図書室に戻って自分のバッグを手に持ち、もう一度戸締りを点検してから廊下に出ます。
図書室のドアに鍵をかけて、階段を一段飛ばしで一階まで駆け下りました、
その間、私の心臓は、ずーっとどきどきしっぱなし。
さっき見た光景が現実にあったこととは、どうしても信じられません。
廊下を走るな!のポスターを横目で見ながら、早足で歩いて職員室のドアの前までたどりつきました。
ドアの前で立ち止まると、ハアハア盛大に息が切れています。
落ち着かなくちゃ・・・
大きく深呼吸して呼吸を整えてから、ノックして、
「失礼しまーす」
大きな声で言いながら、職員室に入りました。
職員室には、先生方が数人いました。
どの先生も目礼だけで、私に声をかけてくる先生はいません。
鍵を所定の場所に吊るして少しホっとしてると、
「ご苦労さま」
音楽の若い女性の先生が声をかけてくれました。
私は、その先生に会釈してから入ってきたドアのほうへ向かい、
「失礼しましたー」
また、大きな声で言って廊下に出ます。
このままお家に帰っちゃおうか・・・
さっき見た光景は、私には刺激が強すぎました。
まさか私が普段妄想していることを現実にやっている人がいるなんて・・・
でも、だからこそ、一方では、相原さんとお話してみたくてたまりませんでした。
聞いてみたいことがたくさんありました。
私には絶対できないことをしている相原さんに。
しばらく職員室の前で迷っていましたが、結局、好奇心が勝ちました。
ただ、私にもそういう願望があることは、極力悟られないようにしようと思いました。
一緒にやろうなんて言われたら、私の身が破滅してしまいます。
さっきの感じだと相原さんは、私に好意を持ってくれているみたいです。
でも、私の隠している性癖を教えてもだいじょうぶなのかどうか、判断できるほど相原さんのことを知りません。
て言うより、ほとんど何も知りません。
とりあえずお友達として、お話を聞いてみよう。
それから判断しよう。
そう決めました。
ゆっくりと階段を上がって3階に戻りました。
三年一組の教室は、電気が消えたままでした。
相原さん、いるのかな?
どきどきしながら一組の教室のドアを開けました。
相原さんは、自分の席、窓際の後ろから3番目の席に座って頬杖をついていました。
私がドアを開ける音を聞いて、顔だけこちらに向けてニッコリ笑い、
「おかえりなさーい」
明るい声で言いました。
制服をブレザーまで、ちゃんと着ています。
私が閉めたカーテンも再び開けられて、窓から夕焼けが射し込んでいます。
「そこに座って」
相原さんの前の席の椅子を指さします。
私は、おずおずとその席まで行き、自分のバッグを机の上に置いてから、黒板のほうを向いている椅子に横座りに腰を下ろして、顔を相原さんのほうに向けました。
「ごめんね。びっくりさせちゃって」
相原さんは、なぜだか嬉しそうな笑みを浮かべて私を見つめます。
「誰にも言わないで、ね?」
私の顔を覗き込むように顔を近づけてきます。
「うん・・・」
私は、気恥ずかしい気持ちになってしまい、うつむきながら、なんとなくチラっと自分のしている腕時計に目をやりました。
5時5分過ぎ。
うちの学校の最終下校時刻は、この時期だと部活参加者なら5時45分、それ以外の生徒はもうとっくに帰っていなければなりません。
「だいじょうぶ。この時間帯は教室の電気さえ点けてなければ、絶対見回りとか来ないから。下校時刻まで。わたしもずいぶんそういうこと、詳しくなっちゃった」
相原さんは、可笑しそうに笑って頬杖を解いてから、両手を組んで上に挙げて、うーんっ、て背伸びしました。
相原さんの胸が私のほうに突き出されます。
ボタンをしていないブレザーの前が割れて、ブラウスの胸が私の目の前に迫ります。
ブラウスは、上から三つ目までボタンをはずしていて、ブラウスの布に突起が二つあります。
ブラジャー着けずに、素肌にじかにブラウス着ているようです。
「うふふ。気がついた?わたし、こういうことするの、好きなの」
相原さんは、私の反応を試すみたいなイタズラっ子の目つきで私を見つめます。
「森下さん、何から聞きたい?」
私には、聞いてみたいことが山ほどありました。
でも、そういうことにまったく興味のないフリをしていないと、感づかれてしまう恐れがあります。
ああいう現場を見て、普通に思うありふれた感想、って何だろう?
あれこれ考えて、出てきた言葉は、
「えっと、どうして学校で、裸になったりするの?」
バカみたいな質問でした。
「どうしてかなあ・・・うーんと・・・スリル・・・かな?」
「わたし、小さい頃から、自分が恥ずかしいめにあうのが、なんでだか、好きだったの。ヘンでしょ?」
相原さんは、落ち着いた声で話し始めました。
相原さんも、お医者さんごっこで患者さん役になるのや、小学校で男子からスカートめくりの標的にされることが、口ではイヤイヤって言ってたけれど、内心、すごくワクワクしていたそうです。
「もっとやってー、て感じで、ね?」
笑いながらも私の反応を確かめるみたいに、私に目を合わせてきます。
「それで、中学二年になったとき、パソコンを買ってもらったの」
突然お話が飛びました。
「そうすると、やっぱりえっちなこととかも調べたくなるじゃない?」
「私、パソコン、持ってないから・・・」
「そうなんだ。インターネットってスゴイよ。調べたら、だいたいのことは教えてくれる。いいことも悪いことも」
私の知ってる限りでは、普段無口でクールな印象だった相原さんが、雄弁に語り始めました。
「それで、野外露出プレイ、っていうのを知ったの」
「女の人が、ありえない場所で胸やお尻やアソコを出したり、裸になってるの。公園とかコンビニとか遊園地とか、もちろん学校でとか」
「ノーパンにミニスカートでコンビニ行って、わざと低いところにある商品を取るとか、観覧車に乗って上のほうに行ったとき胸出すとか、そういう写真がいっぱい載ってるの、インターネットに」
「でも、そういうのにも種類がいろいろあって、外国の人なんかだと、ワタシノカラダキレイデショ?みたいな感じで、堂々と人がいっぱいいる表通りとかをオールヌードで歩いてたりするの。まわりの男の人たちがニヤニヤ喜んじゃって」
「わたし、そういうのはなぜだかあんまり好きじゃない。わたしが好きなのは・・・」
「わたしが好きなのは、やっぱり、見られちゃうかもしれない、って恥ずかしさにドキドキしてる感じのやつ。あと、やりたくないのに脅されているかなんかで無理にやらされてるようなの」
「もちろん男の人にもそういう趣味の人がいて、男の人がやると、夜道で知らない女性や子供に向けてズボンのチャック下げて、自分のモノ見せる、とか、そういうの。変質者。こっちはわたしも見たくない」
相原さんがクスクス笑いました。
そう言えば、春先に近所の小学校周辺にそういう人が現れて、ちょっとした騒ぎになってたなあ・・・
なんて考えつつ、うつむきがちに相原さんのお話のつづきをワクワクしながら待っていたら、相原さんに左肩をポンと叩かれました。
「ごめん。森下さん?こういうえっちぽい話は好きじゃない?苦手?」
「えっ!?うーんと、苦手ってわけじゃないけど・・・私、そういうの、全然よく知らないから・・・」
私は、大嘘つきです。
「つづけていい?」
私は、コクンとうなずきます。
「写真ばっかりじゃなくて、そういうことを実際やってみた、っていう女性からの告白文みたいのや、そういうのを題材にした小説みたいなのも探すとたくさん出てくるの」
「そういうのを読むと、そういうこと考えてるのは、わたしだけじゃないんだなー、って思えてドキドキしちゃって。わたしも恥ずかしいことしてみたい、ってたまらなくなったの」
「最初は、学校でノーパンになってみた。忘れもしない去年の12月1日」
去年って言ったら、私とまだクラスメイトの頃です。
「午前中は、ドキドキしてなかなか決行できなかったのだけれど、昨夜決めたでしょ?って自分に言い聞かせて、お昼休み中に女子トイレでパンティ脱いで、スカートのポケットに入れて、そのまま5時限目の授業を受けたの。佐々木の英語」
「そのとき、ちょうどわたし、当てられてしまって、立って教科書読まされたの。すっごくドキドキした。バレちゃったらどうしよう、って。普通にしてればわかるはずないんだけど。声も上ずっちゃって」
「わたし、あの頃、クラスの真ん中辺りの席だったじゃない?後ろが誰だったか忘れちゃったけど、今スカートめくられたらすっごい恥ずかしい思いをすることになるんだあ、なんて考えて」
「森下さんは、確かわたしの右隣だった、よね?わたしの声がちょっと震えてたの、気がつかなかった?」
私は、顔を左右に振ります。
そんなこと全然気がつきませんでした。
でも、そう告白されると、なんだか私もどきどきしてきます。
そのとき、私の横でノーパンの相原さんが恥ずかしさに震えながら英語の教科書を読まされていた・・・
相原さんは、また私の反応を確かめるみたいに、しばらく私の目を見つめていました。
*
*図書室で待ちぼうけ 04へ
*
直子のブログへお越しいただきまして、ありがとうございます。ここには、私が今までに体験してきた性的なあれこれを、私が私自身の思い出のために、つたない文章で書きとめておいたノートから載せていくつもりです。
2010年11月28日
2010年11月27日
図書室で待ちぼうけ 02
「あ、あなた・・・!?」
その顔には、見覚えがありました。
二年生のときに同じクラスだった相原さんです。
相原さんは、私がいつも一緒にいた愛ちゃんたちのグループとは、ほとんど接点が無かったので、たまに近くの席になったときにお勉強のお話をするくらいで、親しくお話したことはありませんでした。
お勉強は出来るほうでしたが、シャイな性格みたいで、休み時間になるといつもフラっとどこかに一人で出かけてしまう、無口で、目立たない女の子でした。
でも、眉毛のちょっと上で直線に切り揃えた前髪と襟足が長めのボブカットが特徴的で、目鼻立ちも品良く整った、エキゾチックな感じのキレイなお顔の女の子なんです。
「相原さん!?」
「なんで、どうしてあなたがここで、そんな格好してるの?」
「ねえ、あなた、服はどうしたの?」
「ひょっとして、誰かにイジメ・・・」
私がそこまで矢継ぎ早にまくしたてたとき、相原さんがポツンと小さな声でつぶやきました。
「よかった・・・」
「えっ?なに?」
「見られたのが森下さんで、よかった」
「えっ?どういう意味?」
「見られたのが森下さん、あなたで本当によかった」
相原さんは、今度ははっきりした口調でそう言って、唇の両端を少しだけ上げて、薄く微笑みました。
その目は、まっすぐ私を見ています。
ゾクっとするほど綺麗な笑顔でした。
「わたしね、自分の裸を森下さんに見てもらいたいと思ってたの」
「えっ?なんで私に・・・」
私は、頭が混乱し過ぎて、相原さんの言っている言葉の意味はわかるのですが、それがどういうことなのか全然わかりません。
「そ、そんなことより、早く服着たほうがいいよ。あっ、ごめん。明るくて恥ずかしいよね。私、電気消してくるっ」
自分でも何を言っているのか理解できないまま、私がドアのほうへ戻ろうとすると、相原さんの手が私の手首をぐっ、と掴みました。
「いいの」
相原さんは、掴んだ私の手首を軽くひいて、自分のほうへ引き寄せました。
「だから、ね、森下さん。わたしのからだをよーく見て・・・」
そう言うと、私を掴んでいた右手を離し、内腿の間を隠していた左手も背中に回して、休め、のような姿勢で私の前にまっすぐ立ちました。
「見て」
綺麗なからだでした。
小ぶりながら張りのある、まだまだ成長しそうな形の良いバスト。
ツンと上を向いている、小さくてかわいらしいピンク色の乳首。
腰にかけてなだらかなS字にカーブを描く細いウエスト。
陶磁器のように真っ白で平らなお腹。
小さな子が拗ねたときの口みたいな、へ、の字を縦にしたようなちっちゃなおヘソ。
こんもりとした土手を薄っすらと狭く覆う、直毛な陰毛。
膝の上まで隠している黒いニーソックスも妙に艶かしくて・・・
「どう?」
相原さんの裸の美しさに見蕩れていた私は、思わず、
「すごくキレイ・・・」
正直に答えていました。
「そう?うれしい・・・」
しばらく見蕩れていた私は、ああ、さわってみたいなあ、と思い、無意識に相原さんのバストに手を伸ばしかけていました。
そこで、ハッと我に返り、伸ばしかけた手を慌ててひっこめ、ごまかすように口を開きます。
「と、とにかく、早く服を着たほうがいいから。相原さん、あなた、服は?」
「教室。わたしのバッグの中」
「なんでそんなとこにあるの?」
「わたしが教室で自分で脱いで、それから裸で廊下に出て、ここに来たの」
「そ、そうなの?でも、でもとにかく、早く服を着たほうがいい。こんなとこ誰かに見られたら大変」
相原さんは、黙って薄い微笑を浮かべたまま立っています。
「私が取ってきてあげる。相原さん一組だったよね。席はどこ?」
「窓際の後ろから3番目」
「わかった。相原さんはここで隠れていて。待っててね」
相原さんは、黙ったままコクンと頷きました。
私は小走りに図書室のドアへ向かい、電気のスイッチを切ってから、廊下へ飛び出しました。
一組の教室は、図書室から階段のスペースを隔てたお隣です。
廊下には誰もいません。
私は、そのまま三年一組の教室のドアのところまで走って行き、一応、
「失礼しまーす」
と大きな声で行ってから、横開きのドアをガラガラっと開けました。
教室にも誰もいません。
整然と並んでいる机のうち、一つだけ上にスクールバッグが置いてある机がありました。
言われた通り、窓際の後ろから3番目の机でした。
ファスナーが開いていて、制服のブラウスらしき白い布が覗いています。
そのバッグを手に持って、急いでまた廊下に出ました。
図書室のほうに目をやると、相原さんが裸のまま、胸と下半身に手をあてて隠すように前屈みになりながら、図書室のドアから出て来るのが見えました。
「相原さんっ!」
思わず大きな声が出てしまいます。
私の声に気がついた相原さんは、ドアの前で立ち止まり、あたりをキョロキョロした後、私を見ながら胸と下半身を隠していた両手をはずして、まっすぐに立ちました。
それから、顔に小さく笑みを浮かべて、ゆっくりとモデルさんみたいな歩き方で私のほうに歩いてきます。
でもやっぱり恥ずかしいのでしょう、頬が上気してほんのりピンク色に染まっています。
見慣れた学校の廊下、蛍光灯の灯りを浴びて恥じらいながら、こちらに歩いて来る白い裸身の綺麗な少女。
その光景は、なんだかシュールで、現実ではないような気がして、そして、すごくエロティックでした。
私の胸が激しくどきどき高鳴ってきます。
近づいてくる相原さんに気圧されるように、私もゆっくりと後ずさりしながら、三年一組のドアの前まで戻りました。
目だけは、相原さんの姿に釘付けです。
相原さんがあと2メートルくらいの距離まで近づいたとき、私は、後ろ手で教室のドアをガラガラと開け、からだを教室の中に入れました。
相原さんも当然のように入ってきます。
私は、後ずさりのまま、さっきバッグを見つけた相原さんの席のところまで後退します。
相原さんは、私の正面一メートルくらい手前で、立ち止まりました。
相変わらず頬を染めたまま、薄く微笑んでいます。
「あ、相原さん、あなた出てきちゃったの?」
喉がカラカラに渇いてしまっていて、声が掠れてしまいます。
「うん。廊下にも誰もいないみたいだったから」
「じゃ、じゃあ、ここで早く服着たほうがいいよ。誰かに見られたら大変だよ」
私は、手に持っていた相原さんのバッグを相原さんの前の机の上に置きました。
「わ、私は、図書室閉めて、鍵、職員室に返してこなきゃならないから・・・」
この場をどうすればいいのか、わからなくなってしまった私は、とりあえずこの場から逃げ出すことにしました。
相原さんの横をすり抜けて教室を出ようとすると、相原さんの右腕がススッと動き、私の右手首が強い力で掴まれました。
「ねえ、森下さん?」
「は、はいっ!」
私は、急に掴まれた右手首の感触にびっくりして大きな声で返事してしまいます。
「用事が終わったら、またこの教室に戻ってきて・・・」
「・・・」
「わたし、森下さんとお話がしたい。なんでこんなことやってるのかも教えてあげるから・・・」
「・・・うん・・・」
「戻ってきてくれる?」
相原さんが私をじーっと見つめながら、かすかに首をかしげます。
すごく綺麗です。
そしてなんだか可愛い・・・
「う、うん。戻ってくるから、だからちゃんとお洋服、着ておいてね」
私はどぎまぎしながらも、相原さんの顔をまっすぐに見つめました。
いつの間にか、二人の位置が逆転していて、相原さんは、教室の窓に背中を向けていました。
低くなったお日様の淡い光が窓から差し込んで、相原さんを背中から照らしています。
相原さんの裸身を背後から金色に輝かせていて、すっごく綺麗です。
私はあらためて、相原さんのからだを上から下まで、舐めるように見蕩れてしまいました。
相原さんの両脚が一つになる付け根付近、薄い陰毛が僅かに隠している付け根の交わる頂点に、今にも滴りそうになっている小さな水滴が一粒、夕日を後ろから受けてキラキラ光りながらぶら下がっているのに気づきました。
私は、それを見た途端、カーっと全身が熱くなって、顔が見る見る赤くなっていくのがわかりました。
相原さん、感じているんだ・・・
私は、急いで窓辺に駆け寄り、相原さんが立っているところまでカーテンをザザーっとひきました。
いくら3階とは言え、学校の窓から裸の女の子の背中が見えたらマズイと思ったんです。
「じゃ、じゃあ私、職員室行って戻ってくるから、早く服着て、待っててね」
私は、相原さんを見ずに早口でそう言って、また廊下に飛び出しました。
*
*図書室で待ちぼうけ 03へ
*
その顔には、見覚えがありました。
二年生のときに同じクラスだった相原さんです。
相原さんは、私がいつも一緒にいた愛ちゃんたちのグループとは、ほとんど接点が無かったので、たまに近くの席になったときにお勉強のお話をするくらいで、親しくお話したことはありませんでした。
お勉強は出来るほうでしたが、シャイな性格みたいで、休み時間になるといつもフラっとどこかに一人で出かけてしまう、無口で、目立たない女の子でした。
でも、眉毛のちょっと上で直線に切り揃えた前髪と襟足が長めのボブカットが特徴的で、目鼻立ちも品良く整った、エキゾチックな感じのキレイなお顔の女の子なんです。
「相原さん!?」
「なんで、どうしてあなたがここで、そんな格好してるの?」
「ねえ、あなた、服はどうしたの?」
「ひょっとして、誰かにイジメ・・・」
私がそこまで矢継ぎ早にまくしたてたとき、相原さんがポツンと小さな声でつぶやきました。
「よかった・・・」
「えっ?なに?」
「見られたのが森下さんで、よかった」
「えっ?どういう意味?」
「見られたのが森下さん、あなたで本当によかった」
相原さんは、今度ははっきりした口調でそう言って、唇の両端を少しだけ上げて、薄く微笑みました。
その目は、まっすぐ私を見ています。
ゾクっとするほど綺麗な笑顔でした。
「わたしね、自分の裸を森下さんに見てもらいたいと思ってたの」
「えっ?なんで私に・・・」
私は、頭が混乱し過ぎて、相原さんの言っている言葉の意味はわかるのですが、それがどういうことなのか全然わかりません。
「そ、そんなことより、早く服着たほうがいいよ。あっ、ごめん。明るくて恥ずかしいよね。私、電気消してくるっ」
