッズで虐める前に、みんなの手だけでマゾ子をリラックスさせてあげよっか?だってほら、マゾ子ったら、あんなに怯えた目になっちゃてる」
 里美さまが私の頭の横まで近寄ってこられ、おもむろに右手を伸ばしてきました。

「お医者さんごっこで言えば、さしずめ触診ね。ほら、こんなふうに」
「あうぅ!」
 里美さまの右手が私の右おっぱいをむんずと掴み、乱暴にワシワシ揉みしだき始めました。
「うん。乳房にシコリはないようね。シコっているのは乳首だけ」
 お芝居じみた里美さまのお声。

「あっ、あっ、あーっ」
 里美さまが指のあいだに逃した舌鉗子の柄が、おっぱいに噛み付いたまブルンブルンと揺れて右乳首がちぎれそう。
 痛みと陶酔の入り混じった甘美な快感に、たまらずからだが大きく跳ねたがります。
 だけど、両腕両脚をガッチリ拘束されたからだは、うねうね身悶えるばかりで、全身に張り巡らされた麻縄が無駄に肌へ食い込むばかり。

「ほら、あなたたちも遠慮しないでやってみて。どこでも好きなところ診察しちゃって」
 今度は左おっぱいを揉み始めた里美さまのお言葉に、お三かたが近づく気配。
 すぐに、そっとお腹や太腿を触られる感覚がつづきました。

「肌がすっごく熱くなってるー」
「ロープもけっこう張りつめているんだね。皮膚に食い込んじゃって、なんか痛々しい」
「マゾ子のお肌スベスベー。でもこの手袋で触ると、なんかヘンな感じ」
「うん。何て言うか大胆になれるよね?うちらでイチャイチャしているときとは違って、相手は実験の被験体なんだから何してもいいんだ、っていう気になってくる」
 最後に恐ろしいことをおっしゃったのはヨーコさまでしょう。

 私のからだを8つの手のひら、40本の指が這い回っていました。
 ラテックスグローブで撫ぜ回される感覚は、素手でされるよりも無機質ぽく、撫ぜている人の感情の情報量が少ない感じがしてかなり不気味。
 目を閉じると胸を、お腹を、脇腹を、内腿を、無数の爬虫類がペタペタと這い回るような錯覚にとらわれました。

「はうっ!あっ、そこはっ!」
 どなたかが下腹部の縄を引っ張ったのか、縄が腫れている肉芽を擦りました。
「うわ、いやらしい声」
 すかさずどなたかの嘲るようなつぶやき。

 撫ぜ回されているうちに全身の皮膚がどんどん敏感になり、切ない感情が湧いてきます。
 ああ早く、もっと決定的なところを触ってください・・・
 そこじゃなくて、もっと下、もっと弄られたがっている私の一番はしたない裂けめ・・・
 そう思ったとき、ヌルっと襞を撫ぜられる感触がしました。

「はうっ!」
 自分でもびっくりするくらい大きな声が出てしまい、それが合図だったかのように一斉に私の下半身への陵辱が始まりました。
 ピチャピチャと恥ずかしい音が聞こえてきます。

「うわー。中まで熱いー」
 舌鉗子で抉じ開けられた膣の中をグルグル陵辱する指。
 膨らんだ肉芽をグリグリつまみ上げる指。
 わしづかみで左右のおっぱいを揉みしだきつづける里美さまの両手とともに、みるみる昂ぶっていく私。

「あーーいいっ、いいっ、そこぉ、ああーっ・・・」
「んんーーっ、もっと、もっとぉー、んんーっ、んぐぅーー」

「うわっ、マゾ子、えげつない声」
「こんな格好でこんなことされて、恥ずかしくないのかしら?本当にヘンタイだね」
「全部の穴、おっ広げちゃって、本気汁ダラダラ垂らしちゃって」
 歳下のかたたちからのお言葉責めが耳に心地いい・・・

 快感に翻弄されながらも、一本だけ不穏な動きをしている指の存在にも気づいていました。
 私の愛液をまぶしたのであろうヌルヌルした指先をお尻の穴にスリスリ撫でつけてくる指。
「あ、そこは・・・だめっ、だめぇーっ、いやぁーーーっ!」
 菊門が抉じ開けられ指がヌルリと侵入してくるのがわかりました。

「うわー、スルッと入っちゃった。中でキュッキュと締め付けてくるー」
 愉快そうなヨーコさまのお声が聞こえ、挿入した指を中でグルグル動かし始めました。
「だめぇー、動かしちゃだめーっ、いやーっ、ゆるしてくださいぃーーっ!!」

