2021年8月7日

肌色休暇二日目~いけにえの賛美 04

「すげえ…」

 助手席の橋本さまがお独り言みたいにつぶやかれて絶句。
 運転席の本橋さまも前方を見つめて呆気に取られていらっしゃるみたいで、車のスピードが徐行に近いくらいダウンしています。

 緩い上り坂の道をアーチのように囲む左右の木々が徐々にまばらになり、平地になった途端眼前に広がる大庭園。
 敷地を囲う塀とかフェンスは建ってなく、広大なお庭を森の木々たちが遠巻きに囲んでいる感じ。

 庭園の広さはさっきの広場と同じくらい?
 とても丁寧にお手入れされた生け垣で区分けされたスペースごとに木々と植物が端正に配置され、その合間に大きな石や岩を優美に並べたロックガーデン風。
 車道も石畳となり、その行き着く先に聳え立つのが…

「お城?」
「いやちょっと、ヤバいな、コレ…」

 男性がたおふたりが絶句されているということは、おふたりもここを訪れたのは初めてなのでしょう。
 お城と言っても天守閣とか金のシャチホコとか和風な造りではなく、中世ヨーロッパ風味、剣と魔法のRPGでいかにも王様が住まわれていらっしゃいそうな佇まい。

 正面玄関とおぼしき大きな扉の前に広い石の階段が三段あって、玄関部分が手前へと、長方形に盛大に出っ張っています。
 出っ張り部分と建物の一番高い部分の屋根は半円のドーム状。
 出っ張りの左右にも凸の字を逆さにした形に建物が横に広がっています。
 ただ、二階建てなのか三階まであるのか、高さはそれほどではなく塔のような高い施設も隣接していないので、お城というより宮殿という印象かな。

「こんな建物、建てちゃうやつがいるんだ」
「見た感じずいぶん年季入っているみたいだから、けっこう昔に建てられたんだろうね」
「大金持ちっていうのは、いつの時代にもいるんだよな」
「この辺りにこんなヤバイ別荘があったなんて、全く知らなかったよ」

 ご興奮気味な運転手席側のおふたり。
 私も呆気にとられています。

「でもさ、なんとなくちょっと昔の、田舎の国道沿いとかにありがちだったバブリーなラブホ的テイストも感じなくね?」

 ずいぶん失礼なことをおっしゃるのは橋本さま。

「いや、そんなにセンス悪くないよ。このお庭とか建物の感じとか、ゴシックとかルネッサンスとかバロックとか、史実に沿っていろいろ考えられている気がする…」

 なぜだか真剣に擁護に回られる本橋さま。

「こんな山間の別荘地にこんなの建てちゃうなんて、金だけじゃなくて権力も相当持っていないと無理だよな?」
「うん。それにこのメルヘン寄りなデザイン、男だけの発想じゃない気がする。惚れた女にねだられてイイ格好したくて、とかだったりして」
「ああ、ありうるわな。金に糸目はつけないって言われて、設計任されたデザイナーが暴走しちゃった感じ?」

 なんだか嬉しそうにおふたりで妙にご納得されいるご様子。
 そうこうしているうちに車が玄関前までたどり着きました。
 橋本さまがエンジンをお切りになると、お待ちかねたように我先にとドアを開けられたお姉さま。
 私も手を引かれ、丁寧な幾何学模様が優美に描かれた石畳に降り立ちます。

 ワンッ!

 向かって左側の木立の陰のほうからワンちゃんが一声吠えるお声が聞こえた、と思ったら、茶色くて大きなワンちゃんがお姉さまに飛びかかってきました。
 あっ、と思う間もなくワンちゃんに後ろ足立ちでしがみつかれたお姉さま。
 お姉さまも中腰になられ腕と言わず顔と言わず、ワンちゃんにベロベロ舐められています。

「ジョセもやっぱり来ていたんだねー。ほぼほぼ一年振りなのに覚えていてくれたんだ?どう?元気だった?」

 とても嬉しそうなお姉さま。
 ワンちゃんのフサフサなしっぽも千切れそうなくらいブンブン振られています。
 盛んに飛びついてくるワンちゃんの頭や首や背中をワシワシ撫ぜながら、お姉さまがご紹介してくださいます。