自分でも何を言っているのか理解できないまま、私がドアのほうへ戻ろうとすると、相原さんの手が私の手首をぐっ、と掴みました。
「いいの」
相原さんは、掴んだ私の手首を軽くひいて、自分のほうへ引き寄せました。
「だから、ね、森下さん。わたしのからだをよーく見て・・・」
そう言うと、私を掴んでいた右手を離し、内腿の間を隠していた左手も背中に回して、休め、のような姿勢で私の前にまっすぐ立ちました。
「見て」
綺麗なからだでした。
小ぶりながら張りのある、まだまだ成長しそうな形の良いバスト。
ツンと上を向いている、小さくてかわいらしいピンク色の乳首。
腰にかけてなだらかなS字にカーブを描く細いウエスト。
陶磁器のように真っ白で平らなお腹。
小さな子が拗ねたときの口みたいな、へ、の字を縦にしたようなちっちゃなおヘソ。
こんもりとした土手を薄っすらと狭く覆う、直毛な陰毛。
膝の上まで隠している黒いニーソックスも妙に艶かしくて・・・
「どう?」
相原さんの裸の美しさに見蕩れていた私は、思わず、
「すごくキレイ・・・」
正直に答えていました。
「そう?うれしい・・・」
しばらく見蕩れていた私は、ああ、さわってみたいなあ、と思い、無意識に相原さんのバストに手を伸ばしかけていました。
そこで、ハッと我に返り、伸ばしかけた手を慌ててひっこめ、ごまかすように口を開きます。
「と、とにかく、早く服を着たほうがいいから。相原さん、あなた、服は?」
「教室。わたしのバッグの中」
「なんでそんなとこにあるの?」
「わたしが教室で自分で脱いで、それから裸で廊下に出て、ここに来たの」
「そ、そうなの?でも、でもとにかく、早く服を着たほうがいい。こんなとこ誰かに見られたら大変」
相原さんは、黙って薄い微笑を浮かべたまま立っています。
「私が取ってきてあげる。相原さん一組だったよね。席はどこ?」
「窓際の後ろから3番目」
「わかった。相原さんはここで隠れていて。待っててね」
相原さんは、黙ったままコクンと頷きました。
私は小走りに図書室のドアへ向かい、電気のスイッチを切ってから、廊下へ飛び出しました。
一組の教室は、図書室から階段のスペースを隔てたお隣です。
廊下には誰もいません。
私は、そのまま三年一組の教室のドアのところまで走って行き、一応、
「失礼しまーす」
と大きな声で行ってから、横開きのドアをガラガラっと開けました。
教室にも誰もいません。
整然と並んでいる机のうち、一つだけ上にスクールバッグが置いてある机がありました。
言われた通り、窓際の後ろから3番目の机でした。
ファスナーが開いていて、制服のブラウスらしき白い布が覗いています。
そのバッグを手に持って、急いでまた廊下に出ました。
図書室のほうに目をやると、相原さんが裸のまま、胸と下半身に手をあてて隠すように前屈みになりながら、図書室のドアから出て来るのが見えました。
「相原さんっ!」
思わず大きな声が出てしまいます。
私の声に気がついた相原さんは、ドアの前で立ち止まり、あたりをキョロキョロした後、私を見ながら胸と下半身を隠していた両手をはずして、まっすぐに立ちました。
それから、顔に小さく笑みを浮かべて、ゆっくりとモデルさんみたいな歩き方で私のほうに歩いてきます。
でもやっぱり恥ずかしいのでしょう、頬が上気してほんのりピンク色に染まっています。
見慣れた学校の廊下、蛍光灯の灯りを浴びて恥じらいながら、こちらに歩いて来る白い裸身の綺麗な少女。
その光景は、なんだかシュールで、現実ではないような気がして、そして、すごくエロティックでした。
私の胸が激しくどきどき高鳴ってきます。
近づいてくる相原さんに気圧されるように、私もゆっくりと後ずさりしながら、三年一組のドアの前まで戻りました。
目だけは、相原さんの姿に釘付けです。
相原さんがあと2メートルくらいの距離まで近づいたとき、私は、後ろ手で教室のドアをガラガラと開け、からだを教室の中に入れました。
相原さんも当然のように入ってきます。
私は、後ずさりのまま、さっきバッグを見つけた相原さんの席のところまで後退します。
相原さんは、私の正面一メートルくらい手前で、立ち止まりました。
相変わらず頬を染めたまま、薄く微笑んでいます。
「あ、相原さん、あなた出てきちゃったの?」
喉がカラカラに渇いてしまっていて、声が掠れてしまいます。
「うん。廊下にも誰もいないみたいだったから」
「じゃ、じゃあ、ここで早く服着たほうがいいよ。誰かに見られたら大変だよ」
私は、手に持っていた相原さんのバッグを相原さんの前の机の上に置きました。
「わ、私は、図書室閉めて、鍵、職員室に返してこなきゃならないから・・・」
この場をどうすればいいのか、わからなくなってしまった私は、とりあえずこの場から逃げ出すことにしました。
相原さんの横をすり抜けて教室を出ようとすると、相原さんの右腕がススッと動き、私の右手首が強い力で掴まれました。
「ねえ、森下さん?」
「は、はいっ!」
私は、急に掴まれた右手首の感触にびっくりして大きな声で返事してしまいます。
「用事が終わったら、またこの教室に戻ってきて・・・」
「・・・」
「わたし、森下さんとお話がしたい。なんでこんなことやってるのかも教えてあげるから・・・」
「・・・うん・・・」
「戻ってきてくれる?」
相原さんが私をじーっと見つめながら、かすかに首をかしげます。
すごく綺麗です。
そしてなんだか可愛い・・・
「う、うん。戻ってくるから、だからちゃんとお洋服、着ておいてね」
私はどぎまぎしながらも、相原さんの顔をまっすぐに見つめました。
いつの間にか、二人の位置が逆転していて、相原さんは、教室の窓に背中を向けていました。
低くなったお日様の淡い光が窓から差し込んで、相原さんを背中から照らしています。
相原さんの裸身を背後から金色に輝かせていて、すっごく綺麗です。
私はあらためて、相原さんのからだを上から下まで、舐めるように見蕩れてしまいました。
相原さんの両脚が一つになる付け根付近、薄い陰毛が僅かに隠している付け根の交わる頂点に、今にも滴りそうになっている小さな水滴が一粒、夕日を後ろから受けてキラキラ光りながらぶら下がっているのに気づきました。
私は、それを見た途端、カーっと全身が熱くなって、顔が見る見る赤くなっていくのがわかりました。
相原さん、感じているんだ・・・
私は、急いで窓辺に駆け寄り、相原さんが立っているところまでカーテンをザザーっとひきました。
いくら3階とは言え、学校の窓から裸の女の子の背中が見えたらマズイと思ったんです。
「じゃ、じゃあ私、職員室行って戻ってくるから、早く服着て、待っててね」
私は、相原さんを見ずに早口でそう言って、また廊下に飛び出しました。
*
*図書室で待ちぼうけ 03へ
*
図書室で待ちぼうけ 01
私は、中学生の三年間、ずーっと図書委員をやっていました。
中学入学と同時に他県から引越してきたため、知っている同級生が一人もいなかった一年生のとき、おそらく小学校からの引継ぎ書類に、読書好き、って書かれていたためだと思いますが、そのときの担任の先生に推薦で任命されてから、三年生まで、一期も欠かさず図書委員でした。
三年生になってクラス替えになっても、愛ちゃんたちのグループ5人とまた一緒のクラスになれました。
そしてクラス委員決めのホームルームのとき、あべちんの推薦で私はまた、図書委員を務めることになりました。
ずっと同じ委員をやっていれば、お仕事は全部わかっています。
新しい本の購入を検討したり、読書新聞を作ったりというお仕事もありましたが、メインになるお仕事は、お昼休みと放課後の図書室の管理、貸出しや返却の処理とか蔵書の整理、本棚の整頓とかでした。
三年生になって、私は火曜日の図書室当番担当になりました。
一年生か二年生の委員が一人、補佐について、図書室の受付のカウンターで、利用する生徒のお世話をします。
私が通っていた中学校の図書室は、けっこう広めで、普通の教室の2倍くらいの広さでしょうか。
3階建て校舎の3階の西の突き当たりにありました。
入口を入ってスグのところに、貸し出しや返却受付用の机が置かれたカウンターのようなスペースがあり、私たち図書委員は、そのカウンターの中で作業をします。
カウンター側以外の壁際全面にぎっしり書庫が並べられていて、ドア側手前のスペース、全体の半分くらいの広さ、が図書閲覧用のスペースになっています。
4人掛けの机と椅子が8組置かれて、利用者は、そこで本を読んだり勉強することができます。
お部屋の奥の残ったスペースには、たくさんの本棚が見やすいようにジャンル分けされて整然と並べられていました。
具体的なお仕事の手順を一応説明しておきます。
たとえばお昼休み。
うちの学校のお昼休みは、お昼の12時半から1時半まででした。
そのうち12時半から1時まではお弁当の時間。
図書室を利用出来るのは、1時5分から1時25分までの20分間。
その日の図書室当番の人は、1時5分に間に合うように職員室から鍵を借りてきて図書室のドアを開けて、5時限目の授業に間に合うように図書室を閉めて、鍵を職員室に戻しておかなければなりません。
放課後だと、利用時間は午後の3時半から4時半までの一時間になります。
図書室にいる間は、本の貸出しや返却の処理、返却の遅れている人をリストアップして校内放送で流してもらうリストを作ったり、本棚の整理整頓や騒がしくしてる人への注意などをします。
試験前なら、けっこうそれなりに利用者がいましたが、普段の日は、昼休みなら本を読みに来る人より寝に来る人のほうが多い感じで、日に10人そこそこくらい。
放課後でも15~30人くらい。
ややこしいことを言ってきたり、騒ぐ利用者もまったくいなくて、私は、図書室にいるときは、いつも比較的まったりできました。
読書好きな私ですから、初めて図書委員になった頃は、当番の日でなくてもヒマをみつけては図書室に来て、面白そうな本を片っ端から読んでいました。
でも、さすがに2年以上も同じ図書室にいると、年に二回入ってくる新入荷の本以外、読みたい本も無くなってしまい、二年生の後半頃からは、当番の日には私物の文庫本を持ち込んで、貸し出し受付の机に広げて利用者を待ちながら、ゆっくり読んでいました。
三年生になって最初の中間試験も終わり、のんびりムードの漂う5月下旬の火曜日放課後。
その日はほとんど利用者がいなかったので、下級生の図書委員には先に帰ってもらって、まったり一人、文庫本を読んでいました。
ふと顔を上げて壁の時計を見ると4時15分。
図書室内に利用者は一人もいません。
あと15分か・・・
さっきからちょっとオシッコがしたくなっていました。
利用者が誰もいないから、ちょっとトイレ、行ってきちゃおうかな。
女子トイレは、図書室の入口のドアの向かいにあります。
だいじょうぶだよね、2、3分だし・・・
私は、読んでいた文庫本を閉じて貸し出し受付の机の中に入れ、小走りに図書室の入口の横開きのドアを開いて廊下に出て、女子トイレに飛び込みました。
トイレから戻ると4時20分ちょっと過ぎ。
今日はもういいか・・・
私は、図書室を閉める準備にとりかかりました。
閲覧スペースのほうにだけある窓のカーテンを全部閉じて、椅子や机の乱れを直します。
落ちているゴミや誰かの忘れ物がないか、一通り机の中や床を見てから、鍵と自分のバッグを両手に持ちました。
入口のドアの脇にある電気の集中スイッチをパチンと押すと、蛍光灯が全部消えて、図書室内は夕方の薄闇に沈みます。
そう言えば、窓際の左側の蛍光灯が切れてたな、先生に言わなくちゃ。
そんなことを思いながら、入口のドアを開けて廊下に出ます。
ドアの鍵をかけようとしたとき、貸し出し受付の机の中に、自分の文庫本を忘れてきたことに気がつきました。
もう少しで読み終わるから、家に帰って読んじゃいたいな・・・
もう一度ドアを開けて、電気は点けずに、受付のカウンター内に入りました。
本をバッグの袖ポケットにしまい、バッグに手をかけようとしたとき、
カタンっ・・・
ずっと奥の本棚のほうで何か物音がしました。
私は、ビクっとして、物音がしたほうに目をこらします。
「誰かいるんですかあ?」
大きな声で呼びかけて、しばらく様子をうかがいます。
返事はありません。
ネズミでもいるのかしら?
まさか、オバケとか・・・?
ちょっと怖かったのですが、好奇心のほうが勝って、物音のしたほうへ行ってみようと思いました。
念のため、ドアのところに戻り電気を点けました。
蛍光灯が灯り、室内が再び明るくなります。
入口の脇にある掃除用具入れを開き、床拭きモップを片手に持って、そーっと音がしたほうに近づきます。
「誰かいるんですかあ?」
「もう図書室は終わりですよおー」
問いかけながら、一番奥の本棚に近づくと、左側の本棚の陰に隠れるように誰かいるようです。
「もう鍵をかけるので、退室してくれますかあ?」
人間らしいとわかり、ちょっと安心して、本棚の陰を覗き込みました。
「キャッ!」
声をあげたのは私です。
持っていたモップを思わず取り落として、カターンという乾いた音が図書室に響きます。
そこには、誰か、たぶん裸の人が、白くてまあるいお尻をこちらに向けて、しゃがみ込んでいました。
顔は、うつむいて膝にうずめていてわかりません。
からだのまろやかさや肩までのキレイな髪を見ると、女の子のようです。
「えっ?あれ、あの、あなた、なにしてるん・・・?」
私は、すっかりうろたえてます。
「あなた誰?なんでそんな・・・」
その人は、しばらくうずくまったままでしたが、やがてゆっくりと背中を向けたまま立ち上がりました。
上履きと黒のニーソックスだけを身に着けて、あとは裸でした。
背はそんなに高くなく、華奢と言っていいからだつきですが、細いウエストから柔らかいカーブを作って広がっていくお尻の丸みがすごくセクシーです。
そしてその人は、右腕で胸、左手で内腿の間を隠したまま、ゆっくりと振り向きました。
「あ、あなた・・・!?」
*
*図書室で待ちぼうけ 02へ
*
中学入学と同時に他県から引越してきたため、知っている同級生が一人もいなかった一年生のとき、おそらく小学校からの引継ぎ書類に、読書好き、って書かれていたためだと思いますが、そのときの担任の先生に推薦で任命されてから、三年生まで、一期も欠かさず図書委員でした。
三年生になってクラス替えになっても、愛ちゃんたちのグループ5人とまた一緒のクラスになれました。
そしてクラス委員決めのホームルームのとき、あべちんの推薦で私はまた、図書委員を務めることになりました。
ずっと同じ委員をやっていれば、お仕事は全部わかっています。
新しい本の購入を検討したり、読書新聞を作ったりというお仕事もありましたが、メインになるお仕事は、お昼休みと放課後の図書室の管理、貸出しや返却の処理とか蔵書の整理、本棚の整頓とかでした。
三年生になって、私は火曜日の図書室当番担当になりました。
一年生か二年生の委員が一人、補佐について、図書室の受付のカウンターで、利用する生徒のお世話をします。
私が通っていた中学校の図書室は、けっこう広めで、普通の教室の2倍くらいの広さでしょうか。
3階建て校舎の3階の西の突き当たりにありました。
入口を入ってスグのところに、貸し出しや返却受付用の机が置かれたカウンターのようなスペースがあり、私たち図書委員は、そのカウンターの中で作業をします。
カウンター側以外の壁際全面にぎっしり書庫が並べられていて、ドア側手前のスペース、全体の半分くらいの広さ、が図書閲覧用のスペースになっています。
4人掛けの机と椅子が8組置かれて、利用者は、そこで本を読んだり勉強することができます。
お部屋の奥の残ったスペースには、たくさんの本棚が見やすいようにジャンル分けされて整然と並べられていました。
具体的なお仕事の手順を一応説明しておきます。
たとえばお昼休み。
うちの学校のお昼休みは、お昼の12時半から1時半まででした。
そのうち12時半から1時まではお弁当の時間。
図書室を利用出来るのは、1時5分から1時25分までの20分間。
その日の図書室当番の人は、1時5分に間に合うように職員室から鍵を借りてきて図書室のドアを開けて、5時限目の授業に間に合うように図書室を閉めて、鍵を職員室に戻しておかなければなりません。
放課後だと、利用時間は午後の3時半から4時半までの一時間になります。
図書室にいる間は、本の貸出しや返却の処理、返却の遅れている人をリストアップして校内放送で流してもらうリストを作ったり、本棚の整理整頓や騒がしくしてる人への注意などをします。
試験前なら、けっこうそれなりに利用者がいましたが、普段の日は、昼休みなら本を読みに来る人より寝に来る人のほうが多い感じで、日に10人そこそこくらい。
放課後でも15~30人くらい。
ややこしいことを言ってきたり、騒ぐ利用者もまったくいなくて、私は、図書室にいるときは、いつも比較的まったりできました。
読書好きな私ですから、初めて図書委員になった頃は、当番の日でなくてもヒマをみつけては図書室に来て、面白そうな本を片っ端から読んでいました。
でも、さすがに2年以上も同じ図書室にいると、年に二回入ってくる新入荷の本以外、読みたい本も無くなってしまい、二年生の後半頃からは、当番の日には私物の文庫本を持ち込んで、貸し出し受付の机に広げて利用者を待ちながら、ゆっくり読んでいました。
三年生になって最初の中間試験も終わり、のんびりムードの漂う5月下旬の火曜日放課後。
その日はほとんど利用者がいなかったので、下級生の図書委員には先に帰ってもらって、まったり一人、文庫本を読んでいました。
ふと顔を上げて壁の時計を見ると4時15分。
図書室内に利用者は一人もいません。
あと15分か・・・
さっきからちょっとオシッコがしたくなっていました。
利用者が誰もいないから、ちょっとトイレ、行ってきちゃおうかな。
女子トイレは、図書室の入口のドアの向かいにあります。
だいじょうぶだよね、2、3分だし・・・
私は、読んでいた文庫本を閉じて貸し出し受付の机の中に入れ、小走りに図書室の入口の横開きのドアを開いて廊下に出て、女子トイレに飛び込みました。
トイレから戻ると4時20分ちょっと過ぎ。
今日はもういいか・・・
私は、図書室を閉める準備にとりかかりました。
閲覧スペースのほうにだけある窓のカーテンを全部閉じて、椅子や机の乱れを直します。
落ちているゴミや誰かの忘れ物がないか、一通り机の中や床を見てから、鍵と自分のバッグを両手に持ちました。
入口のドアの脇にある電気の集中スイッチをパチンと押すと、蛍光灯が全部消えて、図書室内は夕方の薄闇に沈みます。
そう言えば、窓際の左側の蛍光灯が切れてたな、先生に言わなくちゃ。
そんなことを思いながら、入口のドアを開けて廊下に出ます。
ドアの鍵をかけようとしたとき、貸し出し受付の机の中に、自分の文庫本を忘れてきたことに気がつきました。
もう少しで読み終わるから、家に帰って読んじゃいたいな・・・
もう一度ドアを開けて、電気は点けずに、受付のカウンター内に入りました。
本をバッグの袖ポケットにしまい、バッグに手をかけようとしたとき、
カタンっ・・・
ずっと奥の本棚のほうで何か物音がしました。
私は、ビクっとして、物音がしたほうに目をこらします。
「誰かいるんですかあ?」
大きな声で呼びかけて、しばらく様子をうかがいます。
返事はありません。
ネズミでもいるのかしら?
まさか、オバケとか・・・?
