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2018年2月25日

三人のミストレス 20

「そう言えば直子はまだ、ジャクリーンのしているあの乳首クリップは、されたことがなかったんだっけ?」
 お姉さまが私の尖り乳首をじっと見つめながら尋ねてきました。
 気がつくとお姉さまの背後に、里美さまとしほりさまも仲良く肩を並べてお立ちになり、私をニヤニヤ見下ろしていました。

「あ、はい・・・外国のSMの動画や画像ではよく見かけて、見るからに痛そうだなー、とは思っていました。日本でも売っているのですか?」
 普通の単純なクリップとは違い、冷たそうで重そうな銀色メカニカルでいかめしい外見が、いかにも西洋の拷問具という感じがしていました。

「あはは。やっぱり直子は可愛いね。そういうボケ方、あたし好きよ」
 やよいママさまがご愉快そうに笑いました。
「直子はあんまりお裁縫とかしなさそうだものね。あれは元を正せば、和裁をする人ならおなじみのお裁縫道具だよ」
 お姉さまも嬉しそうに笑っています。

「あのクリップはですね、かけはり、っていう、昔からある純和風なお裁縫道具なんです。和服の反物を縫ったり染色するときに布地をピンと張っておくために使うんです」
 小野寺さまが解説してくださいます。

「布をピンと張ってキープするために、突起の金具が引っ張られるとより強く噛むように出来ていて、挟む部分にはギザギザの滑り止めゴムも付いています。普通のクリップみたいにバネの挟む力任せではなく、一度挟んだら外れないように工夫されているのですね」
「だから今のジャクリーンさんは、かなりの激痛に苛まれていると思いますよ。お盆の重さが増すたびに金具が引っ張られて、ニップルをより強く挟んで引っ張ってくるのですから」

「当然、昔のSMマニアな人たちも古くから責め具として活用していて、それに目を付けた欧米のボンデージグッズ業者が、かけはりを仕入れて鉄のチェーンを付けて拷問具ぽくアレンジしたSMグッズとして、ジャパニーズニップルクランプスなんて呼び名で普及しているようです」
 小野寺さまったら、澄ましたお顔してえっちな雑学にもずいぶんお詳しいんだ。

「あたしも実家帰れば、いくつか年季の入ったやつがお裁縫箱にあるはずだわ。高校の頃、浴衣づくりに凝ったことあるから」
 お姉さまが私をニヤリと一瞥しておっしゃいました。

 シーナさまが、まるで他人事、みたいなシレッとしたお顔でつづけます。
「確かにあれ、かなり痛いみたいよ。いくら強く引っ張っても絶対外れないから。て言うより引っ張るほど強く挟まれるわけじゃない。うちの牝ブタも最初のうちは、あれを見せられると一瞬、絶望的な顔をしていたもの。今は、悦んで付けているけれどね」

「へー、いいなー、あたしも早く直子の絶望的な顔、見てみなくっちゃ」
 からかうような笑顔で私の顔を覗き込んでくるお姉さま。

「あ、あのえっと、し、シーナさまのことをジャクリーンさまは、ドミナ、ってお呼びされていましたけれど、ドミナって、何なのですか?シーナさまのミドルネームか何か、とか?」
 かけはり、というものがかなり痛そうなのでゾクゾクしてしまい、直子に付けてみよう、なんてならないうちに急いで話題を変えようと、ずっと気になっていたことを焦ってお尋ねしてみました。

「直子は、ミドルネーム、が好きねえ。何か思い入れでもあるの?」
 やよいママさまが半笑いで、呆れたようにおっしゃいます。
「あ、いえ、別に・・・」
 なんだか急に恥ずかしくなって、うつむく私。

「ドミナという言葉はですね、ミストレスと同じような意味のSM用語だと思えばいいですよ。ご主人様、女王様、みたいな意味の」
 おやさしくて博識な小野寺さまが、理知的に解説してくださいます。

「英語で、支配、を意味するdominationという単語からきた、という説と、これも英語のdominatrix、女性支配者とか女主人という意味の単語からきたという説があるみたいですね。いずれにしましても、女性支配者を、ドミナ、と隷属する側が尊称するのは、昭和中期頃からの日本のSM小説では定番の表現のようです」

「わたくしとしましては、ドミナ、と称した場合、支配者の中でも女性に限定するところから、dominatrixが語源、という説を推したいところですね。ちなみにdomination、支配、の対義語は、submission、服従です」
 小野寺さまは、横文字部分の単語を完璧にネイティヴな発音でお話しされていました。

「へー、小野寺さんて、そういう下ネタもやけにお詳しいのね。もっとカタブツさんかと思ってた。でもまあ、インテリにはムッツリが多い、って言うし」
 シーナさまがニヤニヤ笑いで茶化しにかかります。

「あ、いえ、わたくしもアンジェラと長くおつきあいしていますから、知識だけは増えていきますもので・・・でも、先ほどのジャクリーンさんとのショーは、わたくしも、あのお綺麗なお尻に思い切り鞭を振るってみたい、なんて興奮してしまいました」
 照れ笑いをお浮かべになり、目の前のオンザロックをグイッと飲み干された小野寺さま。
 小野寺さまのように品があって理知的なかたのSっ気って、凄く怖そう・・・

「アレが勝手に呼び始めたのよ、ドミナって。わたしも語源までは知らないけれど、ミストレスと同じような意味だってことは知っていたから、好きにさせたの」
 シーナさまがニンジンのスティックをポリポリ齧りつつおっしゃいます。

「ずっとご主人様とかシーナさま、って呼んでいたのが、数年前くらいにミストレスになって、いつだったか北欧から帰ってきたら、これからはドミナとお呼びさせていただきます、って宣言されたのよ。飛行機で読んだ本の中にそういう場面があって、わたしにピッタリだと思ったんだって」

「あの牝ブタ、スケベなことには貪欲だから、そういう小説とかビデオとか山ほど集めているの。わたしも、アレを牝ブタだの売女だのおばさんだの好きに呼んでいるからさ、勝手にすれば、ってほっといたの」
 まんざらでも無さそうな、おやさしい目になられたシーナさま。

 そこにジャクリーンさまが、空になった銀盆を乳首に吊り下げたまま、お戻りになられました。
 ジャクリーンさまの柔らかそうなおっぱい、左右の下乳のお肉に、事務用の標準的な目玉クリップがひとつづつ、新たに噛み付いてぶら下がっていました。

「ほら、プラッター外してあげるから、こっち来なさい」
 シーナさまがジャクリーンさまを手招きされます。

「ちゃんと言いつけ通り、手は使わずに回ってきたのでしょうね?」
 目の前にひざまづかれたジャクリーンさまの、腰のベルトをぞんざいに外しつつ、シーナさまが詰問されます。

「はい、ドミナ。どんなに重くなっても手では支えずに、みなさまの空いたグラスをカウンターまで運ばせていただきました。トレイに乗り切ら無さそうになると、アキコさまが助けてくださいました」
 アキコさま、というのは、ミイコさまから、アキちゃん、と呼ばれていた、もうひとりのメイド服姿の女性、おそらくお店のスタッフさんのことでしょう。

「お客様がたが面白がって、オマンコをさすったりお尻を叩いたりお酒をご馳走してくださったり、いろいろ虐めてくださいました、このクリップはエンドウさまがくださいました」
 やっぱり乳首が痛いのでしょう、眉間にシワを寄せて少し辛そうに色っぽいお顔のジャクリーンさまがシーナさまを見つめ、神妙にご報告されています。

「ふーん。それじゃあ後でエンドウさんにご奉仕しなくちゃね」
 シーナさまが無造作に目玉クリップを外し、より痛そうに歪むジャクリーンさまのお顔。

「こんなに乳首をビロンビロンに伸ばしちゃって、みっともなくお乳が垂れ下がっちゃって、本当にだらしないおっぱいよね」
 銀盆が外れたチェーンを再び中央で繋ぐシーナさま。
 ジャクリーンさまのふたつの乳首を起点に半円形を描く鎖が、胸元からお腹にかけて重そうにユラユラ揺れています。

「直子がおまえの乳首クリップに、ずいぶん興味津々みたいなのよ。もっと近くで見せてやりなさい」
 シーナさまに促され、ジャクリーンさまが膝歩きで、私の目の前へと進み出られました。

 間近で拝見するジャクリーンさまの豊満な生おっぱいは、地肌の青白さを際立たせる小麦色の日焼けとのコントラストとも相俟って妖艶の一言。
 そのたわわに熟しきったふたつの果実のそれぞれの頂点に、禍々しい形の金属の嘴が大きめな乳首の根本を食いちぎらんばかりに、しっかりと噛み付いています。
 その先の重そうな鎖に乳房全体が引っ張られ、房の付け根付近には数本のシワが走るほど。
 思わず生ツバをゴクリと呑み込んでしまうほどの淫靡さ、いやらしさ、痛々しさ。

「どう?なんだったら今こいつから外して、直子のを挟んであげよっか?」
 シーナさまがからかうみたいに聞いてきます。

「あ、いえっ!・・・」
 首を左右にフルフル振りながら、とっさに自分のおっぱいを庇おうとしますが、後ろ手錠では庇うも何もありません。
 首の動きに合わせて無駄にブルブルと左右に揺れる私のおっぱい。

「まあまあ、この後すぐにショーなんだからさ、そういう面白そうなことはステージの上で、みんなでゆっくり見物しようよ」
 やよいママさまがイタズラっぽい笑顔で、助け舟を出してくださいました。
 と言っても、せっかくならみなさまの前で晒し者にしよう、という意味にも取れますから、私にとってあまり助けにはなっていないのですが。

「それじゃあそろそろ始めましょうか?」
「そうね」
 ミイコさまの呼びかけにやよいママさまが応えられました。

「シーナちゃんとエミリーはわたしの後に着いてステージに上ってね。あ、ジャクリーンとナオちゃんは裸足になって」
 ミイコさまに促され、うつむいて足だけでスニーカーを脱ごうとしていると、背後から里美さまがお声をかけてくださいます。
「靴、ひとりで脱げる?」

「あ、はい、なんとか大丈夫そうです・・・」
 かかとをスリ合わせて脱いだスニーカーを、里美さまが拾い上げてくださいました。
 ジャクリーンさまはミュールを履かれていたので脱ぐのは楽だったみたい。
 ジャクリーンさまの両足首を繋いでいたチェーンもいつの間にか外されていました。

「では、ステージに上がりましょう」
 ミイコさまの号令でお姉さまとシーナさまが立ち上がられます。
 それぞれの右手にはそれぞれのペットの首輪に繋がるリードチェーン。
 場内が暗くなる等の演出は無く、フロア、ステージ共に昼間みたいに明るいままです。

 まず、片手に乗馬鞭を持たれたミイコさまと、手ぶらのやよいママさまが並んでステージ上へ。
 ここで、気づかれたお客様がたから盛大な拍手。

 つづいてシーナさまにリードを引かれ、後ろ手錠にされたジャクリーンさまがしずしずとステージ上に。
 少し遅れてお姉さまにリードを引かれた私も、おずおずと舞台上へ。

 私、ボディハーネスだけの裸で後ろ手錠のまま、みなさまが注目されている明るいステージに上るんだ・・・
 階段2段分くらいの段差を跨ぐとき、マゾマンコの奥がキュゥンと疼きました。

「それではみなさま、お待たせしました!これより百合草会夏の感謝祭、第二部のイベントショーを始めたいと思いますっ!」
 マイクを通したミイコさまのお声が場内に響き、ステージ前に詰めかけたお客様がたから、やんやの拍手。

 ステージの一番下手に、片手にマイク、もう片方に乗馬鞭を握られたミイコさま。
 そのお隣にジャクリーンさまの首輪リードを持たれたシーナさま。
 そのまたお隣、ステージのほぼ中央付近に、黒いレザーの首輪と両手足首にリング付きのベルトを巻かれ、両乳首のかけはりチェーンはまだそのまんま、他はオールヌードなジャクリーンさま。

 ジャクリーンさまと並んでのステージほぼ中央は、赤い首輪と手足首ベルト、肝心な場所は何ひとつ隠せないくすんだ赤いボディハーネスで裸身を飾った私。
 その横には、私の首輪のリードを持たれたお姉さま。
 お姉さまのお隣、一番上手端に、これまたマイクを持たれたやよいママさま、という布陣です。

 舞台下のお客様がたも含めて数十名いる女性の中で、ジャクリーンさまと私だけが異質でした。
 おっぱいも女性器も剥き出しにして、後ろ手錠の為に自ら隠すことは出来ず、為す術も無く自分の秘部を衆目に晒していました。
 もちろん、品定めでもするかのような容赦の無い好奇の視線が、中央のふたりに浴びせ掛けられています。
 親子ほども歳の離れたふたりの女性の裸体が、同性たちの眼前でまさに見世物となっていました。

「今夜は、おなじみのジャクリーンに加えて、ニューフェイスのマゾペットを迎え、対戦形式でショーを進めたいと思っています」
 ミイコさまのお言葉にヒューヒューと愉しそうにざわつくお客様がた。

「ご紹介しましょう。みなさまよくご存知のエミリーの部下にして、絶対服従なマゾペットセクレタリー、社会人一年生ながら経験豊富なオールラウンダーヘンタイ娘、森下直子ちゃんでーすっ!」

 えーっ!?ミイコさまったら、モロに私の本名をバラしちゃった・・・
 一瞬目の前が真っ暗になりました。
 拍手と共に私の素肌、乳首やワレメに、より激しい好奇の視線が突き刺さってくるのがビンビンわかります。

「このナオちゃんはまだ若いんだけどね、高校生の頃、初めてのご主人様が、当時まだお店開く前のやよいママで、エミリーの前にはシーナちゃんのスレイブもしていたっていう、ヘンタイマゾペットのエリートコースを歩んできているのよ」
 ミイコさまがご冗談ぽくおっしゃると、おおーっ、とどよめくお客様がた。

「そう。あたしが指で、この子のヴァージン、いただいちゃったの。初エネマもね」
 やよいママさまがマイクを使って可笑しそうにおっしゃると、すかさずシーナさまがミイコさまのマイクに近づきます。

「それで、この子のマン毛をマゾ女らしく永久脱毛させたのが、わ・た・し」
 シーナさまのお道化た仕草にイェーイと盛り上がるお客様がた。
 お姉さまのお顔をそっと盗み見ると、呆れたような面白がっているような、フクザツな半笑いを浮かべていらっしゃいました。

 そっか、今このステージの上には、私の人生歴代お三人の女王様が上がっていらっしゃるんだ・・・
 それでこれから、やよいママさまのパートナー、ミイコさまの司会で、シーナさまのパートナー、ジャクリーンさまと、見知らぬみなさまの見守る中で、辱めを受けるんだ・・・

 バレエを始めた幼気な中学生の頃には、毛ほどの想像も出来なかった破廉恥でヘンタイなシチェーション。
 ずいぶん遠くまで来ちゃったな、という感慨と共に、今までにお三人からされた様々な陵辱や辱めが脈絡なく次から次へと脳裏によみがえり、ほろ苦くも甘酸っぱい懐かしさの入り混じった羞恥と被虐感が全身を駆け巡りました。
 そんな感傷的な背徳感を吹き飛ばし、紛れも無く直面しているアブノーマルな現実へと引き戻したのは、ミイコさまのお声。

「では今夜のショーを始める前に、大事な儀式をしておきましょう。これをしておかないと、みなさんが愉しめませんものね?」
 ミイコさまがイタズラっぽくお客様がたに問いかけると、一層ガヤガヤヒューヒューざわつくギャラリーのみなさま。

「これからショーを進めるにあたり、ミストレスおふたりがお持ちのマゾペット調教権をいったん、わたしたちに預けていただきます。つまり、ジャクリーンと直子を、わたしたちが好きにしていい、という絶対服従の権利です。わたしたち、というのは、ここにいるバー百合草スタッフと百合草会会員のお客様がた全員、という意味です」
 ミイコさまのお芝居がかったお声が響き、フロアが束の間、シーンと静まり返りました。

「まずミストレスであるおふたかた、よろしいですか?」
「もちろん」
「はい」
 ミイコさまの問い掛けに、さも当然のようにうなずかれたシーナさまとお姉さま。

「次にスレイブたち。ミストレスが承諾した以上拒否権は無いのだけれど、一応聞くわ。絶対服従、いいわね?」
「はい、喜んでっ!」
「・・・はい・・・」
 
 喜々としてお答えになるジャクリーンさまと、うなだれ気味の私。
 同時にフロアのほうだけ照明が薄暗くなり、ミイコさまの重々しいお芝居声とも相俟って、雰囲気が一気に禍々しくなりました。

「契約完了。これで今夜この二匹のマゾペットは、イベントお開きまで今ここにお集まりのみなさん全員の共有スレイブとなりました。とは言っても、ショーのあいだは手を出したくなっても我慢してね。これだけの人数が勝手に動いちゃうと収拾つかなくなっちゃうから」
 ニッコリとお客様がたに語り掛けるミイコさま。

「これからスレイブたちに、恥ずかしいゲームをいくつかさせます。もちろん勝負ですから勝ち負けが決まります。トータルで勝ったほうにはご褒美、負けたほうにはお仕置きが待っています」
 ここでちょっと間を置き、ニヤッと笑ったミイコさま。

「でもまあ筋金入りのマゾ女たちですから、お仕置きがご褒美なのかもしれないですけれど・・・」
 クスクスアハハと嘲るように笑うお客様がた。

「そのお仕置きタイムには、みなさん全員、自由に参加して責めてくださって結構です。もちろんスレイブが死なない程度の常識は守ってくれないと困りますが」
 ミイコさまってば、サラッと恐ろしいことを・・・

「あと、さっきもお願いしたけれど、個人的な写真とか動画の撮影や録音はNGね。そちらの彼女が撮影しているビデオは、後日お店で上映会を企画するから」
「その他はショーのあいだも、ムラムラしてきたらオナるのもよし、パートナーとコトに及ぶとか、脱ぎたくなったらどんどん脱いじゃって結構です。レッツ、オージー!」

 ミイコさまの煽りにイェーイッ!とノリ良く応えられるお客様がた。
 下手側のボックス席から小野寺さまのレンズが、私たちをジーッと記録しています。

「それじゃあまず、みなさんに失礼が無いようにスレイブたちのからだを清めてくるから、しばしご歓談ね。そのあいだにアキちゃん、ステージ上の準備を」
 シーナさまとお姉さまから渡されたリードの持ち手を右手で一緒くたに握ったミイコさまが、ちょっとキョロキョロ思案顔。

「誰かわたしのアシスタントがふたりぐらい欲しいのだけれど・・・」
 お独り言のようにつぶやかれたミイコさまに、ステージを下りようとされていたお姉さまがご反応されました。

「それだったらうちの里美としほりさんが適任よ。しほりさんは本業がヘアメイクだからこういう現場にも慣れているし、里美もエログッズの扱いには長けているから」
 そのお言葉が終わらないうちにおふたりがミイコさまの傍らに駆けつけていらっしゃいました。

 まるで示し合わせていたかのよう・・・
 いいえ、多分事前に打ち合わせていて、最初からそういう段取りだったのでしょう。
 それが証拠におふたりとも、片手に見慣れない大きめなバッグをおのおの下げていらっしゃいます。
 おふたりの私物のバッグとは違う、おそらくミイコさまたちがご用意された、これからショーで使うお道具か何か。

 どうやら今夜のこのイベントは、やよいママさまやお姉さまたちが事前に入念に打ち合わせされた上でのもので、これからの展開をまったく知らされていないのは、私とお客様がただけなのかもしれません。
 でも、見知っているおふたりがご一緒くださるのは、私にとって心強いことでした。

 ミイコさまが握るリードに引かれ、裸のマゾペットたち、ジャクリーンさまと私がステージ上手から、おトイレへの矢印サインが示す狭い通路へと誘導されます。
 場内のBGMは、軽快なソウルミュージックに変わっていて、フロアでは幾人かが軽くおからだを揺すり始めていらっしゃいます。
 私の目前にはジャクリーンさまの剥き出しのお背中、背後にはニヤニヤ笑いの里美さまとしほりさま。

「ドキドキしている?」
 からかうようなお声で里美さま。
「何をされるかわからなくって、ドM心がジンジン疼いちゃってるんでしょう?」
 愉しそうなしほりさまからのお問い掛け。

「は、はい・・・」
 眼前のジャクリーンさまのお尻からまだ覗いているブタさんの尻尾型アナルストッパーを見つめて、おそらく共感性羞恥というのでしょう、いたたまれない羞じらいを感じている私。

 通路の一番奥に女性トイレを示す赤いアイコンが見え、そこで何かえっちな衣装にでも着替えるのかな?なんて思っていたら行進がストップ。
 ミイコさまがそのドア手前の、何も書かれていないもうひとつの真っ白なドアのノブにお手を掛け、ガチャっと手前に引かれました。


三人のミストレス 21


2018年2月11日

三人のミストレス 19

「ごきげんよう。お久しぶりです、シーナさん」
 お姉さまだってシーナさまの足下でうずくまる裸身の存在には気づかれているはずなのに、そこにはまったく触れずニコヤカにご挨拶。

「本宮から、今降ろした、って連絡入ってから30分以上も現われないからさ、てっきり直子が怖気づいて逃げ出しちゃったかな、と思っていたわよ。このまま来なかったら二度目のショーは牝ブタに何やらせようかって、考えていたところ」
 ご機嫌ナナメっぽいご様子なシーナさまが、細長いグラスに入った水色のお飲み物をクイッと一口、お飲みになりました。

 シーナさまたちがお座りになっているテーブルの上には、そのお飲み物の他に、チーズとクラッカーが乗ったお皿、グラスに刺さったお野菜スティックが置いてあり、小野寺さまの前には、茶褐色の液体に氷を浮かべたお飲み物。
 それらに加えて、見た瞬間にドキッとしてしまう、ひときわ私の目を惹くものがふたつ、無造作に置いてありました。

 ひとつめは、全体が真っ黒で少し古びた乗馬鞭。
 ずいぶんと使い込まれているようで、持ち手の革が黒光りしてテラテラ光っています。
 長い柄の細い部分が弾力のありそうな素材で、とてもよくしなりそう。
 先端のベロ部分は弓矢の矢羽根みたいな形で大きめ。
 これで尻たぶをジャストヒットされたら、クッキリ矢羽根の形の赤い打痕が残っちゃいそうです。

 もうひとつは、小野寺さまの前に置いてあるハンディビデオカメラ。
 新人エステティシャンの研修用教材という名目で、私のマゾマンコがワックス脱毛でツルツルにされる一部始終を録画されたときに使われたカメラと同じものよう。
 ということは、これから私がしなくてはいけないバトルショーとやらも、このカメラで撮影、記録されることになるのでしょう・・・

 シーナさまに促され、先ほど空けてくださったストゥールに腰掛けようとすると、すかさず脇からミイコさまが、ストゥールの腰掛け部分の上にたたんだバスタオルを敷いてくださいました。
 お姉さまと小野寺さまは初対面らしく、お名刺の交換をされています。
 腰掛けた私は、足下にいらっしゃる、裸の人、が気になって仕方ありません。

「そう言えばエミリー?本宮から名刺、もらった?」
 シーナさまがお姉さまにお尋ねになりました。

「ええ。車を降りるとき、どうぞ今後共ご贔屓に、ってくださったわよ。あのかた、個人営業なのね」
 小野寺さまのお名刺をポーチにしまうついでに、一枚の小さな紙片をヒラヒラさせるお姉さま。

「へー、ていうことは気に入られたんだ。だったらエミリー、これから直子と遊ぶとき、わたしが使わないときならいつでも本宮の車、使っていいってことよ」
 少しご機嫌が直られたらしいシーナさまの、弾んだお声。

「わたしが牝ブタと移動するときは、こいつは、大抵ほとんど裸だから、本宮はそういうヘンタイの扱いに慣れているの。だから、あなたたちも大胆に愉しめるはずよ」
「もちろん料金は、どこへ行こうが、北海道だろうが沖縄だろうが牝ブタ持ちだし、本宮はああ見えて合気道とか護身術全般身につけた優秀なガードウーマンでもあるし、オマケにSっ気も旺盛だから、いろいろ頼もしいはずよ」
 シーナさまが、こいつ、とおっしゃったとき、同時に足でテーブル下の人に何かしたみたいで、んぐぅ、という苦しげな呻き声がテーブル下から聞こえました。

「エミリーは小野寺さんとは初対面だったわね?アンジェラのサロンで事務方全般を一手に仕切っている、超有能なセクレタリー」
「あ、アンジェラさんとはこのお店で何度かお会いしたことあります。その節はうちの直子がずいぶんお世話になったみたいで、ありがとうございました」
 シーナさまのご紹介でお姉さまが小野寺さまに深々と頭を下げ、つられて私もペコリとお辞儀。

「今日のこちらでのイベントには、うちのアンジェラがとても来たがっていたのですが、どうしても外せない先約があり、代わりにわたくしが送り込まれました」
 小野寺さまが数年前と変わらない理知的かつ滑舌の良いハッキリとした口調でおっしゃいました。

「それで、観られないのであればせめて映像だけでも、ということでわがままをお許しいただき、本日はショーの一部を撮影させていただくことになりますので、どうぞよろしくお願いいたします」
 
 私を見つつの小野寺さまのお言葉に、やっぱり、とじんわりマゾマンコを潤ます私。
 そのとき、私たちの背後で立ったまま会話を見守っていたミイコさまが、お口を挟んできました。

「安心してナオちゃん。撮影するのはこのビデオだけで、他のお客様はケータイでもスマホでも一切撮影禁止になっているから。ネットに画像流出して顔バレ身バレとかは絶対に無いって約束するわ」
 イタズラっぽく微笑まれるミイコさま。
「お店で上映会とか、BGVとしてそのモニターに流すことは考えているけれどね」

「そんなことより、早くナオちゃんにジャクリーンを紹介してあげて。エミリーはここで何度か会ったことあるけれど、ナオちゃんは初対面でしょ?」
 ミイコさまがシーナさまに、新しいお飲み物を手渡しながらおっしゃいました。

「ううん。直子はずっと以前に、うちの牝ブタと顔合わせしているわ。もっともそのときは生意気にこいつ、人並みの格好をしていたと思うけれど」
 シーナさまがニヤニヤ笑いつつ、テーブル上の乗馬鞭を手にお取りになります。

「ほら、ヘンタイ牝ブタドマゾおばさん?オットマン役はもういいわ。立ち上がっておまえのお仲間にご挨拶なさい。ほら、早くっ!」
 シーナさまがテーブル下に潜らせた乗馬鞭がご活躍されているのか、テーブル下から人の肌を打擲する拍手のようなペチペチ音が聞こえてきます。

「ん、むぐぅ・・・」
 テーブルが少しガタガタ揺れ、シーナさま側のテーブル端からウェーブのかかった髪の毛が見えてきました。
 やがて、肘、肩、背中と露わになり、紛れも無い全裸女性の全身が現われました。

 首には太くて幾つもリングがぶら下がった黒い首輪、肩までのウェーブヘアが汗で額に貼り付き、黒色のボールギャグをかまされたお口からはだらだらとよだれを垂らされ。
 目鼻立ちの大きな日本人離れした端正なお顔は紅潮し、眉根に深く苦悩のシワが刻まれていましたが、そのお美しいお顔には、確かに見覚えがありました。

 シーナさまのパトロンさんにして、うんとお歳の離れた専属マゾドレイ。
 シーナさまのお住まいでもある私と同じマンション最上階の持ち主であり、どなたでも知っている有名上場会社の社長夫人。
 確かお名前は、ワカバヤシさま。