「この子はジョセフィーヌ、先生の数年来のパートナー。会う度に大歓迎してくれるの」
「ジョセ?こっちはあたしのパートナーの直子、よろしくね。あ、首輪の色がおそろいじゃない」

 ご指摘されてあらためて見ると、確かに首輪の色も形も私が嵌めているのとよく似ています。
 お姉さまが指さされる私を見つめられ、束の間思案顔だったワンちゃんが、今度は私めがけて飛びついてきました。

「あんっ!」

 ワンちゃんのしっぽが相変わらずブンブン振られていますから敵意は無いのでしょう。
 思わずしゃがんでしまった私の両肩に前足を乗せてこられ、顔をベロベロ舐められます。

「おお、ジョセも直子のこと気に入ってくれたみたいね。これから数日だけれど、よろしくね?」

 お姉さまがワンちゃんに語りかけられると、すぐさまお姉さまにまとわりつかれるワンちゃん。
 私の顔はワンちゃんのよだれでベトベト。

「直子も怖がらなくていいわよ。この子は今年確か三歳か四歳のとても賢い女の子。先生が愛情たっぷり注ぎ込んでいるパートナー。この子の犬種、わかる?」

 お腹を見せて寝転がっちゃったワンちゃんとじゃれ合われているお姉さまから突然クイズのご出題。
 えっと、テレビで見たことあって、確か人間のためにもすごく役立って盲導犬にも多い犬種で、お名前が何かSFっぽい感じで…そうだ、レが付くんだった、レ、レト、あ、レトリバー!

「あの、えっと、ラ、ラブドールレトリバー!」

「ブッ、ブー。惜しいけれど不正解」

 お姉さまが若干及び腰になってしまっている私に近づいてこられ、ワンちゃんも起き上がって今度は私にまとわりついてくださいます。
 相変わらず嬉しげにしっぽをブンブン振られながら。

「レトリバーは合っているけれど、この子はゴールデンのほう。ゴールデンレトリバー」
「それにラブドールって何よ?等身大美少女ダッチワイフじゃないんだから」

 からかうように私の顔を覗き込まれるお姉さま。

「正確にはラブラドールね。ラブラドールレトリバー。でもこの子はゴールデンレトリバー。見分け方は毛足の長さかな。ジョセみたいにモコモコなのがゴールデンね」

 お姉さまのご説明中もずっと私にじゃれついてくださっているワンちゃん。
 背後に回られたワンちゃんが私のワンピースの裾に頭を突っ込まれ、剥き出しのお尻をフワフワの毛でくすぐってこられます。
 ああん、そんなー、気持ちいいー。

 バタン、バタン…
 ドアが開閉する音がして男性陣も車を降りられました。
 すぐにトランクに取り付かれ、お姉さまのであろうお荷物を引っ張り出されました。

 物音で気づかれたのでしょう、ワンピの裾から頭を抜かれたワンちゃんも、男性陣のほうを見遣っています。
 ただし、しっぽは垂れ下がったままスーンとしたご興味なさげなお顔で。
 このワンちゃんも私と同じく男性は眼中に無いのかな。

 お姉さまのお荷物は、いつも出張時にお持ちになっている大きめのキャリーケースとアンティークなトランクケース、それといつものバーキンと先ほどお持ちになられたトートバッグ。
 それらを玄関の前まで運んでくださった本橋さまと橋本さま。