ちょっと怖かったのですが、好奇心のほうが勝って、物音のしたほうへ行ってみようと思いました。
念のため、ドアのところに戻り電気を点けました。
蛍光灯が灯り、室内が再び明るくなります。
入口の脇にある掃除用具入れを開き、床拭きモップを片手に持って、そーっと音がしたほうに近づきます。
「誰かいるんですかあ?」
「もう図書室は終わりですよおー」
問いかけながら、一番奥の本棚に近づくと、左側の本棚の陰に隠れるように誰かいるようです。
「もう鍵をかけるので、退室してくれますかあ?」
人間らしいとわかり、ちょっと安心して、本棚の陰を覗き込みました。
「キャッ!」
声をあげたのは私です。
持っていたモップを思わず取り落として、カターンという乾いた音が図書室に響きます。
そこには、誰か、たぶん裸の人が、白くてまあるいお尻をこちらに向けて、しゃがみ込んでいました。
顔は、うつむいて膝にうずめていてわかりません。
からだのまろやかさや肩までのキレイな髪を見ると、女の子のようです。
「えっ?あれ、あの、あなた、なにしてるん・・・?」
私は、すっかりうろたえてます。
「あなた誰?なんでそんな・・・」
その人は、しばらくうずくまったままでしたが、やがてゆっくりと背中を向けたまま立ち上がりました。
上履きと黒のニーソックスだけを身に着けて、あとは裸でした。
背はそんなに高くなく、華奢と言っていいからだつきですが、細いウエストから柔らかいカーブを作って広がっていくお尻の丸みがすごくセクシーです。
そしてその人は、右腕で胸、左手で内腿の間を隠したまま、ゆっくりと振り向きました。
「あ、あなた・・・!?」
*
*図書室で待ちぼうけ 02へ
*
2010年11月21日
トラウマと私 25
居酒屋さんを出て、反対側の駅前ロータリーまで、やよい先生とゆっくり歩いていきました。
私は、やよい先生と手をつなぎたかったのですが、万が一、知っている人に見られたらメンドクサイことになっちゃうのでがまんしました。
その代わり、やよい先生に寄り添うように、ピッタリとからだの側面をくっつけて歩きました。
やよい先生のからだのぬくもりを感じながら。
「先生、ごちそうさまでした。今日は本当にありがとうございました」
「ううん。あたしも楽しかったから、いいのよ。なおちゃんのヒミツもバッチリ知っちゃったしね。お料理は美味しかった?」
「はい。すっごく美味しかったです」
そんなことを話しながら、ロータリーに到着しました。
私は、まわりをキョロキョロして小さめな白い車を探します。
ライオンのマークが付いた白い車・・・
「まだ母は着いてないみたいですねえ?」
やよい先生にそう言ったとき、駐車していたバスの陰からスルスルっと、母の白い車が近づいてきました。
「百合草先生。今日はうちの娘が、本当にお世話をおかけしてしまって・・・」
言いながら、母が運転席から降りてきました。
母は、白くて襟がヒラヒラしたブラウスの上に、ネイビーの薄手な秋物ジャケットを着て、下はジーンズでした。
大きな紙袋を手に持っています。
「森下さんのお母さま。ご無沙汰しています。あたしこそ、娘さんを遅くまでひき止めてしまって、申し訳ございません」
やよい先生がペコリとお辞儀します。
「いえ、いえ、いつもいつも直子がお世話になって・・・」
言いながら母が大きな紙袋をやよい先生に差し出しました。
「百合草先生が甘党か辛党か存じ上げないので、両方持ってきました。直子がお世話になったお礼です。シュークリームとワインなんですけど・・・」
「あら、あらためて考えるとちょっとヘンな組合せだったわね」
母が一人でボケて、ツッコンで、あははと笑っています。
「お帰りのとき、お荷物になっちゃって、ごめんなさいね」
「いえいえ、かえってお気を使わせてしまって、では、遠慮なくちょうだいいたします」
やよい先生がまたお辞儀をして、紙袋を受け取りました。
「それじゃあ森下さん。また来週、お教室でね。お母さま、ありがとうございました」
「はーい、先生。今日はごちそうさまでした」
「百合草先生、こちらこそ本当にありがとうございました」
3人でお辞儀合戦をした後、やよい先生は、右手を上に挙げてヒラヒラさせながら改札口に消えていきました。
車に乗り込んで、駅前の渋滞を抜けるまで、母と私は無言でした。
車がスイスイ滑り出してから、母が口を開きました。
「なおちゃん、今日は何をご馳走になったの?」
「うーんと、イタリアンかな。パスタとかサラダとか」
「美味しかった?」
「うん。トマトソースがすっごく美味しかった」
「それは、良かったねえ」
そこで少し沈黙がつづきました。
「それで、なおちゃんの悩みごとは、解決したの?」
「えっ?」
「あらー、ママだって、ここ数週間、なおちゃんがなんだか元気ないなあー、って気がついてたのよ?」
「何か悩みごとでもあるのかなー、って」
母が私のほうを向いて、ニッと笑いました。
「でも、もうどうしようもなくなったら、ママに言ってくるでしょう、って思って放っといたの」
「でも、なおちゃんは、百合草先生をご相談相手に選んだのね・・・」
「・・・ママ」
「ううん。誤解しないで。怒ってるんじゃないの、その逆よ。ママ嬉しいの」
「なおちゃんのまわりに、なおちゃんのことを心配してくれる、家族以外の人が増えていくのが、嬉しいの」
「なおちゃんにも、だんだんと自分の世界が出来ていくんだなー、って、ね」
「それで、百合草先生とお話して、その悩みは解決した?」
「うん。だいたいは・・・ううん、スッキリ!」
「そう。良かった。百合草先生、さまさまね」
「こないだいらっしゃった、なおちゃんのお友達も、ママ好きよ。みんな明るくて、素直そうで」
夏休み、8月の初め頃に、愛ちゃんたちのグループがみんな来て、私の家では初めて、お泊り会をしました。
お庭で花火をやったり、リビングでゲームをしたり、私の部屋でウワサ話大会したり。
ちょうど父も家にいて、家の中に女性が母も含めて7人もうろうろしているので、少しびびりながらも張り切っていたのが可笑しかったです。
愛ちゃんたちには、なおちゃんのお家すごーい、って冷やかされて、ちょっと恥ずかしかった。
「なおちゃんも、もうママにヒミツを持つ年頃になったのかー」
「これからどんどん、ヒミツが増えていくんだろうなー」
母は、運転しながら独り言にしては大きな声で、そんなことを言っています。
「百合草先生やお友達、大切にしなさいね」
信号待ちのとき、母が私のほうを向いて、真剣な顔で言いました。
「はいっ」
私も真剣に、大きな声で答えます。
車が走り出して、母の横顔を見つめていたら、少し寂しそうに見えたので、私は一つ、ヒミツを教えてあげることにしました。
「ねえ、ママ。私ママにヒミツ、一つだけ教えてあげる」
「あら、いいの?なになに?」
「あのね、私、夏休みに入る前の日にね、ラブレターもらっちゃった」
「あらー。スゴイわね、直接手渡されたの?」
「ううん。学校の靴箱に入ってたの」
「それはずいぶん古典的な人ね。それで?」
「でも私、今、そういうことに全然興味がないから、断っちゃった」
「あはは、そうなの。なおちゃんらしいわね」
母は、それ以上、どんな人だったの?とか、何て言って断ったの?とか追求しないで、ハンドルを握りながらニコニコしていました。
私はそれを見て、母はやっぱりカッコイイなあーって思いました。
「ありがと、ママ」
「どういたしまして。それより、ともちゃんが、直子おねーちゃんがお帰りになるまで起きてるー、ってがんばってたけど、もう、さすがに寝ちゃったかしら?早く帰ってあげましょう」
「うんっ!」
国道の信号が赤から青に変わり、先頭にいた母がアクセルを踏み込みました。
もうあと少しで我が家です。
フロントグラスの向こうに、左側が少し欠けている楕円形のお月さまが、明るく輝いていました。
*
*
*
私は、やよい先生と手をつなぎたかったのですが、万が一、知っている人に見られたらメンドクサイことになっちゃうのでがまんしました。
その代わり、やよい先生に寄り添うように、ピッタリとからだの側面をくっつけて歩きました。
やよい先生のからだのぬくもりを感じながら。
「先生、ごちそうさまでした。今日は本当にありがとうございました」
「ううん。あたしも楽しかったから、いいのよ。なおちゃんのヒミツもバッチリ知っちゃったしね。お料理は美味しかった?」
「はい。すっごく美味しかったです」
そんなことを話しながら、ロータリーに到着しました。
私は、まわりをキョロキョロして小さめな白い車を探します。
ライオンのマークが付いた白い車・・・
「まだ母は着いてないみたいですねえ?」
やよい先生にそう言ったとき、駐車していたバスの陰からスルスルっと、母の白い車が近づいてきました。
「百合草先生。今日はうちの娘が、本当にお世話をおかけしてしまって・・・」
言いながら、母が運転席から降りてきました。
母は、白くて襟がヒラヒラしたブラウスの上に、ネイビーの薄手な秋物ジャケットを着て、下はジーンズでした。
大きな紙袋を手に持っています。
「森下さんのお母さま。ご無沙汰しています。あたしこそ、娘さんを遅くまでひき止めてしまって、申し訳ございません」
やよい先生がペコリとお辞儀します。
「いえ、いえ、いつもいつも直子がお世話になって・・・」
言いながら母が大きな紙袋をやよい先生に差し出しました。
「百合草先生が甘党か辛党か存じ上げないので、両方持ってきました。直子がお世話になったお礼です。シュークリームとワインなんですけど・・・」
「あら、あらためて考えるとちょっとヘンな組合せだったわね」
母が一人でボケて、ツッコンで、あははと笑っています。
「お帰りのとき、お荷物になっちゃって、ごめんなさいね」
「いえいえ、かえってお気を使わせてしまって、では、遠慮なくちょうだいいたします」
やよい先生がまたお辞儀をして、紙袋を受け取りました。
「それじゃあ森下さん。また来週、お教室でね。お母さま、ありがとうございました」
「はーい、先生。今日はごちそうさまでした」
「百合草先生、こちらこそ本当にありがとうございました」
3人でお辞儀合戦をした後、やよい先生は、右手を上に挙げてヒラヒラさせながら改札口に消えていきました。
車に乗り込んで、駅前の渋滞を抜けるまで、母と私は無言でした。
車がスイスイ滑り出してから、母が口を開きました。
「なおちゃん、今日は何をご馳走になったの?」
「うーんと、イタリアンかな。パスタとかサラダとか」
「美味しかった?」
「うん。トマトソースがすっごく美味しかった」
「それは、良かったねえ」
そこで少し沈黙がつづきました。
「それで、なおちゃんの悩みごとは、解決したの?」
「えっ?」
「あらー、ママだって、ここ数週間、なおちゃんがなんだか元気ないなあー、って気がついてたのよ?」
「何か悩みごとでもあるのかなー、って」
母が私のほうを向いて、ニッと笑いました。
「でも、もうどうしようもなくなったら、ママに言ってくるでしょう、って思って放っといたの」
「でも、なおちゃんは、百合草先生をご相談相手に選んだのね・・・」
「・・・ママ」
「ううん。誤解しないで。怒ってるんじゃないの、その逆よ。ママ嬉しいの」
「なおちゃんのまわりに、なおちゃんのことを心配してくれる、家族以外の人が増えていくのが、嬉しいの」
「なおちゃんにも、だんだんと自分の世界が出来ていくんだなー、って、ね」
「それで、百合草先生とお話して、その悩みは解決した?」
「うん。だいたいは・・・ううん、スッキリ!」
「そう。良かった。百合草先生、さまさまね」
「こないだいらっしゃった、なおちゃんのお友達も、ママ好きよ。みんな明るくて、素直そうで」
夏休み、8月の初め頃に、愛ちゃんたちのグループがみんな来て、私の家では初めて、お泊り会をしました。
お庭で花火をやったり、リビングでゲームをしたり、私の部屋でウワサ話大会したり。
ちょうど父も家にいて、家の中に女性が母も含めて7人もうろうろしているので、少しびびりながらも張り切っていたのが可笑しかったです。
愛ちゃんたちには、なおちゃんのお家すごーい、って冷やかされて、ちょっと恥ずかしかった。
「なおちゃんも、もうママにヒミツを持つ年頃になったのかー」
「これからどんどん、ヒミツが増えていくんだろうなー」
母は、運転しながら独り言にしては大きな声で、そんなことを言っています。
「百合草先生やお友達、大切にしなさいね」
信号待ちのとき、母が私のほうを向いて、真剣な顔で言いました。
「はいっ」
私も真剣に、大きな声で答えます。
車が走り出して、母の横顔を見つめていたら、少し寂しそうに見えたので、私は一つ、ヒミツを教えてあげることにしました。
「ねえ、ママ。私ママにヒミツ、一つだけ教えてあげる」
「あら、いいの?なになに?」
「あのね、私、夏休みに入る前の日にね、ラブレターもらっちゃった」
「あらー。スゴイわね、直接手渡されたの?」
「ううん。学校の靴箱に入ってたの」
「それはずいぶん古典的な人ね。それで?」
「でも私、今、そういうことに全然興味がないから、断っちゃった」
「あはは、そうなの。なおちゃんらしいわね」
母は、それ以上、どんな人だったの?とか、何て言って断ったの?とか追求しないで、ハンドルを握りながらニコニコしていました。
私はそれを見て、母はやっぱりカッコイイなあーって思いました。
「ありがと、ママ」
「どういたしまして。それより、ともちゃんが、直子おねーちゃんがお帰りになるまで起きてるー、ってがんばってたけど、もう、さすがに寝ちゃったかしら?早く帰ってあげましょう」
「うんっ!」
国道の信号が赤から青に変わり、先頭にいた母がアクセルを踏み込みました。
もうあと少しで我が家です。
フロントグラスの向こうに、左側が少し欠けている楕円形のお月さまが、明るく輝いていました。
*
*
*
トラウマと私 24
「それは、とても光栄なことね」
やよい先生も私の目をまっすぐに見ながら、魅力的に微笑んでくれました。
「それで、私、その週のバレエのレッスンのとき、すっごく先生を意識してしまって・・・ご迷惑をおかけしてしまって・・・」
「そういうことだったのね。なんだかずっとそわそわ、モジモジしてるから、どうしちゃったんだろ?この子、って思ってたのよ」
やよい先生がイタズラっぽく笑います。
「で、どんな風に、あたしとのソレ、想像したの?」
「そ、それは・・・」
私は、恥ずかしさで、もうどうしようもないくらい、からだが火照っていました。
乳首も痛いほど、アソコもショーツに貼り付いてしまっています。
「鏡に・・・鏡に向かって・・・自分のからだ映して・・・私の胸や、アソコを・・・先生の手で可愛がられてるって想像しながら・・・」
私は、自分で言っている言葉に、恥ずかしがりながらコーフンしていました。
「そう。それがすっごく気持ち良かったんだ・・・なおちゃん、カワイイわね」
やよい先生がえっちっぽく笑いかけてくれます。
私は、すっごく嬉しい気持ちになります。
オナニーをしたときとは別の種類の、心地よい快感がからだをじーんと駆け巡りました。
「先生、私、レズビアンになれるでしょうか?」
快感の余韻が収まるのを待って、私は、これ以上無理っていうくらい真剣な気持ちで、やよい先生に問いかけました。
「うーん・・・そんなに真剣な顔で聞かれてもねえ・・・」
やよい先生は、はぐらかすみたいにお顔を少し背けます。
ちょっと考える風に上を向いてから、また視線を私に戻しました。
「それじゃあ、なおちゃんは、お友達、たとえばあなたとすごく仲の良さそうな川上さんとかとも、そういうことしたいと思う?」
「いえ。それは考えてみたんですけど、そういう気持ちにはなれませんでした。もちろん愛ちゃんは大好きなお友達なんですけれど・・・」
「でも、あたしとならそうなってみたい?」
「はい・・・」
「それは、なおちゃんがあたしを大好きだから?」
「はい」
「ほら。つまりそういうことよ」
やよい先生が明るい声で言います。
私は、きょとん、です。
「なおちゃんがそうなってみたいと思った相手は、あたしだった。それで、あたしは女だった」
「その前に知らない男性にヒドイことされて、男性がイヤになっていたのもあるんだろうけど、なおちゃんは、あなたが大好きだと思った人、えっちな気持ち的に、したい、と思った人としか、そういうことはしたくないんでしょ?」
「はい・・・」
「それなら、別にレズビアンになる、ならないなんて考えないで、今まで通り、そういう気持ちのまま過ごしていけばいいのよ」
「大多数の人たちは普通、恋愛をする相手、セックスの相手は異性と考えている。でも、大好きになった人、したいと思った人が同性だったとしても別に何も悪いことじゃないの。たまたまそうなっちゃっただけ」
「なおちゃんがされたみたいな、自分の欲望のためだけに無理矢理、関係ない誰かをひどいメに合わせたり、カンタンに言うと痴漢とか強姦とか婦女暴行とか監禁とかのほうが、よっぽど非難されるべきことなの」
「だからあなたも今の気持ちのまま、男性が苦手なら苦手でいいから、大好きになれて、したいと思える人を探したほうがいいわ。レズビアンがどうとか特別に考えずに、ね」
「それに・・・」
「ひょっとしたら何年か先に、なおちゃんのアソコにピッタリなサイズのペニスを持った、やさしくてカッコイイ男の子が現われるかもしれないし、今は深刻に思えるそのトラウマも、ひょんなきっかけで治るかもしれない・・・」
そこまで言って、やよい先生はテーブル越しに両手を伸ばしてきて、私の両手をやんわり掴みました。
そのままテーブルの上で二人、両手を重ね合います。
私には、やよい先生が今、最後に言った言葉とは裏腹に、そのまま男性が苦手なままでいて、っていう私への願いを、無言で態度に表したような気がしました。
私の胸がドキンと高鳴ります。
「それでね・・・あたしは今、なおちゃんを抱いてあげることはできないの」
やよい先生は、私の手を取ったまま、声を落として言いました。
「今はちょっと喧嘩中だけど、あたしは今のパートナーが大好きだし、大切に思っているし、彼女とだけそういうことをしたいの」
「彼女は、あまり束縛するタイプではないけれど、今はやっぱり、彼女とだけそういうことをしたいの」
「それになおちゃん、今中二でしょ?中二って言うと何才だっけ?」
「14才です・・・」
私は、やよい先生の言葉にがっかりして、力なく答えます。
「14才なら、まだまだこの先たくさん、出会いがあるはずよ。女性とも男性とも」
「それで、なおちゃんが本当に大切に思える人ができたら、本格的にえっちな経験をするのは、そのとき・・・今よりもう少し大人になってからのほうがいいと思うの、なおちゃんのためにも」
「でも、今、私はやよい先生のこと、本当に大切に想ってるんです・・・」
小さな声でつぶやきました。
私は、あからさまにがっかりした顔をしていたんだと思います。
やよい先生がまた少し考えてから声のトーンを上げて、こんな言葉をつづけてくれました。
「それでね。正直言うと、あたしもなおちゃんには、興味があるの。あなたカワイイし、ほっとけないとこがあるから」
「だから、なおちゃんがもう少し大人になって・・・そうね、高校に入ったら・・・じゃあまだ早いか・・・高校2年て言うと17才?」
「・・・はい」
「高校2年になってもまだ、今と同じ気持ちがあったなら、そのときはあたしがお相手してあげる」
「本当ですかっ?」
私に少し元気が戻ってきました。
「うん。約束する。だから、しばらくの間は、あたしを、血のつながった本当のお姉さんだと思って、なんでも気軽に相談して」
「それにもちろん、オナニーのお相手としてなら、ご自由に使ってもらって結構よ。なおちゃんがあたしを想ってしてるんだなあ、って考えるとあたしもなんだかワクワクしちゃう」
やよい先生がえっちぽい顔になって言いました。
「だけどバレエのレッスンのときは、そんな素振り見せないでね。あたしもあくまで講師として接するから。今まで通り」
「あなた、バレエの素質、いいもの持っているんだから、ちゃんと真剣にやりなさい。真剣にやればかなりの線まで行けるはずよ」
「はいっ!」
私は、なんだか気持ちがスッキリしていました。
やよい先生とかなり親しい関係になれたことを、すごく嬉しく感じていました。
それに、考えてみればこうして、セックスやオナニーのことを実際に言葉に出して、誰かと話し合ったのも初めてのことです。
なんだか一歩、大人になった気がしていました。
私のヘンな性癖に関しては、やっぱり恥ずかしくって言えなかったけれど・・・
でもその上、あと数年したら、やよい先生が私のお相手をしてくれる、って約束までしてくれたんです。
自然と顔がほころんできます。
「やっと、なおちゃんに笑顔が戻ったわね」
やよい先生は、両手で私の手を握ったまま、ニッコリ笑いかけてくれます。
「今日の二人のデートは、あたしたちだけの秘密ね。あたしは、これからも、なおちゃんと二人きりのときだけ、あなたをなおちゃんって呼ぶ。バレエのときやみんながいるときは、今まで通り、森下さん。それでいいわね?」
「はい」
それからやよい先生は、目をつぶって、お芝居じみた声を作って、こんなことを言いました。
「美貌のバレエ講師と年の離れた可憐な生徒は、お互い惹かれ合っていた。講師には女性の恋人がいて、生徒は講師を想って自分を慰めている。それでも素知らぬ顔でみんなと一緒にレッスンに励む二人は、何年後かに結ばれる約束をしていたのであった・・・」
「なんちゃって、こうやって言葉にしてみると、このストーリーでレディコミかなんかで百合マンガの連載できそうじゃない?あたしたちって。なおちゃんも、オナニーのときに妄想、しやすいでしょ?」
やよい先生が笑いながらイジワルっぽく言います。
