2010年11月21日

トラウマと私 24

「それは、とても光栄なことね」
やよい先生も私の目をまっすぐに見ながら、魅力的に微笑んでくれました。

「それで、私、その週のバレエのレッスンのとき、すっごく先生を意識してしまって・・・ご迷惑をおかけしてしまって・・・」
「そういうことだったのね。なんだかずっとそわそわ、モジモジしてるから、どうしちゃったんだろ?この子、って思ってたのよ」
やよい先生がイタズラっぽく笑います。
「で、どんな風に、あたしとのソレ、想像したの?」
「そ、それは・・・」

私は、恥ずかしさで、もうどうしようもないくらい、からだが火照っていました。
乳首も痛いほど、アソコもショーツに貼り付いてしまっています。
「鏡に・・・鏡に向かって・・・自分のからだ映して・・・私の胸や、アソコを・・・先生の手で可愛がられてるって想像しながら・・・」
私は、自分で言っている言葉に、恥ずかしがりながらコーフンしていました。

「そう。それがすっごく気持ち良かったんだ・・・なおちゃん、カワイイわね」
やよい先生がえっちっぽく笑いかけてくれます。
私は、すっごく嬉しい気持ちになります。
オナニーをしたときとは別の種類の、心地よい快感がからだをじーんと駆け巡りました。

「先生、私、レズビアンになれるでしょうか?」
快感の余韻が収まるのを待って、私は、これ以上無理っていうくらい真剣な気持ちで、やよい先生に問いかけました。
「うーん・・・そんなに真剣な顔で聞かれてもねえ・・・」
やよい先生は、はぐらかすみたいにお顔を少し背けます。
ちょっと考える風に上を向いてから、また視線を私に戻しました。

「それじゃあ、なおちゃんは、お友達、たとえばあなたとすごく仲の良さそうな川上さんとかとも、そういうことしたいと思う?」
「いえ。それは考えてみたんですけど、そういう気持ちにはなれませんでした。もちろん愛ちゃんは大好きなお友達なんですけれど・・・」
「でも、あたしとならそうなってみたい?」
「はい・・・」
「それは、なおちゃんがあたしを大好きだから?」
「はい」

「ほら。つまりそういうことよ」
やよい先生が明るい声で言います。
私は、きょとん、です。

「なおちゃんがそうなってみたいと思った相手は、あたしだった。それで、あたしは女だった」
「その前に知らない男性にヒドイことされて、男性がイヤになっていたのもあるんだろうけど、なおちゃんは、あなたが大好きだと思った人、えっちな気持ち的に、したい、と思った人としか、そういうことはしたくないんでしょ?」
「はい・・・」
「それなら、別にレズビアンになる、ならないなんて考えないで、今まで通り、そういう気持ちのまま過ごしていけばいいのよ」
「大多数の人たちは普通、恋愛をする相手、セックスの相手は異性と考えている。でも、大好きになった人、したいと思った人が同性だったとしても別に何も悪いことじゃないの。たまたまそうなっちゃっただけ」
「なおちゃんがされたみたいな、自分の欲望のためだけに無理矢理、関係ない誰かをひどいメに合わせたり、カンタンに言うと痴漢とか強姦とか婦女暴行とか監禁とかのほうが、よっぽど非難されるべきことなの」
「だからあなたも今の気持ちのまま、男性が苦手なら苦手でいいから、大好きになれて、したいと思える人を探したほうがいいわ。レズビアンがどうとか特別に考えずに、ね」

「それに・・・」
「ひょっとしたら何年か先に、なおちゃんのアソコにピッタリなサイズのペニスを持った、やさしくてカッコイイ男の子が現われるかもしれないし、今は深刻に思えるそのトラウマも、ひょんなきっかけで治るかもしれない・・・」

そこまで言って、やよい先生はテーブル越しに両手を伸ばしてきて、私の両手をやんわり掴みました。
そのままテーブルの上で二人、両手を重ね合います。
私には、やよい先生が今、最後に言った言葉とは裏腹に、そのまま男性が苦手なままでいて、っていう私への願いを、無言で態度に表したような気がしました。
私の胸がドキンと高鳴ります。

「それでね・・・あたしは今、なおちゃんを抱いてあげることはできないの」
やよい先生は、私の手を取ったまま、声を落として言いました。
「今はちょっと喧嘩中だけど、あたしは今のパートナーが大好きだし、大切に思っているし、彼女とだけそういうことをしたいの」
「彼女は、あまり束縛するタイプではないけれど、今はやっぱり、彼女とだけそういうことをしたいの」
「それになおちゃん、今中二でしょ?中二って言うと何才だっけ?」
「14才です・・・」
私は、やよい先生の言葉にがっかりして、力なく答えます。
「14才なら、まだまだこの先たくさん、出会いがあるはずよ。女性とも男性とも」
「それで、なおちゃんが本当に大切に思える人ができたら、本格的にえっちな経験をするのは、そのとき・・・今よりもう少し大人になってからのほうがいいと思うの、なおちゃんのためにも」

「でも、今、私はやよい先生のこと、本当に大切に想ってるんです・・・」
小さな声でつぶやきました。
私は、あからさまにがっかりした顔をしていたんだと思います。
やよい先生がまた少し考えてから声のトーンを上げて、こんな言葉をつづけてくれました。