「荷物はこれだけでいいですかね?」

「あら、ありがとう。うーんと、あれ?直子のポシェットは?…あ、バッグに入っていたわ」

 本橋さまとお姉さまの会話。

「それじゃあぼくたちはここで。車は明日の昼過ぎまでに戻しますから」

「うん、本当にありがとね。道わかる?」

「あ、はい、ナビありますから」

「そっか。気をつけて。良い休日を」

「チーフたちも良い休日を。森下さんもね」

 おやさしいお言葉を残されて車に引き返されるおふたり。
 ゆっくりと方向転換され、滑るように木立の中へと消えていったお姉さまの愛車。

 再びしっぽをブンブン振り回して私のワンピのお尻側の裾に潜り込んでくるワンちゃん。
 ああん、そんなところ舐めないで…

 そのとき荘厳な玄関の観音開きな扉が、スーッと外開きになりました。

 どなたが開けられたのか、そのお姿は大きな扉と壁の影になってしまい最初は見えませんでした。
 ただ、その空間から垣間見えた内部のゴージャスさに目を奪われました。

「あ、お出迎えよ。行きましょう」

 お姉さまに促され石の階段を上がります。
 ワンちゃんは入らないように躾けられているみたいで、階段下にチョコンとお座りになられ名残惜しそうにしっぽが揺れています。
 玄関と同じ高さまで上がったとき、目の前に広がる壮麗な空間。

 床は大理石、高い天井から優美なシャンデリアが大小五基も吊り下がっています。
 横幅だけでも10メートル以上はありそうな空間の左右の壁際には、ゴシックデザインのシックなクロゼット?靴箱?がズラリ。
 更に一段上がった床は、ベルサイユ宮殿でおなじみのヘリボーン柄。

 ずっと奥にもう一枚観音開きの扉があり、その扉の左右脇に弓矢を構えた愛らしいキューピッドの彫刻。
 明かり採りらしき高い場所にある窓には万華鏡を覗いたみたいな模様のステンドグラスが貼られ、今まさに淡い光を床に落としています。
 
 玄関だけでテニスコートが一面分、余裕で取れそうな広さ。
 ただ単に玄関という一言では至極失礼な、敬意を込めて、玄関の間、とも呼ぶべき絢爛豪華な空間。

「エミリー、ひっさしぶりーっ!相変わらず美人さんだねー」

 私が内装に見惚れていると左脇のほうからお声が聞こえ、あわててそちらへ顔を向けます。
 絢爛豪華な玄関の間にはあんまり似つかわしくない、見るからに庶民の普段着な姿の女性がお姉さまとハグされていました。
 おからだを離されたので、その女性のお姿を見ると…

 上はゆったり長めな黄色い半袖Tシャツ、下は真っ黒ピチピチのレギンスだけで裸足。
 ゆるふわなショートボブヘアが細面のくっきりした目鼻立ちによくお似合いな美人さん。
 背はお姉さまと同じくらいで、スラッとスレンダーながら出るべきところはしっかり出ていらっしゃる感じ…Tシャツがゆったりなので確かなことはわかりませんが…

「何言ってるの?6月だったか7月だったかに仕事で会ったじゃない」

「で、こちらがエミリーがぞっこんのプティスールちゃんね。へー可愛い子じゃない?」

 お姉さまのツッコミにはお応えされず私のほうへと近づいてこられたその女性。
 間髪を入れずギュッとハグされました。

「きゃっ!」

「うーん、いい抱き心地、合格よ。よろしくね」

 何がどう合格なのかはわかりませんが、からだが離れてニコッと微笑みかけられます。

 抱きすくめられてわかりました。
 この女性もTシャツの下は素肌なことに。
 しっかり大きくて弾力に富んだふたつの膨らみが私の胸にギューッと押し付けられました。
 女性にも私がノーブラなことはわかってしまったでしょうけれど。

「直子、こちら寺田さん。先生の秘書と言うかマネージャーと言うか、お仕事全般を取り仕切っている偉いかた」

 お姉さまがご紹介してくださり、私はペコリと頭を下げます。

「あ、森下直子です。このたびはお世話になります。どうぞよろしくお願いいたします」

 偉いかたと聞かされ、いささか緊張気味にご挨拶。

「もちろんよ。直子ちゃんっていうんだ?じゃあ、直っちだね。アタシのことは寺ちゃんとか寺っちとか気軽に呼んでいいから、さあ、早く中へ入りましょう」

 フレンドリーにご対応くださる寺田さま。
 正面で見るとTシャツには、ポケットなんとかっていう大流行中ゲームのキャラクターのお顔のイラストが大きく描かれていました。