「もうー、やよい先生、イジワルですねー」
私は甘えた声を出して、やよい先生の手をぎゅっと握りました。
「あらー。もうこんな時間」
やよい先生は、私の手を握り返しながら、私が左手首にしている腕時計に目をやって、大きな声を出しました。
8時を少し回っていました。
「そろそろお母さまに電話したほうがいいんじゃない?」
「あ、はい」
私は、もっともっとやよい先生と一緒にいたい気持ちでしたが、そうもいきません。
やよい先生が差し出してくれたケータイを受け取って耳にあてました。
「30分後にバレエ教室側の駅前ロータリーで待ち合わせです」
母との電話を終わって、ケータイを返しながらやよい先生に告げました。
「じゃあ、あと20分くらいだいじょぶね」
その20分の間に、やよい先生がなぜレズビアンなのか、っていうお話を聞かせてもらいました。
誰にも言わない、っていう約束なので詳しくは書きませんが、やっぱり、ティーンの頃に男の人に嫌な経験をさせられたことも大きいようです。
「だからなおさら、あたしは、なおちゃんのことが気にかかるし、心配なの。遠慮せずになんでも相談してね」
やよい先生は、そう言ってくれました。
私は、やよい先生と出会えて、本当に良かったと心の底から思いました。
*
*トラウマと私 25へ
*
やよい先生も私の目をまっすぐに見ながら、魅力的に微笑んでくれました。
「それで、私、その週のバレエのレッスンのとき、すっごく先生を意識してしまって・・・ご迷惑をおかけしてしまって・・・」
「そういうことだったのね。なんだかずっとそわそわ、モジモジしてるから、どうしちゃったんだろ?この子、って思ってたのよ」
やよい先生がイタズラっぽく笑います。
「で、どんな風に、あたしとのソレ、想像したの?」
「そ、それは・・・」
私は、恥ずかしさで、もうどうしようもないくらい、からだが火照っていました。
乳首も痛いほど、アソコもショーツに貼り付いてしまっています。
「鏡に・・・鏡に向かって・・・自分のからだ映して・・・私の胸や、アソコを・・・先生の手で可愛がられてるって想像しながら・・・」
私は、自分で言っている言葉に、恥ずかしがりながらコーフンしていました。
「そう。それがすっごく気持ち良かったんだ・・・なおちゃん、カワイイわね」
やよい先生がえっちっぽく笑いかけてくれます。
私は、すっごく嬉しい気持ちになります。
オナニーをしたときとは別の種類の、心地よい快感がからだをじーんと駆け巡りました。
「先生、私、レズビアンになれるでしょうか?」
快感の余韻が収まるのを待って、私は、これ以上無理っていうくらい真剣な気持ちで、やよい先生に問いかけました。
「うーん・・・そんなに真剣な顔で聞かれてもねえ・・・」
やよい先生は、はぐらかすみたいにお顔を少し背けます。
ちょっと考える風に上を向いてから、また視線を私に戻しました。
「それじゃあ、なおちゃんは、お友達、たとえばあなたとすごく仲の良さそうな川上さんとかとも、そういうことしたいと思う?」
「いえ。それは考えてみたんですけど、そういう気持ちにはなれませんでした。もちろん愛ちゃんは大好きなお友達なんですけれど・・・」
「でも、あたしとならそうなってみたい?」
「はい・・・」
「それは、なおちゃんがあたしを大好きだから?」
「はい」
「ほら。つまりそういうことよ」
やよい先生が明るい声で言います。
私は、きょとん、です。
「なおちゃんがそうなってみたいと思った相手は、あたしだった。それで、あたしは女だった」
「その前に知らない男性にヒドイことされて、男性がイヤになっていたのもあるんだろうけど、なおちゃんは、あなたが大好きだと思った人、えっちな気持ち的に、したい、と思った人としか、そういうことはしたくないんでしょ?」
「はい・・・」
「それなら、別にレズビアンになる、ならないなんて考えないで、今まで通り、そういう気持ちのまま過ごしていけばいいのよ」
「大多数の人たちは普通、恋愛をする相手、セックスの相手は異性と考えている。でも、大好きになった人、したいと思った人が同性だったとしても別に何も悪いことじゃないの。たまたまそうなっちゃっただけ」
「なおちゃんがされたみたいな、自分の欲望のためだけに無理矢理、関係ない誰かをひどいメに合わせたり、カンタンに言うと痴漢とか強姦とか婦女暴行とか監禁とかのほうが、よっぽど非難されるべきことなの」
「だからあなたも今の気持ちのまま、男性が苦手なら苦手でいいから、大好きになれて、したいと思える人を探したほうがいいわ。レズビアンがどうとか特別に考えずに、ね」
「それに・・・」
「ひょっとしたら何年か先に、なおちゃんのアソコにピッタリなサイズのペニスを持った、やさしくてカッコイイ男の子が現われるかもしれないし、今は深刻に思えるそのトラウマも、ひょんなきっかけで治るかもしれない・・・」
そこまで言って、やよい先生はテーブル越しに両手を伸ばしてきて、私の両手をやんわり掴みました。
そのままテーブルの上で二人、両手を重ね合います。
私には、やよい先生が今、最後に言った言葉とは裏腹に、そのまま男性が苦手なままでいて、っていう私への願いを、無言で態度に表したような気がしました。
私の胸がドキンと高鳴ります。
「それでね・・・あたしは今、なおちゃんを抱いてあげることはできないの」
やよい先生は、私の手を取ったまま、声を落として言いました。
「今はちょっと喧嘩中だけど、あたしは今のパートナーが大好きだし、大切に思っているし、彼女とだけそういうことをしたいの」
「彼女は、あまり束縛するタイプではないけれど、今はやっぱり、彼女とだけそういうことをしたいの」
「それになおちゃん、今中二でしょ?中二って言うと何才だっけ?」
「14才です・・・」
私は、やよい先生の言葉にがっかりして、力なく答えます。
「14才なら、まだまだこの先たくさん、出会いがあるはずよ。女性とも男性とも」
「それで、なおちゃんが本当に大切に思える人ができたら、本格的にえっちな経験をするのは、そのとき・・・今よりもう少し大人になってからのほうがいいと思うの、なおちゃんのためにも」
「でも、今、私はやよい先生のこと、本当に大切に想ってるんです・・・」
小さな声でつぶやきました。
私は、あからさまにがっかりした顔をしていたんだと思います。
やよい先生がまた少し考えてから声のトーンを上げて、こんな言葉をつづけてくれました。
「それでね。正直言うと、あたしもなおちゃんには、興味があるの。あなたカワイイし、ほっとけないとこがあるから」
「だから、なおちゃんがもう少し大人になって・・・そうね、高校に入ったら・・・じゃあまだ早いか・・・高校2年て言うと17才?」
「・・・はい」
「高校2年になってもまだ、今と同じ気持ちがあったなら、そのときはあたしがお相手してあげる」
「本当ですかっ?」
私に少し元気が戻ってきました。
「うん。約束する。だから、しばらくの間は、あたしを、血のつながった本当のお姉さんだと思って、なんでも気軽に相談して」
「それにもちろん、オナニーのお相手としてなら、ご自由に使ってもらって結構よ。なおちゃんがあたしを想ってしてるんだなあ、って考えるとあたしもなんだかワクワクしちゃう」
やよい先生がえっちぽい顔になって言いました。
「だけどバレエのレッスンのときは、そんな素振り見せないでね。あたしもあくまで講師として接するから。今まで通り」
「あなた、バレエの素質、いいもの持っているんだから、ちゃんと真剣にやりなさい。真剣にやればかなりの線まで行けるはずよ」
「はいっ!」
私は、なんだか気持ちがスッキリしていました。
やよい先生とかなり親しい関係になれたことを、すごく嬉しく感じていました。
それに、考えてみればこうして、セックスやオナニーのことを実際に言葉に出して、誰かと話し合ったのも初めてのことです。
なんだか一歩、大人になった気がしていました。
私のヘンな性癖に関しては、やっぱり恥ずかしくって言えなかったけれど・・・
でもその上、あと数年したら、やよい先生が私のお相手をしてくれる、って約束までしてくれたんです。
自然と顔がほころんできます。
「やっと、なおちゃんに笑顔が戻ったわね」
やよい先生は、両手で私の手を握ったまま、ニッコリ笑いかけてくれます。
「今日の二人のデートは、あたしたちだけの秘密ね。あたしは、これからも、なおちゃんと二人きりのときだけ、あなたをなおちゃんって呼ぶ。バレエのときやみんながいるときは、今まで通り、森下さん。それでいいわね?」
「はい」
それからやよい先生は、目をつぶって、お芝居じみた声を作って、こんなことを言いました。
「美貌のバレエ講師と年の離れた可憐な生徒は、お互い惹かれ合っていた。講師には女性の恋人がいて、生徒は講師を想って自分を慰めている。それでも素知らぬ顔でみんなと一緒にレッスンに励む二人は、何年後かに結ばれる約束をしていたのであった・・・」
「なんちゃって、こうやって言葉にしてみると、このストーリーでレディコミかなんかで百合マンガの連載できそうじゃない?あたしたちって。なおちゃんも、オナニーのときに妄想、しやすいでしょ?」
やよい先生が笑いながらイジワルっぽく言います。
「もうー、やよい先生、イジワルですねー」
私は甘えた声を出して、やよい先生の手をぎゅっと握りました。
「あらー。もうこんな時間」
やよい先生は、私の手を握り返しながら、私が左手首にしている腕時計に目をやって、大きな声を出しました。
8時を少し回っていました。
「そろそろお母さまに電話したほうがいいんじゃない?」
「あ、はい」
私は、もっともっとやよい先生と一緒にいたい気持ちでしたが、そうもいきません。
やよい先生が差し出してくれたケータイを受け取って耳にあてました。
「30分後にバレエ教室側の駅前ロータリーで待ち合わせです」
母との電話を終わって、ケータイを返しながらやよい先生に告げました。
「じゃあ、あと20分くらいだいじょぶね」
その20分の間に、やよい先生がなぜレズビアンなのか、っていうお話を聞かせてもらいました。
誰にも言わない、っていう約束なので詳しくは書きませんが、やっぱり、ティーンの頃に男の人に嫌な経験をさせられたことも大きいようです。
「だからなおさら、あたしは、なおちゃんのことが気にかかるし、心配なの。遠慮せずになんでも相談してね」
やよい先生は、そう言ってくれました。
私は、やよい先生と出会えて、本当に良かったと心の底から思いました。
*
*トラウマと私 25へ
*
2010年11月20日
トラウマと私 23
「それで・・・」
私は、その後に何を言えばいいのかわからないほど、恥ずかしさに翻弄されていました。
顔中真っ赤になって、やよい先生のお顔を見ることも出来ず、うつむいています。
「えっと、それはつまり、じーこーいってこと?」
やよい先生がポツリと言います。
「G・・・?」
やよい先生がくれた言葉が理解できず、私はそっと顔を上げました。
やよい先生は、やわらかく笑って私を見ています。
「自分で慰める、って書いて自慰。自慰行為。俗に言うオナニーのことよ?」
やよい先生の好奇心に満ちた目が私の顔を見つめています。
コクンと小さくうなずいたとき、私の恥ずかしさは最高潮に達しました。
心臓がドクドク音をたてて跳ね回り、息苦しくなって、なぜだか下半身もジワっときました。
私、こんなことを話しているだけで、性的に感じてしまっています。
「へー。なおちゃんでもそういうことするんだ?」
「あなた、少し浮世離れしてるところ、あるから、そういうことにはあんまり興味ないのかと思ってた・・・」
私がどんどん身を縮こませてプルプルからだを震わせているのに気がついたのでしょう、やよい先生は、そこまで言うと言葉を止めて、テーブル越しに右腕を伸ばして、私の左肩を軽くポンっと叩きました。
「ごめんごめん。そんなに恥じ入らなくてもいいのよ。普通のことだし。あたしも小六の頃から、もうしてたもん」
その言葉を聞いて私は、おそるおそる顔を上げます。
「あたしの場合、きっかけは、よくある話だけど、鉄棒。あたしお転婆だったから、休み時間によく鉄棒で遊んでたの。スカートの裾をパンツの裾にたくしこんでさ・・・逆上がりとか」
やよい先生が懐かしそうに目を細めて話し始めました。
「ある日、なんかの拍子で鉄棒を跨いじゃったのね。足掛け前転かなんかやってたときだったかなあ?そしたらパンツ越しに鉄棒がアソコにグイっと食い込んできて、あはんっ、てなっちゃってさあ」
「それがすごく気持ち良くってね。休み時間、足掛け前転ばっかりやってた。隙を見ては両脚で鉄棒跨いで、そのままじっとしてるの。ヘンな子供よね」
やよい先生は、クスクス笑いながらワイングラスに口をつけました。
「それから、いろんな棒をアソコに擦り付けるのが好きになっちゃって。ほうきやモップの柄とかバトンとか手すりとか。今でも擦りつけオナニーは、好きよ」
ウフっと笑ったやよい先生は、すごくえっちそうでステキでした。
「なおちゃんは、どんなことがきっかけだったの?」
やよい先生が子供の頃のお話を聞かせてくれたおかげで、私も一時の激しい恥ずかしさが少し薄れて、お話しやすい雰囲気になっていました。
顔を上げて、やよい先生をじっと見て、話し始めます。
「私の場合は・・・」
正直にお話すれば、初潮が来る前から本で知識を仕入れていて、初潮が来るのを心待ちにしていた、となります。
でも、それはちょっと、あまりにもあからさまなので、
「えーっと、父のお部屋で偶然みつけてしまった、えっちな写真集を見たのが・・・」
どんな種類の写真だったのかは、やっぱり恥ずかしくて言えません。
「その写真を見てたらドキドキしてしまって、自然に手が・・・」
「ふーん。そういうのもよく聞く話よね」
どんな写真だったの?って聞かれたらどうしよう・・・
ちゃんとお答えしなくちゃ・・・
どぎまぎしている私の予想とは裏腹に、
「それで、なおちゃんは、ちゃんと最後まで・・・」
やよい先生がそこまで言ってから急に言葉を切って、お水を一口飲みました。
「まあ、それは後で聞くことにして、話を進めましょう。えーっと、夏休みの出来事で男性のアレが怖くなって、オナニーができなくなった、っていうところまでよね?」
「は、はい・・・それで・・・」
「自分で自分のからだをさわっていても、あのときの感触を思い出してしまって、全然ダメで・・・」
「私、そういうことするときは、誰か女の人にさわってもらうのを想像することが多いんですけど、誰を想像してもあのときのイヤな感触になってしまって・・・」
「頭の中は、稲妻に映し出されたグロテスクな場面に支配されてしまって・・・」
まだ私は、オナニー、という言葉を実際に口に出すことが恥ずかしくって、できません。
「ああ、なおちゃん。そういうのって、トラウマ、っていうのよ」
「虎・・・?馬・・・?」
「心的外傷。心の傷ね。何か衝撃的なことを見たり、体験したりして精神的なショックを受けちゃって、それがずーっと心に傷となって残っちゃうこと。重い人は診察やお薬とかも必要みたい。そのことについてあんまり考えすぎないようにするのが一番らしいけど、それって難しいわよね・・・」
やよい先生は、最後のほう、しんみりとした口調でした。
やよい先生にも何か、そういう体験、あるのかしら?
「で、それで?」
少しの沈黙の後、やよい先生がまたニッコリ笑って先を促しました。
「あ、はい。それで、そんなときにお友達から、先生の・・・やよい先生と誰か女の人とのお話、さっき言ったお話を聞かされて・・・」
私はまた、どきどきが激しくなってきます。
とうとう告げるときがやってきました。
お水を一口飲んで、気持ちを落ち着けようと努力します。
「わ、私・・・私、やよい先生のこと・・・、ずっと前から・・・だ、大好きだから・・・」
小声で途切れ途切れに、やっとそう言いました。
やよい先生は、薄く笑みを浮かべながら真剣に聞いてくださっています。
私は、これではいけないと思いました。
もっとはっきり、ちゃんと伝えよう。
「私、やよい先生のこと大好きなんです。だから、やよい先生とそういうことをしてるって想像しながら、やってみたんです・・・オ、オナニー・・・を」
やよい先生の目をまっすぐに見て、勇気を振り絞って言いました。
オナニー、っていう言葉を口にしたとき、またアソコの奥からヌルっときました。
やよい先生のお顔が、一瞬固まってから、パっと嬉しそうな笑顔に変わったように見えたのは、私の贔屓目でしょうか。
「それで、そしたら、すっごくうまくいったんです」
「あのイヤな場面も全然思い出さずにすんで、ちゃんと最後まで出来て」
「それで、すっごく気持ち良かったんですっ!」
「本当に本当に気持ち良かったんですっ!」
たたみこむように一気に言いました。
私は、やよい先生の目を懇願するように、媚びるように、訴えるようにじーっと見つめます。
どうか私を受け入れてください・・・
どうか私を嫌わないでください・・・
どうか私の願いを叶えてください・・・
*
*トラウマと私 24へ
*
私は、その後に何を言えばいいのかわからないほど、恥ずかしさに翻弄されていました。
顔中真っ赤になって、やよい先生のお顔を見ることも出来ず、うつむいています。
「えっと、それはつまり、じーこーいってこと?」
やよい先生がポツリと言います。
「G・・・?」
やよい先生がくれた言葉が理解できず、私はそっと顔を上げました。
やよい先生は、やわらかく笑って私を見ています。
「自分で慰める、って書いて自慰。自慰行為。俗に言うオナニーのことよ?」
やよい先生の好奇心に満ちた目が私の顔を見つめています。
コクンと小さくうなずいたとき、私の恥ずかしさは最高潮に達しました。
心臓がドクドク音をたてて跳ね回り、息苦しくなって、なぜだか下半身もジワっときました。
私、こんなことを話しているだけで、性的に感じてしまっています。
「へー。なおちゃんでもそういうことするんだ?」
「あなた、少し浮世離れしてるところ、あるから、そういうことにはあんまり興味ないのかと思ってた・・・」
私がどんどん身を縮こませてプルプルからだを震わせているのに気がついたのでしょう、やよい先生は、そこまで言うと言葉を止めて、テーブル越しに右腕を伸ばして、私の左肩を軽くポンっと叩きました。
「ごめんごめん。そんなに恥じ入らなくてもいいのよ。普通のことだし。あたしも小六の頃から、もうしてたもん」
その言葉を聞いて私は、おそるおそる顔を上げます。
「あたしの場合、きっかけは、よくある話だけど、鉄棒。あたしお転婆だったから、休み時間によく鉄棒で遊んでたの。スカートの裾をパンツの裾にたくしこんでさ・・・逆上がりとか」
やよい先生が懐かしそうに目を細めて話し始めました。
「ある日、なんかの拍子で鉄棒を跨いじゃったのね。足掛け前転かなんかやってたときだったかなあ?そしたらパンツ越しに鉄棒がアソコにグイっと食い込んできて、あはんっ、てなっちゃってさあ」
「それがすごく気持ち良くってね。休み時間、足掛け前転ばっかりやってた。隙を見ては両脚で鉄棒跨いで、そのままじっとしてるの。ヘンな子供よね」
やよい先生は、クスクス笑いながらワイングラスに口をつけました。
「それから、いろんな棒をアソコに擦り付けるのが好きになっちゃって。ほうきやモップの柄とかバトンとか手すりとか。今でも擦りつけオナニーは、好きよ」
ウフっと笑ったやよい先生は、すごくえっちそうでステキでした。
「なおちゃんは、どんなことがきっかけだったの?」
やよい先生が子供の頃のお話を聞かせてくれたおかげで、私も一時の激しい恥ずかしさが少し薄れて、お話しやすい雰囲気になっていました。
顔を上げて、やよい先生をじっと見て、話し始めます。
「私の場合は・・・」
正直にお話すれば、初潮が来る前から本で知識を仕入れていて、初潮が来るのを心待ちにしていた、となります。
でも、それはちょっと、あまりにもあからさまなので、
「えーっと、父のお部屋で偶然みつけてしまった、えっちな写真集を見たのが・・・」
どんな種類の写真だったのかは、やっぱり恥ずかしくて言えません。
「その写真を見てたらドキドキしてしまって、自然に手が・・・」
「ふーん。そういうのもよく聞く話よね」
どんな写真だったの?って聞かれたらどうしよう・・・
ちゃんとお答えしなくちゃ・・・
どぎまぎしている私の予想とは裏腹に、
「それで、なおちゃんは、ちゃんと最後まで・・・」
やよい先生がそこまで言ってから急に言葉を切って、お水を一口飲みました。
「まあ、それは後で聞くことにして、話を進めましょう。えーっと、夏休みの出来事で男性のアレが怖くなって、オナニーができなくなった、っていうところまでよね?」
「は、はい・・・それで・・・」
「自分で自分のからだをさわっていても、あのときの感触を思い出してしまって、全然ダメで・・・」
「私、そういうことするときは、誰か女の人にさわってもらうのを想像することが多いんですけど、誰を想像してもあのときのイヤな感触になってしまって・・・」
「頭の中は、稲妻に映し出されたグロテスクな場面に支配されてしまって・・・」
まだ私は、オナニー、という言葉を実際に口に出すことが恥ずかしくって、できません。
「ああ、なおちゃん。そういうのって、トラウマ、っていうのよ」
「虎・・・?馬・・・?」
「心的外傷。心の傷ね。何か衝撃的なことを見たり、体験したりして精神的なショックを受けちゃって、それがずーっと心に傷となって残っちゃうこと。重い人は診察やお薬とかも必要みたい。そのことについてあんまり考えすぎないようにするのが一番らしいけど、それって難しいわよね・・・」
やよい先生は、最後のほう、しんみりとした口調でした。
やよい先生にも何か、そういう体験、あるのかしら?