「直子、会ったことあるよね?うちに遊びに来たときに」
「あ、は、はい・・・」
 シーナさまに問われ、そのときのことをあざやかに思い出しました。

 東京に出て来て、シーナさまと恥辱満点の刺激的な再会を果たした初夏の数日後。
 ペントハウス風になっているマンション屋上で遊ぼうとシーナさまに呼び出され、伺ったときのことでした。
 玄関先でお出迎えしてくださった、仕立ての良いサマースーツを品良く着こなされた女優さんのようにお綺麗なお顔立ちの見るからにセレブマダム風な女性。
 身長は私より少し高いくらいなのに、何て言うのか、キラキラしたオーラに満ち溢れていて、生まれて初めて、貴婦人、と呼ばれる人種を目の当たりにした、と感じました。

 そのときは、その女性が外出される直前だっため、お顔を合わせただけだったのですが、ごゆっくりしていってくださいね、というおやさしいお言葉と、たおやかに香る甘ったるいコロンの香りが印象的で、なんて絵に描いたようにお上品なご婦人なのだろう、と思ったものでした。
 
 その後にシーナさまのお口から、そのご婦人こそがシーナさまの慰み者マゾドレイだと聞かされ、もっとビックリしてしまったのですが。
 その優雅なマダム、ワカバヤシさまが今、私たちの目の前に全裸で、いえ、全裸よりももっと浅ましいお姿で仁王立ちされていました。

 両手は頭の後ろで手錠されているらしく、立ち上がったときからすでにマゾの服従ポーズ。
 ご年齢は私の母と同じくらいか少し上とお聞きしていましたが、とてもそうとは思えない、シミやシワが少しも見えない艶やかな肌に引き締まったプロポーション。
 
 バストは大きく、ウェストはキュッと絞られ、ヒップはドーンと豊かで美脚がスラリ。
 もちろん腋と股間は完全剃毛済みのツルッツル。
 一見してお歳を感じさせない若々しいセクシーボディなのですが、いくつかの理由で、見ているこちらが恥ずかしくて目を背けたくなるくらい、艶めかしい色香を全身から発散されています。

 まず、目につくのは、そのおからだに残る日焼け跡。
 全体にこんがり健康的な小麦色に焼けていらっしゃるのですが、バスト部分と下半身にだけ、青白いほど生々しく普通の肌色が残っていました。
 
 おっぱい部分は、小さめなハーフカップブラビキニの形通り、乳輪を含むおっぱい周りだけ白い肌。
 下半身は、恥丘の膨らみ始めくらいから腿の付け根までがブーメラン型に白く焼け残り、凄くローライズでローレグな水着を身に着けていらっしゃったのであろうことが推測できます。
 
 その二箇所の未日焼け部分の青白さと小麦色の他部分とのコントラストで、結果的に白いおっぱいと乳輪、そして無毛の股間の割れスジを、ひときわ生々しく猥褻に目立たせる日焼け跡となっていました。

 更に、そのおっぱいの先端にはステンレス製らしい禍々しい形をしたクリップが両乳首に噛みつき、ふたつのクリップを繋いだ重そうなスチールチェーンに引っ張られ、豊満なおっぱいが盛大にうなだれて垂れ下がり、熟れ過ぎて今にもポタリと落ちそうな果実のよう。
 乳首も乳輪も私より大きく、色も濃い目ですごく淫猥な感じ。

 そしてとどめは、二の腕や胸元、太股付近のあちこちに刻まれている、ついさっきまで縄でギリギリと絞られていたのであろう生々しい縄目痕。
 太腿には矢羽根型に鞭打たれた痕も、ところどころに残っていて、私たちがここに来る前までに、このかたがいったいどんな扱いを受けられていたのか、いけない妄想が膨らんでしまいます。

 そんな感じに、見るからにふしだらと言うか、いやらしくも美しい裸体を目の当たりにして、私の心臓はドキドキ早鐘のよう。
 思わずお隣のお姉さまにからだを摺り寄せてしまいました。

「ほら、牝ブタ?口枷取ってやるから、今夜の対戦相手に一応挨拶しときな」
 シーナさまがぞんざいにおっしゃると、すかさずワカバヤシさまが服従ポーズのままひざまずき、お顔をシーナさまの胸元に差し出します。
 シーナさまがボールギャグのベルトを緩めると、その唇の端からよだれがダラダラ、首筋からおっぱいへと流れ落ちていきました。

 ワカバヤシさまの額にひっついた髪の毛を丁寧に払い、乱れた髪型を整えてあげる、おやさしいシーナさま。
 口枷を解かれ髪を直されたワカバヤシさまって、やっぱり凄い美人さん、今流行の言葉で言えば、まさしく、美魔女、さんという感じです。

「お久しぶりです、直子さま。直子さまのことはいつもドミナから聞かされていましたから、ぜひ一度、ちゃんとお目にかかりたいと思っていました。本日はよろしくお願いいたします」
 再び立ち上がられたワカバヤシさまが、座っている私を見下ろすように、服従ポーズのまま深々とお辞儀をしてくださいました。

「え、あ、あの、いえ、こちらこそ・・・」
「うちの直子だって同じマゾドレイなんだからさ、ジャクリーンも別に、直子さま、なんてあらたまらなくたっていいのに」
 しどろもどろな私に代わって、お姉さまがワカバヤシさまに、茶化すようにお応えになりました。

「いえいえ、ドミナは直子さまのことをいつも褒めていらっしゃいますから、奴隷にとっても直子さまはドミナのご友人で崇拝すべきおかたでございます。奴隷はここでは最下層の身分ですので」
 ワカバヤシさまが恐縮されたようにおっしゃいました。

 ドミナ、って、シーナさまのことよね?
 えっ?シーナさまって私のこと、ワカバヤシさまの前で褒めてくださっているの?
 それにワカバヤシさまは、ご自分のことを、奴隷、ってお呼びになるんだ・・・

 そんなことを考えていたらシーナさまの右手が一閃し、乗馬鞭のベロがワカバヤシさまのお尻をピシャリと打ち据えました。
「ひっ!」

「何、あたりまえのことを得意げに言っているの?おまえが最下層のヘンタイセックススレイブだってことは、ここにいる誰もがわかりきっているわよ」
「でも今夜はエミリーのマゾペットと、どちらのドレイがより従順でヘンタイかを競う対決、勝負は勝負だからね?もしおまえが直子みたいなこんな小娘に負けたら、明け方に素っ裸で表に連れ出して、道端や近くの公園にたむろしているホームレスのを5、6本、しゃぶらせるからねっ!」
 
 シーナさまがワカバヤシさまの乳首からぶら下がったチェーンを無造作に引っ張りながら、怖いお顔で吐き捨てるようにおっしゃいました。
 ワカバヤシさまの両乳首がおっぱいもろとも痛々しいくらい伸び切っています。

「あうぅっ、そ、それだけはお赦しください。ドミナはいつもその罰の後は、わたくしをしばらく可愛がってくださらなくなるではないですか・・・」
 シーナさまの手を離れた鎖でおっぱいがブランブランと揺れるのにも構わず、ワカバヤシさまが憐れそうに懇願されます。

「あたりまえでしょ?そんな男どもで穢された牝ブタのからだなんて、たとえグローブしていたって触りたくないわよ」
「皮膚の細胞は約一ヶ月で入れ替わる、っていうから、穢れたからだが生まれ替わるまで、おまえは貞操帯嵌めて、セックスもオナニーも、わたしとの謁見も禁止よ!」

 今度はパシッとワカバヤシさまの右おっぱいを打ち据えるシーナさま。
 やっと鎮まっていた鎖が、再び派手にブランブランと暴れ始めます。

「あぁうぅっ、わ、わかりました。奴隷もその罰だけは受けたくないので、いくら可憐な直子さまと言えども、手加減なしでお相手させていただきます」
 私をまっすぐ見て、縋るような目つきで微笑まれるワカバヤシさま。

「そうね、せいぜいがんばんなさい。ほら、そろそろ始めるから、おまえは席を回って空いたグラスやお皿を集めてきなさい」
 シーナさまがおっしゃると、傍らのミイコさまが四角い銀盆をシーナさまに差し出されました。
 もうひとりのメイド服姿の女性がワカバヤシさまの背後に回り、両手の手錠を外されます。

「かしこまりました、ドミナ。奴隷は仰せのままに」
 ワカバヤシさまが膝立ちになると、シーナさまがふたつの乳首から半円状に垂れ下がったチェーンを金具からふたつに分け、銀盆の左右の持ち手部分に装着しています。
 えっ?それってもしかして・・・

 やがて装着が終わったらしく、ワカバヤシさまが立ち上がられました。
 ワカバヤシさまのウエスト部分から、駅弁の売り子さんのように銀色のお盆が飛び出ています。

 そのお盆を支えるのは左右の乳首に噛み付いた2本のチェーン。
 ウェスト部分でもベルトを巻いて銀盆を安定させてはいるようですが、あの状態では銀盆にグラスを乗せるたびに重さで両乳首が引っ張られちゃうはずです。

「ほら、時間押しているんだから、さっさと回ってきな。重くても絶対手を使って支えるんじゃないよっ?」
「は、はいーっ!」
 シーナさまにお尻をピシャリと打たれ、ヨタヨタと全裸でフロアにお出になるワカバヤシさまの後姿。

 そのお尻にはアナルプラグなのでしょう、クルンと円を描いた、まさしく豚さんの尻尾のようなプラスティックの尻尾が生えていました。
 裸足の両足首には黒いベルトの足枷、もちろんその両足首は歩幅くらいのチェーンで繋がれています。

「はーい、みなさーん。そろそろイベント第2部を始めますから、空いたグラスやお皿は、今場内を回っているジャクリーンのお盆に乗せてあげてくださーい」
 ミイコさまがフロアに向かって、ひときわ大きなお声で呼びかけられました。
 気がつくとフロアのお客様の大半が、あるかたは椅子をご持参で、あるかたは立ったまま、私たちのテーブルを取り囲むように集まっておられました。

「ショーのあいだは、中央テーブルに各種お酒のボトルと氷やお水やジュースを置いておくので、各自勝手に作って飲んでね。おつまみはアキちゃんに言えば、簡単なものなら作ってくれると思うわ」
 中央のテーブルにせっせとウィスキーのボトルなどを並べている、もうひとりのメイド服姿な女性を指さされるミイコさま。

「ショーのあいだは、私やママには何を言っても無駄よ。わたしはショーの進行で忙しいし、ママはかぶりつきで観ているでしょうから。それくらいママも今夜のイベントを愉しみにしていたの」
 ドッとあがるみなさまの笑い声。
 そんなあいだもワカバヤシさまはフロア内を全裸で練り歩き、お腹の前の銀盆のグラスの山が高くなるにつれて、乳首の痛々しさが増していました。

「まだちょっと準備に時間かかるから、ナオちゃんはまだここでリラックスしていていいわよ」
 一通りフロアへの呼びかけを終えて私の傍らに戻ってこられ、おやさしくお声をかけてくださるミイコさま。

「あの、ワカバヤシさまの乳首クリップ、あんなにグラスいっぱい乗せて、大丈夫なのですか?もし外れてグラスが落ちてしまったら・・・」
 他人事とは言え、痛々しくて見ていられなくて、思わずミイコさまにお尋ねしてしまいました。

「シィーッ、彼女のことはここではジャクリーンて呼んでね。ドマゾヘンタイ熟女のジャクリーンと社長令夫人のワカバヤシさんとは別人なのだから」
 ミイコさまがイタズラっぽく唇に人差し指を当てておっしゃいました。

「まあ、でも今は公然の秘密みたいになっちゃったけれどね。少なくとも今夜来ている人は全員、彼女の素性の噂は聞いているだろうし」
 いつの間にかいらっしゃったのか、やよいママさまがお話に加わられました。

「シーナも彼女を最初連れてきたときは、ベネチアンマスクっていうんだっけ?あの仮面舞踏会みたいな目の周りだけのマスク着けさせてミステリアスに振る舞っていたのに、何度か通ううちに結局酔っ払って、自分たちでベラベラ白状しちゃうんだもの」

「会社名までは知らないまでも、彼女がどっかの大会社の社長夫人で、おしのびで夜毎ヘンタイ行為に耽っているらしい、って噂は有名よ」
 シーナさまがソファー上のお尻を少し小野寺さま側にずらされ、シーナさまのお隣に窮屈そうに腰掛けられるやよいママさま。

「でも彼女の変装っぷりは見事よ。あたしは会社名まで知っているから、たまにテレビで社長夫人として映るのも見たことあるのよ。だけどまったく別人。髪型もメイクも服装も。テレビに出ているお上品で優雅なご婦人と、今素っ裸で乳首の痛みに耐えているヘンタイマゾ女とが同一人物なんて、とても思えないものね」

 やよいママさまのお言葉に、ニンマリとお応えになるシーナさま。
「表に出るときの名前だってワカバヤシじゃないからね。ワカバヤシは旧姓なの」

「ワカバヤシ・・・ああ、だからジャクリーンさんなのですね?」
 それまで静かに会話を聞かれていた小野寺さまが、唐突にお声をあげられました。

「あ、あなたは気づいたのね?どう?直子はわかった?」
 やよいママさまが突然私に振ってきました。

「えっ?あ、あのいえ、えっと、お綺麗だから欧米系ハーフのかたで、ミドルネーム、とか?・・・」
 まったく見当がつかず、咄嗟に思ったことを口走る私。

「ブーッ!それっぽい顔立ちだけれどアレがハーフじゃないことは確かよ。あのだらしなくいやらしい体型を見ると、数代前にコーカソイド系の血が混ざっていそうではあるけれど」
 シーナさまが可笑しそうにおっしゃいました。

「もっと単純でバカらしいこと。小野寺さん?答えてみて」
 愉しそうに小野寺さまを促されるシーナさま。

「はい。わたくしの考えでは、ワカバヤシさんの漢字を音読みにしただけ。若いと林、すなわち、ジャクとリン」
「大正解!」
 周りを囲むお客様の方々も聞き耳を立てていらしたらしく、パチパチとまばらな拍手が起こりました。


三人のミストレス 20




2018年1月28日

三人のミストレス 18

 捻っていたからだをカウンター側に戻すと、目の前にやよいママさまがいらっしゃいました。
 私と目が合うと、ニッコリ笑いかけてくださいました。

「ずいぶんと熱心にフロアを観察していたじゃない?何か興味を惹くものでもあった?好みな女性がいたとか?」
 カウンター越しに、からかうように尋ねてくるやよいママさま。

「あ、いえ、そいうのではなくて、お客様がいっぱいだなー、って・・・」
 真正面から見つめてくるやよいママさまにドギマギしつつ、あわてて付け加えます。

「それに、暗いし恥ずかしいしで、お客様ひとりひとりのお顔まで、ちゃんと見ていられません・・・」
 お答えしながら気がつくと、お姉さまは左隣の、里美さまとしほりさまは右隣の、それぞれお隣に座られた見知らぬお客様がたと、私にお背中を向けて楽しげにおしゃべりされていました。

 その隙を窺って、という訳ではないのでしょうが、すごく近くまでお顔を近づけてくるやよいママさまと、お久しぶりの親密ムード。
 私の格好が恰好なので、胸はドキドキからだはソワソワ、懐かしい羞じらいがよみがえってきます。

「そうね。お店始めたばっかりの頃は、どうなることやら、とも思ったけれど、おかげさまで徐々に常連さんが増えてきて、最近やっと軌道に乗ってきたところ」
「ミーチャンやシーナが顔広いからね。連れてきてくれたお客様からの口コミで輪が広がった、って感じかな」

 傍らに置いた薄いレモン色のお飲み物が入ったグラスを、ときどき唇に運び舌先でチロチロ舐めつつ、ご説明してくださるやよいママさま。
 ミイコさまを、ミーチャン→と、平坦にアクセント無しでお呼びになる、地元の頃と同じやよい先生のイントネーションが懐かしい。

「あ、でも、お外には看板もネオンも出ていませんでしたよね?それで中に入ったら、こんなにたくさんいっらっしゃったので、単純にびっくりしたんです」
 会話を途切らせてはいけないと、店内に入ったときに感じた素直な感想を、そのまま言葉にしてみました。

「ああ、だからさっき言ったように、今日は特別なの。普段はちゃんと7時には表の階段前に看板出して、入り口の二重扉も外側は開け放しにしているわ」
 なぜだか可笑しそうに微笑混じりのご説明。

「ドアには会員制って書いたけれど、一度でも来てくださったお客様と一緒の女性ならば、基本的にオールウェルカム。レズビアンではないノンケ女性でもね」
「イベントの日だけは、表向きお休みにしているの。フリのお客様が入ってこれないように」
 唇に運ばれたグラスが少し傾き、やよいママさまのなめらかな喉がゴクリと上下します。

「いろいろイベント企画しているのよ、月に2度くらい。あたしらも愉しみたいじゃない?」
「軽めのカップリングパーティから、夏だったら水着デーとか。ディープなほうだとセクシー女優さん呼んでトークショーとか女性緊縛師の緊縛講座とか」

「中でも今夜のイベントはトップシークレット扱いだから、今居るお客様はうちのVIP待遇なお得意様と言えるわね」
「つまり、今ここにいるお客様たちは、マニアックなスケベさん揃い、ってわけ」
 少しご苦笑気味に、イタズラっぽい笑顔をお見せになるやよいママさま。

「まあ、あたしたちのことはいいとして、直子はどうなの?エミリーと、いろいろ楽しくやってる?」
 やよいママさまの視線が、私の顔から丸出しなおっぱいへと、あからさまにゆっくり移動しました。

「あ、はい。お姉さまはお忙しくてオフィスでも毎日はお逢い出来ないのですが、そんなときでも他の社員のみなさまから・・・」
 私ったら、やよいママさまに何をお話しようとしているのでしょう。
 はたと口をつぐんだ私の言葉を、聞かれていたのかいないのか、唐突にこんなことをおっしゃってきました。

「ねえ?直子のおっぱい、乳輪が一回り以上大きくなったんじゃない?あたしと遊んでいた頃に比べて」
 私の右の乳首をまじまじと見つめつつの、やよいママさまのお声。

「あんっ、いやんっ・・・」
 触られたわけでもないのに、若干の揶揄をも含んだようなそのおっしゃりかたに、ヒクッと疼いてしまう私のマゾマンコ。

「いやん、じゃないわよ。いい感じじゃない?いい感じにいやらしさが増しているわ」
 嬉しそうに再び私の顔に視線を戻されたやよいママさま。

「直子って元から乳首、大きめだったじゃない?それがもっと大きくなっていて、それにつれて乳輪も広がったって感じ。左右ともほぼ完全な鴇色の円を描いていて、とても綺麗よ」
 今度は左の乳首を凝視してくるやよいママさま。

「あたしと会えないあいだに、いろんな人にいろいろ弄られたのでしょうね。今だって、あたしに向かって痛々しいくらい尖っちゃって、弄って欲しくて堪らない、って感じ。すんごくビンカンそう」
「隣にエミリーがいなかったら、なりふり構わず両腕伸ばして、ギューっとわしづかみしちゃっているでしょうね。そのくらいふしだらにえっちで、魅力的よ」

 少しお声を落とされ、とんでもないことを笑顔でおっしゃるやよいママさま。
 マゾマンコの奥がまたヒクヒクととわななき、少し開いたラビアをトロリと濡らします。

「あ、あの、やよい先、あ、いえ、百合草先生は、私が学校行っているうちは、お店に来てはいけない、っておっしゃいましたよね?あれは何か意味が、あったのですか?」
 動揺をごまかしたくて焦って話題を逸らそうと、ずっと気にかかっていたことが口から出ていました。

 以前と変わらない、いえ、以前にも増して魅力的になられたやよいママさまのお顔を見ていると、そんなことおっしゃらずに、どうぞ、わしづかんでください、なんて口走ってしまいそう。
 今の私、すごく物欲しげな顔をしているはずです。

「あれ?そんなこと言ったっけ?」
 しばし上目遣いで記憶を辿るやよいママさま。

「あー、思い出した。あの頃、うちの店に直子の行っていた女子大の関係者がよく来ていたのよ、40代手前くらいで先生なのか事務方なのかは知らないけれど。見た目にも気を使っていて、まあまあ美人」
 完全に思い出されたようで、スラスラとお答えくださいます。

「いつもおひとりで来られて、若い子中心に声かけていたわ。話題も豊富みたいで、浅い時間はまあ楽しいお酒なんだけれど、量が過ぎると豹変するの。簡単に言えば酒癖が悪かったのね」
 綺麗な眉間に少しシワを寄せられたやよいママさま。

「悪酔いすると、やたら他の子のからだベタベタ触りたがってさ、そのへんのキャバクラで飲んでるスケベオヤジみたいになっちゃうんだ。それで拒否ると居丈高に怒り出すし」
「他のお客様も、最初は笑って相手していたんだけれど、段々もてあましちゃってさ。絡み方がしつこいんだこれが」

「ジェンダーの話題になると声高になっちゃうような人でね、そのへんもちょっとめんどくさかったかな、お酒の席だしね」
「他のお客様から、彼女は女子大にお勤めらしいって聞いて、その学校名が直子の通う学校だったから、直子が彼女と鉢合わせしちゃったらマズイと思ったのよ」
 困ったような苦笑いのやよいママさまも、アンニュイな感じでお美しいです。

「それで直子が東京に出てきたとき、一番最初に釘を刺しておいたんだ。あたしの店には近づくな、って」
「直子、彼女の好みっぽかったし、顔を覚えられて学校内で関わったりしちゃったら、相当面倒なことになりそうでしょ?」

「一年くらい熱心に通ってくれていたんだけれど、いつの間にか来なくなって、噂で聞いたら別のお店に鞍替えしたみたい。ステディな子をみつけらしいわ」
「だから今夜はもちろんここには来ていないし、これからも安心して遊びに来ていいわよ、エミリーと一緒に」
「それと、あたしのことを百合草先生って呼ぶのはやめてね。もう先生でも何でもないんだし、やよいママ、でいいからね」

 いつもの笑顔にお戻りになられたやよいママさま。
 すると、ちょうどそこにミイコさまがおいでになり、やよいママさまのお耳にコショコショっと何事かお耳打ちされました。

「おーけー。直子もそろそろ落ち着いたでしょうから、始めましょうか」
 私に同意を促すように、おだやかな微笑を向けてくるやよいママさま。

「えっと、始める、って、何を始めるのですか?」
 私の問にお答えくださったのはミイコさま。
「何って決まっているでしょ?イベントの第2部、みなさんお待ちかねのスレイブバトルショーよ」
 とても嬉しそうなミイコさまのお声。

「まずはこれから対戦するお相手にご挨拶しなくてはね。わたしが紹介してあげる」
 ミイコさまが私の肩に手を置き、立ち上がるように促してきます。

「えっ、えっと、どういうことなのでしょう?バトルショーとか対戦とか・・・」
 薄々予感はしていたのですが、やっぱり私はこのお店でも、みなさまの見世物にされちゃうみたい。
 でも、あまりに突然で単刀直入だったので、戸惑いが言葉になってミイコさまを見上げました。

「あれ?エミリーに聞かされていなかったの?ナオちゃんはこれから、うちのお店で一番人気なマゾスレイブと公開バトルをするの。ぶっちゃけて言えばSMショーみたいなものね。あんな格好で現われたから、てっきり覚悟の上だと思っていたわ」
 ミイコさまのご説明に、ウンウンとうなずかれるお姉さま。

「直子ならすんなり空気を呼んでくれると思ってさ、あえて何も説明しなかったんだ。それにもし嫌がったとしても、あたしの命令は絶対だもの」
 お姉さまがお得意げに笑って、リードを手に立ち上がられました。

「あらあら、羨ましいくらいの姉妹愛ね。日頃のトレーニングの成果をじっくり鑑賞させてもらおうっと」
 やよいママさままで、からかうようにおっしゃいます。

「ト、トレーニングって・・・バ、バトルとかSMショーとか、私、別にこれといって・・・」
「トレーニングっていうのはね、あたしら的に訳すと、調教、って意味なの。直子はエミリーにマゾペットとして調教されているんでしょ?その調教がどのくらい進んだのか、見せてくれるってエミリーが言ってきたから、今夜のイベントを組んだのよ、ね?」
 ご説明してくださったやよいママさまとお姉さまが、愉しげにお顔を見合わせてニッコリ微笑みました。

 トレーニングって、そういう意味もあったんだ・・・
 私はお姉さまやオフィスのみなさまといろいろえっちな遊びをしていても、調教されている、という自覚はありませんでした。
 たまにお芝居っぽく、調教、というセリフを使うこともありましたが、それはロールプレイでの役割分担のようなもの。
 でも、傍から見ると私は、お姉さまにSM調教されている、ということになるのでしょう。

 そうするとこれから私がやらされるのは、SM公開調教?
 アダルトビデオでしか見たことの無かった、見ず知らずの大勢の方々の目の前で恥ずかしくも惨めな痴態を晒し、侮蔑と嘲笑の的となる生贄マゾ女。
 
 妄想やフィクションの世界だけのことと思っていた状況が、現実になっちゃうんだ・・・
 やよいママさまがおっしゃるところの、マニアックなスケベさん揃いなお客様がたの前で、きっとすっごく恥ずかしいことをさせられちゃうんだ・・・
 興奮なのか怯えなのか、心の奥底からゾクゾクっとくる震えが全身を駆け巡りました。

「ほら、直子?立ちなさい。里美?また後ろで両手、繋いじゃって」
 お姉さまのご命令でストゥールから立ち上がると、里美さまによって有無を言わせず、再びチェーンで後ろ手錠にさせられた私。

「それでは行きましょう。アキちゃん?電気点けて」
 ミイコさまがフロアに呼びかけると、薄闇だった場内がサーッと明るくなっていきます。
 
 ああん、だめっ、明るくしないで!
 心の中では叫べても、実際に口に出すことなんて出来ません。
 明るくなりかけたとき、おおっ、というどよめき、つづいて沈黙、少ししてヒソヒソ声のさざ波が広がりました。

 真昼のように明るくなった店内すべての方々の視線が、ボディハーネスだけな私の全裸に集中していました。
 おひとりおひとりの好奇に満ちたご表情がハッキリと見えてしまい、いたたまれずに思わずうつむいてしまいます。

 店内のBGMはカイザーワルツ、皇帝円舞曲に変わっています。
「直子?うつむいちゃダメよ?ランウェイのときみたいに優雅に、音楽に乗って歩きなさい」
 私の首輪に繋がるリードのチェーンをお持ちになったお姉さまが、ご自身もゆっくりとモデルウォークされながら、小声でご命令。

 後ろ手錠で背筋を伸ばすと、剥き出しのおっぱいを誇示しているみたいになっちゃいますが、ご命令なので仕方ありません。
 顔をまっすぐ前に向けていると、否が応にも店内のお客様のご様子がハッキリ視界に入ってきます。

 ある人は唖然としたお顔で、ある人はニヤニヤ笑いで、20名以上の見知らぬ女性の方々が私の姿を目で追っています。
 サマードレスで着飾ったかた、ラフにジーンズとTシャツなかた、ブラウスにスカートなOL風のかた・・・
 ミイコさまと同じようなメイド服姿の女性もいらっしゃいます。

 当然ですがみなさまちゃんと何かしらきちんとお洋服を召されている中で、たったひとり、おっぱいも性器もお尻も丸出しな私。
 文字通りの見世物状態。
 急に明るくなってしまった分、恥ずかしさとみじめさが倍増です。

 会社のイベントショーでモデルをしたときの、今すぐ逃げ出したくなるような恥ずかしさがよみがえります。
 ただ、あのときとは、私を見つめる視線の強さが違っていました。
 イベントショーのときは、あきらかに戸惑ったような、照れたように伏し目がちになってしまうご遠慮がちなかたも目立ちましたが、今は皆無。
 