「それでね。正直言うと、あたしもなおちゃんには、興味があるの。あなたカワイイし、ほっとけないとこがあるから」
「だから、なおちゃんがもう少し大人になって・・・そうね、高校に入ったら・・・じゃあまだ早いか・・・高校2年て言うと17才?」
「・・・はい」
「高校2年になってもまだ、今と同じ気持ちがあったなら、そのときはあたしがお相手してあげる」
「本当ですかっ?」
私に少し元気が戻ってきました。
「うん。約束する。だから、しばらくの間は、あたしを、血のつながった本当のお姉さんだと思って、なんでも気軽に相談して」
「それにもちろん、オナニーのお相手としてなら、ご自由に使ってもらって結構よ。なおちゃんがあたしを想ってしてるんだなあ、って考えるとあたしもなんだかワクワクしちゃう」
やよい先生がえっちぽい顔になって言いました。

「だけどバレエのレッスンのときは、そんな素振り見せないでね。あたしもあくまで講師として接するから。今まで通り」
「あなた、バレエの素質、いいもの持っているんだから、ちゃんと真剣にやりなさい。真剣にやればかなりの線まで行けるはずよ」
「はいっ!」

私は、なんだか気持ちがスッキリしていました。
やよい先生とかなり親しい関係になれたことを、すごく嬉しく感じていました。
それに、考えてみればこうして、セックスやオナニーのことを実際に言葉に出して、誰かと話し合ったのも初めてのことです。
なんだか一歩、大人になった気がしていました。
私のヘンな性癖に関しては、やっぱり恥ずかしくって言えなかったけれど・・・
でもその上、あと数年したら、やよい先生が私のお相手をしてくれる、って約束までしてくれたんです。
自然と顔がほころんできます。

「やっと、なおちゃんに笑顔が戻ったわね」
やよい先生は、両手で私の手を握ったまま、ニッコリ笑いかけてくれます。
「今日の二人のデートは、あたしたちだけの秘密ね。あたしは、これからも、なおちゃんと二人きりのときだけ、あなたをなおちゃんって呼ぶ。バレエのときやみんながいるときは、今まで通り、森下さん。それでいいわね?」
「はい」
それからやよい先生は、目をつぶって、お芝居じみた声を作って、こんなことを言いました。
「美貌のバレエ講師と年の離れた可憐な生徒は、お互い惹かれ合っていた。講師には女性の恋人がいて、生徒は講師を想って自分を慰めている。それでも素知らぬ顔でみんなと一緒にレッスンに励む二人は、何年後かに結ばれる約束をしていたのであった・・・」
「なんちゃって、こうやって言葉にしてみると、このストーリーでレディコミかなんかで百合マンガの連載できそうじゃない?あたしたちって。なおちゃんも、オナニーのときに妄想、しやすいでしょ?」
やよい先生が笑いながらイジワルっぽく言います。
「もうー、やよい先生、イジワルですねー」
私は甘えた声を出して、やよい先生の手をぎゅっと握りました。

「あらー。もうこんな時間」
やよい先生は、私の手を握り返しながら、私が左手首にしている腕時計に目をやって、大きな声を出しました。
8時を少し回っていました。
「そろそろお母さまに電話したほうがいいんじゃない?」
「あ、はい」
私は、もっともっとやよい先生と一緒にいたい気持ちでしたが、そうもいきません。
やよい先生が差し出してくれたケータイを受け取って耳にあてました。

「30分後にバレエ教室側の駅前ロータリーで待ち合わせです」
母との電話を終わって、ケータイを返しながらやよい先生に告げました。
「じゃあ、あと20分くらいだいじょぶね」

その20分の間に、やよい先生がなぜレズビアンなのか、っていうお話を聞かせてもらいました。
誰にも言わない、っていう約束なので詳しくは書きませんが、やっぱり、ティーンの頃に男の人に嫌な経験をさせられたことも大きいようです。
「だからなおさら、あたしは、なおちゃんのことが気にかかるし、心配なの。遠慮せずになんでも相談してね」
やよい先生は、そう言ってくれました。
私は、やよい先生と出会えて、本当に良かったと心の底から思いました。


トラウマと私 25

2 件のコメント:

  1. これで、この章は終わりかな?
    毎回ドキドキしながら読みました。
    最初はハラハラしたのドキドキ感、途中は心配のドキドキ感、最後は羨ましくらいの素敵なドキドキ感を頂戴しました。

    やよい先生への思いがすごく伝わってきて心地良い気持ちになりました。
    この時の約束が「グノシエンヌなトルコ石」の話に繋がるのね!

    「トラウマと私」を読んだ上で「グノシエンヌなトルコ石」を読むともっと楽しめそうだな!
    時間で出来たら読み直すね!

    次回はこの前言ってた「セルフボンデージ」のお話かな?

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  2. noripi- さま
    いつも感想を書き込んでいただいて、本当にありがとうございます。
    たくさんドキドキしていただけたみたいで、嬉しいです。
    楽しんでいただけてると思うと、書いている私もがんばろう、っていう気になって楽しいです。

    次は、ちょっと短めなお話を一つ挟んで、セルフボンデージのお話は、その次か、そのまた次の予定です。
    また、おヒマをみつけて、読みに来ていただけると嬉しいです(≧∀≦)ノ

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