「で、それで?」
少しの沈黙の後、やよい先生がまたニッコリ笑って先を促しました。
「あ、はい。それで、そんなときにお友達から、先生の・・・やよい先生と誰か女の人とのお話、さっき言ったお話を聞かされて・・・」
私はまた、どきどきが激しくなってきます。
とうとう告げるときがやってきました。
お水を一口飲んで、気持ちを落ち着けようと努力します。
「わ、私・・・私、やよい先生のこと・・・、ずっと前から・・・だ、大好きだから・・・」
小声で途切れ途切れに、やっとそう言いました。
やよい先生は、薄く笑みを浮かべながら真剣に聞いてくださっています。
私は、これではいけないと思いました。
もっとはっきり、ちゃんと伝えよう。
「私、やよい先生のこと大好きなんです。だから、やよい先生とそういうことをしてるって想像しながら、やってみたんです・・・オ、オナニー・・・を」
やよい先生の目をまっすぐに見て、勇気を振り絞って言いました。
オナニー、っていう言葉を口にしたとき、またアソコの奥からヌルっときました。
やよい先生のお顔が、一瞬固まってから、パっと嬉しそうな笑顔に変わったように見えたのは、私の贔屓目でしょうか。
「それで、そしたら、すっごくうまくいったんです」
「あのイヤな場面も全然思い出さずにすんで、ちゃんと最後まで出来て」
「それで、すっごく気持ち良かったんですっ!」
「本当に本当に気持ち良かったんですっ!」
たたみこむように一気に言いました。
私は、やよい先生の目を懇願するように、媚びるように、訴えるようにじーっと見つめます。
どうか私を受け入れてください・・・
どうか私を嫌わないでください・・・
どうか私の願いを叶えてください・・・
*
*トラウマと私 24へ
*
2010年11月14日
トラウマと私 22
やがて、お料理が次々と運ばれてきました。
そのたびに、やよい先生が小皿に取り分けてくれています。
自分では、あまりお腹が空いていないと思っていたのですが、サラダのドレッシングとパスタのトマトソースがすっごく美味しくて、意外にぱくぱく、たくさん食べてしまいました。
お食事の間は、バレエの技術や好きな曲のことを話題にしていました。
メインのお料理があらかた片付いて、二人でフーっと一息つきました。
やよい先生は、お食事をしながらワインを2杯くらい飲んでいましたが、顔が赤くなったり、酔っ払った素振りは全然ありません。
「森下さんって、お母さまからは、なおちゃん、って呼ばれてるのねえ。さっき電話したとき、聞いちゃった」
トイレに立って、戻ってきたやよい先生が自分でデカンタからワインを注ぎながら突然、言いました。
「・・・は、はい」
私はまたちょっと、恥ずかしい感じです。
「あたしもそう呼んでいい?」
やよい先生がまた、冷やかすみたいに笑いながら言います。
「はい・・・いいですけど・・・」
私の頬が急激に染まってしまいます。
「それじゃあ、なおちゃん。さっきの話のつづきを聞かせて。あたしがレズなことと、なおちゃんの悩みとの関係」
「あ、はい・・・えーと、それでですね・・・」
私は、夏休み後半の父の実家での出来事をお話することにしました。
あの出来事を真剣に思い出すのは、久しぶりのことでした。
忘れよう、忘れようとして、うまくいきかけていた時期でしたから。
それでも、私がいかに怖かったかをちゃんと理解してもらおうと、ありったけの勇気を振り絞って、思い出しながらお話しました。
「なるほどねー。とんだ災難だったわねえ」
私の話を黙って真剣に聞いていてくれたやよい先生は、深刻な感じでそう言ってくれました。
「それで、なおちゃんは男性が苦手に思うようになっちゃった、と。どうやら本当にレズビアンにつながりそうね」
少し明るめな声でそう言ったやよい先生は、私をまっすぐに見つめて言葉をつづけます。
「でもね。話を進める前に、今の話について一つだけ、なおちゃんに言っておきたいことがある」
やよい先生の口調が少し恐い感じです。
「はい?」
私は姿勢を正して、やよい先生を見つめます。
「そのバカな男が逃げ出した後、なおちゃんは、すぐにお母さまなり、お父さまなりに言いつけて大騒ぎにするべきだったのよ」
「そりゃあ、そんなことがあったら、なおちゃんは気が動転しているだろうし、恥ずかしさもあるしで泣き寝入りしちゃうのもわからないではないけどね」
「でもそれは、結局一番悪いことなのよ。どうしてかわかる?」
やよい先生の真剣な口調に、私はお説教をされているみたいに感じて、うなだれてしまいます。
「あ、ごめん。別に怒っているわけじゃないのよ」
やよい先生があわてて笑顔になります。
「ただね、なおちゃんならたぶんわかってくれると思うからさ」
「つまりね、そこでその男に何の負い目も背負わさずに逃がしちゃうと、次また絶対どこかで同じことするのよ、そのバカが」
「それで、また誰か別の女の子がひどい目にあっちゃう可能性が生まれるワケ」
「そのときに大騒ぎになれば、たとえそいつが捕まらなかったとしても、騒ぎになったっていう記憶がそのバカの頭にも残るから、ちょっとはそいつも反省するかもしれないし、次の犯行を躊躇するかもしれないでしょ?」
「ノーリスクで逃がしちゃうと、味を占めちゃって、つけあがって、また同じようなことをするの。バカだから。あたしの経験から言えば100パーセント!」
やよい先生は、まるで自分が被害にあったみたいに真剣に憤っています。
私は、やっぱりやよい先生は、からだも心もカッコイイなあ、ってうつむきながらも考えていました。
「なおちゃんのケースは、もう流れが出来ちゃってるから今さら騒ぎにしてもしょうがないけど、もし、万が一、また同じようなメにあうようなことになったら、そのときは絶対泣き寝入りしないでね。盛大に騒ぎ立てて。他の女性のためにもね。なおちゃんならできるでしょ?」
うつむいている私の顔を覗き込むようにして、やさしい笑顔を投げてくれます。
「はいっ!」
私は、その笑顔を見て、今度からは絶対そうしようと心に決めました。
「よしよし。いい子だ」
やよい先生が目を細めて、右腕を伸ばして、私の頭を軽く撫ぜ撫ぜしてくれました。
ひょっとするとやよい先生、やっぱり少し酔ってきているのかもしれません。
「まあ、今さら蒸し返してご両親に言う必要はないけれど、もしもまた、お父さまのご実家になおちゃんも行かなくてはならないときがあったら、行く前にその出来事のこと、ちゃんと言ったほうがいいわね」
やよい先生は、この話題を締めくくるみたいにそう言って、ワインではなくお水をクイっと飲みました。
少しの沈黙の後、やよい先生は片腕で頬杖ついて、好奇心に満ちた思わせぶりな目つきで私を見ながら、唇を動かしました。
「それでつまり、その出来事でなおちゃんは男性が怖いと思うようになって、レズビアンに興味を持った、っていうこと?」
お酒のせいか、目元がほんのり色っぽくなったやよい先生にじっと見つめられて、どぎまぎしてしまいます。
「えーと、まあ、そうなんですけど、まだつづきがあるんです・・・」
ここからが私の本当の、やよい先生への告白、になります。
私の胸のどきどきが急激に早くなってきました。
残っていたジンジャーエールを一口飲んで大きくフーっと息を吐き、意を決して話し始めます。
「それで・・・夏休みが終わった頃は、その出来事のショックで落ち込んでいたんですけど、そのうち・・・」
「そのうち私、できなくなっちゃってることに気がついたんです・・・えーっと・・・」
私は、やよい先生に向けて、オナニー、という言葉を口に出すことが、どうしてもできませんでした。
その言葉を告げるのが、すっごく恥ずかしくって、はしたなくて・・・
でも、それをちゃんと告げないと、お話が先に進みません。
やよい先生は、また黙って、じっと私の次の言葉を待っています。
「私・・・自分のからだをさわって・・・気持ち良くなること・・・知ってたんです・・・」
「いろいろさわって、気持ち良くなること・・・でも、あの出来事で、それが・・・それができなくなって・・・」
私の耳たぶが、さわったら火傷しそうなくらいに熱くなってくるのが自分でもわかります。
身悶えするような恥ずかしさ・・・
いいえ、実際私のからだは、微かにですが、こまかくプルプル震えていました。
ブラの下で両乳首が少しずつ起き上がって、尖っていくのも感じていました。
*
*トラウマと私 23へ
*
そのたびに、やよい先生が小皿に取り分けてくれています。
自分では、あまりお腹が空いていないと思っていたのですが、サラダのドレッシングとパスタのトマトソースがすっごく美味しくて、意外にぱくぱく、たくさん食べてしまいました。
お食事の間は、バレエの技術や好きな曲のことを話題にしていました。
メインのお料理があらかた片付いて、二人でフーっと一息つきました。
やよい先生は、お食事をしながらワインを2杯くらい飲んでいましたが、顔が赤くなったり、酔っ払った素振りは全然ありません。
「森下さんって、お母さまからは、なおちゃん、って呼ばれてるのねえ。さっき電話したとき、聞いちゃった」
トイレに立って、戻ってきたやよい先生が自分でデカンタからワインを注ぎながら突然、言いました。
「・・・は、はい」
私はまたちょっと、恥ずかしい感じです。
「あたしもそう呼んでいい?」
やよい先生がまた、冷やかすみたいに笑いながら言います。
「はい・・・いいですけど・・・」
私の頬が急激に染まってしまいます。
「それじゃあ、なおちゃん。さっきの話のつづきを聞かせて。あたしがレズなことと、なおちゃんの悩みとの関係」
「あ、はい・・・えーと、それでですね・・・」
私は、夏休み後半の父の実家での出来事をお話することにしました。
あの出来事を真剣に思い出すのは、久しぶりのことでした。
忘れよう、忘れようとして、うまくいきかけていた時期でしたから。
それでも、私がいかに怖かったかをちゃんと理解してもらおうと、ありったけの勇気を振り絞って、思い出しながらお話しました。
「なるほどねー。とんだ災難だったわねえ」
私の話を黙って真剣に聞いていてくれたやよい先生は、深刻な感じでそう言ってくれました。
「それで、なおちゃんは男性が苦手に思うようになっちゃった、と。どうやら本当にレズビアンにつながりそうね」
少し明るめな声でそう言ったやよい先生は、私をまっすぐに見つめて言葉をつづけます。
「でもね。話を進める前に、今の話について一つだけ、なおちゃんに言っておきたいことがある」
やよい先生の口調が少し恐い感じです。
「はい?」
私は姿勢を正して、やよい先生を見つめます。
「そのバカな男が逃げ出した後、なおちゃんは、すぐにお母さまなり、お父さまなりに言いつけて大騒ぎにするべきだったのよ」
「そりゃあ、そんなことがあったら、なおちゃんは気が動転しているだろうし、恥ずかしさもあるしで泣き寝入りしちゃうのもわからないではないけどね」
「でもそれは、結局一番悪いことなのよ。どうしてかわかる?」
やよい先生の真剣な口調に、私はお説教をされているみたいに感じて、うなだれてしまいます。
「あ、ごめん。別に怒っているわけじゃないのよ」
やよい先生があわてて笑顔になります。
「ただね、なおちゃんならたぶんわかってくれると思うからさ」
「つまりね、そこでその男に何の負い目も背負わさずに逃がしちゃうと、次また絶対どこかで同じことするのよ、そのバカが」
「それで、また誰か別の女の子がひどい目にあっちゃう可能性が生まれるワケ」
「そのときに大騒ぎになれば、たとえそいつが捕まらなかったとしても、騒ぎになったっていう記憶がそのバカの頭にも残るから、ちょっとはそいつも反省するかもしれないし、次の犯行を躊躇するかもしれないでしょ?」
「ノーリスクで逃がしちゃうと、味を占めちゃって、つけあがって、また同じようなことをするの。バカだから。あたしの経験から言えば100パーセント!」
やよい先生は、まるで自分が被害にあったみたいに真剣に憤っています。
私は、やっぱりやよい先生は、からだも心もカッコイイなあ、ってうつむきながらも考えていました。
「なおちゃんのケースは、もう流れが出来ちゃってるから今さら騒ぎにしてもしょうがないけど、もし、万が一、また同じようなメにあうようなことになったら、そのときは絶対泣き寝入りしないでね。盛大に騒ぎ立てて。他の女性のためにもね。なおちゃんならできるでしょ?」
うつむいている私の顔を覗き込むようにして、やさしい笑顔を投げてくれます。
「はいっ!」
私は、その笑顔を見て、今度からは絶対そうしようと心に決めました。
「よしよし。いい子だ」
やよい先生が目を細めて、右腕を伸ばして、私の頭を軽く撫ぜ撫ぜしてくれました。
ひょっとするとやよい先生、やっぱり少し酔ってきているのかもしれません。
「まあ、今さら蒸し返してご両親に言う必要はないけれど、もしもまた、お父さまのご実家になおちゃんも行かなくてはならないときがあったら、行く前にその出来事のこと、ちゃんと言ったほうがいいわね」
やよい先生は、この話題を締めくくるみたいにそう言って、ワインではなくお水をクイっと飲みました。
少しの沈黙の後、やよい先生は片腕で頬杖ついて、好奇心に満ちた思わせぶりな目つきで私を見ながら、唇を動かしました。
「それでつまり、その出来事でなおちゃんは男性が怖いと思うようになって、レズビアンに興味を持った、っていうこと?」
お酒のせいか、目元がほんのり色っぽくなったやよい先生にじっと見つめられて、どぎまぎしてしまいます。
「えーと、まあ、そうなんですけど、まだつづきがあるんです・・・」
ここからが私の本当の、やよい先生への告白、になります。
私の胸のどきどきが急激に早くなってきました。
残っていたジンジャーエールを一口飲んで大きくフーっと息を吐き、意を決して話し始めます。
「それで・・・夏休みが終わった頃は、その出来事のショックで落ち込んでいたんですけど、そのうち・・・」
「そのうち私、できなくなっちゃってることに気がついたんです・・・えーっと・・・」
私は、やよい先生に向けて、オナニー、という言葉を口に出すことが、どうしてもできませんでした。
その言葉を告げるのが、すっごく恥ずかしくって、はしたなくて・・・
でも、それをちゃんと告げないと、お話が先に進みません。
やよい先生は、また黙って、じっと私の次の言葉を待っています。
「私・・・自分のからだをさわって・・・気持ち良くなること・・・知ってたんです・・・」
「いろいろさわって、気持ち良くなること・・・でも、あの出来事で、それが・・・それができなくなって・・・」
私の耳たぶが、さわったら火傷しそうなくらいに熱くなってくるのが自分でもわかります。
身悶えするような恥ずかしさ・・・
いいえ、実際私のからだは、微かにですが、こまかくプルプル震えていました。
ブラの下で両乳首が少しずつ起き上がって、尖っていくのも感じていました。
*
*トラウマと私 23へ
*
2010年11月13日
トラウマと私 21
やよい先生が口元まで持っていっていた、ケーキの欠片を刺したフォークが空中で止まりました。
「えっ?」
私の顔をまじまじと見つめながら、やよい先生がかすかに首をかしげます。
「あ、ご、ごめんなさいっ!突然すごく失礼なことを聞いてしまって、ごめんなさい、ごめんなさいっ!」
私は、あわてて何度もペコペコお辞儀しながら、必死に謝ります。
やよい先生を怒らせちゃったかな・・・・
うつむいている私は、上目使いでおそるおそるやよい先生を見てみました。
やよい先生は、止まっていたフォークをゆっくりと口の中に運び、しばらくモグモグした後、フォークをお皿に置いてニッコリ微笑みました。
「あなたが謝る必要は無いわよ。いきなり思いがけないことを聞かれたから、少しビックリしただけ」
「失礼なこと、でもないわ。だって、それは本当のことだから。答えはイエスよ」
やよい先生は、そう言うと私に向かってパチンとウインクしました。
「でも、森下さん?あなた、誰にそれ、聞いてきたの?」
「は、はい・・・それは・・・」
私は、曽根っちから聞いたお話をほとんどそのままやよい先生にお話しました。
「なるほど。そういうワケだったのね。ナカソネさんね、覚えてる。あの子もけっこうスジ良かったけど・・・そう、今はレイヤーやってるの・・・」
懐かしそうに遠くを見る目付きになっています。
「それで、川上さんが、みんなに広めないように、って言ってくれたのね。あの子もいい子よね。あなたとずいぶん仲がいいみたいだけど・・・」
「でもね、あたしは別に隠すつもりもないの。まあ、かと言って自分からみんなに宣伝することでもないけどさ」
やよい先生がクスっと笑いました。
「そのとき一緒にいたのは、今のところあたしが一番大好きなツレ。でも先週いろいろあって、今ちょっと喧嘩中・・・」
やよい先生のお顔がちょっぴり曇ります。
やよい先生は、コーヒーを一口啜ると、あらためて私の顔をまっすぐに見つめてきます。
「だけど、私がビアンなことが、あなたの悩みに何か関係あるの?」
少し眉根にシワを作って怪訝そうなお顔です。
私は、そのお顔を見て、ズキュンと感じてしまいました。
すごくセクシーなんです。
「あ、は、はい・・・いろいろと関係していて、そのお話はまだまだ入口のところなんです・・・うまくご説明できるかわからないんですけど・・・」
なぜだかうろたえてしまった私は、すがるようにやよい先生を見つめてしまいます。
「ふーん。長い話になりそうね・・・」
やよい先生は、しばらく宙を見つめて何か考えるような素振りでした。
「ねえ?あなた、門限あるの?」
何かを思いついたらしく、一回うなずいてから、やよい先生が明るい声で問いかけてきました。
「えーと、とくには決まってません・・・バレエの日なら、7時くらいまでには帰ってますけど・・・」
「森下さんのお母さま、あたしも何度かお会いしたけど、やさしそうなかたよね?」
「はい・・・」
「あなたのお母さま、話がわかるほう?」
「えっ?うーんと、そう・・・そうだと思いますけど・・・」
「あなたの家の電話番号教えて」
私は、何をするつもりなんだろう?と思いながらも、家の電話番号を教えました。
やよい先生は、私が数字を告げるのと同時に自分のケータイのボタンを押していきます。
最後の数字を押し終えると、ケータイを自分の耳にあてて立ち上がり、スタスタとお店の入口のほうに歩いて行きました。
席に一人、取り残された私は、ワケがわからず、疑問符をたくさん頭の上に浮かべたまま、半分になったケーキをつついていました。
三分くらい経って、やよい先生がテーブルに戻ってきました。
「交渉成立。あなたと夕食一緒に食べに行っていいって、あなたのお母さまにお許しをいただいたわ。次の課題曲を決めるんで、少し込み入った話になるから、って嘘ついちゃったけど」
やよい先生は、ニコニコしながら私の前に座り直して、コップのお水をクイっと飲み干しました。
「さあ、あなたもそのケーキ食べちゃって。そしたら、このお店出て、あたしのお気に入りのお店に連れていってあげる。そこでゆっくりお話しましょ」
「あ、それから、ここ出たら、あなたからもお家のほうに電話入れるようにって。あなたのお母さま、キレイな声してるわね」
やよい先生、なんだかすごく楽しそうです。
私は、残りのケーキをモグモグと大急ぎで口に入れ、冷めたレモンティーで流し込みました。
お店から出ると、やよい先生がちょこっとケータイを操作してから私に渡してくれました。
私はそれを耳にあてて、やよい先生から少し離れます。
母は、やよい先生にご迷惑をおかけしないように、ってしつこく言ってから電話を切りました。
「お母さま、何だって?」
「はい。帰るときになったらもう一度電話しなさいって。今日はホームキーパーの人が来ているので家を空けられるから、帰りは、母が駅まで車で迎えに来てくれるみたいです。それから、先生にくれぐれもよろしく、とのことです」
「ふーん。森下さん、大事にされてるねえ」
やよい先生が冷やかすみたいに笑って言います。
私は少し恥ずかしい感じです。
やよい先生が連れて行ってくれたのは、バレエ教室があるほうとは駅を挟んで反対側の出口のそば、大きな雑居ビルの地下にある、洋風の居酒屋さんみたいなお店でした。
「うーん。さすがにそのブレザーじゃちょっとマズイかなあー」
お店の入口を通り越して立ち止まり、やよい先生が学校の制服姿の私を見てそう言ってから、自分のバッグの中をがさごそしています。
取り出したのは、薄でのまっ白いロングパーカーでした。
うっすらと何かローズ系のパフュームのいい香りがします。
「そのブレザーは脱いで手に持って、このパーカーを着てちょうだい。それと、もちろん、あなたにはお酒、飲ませないからね」
やよい先生は、私が着替えるのを待って、お店のドアを開けました。
「このお店はね、個室みたいに各テーブルが完全に仕切られているから、内緒な話にはうってつけなのよ。それとラブラブなカップルにもね」
席に案内されるのを待つ間、やよい先生が私の耳に唇を近づけて、こっそりという感じで教えてくれました。
やよい先生の息が私の耳をくすぐって、ゾクゾクっと感じてしまいます。
メイド服っぽいカワイイ制服を着たウェイトレスさんに案内された席は、四人用らしくゆったりしていて、三方が壁で仕切られていて、入口の横開きの戸をぴったり閉めてしまえば完全に個室になります。
ウェイトレスさんを呼ぶときは、テーブルに付いているチャイムを押せばいいみたいで、これなら確かに誰にも邪魔されずにゆっくりできます。
「このお店はね、けっこう本格的なイタリアンなの。何か食べたいもの、ある?」
メニューを熱心に見ていたやよい先生が、メニューから顔を上げずに、もの珍しそうにまわりをキョロキョロしている私に声をかけてきます。
「いいえ、こういうとこ初めてなんで、先生にお任せします」
「あなた、何か食べられないものとかは、ある?」
「あ、いえ、なんでもだいじょうぶです」
「それなら、あたしがテキトーに選んじゃうわよ」
やよい先生はチャイムを押して、現われたウェイトレスさんに、サラダとスープとパスタとあと何かおつまみみたいなものをテキパキと注文していました。
ウェイトレスさんが去って、私とやよい先生は二人きり、テーブルを挟んで向き合います。
「先生は、このお店、よく来られるんですか?」
「よく、ってほどじゃないけどね。他の先生たちとたまあにね。こうして座っちゃえばもう、まわりを気にしないでいいし、あたしは気に入ってるんだ。味もいいほうだと思うよ」
そんなことを話していると、戸がトントンとノックされ、さっきのウェイトレスさんが飲み物を持ってきてくれました。
やよい先生は白ワインをデカンタで、私はジンジャーエールです。
「はい、それじゃあとりあえずお疲れさま。カンパーイ」
やよい先生のワイングラスと私のカットグラスが軽く触れ合って、チーンという音が室内に響きました。