 すべての視線が私の裸身を、食い入るように、値踏みでもしているかのように、好奇と嗜虐と侮蔑を感じ取れるまなざしで、注目していました。
 顔とおっぱいと性器周辺とお尻に痛いほどの視線を感じつつ、ゆっくりと歩きます。

 先導されるミイコさまは、ステージ脇の大きめなテーブル席に向かわれています。
 その頃には店内におしゃべりが戻り、始まるみたいね、とか、ずいぶん若そうな子じゃない?などの弾んだつぶやきも聞こえていました。
 待ちに待ったコンサートがこれから始まる、みたいな雰囲気と同じ、みなさまのワクワクな高揚感が伝わってきます。

 近づくにつれ、そのテーブルの壁際のほうのお席に、見知ったお顔の女性が私をニヤニヤ眺めていることに気づきました。
 その壁際のお席だけ、3人並んで座れそうなゆったりとしたソファー。
 そこにおふたり並んで座られている、すごくよく知っているお顔と、もうひとりのかたは確か・・・

「ごめんさいね、ちょっとジャクリーンに今日のゲストの子を紹介するので、この席一瞬、空けてくれる?ショーが始まったらまた戻っていいから」
 ミイコさまが、テーブル席の壁とは反対側のストゥールにお座りになられていたおふたりの女性にお声をかけました。

「ハーイ!いよいよ始まるんですねっ!?」
 色違いのピチピチタンクトップにショートパンツというセクシーな格好をされた可愛らしい系なおふたり連れが、ご自分たちのグラスを手にそそくさと立ち上がられ、お席を空けてくださいました。

「やっと来たのね?もう待ちくたびれちゃったわよ」
 ぶっきらぼうにお声をかけてくださったのは、ざっくりした白いTシャツ姿の、いつになくラフなファッションのシーナさま。

 そのお隣で涼し気な微笑をお見せになられているシルクっぽいブラウスの凛とした女性は、確か小野寺さま。
 私が脱毛などですっかりお世話になっているエステサロンにお勤めのかたで、支配人さまの秘書をなさっています。

 そのエステサロンには、シーナさまが連れて行ってくださいました。
 そこでも私は、施術中に幾度となくあられもない痴態をさらけ出し、小野寺さまは、そんな私をつぶさにご観察なさっていたはずなのですが、最後まで冷静沈着で理知的に接してくださった、まさしくクールビューティな女性です。

 お珍しい組合わせ、と思いつつも思わぬ見知ったお顔のご登場に、今の私のまさしくマゾドレイな格好を思い出し、あらためて羞じらいが再燃。
 だけど、それ以上にショッキングな光景が視界に入り、唖然としてしまいました。

 先にお座りになられていたおふたりが退かれ、二脚のストゥールの脚のあいだから覗くテーブル下に、身を縮こませてうずくまっているらしい人影が見えました。
 全体的に肌色なので、おそらく裸、そしておそらく女性。

 乱れた髪がお顔の側面にかかり、お顔はわかりません。
 土下座でひれ伏したように身を屈められ、艶かしくカーブを描く剥き出しのお背中の上に、シーナさまの伸ばした生脚が乗せられていました。

 そのお姿を見た途端、ビクンと全身が震え、すぐに直感的に、あ、このかたもマゾドレイなんだ、と確信しました。


三人のミストレス 19


2018年1月14日

三人のミストレス 17

「いらっしゃーい。遅かったわね?週末だから道が混んでいた?」
 この理知的で落ち着いたお声はミイコさま。
 ミイコさまというかたは、私が地元にいたときからやよい先生最愛のパートナーの座におられる女性で、私の一番最初の恋敵。

 フルネームは水野美衣子さま、お姉さまの高校の先輩でもあるそうです。
 そう言えばさっきお外で、これからやよい先生のお店に伺うとわかったときも、ミイコさまのことはなぜだかぜんぜん思い出さなかった私。
 やよい先生とのお別れの日や、わざわざ私だけの為に撮影して作ってくださった自縛のハウトゥビデオ、えっちなグッズ製作などなどで、さんざんお世話になったかたなのに・・・
 ちょっと反省。

「あ、いえ。直子にニチョやエルの小路を案内したくて寄り道しちゃって遅れてしまいました。ごめんなさい・・・」
 お姉さまのテヘペロ気味なお返事。
 でも、ニチョって何?

「ナオちゃんもいるのよね?みんなお待ちかねよ。でもその前に一応お約束、秘密の合言葉ね。いい?百合草会は?」
 インターフォンの向こうのミイコさまのお声が、イタズラっぽい笑い混じりになりました。

「・・・安全、迅速、丁寧、仲良し」
 お姉さまが標語を暗唱するみたいに、照れ気味でお応えになります。

「合格よ、ちょっと待っていて。今ドアを開けるから」
 プツッという音でインターフォンが切れました。

「なんですか?今の」
 里美さまが怪訝そうにお姉さまへお尋ね。

「さあ?あたしもよく知らないけれど合言葉。来たときに言うように言われていたの。何かのマンガだかアニメだかの有名なセリフらしいわよ」
 お姉さまも苦笑いでおっしゃったとき、ドアの向こうでガチャンと音がしました。
 外開きの分厚いドアがゆっくりと開いてきて、私たちは2歩3歩、後ずさります。

「エミリー、お久しぶりー。あ、ナオちゃんっ。それに新顔さんもいらっしゃるのね」
 インターフォンと同じお声と共に現われたミイコさま。
 最後にお会いしたときと変わらない、アイドルさん並の可憐さ。
 
 それにお姉さま、ここではエミリーって呼ばれているんだ。
 そう言えばシーナさまも、3人でお会いしたときにそう呼んでいたっけ。

 目の前のミイコさまは、俗にフレンチメイドスタイルと呼ばれるモノトーンなメイド服姿。
 黒基調のノースリーブミニスカドレスに、白フリルのエプロンとメイドカチューシャがアクセント。
 ミイコさまの透き通るような白いお肌と漆黒のメイド服とのコントラストが鮮烈です。

 何より目を惹いてしまうのは、大胆に開けた胸元から覗く、生成りな麻縄の縛り目。
 よく見るとピッタリフィットなボディコン仕様の生地下から、全身を走っているのであろう縄目の凹凸がけっこう露骨に浮き上がっています。
 おそらくメイド服の下に下着はまったく着けておられず、全身を麻縄で緊縛されているのでしょう。
 申し遅れましたがミイコさまは、まだ高校生だった私にSMの手ほどきをしてくださったやよい先生の長年に渡るパートナーさまですから、もちろんエム属性です。

 全身から妖艶な色香を放出しまくっているのに、縄目に気がつかなければ清純無垢で可憐な美少女に見えてしまうミイコさま。
 そんなミイコさまがお姉さまの先輩で、お姉さまよりお年上なんて信じられません。
 あ、念のため、決してヘンな意味ではありませんよ。
 私のお姉さまが世界中で一番素敵なのは、動かない事実ですから。

「あらら、ナオちゃんはお風呂上がりなの?」
 ミイコさまがからかうようにおっしゃいました。
「あ、いえ、えっと・・・」
 後ろ手錠なので胸元を隠すことも出来ず、ただモジモジからだをくねらせてしまう私。

「ふふふ、まあ、そんなところ。それで、こちらのふたりがあたしの仕事の」
 お姉さまが会話を引き取ってくださり、里美さまたちをご紹介されようとすると・・・

「うん、でも立ち話もアレだから、まずは入って入って。ご紹介はその後でね。ママも中でお待ちかねだから」
 お姉さまのお言葉を遮って、ドアをより大きく開け放してくるミイコさま。
 ミイコさまが、ママ、とお呼びになられたかたがつまり、やよい先生なのでしょう。

「今夜は久しぶりのスペシャルイベントナイトだから、お客様一杯なの。とりあえずはカウンター席を4名分空けたから、そこに座ってママと積もる話をするといいわ」
 私たちをドアの内側へと招かれるミイコさま。

 入口ドアの向こうにもう一枚、重そうな扉があるので、ここは玄関ホールになるのかしら。
 女性5人が入っても窮屈ではないくらいの広さで、足元は真っ赤な絨毯、両脇の壁は鏡張り、収納らしき棚の上に見事な山百合のアレンジが活けてありました。

 内側の扉は真中部分がガラス張りになっていて、どうやら二重ガラスみたい。
 場内が暗めなので、目を凝らしてもここからでは、中のご様子はよくわかりません。
 こちらも外開きらしい大きめな扉の把手の上に、Bar 百合草、段を変えて、FOR LESBIANS ONLY、と洒落たレタリング文字で描かれたプレートが貼ってあります。

「では、ご案内いたしますね」
 ミイコさまの右手が扉の把手にかかり、捻ろうとしてフッと、何かを思いつかれたように手を離されました。

「そうそう、そちらのお客様?」
 イタズラっぽい目付きで私をまっすぐご覧になるミイコさま。
 把手にかかっていたしなやかな右手が、私のほうへと伸びてきました。

「その上着、お邪魔でしょうから、こちらでお預かりいたしましょう」
 可憐なお顔でニッコリ微笑みかけられました。

「えっ!?」
 と口から出るよりも早く、お姉さまの右手がさも当然というようにヒラリとひるがえり、背中のほうからスルスルッとバスタオルが剥ぎ取られました。
「あぁんっ!?」
 後ろ手錠なのでもちろん、剥ぎ取られても自分では一切、どこも隠すことは出来ません。

「悪いわね。よろしくお願いします」
 剥ぎ取ったバスタオルを素早く丁寧にたたまれ、ミイコさまにお渡しになるお姉さま・・・

 えーーっ!?私、最初からこの姿、全部丸出し状態でお店に入るの?
 いずれはバスタオルを取ることになるだろうな、と覚悟はしていたけれど・・・
 見知らぬお客様がたくさんいらっしゃるらしい店内に、いきなりほぼ全裸で・・・

 ミイコさまが先ほどと同じ微笑みを浮かべ、私の剥き出しになった尖り乳首をじーっとご覧になっています。
 徐々に視線をお下げになり、これまた剥き出しの無毛なワレメまで。
 そこに数秒視線が留まった後、もう一度私の顔に視線が戻り、今度はさっきよりも小悪魔的な、とても嬉しそうな笑みを見せてくださいました。

「それではあらためまして、ご案内いたしますね」
 お姉さまから手渡された私のバスタオルをトーションのように左腕に掛け、再び右手を扉の把手に伸ばされたミイコさま。
 そのまま扉を右のほうへ、ガラガラガラッとスライドさせました。

 あ、引き戸だったんだ・・・
 ドキドキして心臓が飛び出しそうなのに、どうでもいいことに感心している自分が不思議です。

「いらっしゃませー!」
 扉を開いてワンテンポ置いて、よく通る大きなお声でミイコさまが店内へご挨拶。
 あ、別にそんなことされなくても・・・

 ガヤガヤさざめいていた場内のおしゃべりがフッと途絶え、そこにおられるみなさま全員のご注目が扉のところに集中してしまうのは当然でした。
「さあ、こちらへどうぞ」

 ミイコさまのご先導に揚々とつづかれるお姉さま。
 お姉さまの右手にはリードの持ち手。
 リードチェーンの端には私の赤い首輪。
 その首輪の下には全裸同様なボディハーネス姿の私のからだ。
 後ろ手錠されているので当然のこと、どこもかしこも隠すことなんて出来ません。

 店内全体がムーディに暗めなのは幸いですが、すべての視線がこちらに集まっているのはわかります。
 間接照明の真下を通ると、尖りきったふたつの乳首がライトにクッキリ浮かび上がります。
 ヒソヒソからザワザワへ、徐々に店内にガヤガヤが戻ってきました。

 カウンター席は10名くらいが並んで座れる長さ。
 そのうちほぼ中央の4席だけポッカリ空いて、他のお席すべて、すでにどなたかがお座りになられています。

「うわー、直子?すんごい久しぶりじゃない?元気そうね。それに今日はすんごいオメカシさせてもらっているのねー」
 カウンターの中から、やよい先生の懐かしくも嬉しそうなお声。
 カウンター前の丸いストゥールにミイコさまがササッと私の上着、いえ、さっきまで巻いていたバスタオルを敷いてくださり、私はおずおずとその上に生尻を乗せました。

 カウンター内は当然ですがそれなりに明るく、やよい先生からはハッキリと、くすんだ赤いレザーハーネスで飾られた私の剥き出し乳房が見えていることでしょう。
 こうなってしまったらもう、開き直るしかありません。

 私はこのお店内で、どなたにでも裸をご覧いただくことを義務付けられたマゾペットなんだ。
 さーこママさまのお店と違い、ここにいるみなさまは全員、同性がお好きな女性の方々らしいし、きっとえっちなこともお好きな方々なのでしょう。
 マゾマンコ丸出しでも、少なくともツーホーとか、いきなり男性に襲われるなどの心配はまったく無いはず。
 ここでこの後私が何をさせられるのかはまったくわかりませんが、お姉さまもご一緒だし、場の流れに身を任せてみよう。
 そう思うことにしました。

 気持ちの整理が少しついたので、あらためてカウンターの奥で何やら包丁を振るっているやよい先生を見つめます。
 ざっくりした黒いTシャツにスリムなサブリナパンツとバレエシューズっぽいぺたんこパンプス。
 最後にお逢いしたときより髪はかなり短かめで、映画のローマの休日の人みたい。

 何よりも、出逢ったときからほとんどプロポーションが変わっていないのが凄いです。
 スレンダーなのに適度に筋肉が付いていて、それでいて女性らしい。
 私から見えているやよい先生は、横向きなのですが、胸を反らし気味にするとTシャツのバストの先がツンと尖っているように見えました。
 あれ?ノーブラなのかな?
 目を逸らせません。

「あれ?ヴァージンキラーに久しぶりにお会いして、見惚れちゃっているの?」
 私の左横にお座りになられたお姉さまが冷やかすようにおっしゃいました。
「あ、いえ、そんなことは・・・」

 私がしどろもどろになりそうなところでタイミング良く、ミイコさまがお飲み物を持ってきてくださいました。
「はい、みなさん一次会でたくさんお飲みになったでしょうから、乾杯は軽めで口当たりのいいシードルにしてみたわ」
 おのおのの前のカウンターにお飲み物を置いてくださるミイコさま。

「あ、里美?直子の手錠、いったん外してやって」
 お姉さまが里美さまにおっしゃり、後ろ手錠のチェーンが外され久々の自由。
 お姉さまのおっしゃった、いったん、という但し書きが気にはなりますが。

 いざ手錠を外されてしまうと、今の自分の格好に一層の羞じらいを感じてしまいます。
 だって、手錠をさせられていれば、おっぱい丸出しでも、隠そうにも隠せない状態だから仕方なく、っていう言い訳が出来ます。
 私は、この人たちにもてあそばれて無理矢理こんな格好をさせられているんです、というエクスキューズ。

 手錠を外されたからって、こんな和やかな雰囲気の中、急に胸元を隠そうとするのもカマトトぶりっ子でわざとらしい感じですし、乾杯なのですから自由になった手でグラスを持つしかありません。
 そうなると、なんだか自分の自由意志で、みなさまに視ていただきたくておっぱい丸出しにしているみたいで・・・
 でもその通りだろう?直子はそういうヘンタイ趣味を持つ女だろう?とおっしゃられてしまえば、何も反論は出来ないのですが。

 いつの間にかやよい先生も私たちの目の前まで来られています。
「それじゃあ、エミリーや直子との久々の再会と、イベントナイト第二部の開幕を祝して、カンパーイ!」

 やよい先生、あ、いえ、今はやよいママさまの音頭で、私たちとミイコさま、そしてカウンターの他のお席にお座りになっていた見知らぬお客様がたもご一緒になってグラスを高く掲げ、チーンと軽くぶつけ合いました。
 私もお姉さまと里美さまとしほりさま、それにやよいママさまとチーン。
 腕をお上げになったときハッキリわかったのですが、やよいママさまはやっぱりノーブラでした。

 林檎の香りな炭酸のカクテル?
 スッキリしていて美味しい!
 お外の熱気で喉が乾いていたこともあり、ゴクゴク飲み干してしまいます。

「第二部、なのですか?」
 カウンターに空いたグラスを置かれたお姉さまが、やよいママさまに尋ねます。

「うん。今日は7時に開けて、8時からイベントのボンデージショー第一部。9時半過ぎに終わって、それからみんなずっと、あなたたちの到着を待っていたのよ」
 やよいママさまが私の顔を見つめながらお応えになります。

「今日は、久しぶりの特別イベントなんだ。けっこうキワドイ内容になりそうだから、お客様も常連さんの中で信用出来る人にしか、お声かけしていないの」
「それにしては大盛況じゃないですか?テーブル席も全部埋まっちゃっているし」
 やよいママさまのご説明に、お姉さまがカウンターの後ろを振り返りつつご感心されています。

「それはそうよ。ジャクリーンの公開トレーニングは久々だし、それに加えて今夜はニューフェイスのゲストが参加するっていうんだから、これは何を差し置いても駆けつけないわけにはいかないわよ、百合草ママのお店のファンとしては」
 お姉さまのお言葉にお応えくださったのは、お姉さまのお隣にお座りになられた見知らぬ妙齢の女性でした。

 お勤め帰りなのか、白ブラウスにグレイのタイトスカートというOLさんぽい格好。
 緩くウエーブのかかったセミロングでナチュラルメイクなお顔は、お姉さまと同世代くらい?
 そのお隣のかたも同じような恰好でウンウン頷いていらっしゃるので、おふたり連れカップルさんぽい。

 おふたりの前には、オンザロックのグラスと乾き物のお皿が置いてあり、それなりに酔われているご様子。
 お姉さまのおからだ越しに、私の剥き出しなおっぱいに遠慮一切無しでニヤニヤ視線を投げかけてきます。

 それにしても今、その女性がおっしゃったお言葉は謎だらけ。
 ジャクリーン?
 公開トレーニング?
 ゲスト?

 ゲスト、に関してはすぐに謎が解けました。
「その、ゲスト、が、この子なんだけどね」
 お姉さまがイタズラっぽくおっしゃると、OLさんおふたり、ほらーっ、と大喜び。

「だと思った、そんな格好でいきなり入ってくるんだもん!」
「ドミナの旧いお知り合いなんでしょ?ドミナから直々にトレーニングされたりもしたの?」
「今日はまさか、ずっとその格好のままお店まで連れて来られたの?」
「そんな姿なのだから当然マゾなのよね?露出も好きなの?どう?恥ずかしい?」
 
 ご興奮気味にお姉さまと私へご質問攻めにかかるOLさんたち。
 ドミナ?
 またひとつ、謎が増えました。

「まあまあ、この子の本性は後々段々わかることだし、夜は長いのだから焦らずじっくり愉しみましょう。それにこの子、まだ着いたばかりで、いろいろ戸惑っているみたいだから」
 助け舟?を出してくださったのは、やよいママさま。
 見ると小さめなトレイに何か乗せて、捧げ持っています。

「ほら、直子のために作っておいたの。麦とろごはんとしじみのお味噌汁。それにキューリと山芋千切りの酢の物。愛情定食」
「あなた昔から、えっちモードにはいると食欲二の次になっちゃっていたでしょ?どうせ今夜も一次会でほとんど食べていないだろうと思って、作っておいたのよ」

 カウンターに置かれたお椀から、お味噌汁の良い香りが漂ってきます。
 やよい先生が私のために、わざわざ手作りのお食事を・・・
 そう考えただけで、忘れていた食欲がみるみるよみがえってきました。

「わー美味しそう!」
「いいなーっ!」
 OLさんとお姉さまから同時に、羨ましそうなお声。

「あなたたちも食べたい?ごはんは一口分程度になっちゃうけれど、とろろはたっぷりあるの。千切りもあるから、お醤油垂らしてワサビ混ぜれば、お酒のアテくらいにはなるわよ。もちろんサービス」
 やよいママさまがおっしゃると、カウンターほぼ全員の手が、はーいっ、と挙がりました。

「いただきます」
 小ぶりのお茶碗に7分目くらいの麦ごはんとたっぷりのとろろ。
 一口食べるとお箸が止まらなくなり、スルスル入ってしまいます。
 やっぱりお腹、空いていたんだ。

 お味噌汁も酢の物もすごく美味しい。
 何よりもやよいママさまが私のために作ってくださった、ということが嬉しい。
 あっという間に全部食べてしまいました。

 ズルズルシャクシャクととろろを啜る、お洒落なバーには似つかわしくない音がしばらく、カウンター周辺に響きました。
 みなさまがお相伴に預かっちゃったので、私のためだけに、ということにならなかったのが少し残念ですが、考えてみればここは飲食店なので、お客様はみなさま毎晩、やよいママさまの手作りお料理を食べていらっしゃるわけで、がっかりしても意味のないこと。
 一息ついた気安さもあって、そっと背後を振り向いてみました。

 店内は意外に広い感じ。
 天井のところどころから光を放つ間接照明は、照度を落としているらしく、けっこう暗めで、上映中の映画館のスクリーン前くらい?
 そんな薄闇の中、カウンター席を除いてもおそらく20名くらいの見知らぬお客様がたが、お酒とおしゃべりを楽しまれています。
 
 カウンター席の背後はフローリングのフロアになっていて、中央に大きめでおへその高さくらいな楕円形テーブル。
 その周囲に椅子はなく、スタンディングで飲む仕様なのでしょう。
 事実、今も数名の方々がそのテーブルに取りついて、立ったまま談笑されています。
 
 確かに、必要以上に身を寄せ合う仲睦まじいカップルさんが目立ちます。
 フロアのところどころにスチール枠の小洒落た椅子が置いてあって、テーブル無しでグラス片手で腰掛けて飲んでいるカップルさんもいらっしゃいます。

 壁際はテーブル席になっていて、おふたり掛けと4人掛けのお席がゆったり並んでいます。
 もちろん満席。
 地下なので窓は無く、窓風のアンティークミラーと、レプリカであろうどこかで見覚えのある大きめな裸婦画や外国映画のポスターらしきエロティックな写真が数枚、品良く飾られています。

 カップルさん6割で、残りは数名づつのグループさんぽい感じ。
 暗いのでご年齢層まではわかりませんが、女性だけのご集団らしい、デパートのお化粧品売り場フロアみたいな甘い匂いがただよっています。
 お客様はみなさまだいたいお知り合いらしく、あちこち移動されてはおしゃべりされているかたもいらっしゃり、全体的にアットホームで和気あいあいな雰囲気。

 カウンターが途切れた先は通路になっていて、もっと奥におトイレがあるいうことを示す、よくある女性の形のアイコンマークと矢印。
 その通路脇に一段高くなったステージっぽいスペース。
 普通の4人編成くらいのバンドなら乗れそうな広さと奥行きで、カラオケらしき機械も置いてあり、実際ステージなのでしょう。

 ステージ背面の壁は全面鏡張り、頭上にミラーボール。
 店内の床が木質系のフローリングなのに対して、ステージ上だけ濃いグレイのリノリウムなので、全面鏡とも相俟って、雰囲気がバレエのレッスンスタジオっぽい。
 思わずやよい先生とのレッスンの日々を思い出してしまいます。
 
 お店に入ったときから、耳障りにならないくらいの音量で、流麗なシンフォニーワルツがずっと流れていました。
 今流れているのは、美しく青きドナウ。

 確か一番最初の発表会の講師演技で、やよい先生が踊られた曲。
 水色のキラキラしたチュチュで、すっごく綺麗だったな・・・
 私がこの曲をハミングすると、なぜだか途中からスケーターズワルツになっちゃって、いつもやよい先生に笑われたっけ。

 そんなノスタルジックな感慨も、ステージ脇のデイスプレイに映っている映像の正体がわかったとき、吹き飛びました。
 どうやら外国ポルノのレズビアンボンデージものらしき映像。
 もちろん音声は消してありますが、50インチ以上ありそうな画面いっぱいに、欧米女性おふたりの肌色とピンク色が大きく映し出されていました。
 
 そうでした、ここにいらっしゃる方々、どなたもみなさま、異性ではなくて同性に惹かれる女性の方々なのでした・・・
 半身を捻った私に向けた刺すような好奇の視線をあちらこちらから素肌に浴びながら、一時大人しくなっていたムラムラが息を吹き返し、マゾマンコの奥底から狂おしく突き上げて来るのを感じていました。


三人のミストレス 18


2018年1月7日

三人のミストレス 16

 そのままの格好で恐る恐る、上目遣いで辺りを見回してみます。
 立ち並ぶ雑居ビルの壁から突き出している、ピンク、ブルー、オレンジ、色とりどりに光る袖看板。
 車道と歩道の境目にメニューの書かれた黒板式の看板も立ち並び、街灯とネオンで夜の11時前とは思えないほどの明るさ。

 ひっきりなし、と言って良いほどに楽しげに歩道を行き交う人たち。
 本宮さまが停めたお車の脇を、タクシーや乗用車が頻繁に通り過ぎていきます。
 ガヤガヤザワザワ、まさしく、歓楽街、という感じ。

 やっと助手席のドアが開き、お姉さまが降りてこられました。
 つづいて運転席側から本宮さまも。

「それでは、ご利用ありがとうございました。どうぞ存分に週末の夜をお愉しみくださいませ。また後ほど、お迎えに上がりますので」
 制帽をお取りになり、深々と綺麗なお辞儀姿でご挨拶くださる本宮さま。

 キリッとした黒スーツ姿の本宮さまは、それでなくても薄着なかたが多いこの熱帯夜の中、スレンダーなプロポーションとも相俟って、余計に人目を惹いているみたい。
 お顔をお上げになると、明るい街灯の下、少し色を抜いたセシルカットが細面によくお似合いな、某老舗女流歌劇団に居らっしゃいそうな物凄いマスキュリン美人さんでした。

 お姉さまが私に近づいてこられます。
「直子は、ここ、初めてよね?ほら、そんなふうにモジモジ縮こまっていないで、もっとシャキッとしていないと悪目立ちしちゃうわよ?」

 私にぴったり寄り添って剥き出しの肩をポンと叩いてくださいますが、バスタオル一枚のこんな心細い格好で、どうシャキッとすれば良いのでしょう。
 余計に胸元を押さえる手に、力が入ってしまいます。

「あ、そっか。直子は露出願望の見せたがり屋さんだから、目立ってもっとみんなに注目して欲しいんだ?」
 ご愉快そうにイジワルになったお顔を寄せてこられるお姉さま。

「直子のそばに寄ると、やっぱりけっこう臭うわね、淫乱マゾメスの臭い。タオルにもグッショリ沁みついちゃっているのね」
 お酒のせいなのでしょうけれど、普段よりずいぶんご陽気で、いささか品を欠く言動なお姉さま。

「ほら、ちょっと臭い消ししてあげる」
 肩から提げたバッグから何か取り出し、首筋やタオルにシュッシュと吹き付けてくださいました。

 鼻腔をくすぐる、嗅ぎ慣れた麗しのお姉さまの香り。
 お姉さまが普段おつけになっているグリーン系ローズマリーな香りに全身が包まれます。

 お姉さまとおそろいだ・・・お姉さまに抱き寄せられているみたい・・・
 束の間の天にも昇りそうなシアワセ気分。

「ついでに、これもね」
 うっとりしている私の顔にお姉さまの右手が近づいて来た、と思ったら、その右手が首のほうに下がり、カチンと小さく金属的な音が聞こえました。

 視線を落とすと私の首輪のリングに、細めな銀色の鎖のリードが繋がっていました。
 私の足元くらいまでありそうなそのリードの先端は、もちろんお姉さまの右お手元に。

「さあ、酔い醒ましにちょっとお散歩しましょう。あたしの可愛いマゾペットちゃん」
 お姉さまが嬉しそうにおっしゃり、鎖をグイッと引っ張られました。

 本宮さまのお車がスーッと発進され、通りの向こう側から私たちを隠すものが何もなくなりました。
 私を取り囲むようにしてくださっていた里美さまとしほりさまも私の半歩くらい手前を並ぶように歩き始め、リードに繋がれた私が群れの最後尾で一番目立つような隊列になってしまっています。