 アヌスにズッポリ埋め込まれた指と膣内奥深く潜り込んだ二本の指で、からだの内側から掻き回されます。
 そのあいだにも腫れ上がった肉芽は執拗に捏ね繰り回され、乱暴な手のひらに乳房をもてあそばれています。

「あっ、いやっ、だめっ、もうっ、もうーーーっ」
「どう?面白いでしょう?このままイカせちゃいましょうか?」
 里美さまのお言葉にビクンとからだが震え、のけぞらせていた頭を少しだけ上げ、薄目を開けて自分のからだのほうを見ました。

 舌鉗子が噛み付いた左右乳首を思い切り引っ張る、里美さまの愉しそうなお顔。
 膣の中を掻き回しているのは童顔のメグさま。
 クリトリスを潰していらっしゃるのは、火照ったお顔の倉島さま。
 そして、アヌスに指を挿入してもてあそんでらっしゃるのが、お三かたの中で実は一番ドエスらしいヨーコさまのようです。

「ほら、マゾ子、イッちゃいなさい。虐めてくださるみなさんに感謝して、マゾらしく浅ましく、イッちゃいなさい」
 里美さまの蔑みきったお声に、みなさまの指の動きがいっそう活発化しました。

「ああーーっ、いいっ、いいっ、ィきます、イッちゃいますぅ、あ、ありがとー、ありがとーござまーぁっ!!」
「誰か片手の空いている人、マゾ子のお尻を叩いてやって、そうすればこの子、もっと気持ち良く啼くはずだから」
「あ、はーい」
 アヌス担当のヨーコさまが左手で私の尻たぶを平手打ちし始めます。

 ピシャっ!
「あーーっ!」
 ピシャっ!」
「いいーーっ!」
 ピシャっ!
「もっとぉー、もっとつよくぅ!!・・・」

 もはや頭の中は真っ白でした。
 それでもヨーコさまが私のお尻を叩くたびに、ほらっ、イけっ、イッちゃえっ、このいやらしいメス豚がっ!と小さくつぶやかれているのは、聞こえていました。
 そして、乳首への疼痛も、クリットへの摩擦も、膣壁への圧迫も、アナルへの蹂躙も、尻たぶへの痛みも、からだが全部感じ分けていました。
 それらの刺激がやがて快感という一本の太い激流となって、全身が溶け出してしまいそうなほどの恍惚感に包まれました。

「ああーっ、イキますぅ、イッちゃいますぅぅぅーっ、ううぅぅぅーーーっ!!!」
「うわーーっ、膣の粘膜がキューッと締まって蠢いたよ!?」
「アヌスもっ!すっごい締め付け・・・」
「下腹がヒクヒクしてる・・・これは完全にイッたね?すごいもん視ちゃった・・・」

 みなさまが興奮されたお口ぶりでガヤガヤおっしゃるのを遠くお聞きしながら、すさまじい快感に酔い痴れていました。
 全身の力はグッタリと抜けているのに、おっぱいと下腹部と両腿がそれぞれ別の生き物みたいに、上下したりヒクついたり。
 里美さまがいつの間にか、ビデオカメラを私に向けていました。

「さあ、これだけ深くイッたマゾ子は、ここからはケダモノよ。何やってもいイきまくるはず。今度はトイズをどんどん使ってマゾ子を壊しちゃいましょう」
 里美さまが近づいてきて、乳首の舌鉗子を外してくださいました。

 まず右から。
「あーーっ!」
 そして左。
「あーーーっ!」

 血流が戻る激痛もイッたばかりの余韻の中では、次の欲情を呼ぶ前戯でした。
 つづいてラビアを挟んでいた舌鉗子も外されました。
 大陰唇がジンジンと痺れ、濁った愛液がドロリと滴ります。

「マゾ子のマンコ、鉗子を外されても半開きのままだね?」
 メグさまが可笑しそうに指さしておっしゃいました。
「発情しちゃってるからだよ。何か咥え込みたくて仕方ないんだ、このメス豚の淫乱マンコ」
 ヨーコさまも嘲るようにおっしゃいます。

 お三かたがワゴンのトレイから、それぞれが選ばれたラブトイズをお手に取り、私に近づいてきました。
 もはやこの場にいるかた全員が、冷酷なサディストの笑みを浮かべてらっしゃいました。

