恥ずかしがりたがり。

　隣室の来客が立ち去った後もしばらく物音ひとつしない静寂がつづいた。 　私は端の個室の壁に向いて蓋を閉じた便座の上にそっと腰掛け聞き耳を立てている。 　幸いなことに尿意も便意も感じていないので、ゆっくりとお付き合い出来そうだ。 　壁の向こうで彼女が今、どんな姿なのかを想像する。 ...

　木曜日の二限目が終わった後、私は彼女の行動に注目していた。 　彼女は親しい友人三人と楽しげに何か話しながら教室を出ていく。 　二階端の教室から廊下を少し進み、階段を下りて一階へ。 　昼休みの人波に紛れ、気づかれないように後を追う。 　やがて建物の正面玄関。 　先週はここで友人た...

　翌日から彼女のことが気になって仕方なくなっていた。 　こんなにも誰かのことが気になるという状態は私にとって久し振りの感覚だった。 　講義中のトイレや体育授業のロッカーで彼女が見せた不可解な行動が、眠っていた私の好奇心という名の猫を起こしてしまったようだ。 　一見気弱そうな彼女の...