 真夏の夜更け、ほとんど無風。
 裾が煽られる心配が無いのは不幸中の幸い。
 だって、ヒラリとめくれたらすぐにワレメの割れ始めがコンバンハ、しちゃいそうな超ミニスカ仕様ですから。

 だけど風が無い分、熱帯夜の湿った熱気が全身にまとわりつき、火照ったからだが一層汗ばんでしまいます。
 全身を縮こませているので、腋や両腿のあいだは、もうヌルヌル。

「ほら直子?だからそれじゃあ悪目立ちだってば。ショーのときみたいに背筋伸ばして、堂々と歩きなさい。視たいのなら視なさい、って感じで」
 お姉さまが振り向いて、呆れたようにおっしゃいますが、胸元を庇う両手を外すことは出来ません。

 だってこの頼りないバスタオルがハラリと解けてしまったら、恥部全部丸出しなハーネスひとつの、正真正銘マゾメス姿を天下の往来で曝け出すことになってしまうのですから。
 そんなふうに考えているあいだも、四方八方から無数の視線を感じています。

 せめてリードのチェーンだけでも目立たないように、と小走りでお姉さまのお背中に近づきました。
 里美さましほりさまと女性4人、狭い歩道を横並びで歩くような形。
 他のかたの通行の妨げとなり、かえって目立ってしまっているかもしれないと思い、やっぱり下がろうとしたとき、前方から女性のおふたり連れ。

 里美さまとしほりさまが後方へ退いてくださり、それからはお姉さまと私、里美さまとしほりさまの二列縦隊。
 その代わり女性おふたり連れからは、擦れ違いざまマジマジと、ご興味津々な視線をいただいてしまいました。

「直子も話に聞いていると思うけれど、この一帯はゲイの社交場、同性好きな人たちが集まるエリアなのよ」
 わざとでは?と思うくらいゆっくり歩きながら、お姉さまがご説明してくださいます。

「男性向けのお店のほうが圧倒的に多いけれど、女性向けのお店も結構あるの。同性愛者全般が日常としてすんなり受け入れられているのよ」
「女装した男性とかも普通に歩いているし、夏だから女性も男性もセクシーな格好多めでしょ?だから少しくらいキワドイ格好をしていても目くじら立てる人なんていないのよ、ここでは」
「他の繁華街と違ってここは、自分の性的な性癖に正直になっていい場所なの。都内で唯一、しがらみ抜きで性的にオープンになれるオトナの社交場」

 お姉さまのご説明を踏まえてもう一度周りをおどおど見渡すと・・・
 確かに歩いている人たちは、圧倒的におふたり連れが多いみたい。
 それも同性同士が。

 会社帰りのOLさんらしきおふたり連れ、ピチピチな黒のタンクトップから筋骨隆々な二の腕を覗かせているマッチョさんと長髪ミュージシャン風な男性おふたり連れ、どう見ても女装さんなたぶん男性おふたり連れ・・・
 年齢層もさまざまで、ご中年ぽい男性と若いかたの組み合わせや、夏休みのせいか、まだ高校生くらいじゃない?と思うような童顔の女の子同士も。
 
 私たちと擦れ違っても、こちらを一瞥もされないほど、ご自分たちおふたりの世界に浸っているようなかたたちが多いみたい。
 このかたたちみなさま、同性がお好きなかたたちなんだ・・・
 幾分気がラクになりましたが、それでも格好が格好ですから、堂々とモデルウォーク出来るような気分にはまだなれません。

 擦れ違うときに、驚いたような好奇の視線で私をマジマジと視つめてこられた男女のカップルさんがおられ、少しラクになっていた気分がたちまち緊張、思わずお姉さまに抗議してしまいました。
「あの、男女のカップルさんもいらっしゃいますよね?」

「そりゃあ、ここは基本的に飲み屋街だからね。ノンケ出入り禁止の店もあるけれど、オールオッケーなお店もけっこうあるし」
 あっけらかんとおっしゃりながら、より細い路地へと歩みを進めるお姉さま。

「直子、あたしがいくら言ってもおどおどしたままなのね?いいわ。里美?直子の両手、背中で繋いじゃって」
「はいはーいっ!」
 路地に入って足を止められたお姉さまから里美さまへご指示が飛び、里美さまの待っていました、とでもおっしゃりたげに嬉しそうなお返事。

 里美さまとしほりさまが、ササッと私の両脇に立たれました。
 胸元を押さえている両手を、しほりさまがやんわり握ってきます。

「さ、大人しくその両手を背中に回しなさい。抵抗するならタオルごと引っぺがすわよ?」
 唇の両端を押し上げた、しほりさまのゾクゾクしちゃうイジワルい微笑み。

「は、はい・・・」
 為す術無く胸元から両手を離し、お尻の側へ回す私。
 すかさず里美さまがどこから取り出されたのか、両端にナスカンの付いた短かい鎖を私の目の前にぶら下げてきます。

 あらかじめ装着されていたレザーリストベルトが、早くも威力を発揮します。
 右手首のベルトのリングにナスカンが嵌められ、すぐに左手首にも。
 私の両腕は、お尻の割れ始めのあたりで、短かい鎖に繋がれた後ろ手錠状態になりました。

 これでもう、どなたかにバスタオルを剥ぎ取られても、自分では一切どこも隠すことが出来なくなってしまいました。
 ゾクゾクっという戦慄がマゾマンコの奥をキュンキュン潤ませてきます。

 後ろ手になってすぐに、里美さまの右手がバスタオルの折り込み部分に伸びてきたとき、早々と絶望感が駆け巡りました。
 でもそれは、緩み気味になっていたバスタオルの巻付けを直してくださったのだとわかり、盛大な安堵感。

 手錠を掛け終え、再びゆるゆると歩き始めます。
 でも、お酒でご陽気になられているお姉さまがたがいつイタズラ心をお出しになり、バスタオルにお手を伸ばしてくるか、気が気でなりません。

「この路地周辺はね、とくに女性向けのお店が密集していて、エルの小路、なんて呼ばれているんだって」
 頭上で光るカラフルな袖看板を見上げながら、お姉さまのご説明。

「エルはもちろんレズビアンのエルと思うでしょう?フランス語で彼女って意味のELLEだったらオシャレだけれど、実際は小路がL字型に曲がっているから、っていう風情の無い理由が真相らしいわよ」
 可笑しそうに笑われるお姉さま。

 確かにこの小路に入ると、女性カップルさんのお姿が目立ちました。
 そして女性のほうが男性より、あからさまに興味津々で不躾なまなざしを私に投げてくるような気がしました。

 後ろ手錠にされているときも、数組のカップルさんが私たちの傍を通り過ぎていかれましたが、みなさま一瞬ギョッとしたように歩みを止められ、それからクスクスと言うかニヤニヤ言うか、好奇に満ちた瞳で私たちをジロジロ眺めつつ去っていかれました。

 長身スリムなショートカットさまと、見るからにフェミニンなロリータ系ファッションさまという、典型的なレズビアンカップルさまは、私たちを見つけると同時に、こちらにも聞こえるようなお声でこうおっしゃっていました。

「・・・やだ何あれ?AVの撮影?」
「カメラマンがいないからプレイなんじゃない?」
「3対1かあ、凄そう。このへんでアオカンでもすんのかな」

「あれってバスタオルよね?きっとあの下、ハダカで縛られてるんだよ」
「あの子、見るからにドエムって顔してるもんね。いいな愉しそうで」
「絶対マンコ、グショグショに濡らしちゃっているんだろうね・・・」

 私たちの前を通り過ぎた後も、数メートル先で立ち止まってもう一度振り返り、お顔を見合わせて二言三言、何かお話されていました。
 おふたりが私に投げかけてきた、蔑みと羨望が複雑に入り混じったようなまなざしに、ここに来てから一番激しく身悶えしたいほどの羞恥と劣情を感じていました。

 首輪に後ろ手錠バスタオルな自分のドマゾ姿が見世物にされている、という恥辱感の反面、そんな姿でもここでは咎められることも無く好奇の視線ながら許容されている、と思える安心感もあり、最終的にそれらすべてが被虐を経由した欲情となり、キュンキュンムラムラからだを火照らせます。
 内腿からふくらはぎへ、トロトロ滑り落ちていく液体は、汗だけではありませんでした。

 小路の両側にも色とりどりの小さめな袖看板とネオンサインが連らなり、ダンスミュージックっぽい音楽や弾けたような黄色い笑い声が、どこからか漏れ聞こえています。
 こんな格好をしていても、なんだか居心地の良いところ・・・
 そんなふうに思えてきました。

 やがてお姉さまがおっしゃった通り、小路はほぼ直角に右側へと折れていきます。
 曲がり角を折れると、向かって左側だけ妙に暗め。

「あ、お墓・・・」
 見たままのことが素直に口から出ていました。

「そう。こっち側は向こうに見えるお寺さんの敷地。このへん一帯は江戸時代から昭和の半ば頃まで遊郭として栄えたところでね、戦後は所謂、赤線、て呼ばれた色街の一画だったんだって」
「それで、あのお寺は江戸時代から、お女郎さんの投げ込み寺、って呼ばれて、男性の性欲の捌け口となって命尽きた女性たちをずっと、弔ってきたそうよ」

「そう聞くとお墓でも、なんとなく怖くなくなるでしょう?直子の大好きなえっちなことに、大いにゆかりのあるお寺さんなのだから」
 ご冗談ぽくそうおっしゃって、リードをグイッと引かれました。

「ところで、ここまで来たらもう、直子がこれからどこへ連れて行かれるのか、わかったのではなくて?」
 くちづけしそうな勢いでお姉さまに顔を覗き込まれ、後ろ手錠の私はトットットとつんのめってしまいます。

「あ、は、はい・・・」
 実を言うと、二次会は新宿、とお聞きして、少し期待していました。
 この場所で降ろされ歩き始めたとき、期待は確信に変わりつありました。

「やよいせ、あ、いえ、百合草先生の、お店、バー、ですか?」
「ピンポーン!大当たりー。直子がヴァージンを指で破られた忘れじのご主人さまのところに向かっているの。超お久しぶりよね?愉しみでしょう?」
 相変わらず少し品を欠き、それになぜだか幾分トゲも感じるお姉さまのお言葉。

 私が中学の頃からのバレエの先生、やよい先生にお逢い出来るとしたら、本当にすごく久しぶりでした。
 私が東京に出てきてからは、入学直後から一年生のときに数回お逢いしたきり。

 お電話やメールはときどきしていましたが、それも、お姉さまとおつきあいし始めてからは途絶えていました。
 もちろん東京に来たからには、やよい先生のお店にすぐにでもお伺いしたかったのですが、やよい先生から、卒業するまで絶対にダメ、と固く禁じられていました。
 卒業とほぼ同時期にお姉さまと出逢いましたから、それ以降、伺う機会はありませんでした。

「はい・・・すごく久しぶりです」
「今夜は、会えないあいだに直子がどれほど立派なマゾ女に育ったか、百合草女史に、じっくり視てもらわなくちゃね?」
 満面の笑みでおっしゃるお姉さま。

 そう言えばお姉さまは、私がおつきあいをお願いしたとき、わざわざやよい先生とご連絡を取ってお会いになり、交際のご報告をなさっていたのでした。
 それに、私と出会う前から、やよい先生のお店はご存知で、伺ったこともあるようなご様子でもありました。
 
 お姉さまは、おつきあいが始まってすぐ、直子が百合草女史やシーナさんから今までにされてきたえっちなアソビの記憶を、あたしとのことで全部上書きしちゃうつもりだから、とおっしゃってくださいました。
 そのお言葉はとても嬉しく、事実お姉さまの会社に入ってからは、それ以前を上回るヘンタイな毎日を余儀なくされ、やよい先生のことを思い出すことも少なくなっていました。

 でもやっぱりお姉さま、私の過去のこと、お気にされているのかな・・・
 そう言えばご自分で、飽きっぽいのに嫉妬深い、っておっしゃっていたっけ。
 私の心は出逢ってからずっと、お姉さま一途なのに・・・
 
 それで、こういう破廉恥な姿で私をお店に連れて行って、昔の直子とは違う、ということを、やよい先生に知らしめようとしているのかもしれないな。
 それなら私も、お姉さまと出会ってオトナなマゾ女に成長した私を、やよい先生にしっかりご覧いただかなくちゃいけないな。
 あ、でもお店でこの格好だったら、やよい先生からもまた、虐めてもらえるのかもしれない・・・
 歩きながら、そんなふうなことをとりとめもなく考えていました。

「たけど、百合草ママのお店は、このエルの小路ではないんだなー」
 お姉さまのお言葉通り、L字型の路地は、そろそろ終わろうとしていました。
 正面にここの3倍くらい広そうな道路が見え、ヘッドライトを照らした車が右へ左へ横切っていきます。
 リードを引っ張られ、その道を左折しました。

「直子にあの界隈の雰囲気を味わってもらいたくてさ、わざわざ寄り道したのよ?どう?いい感じだったでしょ?」
「あ、はい。こんな格好をしていても、通るみなさまになんだか面白がっていただけていたみたいで、恥ずかしかったけれど居心地も良かったです」
 素直にお姉さまのご配慮を嬉しく感じました。

「へー、このへんは打って変わって、ごく普通のオフィス街なんですね」
 里美さまとおしゃべりしつつ後ろを歩かれていた、しほりさまのお声。
 確かに、まるでさっきの小路の出口が現実世界への出口だったみたいに、ネオンキラキラの歓楽街から灯り少なめ地味めな、よくある夜更けのオフィス街へと景色が変貌していました。

 オフィスビルなのかマンションなのか、ところどころ窓辺に明かりが灯る低めのビルが立ち並び、駐車場や遠くに見える信号機。
 歩いている人もまばら、みんなおひとりで足早。
 全体がグレイに沈み、車の通る音だけ響く見慣れた夜更けの街。

 そんな日常な風景に戻ると、私の今の異常な格好を一層思い知らされます。
 首輪をリードで引かれ、後ろ手錠、からだにはバスタオル一枚、その下はおっぱいもマゾマンコも丸出しなボディハーネス。
 エルの小路の居心地の良さで忘れかけていた罪悪感寄りの羞恥が、理性をお供に一気にぶり返してきました。

 私を見つけたのであろう通行人の方々のご反応も、小路のときとは違って冷たい感じ。
 一瞬チラッと視て、すぐ目を背け歩き去るかた、立ち止まってじーっと目を凝らし、呆れたようにフッと笑うかた、うつむいてスマホを見つめたまままったく気づかずに擦れ違うかた・・・
 小路を歩いていたときのような安心感は消え失せ、イケナイことをしているというドキドキで、性懲りもなく淫ら汁が内腿を濡らしてしまいます。

「もう少しで着くわよ」
 道路を渡り二つ三つ路地を折れて、お姉さまがおっしゃいました。
 さっきの道路と垂直に交わるのであろう車が行き交う通りの少し裏手、細い路地に面したあまり新しくはなさそうな四階建てくらいのビルの入口前で、お姉さまの歩みが止まりました。

「ずいぶんわかりにくいところにあるのですね?」
 里美さまがそうおっしゃるということは、里美さまも初訪問なのでしょう。
 しほりさまも物珍しそうに辺りを見回しています。
 ビルの入口付近にはネオンも看板も、お店を示すようなものは何も見当たりません。

「ううん。直子がこんなだからさ、わざと人目につかなそうな道を選んで来ただけよ。普通ならさっきの道をまっすぐ行って、交差点右に折れて路地入ればすぐ。あのまま車に乗っていれば、あっさり20分くらい前に着いていたわ」
 
 お姉さまが笑いながらおっしゃり、オフィスビルっぽい入口脇の地下へと向かう階段を下り始めます。
 さすがのお姉さまたちも、天下の往来で私のバスタオルを剥ぐというような、キチク的行為はなさらなかったことにホッとしつつ、つづいて私も。
 
「直子は後ろ手錠だから、ゆっくり下りてあげる。つんのめって転んだら受け身出来ないで大怪我しちゃうものね」
 相当年季の入っていそうなコンクリートの壁に寄り添うように歩を進め、地下に到着。

 お客様商売のお店にしては、ずいぶんと暗めな間接照明でコンクリート打ちっ放しなエントランス。
 バレエのレッスン場や音楽スタジオのようにスチール製の重そうな紺色のドアがピタリと閉ざされています。

 ドアの目線の位置に、会員制、と黒字で書かれた白いプレート、その下に小さく赤字の英語で Members Only 。
 お店のお名前とか、レズビアンバーとかは一切書かれていませんでした。

 ドアの横にインターフォン。
 お姉さまが慣れた手つきでボタンを押し、こう告げました。

「こんばんは。遅くなりました。ダブルイーのエミリー他3名です。本日はお招き、ありがとうございます」
 少しの沈黙の後、インターフォンのスピーカーから、懐かしいお声が聞こえてきました。


三人のミストレス 17


2018年1月3日

三人のミストレス 15

 週末で賑わう夜更けの幹線道路をひた走るハイヤー?の後部座席、赤い首輪以外生まれたままの姿な私。
 スモークフィルムのせいで透過性の低下した黒ずんだガラス窓がすっかり鏡と化し、私の横向きおっぱいの先端、誇示するように尖りきった勃起乳首がクッキリ鮮明に映り込んでいます。

「本宮さんが外からは見えないっておっしゃっているのだから、一切隠しちゃだめよ!」
 おっぱいを隠したくて自由になった右手を動かそうとしたら、すかさずお姉さまからピシャリとダメ出し。

「あ、はい・・・」
 結局両手は剥き出しな太腿の上に。
 裸の私を映したままな窓の向こうを流れていく、きらびやかな街の夜景にドキドキと心細さが止まりません。

 車内に低く流れている厳かなピアノコンチェルト。
 これは、ラフマニノフだっけ?

 左隣の里美さまが、ご自分のバッグを何やらガサゴソされています。
「これから直子のからだにおめかししてあげる」
 そうおっしゃって取り出されたのは、一見、ベルトの束みたいに見えるもの。

「今日の直子はスペシャルゲスト、兼、生贄デビューでもあるからね。それらしい格好になってエレガントに伺わなくちゃ」
 前の席のお姉さまが、ご愉快そうにおっしゃいました。

「ちょっと両手を上に上げていて。頭の後ろで組んでもいいわ」
 里美さまのご命令でマゾの服従ポーズ。
 腋の下から両乳房まで丸出しになると同時に、お車が信号待ちで止まりました。

 里美さまが取り出されたのは、俗にボディハーネスと呼ばれるレザーの拘束具でした。
 私が今しているような首輪と同じ色合いの沈んだ赤のレザーベルトが金具で繋がれ、装着するとロープで菱縄縛りをされたような姿になる、SMプレイ定番のボンデージファッション。
 以前、通販ショップ用のモニターとして一度試着させられたものと同じやつなのかもしれません。

 首輪はしたまま、首輪の下に首の後ろからホルターネック状におっぱいのほうへと、ブラジャーの紐ように革紐が垂れ下がりました。
 乳房を左右に振り分けるようにベルトが交差し、おっぱいが菱形模様の革紐で絞り込まれます。
 
 ブラジャーであれば乳房を包むカップがあるのですが、ハーネスなので乳房の根本を締め付けるだけ。
 普通のブラジャーからカップ部分を取り去り、外縁部分だけのオープンカップブラ状態となり、おっぱい全体が絞られた分、突き出た乳首がより飛び出し、露骨に目立ちます。

 里美さまは手慣れた手つきで手際よく金具を調整し、あっと言う間に上半身がくすんだ赤色のベルトで作る菱形で飾られました。
 そして、余っているベルト部分を見ると、私がモニターで着けたやつと違っているみたい。

「今度はちょっと腰を浮かせてくれる?」
「はぁうっ!」
 里美さまに突き出た乳首を指でピンと弾かれ、思わず喘ぎ声でお答してしまう私。

 普通のボディハーネスであれば、下半身部分は、たとえ紐一本分くらいの細さでも、一応パンツ状になっているものが多いのですが、おへその下あたりまで装着の終わったハーネスの残り部分に、パンツ的な形状をしたレザー部分はありませんでした。

「これはね、直子みたいなドスケベマゾ女のために、特別にデザインしたのよ。オマンコも丸出しの慰み者スレイブ用ボディハーネス」
 里美さまが嬉しそうに解説してくださいます。

 座席のシートから腰を浮かせて前屈みの中腰になった私の両太腿に、残りのレザーベルトが脚の付け根付近の内腿を通って左右へと、それぞれ股間の皮膚、つまり大陰唇を押し開くように巻き付けられました。
 ウエストくらいの高さから垂れ下がった左右2本のベルトは、恥丘を覆い隠すこと無く、ガーターベルトのように太腿に巻き付いて装着終了でした。

「やだ直子、座席のシートに愛液、滴らせちゃっているじゃない?」
 私の左太腿にベルトを巻き付け終えた里美さまが、呆れたようなお声をあげられます。

「あうぅ、ごめんなさい・・・」
 腰を浮かせたとき、剥き出しの股間と高級そうな灰色のレザーシートとのあいだに、恥ずかしいか細い糸が納豆のように粘っこく糸引いているのが自分でも見えていました。
 かろうじてお尻に敷かれていたバスタオルを剥ぎ取られてしまったのですから、仕方のないことではあるのですが、ベルトでラビアを引っ張られ裂け目も開いてしまったので、尚更ネットリ溢れ出していました。

「あらら。本宮さん?ごめんなさいね。うちのペットが粗相して。シートを汚してしまったみたい」
 助手席のお姉さまが運転手の本宮さまへ、申し訳なさそうにお詫びされます。
 でも、おっしゃりかたがお芝居がかって、なんだか愉しんでいらっしゃるっぽい。

「ああ、いいですよ、そういうのにもわたくしは慣れていますから。泥酔したお客様の吐瀉物に比べれば数倍マシですよ」
 気さくに寛容なお言葉を返してくださる本宮さま。
 でも私の愛液、酔っぱらいさんの嘔吐物と比べられちゃった・・・

「それに、そのシートはすでに、あのかたの同じような液体がこの一ヶ月でふんだんに沁み込んでしまっていますからね。来週シートごと取り替える予定なんです」
 なんでもないことのように、大らかにお応えくださる本宮さま。

「そうなんですか。だからこの車に乗ったとき、芳香剤に混じってなんとなく淫靡なメス臭い匂いがするなって、思ったんだ」
 興味深そうに相槌を打たれるお姉さま。

「あたしはてっきり直子のせいだと思っていたけれど、それだけではなかったんですね?」
「ええ。ほんの3時間くらい前にも、あのかたたちをお乗せしまして、あのかたはずっと、後部座席で全裸でしたから」
 可笑しそうに笑いながらおっしゃる本宮さま。

「この子も濡れやすい子なんですよ。さっきお店から車まで行くときも手を引いていたのですけれど、人と擦れ違うたびに手のひらが熱くなって汗ばんで、恥ずかしさに発情しているのがすぐわかっちゃうんです」
「それまで一次会のお店で、さんざん発情してイキまくっていたのにですよ?本当にいやらしい子」
 嬉しそうに本宮さまに暴露されるお姉さま。

「ええ、わかりますよ。こんな状況なのに、視ていて痛々しいくらい尖り切ったお嬢さんのそのニップルを拝見すれば、お嬢さんが根っからの視られたがりマゾヒストということは、一目瞭然ですね」
 本宮さまの、どこまでも冷静なお声。

「今夜は、あのかたたちとお愉しみ、ですか?」
「そうなの。この子がちょっとワケアリで、初お披露目なんです。本宮さんも観に来ればいいのに」
「いえ、わたくしはまだ勤務中ですので・・・お迎えにも上がる予定ですから、おそらくお帰りのときも、お目にかかることになるとは思いますが」

「そうなんだ。じゃあまた今度改めて、本宮さんにも、このマゾペットとアソブ機会を作りますね。シートを汚してしまったお詫びも兼ねて。この子、直子っていうんです。森下直子」
「あ、いえ、お気を遣われなくても結構ですよ。でも確かに、こんな可愛らしいお嬢さんが乱れるところなら、拝見してみたい気もしますが・・・」
 
 お姉さまと本宮さまの謎だらけで不穏な会話がつづいています。
 あのかた、ってどなたなのだろう?
 お姉さまと本宮さま共通のお友達か何かなのかしら・・・
 
「それなら里美たちがちょいちょいっと直子弄って、本宮さんに直子のエロいイキ顔をお見せする、っていうのはどう?」
 ノリノリでおっしゃったお姉さま。

「でもチーフ?直子をイカせると、今よりもっとシートを汚しちゃうことになるのでは?」
 私の唇にテカテカしたルージュを塗ってくださっていたお手を休め、しほりさまがご心配そうにご指摘されました。

「あ、ですからわたくしと車のことはお気になさらないでください。この車の後部座席では、何をなさっても結構なんです。そういう契約になっていますので」
「マスターベーションされて潮を吹かれても失禁されても、なんならローソクをポタポタ垂らされても、すべてあのかた経由でクリーニング諸々全部、必要経費で落ちますので」
 大らかにおっしゃる本宮さま。

「へー。やっぱり超セレブはスケールが違いますね。それならお言葉に甘えちゃいましょう。本宮さんも事故らない程度にルームミラーで視てやってください、我がオフィスの淫乱マゾペットのいやらしいメスの顔」
 お姉さまのお言葉が終わらないうちに、左右から手が伸びてきました。

「あうっぅぅ!」
 イジワル笑顔なしほりさまに両方のおっぱいをわしづかまれ、これまたイジワル顔の里美さまの指が二本、マゾマンコに突き挿さり・・・

 さーこママさまのお店で失神して以来、ほとんど物理的刺激を受けていなかった私の敏感な秘部たちが待ち侘びていたように、一斉に歓喜の嬌声をあげます。
 タオル一枚の街中歩行や、ハイヤー内全裸、みなさまからの蔑みお言葉責めで蓄積されていた精神的恥辱感が、すべて肉体的快感へと昇華していきます。

「あっ、いやっ、いいっ、そこっ、そぉ、そこっ・・・・」
「だめっ、んっ、いいっ、あーーっ、んーーっ、もっとっ、もっとぉーっ!・・・」
「あ、もうイク、イクぅ、あっ、そこっ、そこーっ、もっと、い、い、イカせて、あんっ、イカせていただいて、よ、よろしいでしょうかっ?」
「あんっ、しほりさまぁ、さとみさまぁ、イキますぅ、イカせてくださいぃぃ・・・」

「違うでしょ直子?直子がお願いしなくちゃいけないのは身内じゃなくて、そんなヘンタイ娘をお車に乗せてくださっている運転手さんにでしょう?」
 お姉さまから鋭く叱責のお言葉が投げつけられました。

「あぁんっ、はいぃぃ、ごめんなさいぃ、そうでしたぁ、も、本宮さまぁ、い、イカせていただいて、よ、よろしいでしょうかぁ?・・・」
 目先のオーガズムに向けてグングン高まっていく自分のからだ。
 
 初対面の運転手さまにあられもない姿をお視せしている、という恥辱の状況がマゾ性の炎にガソリンを注ぎ、快感の波がからだの奥底から湧き上がってきます。
 膣奥深く突っ込まれて高速ピストンをくりかえす里美さまの三本の指がジュブジュブピチャピチャ囀り、薄灰色のレザーシートにドス黒いシミがみるみる広がってしまいます。