 舌鉗子を外され菱縄縛りだけとなった私の裸体を、ニヤニヤ眺めるみなさま。
 おねだりするように尖る乳首と肉芽。
 敏感な箇所をどこも虐められていないことが、かえって疼きを掻き立ててきます。

「イボイボバイブとアナルバイブにクリットローターか。みんな自分で使ってみたいトイズを選んだのかな?」
 里美さまがお三かたのお持ちになったトイズを見て、からかうみたいにおっしゃいました。

「まさかー。アタシ、アナルバイブなんて挿れたくないしー。マゾ子が好きそうなやつを選んでみたんですよ」
 ヨーコさまが代表して、笑いながら否定されました。

「それじゃあいっぺんに装着して、しばらく放置して、マゾ子が壊れていくさまをじっくり見させてもらいましょうか」
 含み笑い混じりのゾクゾクしちゃう里美さまの声音。
 お三かたが私の下半身に群がりました。

 どなたかの手で私のマゾマンコにバイブレーターがズブリと突き立てられました。
 何の前触れもなく、あたかもそれが当然のことのように。
「ああーーっ!」
 胴体にイボイボを纏った、あの赤いバイブレーターのようです。
 かなり太い。
 その一撃で膣内がパンパンに満たされました。

 少し遅れて菊門に異物。
 アナルパールに似た感触が直腸内に、さっきの指先よりも奥まで潜り込んでくる・・・
「ああん、いーやぁーーーっ!」

 同時にクリトリスが何かに吸い付けられて引っ張られる感覚。
 倉島さまの背中が私の股間に覆いかぶさっています。

「まだスイッチを入れては駄目よ。バイブやコントローラー類は、落ちないようにローブに挟んじゃえばいいわ」
 里美さまのお声と同時に、あちこちで麻縄が食い込む感覚がしました。

「なるほどー。股縄していると便利ですねー」
 ヨーコさまの感心したようなお声とともに、マゾマンコとアナルのバイブが縄に押され、より奥深く侵入してきました。
「あぁ、うぅぅ・・・」

「うわー。これが有名な二穴挿入ってやつですね?おまけにクリちゃんまでこんなに腫れ上がらせちゃって」
 ヨーコさまの嬉しそうなお声。

「これでバイブ動かしたらマゾ子、本当におかしくなっちゃうんじゃない?」
 メグさまが心配してくださっています。

「あたし、マゾ子さんのこと、ちょっと羨ましいような気にもなってきちゃった・・・」
 マゾっ気を刺激されちゃったらしい倉島さま。

「いいわね?始めましょう。くれぐれも潮には注意してね?」
 イタズラっぽくおっしゃった里美さまがビデオカメラを構え直されました。
「それでは一斉に、スイッチ、オンっ!」

 里美さまの号令と共に、私の下半身が別の生き物になりました。
 膣壁を、腸壁を、陰核を震わせる強烈な振動。
 大量の虫の羽音のようなヴゥーンという低音に包まれた下半身がみるみる蕩けだしていきます。

「あーーっ、いいーっ、イクっ、イーークゥーっ、ああああーーーっ!!!」
 数秒も保たずに第一波到達。

 でも振動は止まること無くつづき、絶頂の余韻をかき消すように、第一波を凌駕する快感が襲いかかります。
「いいーーーっ、だめぇーっ、もう、もう、もう、イーーークーーーゥっ!!!」
「いやーっ、ゆるしてぇーっ、こわれちゃうぅーっ、いいっ、いいっ、イクゥゥゥっ!!!」
「あっ、またくるっ!きちゃうっ、イッちゃうっ!イッちゃうゥゥーーーっ!!!」
 得も言われぬ甘美な痺れが下腹部から太腿にかけてたてつづけに炸裂しました。

「すごいねー。気持ち良さそー」
「マンコから愛液ダラダラだー。よだれもダラダラー」
「でも下半身は凄いけど、おっぱいがブルンブルン揺れているだけで、刺激が無くて寂しそうだね?」
 最後にメグさまがポツンとおっしゃったお言葉に里美さまが応えました。

「あ、それだったらいいものがあるわ。あなた、ちょっとこれを引き継いでくれる?好きなところにレンズ向けていればいいから」
 撮影されているビデオカメラをメグさまに預け、その場を離れる里美さま。

 そのあいだも私は何度も、イキつづけています。
 イクたびに快感は大きく深くなり、休む間もなく頭の中がスパークしていました。
「いやーっ!だめーっ、もう、もう、とめてーっ、あっ、あっ、いいっ!もっと、もっとぉぉぉっ!!!」