*
*トラウマと私 22へ
*
「えっ?」
私の顔をまじまじと見つめながら、やよい先生がかすかに首をかしげます。
「あ、ご、ごめんなさいっ!突然すごく失礼なことを聞いてしまって、ごめんなさい、ごめんなさいっ!」
私は、あわてて何度もペコペコお辞儀しながら、必死に謝ります。
やよい先生を怒らせちゃったかな・・・・
うつむいている私は、上目使いでおそるおそるやよい先生を見てみました。
やよい先生は、止まっていたフォークをゆっくりと口の中に運び、しばらくモグモグした後、フォークをお皿に置いてニッコリ微笑みました。
「あなたが謝る必要は無いわよ。いきなり思いがけないことを聞かれたから、少しビックリしただけ」
「失礼なこと、でもないわ。だって、それは本当のことだから。答えはイエスよ」
やよい先生は、そう言うと私に向かってパチンとウインクしました。
「でも、森下さん?あなた、誰にそれ、聞いてきたの?」
「は、はい・・・それは・・・」
私は、曽根っちから聞いたお話をほとんどそのままやよい先生にお話しました。
「なるほど。そういうワケだったのね。ナカソネさんね、覚えてる。あの子もけっこうスジ良かったけど・・・そう、今はレイヤーやってるの・・・」
懐かしそうに遠くを見る目付きになっています。
「それで、川上さんが、みんなに広めないように、って言ってくれたのね。あの子もいい子よね。あなたとずいぶん仲がいいみたいだけど・・・」
「でもね、あたしは別に隠すつもりもないの。まあ、かと言って自分からみんなに宣伝することでもないけどさ」
やよい先生がクスっと笑いました。
「そのとき一緒にいたのは、今のところあたしが一番大好きなツレ。でも先週いろいろあって、今ちょっと喧嘩中・・・」
やよい先生のお顔がちょっぴり曇ります。
やよい先生は、コーヒーを一口啜ると、あらためて私の顔をまっすぐに見つめてきます。
「だけど、私がビアンなことが、あなたの悩みに何か関係あるの?」
少し眉根にシワを作って怪訝そうなお顔です。
私は、そのお顔を見て、ズキュンと感じてしまいました。
すごくセクシーなんです。
「あ、は、はい・・・いろいろと関係していて、そのお話はまだまだ入口のところなんです・・・うまくご説明できるかわからないんですけど・・・」
なぜだかうろたえてしまった私は、すがるようにやよい先生を見つめてしまいます。
「ふーん。長い話になりそうね・・・」
やよい先生は、しばらく宙を見つめて何か考えるような素振りでした。
「ねえ?あなた、門限あるの?」
何かを思いついたらしく、一回うなずいてから、やよい先生が明るい声で問いかけてきました。
「えーと、とくには決まってません・・・バレエの日なら、7時くらいまでには帰ってますけど・・・」
「森下さんのお母さま、あたしも何度かお会いしたけど、やさしそうなかたよね?」
「はい・・・」
「あなたのお母さま、話がわかるほう?」
「えっ?うーんと、そう・・・そうだと思いますけど・・・」
「あなたの家の電話番号教えて」
私は、何をするつもりなんだろう?と思いながらも、家の電話番号を教えました。
やよい先生は、私が数字を告げるのと同時に自分のケータイのボタンを押していきます。
最後の数字を押し終えると、ケータイを自分の耳にあてて立ち上がり、スタスタとお店の入口のほうに歩いて行きました。
席に一人、取り残された私は、ワケがわからず、疑問符をたくさん頭の上に浮かべたまま、半分になったケーキをつついていました。
三分くらい経って、やよい先生がテーブルに戻ってきました。
「交渉成立。あなたと夕食一緒に食べに行っていいって、あなたのお母さまにお許しをいただいたわ。次の課題曲を決めるんで、少し込み入った話になるから、って嘘ついちゃったけど」
やよい先生は、ニコニコしながら私の前に座り直して、コップのお水をクイっと飲み干しました。
「さあ、あなたもそのケーキ食べちゃって。そしたら、このお店出て、あたしのお気に入りのお店に連れていってあげる。そこでゆっくりお話しましょ」
「あ、それから、ここ出たら、あなたからもお家のほうに電話入れるようにって。あなたのお母さま、キレイな声してるわね」
やよい先生、なんだかすごく楽しそうです。
私は、残りのケーキをモグモグと大急ぎで口に入れ、冷めたレモンティーで流し込みました。
お店から出ると、やよい先生がちょこっとケータイを操作してから私に渡してくれました。
私はそれを耳にあてて、やよい先生から少し離れます。
母は、やよい先生にご迷惑をおかけしないように、ってしつこく言ってから電話を切りました。
「お母さま、何だって?」
「はい。帰るときになったらもう一度電話しなさいって。今日はホームキーパーの人が来ているので家を空けられるから、帰りは、母が駅まで車で迎えに来てくれるみたいです。それから、先生にくれぐれもよろしく、とのことです」
「ふーん。森下さん、大事にされてるねえ」
やよい先生が冷やかすみたいに笑って言います。
私は少し恥ずかしい感じです。
やよい先生が連れて行ってくれたのは、バレエ教室があるほうとは駅を挟んで反対側の出口のそば、大きな雑居ビルの地下にある、洋風の居酒屋さんみたいなお店でした。
「うーん。さすがにそのブレザーじゃちょっとマズイかなあー」
お店の入口を通り越して立ち止まり、やよい先生が学校の制服姿の私を見てそう言ってから、自分のバッグの中をがさごそしています。
取り出したのは、薄でのまっ白いロングパーカーでした。
うっすらと何かローズ系のパフュームのいい香りがします。
「そのブレザーは脱いで手に持って、このパーカーを着てちょうだい。それと、もちろん、あなたにはお酒、飲ませないからね」
やよい先生は、私が着替えるのを待って、お店のドアを開けました。
「このお店はね、個室みたいに各テーブルが完全に仕切られているから、内緒な話にはうってつけなのよ。それとラブラブなカップルにもね」
席に案内されるのを待つ間、やよい先生が私の耳に唇を近づけて、こっそりという感じで教えてくれました。
やよい先生の息が私の耳をくすぐって、ゾクゾクっと感じてしまいます。
メイド服っぽいカワイイ制服を着たウェイトレスさんに案内された席は、四人用らしくゆったりしていて、三方が壁で仕切られていて、入口の横開きの戸をぴったり閉めてしまえば完全に個室になります。
ウェイトレスさんを呼ぶときは、テーブルに付いているチャイムを押せばいいみたいで、これなら確かに誰にも邪魔されずにゆっくりできます。
「このお店はね、けっこう本格的なイタリアンなの。何か食べたいもの、ある?」
メニューを熱心に見ていたやよい先生が、メニューから顔を上げずに、もの珍しそうにまわりをキョロキョロしている私に声をかけてきます。
「いいえ、こういうとこ初めてなんで、先生にお任せします」
「あなた、何か食べられないものとかは、ある?」
「あ、いえ、なんでもだいじょうぶです」
「それなら、あたしがテキトーに選んじゃうわよ」
やよい先生はチャイムを押して、現われたウェイトレスさんに、サラダとスープとパスタとあと何かおつまみみたいなものをテキパキと注文していました。
ウェイトレスさんが去って、私とやよい先生は二人きり、テーブルを挟んで向き合います。
「先生は、このお店、よく来られるんですか?」
「よく、ってほどじゃないけどね。他の先生たちとたまあにね。こうして座っちゃえばもう、まわりを気にしないでいいし、あたしは気に入ってるんだ。味もいいほうだと思うよ」
そんなことを話していると、戸がトントンとノックされ、さっきのウェイトレスさんが飲み物を持ってきてくれました。
やよい先生は白ワインをデカンタで、私はジンジャーエールです。
「はい、それじゃあとりあえずお疲れさま。カンパーイ」
やよい先生のワイングラスと私のカットグラスが軽く触れ合って、チーンという音が室内に響きました。
*
*トラウマと私 22へ
*
トラウマと私 20
その日のバレエレッスン。
私は、内心どきどきしながらも、なんとか無難にレッスンを受けることができました。
「ありがとうございましたーっ!」
生徒みんなでいっせいにやよい先生にお辞儀をしてから、さあ、早く着替えてやよい先生に会ってもらうお願いしなくちゃ、ってレッスンルームの出口に急ごうとすると、
「森下さん?」
やよい先生のほうから、声をかけてきました。
私は意味もなくビクっとして足を止めます。
「は、はい・・・?」
ゆっくりと振り返ると、やよい先生が薄く微笑みながら私を見つめていました。
「少しお話したいことがあるから、着替え終わったら講師室に来てくれる?」
やよい先生のほうから、私を誘ってくれています。
私は、なんだかホっとして、
「はいっ!」
と元気よく返事しました。
やよい先生のほうから講師室に呼んでくれるなんて、ひょっとして今日はツイてる日なのかもしれません。
私は、少しだけ気持ちが軽くなって、講師室のドアをノックしました。
「失礼しまーす」
声をかけながらドアを開くと、目の前にやよい先生とは違うキレイな女性が横向きに座っていて、どーぞーっ、って答えながらニコっと笑いかけてくれました。
その女の人もブルーのレオタードを着ているので、きっと次のクラスのレッスン講師のかたなのでしょう。
初めて入った講師室は、思っていたよりちょっと狭くて、真ん中に大きめのテーブルが置かれ、まわりに椅子が四脚。
お部屋の三分の二くらいがパーテーションで仕切られていて、着替えの場所になってるみたいです。
やよい先生は、レオタードの上に薄物のスタジアムコートみたいなのを羽織って、奥の椅子に座っていました。
「森下さん、いらっしゃい。ごめんね、呼びつけちゃって・・・」
やよい先生が言いながら椅子から立ち上がり、近くにあった椅子をひきずってきて、自分の前に置きました。
「たいしたことじゃないんだけどね。まあ、ここに座って・・・」
私が座ると同時に、入り口のところにいた青いレオタの女性が、いってきまーす、って言いながらお部屋を出ていきました。
やよい先生も、お疲れでーす、と声をかけます。
ドアがパタンと閉じて、お部屋にはやよい先生と私の二人きりになりました。
「そんなにかしこまらなくてもいいんだけどさ。森下さん、夏休み終わってからこっち、なんだかヘンでしょ?」
うつむいてモジモジしている私の顔を覗き込むようにやよい先生が聞いてきます。
「は・・・い・・・」
「だから、なんか悩み事でもあるのかなあ、って思ってさ。あたしで良ければ相談に乗るよ、って言いたかったの」
「・・・は、はい・・・」
私は、すっごく嬉しくなって、大げさではなく、感動していました。
やよい先生は、私のことを気に掛けていてくれたんだ・・・
「あ、ありがとうございます。じ、実は私も今日、先生にご相談したいことがあって、レッスンの後、お願いに伺おうと思っていたんです・・・」
上ずった声になってしまいます。
頬もどんどん火照ってきます。
「そうなんだ。やっぱり何か悩みがあるの?」
「は、はい。それで、良ければ近いうちに先生にお時間がいただけないかなって・・・」
私の顔をじーっと見つめていたやよい先生は、ニコっと笑って、
「それなら、これからどう?今日はこの後の個人レッスンの予定がキャンセルになったんで、あたし、この後ヒマだから。グッドタイミングね。あたしとデートしましょ?」
やよい先生がイタズラっぽく言って、魅力的な笑顔を見せてくれます。
「は、はい・・・先生さえ良ろしければ・・・」
私は、あまりにうまくお話が進み過ぎて少し戸惑いながらも、やよい先生とゆっくりお話できる嬉しさに舞い上がってしまいます。
「それじゃあ、あたし着替えたり退出の手続きとかするんで少し時間かかるから、そうね・・・駅ビルの2階の本屋さんで立ち読みでもしながら待っててくれる?本屋さん、わかるよね?」
「はいっ!」
私も愛ちゃんと帰るときにたまに寄るお店です。
「20分くらいで行けると思うから」
言いながら、やよい先生が立ち上がりました。
「はいっ!」
私も立ち上がって、やよい先生に深くお辞儀をしながら、
「ありがとうございますっ!」
と大きな声でお礼を言って講師室を出ました。
心臓のどきどきが最高潮に達していました。
本屋さんの店内をブラブラしながら、どこから話そうか、どう話そうかって考えるのですが、胸がどきどきしてしまって考えがうまくまとまりません。
そうしているうちに、やよい先生の姿が本屋さんの入口のところに見えました。
私は小走りに入口のところに急ぎます。
私服のやよい先生は、からだにぴったりしたジーンズの上下を着ていて、ヒールのあるサンダルだから背も高くなって、いつにもましてスラっとしていてカッコイイ。
胸元のボタンは3つまであいていて、中に着ている黄色いTシャツが覗いています。
「お待たせー」
駆け寄ってきた私にニコっと白い歯を見せてくれます。
「お茶でも飲みながらお話しましょう」
連れて行かれたのは、同じフロアの端っこにあるお洒落なティーラウンジでした。
お客さんはまばらで、ショパンのピアノ曲が静かに流れています。
レジや調理場から遠い一番隅っこの席に向かい合って座りました。
「何でも好きなもの、頼んでいいわよ」
やよい先生は、そう言ってくれますが、私は全然お腹が空いていません。
「えーと・・・レモンティーをお願いします」
「あら?ここのケーキ美味しいのよ?一つくらいなら食べられるでしょ?」
「あ・・・は、はい・・・」
やよい先生は、自分のためにコーヒーと、ザッハトルテを二つウェイトレスさんに注文しました。
飲み物が来るのを待つ間、やよい先生は、今日キャンセルされた個人レッスンの生徒さんが習っている課題曲が、いかに難しい曲であるかについてお話してくれていました。
私は、相槌を打ちながらもお話の中味が全然頭に入ってきません。
今日のお話次第で、やよい先生と私の今後の関係が決まってしまうんだ・・・・
心臓がどきどきどきどきしていました。
ウェイトレスさんが注文の品々をテーブルに置いて去っていくと、やよい先生はコーヒーカップに一口、唇をつけてから、私の顔をまっすぐに見つめました。
「さてと・・・それじゃあ、お話を聞かせてちょうだい」
「は、はい」
私は、ゴクンと一回ツバを飲み込んでから、考えます。
何から話始めるか、まだ決めていませんでした。
えーと・・・
どうしようか・・・
考えがまとまらないうちに、勝手に口が動いていました。
「えーと・・・やよいせ・・・ゆ、百合草先生は、レズビアン、なんですか?」
自分でも思いがけない言葉を、やよい先生につぶやいていました。
*
*トラウマと私 21へ
*
私は、内心どきどきしながらも、なんとか無難にレッスンを受けることができました。
「ありがとうございましたーっ!」
生徒みんなでいっせいにやよい先生にお辞儀をしてから、さあ、早く着替えてやよい先生に会ってもらうお願いしなくちゃ、ってレッスンルームの出口に急ごうとすると、
「森下さん?」
やよい先生のほうから、声をかけてきました。
私は意味もなくビクっとして足を止めます。
「は、はい・・・?」
ゆっくりと振り返ると、やよい先生が薄く微笑みながら私を見つめていました。
「少しお話したいことがあるから、着替え終わったら講師室に来てくれる?」
やよい先生のほうから、私を誘ってくれています。
私は、なんだかホっとして、
「はいっ!」
と元気よく返事しました。
やよい先生のほうから講師室に呼んでくれるなんて、ひょっとして今日はツイてる日なのかもしれません。
私は、少しだけ気持ちが軽くなって、講師室のドアをノックしました。
「失礼しまーす」
声をかけながらドアを開くと、目の前にやよい先生とは違うキレイな女性が横向きに座っていて、どーぞーっ、って答えながらニコっと笑いかけてくれました。
その女の人もブルーのレオタードを着ているので、きっと次のクラスのレッスン講師のかたなのでしょう。
初めて入った講師室は、思っていたよりちょっと狭くて、真ん中に大きめのテーブルが置かれ、まわりに椅子が四脚。
お部屋の三分の二くらいがパーテーションで仕切られていて、着替えの場所になってるみたいです。
やよい先生は、レオタードの上に薄物のスタジアムコートみたいなのを羽織って、奥の椅子に座っていました。
「森下さん、いらっしゃい。ごめんね、呼びつけちゃって・・・」
やよい先生が言いながら椅子から立ち上がり、近くにあった椅子をひきずってきて、自分の前に置きました。
「たいしたことじゃないんだけどね。まあ、ここに座って・・・」
私が座ると同時に、入り口のところにいた青いレオタの女性が、いってきまーす、って言いながらお部屋を出ていきました。
やよい先生も、お疲れでーす、と声をかけます。
ドアがパタンと閉じて、お部屋にはやよい先生と私の二人きりになりました。
「そんなにかしこまらなくてもいいんだけどさ。森下さん、夏休み終わってからこっち、なんだかヘンでしょ?」
うつむいてモジモジしている私の顔を覗き込むようにやよい先生が聞いてきます。
「は・・・い・・・」
「だから、なんか悩み事でもあるのかなあ、って思ってさ。あたしで良ければ相談に乗るよ、って言いたかったの」
「・・・は、はい・・・」
私は、すっごく嬉しくなって、大げさではなく、感動していました。
やよい先生は、私のことを気に掛けていてくれたんだ・・・
「あ、ありがとうございます。じ、実は私も今日、先生にご相談したいことがあって、レッスンの後、お願いに伺おうと思っていたんです・・・」
上ずった声になってしまいます。
頬もどんどん火照ってきます。
「そうなんだ。やっぱり何か悩みがあるの?」
「は、はい。それで、良ければ近いうちに先生にお時間がいただけないかなって・・・」
私の顔をじーっと見つめていたやよい先生は、ニコっと笑って、
「それなら、これからどう?今日はこの後の個人レッスンの予定がキャンセルになったんで、あたし、この後ヒマだから。グッドタイミングね。あたしとデートしましょ?」
やよい先生がイタズラっぽく言って、魅力的な笑顔を見せてくれます。
「は、はい・・・先生さえ良ろしければ・・・」
私は、あまりにうまくお話が進み過ぎて少し戸惑いながらも、やよい先生とゆっくりお話できる嬉しさに舞い上がってしまいます。
「それじゃあ、あたし着替えたり退出の手続きとかするんで少し時間かかるから、そうね・・・駅ビルの2階の本屋さんで立ち読みでもしながら待っててくれる?本屋さん、わかるよね?」
「はいっ!」
私も愛ちゃんと帰るときにたまに寄るお店です。
「20分くらいで行けると思うから」
言いながら、やよい先生が立ち上がりました。
「はいっ!」
私も立ち上がって、やよい先生に深くお辞儀をしながら、
「ありがとうございますっ!」
と大きな声でお礼を言って講師室を出ました。
心臓のどきどきが最高潮に達していました。
本屋さんの店内をブラブラしながら、どこから話そうか、どう話そうかって考えるのですが、胸がどきどきしてしまって考えがうまくまとまりません。
そうしているうちに、やよい先生の姿が本屋さんの入口のところに見えました。
私は小走りに入口のところに急ぎます。
私服のやよい先生は、からだにぴったりしたジーンズの上下を着ていて、ヒールのあるサンダルだから背も高くなって、いつにもましてスラっとしていてカッコイイ。
胸元のボタンは3つまであいていて、中に着ている黄色いTシャツが覗いています。
「お待たせー」
駆け寄ってきた私にニコっと白い歯を見せてくれます。
「お茶でも飲みながらお話しましょう」
連れて行かれたのは、同じフロアの端っこにあるお洒落なティーラウンジでした。
お客さんはまばらで、ショパンのピアノ曲が静かに流れています。
レジや調理場から遠い一番隅っこの席に向かい合って座りました。
「何でも好きなもの、頼んでいいわよ」
やよい先生は、そう言ってくれますが、私は全然お腹が空いていません。
「えーと・・・レモンティーをお願いします」
「あら?ここのケーキ美味しいのよ?一つくらいなら食べられるでしょ?」
「あ・・・は、はい・・・」
やよい先生は、自分のためにコーヒーと、ザッハトルテを二つウェイトレスさんに注文しました。
飲み物が来るのを待つ間、やよい先生は、今日キャンセルされた個人レッスンの生徒さんが習っている課題曲が、いかに難しい曲であるかについてお話してくれていました。
私は、相槌を打ちながらもお話の中味が全然頭に入ってきません。
今日のお話次第で、やよい先生と私の今後の関係が決まってしまうんだ・・・・
心臓がどきどきどきどきしていました。
ウェイトレスさんが注文の品々をテーブルに置いて去っていくと、やよい先生はコーヒーカップに一口、唇をつけてから、私の顔をまっすぐに見つめました。
「さてと・・・それじゃあ、お話を聞かせてちょうだい」
「は、はい」
私は、ゴクンと一回ツバを飲み込んでから、考えます。
何から話始めるか、まだ決めていませんでした。
えーと・・・
どうしようか・・・
考えがまとまらないうちに、勝手に口が動いていました。
「えーと・・・やよいせ・・・ゆ、百合草先生は、レズビアン、なんですか?」
自分でも思いがけない言葉を、やよい先生につぶやいていました。
*
*トラウマと私 21へ
*
2010年11月7日
トラウマと私 19
ようやく呼吸も落ち着いてきて、よろよろと身を起こし時計を見ると、深夜の0時になろうとしていました。
私は、後片付けを手早く済ませ、さっきまでそこに寝そべっていたバスタオルを素肌に巻いて、そーっと階下のバスルームに降りていきました。
シャワーを浴びて、汗やいろんな体液を洗い流してスッキリしてから、新しい下着を着けてお部屋に戻ります。
パジャマをもう一度着直して、電気を消して、ベッドに潜り込むとすぐ、ぐっすり深い眠りに落ちました。
翌朝、私は完全復活していました。
あの悪夢な出来事を忘れられたわけではありませんが、記憶のより深いところに格納できたみたいで、えっちなことを考えても邪魔されることはなくなりました。
私がそういうことをするお相手は女性だけ。
そんな覚悟が私の気持ちの中に定着したようです。
ただ、体育の先生の中にマッチョ体型で腕の毛もじゃもじゃな毛深い男の先生が一人いて、その先生が近くに来ると、やっぱりゾクゾクっと悪寒を感じてしまい、朝礼のときに困りました。
愛ちゃんたちグループのみんなとも、今まで通り普通におしゃべりできる、楽しい学校生活に戻っていました。
木曜日の放課後。
バレエ教室のレッスンに行ったとき、また新たな問題が発生していることに気がつきました。
私は、やよい先生に真剣に恋をしてしまっていました。
実は、バレエ教室がある町の駅に行くために愛ちゃんと二人で電車に乗っているときから、私の心の中がザワザワざわめいてはいました。
私は今日、やよい先生と普通に接することができるのだろうか?