「ちゃんとお許しを乞うなんて、さすがに躾が行き届いていますね?お嬢さん?あ、えっと、直子さん?イキたいのですか?」
 本宮さまのからかうようなお声。
「はいぃ、イカせてくださいぃ、あっ、もうっ、もおーっ・・・」

「でしたら恐れ入りますが両隣のお嬢様がた、そのマゾ女を悦ばせることをいったん中止してください」
 まっすぐ前をお向きになられたまま、本宮さまがひんやりしたお声でおっしゃいました。
 しほりさまの両手がおっぱいから離れ、里美さまの指が止まり、無情にもスルッと抜けていきます。

「もうイク寸前なのですよね?でしたらあとはご自分の指でつづけなさい。わたくしがイキなさい、と命令したらすぐイケるように、ここからはご自分の指で盛り上がりながら、ギリギリでイクのを我慢していなさい」
 変わらずのご丁寧な口調ながら冷たさの増した本宮さまのドエスなお声。

「は、はい・・・お許しいただいてありがとうございます・・・」
 ご返事をして、おずおずと自分の股間に手を伸ばします。
 
 さっきまでは両隣の手で強引にもてあそばれ、昂ぶった末の懇願でした。
 今度は自分の手で、つまり自慰行為をしてイケ、というご命令。
 こんな場所で、こんな姿で、みなさまの視ているその前で。
 自分が本当に淫乱なドスケベマゾ女だということを、自らの手によって証明しなさいというご命令・・・
 
 お車はところどころ窓から灯の漏れるオフィスビルが立ち並ぶ幹線道路を、時折信号につっかえながらも順調に走っています。
 自分がイキたいから、ところ構わず自分の性器に指を突き挿してしまうヘンタイ女。
 少しの理性が働き始めたのか、第三者の指でイカされるより、自慰行為でイクほうが数倍はしたなく思え、マゾマンコに当てた指の動きが鈍ってしまいます。

「ほら、遠慮しないで思い切り弄らないと、命令通りイケないのではなくて?」
 お声がかかり顔を上げると、ルームミラーの中の本宮さまの切れ長な瞳と、バッチリ視線が合いました。

「は、はい・・・」
 ラビアを軽く撫ぜているだけでビクンビクン反応してしまう火照りきったからだ。
 でも、ご命令通りにイクためには、もっと敏感なところを積極的に責めておかなければイケません。
 何よりも私の全身が、一刻も早くイキたくて仕方なくなっていました。

 ルームミラーに視線を合わせつつ、右手人差し指と中指を、ズブリとマゾマンコの膣穴に潜り込ませました。
「あうふぅぅぅ・・・」

 熱い、そしてビチャビチャ・・・
 こんなところで、みなさまに視られて私、オナニーしているんだ・・・
 そう思った途端、私の意志とは関係なく、指だけが別の生き物のように動き始めました。

「あっ、あっ、あんっ、んーっ・・・」
「いい声ね、いやらしく身悶えて、そう、もっと盛り上がりなさい、でもまだイッてはだめよ」
 短かい渋滞を抜け出したようで、お車の速度が上がったような気がします。

「本宮さん、見事なミストレスっぷりじゃない?そんな感じで直子をじっくり虐めてくださるところも、ますます見たくなっちゃった」
 お姉さまが心底感心されたような驚きのお声を出されました。

「そうですか?まあ、わたくしも伊達に数年間、あのかたたちの運転手を務めてているわけではありませんから」
 少し恐縮されたように、照れ気味にお応えになる本宮さま。
 そのあいだも私は、自分の指戯でずっとアンアン喘ぎっ放し。

「はい、じゃあここでイキなさい。今すぐ」
 本宮さまからお許しが出たとき、お車は赤信号で停車していました。

「あんっ、はいぃ、も、本宮さまぁ、ぁ、ありがとうございますぅ、ぃ、イカせていただきますぅぅ・・・」

 片側3車線くらいある、ずいぶん大きな交差点。
 私たちのお車は真ん中の一番前にいて、左右を他のお車が囲んでいます。
 交差する道路にも右へ左へ流れるヘッドライトの河。
 舗道にもたくさんの人達が行き来しています。

「あんっ、イキますぅ、イッちゃいますぅぅぅ・・・」
 左手で右おっぱいを激しく揉みしだき、右手のひらでクリットを押し潰しつつ膣内の指をグイッと奥に押し込んだとき・・・

 またしても後部座席左右の窓がスルスルっと下り、熱帯夜の熱気にモワッとからだが包まれました。
 大きく耳に飛び込んでくる街の雑踏、ざわめき・・・

「あーーっ、ぅぅぅぅ・・・」
 それまであられもなく大きな声で悶え喘いでいた私の声が、弾かれたようにフェイドアウト。
「んぐぅ、ぬぐぐぐぅぅぅぅぅ・・・」
 それでも容赦無く快感はスパークし、抑えきれないくぐもった歓喜の叫びが喉奥からせり上がってしまいます。

「やだっ、直子、全身がヒクヒク痙攣してる・・・腰もビクビクガクガク跳ねっ放し・・・」
 左隣からしほりさまの呆れたようなお声。
「ピチャピチャヌチャヌチャいやらしい音・・・それにやっぱりシートが漏らしたみたいにシミで真っ黒・・・」
 右隣から里美さまの呆れたようなお声。

 いやっ、視ないで・・・視ちゃイヤっ、あ、でも、ううん、視て・・・恥ずかしい直子をもっと視て・・・
 こんなところで真っ裸にされて、マゾペットのシルシなボディハーネスを着せられて、自分のマゾマンコに自分の指を突き立てて身悶えている、浅ましいマゾメス直子の姿を、みなさまじっくりご覧になって・・・

「ほら、隣の車のカップルさんが呆れた顔で視ているわよ?」
 お姉さまの心底ご愉快そうなからかい声が聞こえましたが、私に確かめる術はありません、ひたすらうつむいて、からだを何度も震わせるような凄まじい快感に身を任せていました。
 
「んぐぅぅぅ・・・ぬぅぅぅ・・・みぃてぇぇ、いぃぃぐぅぅぅぅっ!!!」
 やがて信号が変わったのか再びお車は滑り出し、窓もスルスルっとせり上がり、エアコンの冷気と低いピアノコンチェルトの密室に戻りました。

「いいイキっぷりでしょ?この子」
「そうですね。まだお若そうなのに、ゾクゾクッとする色香を感じました。何て言うか、もっともっと、じっくり時間をかけて、虐め尽くしたくなるような・・・」

 本宮さまの冷静なご感想をお聞きしつつ、超快感の余韻に束の間ハアハア息を切らしてグッタリ。
 スタイリッシュな外見通り、本宮さまって、かなりのドエスタイプでいらっしゃるみたい・・・なんて考えていました。

 お車はいつの間にか、新宿東口の繁華街に侵入していました。
 今までに増してきらびやかなネオンの洪水、週末に浮かれた人たちのさざめきと雑踏。
 少し走ってはすぐ信号に捕まるノロノロ運転。
 そんなお車の中で私は、見るからにマゾドレイな姿でした。

 せっかく身に着けても大事なところは何一つ隠してくれないオープンバスト、オープンプッシーなボディハーネス。
 両手首と両足首にも同じ色合いのリング付きレザーカフを巻き付けられ、ナスカンとか南京錠、チェーンひとつでどんな恥ずかしい格好にも即拘束出来るよう準備万端。
 
 そんな自分の姿が、後部座席の窓に映っています。
 ハイヤーに乗ったときはほぼスッピンだった顔も、しほりさまによって艶かしめにメイクされていました。
 イッたばかりなこともあり、呆けた顔が見るからに淫乱そう。

「そろそろ目的地の近くですけれど、いかがいたします?お店前まで着けますか?」
 本宮さまのお声でフロントグラスのほうに目を向けると、お車は幹線道路を外れ、背の低めな雑居ビルが立ち並ぶ道路をゆっくり走っていました。

「あらもう?今日は道が空いていたのね」
 お姉さまが窓越しにお外をキョロキョロ見回しました。

「そうね、あたしも来るの久しぶりだから、ちょっと歩こうかな。あの、例の路地の入口で降ろしてくださる?」
 お姉さまがチラッと私を振り返りつつ、お返事されました。

「かしこまりました。この辺りは一方通行ばかりなので助かります。小路の手前辺りでお止めしますね」
 本宮さまがおっしゃりながら、もっと細い路地へとゆっくり左折しました。

「おーけー、それじゃあ直子はバスタオルを巻きなさい。いくらここでも、さすがにおっぱい丸出しのハーネス姿じゃツーホーされちゃうから」
 ご愉快そうにおっしゃるお姉さま。
 里美さまがバスタオルを渡してくださり、私は中腰になってハーネスの上から急いで巻きつけます。

 再びタオル地のボディコンチューブトップ超ミニワンピ姿になった私。
 でも今度は、いろいろ淫猥でアブノーマルな異物がタオル地からはみ出しています。

 赤い首輪は元からですが、もうひとつブラ紐のように首にかかるレザーハーネス。
 両手足首に巻かれた、首輪と同じ素材のレザーカフ。
 それぞれに銀色に輝くリングが目立ち、どなたが見ても、ひと目で、SMボンデージ方面の人だ、とわかるいでたち。

 こんな姿で、いくら夜更けとはいえ、お外に出ていいのだろうか・・・
 さっきオナニーでイッたばかりなのに、いえ、イッたからこそなのかもしれませんが、マゾマンコの奥がウズウズと疼き出し、全身がポーッと火照ってきました。

「着きました」
 一方通行らしい道路の左端に静かに停車された本宮さまのお車。
 後部座席左側のドアがスッと開き、再び真夏の夜の熱気にからだが包まれました。

 最初に里美さまが降りられ、次は私・・・
 本当にこんな格好でお外を歩くんだ、タオル一枚剥がされたら菱形模様ハーネスの、SMボンデージな格好で・・・

 ドキドキムラムラ躊躇していたら、しほりさまに押し出される格好で無理矢理お外の歩道に着地。
 しっかり外灯の真下。
 すぐ前には眩しいくらいに派手な飲料水の自動販売機。
 いやん、明る過ぎ・・・
 
 胸元を両手で押さえ、身を縮こませていたら目の前を、互いの手をしっかり恋人繋ぎした男性同士のカップルさんが、仲睦まじく身を寄せ合い、幸せそうな笑顔で通り過ぎていきました。


三人のミストレス 16

2017年12月17日

三人のミストレス 14


 一階まで下りると、店内は少し照明を落としてガランとしていました。
 カウンターの真ん中にお姉さま。
 そのお隣にもうおひとかた、どなたかいらっしゃるみたい。
 お姉さまの目の前には、ほとんど空になったワイングラスが置いてあります。

「ああ、意外に早く復活したのね。直子、こっちへいらっしゃい」
 私に気づいてくださったお姉さまが、ご自分のお隣の空いている方のカウンター椅子を指さされます。

「あ、はい・・・」
 おずおずとストゥールに歩み寄り、丸い腰掛け部分にバスタオル越しのお尻を乗せます。
 回転式のストゥールだったので少し腰を捻ると、体全体がカウンター正面に向きました。

「はい、お疲れさま。ずいぶん可愛く喘ぎ放しだったから喉乾いたでしょ?これ、飲んで」
 カウンター越しにさーこママさまが、カクテルグラスに注がれた透明な飲み物を差し出してくださいます。

「あ、ありがとうございます・・・」
 うつむいてグラスを手に取り、一口唇を当てます。
 ん、甘い・・・冷たい、シュワシュワしている・・・でもお酒?、んっ、美味しい・・・
 結局一気に半分までゴクゴク飲んでしまいました。

 グラスをテーブルに戻すために再びうつむいたとき、大変なことに気がつきました。
 座るために腰を曲げているためバスタオルの裾がせり上がり、ツルツルな恥丘がスジの割れ始めまで、ストゥールの上で見事に露出していました。
 カウンターで隠れて、さーこママさまからは見えないでしょうけれど、お隣のお姉さまからなら丸見えなはず。

 はしたない・・・
 かといって隠そうとして裾を引っ張ったら、今度は乳首がポロンと、こんにちは、しちゃいそうだし・・・
 自分のからだがみるみる火照っていくのがわかりました。

「気を失っちゃったときはビックリしたけれど、すっかり血色も戻って、来たときより数段色っぽくなっているわよ」
 私の顔をじっと見つめていたさーこママさまが、今の私の下半身の状態を知ってか知らずか、火照っている私を冷やかしてきます。

「わたしも若い頃、たまに気絶していたわ。とくに膣でイカされると、だめなのよね。気持ち良すぎて頭の中が真っ白になって」
 さーこママさま、けっこうお飲みになられたのかな、目をトロンとされて、あけすけな告白。

「初めて気絶したのは、同性と初めてそういうことをしたときだったわ。学校出て最初に就職した会社の先輩」
「それから私も女性同士のえっちにハマっちゃったの。男はがさつだしめんどくさいし。男として気絶したことなんて一度もなかったわ」
 さーこママさまの瞳が、昔を懐かしむように細まります。

「それで気絶から覚めた後って、からだが全体がとても敏感になっていない?ちょっと触られてもヒクヒクしちゃう、全身性感帯、みたいな?」
 イタズラっぽく私の顔を覗き込んでくるさーこママさま。

「あの、えっと・・・」
 その通りなのですが、素直に、はい、とお答え出来ないのは、さーこママさまの背後、厨房の奥のほうに男性のかたらしいお背中が見えているからでした。

 おそらくあのかたが、ケンちゃん、さま。
 このお店のシェフをされていて、ゲイで露出症マゾで、私のことを羨ましがっている、とお聞きしていましたが、男性は男性です。
 同性だけの場で辱められているときとは異なる、男性に欲情を催されてしまったらどうしよう、という幾分怯えの入り混じったフクザツな羞じらいを感じていました。

「あれ?直子ちゃん、ケンちゃんのこと気にしているの?」
 私の視線の先に気がつかれたのか、さーこママさまの訝しむようなお尋ね。

「あ、いえ、あの・・・」
「さっき社長さんから聞いたわよ。直子ちゃん、男性全般が苦手なんですってね?」
「あ、え、は、はい・・・」

「大丈夫、安心して。ケンちゃんは、女性になんかまーったく興味無いの。どんなに可愛らしい子がどんなにえっちな格好したって、ちんちんピクともしないみたい。パートナーのダニエルだけに首ったけの超ラブラブだから」
 私の視線の先で包丁をトントンさせていたケンちゃんさまの右肩が、ピクンと動きました。

「それにね、妙にアタマ堅いとこがあって、わたしが夏だしってちょっと肌の露出多めな服を着てくると、それはレディとして品が無い、なんて怒るのよ。自分だって酔っ払ったら露出狂のクセにね」
 笑いながらおっしゃったさーこママさまのお声に、ケンちゃんさまの肩が今度は二回、ピクンピクン。

「店長?野菜切り終わったから、下ごしらえ始めますよ!」
 ケンちゃんさまの少し苛立ったようにぶっきらぼうな大声が聞こえ、はいはーい、とお答えしつつ奥の厨房へと戻られるさーこママさま。
 入れ違いにお隣のかたとご熱心におしゃべりされていたお姉さまが、こちらを向かれました。

「直子の淫乱マゾボディは、こんなんじゃまだまだ序の口よね?敏感になってやっと火が点いたってところでしょ?これから二次会で、もっと盛り上がるわよ?」
 さーこママさまと同じくらい瞳をトロンとさせた妙に艶めかしいお姉さまが、じっと私の剥き出しの恥丘を視つめておっしゃいました。
 って言うかお姉さま、お隣とおしゃべりしながらも私とさーこママさまとの会話もちゃんとお聞きになってくださっていたんだ。

「あの、えっと、他のみなさまはどうされたのですか?」
 お姉さまのお隣に座っていらっしゃるのは、絵理奈さまお付きのヘアメイクアーティストのしほりさまでした。
 しほりさまの更にお隣に里美さまがお座りになり、他のスタッフのみなさまのお姿はありません。
 ギャラリーに加わられたOLさんたちのお姿も、アルバイトのマツイさまのお姿も。

「みんなお開きになった途端に、そわそわと夜の街にくりだしていっちゃったわ。それぞれ、つがいで」
 可笑しそうに笑いながらおっしゃるお姉さま。

「直子があんまり気持ち良さそうにイキまくるものだから、みんなアテられちゃって、居ても立ってもいられなくなったんじゃない?」
 お姉さまがからかうように私の顔を覗き込んできます。

 つがいで、ということは、雅さまとほのかさま、リンコさまとミサさま、そして綾音さまと絵理奈さま、ということでしょう。
「それで、カップリングにあぶれたわたしたちが社長さん主催の二次会で、憂さ晴らしさせてもらうことになったってわけ」
 しほりさまがお道化た口調で、お姉さまのお言葉を引き継がれました。

「では、この4人で、これからどちらかに伺うのですね?」
 私もお姉さまとふたりきりになりたい気持ちもありましたが、お姉さまとしほりさまと里美さまという、エス度の高い珍しい組み合わせにワクワク潤んできてしまうのも事実でした。

 何よりも、どこへ連れて行かれるのかが気になります。
 絶対にただの飲み会などではなく、私を辱める場なのでしょうけれど。

「そう。うちの連中は今頃それぞれ、ふたりだけの世界で盛り上がっていることでしょうね。綾音たちは、気が向いたら顔を出すかもしれない、って言っていたけれど」
 お姉さまのお口ぶりでは、もう伺う場所も決まっているご様子。
 そこまで本当に私を、バスタオル一枚で連れて行くおつもりなのでしょうか?

「そう言えばパーティの最中に、マツイちゃんから面白いこと聞いちゃったんだ・・・」
 三席向こうのお席の里美さまがカウンターに身を乗り出して、私にそう告げたとき・・・

 カランコローン!
 背後から突然、軽やかな音色が鳴り響きました。
 お店の入口ドアのウェルカムチャイム。
 どなたかがお店に入ってこられたみたい。

 驚いて思わず振り向いてしまいました。
 照明を落としたドア前に立ち尽くす長身細身なシルエット。
 この熱帯夜に黒のパンツスーツとタイを締めた白ワイシャツをきっちり着込み、頭にはおまわりさんのようなカッチリしたツバのついた制帽まで。
 って、えっ!ひょっとして本物のおまわりさんっ!?

 ギクリと心臓が跳ね、あわてて顔を逸らし正面に向き直ります。
 お店二階の窓辺から私の痴態が目撃され、どなたかにツーホーされちゃったのかな?コーゼンワイセツ?タイホ?
 ドキドキが自分の耳に聞こえてきそうなほど。

「ワタナベさま、お迎えに上がりました」
 聞こえてきたのは少しアルト気味ながら紛れも無い女性のハキハキしたお声。

 あ、女性だったんだ・・・それで、お迎え、ということは、タクシーの運転手さんとかかな?・・・
 急激に膨らんだ恐怖が急激に萎み、盛大にホーッと胸を撫で下ろす私。

「あ、わざわざ悪かったわね。指定時間ぴったり。さすがね」
 隣で思いっ切りパニクっていた私のことなんてまったく気づいていなかったらしい、お姉さまののんきなお声。

「ママさ~ん、車が来たから、あたしたち、おいとまするねー。また近いうちに寄らせてもらうからー」
 厨房の奥のさーこママさまにお声を掛けられるお姉さま。

「あ、今日はありがとねー。直子ちゃんもみなさんも、また気軽に立ち寄ってねー」
 おっしゃりながらさーこママさまが、濡れた手をタオルで拭き拭き、近づいてこられました。

「とくに直子ちゃん、あなたはまた、ここで裸になってね。今度は、そういうの好きそうなお客さん、たくさん呼んでおくから。もちろん女性だけ。あなたも大勢に視られたほうがもっと嬉しいんでしょ?」
 ご冗談なのか本気なのか、私の両手を取ってブンブン振られるさーこママさま。

「あ、はい・・・今日は、いろいろありがとうございます、ごちそうさまでした・・・」
 そんなふうにしかお答え出来ず、ブンブン振られる両手の振動でバスタオルが落ちてしまわないかハラハラな私。

「さ、それじゃあ行きましょう。ママさんもケンちゃんも、またねー」
 お姉さまがストゥールを下り、さーこママさまの手から私の右手を奪い取ります。

「気をつけてね、あ、それと直子ちゃんは、月曜日にお洋服、取りに来なさいね」
 カウンターの中で手を振りながら、お見送りしてくださるさーこママさま。

 そのときにはケンちゃんさまもお顔をこちらにお向けになり、私たちを見送って丁寧にお辞儀してくださいました。
 初めてちゃんと見たケンちゃんさまのお顔は、欧米のロックミュージシャンさんにいそうな、口髭をお鼻の下にへの字に蓄えた凛々しいハンサムさんでした。

「新宿へ、ということですので、車は通りの向こう側に停めてあります。恐れ入りますが横断歩道を渡ってそちらまで移動してください」
 白手袋がお似合いな至極丁寧な運転手さまの先導で、お店のドア前にひとかたまりになった私たち。

 とうとう私は、バスタオル一枚に首輪とスニーカーという破廉恥な格好で、終末の夜のお外に出ることになりました。
 と言っても、道路の反対側に停めてあるらしいタクシーまで、という短かい距離らしいので、幾分か気が楽になりました。

 ドアを開けるとモワッと全身に押しかかってくる真夏の熱帯夜の熱気と喧騒。
 終末の夜の10時過ぎ。
 高層ビルから近いこの場所は地下鉄の駅からもほど近く、遊び足りないのか家路を急ぐのか、昼間ほどでは無いにしろ頻繁に人影が行き来しています。

 そんな中を、両肩はおろか胸の谷間までモロ出しなバスタオル一枚だけからだに巻きつけた姿で、お姉さまに手を引かれ歩いて行く私。
 微風ながらも夜風がタオル地の裾をユラユラ揺らし、ワレメを風が直に撫ぜていくのを感じます。

 さっき感じた気楽さはどこへやら、通勤で見慣れた街角に身を置いた途端、罪悪感と被虐感がゾワッと背筋を駆け上がってきました。
 私、こんな格好で夜のお外に・・・紛うことなきヘンタイ女だ・・・

 夜目なので真っ白なチューブトップ超ミニドレスに見えないこともなさそうですが、すれ違うかたたちの怪訝そうな視線が素肌に突き刺さります。
 なるべくお姉さまの背中に隠れたいのに、並んで歩こうと歩調を合わされるイジワルなお姉さま。
 里美さまとしほりさまは、運転手さまのすぐ後ろを、並んでズンズン先へ行ってしまわれます。

 お店から10メートルくらい先にある横断歩道。
 すでに信号待ちでOLさんらしきおふたりと若めな男性サラリーマンさん。
 その後ろに5人、横並びで着きました。

 対面にも信号待ちの男性がおふたり。
 私たちが待っている場所にはちょうど外灯が照っているので、対面からは一際明るく見えていることでしょう。
 事実、男性のうちのおひとりがこちらを小さく指差して、お隣のかたに何か耳打ちされているのが見えました。

 ああん、視られてる・・・バッチリ注目されちゃっている・・・
 たとえこれがバスタオルだと気づかれなくても、胸の谷間の大半を露出させ、絶対領域ギリギリの超ミニでからだを見せびらかしている、露出狂のスケベ女だって思われちゃっている・・・
 
 そう考えることは、居ても立ってもいられないほど恥ずかしいことなのですが、一方で異常なほどの性的昂ぶりも感じていました。
 じんわり全身汗ばんでしまうのは、暑さのせいだけではありません。

 横断歩道を車が何台か通り過ぎ、やっと信号が変わりました。
 OLさんたちが歩き始め、私たちもつづきます。
 赤信号でストップした車のヘッドライトが、左右から私を照らし出します。
 お姉さまは何もおっしゃらず、黙って私の手を引いています。

 対面から歩いてくる男性たちが不躾に、私の胸元や脚の付け根付近をガン見してくるのがわかります。
 車の中からも、私たちの移動速度とシンクロして幾つもの視線が動いているはずです。

 男性たちと擦れ違う瞬間に、バスタオルがハラリと外れたら、どうなっちゃうのだろう・・・
 そうしたい衝動が突然湧き上がってしまうほど、私の理性は息も絶え絶えになっていました。

 結局、お車にたどり着くまでに、のべ十数人の男女が私の視界を横切っていきました。
 露骨にガン見してくる人、チラチラと盗み見てくる人、すれ違ってすぐ振り返る人。
 伏し目がちに周囲を窺っていた私でさえ、それくらいわかったのですから、実際にはもっと大勢の人に注目されていたと思います。

 横断歩道を渡り切って少しお店側に戻ったところに、左右側面のライトをチカチカさせて駐車している大きめで真っ黒でピカピカな乗用車。
 自動車に詳しくない私が見ても、なんだか高級そう、と思えるほど風格のある形の立派な乗用車でした。

 ドアのところに小さく金色のエンブレムが描かれているので、これもタクシー?
 あ、こういうのって、ハイヤーって呼ぶのでしたっけ?