 何度目かに達しようとしていたとき、乳首に新たな刺激を感じました。
 いつの間にか里美さまがお戻りになり、私の右乳首に木製の洗濯バサミを噛ませていました。
「はうぅっ!」
 久しぶりの刺激に乳首の感度が一段上がります。

 里美さまは無造作に、いくつもの洗濯バサミを私の肌に噛ませていきます。
 左右の乳首はもちろん、乳首を囲むようにおっぱいの皮膚をつまみ、左右の脇腹をつまみ、下腹部をつまみ。
 私の上半身は洗濯バサミだらけになっていました。
 それらの洗濯バサミはすべて一本の紐に繋がれていて、その紐の端をビデオカメラと引き換えにメグさまに握らせました。

「いい?マゾ子。次にイキそうなときは、自分でカウントダウンしなさい。そうね、5から0まででいいわ」
 里美さまのご命令口調。
「あっ、はっ、はいぃっ・・・」
 私はすでに、洗濯バサミの痛みで、イク寸前まで高まっていました。

「あなたはマゾ子がゼロって言った瞬間に、その紐を思い切り引っ張るの。マゾ子のこの上ない歓喜の悲鳴を聞けるはずよ」
 愉快そうな里美さま。
「は、はいっ!面白そうっ!」
 お声を弾ませるメグさま。

「あなたたちはマゾ子のお尻を思いっきりひっぱたくといいわ。それもマゾ子にはご褒美だから」
「はいっ!」
 愉しそうな倉島さまとヨーコさまのユニゾン。

「マゾって凄いね。本当に痛さも快感になっちゃうんだ」
「あたしも自虐趣味あるけど、マゾ子さんに較べたらまだまだだな」
「ワタシ、この紐持たされた途端にゾクゾクして、濡れてきちゃったみたい」
「メグってロリのくせに意外と エスっ気あるもんねー」
 キャッキャウフフとはしゃぐお三かた。
 
「さあ、始めましょう」
 里美さまがススッと私の右腿の傍に移動されました。
「ここでちょっと、うちのオリジナルトイズの宣伝させてもらうわね」
「このバイブは振動だけじゃなくてピストンも出来るのよ、前後に」
「この動きはね、Gスポットを刺激して潮吹きを誘発しやすくなるの」
 
 里美さまが私の右腿と縄のあいだに挟まったコントローラーに触れると、私のマゾマンコに埋まったバイブレーターが震えたまま、より奥へと侵入するようにピストン運動を始めました。
 バイブレーターのイボイボが今までとは違う動きで膣壁を擦るのがわかりました。

「あっ、あーーっ、だめですぅ、もうだめですぅ、ィきます、イッちゃいますぅぅぅ」
「えっ、もうなの?」
 ヨーコさまの慌てたようなお声が聞こえ、間髪を入れず左の尻たぶをピシャリとはたかれました。

「それなら早くカウントダウンしなさい」
 里美さまがカメラのレンズを私の顔に向けてのご命令。
 
「あーっっ!ご、ごめんなさいぃ、イキますぅ、ご、ごぉ・・・」
 ピシャン!ピシャン!
 右と左の尻たぶが交互に、手拍手で私のオーガズムを煽るような音をたてています。

「よおんっ、んっ、あ、ありがとうござぃまぁ、さーんっ、んっ、だめ、でちゃうっ!でちゃいそうっ・・・」
「潮に気をつけてっ!」
 里美さまの語気鋭いご注意が聞こえました。

「にぃーっ、あ、もうだめ、イッちゃうっ、出ちゃうっ、イッチャウぅぅ、いいいちっ!!」
 からだがフワッと宙空高く舞い上がります。
「イクぅーーーーっ!ぜーろっ!!」
「あああぁーーーーーーっ!!!」
 ビチャビチャビチャーっ!
「うわーーっ!」

 上半身に夥しい鋭い痛みを連続で感じたと思ったら、すぐにそれらが極上の快感に姿を変えて全身へと広がりました。
 筆舌に尽くせない絶頂感、開放感、爽快感。
 それでも動きを止めないバイブたち。
 いつまでもつづくかのようなイきっ放しの感覚に、喘ぎ、叫び、懇願し、黙り込んで我慢して、再び喘ぎ・・・

 私の心にも脳にも、一欠片の理性も残っていませんでした。
 たった今味わった凄まじい快感の余韻と新たに膨らみつつある快感を同時に貪る、ケダモノのように浅ましい淫らな肉塊と化していました。


非日常の王国で 14