月曜の夜、あんなに激しく具体的な妄想でイってしまった私に・・・
でもこのときは、まあその場になればなんとかなるでしょう、って無理矢理思考を停止して楽観的に考えていました。
レオタードに着替えてレッスンルームに入ると、すでにやよい先生がパイプ椅子に腰掛けて私たちが揃うのを待っていました。
私と愛ちゃんに気がつくと、ニッコリ笑って手を上げて、
「おはよっ!」
って声をかけてくれます。
その笑顔を見た途端、私の考えが甘かったことを思い知らされました。
からだ中の温度が一気に上がって、カーっと熱くなってしまいます。
そのステキな笑顔がまぶしすぎて、まっすぐに見ることができません。
胸がどきどきどきどきしてきます。
少女マンガによくある、内気な女の子がヒソカに片想いしている憧れの男の子に声をかけられたとき、そのままの反応が自分のからだと心に起こっていました。
愛ちゃんは、その場でお辞儀して、おはようございます、って自然に挨拶を返しています。
私は、動揺を隠したくて、かえって大げさになってしまい、不自然に深く上半身を曲げて、おはよーごーざいまっす、と大きな声でマヌケな挨拶を返してしまいました。
それを見て、やよい先生はアハハハって笑っていました。
私は、レッスンの間中なんとか心を落ち着けよう、普段どおりにふるまおう、レッスンに集中しよう、と一生懸命努力しました。
グループレッスンは6人クラス。
やよい先生は基本的に6人全員に向けてお話しながら、お手本を見せてくれます。
レッスンの序盤は、まだ胸がどきどきしていてぎこちない感じでしたが、時間が経つにつれて、なんとか普通にやよい先生を見れるようになってきていました。
レッスン後半は、一人ひとりの個別指導になります。
その日習ったポーズやステップを手取り足取り指導してもらいます。
私の番が来ました。
妄想で着ていたのと同じレモンイエローのレオタードを着たやよい先生が私の前に立ちました。
もうだめでした。
どきどき復活です。
私は、やよい先生の前で夢現な感じで教わったステップをやってみました。
「あらあ?みんなと一緒のときはうまく出来てたのに、今のはちょっとでたらめねえ」
やよい先生が少し苦笑いしながら、私の右腕を取ります。
「ここは、こうでしょ?」
「それで、こうして、こう。わかった?」
私の背中や太腿や、首に手を副えて指導してくれます。
一週間前までなら、これは普通のレッスン風景で、私もとくに何も感じずに集中できました。
でも今日はだめです。
やよい先生が私のからだをさわってくれるだけで、話しかけてくれるだけで心が遠いところへ逝ってしまいます。
それでもなんとか、やよい先生にご迷惑がかからないように集中しようと試みます。
でもだめでした。
やよい先生が私のウエストに腕をまわして、私のからだを支えてくれているとき、
このままやよい先生の胸に抱きつけたら、どんなに気持ちいいだろう・・・
なんて不埒なことを考えているのですから。
やよい先生も今日の私はなんかおかしい、と思ったのでしょう。
「じゃあ森下さん、このステップは、後で川上さんによーく聞いて教えてもらって、来週までに出来るようにしておきなさい」
なんだか困ったようなお顔で言ってから、早々と次の人へのレッスンに移ってしまいました。
家に帰って、私はまた途方に暮れてしまいます。
私がやよい先生を過剰に意識してしまうことがレッスンに集中できない原因なのは、自分でもわかっています。
でも、やよい先生を想う気持ちは、自分でもコントロールできない心の深い奥底から湧き出て来ているみたいで、抑えつけることができません。
こんなことをつづけていたら、きっとやよい先生に呆れられてしまいます。
呆れられるだけならまだしも、嫌われてしまうかもしれません。
それは絶対イヤです。
その週の週末。
私は、やよい先生以外の女性で妄想オナニーをしてみようと考えました。
やよい先生ばっかりに頼って妄想してるから、実生活でも過剰に意識してしまうのではないか、って思ったんです。
愛ちゃんたち5人のことを最初に考えてみました。
あの5人は、もちろんみんな大切なお友達で大好きなのですが、そういう、性的なアレとは、どうしても結びつけることが出来ませんでした。
実際、5人とのおしゃべりで、一般的な下ネタっぽいことが出ることはたまにありましたが、セックス経験があるかとかオナニーしているかとかの具体的なプライベートでの性に関する話題は、一切したことがありませんでした。
私は、愛ちゃんたち5人がオナニーを知っているかどうかさえまったく知りませんし、みんなも私がオナニーをしていることは知らないはずです。
えっちな知識が詳しそうなのは、曽根っちとしーちゃんですが、それも普段の会話を聞いている限りの話で、曽根っちはお姉さんの影響、しーちゃんはマンガからの知識っぽくて、実際どうなのかはわかりません。
いずれにしても、お友達5人は、性的妄想には向いていないようです。
それなら次はオオヌキさんです。
オオヌキさんを想ってのオナニーは、彼女たちが遊びにいらした数日後の夜にしていました。
そのときの妄想は、あのキワドイ水着を着たオオヌキさんにマッサージされているうちに、いつのまにか私も同じ水着を着せられていて、腕を縛られていて、篠原さんのフルートをアソコに入れられるというものでした。
そのときのオオヌキさんは、すごく丁寧な言葉遣いで恥ずかしがりながら、私を苛めていました。
かなりコーフンしました。
でも私がオオヌキさんに会ったのは、あのとき一回だけですし、実際どんな性格のかたなのかは知りません。
そうなると、妄想していても同じようなストーリーになってしまいがちなので、強い刺激を欲している今の私には少しキツイ気がします。
そして、そんなことを考えているうちに、私のからだがまたウズウズしてきたのですが、同時に、逃げ場所がどこにも無いことをも思い知らされました。
私のからだが性的に高揚してきたのは、愛ちゃんたちやオオヌキさんのことを考える一方で、木曜日のレッスンのときに私のからだをさわってくれたやよい先生の手の感触を、からだが思い出していたからです。
私の頭の中は、結局またやよい先生に占領されてしまい、なしくずし的にオナニーを始めてしまいました。
どうしてちゃんとレッスンを受けないの?ってやよい先生に叱られながらおっぱいを苛められて、なぜだか篠原さんのフルートをアソコに突っ込まれて、あっけなくイってしまいました。
次の週の木曜日のレッスンは、先週よりマシな状態で受けることができました。
日曜日から水曜日の夜まで、考えに考え抜いて、私は、ある一つのことを決意していました。
いつまでもどきどきした状態でレッスンを受けていると、状況は悪くなる一方です。
何かしらの打開策を講じなければなりません。
私は、やよい先生に告白することにしました。
やよい先生を大好きなこと、と、私の性癖すべてを。
全部告白して、断られたり嫌われてしまったら、それでもう仕方ありません。
だけど、やよい先生なら少なくともお話だけはちゃんと聞いてくれるはず。
それでダメならあきらめよう。
そう決意しました。
タイミング良いことに次週のレッスンは、愛ちゃんがその2週間後に迫った運動会の準備でお休みすることになり、私一人で行くことになりました。
そのレッスン後に講師室に行って、時間を作っていただけるように頼んでみるつもりでした。
*
*トラウマと私 20へ
*
私は、後片付けを手早く済ませ、さっきまでそこに寝そべっていたバスタオルを素肌に巻いて、そーっと階下のバスルームに降りていきました。
シャワーを浴びて、汗やいろんな体液を洗い流してスッキリしてから、新しい下着を着けてお部屋に戻ります。
パジャマをもう一度着直して、電気を消して、ベッドに潜り込むとすぐ、ぐっすり深い眠りに落ちました。
翌朝、私は完全復活していました。
あの悪夢な出来事を忘れられたわけではありませんが、記憶のより深いところに格納できたみたいで、えっちなことを考えても邪魔されることはなくなりました。
私がそういうことをするお相手は女性だけ。
そんな覚悟が私の気持ちの中に定着したようです。
ただ、体育の先生の中にマッチョ体型で腕の毛もじゃもじゃな毛深い男の先生が一人いて、その先生が近くに来ると、やっぱりゾクゾクっと悪寒を感じてしまい、朝礼のときに困りました。
愛ちゃんたちグループのみんなとも、今まで通り普通におしゃべりできる、楽しい学校生活に戻っていました。
木曜日の放課後。
バレエ教室のレッスンに行ったとき、また新たな問題が発生していることに気がつきました。
私は、やよい先生に真剣に恋をしてしまっていました。
実は、バレエ教室がある町の駅に行くために愛ちゃんと二人で電車に乗っているときから、私の心の中がザワザワざわめいてはいました。
私は今日、やよい先生と普通に接することができるのだろうか?
月曜の夜、あんなに激しく具体的な妄想でイってしまった私に・・・
でもこのときは、まあその場になればなんとかなるでしょう、って無理矢理思考を停止して楽観的に考えていました。
レオタードに着替えてレッスンルームに入ると、すでにやよい先生がパイプ椅子に腰掛けて私たちが揃うのを待っていました。
私と愛ちゃんに気がつくと、ニッコリ笑って手を上げて、
「おはよっ!」
って声をかけてくれます。
その笑顔を見た途端、私の考えが甘かったことを思い知らされました。
からだ中の温度が一気に上がって、カーっと熱くなってしまいます。
そのステキな笑顔がまぶしすぎて、まっすぐに見ることができません。
胸がどきどきどきどきしてきます。
少女マンガによくある、内気な女の子がヒソカに片想いしている憧れの男の子に声をかけられたとき、そのままの反応が自分のからだと心に起こっていました。
愛ちゃんは、その場でお辞儀して、おはようございます、って自然に挨拶を返しています。
私は、動揺を隠したくて、かえって大げさになってしまい、不自然に深く上半身を曲げて、おはよーごーざいまっす、と大きな声でマヌケな挨拶を返してしまいました。
それを見て、やよい先生はアハハハって笑っていました。
私は、レッスンの間中なんとか心を落ち着けよう、普段どおりにふるまおう、レッスンに集中しよう、と一生懸命努力しました。
グループレッスンは6人クラス。
やよい先生は基本的に6人全員に向けてお話しながら、お手本を見せてくれます。
レッスンの序盤は、まだ胸がどきどきしていてぎこちない感じでしたが、時間が経つにつれて、なんとか普通にやよい先生を見れるようになってきていました。
レッスン後半は、一人ひとりの個別指導になります。
その日習ったポーズやステップを手取り足取り指導してもらいます。
私の番が来ました。
妄想で着ていたのと同じレモンイエローのレオタードを着たやよい先生が私の前に立ちました。
もうだめでした。
どきどき復活です。
私は、やよい先生の前で夢現な感じで教わったステップをやってみました。
「あらあ?みんなと一緒のときはうまく出来てたのに、今のはちょっとでたらめねえ」
やよい先生が少し苦笑いしながら、私の右腕を取ります。
「ここは、こうでしょ?」
「それで、こうして、こう。わかった?」
私の背中や太腿や、首に手を副えて指導してくれます。
一週間前までなら、これは普通のレッスン風景で、私もとくに何も感じずに集中できました。
でも今日はだめです。
やよい先生が私のからだをさわってくれるだけで、話しかけてくれるだけで心が遠いところへ逝ってしまいます。
それでもなんとか、やよい先生にご迷惑がかからないように集中しようと試みます。
でもだめでした。
やよい先生が私のウエストに腕をまわして、私のからだを支えてくれているとき、
このままやよい先生の胸に抱きつけたら、どんなに気持ちいいだろう・・・
なんて不埒なことを考えているのですから。
やよい先生も今日の私はなんかおかしい、と思ったのでしょう。
「じゃあ森下さん、このステップは、後で川上さんによーく聞いて教えてもらって、来週までに出来るようにしておきなさい」
なんだか困ったようなお顔で言ってから、早々と次の人へのレッスンに移ってしまいました。
家に帰って、私はまた途方に暮れてしまいます。
私がやよい先生を過剰に意識してしまうことがレッスンに集中できない原因なのは、自分でもわかっています。
でも、やよい先生を想う気持ちは、自分でもコントロールできない心の深い奥底から湧き出て来ているみたいで、抑えつけることができません。
こんなことをつづけていたら、きっとやよい先生に呆れられてしまいます。
呆れられるだけならまだしも、嫌われてしまうかもしれません。
それは絶対イヤです。
その週の週末。
私は、やよい先生以外の女性で妄想オナニーをしてみようと考えました。
やよい先生ばっかりに頼って妄想してるから、実生活でも過剰に意識してしまうのではないか、って思ったんです。
愛ちゃんたち5人のことを最初に考えてみました。
あの5人は、もちろんみんな大切なお友達で大好きなのですが、そういう、性的なアレとは、どうしても結びつけることが出来ませんでした。
実際、5人とのおしゃべりで、一般的な下ネタっぽいことが出ることはたまにありましたが、セックス経験があるかとかオナニーしているかとかの具体的なプライベートでの性に関する話題は、一切したことがありませんでした。
私は、愛ちゃんたち5人がオナニーを知っているかどうかさえまったく知りませんし、みんなも私がオナニーをしていることは知らないはずです。
えっちな知識が詳しそうなのは、曽根っちとしーちゃんですが、それも普段の会話を聞いている限りの話で、曽根っちはお姉さんの影響、しーちゃんはマンガからの知識っぽくて、実際どうなのかはわかりません。
いずれにしても、お友達5人は、性的妄想には向いていないようです。
それなら次はオオヌキさんです。
オオヌキさんを想ってのオナニーは、彼女たちが遊びにいらした数日後の夜にしていました。
そのときの妄想は、あのキワドイ水着を着たオオヌキさんにマッサージされているうちに、いつのまにか私も同じ水着を着せられていて、腕を縛られていて、篠原さんのフルートをアソコに入れられるというものでした。
そのときのオオヌキさんは、すごく丁寧な言葉遣いで恥ずかしがりながら、私を苛めていました。
かなりコーフンしました。
でも私がオオヌキさんに会ったのは、あのとき一回だけですし、実際どんな性格のかたなのかは知りません。
そうなると、妄想していても同じようなストーリーになってしまいがちなので、強い刺激を欲している今の私には少しキツイ気がします。
そして、そんなことを考えているうちに、私のからだがまたウズウズしてきたのですが、同時に、逃げ場所がどこにも無いことをも思い知らされました。
私のからだが性的に高揚してきたのは、愛ちゃんたちやオオヌキさんのことを考える一方で、木曜日のレッスンのときに私のからだをさわってくれたやよい先生の手の感触を、からだが思い出していたからです。
私の頭の中は、結局またやよい先生に占領されてしまい、なしくずし的にオナニーを始めてしまいました。
どうしてちゃんとレッスンを受けないの?ってやよい先生に叱られながらおっぱいを苛められて、なぜだか篠原さんのフルートをアソコに突っ込まれて、あっけなくイってしまいました。
次の週の木曜日のレッスンは、先週よりマシな状態で受けることができました。
日曜日から水曜日の夜まで、考えに考え抜いて、私は、ある一つのことを決意していました。
いつまでもどきどきした状態でレッスンを受けていると、状況は悪くなる一方です。
何かしらの打開策を講じなければなりません。
私は、やよい先生に告白することにしました。
やよい先生を大好きなこと、と、私の性癖すべてを。
全部告白して、断られたり嫌われてしまったら、それでもう仕方ありません。
だけど、やよい先生なら少なくともお話だけはちゃんと聞いてくれるはず。
それでダメならあきらめよう。
そう決意しました。
タイミング良いことに次週のレッスンは、愛ちゃんがその2週間後に迫った運動会の準備でお休みすることになり、私一人で行くことになりました。
そのレッスン後に講師室に行って、時間を作っていただけるように頼んでみるつもりでした。
*
*トラウマと私 20へ
*
トラウマと私 18
両腕を胸の前で交差させて、両手を自分の肩にかけ、自分のおっぱいを押しつぶすようにぎゅーっと腕を押し付けます。
それからゆっくりと両手のひらを下に滑らせていきます。
脇腹を撫ぜて、おへそのあたりをやさしく愛撫して、徐々に下腹部へ近づきます。
「森下さんのアソコ、さわってもいいわね?」
私は、コクンと頷いて鏡の中の右手の動きを見守ります。
右手のひらが下腹部をゆっくりと滑り、陰毛の上で止まりました。
小さく爪をたてて、軽くひっかくみたいにジョリジョリと陰毛を弄びます。
「あはーん」
しばらくそこで停滞した後、右手がさらに下を目指してじりじりと移動していきます。
左手は、右のおっぱいを軽くつかんでやんわりともみもみしています。
左手の肘の下で、左乳首が押しつぶされてもなお尖ろうと背伸びをやめません。
ふいに右手が進路を変え、右内腿付け根あたりの肌をさわさわと撫ぜ始めました。
私は、早くアソコをさわって欲しくて堪りません。
鏡に映った自分の顔に訴えかけるように目線を合わせます。
「は、はやく、直子のアソコ、さわって・・・ください」
右手がじらすように少しずつ左方向に移動していき、やがて手のひらですっぽり覆うようにアソコの上に置かれました。
「ああーーんっ!」
「森下さんのココ、すごく熱くなってる・・・それに蜜が溢れ出しちゃってて、手のひらがもうヌルヌル」
やよい先生はそう言いながら、アソコ全体をもむように手のひらを動かしてきます。
長い薬指が肛門の寸前まで伸びています。
「ふーんんっ」
手首の手前の親指の付け根の皮膚が盛り上がっているところに、大きくなって顔を出したクリトリスがちょうど当たって、手が動くたびに土手ごと擦れて、私はどんどん気持ち良くなってきます。
「んんん・・・もっとーっ!」
私は、上半身を屈めて猫背になって、鏡の前で右手を動かしつづけます。
左手もおっぱいを中心に上半身全体を激しく撫でまわしています。
両脚がブルブル震えて、立っているのもやっとです。
「膝が震えているじゃない?そんなに気持ちいいの?そのままそこに座っちゃってもいいのよ」
私は、右手と左手は動かしたまま両膝をゆっくり折って、いったんしゃがみ込んだ後、お尻をペタンとフローリングの床に落としました。
冷たい床が火照ったお尻に気持ちいい。
その拍子に、アソコを包み込んでいる右手の中指がヌルリとアソコの中に侵入しました。
「ああんっ!」
「あらあら。指がツルって入っちゃったわよ。中がすごく熱いわ」
そう言いながら人差し指も揃えて中に侵入させてきて、中でグニグニと膣壁を陵辱し始めます。
「あんっ、あんっ、あんーっ!」
親指はクリトリスの上に置かれ、押しつぶしたり擦ったりされています。
「ん、ん、ん、んーっ!」
鏡の中に、床にぺったりお尻をついて、両脚を膝から曲げてM字にして大きく開き、その中心部分に右手をあててせわしなく動かしている裸の女の姿が映っています。
その右手の下の床には、小さな水溜りがいくつも出来ていました。
「森下さん、すごい格好ね。いやらしい・・・」
私には、やよい先生の声がはっきりと聞こえていました。
「ああーんっ、や、やよい先生・・・私を、私をイかせて、く、くださいいいいいーーっ」
右手の動きが激しくなり、くちゅくちゅくちゅくちゅ、恥ずかしい音が聞こえてきます。
左手は右の乳首をぎゅっとつまんで、強い力でひっぱっています。
「あーーっ、あーーっ、いい、いいい、いいいぃぃぃ・・・」
「もっと、もっともっとーーーっ」
私は、目をぎゅーっとつぶって、やよい先生のことだけ考えながら両手を動かしつづけました。
やがて目の前が真っ白になるような恍惚感が全身を包み、からだ全体がフワっと舞い上がるような感覚が訪れます。
「いいいい、いいいん、いくいくいくいく、いくーーーーっ!!!」
声を押し殺して小さく叫びながら、私は絶頂を迎えました。
まだ激しく上下している肩を両手で抱きながら、しばらくその場に座り込んでいました。
心の中に心地よい達成感を感じていました。
私は、やよい先生がお相手なら、ちゃんとイけるんです。
フラッシュバックがつけこんでくる隙もまったくありませんでした。
少し呼吸が落ち着いてきてから、立ち上がってクロゼットへ歩いて行き、大き目のバスタオルを2枚取り出しました。
それからベッドに行って愛用の枕を持ちます。
鏡の前に戻って、床にバスタオルを重ねて敷き、枕をその上に置きました。
今夜は、まだまだやめる気はありません。
この2週間の間感じていたモヤモヤにきっちりと決着をつけるつもりでした。
「今度は、やよい先生をイかせてあげます」
私は、小さな声でそう言ってからその場にひざまずきました。
なぜだか、ものすごく恥ずかしい格好をしたい気持ちになっていました。
それで思いついたのが、小学生のとき、お医者さんごっこの最中にお友達にやらされた四つん這いスタイル。
お浣腸の真似事のときにとらされた格好です。
私は、鏡にお尻を向けてバスタオルの上に膝立ちになります。
それから上半身を倒していって、両手を床につき、完全な四つん這いになりました。
首をひねって鏡を見ると、白くてまあるいお尻が薄闇の中にぽっかり浮いているのが映っています。
両膝を広めに開いてから、両手で支えていた上半身を両肘まで落とし、ちょうど顔がくるところにフカフカの枕を置きます。
枕の上に右向きに顔をひねって左頬を埋ずめ、両手をゆっくりとはずしました。
私のからだは四つん這いの格好から、顔面と両膝でからだを支えている惨めな格好になりました。
お尻だけが高く突き上げられています。
右向きになった顔をひねって鏡のほうに向けると、自分の両膝の間から、綴目がパックリ開いたアソコと、その上にちょこんとすぼまったお尻の穴までが映っていました。
からだの下から右腕を伸ばして、自分のアソコにあてがいました。
左手は、引力にひっぱられて下を向いているおっぱいに軽く副えます。
「これから、やよい先生のアソコも気持ち良くしてあげます。だから、もっとお尻を突き出してください」
小さな声でそう言ってから、腰に力を入れて自分でお尻をぐいっと持ち上げました。
アソコを覆っていた右手のひらの中指と薬指だけ、くの字に曲げて、ヌプっとアソコに潜り込ませます。
「あはんっ!」
まだ濡れそぼっているアソコの中をくにゅくにゅ掻き回しながら、左手で右おっぱいを激しく絞ります。
「き、気持ちいいですか?やよい先生?・・・」
私は、口ではそう言いながらも、両膝の間から見えている自分の惨めな格好の被虐感と、自分の指が紡ぎ出すめくるめく快楽に酔い痴れていました。
「あーん、いい、いい、いいいーっ」
「もっと責めて、もっと責めて、激しくしてー」
また、くちゅくちゅくちゅくちゅ、いやらしい音が聞こえてきました。
左手は、今度は左の乳首を押しつぶさんばかりに強くつまんで捻っています。
私は、枕に正面から顔を埋ずめてうーうー唸っています。
「うーんふー、うーんふー、うーんふーっ」
頭の中では、やよい先生大好き、っていう言葉だけ何度も何度もくりかえし叫んでいました。
やがて、左手もアソコに持っていってクリトリスの周辺をひっかくように、擦ってつまんで舐りまわし始めます。