 運転手さまがまず、後部座席を開けてくださり、しほりさま、私、里美さまの順に乗り込みました。
 助手席にお姉さま、最後に運転手さまが乗り込まれ、ブルルとエンジンがかかります。
 瞬く間にエアコンの冷気が車内に行き渡り、瞬く間に汗が引いて適温になりました。

 スーッと音も振動も無く、お車が走り始めます。
「それじゃあしほりさん、里美ちゃん、打ち合わせ通りやっちゃって」
 お姉さまがシートベルトをしながらおっしゃり、里美さまの右手がスルスルっと私のバスタオルに。

「あ、いやんっ!」
 完全に虚を突かれ、手遅れな抵抗空しくバサッとバスタオルを剥ぎ取られ、お車の後部座席でスッポンポン。
 あわてて右腕でおっぱいを庇い、シートに小さくうずくまります。

「ごめんなさいね、騒々しい上にはしたなくて」
 お姉さまが運転手さまに、嬉しそうにお詫びされています。

「大丈夫ですよ。わたくしそういうの、慣れていますから」
 朗らかにお答えになる運転手さま。
 それから運転手さまは首をちょっと左に向けて、後ろの私に語りかけるみたいに、こうおっしゃいました。

「安心してお嬢さん。この車の後部座席は窓三面にスモークフィルム貼ってあるから、外から中は覗けないの、とくに夜はね」
 ルームミラーに映った運転手さまの切れ長なおふたつの瞳が、私のからだをじっと見つめているのがわかります。

「ほら、運転手さんもそうおっしゃっているじゃない?直子、着替えをするから手をどけなさい」
 お姉さまのご命令口調。
 もちろん逆らえない私は、胸を庇う腕を外し、ピンと尖りきった両乳首を空気中に晒しました。

 お車は信号待ちで停車しています。
 大きめの交差点で、すぐ脇の歩道を夜10時過ぎにしては多めの老若男女が行き来されています。

「まあ、お綺麗なバストだこと。隠さなくても大丈夫ですよ。舗道の人たちからは、窓に顔をくっつけて覗き込みでもしない限り見えないですから」
 ご丁寧におっしゃってくださる運転手さまの口調に、そこはかとないイタズラっぽいニュアンス。
 少し間を置いて突然、後部座席左右の黒い窓がスーッと下がっていきました。

「あとはこんなふうに、こちらから窓を開けたりしませんとね」
 今度はあきらかなからかい口調でおっしゃった運転手さま。

 あっ、と思ったときには遅すぎました。
 両手で胸を庇おうと思ったときには、左右からしほりさまと里美さまにしっかり両手を押さえられていました。

 お車はまだ停車しています。
 開け放たれた窓からお外の熱気とざわめきがなだれ込んできています。

 私に出来ることと言えば、せめて顔だけは隠そうと、ただうなだれるだけ。
 近くでワッハッハと弾けたような笑い声が聞こえました。
 でも、お外を行き交う人たちに剥き出しのおっぱいが視られちゃっているのかどうか、確かめる勇気なんて私にあるわけがありません。

 やがて再びお車は音も無く滑り出し、同時に窓もスーッと上がってきて、車内に静寂が戻りました。

「運転手さんも、なかなかイタズラ好きなのね?」
 ご愉快そうなお姉さまのお声。
「ええ、ワタナベさまもご存知のように、あのかたたちで慣れておりますので」
 謎なことをおっしゃる運転手さま。

「あ、それとわたくし、本宮と申しますので、そうお申しつけください」
 運転手さまであるところの本宮さまがルームミラー越しに、私にも目礼をくださいました。


三人のミストレス 15


2017年12月10日

三人のミストレス 13

 数秒間の奇妙な静寂の後、ヒソヒソ小声で内緒話をされているようなさざ波が広がり、最後にドッと弾けたような笑いが起きました。
 そのあいだずっと私は目隠しのまま放ったらかしで、どんどん不安になってきていたとき、唐突にペシッとお尻を軽く叩かれ、すぐにお姉さまのお声がつづきました。

「マゾ子?ちょっとテーブルに両手を突いて、上半身を持ち上げてくれる?」
「あ、はい・・・」

 そのときの私は、テーブル上のタオルに顔面から突っ伏すように、両腕は使わず左頬だけで上半身を支えてお尻だけを高く突き上げた、スパンキングおねだりポーズ、のままでした。
 ご指示に従い両手をタオルに突き、両腕を伸ばして両肩を持ち上げます。

 タオル地に押し付けられて潰されひしゃげていた左右のおっぱいが、空間が出来たために形を取り戻し、重力に引かれて乳首もろとも垂れ下がるのがわかります。
 両腕を完全に伸ばすと、両手両膝を支えとして背中が肩からお尻に向けて緩やかに下がっていく、正しくマゾペットらしい四つ足な四つん這い姿勢となりました。

「それじゃあ、はい、これ。これでマゾ子の、これみよがしにおっ勃ってる卑猥な乳首を挟んでやってください。はい、あなたも・・・」
「えーっ、こんなので挟んじゃっていいの?痛くないの?」
「それは痛いでしょうけれど、この子はそれが大好物なんですよ」

 お姉さまがお話されているのは、新たに見物人に加われたお店の常連OLさまたちでしょう。
 そして、お渡しになったものは?・・・

「ちょっと失礼しまーっす」
 お声と共に、四つん這い状態の垂れ下がったおっぱいを下から持ち上げられる感覚。

「やだーっ、やらかーいっ」
「んふぅぅ・・・」
 少し汗ばんだ手のひらが、感触を確かめるみたいにムニムニ動いています。

「やだっ、おっぱいはぷにぷにやわらかいのに、乳首だけすっごく硬い、それにでかいー」
 そのかたの手のひらの真ん中あたりで、私の勃起乳首が折れ曲がって擦れています。
「んんーっ・・・」

「これ、本当に挟んじゃっていいの?」
「別の手で乳首の根元、乳輪のほうまでつまんじゃって、クリップの先っちょを肌に押し付けるように、グイッと挟むといいですよ」

 お姉さまの的確なご助言。
 確かに挟まれる皮膚の量が分厚いほうが激痛にならず、少しくらい暴れても外れにくくなります。

「こう?かな・・・」
 ひんやりした何かが左乳首をまたいだ形で乳房の皮膚に押し付けられ、すぐに乳首の根元付近の側面を二方向から押し潰してきました。

「うわー、つまんだら根元までコリコリに硬いー。まさに勃起チクビ。本当に気持ちいいんだね、この子、こういうことされるのが」
 少し軽蔑のニュアンスも感じられる女性の弾んだお声。

「んんーーーっ!」
 手の感触が離れた途端、予想していた以上のキツイ締め付けが左乳首に残りました。

 これは、さっきみたいな木製洗濯バサミではなく、おそらくステンレスのワイヤーを折り曲げて作られたスティール製洗濯バサミ。
 挟む部分が皮膚に接する面積が少なく、その形状上バネも木製に比べて強力なので、私も被虐が強いときにしか使わない拷問具でした。

「それで、この紐をクイクイ引っ張って虐めてあげて」
 お姉さまのお声で、乳首が左側へグイッと引っ張られました。

「あぁぁん、いやぁぁーんっ」
 乳首に引っ張れて垂れ下がった左おっぱい全体が、その釣鐘型を強引に左側へと歪められているのがわかります。

「うわーっ、わたしもわたしもー」
 違うお声が聞こえて右おっぱいも持ち上げられた、と思ったら、当然のように、噛み付き、そして引っ張り。
「んんーっ、だめぇぇ・・・」

 今、私のふたつのおっぱいは、普通では考えられないくらい胸の真ん中から右と左に泣き別れしているはずです。
 乳首の根元にしっかり噛み付いたスチール製洗濯バサミは、引っ張ったくらいでは外れることも無く、おっぱいの脂肪塊がたゆんたゆんと震えています。

「最後のここは、あなたね。ここはヌルヌルしていてばっちいから、あたしがやってあげる」
 お姉さまのお声が、私の下半身のほうへと移動されています。

 やっぱりそこにも付けられちゃうんだ・・・ラビアなのか、それとも・・・でも、最後のここ、っておっしゃったから、やっぱりクリット・・・クリットをあんなにキツイ洗濯バサミで挟まれたら・・・おそらくその一瞬でスグ、イってしまいそう・・・
 そんなことを考えていると、おマメに何か筒状のものが、押し付けるようにかぶされる感覚。

 これは・・・
 どうやらスチール製洗濯バサミに噛み付かれる激痛は免れたようですが、ある意味、もっと絶望的な器具を取り付けられるようです。

 俗に、クリキャップ、と呼ばれる、クリトリスにかぶせて肉芽を吸引する陵辱お道具。
 普通のクリキャップは、全体がゴム製のスポイト式で空気の吸引によってクリットにくっつくのですが、スポイト部分が小さいので吸引が弱く密閉率も低いので、ちょっと引っ張るとすぐに外れてしまいます。

 でも、たぶん今付けられたのは、里美さまのネットショップで販売している海外製。
 透明なプラスティックの細いチューブ状になっていて、ピストン式で密閉されたクリットの周りの空気を、注射器にお薬を吸い込むときと同じ原理で吸引するタイプ。
 強く吸引されると筒の先がクリットの根元に食い込み、ちょっとやそっとではまず外れなくなるのです。

 このお道具をショップで扱うことになったとき私は、当然のようにモニターとして、勤務中装着したまま小一時間、通常業務に励むよう命じられました。
 極小紐ビキニの前を露骨に膨らませた私は、その格好でコピーを取ったりパソコンを叩いたり。

 最初のうちは私のおマメと筒の周囲に僅かな隙間があったのですが、吸引によっておマメがどんどん腫れてきてキツキツ状態に。
 装着しているあいだずっと、クリットがジンジンしっ放し、
 ムラムラモヤモヤして、ぜんぜんお仕事に身が入りませんでした。

 使い心地のモニターですからときどきリンコさまに、どんな状態になっているか紐ビキニをずり下げて、お見せしなければなりません。
 20分もすると、透明チューブの中でピンク色のおマメが、今まで見たことないくらい大きくパンパンに腫れ上がり、チューブを指で少し弾かれただけで、あうっ!、と心地良い電流が全身を駆け巡りました。

「今まで見た中で一番おっきく腫れ上がってるじゃん。まさに、クリトリス開発、って感じね。直子のクリ、これ以上感じやすくなっちゃったら、日常生活で普通に着衣でいても、パンツのクロッチが乾くとき、なくなっちゃうんじゃない?」
 イジワルくからかってくるリンコさま。

 結局、30分ほどで外されたのですが、外した後もおマメは腫れっ放し、ウズウズズキズキしっ放しで収まりがつかず、リンコさまに懇願しオナニーの許可を得て弄り倒し、数回イッてからでないと業務に戻れないほどでした。

 そんな悪魔の器具が私のクリットに取り付けられました。
 もちろんこれにも紐が括り付けてあるようで、どなたかの手がその紐をもてあそばれているよう。

「んーっ、いやぁーーっ!・・・」
 クリットを根本から、ちぎれんばかりに引っ張られ、切羽詰まった喘ぎ声がほとばしり出てしまいます。

「これで準備完了。雅ちゃん、やっちゃって」
 悪の組織の親玉みたくニヤニヤ笑い混じりなお姉さまのお芝居声。
「了解」

 雅さまのお返事と共に、私のマゾマンコに何か硬くて太いものがズブリと侵入してきました。
「あうぅぅっ!」
 喘ぎながらも、今挿入されたものは何だろう?と考えます。

 凄く硬くて、先っちょのところだけに段差があって、あとはまっすぐスベスベで、長さもけっこうありそうで・・・
 普通のディルドやオモチャの類ではないみたい。
 考えていたらお尻の穴にも、同じような質感のものがヌプっと挿し込まれました。

「んんーっ!」
 挿入された二本のものは、別に前後に動くでもなく振動するでもなく、私の粘膜内に収まっています。

「ほら、気持ち良くなりたかったら自分で気持ちいいところに当たるように、腰を動かして迎え入れなきゃだめでしょ?」
お姉さまが、私のお尻をパチンと叩いてアドバイス。
「は、はいぃぃ」

 お姉さまのお言葉に従い、突き出したお尻を自分で前後に動かし始めます。
 そのもののスベスベした質感が濡れそぼった膣壁をスムースに滑り、窮屈そうながらどこまでも奥まで侵入してきます。
 どうやらそのものを持たれているかたは、ご自分でそのものを動かすご意思は無く、その場に固定するように持たれているようです。

「ああー、いいぃぃーっ!かたいぃっ!」
 肛門に挿入されたものも私の腰の動きに合わせて腸壁を深く浅く滑っています。
 もちろんそのあいだ、ふたつの乳首とクリットに結ばれた紐で、腫れ上がった3つの肉芽は翻弄されっ放し。
 どきどきカツンコツンと陶器がぶつかり合うような音がして、その振動がマゾマンコとアヌスに響いてきます。

「ああんっ、いいっ、いいっ、いいーっ!」
 どんどん高まってきて腰を動かすスピードを上げると、カツンコツンの頻度も上がりました。
 尻たぶは左右から、素手なのか棒なのかで、バチバチ連打されています。

 テーブルに踏ん張っていた両腕はとっくに崩れ、顔面がタオルに埋まっていました。
 その分お尻だけ高く突きあがり、結局、マゾのお仕置きおねだりポーズ。
 それでも噛み付いて離れない洗濯バサミが引っ張られるたびに、弾けそうな乳首がタオル地にガサゴソ擦れています。

「あぁぁっ、いいですぅ、いぃぃですぅ、イッちゃいますぅ、え、絵理奈さまぁ、みなさまぁ、イ、イッても、イカせていただいてぇ、よろしぃ、よろしぃでしょーかー!!」
 切羽詰まった昂ぶりに、なりふり構っていられない本能からの哀願。

「あら、ずいぶん早いギブアップだこと。わかった、あんまり気持ちいいから、早くイッちゃって、すぐもう一回、ってことね?」
 すっかり暴君振りが板についたサディスト絵理奈さまの軽蔑しきったお声が、私の顔のところで聞こえました。

「いいわよ、イキなさい。ほら、自分の浅ましい臭いを胸の奥深くまで吸い込んで、自分の恥ずかし過ぎる性癖を思い知りながらイキなさいっ!」
 お言葉と共に何か臭ってきました。

 鼻先にくっつけられたゴム?らしき感触。
 その嗅ぎ覚えある、ツンと鼻につく動物じみた臭いで、すべてを理解しました。

「クサいでしょ?さっきまであんたのケツの穴を穿っていた、わたしのゴムグローブの指先の臭いよ」
「いやぁーーーっ!!」
「白いグローブの先っちょが、薄っすら黄ばんじゃってるわ。それにいかにも牝犬らしい下品で淫靡な臭い。紛れもなく淫乱なあんたの下品なからだの中の臭いなのよ?」
「ああーっ、だめぇーっ、赦してくださいぃ、嗅がさないでぇぇーっ!!」

 本当にイヤなのに、本当に恥ずかし過ぎて死ぬほどなのに、なぜだかクンクン鼻を鳴らして嗅いでしまう私。
「いや、だの、だめ、だの言うわりに、腰の動きは止まらないのね?ほら、イキなさいっ!」

「あーーーっ、ぬぅんんーーーーーっ!!!」
 イキなさいっ、というお言葉と同時に私の左右の鼻の穴に、私が汚したゴム手袋の指先をそれぞれ突っ込まれます。
 なんとも言えない、生理的には拒否反応を示すのに、どこか懐かしいような動物的と言うか有機肥料的な臭いが、鼻の穴から頭全体に充満します。

 その臭いと、乳首とクリットを引っ張れる痛み、お尻を叩かれる熱さ、ふたつの穴で抽送をくりかえす突起がくださる快感・・・
 すべてが混然一体化し、凄まじい快感がからだの奥底からこみ上げてきました。

「んっ、だめ、いやっ、もーーっ、こわれちゃうっ!こわれちゃうぅーーーっ!!!」
 自分で叫んだ言葉の通り、壊れたみたいに腰を振りつつ、全身が巨大な快感の渦に呑み込まれていきます。
 めくるめく絶頂感の中で、スーッと意識が遠のいていきました。

 ・・・目覚めって、いつも、ここはどこ?状態・・・

「あ、気がついた?よかった・・・」
 お声がフェードインで聞こえてきて、ゆっくり目を開けると、里美さまのお顔が真上に見えました。

「あ・・・里美、さま・・・あの、えっと、ここは・・・」
「こんなふうに直子を介抱するの、これで2回めね」
 イタズラっぽく笑われる里美さま。

 私は里美さまのひざ枕で、仰向けに寝そべっていました。
 素肌の上にバスタオルを一枚掛けられ、お部屋の片隅のベンチシートの上で。

「気絶しちゃったのよ。みんなで寄って集って責められて、壊れちゃうーって絶叫した後」
 里美さまのお言葉で、自分がどこにいるのか、気絶するまで何をされていたのか、全部思い出しました。

「直子が気持ち良さそうに気を失っちゃって寝息をたて始めたから、それでパーティはお開き。チーフが直子をお姫さま抱っこでここまで運んで、わたしが濡れタオルで寝ているあなたのからだ拭いて」
「あ、ありがとうございます・・・お手をわずらわせてしまって、ごめんなさい・・・」
 ゆっくりからだを起こしてみると、確かに全身の汗やよだれがキレイに拭い去られているみたい。

「いいのよ。性的な興奮で失神しちゃうのって、情報過多で脳が壊れちゃいそうになったときに自律神経がとる本能的な防衛反応だって言うじゃない?それほどまでのオーガズムだった、っていうことなのだから」
 里美さまのお言葉で、さっき味わっためくるめく快感がまざまざとよみがえりました。
 同時に乳首とクリットに残るヒリヒリする疼痛も。

「連続で中イキっぱ、だったみたいよね。ワインボトルに直子の愛液プラス潮がなみなみと溜まっていたわよ?」
「ワイン・・・ボトル?」
「そっか、直子は目隠しされていたから知らないんだ。あなた、女性器と肛門に空のワインボトルを突っ込まれて、それを自分で腰振って出し挿れしていたの」

 ときどき聞こえたコツンコツンという音は、その二本のボトルがぶつかっちゃった音だったんだ・・・
 硬くてスベスベしていたのも、根本のほうがどんどん太くなっているような感じだったのも、膣内に空気と液体を送り込まれているような気がしたのも、すべて合点がいきました。

「あ、それと最後は、お鼻の穴まで絵理奈さんの指で犯されていたんだっけ」
 ご愉快そうに付け加えられる里美さま。

 思わず自分のその姿を想像してしまいます。
 四つん這いのお尻に二本のワインボトルを突き立てられ、鼻の穴には自分のアヌスの臭いが染み込んだゴム手袋を突っ込まれ、乳首とクリットをリズミカルに引っ張られつつお尻を叩かれて喘いでいる自分の姿を。
 
 その姿、絶対ミサさまが撮影されているでしょうから、後で私も見せられることになるでしょう・・・
 あまりの恥ずかしさに、全身がカーッと熱くなってきます。

「あ、肌に赤みが差してきたわね。チーフのブランデーが効いたかな?」
「ブランデー?」
「わたしがあなたのからだを拭き終わった後、チーフがあなたにブランデーを一口、飲ませたの。気付け薬代わりに、口移しで」

 口の中に残るほのかな甘味は、それだったのか。
 お姉さまが口移しで飲ませてくださったとお聞きして、嬉しさと気恥ずかしさにますます火照ってしまう私。

「あ、それで、えっと、他のみなさまは?」
 照れ隠しで話題を変えようと里美さまから目を逸らし、お部屋内を見渡しました。

 お料理のお皿やグラスもすっかり片付けられ、何事も無かったかのように整然と並ぶ椅子とテーブル。
 私の体液が盛大に汚したであろう床やテーブルもすっかり綺麗に拭き清められ、至って普通なレストランの一室。
 ついさっきまで繰り広げられていた乱痴気騒ぎがまるで幻だったかのよう。

「だから直子が気絶して、パーティもお開きになったの。撤収時間も迫っていたしね。チーフは階下で待っていてくれているわよ」
「直子は、みんながここをすっかり後片付けして、三々五々散っていくあいだ、気持ち良さそうに寝ていたの。そうね、時間にして10分弱ってところかしら」

 なぜだか嬉しそうにおっしゃった里美さまがお言葉をつづけます。
「わたしたちもそろそろ行きましょう。立てる?」

「あ、はい・・・」
 両足を床に下ろし、ゆっくりと立ち上がります。
 立ちくらむかな、と思ったけれど大丈夫でした。

「肌の血色もすっかり元に戻ったようだし、大丈夫そうね。じゃあ下に行きましょう。愛しのお姉さまがお待ちかねよ」
「あ、はい、って、あのえっと、私のお洋服は・・・」
 里美さまに背中を軽く押され、胸の前でバスタオルをギュッと握りしめながらうろたえる私。

「あのとんでもないローライズジーンズなら、直子が愛液でベトベトにしちゃって、ママさんにクリーニングを頼んだじゃない。ついでにワサビで汚れたチューブトップも」
 少しイジワルっぽく笑われる里美さま。

「あの袖だけボレロもチーフが回収しちゃったから、直子が身に着けていい私物は、あの靴だけね」
 里美さまが指さされた方向を見ると、階下へと下りる階段の手前に、お姉さまとおそろいな私のスニーカーが置かれています。

「靴だけ履いて、さすがに全裸はマズイから、からだにはそのバスタオルだけ巻いて階下に連れてきて、っていうのが、あなたのお姉さまからのご依頼よ。これから二次会で、どこかに連れて行ってくださるみたい」
「えっ?それでしたら私、裸にバスタオル巻いただけの姿で、お外に出ることになるのでしょうか?」
「当然そうなるわね」
 愉しそうに微笑まれる里美さま。

 いくら夜とは言え、素肌にバスタオル一枚で真夏の週末の繁華街に出るなんて・・・
 おまけにタオルもスニーカーも真っ白で夜目に目立つし、首にも別の意味で目立っちゃう赤い首輪しているし。
 お姉さまとご一緒なのは嬉しいし心強いけれど、それにしたって・・・

 心のなかでグズグズ愚痴りながらも、お姉さまからのご命令、私に許された唯一の着衣を素肌にしっかり巻きつけます。
 でも、このバスタオルの、幅がまた微妙でした。

 おっぱいをすっぽり隠そうとすると丈が足らず、恥丘まで丸出しに。
 なので、スジがどうにか隠せるくらいまでずり落とすと今度は上が乳首ギリギリ、胸の谷間はモロ出し状態。
 社会通念的にはワレメ丸出しのほうがマズイので、後者を採用しました。

 右腋の下でタオル地を折り返し、しっかり留めたつもりですが、かなり頼りない。
 ちょっと引っ張られたらハラリと解けてスッポンポン、ていう感じ。

 こうなると、いくら破廉恥な仕様と言えど、来るときに着てきたローライズシーンズやチュニックが恋しくなります。
 このバスタオルよりもチューブトップのチュニックのほうが数倍、安心感がありました。
 あの短か過ぎるボレロだって、今着せていただけたなら、見せびらかすみたいに露出しているおっぱいの谷間くらいは隠すことが出来たでしょうに・・・

「さあ、もう10時過ぎちゃったわよ?早く下に行きましょう」
 里美さまに促され、階段の手前でスニーカーを履きました。
 上半身ほとんど裸同然なのに、外出のために靴を履くという行為、それ自体がヘンタイ過ぎます。

 階段をおずおずと下りながら、タオル地に擦れる乳首と肉の芽が性懲りも無く勃ち上がってくるのを感じていました。


三人のミストレス 14


2017年7月23日

三人のミストレス 12

 膣口深く潜り込ませた右手の人差指と中指で、捏ねるように膣壁を撫ぜ回します。
 上に伸ばした親指の腹で腫れたクリトリスを弾くように擦ります。
 左手全体で左おっぱいを鷲づかみ、人差し指と中指のあいだに逃した勃起乳首を、挟んでギュウギュウ潰します。

「はっ、はぁん、あっ、あーんっ・・・」
 先ほどの麻縄コブ渡りで、あれだけ激しく何度もイッたのに、いえ、イッたからこそ、敏感になり過ぎたはしたない急所への単純な愛撫だけで、みるみる高まってしまいます。
 目隠しをしてくださったことで余計な視覚的刺激を受けない分、行為に集中出来るので尚更です。
「あっ、だめっ、いやっ、もうだめっ・・・」

「あれ、もうイッちゃうんじゃない?」
「ほんとだ、まさにイキ癖がついちゃった、って感じだね」
「やだ、この子、小指伸ばしてお尻の穴までまさぐってる」
 私の痴態をつぶさに実況してくださるみなさま。

「あっ、んっ、あぁ・・・お姉さ、あっ、いえ、え、絵理奈さま、イッてもいいですかぁ?あふぅぅ・・・」
 コブ縄渡りのときのお姉さまのお言葉を思い出し、見えない絵理奈さまにオーガズムの許可を乞います。

「時間が無いみたいだから、さっさとイクのは構わないけれど、なんかあんたの、その口の利き方が気に入らないわね」
 私の左側のほうから、絵理奈さまの冷たいお声が聞こえてきました。

「イッてもいいですかぁ?じゃないわよ。いいですか、なんて何タメ口利いてんの?あんたは、こんなところで真っ裸になってヨガってるヘンタイセイドレイでしょ?わたしたちはあんたを飼っているご主人様、身分が違うの。もっと丁寧に哀願しなさいよ」
 お尻に一発来るか、と怯えて数秒待ちましたが、来ませんでした。

「ああんっ、はいぃ、ごめんなさい・・・え、絵理奈さま、みなさま、このままイッてもよろしいですかぁ?・・・」
 
 時が経つにつれパワーアップしている絵理奈さまのイジワル度。
 お言葉遣いもぞんざいになり、本気で私を軽蔑、嘲笑なさっているご様子に、憐れなマゾ性をゾクゾクッと滾らせつつ、自分を慰める両手は止めずに懇願する私。

「やっぱりヘンタイドスケベマゾ牝だけあって、教養無いわね。よろしいですか、って、何上から目線になっているの?お願いするんなら、よろしいでしょうか、でしょ?」

「あっ、あっ、はひぃ、ご、ごめんなさいぃ・・・絵理奈さまぁ、そしてみなさま、直子の、直子のグチョグチョ淫乱マゾマンコ、い、イカせて、あんっ、イカせていただいて、よ、よろしいでしょうかぁっ・・・」
 自分から口に出す品の無い淫語で益々荒ぶる昂ぶりは、そろそろ限界に達しようとしていました。

「よろしいわよ。さっさと自分の指でイッちゃいなさい、性欲過多のマゾ牝が、ペッ!」
 絵理奈さまの吐き捨てるようなお言葉。
 下腹部に何かが当たったような感触も微かにしましたから、実際に絵理奈さまからツバを吐きかけられたのかもしれません。

「あーーーっ、いいっ、いいっ、イキますぅ、いきますぅ、いいぃぃぃ---っ!!!」
 どっちにせよ、私はブリッジするみたいに下腹部を盛大に跳ね上げながら、悦び勇んで至福のオーガズムに達しました。

「早いわね、もうイッちゃった」
「始めてからまだ2分も経ってないよ。それに今日だけでイクの何度目?」
「下半身がブルブル震えているのに右手はまだマンコに貼り付いたままじゃん。休む気なんてサラサラ無いんだね」

 みなさまの呆れたお声が聞こえてきますが、弄りつづけることで絶頂の余韻はすぐにVの字に回復し、私はまた性懲りもなく高まり始めていました。

「さあ、一度イッたみたいだから残り時間は、みんなで好きに直子のからだをいたぶってあげて」
 お姉さまの幾分投げやり気味なお声が、私の背中のほうから聞こえました。

「この子、不特定多数からの陵辱願望も持っていて、衆人環視下のエロい人体実験みたいな妄想でもオナっているらしいから、みんなが普段、パートナーとは出来ないような、ハードな責めを試してみるといいわ」

「痛みも屈辱も、何でもオーガズムに昇華しちゃう子だから、面白いわよ。目隠しで誰が何をしたかもわからないしね」
「直じゃ汚いと思う人は、使い捨てのゴム手も用意してきたから」
 お姉さまのお声が消えた、と思ったら、口の中奥深くまで、生温かい何かを突っ込まれました。

「ぐえっ!」
 思わずえずいて、ヘンな声が出てしまいます。
 同時に口腔に侵入してきた異物が何なのか確かめようと、舌をフル回転して異物を舐め回します。
 指?・・・長い?・・・しなやか?・・・三本?・・・

 直感的にお姉さまの右手、と理解しました。
 香り、舌触り、味。
 今まで何度も味わってきましたから、間違えるはずありません。
 わかった瞬間、夢中でしゃぶり始めます。

 私のえずきが合図だったかのように、私のからだをいくつもの手が這い回り始めました。
 おっぱいとマゾマンコに取り憑いていた私の両手は乱暴に払い除けられ、代わりに無数とも思える手や指先が、無防備な全裸の私を陵辱し始めます。

 仰向けな私の右膝と左膝が同時に掴まれ、それぞれ左右に大きく押し広げられました。
 間を置かずに陰唇に複数の指がかかり、これまたそれぞれ左右に、内腿側へと思い切り引っ張られます。
「んぐぅぅ・・・」
 お姉さまの右手を頬張った喉の奥から、だらしない悲鳴がほとばしり出てしまいます。

「ほら、ママも松井ちゃんも、遠慮しないで」
 雅さまの弾んだお声が聞こえました。

 裂けちゃいそうなくらい左右に引っ張られて引き攣る粘膜に侵入してくる指。
 2本?3本?えっ!?5本?6本?
 おのおのが勝手に脈絡なく、モゾモゾと膣壁を引っ掻き回してきます。

 そのあいだ中、乳首もそれぞれ思い切り引っ張られ、ひねられ、潰され。
 クリトリスはずっと、粘土を捏ねるように指先でもてあそばれています。
 
 脇腹を撫でる指、下腹をさする掌、乳房の脂肪をつねる爪・・・
 視界を塞がれたまま素手だったりゴムの感触だったりな人肌に全身をゾワゾワもてあそばれる感覚は、得体の知れない爬虫類と昆虫が群がるプールに放り込まれたみたい。

「んぐぅ、ぬぐぅ、んんぅぅ、おごぅ、あごうぅ・・・」
 アルコールのせいもあるのでしょうけれど、どなたの愛撫も乱暴で荒々しい感じ。
 痛い、くすぐったい、気持ちいい、じれったい、の感覚が入り乱れ、私の全身で同時多発しています。
 粘膜とクリットに対する蹂躙はとくに執拗で、グングン高みに昇っていく私。

「ああぁーっ、いいですぅ、ありがとうございますぅ、もっと、もっとぉーっ!」
 不意に大きく嬌声が洩れてしまったのは、不意に口中の手が抜かれたからです。
 お姉さまの手で声が出せないのをいいことに、私は心の奥底から湧き上がる欲望を、正直に言葉にして喉を震わせていたのでした。

 自分のよだれまみれなはずのヌルヌルな手が、私の顔面を乱暴にまさぐってきます。
「はぅぅ、あっ、いいっ、いいーっ!」
 鼻の穴や耳の穴をグリグリ嬲られ、首を軽く締められます。
「んぬぐぅ・・・」

「すごい、乳首がこーんなに伸びーる」
「ほら、ラビアだってこーんなに」
「直子のマンコって外面は地味だけど、中のビラビラはだらしなくびろーんてよく伸びるよね」
「クリットも小指の先っちょ以上にパンパンに膨れさせちゃって、本当に気持ち良さそう」

 嘲笑混じりの黄色い歓声をあげて、私の恥ずかしい器官を容赦なくねぶり、なぶり、いたぶってくださるみなさま。

「あぅぅっ、え、絵理奈さま、み、みなさまぁ、イ、イッてもよろしいでしょうかあ、どうぞ、どうかイカせてくださいませーっ!」
 どんどん白くなってくる頭と心の桃源郷に一瞬でも早く埋没したくて、本能から湧き出たお願いが悲鳴に近い叫びになってしまいました。

「何、でっかい声でお下劣な願望口走ってるの?ほんと、サカリ切った牝犬マゾは仕方ないわね」
 絵理奈さまらしき冷ややかなお声が聞こえたと思ったら、肛門にズブリと何かが突き挿さりました。

「さっきと同じに、ただマンコとクリットでイクんじゃつまらないでしょう?ほら、こんなふうにグリグリしてあげるから、今度はケツの穴だけでイってみなさい」
 そのお声から一テンポ遅れて、私の他の部分をねぶっていた指や手が一斉に引きました。

 物理的な快感刺激を得られるのは唯一その部分、つまり肛門に挿し込まれた、おそらく絵理奈さまの、ゴム手袋を着けた2本の指だけ。
 仰向け立て膝で横たわっている私は、その唯一の刺激をより奥まで迎え入れるために、お尻をそちらに突き出すように浮かせました。
 
 上がった両膝を大きく開いたままそれぞれ両腕で抱え込むと、先ほどやらされたハッピーベイビーのポーズ。
 いえ、これは正しく、まんぐり返しと呼ぶべきでしょう。

 その姿勢で自ら腰を前後に動かし始めます。
 突き刺さった指が深く浅く腸壁を擦り、肛門筋の戸惑いがそのまま快感へと収束していきます。
 爆発寸前な昂ぶりには、その淫靡な抽送だけで充分過ぎます。

「うわ、直子、また自分で腰振りだしたよー」
「指が根本まで、ズッポリ入ってない?」
「動きに合わせてマンコのラビアまで、魚の口みたいにパクパクしてる」
「本当にお尻の穴だけでもイケちゃうんだ?信じられない」
 みなさまの引き気味なご感想も、被虐のよいスパイスです。

「んーーっ、いいぃですぅ、お尻気持ちいぃっ・・・アヌスいいっ、アナルいいっ、イキますぅ、イっちゃいますぅ、イッってもよろしいでしょうかぁぁぁ・・・」
「ほら、イッちゃいなっ!ケツの穴に指2本も突っ込まれてほじられながら、ドヘンタイらしくイクがいいわ、ほれ、大サービスでオマケも付けてあげるっ!」
 バチーンッ!
 穴に指を突っ込まれたまま、左の尻たぶを思いっきりひっぱたかれました。

「あうーっ、いいっ、いいっ、もっとっ、もっとぉーっ!」
バチン、バチン、バチン。
「いいっ、いいっ、イクぅ、イグぅ、ぃぐぅぅぅーっ!!!!」

 お尻をビンタされるたびに目の前で火花がスパーク、やがて意識がトンで真っ白に・・・
 あんまり良すぎて。激しい身悶えにからだがよじれ、気がつけばいつの間にか突っ伏して、四つん這い気味なうつ伏せとなっていました。

「直子ってば、今度は自分から四つん這いになっちゃったよ」
「もっとお尻を叩いて欲しくて仕方ないんじゃない?絵理奈ちゃんにひっぱたかれているとき、本当に気持ち良さそうだったもの」
「マゾの牝犬だからね。首輪もしてるし、やっぱりワンワンスタイルが落ち着くんだよ」

 みなさまの嘲り声に従うように、半端なうつ伏せ状態から両膝を立ててお尻を持ち上げ、高くグイッと突き出します。
 もちろん両膝は大きく開いてマゾマンコも肛門も、みなさまによーくご覧いただけるようにして。

「やだっ、お尻突き出しておねだりしてくる」
「まーだ満足していないんだ?まったく直子の性欲はサキュバス並に底無しだよね。本当に一晩中でもイキつづけるんじゃない?」

 アヌスの指も抜かれ、今はどなたも私のからだを触ってくださっていません。
 なのに性的欲求解消の渇望が全身を駆け巡り、もう居ても立ってもいられない状態。
 仕方ないので自分でまさぐろうと、右手をマゾマンコに伸ばしかけたときでした。

「ちょっとママさん、そこで何やってんですかあ?」
 すぐそばで訝しげな、聞き慣れないお声がしました。

「あらー、みつかっちゃった。ちょっとした余興なの。このかたたちのパーティの、お開き前のメインイベントをわたしもちょっと見学させてもらっているのよ」
 さーこママさまの、微塵も悪びれていない明るいお声。

「うちら、そろそろ帰ろうと思って、トイレ済ませて階段下りようとしたら、こっちがずいぶんと賑やかだからさあ」
「なんじゃろな、と思ってちょこっと覗いたら、四つん這いの裸のお尻が見えて、大勢で取り囲んでるからギョッとしちった」

 それぞれお声が違っているので、闖入者は女性おふたり?
 少し呂律が怪しくなっているので、すでにけっこう酔っ払われているみたいです。

「で、この人、何なんです?こんなところで、こんなけしからん格好して」
「わかった!王様ゲームの罰ゲーム!じゃなかったら集団セクハライジメ!」

 酔いのせいでしょうけれど妙にテンションのお高いおふたりは、お声はそうでもないけれど、はしゃぎっぷりがお若いっぽい?
 そんなことはともかく私は、まったく見知らぬ偶々お店に居られた女性おふたりにも、二穴全開の秘部を至近距離でさらけ出している状況になっていました。
 薄れかけていた羞恥が俄然息を吹き返し、マゾマンコを熱く潤ませます。

「そういうんじゃなくて、単刀直入に言うと、この子はマゾで露出狂なんですよ。この子は、こういうことをやらされるのが大好きなんです」
 雅さまのフレンドリーな営業トークっぽいお声が聞こえてきました。

「うわ、マゾって、痛いのや苦しいのが好きなドMってやつでしょ?最近の若い男に多いらしいわよ。近頃ヘンタイ増えたよねー」
「女の露出狂なんて本当にいるの?AVなんかの印象だと、ろくでもない男に無理矢理やらされているイメージだよねー」
 
 雅さまの身も蓋も無いご説明に、おふたりの元も子もないご感想。
 薄く苦笑いを浮かべられた雅さまが目に浮かびます。
 それでもめげないトーク上手な雅さま。

「それで、ワタシたちはみんな同じ会社の同僚なんですけれど、先月だったかな、この子が大きな仕事をモノにしたんです。社長賞クラスの」
「で、ご褒美に何でも好きなことやっていい、ってことになってこの子が、オフィス以外の、いつ誰が来るかわからない場所で晒し者になって辱められたい、って言い出して」
「で、さーこママさんに無理言って今日、ここを貸していただいいてのパーティなんです。だから、セクハライジメ、とかではぜんぜんないんです」

 ついさっきまで、お仕置き、だったはずなのに、雅さまのご説明では、ご褒美、になっちゃいました。
 まあ、マゾな私にとって、性的なお仕置きは、イコールご褒美でもあるのは事実ですが。

「あ、よく見るとこの人、犬の首輪みたいのしてるー」
「えー、信じられなーい。本当にこの人、イヤがってないのー?」
 面白がってまぜ返すような、どちらかのかたのお声にお応えされたのは絵理奈さま。
「本当よ。今、証拠を見せてあげるわ」
 おっしゃるなりいきなりバッチーンと、右の尻たぶに平手打ちをいただきました。

「ひぃーっ!」
「マゾ子は、これが欲しかったんでしょ?」
 まったく見ず知らずの方々に、私の本名を出すのは不味いと思われたのでしょう、マゾ子呼びしてくださる絵理奈さまのお心遣いにキュンとしちゃいます。

「はいぃ、ありがとうございますぅ、もっとぉ、もっとくださいぃぃ・・・」
 雰囲気を壊さないように、私もマゾ性全開で喘ぎます。
「まったくしょうがない牝犬ね・・・」

 バチンバチンとたてつづけに強烈な掌スパンキングをいただき、その甘美な痛みに闖入者さまの存在も忘れそう。
「あうっ!、あうっ!、あうーっ!!」

「うわー、みるみるお尻が真っ赤っ赤ー」
「お尻の穴がヒクヒクしちゃってるー」
「マンコがこれだけヌラヌラに濡れてるんだから、確かに悦んでるみたいだねー」
「下でたまに聞こえていた手拍手の音って、ひょっとしてこのSMの音だったんじゃない?」

 若干引き気味ながら、心底驚かれているようなおふたりのお声。
 私はと言えば、知らない女性たちに、おねだりスパンキングを目撃され、つい数分前の陵辱で爛れ切ったマゾマンコと肛門を凝視され・・・
 次から次へと蠱惑的な恥辱シチュエーションに見舞われて、もう私の小さな脳味噌では処理しきれません。

「それにしても見事にあられもない格好だこと。あ、ビデオ撮っている人までいるしー」
「オフィス以外、っていうことは、いつもはオフィスでこの人、こんなことされているんだ?ひょっとして全裸勤務?なんだか楽しそうな会社だねー」
「つまり、この真っ裸な彼女はヘンタイで、他の人たちが仕事のご褒美で遊んであげてる、ってわけなのね」
 
 おふたりとも雅さまのご説明と絵理奈さまの実演で、すっかりご納得されちゃったみたい。
 それにミサさまってば相変わらず、ずっとビデオで私の痴態を撮影されているんだ・・・

「もうお店も閉店間近だから、最後にこの子を盛大にイカせてあげましょう、っていうところで、あなたがたがいらっしゃったんですよ」
 お姉さまのお仕事のときっぽい、クールなお声が聞こえました。

「もう下にはあなたたちしかお客さんいないんでしょ?時間があるならあなたたちも見物させていただくといいわ。こんなの滅多に見れないし、すごく刺激的よ?」
 気さくにおふたりをお誘いになる、さーこママさま。

「えっ、いいの?どうせこの後はカラオケでも行こうかと思ってたから、時間はぜんぜん大丈夫」
「おっけー、うち、下行ってミユちんも呼んでくる!」

 お声の後にドタバタと駆け出す足音がつづきました。
 そう言えばさーこママさまが、階下には常連の下ネタも大好きなOLさん3人組しかいらっしゃらない、って、さっきおっしゃっていたっけ。

「よかったわね直子。直子の浅ましく恥ずかしい姿、視てくださるギャラリーさんが増えたわよ。どう見ても、あたしたちよりか五つ六つ歳上に見えるお姉さまがた」
 他のかたには聞こえないように、コショコショっと耳打ちしてくださった私のお姉さま。

「さ、もう本当に時間がないから、ちゃっちゃとマゾ子をヨガらせて、新たに見物されるゲストのみなさんにも愉しんで帰ってもらいましょう」
 お姉さまの呼びかけでパチパチと起こる拍手。
 どさくさに紛れて私の突き出したお尻を叩いているかたもいらっしゃいます。

「ママさん?ちょっと押しちゃったから9時40分お開きでいい?終わり次第、大急ぎで撤収するから」
「うん、だから時間は全然気にしなくっていいって。階下はもう閉店の札掛けちゃって、ケンちゃんがもう明日の仕込み、始めているはずだから」
 お姉さまのご相談に軽やかなお声でお答えくださる、大らかなさーこママさま。

「あと約10分弱っていうところだけど、あと2回はイカせたいわね。ゲストさんたちが揃ったらすぐ、始めましょう」
 お姉さまのお言葉にかぶせるように、雅さまの弾んだお声が聞こえてきました。

「折角四つん這いなんだからさ、今度はこれ、突っ込んでみる、っていうのはどうかな?」

 おおーっ、と、どよめくお声。
 面白そう、やろうやろう、という賛同のお声の他に、太すぎない?、マン汁が溜まっちゃいそう、などなど、不穏なお声も聞こえてきます。

「そっちより、こっちのシャルドネのほうがいいんじゃない?なで肩だから、より奥まで入りそうだし」
 冷静なお声は綾音さま。

「確かに。じゃあこっちはアヌス担当にしようか」
「わたしはこれでお尻をひっぱたくわ」
「四つん這いだと、おっぱい虐めが難しそう」
「洗濯バサミを引っ張れるように、糸を付けておきましょうか?」

 みなさまがガヤガヤ盛り上がっているところに、ワイワイドタバタと近づいてくるお声と足音。
「はーい、お待たせしましたー。オーディエンス、追加でーす」

「あっ!?」

 複数の足音が私のすぐそばまで来て止まり、それに合わせるようにガヤガヤワイワイもピタリと鎮まって、束の間、シーンとその場が静まり返りました。


三人のミストレス 13


2017年7月16日

三人のミストレス 11

 中腰になったところで、ほのかさまがツカツカと近づいてこられ、後ろ手錠を鍵で外してくださいました。

「あ、ありがとうございます」
 鍵入りロールパンは、雅さまがお持ちになったので、雅さまからほのかさまへと鍵が渡ったのでしょう。

 久しぶりに自由になった両手が、思わず股間にいってしまいます。
 長時間。食い込みロープに虐められたラビアが、まだジンジン熱を持って疼いていました。

「ううん。チーフに、外してやって、って頼まれたの。早くお洋服、脱いじゃったほうがいいわよ」
 ほのかさまに促され、まず中途半端に脱ぎかけのジーンズを、モゾモゾと足元までずり落としました。
 裾が引っかかるのでスニーカーも一緒に脱いで裸足に。

「ジーンズ、色が変わっちゃうほど濡れそぼってベトベトじゃない?これ、早めに水洗いして落としておかないと、乾いたらガビガビになっちゃうんじゃない?臭いも残りそうだし」
 ほのかさまにそんなおつもりは無いのでしょうが、やってしまった当人にとっては、自分の下半身の貪欲過ぎるだらしなさを揶揄されたような、恥ずかし過ぎるご指摘でした。

「わたしがおトイレの水道で、軽く水洗いしておいてあげる。ほら、そのチュニックも、ワサビの緑色が飛び散っちゃってる」
 私が脱ぎ捨てたジーンズを、乾いた部分を探して指先でつまみ上げながらおっしゃったほのかさま。
「あ、はい・・・」
 言われるままにお腹で丸まっていたチュニックも、足元までずり下げました。

「ボレロは、大丈夫そうね。それはハンガーに掛けて、あそこの壁に吊るしておくね。その下にお靴も一緒に置いておくから」
 キビキビとご指示されるほのかさまのおかげで私は、あっと言う間に赤い首輪ひとつだけの丸裸になっていました。

「ありがとうございます、ほのかさま・・・」
 私のジーンズとチュニックをひとまとめにして片手で持ち、おトイレへと向かわれる、あくまでもおやさしいほのかさまのお背中に深々とお辞儀をして、ふと気がつきました。
 今、あの上下を水洗いしてしまったら、このお店から帰るとき私、何を着ればいいのだろう・・・

「ほら、もたもたしてないで、テーブルに上がりなさい」
 途方に暮れていたところを、お姉さまにピシャリとお尻をはたかれました。
「あ、はいぃ」

 ワイングラス片手のお姉さまに手を引かれ、階段寄りのダイニングテーブルまで連れて行かれました。
 六人掛けくらいの長方形のテーブル三分の二くらいが、白っぽいタオルで覆われています。
 真っ白な部分と薄っすらピンクっぽい部分とがあるので、バスタオルを2枚使ったようです。

 テーブルの周りを半円形に囲むように椅子が並べられ、まさにステージと観客席の趣。
 ほのかさま以外のみなさまが、すでにテーブル周りにたむろしていらっしゃいました。

「はい、上がって上がって。時間があんまり無いんだから」
 お姉さまにペチペチお尻を叩かれ、テーブルの縁まできました。
 テーブルの高さは私の恥丘スレスレくらい。

「お店のお客様がお食事される、本来清らかであるべきテーブルなのだから、タオルの無いところに直子の淫らな生尻乗せて滑らすのはダメよ」
 つまり、タオルの敷かれたところに大きく脚を開いて乗れ、というお姉さまのご指示でしょう。
 右足と左手をタオルのあるテーブルの縁に乗せて、エイッとからだを引き上げている様子を、ミサさまにローアングルから撮影されました。

「はーい、お待たせー」
 私がタオルの上で立ち上がったとき、さーこママさまと松井さまが、幾分ドタバタ気味に階段を上ってこられました。
「あらー、ステージまで用意しちゃって、本格的ねー」
 私が全裸にされたことにも気づかれたようで、まじまじと私を見上げるさーこママさまと松井さま。

「ごめんなさいママさん。勝手にヘンタイ娘を大事なテーブルに上げちゃって。でも一応タオル敷きましたんで」
 雅さまがイタズラッ子のような笑顔で、さーこママさまに事後承諾を乞います。

「あらあら気い遣ってくれちゃって。タオルなんてしなくてよかったのに。うちはちゃんと朝夕毎日、テーブルも椅子もエタノール消毒している清潔第一の優良店なんだから」
 あくまでも大らかなさーこママさま。

「松井ちゃん、早くみなさんにデザートを配ってしまいましょう。じゃないとショーが始まらないわ」
 松井さまと連れ立ってお料理エレベーターに駆け寄り、銀盆にデザートグラスを並べ始めました。

 壇上の私は、みなさまの視線の高さ的に、しゃがんだらはしたないな、と思い、まだ後ろ手錠されているみたいにお尻のところで両手を組み、立ち尽くしていました。
 みなさまがニヤニヤ笑いで全裸の私を見上げる中、松井さまがみなさまにデザートをお配りし始めました。

「お酒の締めにスイーツって、無性に欲しくなるときあるよね」
「アルコールの後に糖分って、ちゃんと理に適っているらしいよ。分解のために肝臓が欲しがっているんだって」
「アタシ、ピスタチオジェラート、大好物なんだ」
 キャイキャイと歓声をあげられるみなさま。

「お言葉に甘えて、おトイレの奥の個室のほうに、干させていただきました。ご指示通りに使用不可のプレート掛けて」
 ほのかさまがおトイレから戻ってこられました。

「うん。下も今、常連さんの女性客しかいないから、干しっぱなしで何の問題も無いわよ。後でちゃんと回収しといてあげるから、週明けにお仕事のついでにでも取りに来ればいいわ」
 さーこママさまのご親切なお言葉で、私が今夜、このお店を出るときに着用出来るお洋服は無い、ということが確定しちゃったみたい。

「いただきまーす」
 デザートグラスが配られた順に、口々におっしゃっては舌鼓を打ち始めるみなさま。
 一口頬張った瞬間、どなたもシアワセそうな笑顔を浮かべられています。

「彼女の分は、どうする?」
 ひとつ余ったデザートグラスを手に、雅さまにお尋ねになるさーこママさま。

「はいはーい。アタシが食べさせてあげるー」
 ご自分のジェラートを早くも半分くらいまでお召し上がりになっていたリンコさまが、ジェラートスプーンを舐め舐めされながら元気良くお手をお挙げになりました。

「またー。そんなこと言って、直子のデザート横取りしようっていう魂胆なんじゃないの?」
 しほりさまが、まぜかえすようにおっしゃいました。

「ちがうもん。アタシとミサミサは、直子の裸なんか毎日オフィスでいろいろさせて、見飽きるくらい知り尽くしているからさ。それこそオマンコ周辺の色素の具合から、アヌスのシワの数まで」
 リンコさまがハイテンションで、私の恥ずかし過ぎる日常を暴露されます。

「えーっ?あたしだってそこまでまだ把握していないわよ?リンコたち、あたしがいないときもちゃんと仕事しているんでしょうね?」
 お姉さまのご冗談めかしたお叱り声。

「チーフがいなくても、アタシたちには早乙女部長様っていう、怖ーいお目付け役さんがいらっしゃいますからねー」
 同じようにご冗談めかしたお芝居声で返されるリンコさま。

「だから、普段ちゃんと視れないみんなに、ドヘンタイ露出狂でドマゾが本性なニンフォマニアック直子のド淫乱オナをじっくり視れもらおうと思って、裏方に回ることにしらのっ!」
 リンコさまってば、えっちな形容詞がスラスラ出てくる割には呂律が怪しくて、けっこう酔っ払われているみたい。
 さーこママさまがニコニコ笑いながら、リンコさまに私のであろうデザートグラスもお渡しになられました。

「なるほどね。それじゃあまず、美味しいデザートを堪能しつつ、直子のイッたばっかりのマゾマンコを、それこそアヌスのシワの数までじっくり観察してみましょうか」
 何が、なるほど、なのかわからない、お姉さまのイジワルなご提案。

「あっ、はいはーい。それならわたし、おあつらえ向きなポーズ、知っているわ」
 ご自分もちゃっかり、デザートグラスにスプーンを滑らせておられたさーこママさまが、ノリノリでお手をお挙げになりました。
 もちろん松井さまも、デザートに舌鼓を打ちながら私をじっと見上げています。

「わたし最近、近所のヨガ教室に通っているのね。それで、2回目だったかのレッスンで衝撃的なポーズにさせられたのよ」
 さーこママさまが私を見上げながらつづけます。

「ウェアを着ていても恥ずかし過ぎて、みんなで笑っちゃうようなポーズだったの。オールヌードでやったらヘンタイそのものよね、ってレッスン終わった後、みんなで言っていたくらい」
 私のほうへと近づいてこられた、さーこママさま。

「足先をこちらに向けて、仰向けに寝そべってくれる?」
 長方形のテーブルの、みなさまが客席にしているほうに両足を向けるようにご指示されました。

「あっ、はい・・・」
 テーブルの真ん中らへんにお尻をつき、お言いつけ通り仰向けになります。

「そしたらね、両脚を上に持ち上げてから、両膝をお腹のほうに引き寄せて」
 ご指示に従い両足を宙空に上げると、嫌な予感が急速に膨らみます。
 両膝をピタッと揃えたまま、仰向けでエア体育座りをしているような、写真で見たことのある胎児みたいな形に丸まる私。

 この体勢でもみなさまに性器のスジとアヌスが丸見えなので、けっこう恥ずかしい。
 みなさまのお顔が、その部分にグッと近づいてきていました。

「足の裏は天井に向けてね、そう。それで、両手を外側から伸ばしてその足の裏をそれぞれ掴んで、外側に開くの。膝がおのおの床に着くくらいグイッと」
 絶望的なご指示・・・
 開くまいと必死に閉じていた両腿の付け根を、自ら抉じ開けろ、ということです。

「んんっ!」
 羞恥と屈辱、合わせて恥辱にさいなまれつつ、足の裏を掴んだ両腕に力を込めます。
 閉ざされていた裂けめが割れていくのを感じながら、被虐の炎が潤んだ部分を熱してきます。
 最終的には、両腿が180度に開いた状態で、私のマゾマンコもお尻の穴も、ポッカリ口を空けてみなさまの目前に晒されました。

「うわーっ。これは凄いやっ!」
「ヨガにこんなポーズ、あるんだ。それにしても何の為?って感じのポーズ」
「でもほらヨガって、カーマスートラとか、えっち方面にも展開しているから」
「まさに生殖器と肛門が、御開帳、って感じだね」

 俗に言う、まんぐり返し、の途中のようなポーズを自らキープしている私に向けて、身を乗り出してその部分を覗き込みながらの、みなさまのご感想。

「ヨガ的にはアーナンダバラーサナっていう立派な名前が付いているんだけど、一般的には、ハッピーベイビー、のポーズって呼ばれているんだって」
 さーこママさまが私を見下ろしながら、解説してくださいます。

「生後半年くらいの赤ちゃんが、ごきげんなときによくこういうポーズをするところから、名付けられたそうよ。太もも痩せやヒップアップ、あとリラックス効果もあるって先生がおっしゃっていたわ。恥も外聞も捨てて自分を解放する、みたいな?」

「それにしても直子ちゃん、ポーズを取るまでの所作も完成後も、すごくキレイに決まっているわね。股関節が見事に開ききって、まるで講師の先生みたい」
 その股関節の部分をしげしげと見つめながらの、さーこママさまからのお褒めのお言葉。

「この子は、ちっちゃい頃からバレエやってましたからね。Y字バランスも180度開脚もラクショーなんですよ」
 ちょっぴりご自慢そうなお姉さまのご様子に、私もなんだか嬉しくなります。

「ここまであけっぴろげに見せられちゃうと、却ってこっちが恥ずかしくなってきちゃわない?共感性羞恥、とかいうんだっけ」
「ナオちゃんはツルツルのパイパンだからさ、尚更生々しいよね。まさに剥き出しとか赤裸々っていう表現がピッタリな感じ」
「さすがにさっきあれだけイッた後だから、クリちゃんは大人しくなって・・・って言ってるそばから膨らみ始めちゃってる・・・」
 
 ジェラートをスプーンで舐め舐めしつつ、私のマゾマンコ観察のご感想をあけすけに投げつけてくるみなさまのお言葉責めに、私のマゾ性も敏感過ぎる反応を示しちゃっています。

「考えてみれば他人のマンコなんて、強いて言えば恋人の以外、こんなふうにじっくり見る機会なんて無いのが普通よね」
「アタシちっちゃいとき、お医者さんでマンコ見られるより、お尻の穴を診られるほうが恥ずかしかったな」
「ああ、わかる。肛門なんてお医者さんか夜の営み以外には、見たり視られたりしないものだもんね、普通・・・」

「でも直子は、みんなが視ているこんなところで大股開きで、肛門のシワをヒクヒクさせちゃってるんだよねえ。あ、おツユが一筋、溢れ出た」
 ご愉快そうなみなさまの笑い声に、ますます被虐が募ってキュンキュン咽び泣いてしまう私のふたつの穴。

「ハッピーベイビーっていうくらいなんだからさ、そんなせつなそうな顔じゃなくて、もっとニコニコ笑うべきなんじゃない?」
 リンコさまがおっしゃりながら、私の顔のほうに近づいてこられました、

「ほら、おいしージェラート、食べさせてあげるから」
 銀色のスプーンで掬い取った、ちょっとだけ緑色がかったベージュ色のクリームを、私の口に近づけてきました。

 唇の裏側が冷たいと感じた途端、口腔に広がる芳醇な甘さとナッツ類特有の香ばしい風味。
 美味しいっ!
 火照ったからだに染み渡るようなひんやりした甘み。
 二匙、三匙とたてつづけに味わせていただき、恥ずかし過ぎる我が身を一瞬忘れて、うっとりシアワセ気分になりました。

「そうそう、やわらかくていい表情になった。まさにハッピーベイビーって感じよ。もっと舐めたい?」
 はい、とうなずいた私にニッと笑顔を返されたリンコさま、ジェラートの乗ったグラスはテーブルに置いて、スプーンだけを持って私の下半身のほうへと移動されました。