右手は、アソコを叩くようににパシパシと音をたてて打ちつけながら、指の抽送のピッチをあげていきます。
両手でよってたかって陵辱されている私のアソコから、だらだらとすけべなよだれが両太腿をつたって床に滑り落ちていきます。
「んーふー、ぬーふー、ぬーふーんー、ぬんんんんんんーーーーっ!!!」
この夜二回目の絶頂は、一回目に勝るとも劣らない超快感でした。
イった瞬間にからだ中を電気みたいなのがビリビリビリっと駆け巡り、頭の中にフラッシュライトが何発もパチパチと瞬きました。
私のからだは、すべての動きを止め、その場につっぷして、からだからすべての力が抜けてしまいました。
私の意志とは関係なく、アソコの中を含めたからだ中のあちこちが、時折ヒクヒクっと痙攣しています。
やよい先生にイってもらうための妄想をしていたはずだったのに、終わってみれば結局また、やよい先生の指で私がイかされていました。
私のお腹の下敷きになっていた右手をのろのろと引っ張り出して、自分の顔に近づけてみます。
右手はグッショリと濡れて、人差し指と中指と薬指の三本が白くシワシワにふやけていました。
*
*トラウマと私 19へ
*
それからゆっくりと両手のひらを下に滑らせていきます。
脇腹を撫ぜて、おへそのあたりをやさしく愛撫して、徐々に下腹部へ近づきます。
「森下さんのアソコ、さわってもいいわね?」
私は、コクンと頷いて鏡の中の右手の動きを見守ります。
右手のひらが下腹部をゆっくりと滑り、陰毛の上で止まりました。
小さく爪をたてて、軽くひっかくみたいにジョリジョリと陰毛を弄びます。
「あはーん」
しばらくそこで停滞した後、右手がさらに下を目指してじりじりと移動していきます。
左手は、右のおっぱいを軽くつかんでやんわりともみもみしています。
左手の肘の下で、左乳首が押しつぶされてもなお尖ろうと背伸びをやめません。
ふいに右手が進路を変え、右内腿付け根あたりの肌をさわさわと撫ぜ始めました。
私は、早くアソコをさわって欲しくて堪りません。
鏡に映った自分の顔に訴えかけるように目線を合わせます。
「は、はやく、直子のアソコ、さわって・・・ください」
右手がじらすように少しずつ左方向に移動していき、やがて手のひらですっぽり覆うようにアソコの上に置かれました。
「ああーーんっ!」
「森下さんのココ、すごく熱くなってる・・・それに蜜が溢れ出しちゃってて、手のひらがもうヌルヌル」
やよい先生はそう言いながら、アソコ全体をもむように手のひらを動かしてきます。
長い薬指が肛門の寸前まで伸びています。
「ふーんんっ」
手首の手前の親指の付け根の皮膚が盛り上がっているところに、大きくなって顔を出したクリトリスがちょうど当たって、手が動くたびに土手ごと擦れて、私はどんどん気持ち良くなってきます。
「んんん・・・もっとーっ!」
私は、上半身を屈めて猫背になって、鏡の前で右手を動かしつづけます。
左手もおっぱいを中心に上半身全体を激しく撫でまわしています。
両脚がブルブル震えて、立っているのもやっとです。
「膝が震えているじゃない?そんなに気持ちいいの?そのままそこに座っちゃってもいいのよ」
私は、右手と左手は動かしたまま両膝をゆっくり折って、いったんしゃがみ込んだ後、お尻をペタンとフローリングの床に落としました。
冷たい床が火照ったお尻に気持ちいい。
その拍子に、アソコを包み込んでいる右手の中指がヌルリとアソコの中に侵入しました。
「ああんっ!」
「あらあら。指がツルって入っちゃったわよ。中がすごく熱いわ」
そう言いながら人差し指も揃えて中に侵入させてきて、中でグニグニと膣壁を陵辱し始めます。
「あんっ、あんっ、あんーっ!」
親指はクリトリスの上に置かれ、押しつぶしたり擦ったりされています。
「ん、ん、ん、んーっ!」
鏡の中に、床にぺったりお尻をついて、両脚を膝から曲げてM字にして大きく開き、その中心部分に右手をあててせわしなく動かしている裸の女の姿が映っています。
その右手の下の床には、小さな水溜りがいくつも出来ていました。
「森下さん、すごい格好ね。いやらしい・・・」
私には、やよい先生の声がはっきりと聞こえていました。
「ああーんっ、や、やよい先生・・・私を、私をイかせて、く、くださいいいいいーーっ」
右手の動きが激しくなり、くちゅくちゅくちゅくちゅ、恥ずかしい音が聞こえてきます。
左手は右の乳首をぎゅっとつまんで、強い力でひっぱっています。
「あーーっ、あーーっ、いい、いいい、いいいぃぃぃ・・・」
「もっと、もっともっとーーーっ」
私は、目をぎゅーっとつぶって、やよい先生のことだけ考えながら両手を動かしつづけました。
やがて目の前が真っ白になるような恍惚感が全身を包み、からだ全体がフワっと舞い上がるような感覚が訪れます。
「いいいい、いいいん、いくいくいくいく、いくーーーーっ!!!」
声を押し殺して小さく叫びながら、私は絶頂を迎えました。
まだ激しく上下している肩を両手で抱きながら、しばらくその場に座り込んでいました。
心の中に心地よい達成感を感じていました。
私は、やよい先生がお相手なら、ちゃんとイけるんです。
フラッシュバックがつけこんでくる隙もまったくありませんでした。
少し呼吸が落ち着いてきてから、立ち上がってクロゼットへ歩いて行き、大き目のバスタオルを2枚取り出しました。
それからベッドに行って愛用の枕を持ちます。
鏡の前に戻って、床にバスタオルを重ねて敷き、枕をその上に置きました。
今夜は、まだまだやめる気はありません。
この2週間の間感じていたモヤモヤにきっちりと決着をつけるつもりでした。
「今度は、やよい先生をイかせてあげます」
私は、小さな声でそう言ってからその場にひざまずきました。
なぜだか、ものすごく恥ずかしい格好をしたい気持ちになっていました。
それで思いついたのが、小学生のとき、お医者さんごっこの最中にお友達にやらされた四つん這いスタイル。
お浣腸の真似事のときにとらされた格好です。
私は、鏡にお尻を向けてバスタオルの上に膝立ちになります。
それから上半身を倒していって、両手を床につき、完全な四つん這いになりました。
首をひねって鏡を見ると、白くてまあるいお尻が薄闇の中にぽっかり浮いているのが映っています。
両膝を広めに開いてから、両手で支えていた上半身を両肘まで落とし、ちょうど顔がくるところにフカフカの枕を置きます。
枕の上に右向きに顔をひねって左頬を埋ずめ、両手をゆっくりとはずしました。
私のからだは四つん這いの格好から、顔面と両膝でからだを支えている惨めな格好になりました。
お尻だけが高く突き上げられています。
右向きになった顔をひねって鏡のほうに向けると、自分の両膝の間から、綴目がパックリ開いたアソコと、その上にちょこんとすぼまったお尻の穴までが映っていました。
からだの下から右腕を伸ばして、自分のアソコにあてがいました。
左手は、引力にひっぱられて下を向いているおっぱいに軽く副えます。
「これから、やよい先生のアソコも気持ち良くしてあげます。だから、もっとお尻を突き出してください」
小さな声でそう言ってから、腰に力を入れて自分でお尻をぐいっと持ち上げました。
アソコを覆っていた右手のひらの中指と薬指だけ、くの字に曲げて、ヌプっとアソコに潜り込ませます。
「あはんっ!」
まだ濡れそぼっているアソコの中をくにゅくにゅ掻き回しながら、左手で右おっぱいを激しく絞ります。
「き、気持ちいいですか?やよい先生?・・・」
私は、口ではそう言いながらも、両膝の間から見えている自分の惨めな格好の被虐感と、自分の指が紡ぎ出すめくるめく快楽に酔い痴れていました。
「あーん、いい、いい、いいいーっ」
「もっと責めて、もっと責めて、激しくしてー」
また、くちゅくちゅくちゅくちゅ、いやらしい音が聞こえてきました。
左手は、今度は左の乳首を押しつぶさんばかりに強くつまんで捻っています。
私は、枕に正面から顔を埋ずめてうーうー唸っています。
「うーんふー、うーんふー、うーんふーっ」
頭の中では、やよい先生大好き、っていう言葉だけ何度も何度もくりかえし叫んでいました。
やがて、左手もアソコに持っていってクリトリスの周辺をひっかくように、擦ってつまんで舐りまわし始めます。
右手は、アソコを叩くようににパシパシと音をたてて打ちつけながら、指の抽送のピッチをあげていきます。
両手でよってたかって陵辱されている私のアソコから、だらだらとすけべなよだれが両太腿をつたって床に滑り落ちていきます。
「んーふー、ぬーふー、ぬーふーんー、ぬんんんんんんーーーーっ!!!」
この夜二回目の絶頂は、一回目に勝るとも劣らない超快感でした。
イった瞬間にからだ中を電気みたいなのがビリビリビリっと駆け巡り、頭の中にフラッシュライトが何発もパチパチと瞬きました。
私のからだは、すべての動きを止め、その場につっぷして、からだからすべての力が抜けてしまいました。
私の意志とは関係なく、アソコの中を含めたからだ中のあちこちが、時折ヒクヒクっと痙攣しています。
やよい先生にイってもらうための妄想をしていたはずだったのに、終わってみれば結局また、やよい先生の指で私がイかされていました。
私のお腹の下敷きになっていた右手をのろのろと引っ張り出して、自分の顔に近づけてみます。
右手はグッショリと濡れて、人差し指と中指と薬指の三本が白くシワシワにふやけていました。
*
*トラウマと私 19へ
*
2010年11月6日
トラウマと私 17
私は、お部屋のドアのところまで行って、鍵をかけました。
それからベッドのところまで戻り、再び浅く腰掛けました。
やよい先生と、もう一人の美しい女性が仲良くしている場面を想像してみます。
やよい先生のお相手の女性って、どんな感じの人なんだろう?
曽根っちから聞いたお話では、女優さんのように綺麗っていうことですが、抽象的すぎて、うまく想像できません。
仕方ないのでオオヌキさんに出演してもらうことにします。
やよい先生とオオヌキさんが隣り合って、からだをぴったりくっつけてベッドの縁に腰掛けています。
ラブホテルの内部がどんな感じなのかも私は知らないので、なんとなく豪華なお部屋、我が家の父と母の寝室を思い浮かべてみました。
照明を少し落として、薄暗い感じです。
やよい先生は、バレエのレッスンでいつも着ている鮮やかなレモンイエローのレオタード、オオヌキさんは、あの日着ていたキワドイ水着姿です。
二人は、互いに顔だけ横に向けて、じーっと見つめ合っています。
やがてオオヌキさんの手がやよい先生の胸に伸びて、ゆっくりとやさしく愛撫し始めます。
やよい先生は、目をつぶってうっとりとした表情になっています。
私も自分の右手をパジャマ越しに自分のおっぱいに置いて、ゆっくりともみ始めました。
目をつぶってしまうと、思い出したくない場面がフラッシュバックしてくるかもしれないので、自分の右手に視線を落としながら妄想をつづけます。
オオヌキさんは、両手を優雅に滑らせて、やよい先生の上半身、胸や首筋や脇腹や背中をしなやかな指で丁寧に愛撫しています。
私も自分の両手で自分の上半身をまさぐります。
だんだん気持ち良くなってきました。
やよい先生も両手を伸ばし、ほとんど裸に近いオオヌキさんの上半身を愛撫し始めました。
乳首が隠れているだけのおっぱいを下から手のひらで支えるように持ち上げて、プルンと揺らしています。
背中に回した指を背骨に沿って滑らせます。
首筋から顎にかけて、やんわりと撫ぜまわします。
オオヌキさんの眉根にシワができて、ゾクゾクするほど色っぽい表情になっています。
やよい先生とオオヌキさんは、上半身を互いに向け合い、互いの両手を伸ばして相手のからだを抱き寄せるような格好で愛撫をつづけています。
私は、自分の上半身を両手でさわさわと撫ぜまわしながら、いつの間にか両目をつぶって妄想モードに突入していました。
目をつぶってもフラッシュバックは来ないようです。
頭の中は、やよい先生とオオヌキさんの姿で一杯です。
しばらくそうしていて、だんだんと高まってきていたとき、ふいに気がつきました。
私は今まで、妄想オナニーのとき、誰かに自分のからだをさわられることばっかりを想像していたことを。
私が誰かのからだをさわる、誰かを愛撫してあげる、という発想が無かったことを。
私がやよい先生のからだをさわってあげて、気持ち良くさせてあげる・・・
やよい先生をイかせてあげる・・・
やよい先生も私をさわって、私を気持ち良くしてくれる・・・
なんて刺激的な妄想でしょう。
私の頭の中にいたオオヌキさんは、その瞬間、私自身にすり替わっていました。
私とやよい先生が抱き合っていました。
あるアイデアが閃きました。
ベッドから立って再びドアのところまで行き、お部屋の照明のスイッチを2段落として薄暗くしました。
それから、姿見の前に立ちます。
鏡の中に、薄暗いお部屋とパジャマを着た私の全身が映っています。
鏡の外の自分をやよい先生と思って、お互いにからだをまさぐり合う。
自分のいやらしい姿を自分の目で見ながら、オナニーしてみよう。
妄想に入り込んで目をつぶってしまうと、あの悪夢な場面を思い出してしまう確率も上がってしまいそうですが、こうして具体的に見るものがあれば、妄想もしやすいし、行為に集中できそうな気がしました。
パジャマのボタンを上からゆっくりと一つずつはずしていきます。
鏡に映っている、私のパジャマのボタンをはずす指は、私の指ではなく、やよい先生の指です。
すっかりボタンがはずされたパジャマをはだけます。
今夜はノーブラです。
二つの乳首がツンと背伸びして、上を向いています。
私は、鏡に映るそれを見ながら、右手を右のおっぱいに重ねます。
その手は、やよい先生の手です。
「あら森下さん、乳首をこんなに固くしちゃって、もう感じてるの?」
やよい先生の声が聞こえてきました。
バレエのレッスンのときと同じ口調です。
やよい先生の手のひらに包まれた私のおっぱい。
人差し指と中指の間に乳首を逃がして、ときどき、ぎゅーっと挟んできます。
「あーんっ!」
「感じやすいわねえ。えっちな子」
やよい先生は、薄く笑って右手をもみもみ動かします。
「私にも先生のおっぱいをさわらせてください」
左手を左のおっぱいにあてて、同じようにもみもみし始めます。
私は、自分の生身のからだと鏡に映った自分のからだを交互に見ながら、やよい先生との妄想の世界にすっかり入り込んでいました。
私の手は、やよい先生の手。
私のおっぱいは、やよい先生のおっぱい。
二人でさわり合いながら、どんどん気持ち良くなっていく・・・
鏡に映っている私の顔は、だんだんと紅潮してきます。
ときどき眉間にシワを寄せ、ときどきうっとりと目を閉じて、ときどき、うっ、と声が洩れるのをがまんして・・・
両内腿の間も充分すぎるほど潤ってきました。
「あなたは、あたしのことが好きなのよね?」
やよい先生が妄想の中で問いかけてきます。
「はい・・・」
「だったら、あたしの指でイくことができるはずよね?」
「・・・」
「あたしの目の前でイってみなさい」
「・・・はい」
「ほら、その余計なもの、全部脱いじゃいなさい。あたしも脱ぐから」
私は、上半身に羽織っていたパジャマから両腕を抜いて、まず上半身裸になり、鏡の正面に立ち直しました。
それから、パジャマのズボンのゴムに手をかけて、鏡の中の自分の姿を見つめながら、ショーツごとゆっくりとずり下げていきます。
薄い陰毛の生え始めが現れて、やがて両太腿の間まで露になっていきます。
潤っているアソコから少し漏れてしまったえっちなおツユが、ショーツ内側のクロッチ部分を濡らして一筋、私の裸の股間へとツーっと細い糸を引いて、その糸はショーツを下げるごとに伸びていき、膝まで下げたときにプツンと途切れました。
パジャマとショーツを両足首から抜いて、全裸になって、再び姿見の前にまっすぐ立ちます。
両腕を脇に垂らして、気をつけの姿勢です。
頭の中では、一生懸命やよい先生の全裸姿を想像しています。
鏡に映った自分の姿の、顔をやよい先生に修正します。
おっぱいを30パーセントくらい増量します。
下半身をもっとスラっとさせてみます。
やよい先生のアソコの毛、どんな形なんだろう?
「森下さん、ステキなからだよ。でも恥ずかしそうね」
やよい先生がハスキーな声で耳元にささやいてきます。
「さあ、今度は裸で抱き合いましょう・・・」
*
*トラウマと私 18へ
*
それからベッドのところまで戻り、再び浅く腰掛けました。
やよい先生と、もう一人の美しい女性が仲良くしている場面を想像してみます。
やよい先生のお相手の女性って、どんな感じの人なんだろう?
曽根っちから聞いたお話では、女優さんのように綺麗っていうことですが、抽象的すぎて、うまく想像できません。
仕方ないのでオオヌキさんに出演してもらうことにします。
やよい先生とオオヌキさんが隣り合って、からだをぴったりくっつけてベッドの縁に腰掛けています。
ラブホテルの内部がどんな感じなのかも私は知らないので、なんとなく豪華なお部屋、我が家の父と母の寝室を思い浮かべてみました。
照明を少し落として、薄暗い感じです。
やよい先生は、バレエのレッスンでいつも着ている鮮やかなレモンイエローのレオタード、オオヌキさんは、あの日着ていたキワドイ水着姿です。
二人は、互いに顔だけ横に向けて、じーっと見つめ合っています。
やがてオオヌキさんの手がやよい先生の胸に伸びて、ゆっくりとやさしく愛撫し始めます。
やよい先生は、目をつぶってうっとりとした表情になっています。
私も自分の右手をパジャマ越しに自分のおっぱいに置いて、ゆっくりともみ始めました。
目をつぶってしまうと、思い出したくない場面がフラッシュバックしてくるかもしれないので、自分の右手に視線を落としながら妄想をつづけます。
オオヌキさんは、両手を優雅に滑らせて、やよい先生の上半身、胸や首筋や脇腹や背中をしなやかな指で丁寧に愛撫しています。
私も自分の両手で自分の上半身をまさぐります。
だんだん気持ち良くなってきました。
やよい先生も両手を伸ばし、ほとんど裸に近いオオヌキさんの上半身を愛撫し始めました。
乳首が隠れているだけのおっぱいを下から手のひらで支えるように持ち上げて、プルンと揺らしています。
背中に回した指を背骨に沿って滑らせます。
首筋から顎にかけて、やんわりと撫ぜまわします。
オオヌキさんの眉根にシワができて、ゾクゾクするほど色っぽい表情になっています。
やよい先生とオオヌキさんは、上半身を互いに向け合い、互いの両手を伸ばして相手のからだを抱き寄せるような格好で愛撫をつづけています。
私は、自分の上半身を両手でさわさわと撫ぜまわしながら、いつの間にか両目をつぶって妄想モードに突入していました。
目をつぶってもフラッシュバックは来ないようです。
頭の中は、やよい先生とオオヌキさんの姿で一杯です。
しばらくそうしていて、だんだんと高まってきていたとき、ふいに気がつきました。
私は今まで、妄想オナニーのとき、誰かに自分のからだをさわられることばっかりを想像していたことを。
私が誰かのからだをさわる、誰かを愛撫してあげる、という発想が無かったことを。
私がやよい先生のからだをさわってあげて、気持ち良くさせてあげる・・・
やよい先生をイかせてあげる・・・
やよい先生も私をさわって、私を気持ち良くしてくれる・・・
なんて刺激的な妄想でしょう。
私の頭の中にいたオオヌキさんは、その瞬間、私自身にすり替わっていました。
私とやよい先生が抱き合っていました。
あるアイデアが閃きました。
ベッドから立って再びドアのところまで行き、お部屋の照明のスイッチを2段落として薄暗くしました。
それから、姿見の前に立ちます。
鏡の中に、薄暗いお部屋とパジャマを着た私の全身が映っています。
鏡の外の自分をやよい先生と思って、お互いにからだをまさぐり合う。
自分のいやらしい姿を自分の目で見ながら、オナニーしてみよう。
妄想に入り込んで目をつぶってしまうと、あの悪夢な場面を思い出してしまう確率も上がってしまいそうですが、こうして具体的に見るものがあれば、妄想もしやすいし、行為に集中できそうな気がしました。
パジャマのボタンを上からゆっくりと一つずつはずしていきます。
鏡に映っている、私のパジャマのボタンをはずす指は、私の指ではなく、やよい先生の指です。
すっかりボタンがはずされたパジャマをはだけます。
今夜はノーブラです。
二つの乳首がツンと背伸びして、上を向いています。
私は、鏡に映るそれを見ながら、右手を右のおっぱいに重ねます。
その手は、やよい先生の手です。
「あら森下さん、乳首をこんなに固くしちゃって、もう感じてるの?」
やよい先生の声が聞こえてきました。
バレエのレッスンのときと同じ口調です。
やよい先生の手のひらに包まれた私のおっぱい。
人差し指と中指の間に乳首を逃がして、ときどき、ぎゅーっと挟んできます。
「あーんっ!」
「感じやすいわねえ。えっちな子」
やよい先生は、薄く笑って右手をもみもみ動かします。
「私にも先生のおっぱいをさわらせてください」
左手を左のおっぱいにあてて、同じようにもみもみし始めます。
私は、自分の生身のからだと鏡に映った自分のからだを交互に見ながら、やよい先生との妄想の世界にすっかり入り込んでいました。
私の手は、やよい先生の手。
私のおっぱいは、やよい先生のおっぱい。
二人でさわり合いながら、どんどん気持ち良くなっていく・・・
鏡に映っている私の顔は、だんだんと紅潮してきます。
ときどき眉間にシワを寄せ、ときどきうっとりと目を閉じて、ときどき、うっ、と声が洩れるのをがまんして・・・
両内腿の間も充分すぎるほど潤ってきました。
「あなたは、あたしのことが好きなのよね?」
やよい先生が妄想の中で問いかけてきます。
「はい・・・」
「だったら、あたしの指でイくことができるはずよね?」
「・・・」
「あたしの目の前でイってみなさい」
「・・・はい」
「ほら、その余計なもの、全部脱いじゃいなさい。あたしも脱ぐから」
私は、上半身に羽織っていたパジャマから両腕を抜いて、まず上半身裸になり、鏡の正面に立ち直しました。
それから、パジャマのズボンのゴムに手をかけて、鏡の中の自分の姿を見つめながら、ショーツごとゆっくりとずり下げていきます。
薄い陰毛の生え始めが現れて、やがて両太腿の間まで露になっていきます。
潤っているアソコから少し漏れてしまったえっちなおツユが、ショーツ内側のクロッチ部分を濡らして一筋、私の裸の股間へとツーっと細い糸を引いて、その糸はショーツを下げるごとに伸びていき、膝まで下げたときにプツンと途切れました。
パジャマとショーツを両足首から抜いて、全裸になって、再び姿見の前にまっすぐ立ちます。
両腕を脇に垂らして、気をつけの姿勢です。
頭の中では、一生懸命やよい先生の全裸姿を想像しています。
鏡に映った自分の姿の、顔をやよい先生に修正します。
おっぱいを30パーセントくらい増量します。
下半身をもっとスラっとさせてみます。
やよい先生のアソコの毛、どんな形なんだろう?
「森下さん、ステキなからだよ。でも恥ずかしそうね」
やよい先生がハスキーな声で耳元にささやいてきます。
「さあ、今度は裸で抱き合いましょう・・・」
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*トラウマと私 18へ
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