「ちょっと味変してみようか。特製シロップをトッピングして」
「はうっ!」
 開ききった陰唇に冷たい金属質のものが触れたと思ったら、ズブリと淫穴に挿し込まれました。

「ああん、そんなぁ」
 しばらくグリグリと粘膜が嬲られ、スポッと抜けました。

「たっぷり採れた、っと」
 まっすぐ持ったスプーンを揺らさないよう慎重な足取りで戻られたリンコさま。
 スプーンの中身を私のジェラートグラスに垂らしてから、あらためてその部分をジェラートごと掬い取りました。

「はい、あーん」
 ベージュ色のクリームの上に少し白濁気味のトロリとしたシロップが乗っていました。
 躊躇なく開けた私の口に挿し込まれるスプーン。
「んんーっ・・・」

「どう?自分から溢れ出たいやらしいマン汁をトッピングした、ピスタチオジェラート直子の愛液スペシャルのお味は?」
「あぁんっ、美味しいですぅ」

 本当でした。
 芳醇な甘さの中にほんのりしょっぱさと酸っぱさが加わり、冷たさと生温かさが醸し出す、なんとも言えない官能的なお味。

「へー、そうなんだ?」
 リンコさまがおっしゃるなり、同じスプーンで一掬いされ、ペロリとお口に入れられます。
「本当だ!甘さに適度な酸味の刺激が加わって、木の実の味が引き立つような気がする」

「へー、ワタシもやってみよう!」
 雅さまが口火を切られ、次々に金属スプーンが私のマゾマンコに捩じ込まれました。
「あっ、あんっ!、いやっ、ああんっ、だめぇっ、ひぃっ、もっとっ・・・」
 関係の無いクリトリスまでスプーンで虐めるかたもいて、私はハッピーベイビーのポーズをキープするのに必死。

「うん、確かに甘みに奥行きが出た感じ」
「悪くないわ。ひょっとしてさっきのワサビがいい隠し味になってるのかしら」
「直子のマン汁だけだと、さすがにちょっと生臭いんだけどね」
「今度アイスクリーム買ったら、自分のでも試してみようかな」

 みなさまが私の愛液を喜々として味わってくださっているのを見るのは、恥ずかしさ四割、嬉しさ六割で、マゾペット冥利に尽きる光景でした。

「おーけー。直子もいい感じで悶え始めたし、ここからオナニーショーに移りましょう」
 お姉さまは空になったデザートグラスを、再びワイングラスに持ち替えられていました。
「直子、もうヨガのポーズは解いていいわよ。オナニーしやすい姿勢になりなさい。普段しているみたいに」

 急にそうおっしゃられても・・・
 とりあえず両腕を下ろし、寝そべっていた上体を起こします。
 すると期せずしてM字開脚のポーズになっていました。

「オモチャは無しで、自分の指だけで、普段やっているみたいにしてイクのよ?」
 寝そべっているあいだに乱れた私の髪を、お姉さまがおやさしく直してくださいました。

「もうあと10数分しかないから、大急ぎで思う存分イッちゃいなさい。あ、声は塞いだほうがいいですよね?」
 お言葉の最後の部分は、さーこママさまに向けられていました。

「気にしなくていいわ、今、下には常連の下ネタも大好きなOLさん3人組とケンちゃんしかいないから」
 さーこママさまがデザートグラスを片付けながらお答えされます。
「それにわたし、直子ちゃんの声、気に入っちゃった。ずいぶん可愛らしく乱れるじゃない。もっといっぱい聞かせて欲しいわ」

「わかりました。じゃあ直子、始めていいわよ。まず自分の指だけで一回イッたら、その後はギャラリーの参加フリーということで」
 お姉さまが私の背後に回られ、私の右肩をポンと叩きました。

「はいっ」
 おずおずと右手を股間に伸ばし始めます。
 左手は左おっぱいへ。
 そのとき視界が真っ暗になりました。

「あっ!」
「気が散って集中出来ないと可哀想だから、目隠し。自分だけの世界で思う存分イキまくるといいわ」

 お姉さまが隠し持たれていたアイマスクか何かをされたようです。
 今は両手も自由ですから嫌なら外す事も出来るのですが、もちろん私がそんなことをするはずありません。

「あんまり感じ過ぎて、暴れてテーブルから落っこっちゃったりしないでね?」
 耳元にこそばゆい吐息と共に吹き込まれました。
 その艶っぽいお声にもはや辛抱たまらなくなり、右手の人差指と中指を勢い良くマゾマンコにズブリ。
「あふぅんっ!」

「それでは、弊社オフィスで飼育しているヘンタイマゾペット、森下直子の目隠しオナニーショーを、みなさまお時間までじっくりお愉しみくださーいっ!」
 お姉さまの愉しそうにお道化たお芝居声が、高らかにお部屋に響き渡りました。


三人のミストレス 12


2017年7月9日

三人のミストレス 10

 ここまで窓辺に近づくとロープの張りつめ具合も、半端なキツさではなくなっていました。
 
 窓のクレセント鍵に括り付けられたロープの端は、私のおへそくらいの高さですから、ロープ端と私の股間とのあいだにかなりの高低差が出来ているためです。
 ここまで来るとバレエのポワントの要領で爪先立ちしたとしても、股への食い込みを回避することは一切出来ませんでした。

 淫唇を引き裂いちゃいそうな勢いでめり込んでくる角度のついた麻縄が常に、腫れ上がった肉芽を圧迫している状態。
 歩を進めるたびに、情け容赦なく乱暴にマゾマンコ全体を擦り上げられていました。

「あんなに窓に近づいちゃったら、見事に外からも丸見えね、直子ちゃんのハダカ」
 背後からさーこママさまのお声がしました。
「あ、やっぱお店的にマズかったですか?カーテン引きましょうか?」
 ちょっと焦ったような雅さまのお声がつづきました。

「いいわよそのままで。だって直子ちゃんは、たくさんの人に視てもらいたい人なのでしょう?自分の恥ずかしい姿を」
「そういうタイプの子は、誰かに視られちゃうかもしれない、っていう状況なほど感じちゃう、って聞いたわよ」
 あっけらかんと朗らかなさーこママさまのお声。

「このへんは、お店少ない住宅街の入口だから夜はそんなに人通りは無いけれど、家路を急ぐ人がふと、灯りの点いた窓を見上げちゃう、なんてことはあるかもね」
「すぐ前の通りの信号待ちの人とか、向こうの公園の喫煙所でタバコ吸っている人とか、気づいた人はラッキーよね。まさにラッキースケベ」

「もし視た人が何か言ってきたら、うちの店、たまにインテリアでマネキン人形飾っているから、マネキンの着替え作業でも見間違えたのではないですか?って誤魔化しとくわ」
 背後におられるのでご表情は拝見出来ませんが、さーこママさまの人懐っこい笑顔が想像出来る大らかな口調でした。

 ここからゴールのロールパンまでのあいだに、ロープのコブは五つ。
 そのうち三つがライトグリーンのお帽子をかぶっています。

 カーテンレールに吊るされたロールパンに口が届きそうな窓辺寸前のコブは、ご丁寧に二重結びでもしたのか、今までよりとくに大きく出っ張っていて、更に今まで以上にたっぷりとワサビが盛り付けてありました。
 その大きなコブのすぐ手前にも、ワサビのお帽子をかぶった普通の大きさのコブ。
 
 大きなコブと普通のコブとの間隔は、まるで私の膣口とお尻の穴の距離を測ったみたい。
 あそこまで行ったら大小のコブが、過去最大の張力で私の恥ずかしいふたつの穴にめり込んでくることでしょう。

「あのパンにかぶりつくことがお仕置きのゴールなんでしょ?でもさ、彼女、ベロ出しっ放し状態だから、かぶりつけなくない?」
 さーこママさまが、さっきから私も気になっていた疑問を、率直に問題提起してくださいました。

「そう言われてみれば、それもそうね」
 雅さまが、今気づいたみたいに、目から鱗的なお声を出されました。

「だけど舌を自由にしちゃうと、あんなに大きなコブだし、直子がお店中に響き渡るようないやらし大声をあげちゃいそうで、ちょっと怖いわね」
 お姉さまが、お言葉の内容とは裏腹の面白がっているようなお声でおっしゃいます。

「あら、それは気にされる必要ないんじゃないですか?さっき、社長さんもおっしゃったじゃないですか、あられもない声あげて見物人が増えても自己責任だ、って」
 絵里奈さまが、嘲るような冷たいお声で、私の顔を覗き込みながら吐き捨てました。
 もちろん、お尻への鞭もセットで。

「それもそうね。じゃあ仕方ない、取ってあげよっか・・・」
 お姉さまがソファーから腰を浮かせかけたのを、手のひらを向けて制されたのは、ほのかさま。
「チーフはそのまま座っていてください。わたしが代わって取って差し上げます」

 雅さまの傍らを離れたほのかさまが、スタスタと私の目前にいらっしゃいました。
「あともう少しだから、がんばってね、直子」
 ニコッと微笑まれ、白い指を伸ばして私の舌の洗濯バサミを外してくださいました。
 舌全体に血流が戻るジンジンする疼痛。

「・・・ありあろうほらいやすぅ・・・」
 やっと口中に戻った痺れる舌をうまく使えず、覚束ない呂律でお礼を言う私。
 そんな私の口許に濡れおしぼりを押し付け、顎まで溢れ出たよだれを拭ってくださる、おやさしいほのかさま。

 おしぼりが私の口許から離れると、しばし無言で見つめ合うふたり。
「ありがとう・・・」
 やっと正常に戻った舌で、もう一度きちんとお礼を言おうとしたとき、ほのかさまの瞳に妖しい光が揺れているのに気づきました。

「うふふ」
 私を見つめながら小さく妖艶に微笑んだほのかさまが、左手を私の右おっぱいに伸ばしてきます。
 そのまま下乳の皮膚をつねるみたいにつまみ上げると、今度は右手が。
 ほのかさまの右手の指先には、さっきまで私の舌に噛み付いていた洗濯バサミ。

「あうっ!」
 右おっぱいの下乳に洗濯バサミがぶら下がり、つづけて左おっぱいにも。
「あつぅ!」
 皮膚を浅めに噛み付かれたらしく、針で刺されたような鋭い痛みがしつこく消えません。

「直子のえっちなバストに洗濯バサミ、初めて挟んじゃった」
 小走りに雅さまの傍らに戻られ、嬉しそうにご報告されるほのかさま。

「やりたくなる気持ち、わかるよ。ナオちゃんほどおっぱいに洗濯バサミが似合う女の子って、いないもんね」
 よくやった、とでもいうふうに頭を撫ぜながら、最愛のパートナーを甘やかされる雅さま。

「さあ、これでパンにもかぶりつけるようになったし、さっさとクライマックスを見せてもらいましょうか」
 お姉さまがお仕事のときみたく鶴の一声でその場を引き締め、アイコンタクトで絵理奈さまを促します。

「ほら、さっさとあの最後のコブを、あなたの淫乱マゾマンコで咥え込みなさい」
 絵理奈さまのお言葉に、みなさまの視線が私の股間と窓辺の最後の大きなコブとのあいだを、あらためて行ったり来たりし始めます。
 パシッ、とお尻に鞭をいただき、ヒーッ、と大きく息を飲み込む声が出ちゃう私。

 そうでした。
 もう自由自在に声が出せちゃうんだった。
 絶対がまんしなくちゃ、と唇を真一文字に結び直しました。

 一歩踏み出すと、再開後最初のコブ。
 このコブにはワサビは乗っていません。

「んっ!」
 それでも陰裂を通過するとき、膣口を抉じ開けるようにコブが蹂躙してきて、思わず淫ら声が出てしまいます。

 次はワサビ付き。
 まずクリトリスにベッタリ貼り付き、それから潤んだ粘膜になすり付けられます。

「んあぁっ」
 ピリピリな刺激を感じ取る時間も短かくなっていて、すぐにマゾマンコ全体がジンワリ熱くなってきました。
 更にここでは、腰振りダンスを10回しなくてはなりません。

「んっ、んぁ、んーっ、あ、あっ、あっ、はぁっーっ・・・」
 どんなに一所懸命口をつむごうと思っても、だらしなく半開きになってしまう唇。
 喉の奥から淫らな嬌声がほとばしり出てしまいます。
 だって、そのくらい気持ちいいんです。

 粘膜が柔らかいのをいいことに、ねぶるように暴れまわるコブのゴツゴツ。
 肉芽、膣口、肛門まで、ワサビまみれの愛液を行き渡らせながら陵辱してくる麻縄の凹凸。
 またもや頭の中が真っ白になりかけたとき、無情な鞭でストップをかけられました。

「あなた今、本気でイこうとしていたでしょ?」
 バラ鞭でお尻を乱打しながらの、絵理奈さまの蔑んだお声。

「あぁんっ、ごめんなさいぃ・・・」
 口では謝りつつも、腰振りダンスを止められておあずけを食らい、刺激に飢えているマゾマンコですから、お尻に感じる痛い鞭の打擲さえ、気持ち良くてたまりません。
 もっと、もっととおねだり出来ない分、浅ましくお尻を突き出してしまいます。

「ほら、もうあと三歩くらいでパンに口が届くんだからさ。パンを咥えたら、好きなだけ腰振って、イッていいから」
 呆れ果てたような絵理奈さまの嘲り声。
「は、はいぃ」
 私も早くイキたい一心で、左足を大きく踏み出しました。

「あうぅっ」
 コブが無いロープ部分でも、皮膚を引き絞る勢いで両脚の付け根に食い込んできます。
 私のおへその高さから、私のからだ全体を股間で持ち上げようとするみたいに、ピンと張りつめた麻縄。
 すぐ目前にワサビをたっぷり乗せた大小のコブ。
 そこから視線を上げると、間近に迫る大きなガラス窓。

 ガラスには等身大の自分がハッキリ映っていました。
 赤い首輪、洗濯バサミを左右ともにふたつぶら下げたおっぱい、股の割れ始めにクッキリと深い溝が出来るほどマゾマンコに食い込んだロープ。
 そんなみじめでヘンタイな自分の姿は半透明。
 その向こう側に、お外の様子もしっかり見えていました。

 お店前の道路をヘッドライトを灯した自動車がまばらに、右へ左へ走り過ぎていきます。
 視界左側に見える横断歩道の信号は赤で、通りの向こうで三人ほど信号が変わるのを待っています。
 こちら側の舗道にもちらほらと歩行者。
 近くに見える大小いくつかのビルにも、あちこちの窓に光が灯っています。

 今、私のこの浅ましい姿、お外から丸見えなんだ・・・
 そんな今更な現実を、あらためて思い知ります。
 あの信号待ちの人がふとこの窓を見上げたら、向かいのビルの窓が開いて何気なくこちらを見たら・・・
 たったそれだけのことで、自分のヘンタイ性癖がいともたやすく見知らぬ人に知られてしまうのです。

 狼狽と恥辱と被虐と愉悦が入り混じった得体の知れない衝動が、心の奥底から湧き上がっていました。
 お願いだから誰も見ないで・・・ううん、もっと見て、たくさん見て・・・

 今すぐここから逃げ出したいのに、一方では、窓をドンドン叩いてお外の人たちの注目を惹いてみたいような、アンビバレントな衝動。
 結果的にそれは、どうにでもなれ、という刹那的な感情へと収束し、つづけざまに二歩大きく踏み出す、という行動となって顕れました。

「んあーーっ!いぃぃぃーっ!!」
 ワサビまみれの大きなコブは、跨いだ途端に膣口にズッポリ嵌り込み、どんなに腰を振っても抜けなくなりました。
 強烈なワサビのビリビリ刺激が、粘膜から腰全体へ灼けつくように広がります。
 肛門にもワサビがべっとり張り付いているのが、ヒリヒリ加減でわかります。

「あふぅ、あうふぅーっ、んーっ、ぅふぅーっ・・・」
 声を出すまいと歯を食いしばるほど、代わって淫らな鼻息が洩れ出てしまいます。
 そのあいだ中も、意志とは関係無く腰が前後に激しく動きつづけ、みるみるグングン高まっていきます。

「ほら、いつまでもヨガっていないで、パンを咥えなさい。咥えないうちはイッたら駄目って言ったでしょ?」
 絵理奈さまの鞭に、あぅっ と喘いで、目の前に夜景が広がりました。
 あまりの気持ち良さに、いつのまにかギュッと目を瞑ってしまっていたようです。
 目前すぐそこ、ちょうど目の高さのところにロールパンがぶら下がっていました。

「咥えたらパンごと引っ張って糸を引きちぎりなさい。糸が切れたらお仕置き終了。好きなだけイッていいわよ」
 絵理奈さまのお言葉が全部終わらないうちに、顎を思い切り上に突き出して、ロールパンにむしゃぶりついていました。
 
 歯応えを感じると同時に、イヤイヤをするように思い切り顔を左右に振ります。
 つられて洗濯バサミごと、おっぱいもブルンブルン。

 残念。
 パンの切れ端だけが食いちぎれ、糸は繋がったまま。
 モグモグ、ゴクン。
 パンの切れ端を飲み込んで再チャレンジ。

 大きく口を開けてパンの真ん中くらいにかぶりつくと、パン生地の中で歯に何か硬いものが当たる感触。
 そこを噛み締めたままもう一度首を振ると、いとも簡単にプツンと糸が切れました。
 もちろん、そのあいだも腰は絶えず前後に振りっ放し。

「おおおっ!」
 と、ざわめくみなさま。
 いつの間にか雅さまやリンコさまたちが、私の至近距離、窓辺までやってきていました。

「あー、あそこに見えてるのが、部室の前にある公園の木陰なのね」
「週末だからか、それなりに人通りもあるじゃない」
「今までで何人、気がついたかな?」
 窓からお外も見つつ、無責任に盛り上がるギャラリーのみなさま。

「無事ミッションクリアだから、直子はイッていいんだよね?」
「外の人たちに、これからこの子、オマンコにロープ擦り付けながらイキますよー、って教えてあげたいわね」
「ジーンズに溜まった愛液が、ほんのりワサビ色に染まっちゃってる。あれだけの量だもの、無理ないかー」
「本当。白濁液に黄緑色が混ざって、一見クリームソーダみたい」

「それにしても、これだけからかわれてもずっと腰は振りっ放しなんだ。ほんとドスケベヘンタイマゾ女子なんだね、ナオちゃんは」

 雅さまのおっしゃる通りでした。
 みなさまが周りに集まってきても、目前のお外の様子が目に入っても、私の腰はまるで別の生き物みたいに、激しく前後に動きつづけていました。
 マゾマンコに潜り込んだ大コブがくださる陵辱が、気持ち良すぎて止められないのです。

 昂ぶりはそろそろ頂点を迎えようとしていました。
 もうすぐ・・・もうすぐ・・・ああ、もうだめ・・・

「んっんんんーんんんっ?」
 ロールパンを咥えたままの不自由な口で、イントネーションだけでお許しを乞いました。

「ヘンタイちゃんが何か言ってるよ」
 雅さまの可笑しそうなお声。
「何言ってるかわからないよ。もう一度言ってみ」
 リンコさまが笑いながらお尻をピシャっと叩きます。

「んっんん、んーんんんっ?!」
「えー?語尾が上がってるから、何か聞いているんだよね?んっんん、んーんんんっ?」
「妙に切羽詰まって、いやらしい声」
「そんなふうに目で訴えたって、わからないものはわからないよ」

 みなさま、わかっていてイジワルされているのか。本当にわかっていただけないのか・・・
 だけど、こんなときに頼りになるのが、おやさしいほのかさま。

「わたし、わかりました。イッてもいいですか?って、わざわざ懇願しているんですよ。イントネーションが同じですもの」
「あー、なるほどね。たまほの、よくわかったねー」
 リンコさまの白々しいお声。

「さすがチーフのマゾペットだね、躾がよく行き届いていること。どんなときでも勝手にイッたりせずにちゃんとお許しを乞うなんて、まさしくマゾの鑑だね」
 茶化すような雅さまのお道化声。

「どうします?お姉さま。お姉さまのマゾドレイがイッてもいいですか?って生意気言ってますけど」
 絶好調な雅さまがお姉さまにお声をかけ、わざとらしいお芝居がつづきます。

「あら、今回のお仕置きの仕切りは、この場のご主人様にすべてお任せしていましてよ。絵理奈さまにお聞きなさい、と伝えておいてちょうだい」
 わざわざ窓辺にはいらっしゃらず、私の後方のソファーで優雅に寛がれているはずのお姉さまも、ノリ良くお芝居声で返されました。

「だってさ。ナオちゃんの愛するお姉さまは、ああおっしゃってるよ」
 雅さまが私に聞いてきます。
「んんんんんーっ、んっんんんーんんんっ?」
 私は絵理奈さまのほうを向き、腰を振りつつ懇願します。
「あーっ、もうまどろっこしい!」
 雅さまが私の鼻をつまみ、私が口が開くと同時にロールパンを引っこ抜きました。

「絵理奈さまぁ、イッてもいいですかぁぁっ」
 口が自由になると同時に、泣き出しそうなおねだり声が絞り出ていました。
「仕方ないわね、約束は約束だから、思う存分イクがいいわ」
 忌々しそうなお声と共に、鞭を振り上げる絵理奈さま。

「あーーーっ!!!」
 パシッとお尻に鞭が振り下ろされるのと同時でした。
 高まりきった快感が頭の中で爆発して火花を散らす感じ。
 それが最初のオーガズム。

 それでも動きの止まらない腰。
 たてつづけに振り下ろされる鞭。
「んーーーっ、いいいーーーーーっ!!!」

「あっ、イッたね」
「イッたよ、両脚がヒクヒク震えてる」
「あ、またビクンて」
「あ、またイクんじゃない?」

 みなさまの驚きと呆れが入り混じったお声の中。
 快楽の渦に飲み込まれて溺れ、高まっては堕ち、またすぐに高まっては堕ち、快感に翻弄されつづける私。

「んーっ、んーーっ、いぃぃ、いぃっ、いいぃぃーっ!!!」

 目の前にぼんやり広がる夜景の中で動き回る人たち。
 そのすべての人たちが、軽蔑しきったお顔でこちらを見上げているように見えました。
 すべての理性が弾け飛んでしまったかのような開放感と高揚感の中、下半身のあちこちで快感スパークが炸裂し、何度も何度もイキつづけました。

 気がつくと窓辺の床に、内股でへたり込んでいました。
 さっきから耳についているハアハアという荒い息遣いは、自分の口から出ているものでした。
 まだぼんやりとしている頭で、目前の窓辺を見ました。

 さっきまで私を翻弄しつづけていたロープは、窓辺から解かれたようで見当たりませんでした。
 カーテンもいつの間にか全部、閉じられていました。

 お尻に直に触れているジーンズがひんやりして気持ちいい、と思いながら顔を上げると、みなさまが私を取り囲むように見下ろしていました。

「あ、気がついたみたい」
「凄かったね。何回イッた?」
「声を一所懸命我慢していたのは、偉かったんじゃない」
「途中、明らかにこの窓を見上げている人影みつけたから、そっとカーテン閉めちゃったわよ」
 頭上から一斉にお声が降ってきました。

「いやあ、面白かった。直子って底無しのど淫乱だよね。何度も固唾呑んだから、おかげで喉が乾いて乾いて、お酒が進んじゃった」
「凄く気持ち良さそうにイッてたよね。またそのイキ顔がエロいんだ。ずっと視ていたい感じ」
「絵理奈っちもずいぶん貢献していたよね?イキそうなとき、鞭で洗濯バサミ払い落としたりして」

 そのお言葉にふと自分のバストを見ると、おっぱいを飾っていた4つの洗濯バサミは全部消え、代わりにまだらな赤い打擲痕。
 最後にほのかさまが挟んだ左下乳の噛まれ痕は、やっぱり内出血したようで、薄く紫色になっていました。
 ラビアの洗濯バサミも、激しい腰振りダンスでのロープとの摩擦と、溢れ出た愛液の潤みに耐えきれなかったようで、床に転がっていました。

「あのう、みなさん?とても盛り上がっているところ大変申し訳ないのですが、そろそろデザートをお持ちして、よろしいでしょうか?」
 とても言い辛そうなお顔で、おずおずとご提案されたメイド姿の松井さま。

「あら、もうそんな時間?」
 さーこママさまとお姉さまが同時に、同じお言葉をおっしゃいました。

「ママさん、ここって何時までだっけ?」
「普段はラストオーダー10時で、後は成り行きなのだけれど・・・」
 お姉さまのお尋ねに歯切れの悪いお返事の、さーこママさま。

「生憎、明日の昼、夜と貸し切りの大人数パーティが入っていて、今夜中にある程度仕込んでおかないと明日バタバタになりそうなのよ」
「だから、今日は10時くらいに締めて、いろいろやっておこうと思っていたから、ミャビちゃんたちのご予約も、9時半までってことにしちゃったの」

「こんなに愉しいショーが見れるなら、11時でも12時でも何時まででも騒いでいって、って言いたいところなのだけれど、明日があるのよねえ・・・」
 本当に申し訳無さそうな、さーこママさまのお顔。

「ううん。こんなに自由にさせてくれるお店って、そうそう無いから、あたしたちだってワガママ言えないわ。お店の営業第一だもの」
「今、9時ちょっと過ぎでしょ、さっさと切り替えて、デザートいただきながら直子のオナニーショーを時間まで愉しみましょう」
 お姉さまのお言葉に、お口をポカンと開けたビックリ顔になられた、さーこママさま。

「えっ、今あんなにイキまくったのに、まだそういうことするの?この子」
 私の顔をまじまじと見つめてくるさーこママさま。
 
「あたし、予定していたことは、極力実行したいタイプなんです。まだ30分もあるし、ちゃんと時間通りに終わらせますから、安心してください」
 さーこママさまに向けてお姉さまが、お仕事のときみたいな自信満々のお顔でおっしゃいました。

「それに、こうなってからの直子が凄いんだ。イキグセがついちゃうっていうか、ノンストップで何してもイキまくるの。みんなも視たいでしょ?そういう直子」
 お姉さまのお言葉に、うんうんと勢い良くうなずかれるみなさま。

「そういうことなら、わたしも下をさっさと片付けちゃって、また見物させてもらおうっと。さあ松井ちゃん、みなさんのデザートの準備、超特急でしちゃいましょう」
 松井さまと連れ立って階下へ下りられようと階段方向に向かいかけた、さーこママさま。
 ふと立ち止まって振り向かれました。

「今夜のデザートはイタリア仕込みの特製ピスタチオジェラートなの。ゆっくり味わって欲しいから、特別に10時まで延長してあげる」
 パチンとウインクされたさーこママさまに、ワーッと歓声をあげるみなさま。

「ママさんもああ言ってくださったから、ご迷惑をおかけしないよう、すぐお開きに出来る準備もしつつ、愉しみましょう」
 お姉さまの号令で、空いたグラスなどをテキパキと片付け始めるみなさま。

「直子のステージは・・・ここがいいわね」
 お料理が並んでいたダイニングテーブルのうち階段側のテーブルは、すでに綺麗に片付けられて何も乗っていませんでした。
「汚しちゃ悪いからここにタオルを敷いて、その上に直子」
 バッグから白いバスタオルを引っ張り出し、手早くテーブルに敷き始めるお姉さま。

「ほら、直子も早く立ち上がって、着ているもの全部脱ぎなさい。首輪以外全部」
 お姉さまの有無を言わせないご命令口調に、あわてて立ち上がろうと腰を浮かせます。

 お尻の下になっていたジーンズ地から剥き出しのお尻が離れたとき、ジーンズ全体がまるでお漏らしでもしちゃったみたいに、グショグショに湿っていることに、あらためて気がつきました。


三人のミストレス 11