「あ、スリッパ履く?アタシら的には裸足でも全然構わないのだけれど」

「一応いただくわ。何しろ暑くって足の裏も汗かいちゃっているだろうから」

 お姉さまがお応えになり出てきたスリッパも見た目レザーっぽい有名ブランドロゴマーク付きの高級そうなもので、室内履きとかルームシューズなんて呼びたくなっちゃう。
 お姉さまがバーキンとトランクケース、私がキャリーを畳んで手持ちにして、うんせと運びながらもう一枚の扉の前へ。

 その扉が開いた途端に絶句…うわっ、とか、凄い、とかの声も出ませんでした。

 広大に拡がる円形の空間。
 どこのコンサートホール?って言いたくなるほど高い天井。
 フロアは黒と白の床材で奇麗な市松模様を描き出しています。
 
 奥のほうにはグランドピアノまで置いてあり、今すぐにでもオーケストラを入れて宮廷大舞踏会が開けそう。
 これだけ広いのに玄関の間も大広間もちゃんと涼しいのですから、エアコン代が凄そう。

「いつ見ても凄いわよね、この大広間。来るたびに圧倒されちゃう」

「無駄に広くてね。お客さんがいなくてアタシらだけだと寒々しいだけだよ。アタシらが使うのはあの辺一帯だけだしね」

 お姉さまの感嘆に素っ気なくお答えになられた寺田さまが指さされた方向にもうおひとかた。
 入り口から見て右45度の位置ら辺にシックなワインレッドの立派な三人がけソファー。
 それが向かい合わせに置いてあり、あいだに大きな楕円形のテーブル。
 家具全部が猫足でクラシカルかつお洒落なデザイン。

 そのソファーの私たちが見える位置に、寺田さまとおそろいぽいTシャツを召した妙齢の女性がこちらに軽く手を振っていらっしゃいます。
 ぞろぞろとそちらに移動する私たち。

「こちらは中村さん。しゅっぱ、あ、かなちゃんは会社やめたんだっけ?」

「はーい。7月からプー太郎でーす。寺っちに食べさせてもらってまーす」

 お道化たご様子でお姉さまにお応えになられた中村さまは、肩までのウルフカットがよくお似合いなこちらも小顔な美人さん。
 ボトムはグレーのジャージに裸足。
 寺田さまよりも目と唇が大きめで、なんとなくやんちゃそう、って言うか、ロックバンドでボーカルとかしていそうな印象です。

「でもフリーで同じようなお仕事、つづけられるのでしょう?」

「うん。そのつもりだけど、まあしばらくは寺っちのヒモでいるのもいいかなー、なんてね」

 屈託なく笑われた中村さま。

「ま、そんなことよりここは再会を祝してカンパイといきましょうや。さ、座って座って」

 中村さまに促され対面の高級そうなソファーにお姉さまと並んで腰掛けました。
 テーブルの上にはシャンパングラスとアイスペールに刺さった真っ黒なボトル。
 大きなお皿の上にチーズやクラッカー、キスチョコ、ピスタチオ…

 中村さまがアイスペールから黒いボトルをお抜きになり、両手でお持ちになりました。
 瓶の飲み口のところをチマチマされた後、その部分に白い布地をかぶせられます。
 片手で瓶の底、もう一方で飲み口のほうを持たれ、何やら慎重に作業をされている中村さま。

 やがて、ポンッ!という小気味の良い音がして、中村さまが並んだグラスに飲み物を注ぎ始めます。
 あれって、多分とてもお高いシャンパンだ…

 中村さまが私に飲み物が注がれたグラスを差し出してくださいます。
 受け取った途端に、自己紹介がまだだったことを思い出しました。

「あ、ありがとうございます。森下直子と申します。このたびはお世話になります。よろしくお願いいたします」

 慌てて立ち上がりペコリとご挨拶。
 あはは、と笑われる中村さま。

「うん。知ってる。エミリーから話聞いているし、写真もたくさん見せてもらったし」

 イタズラっぽく笑われる中村さま。
 うわっ、お姉さま、どんな写真をお見せになったのだろう、と急激にモジモジしてしまう私。

 カンパイの後はしばしご歓談。
 お姉さまと寺田さま中村さまの共通のお知り合いのお話がしばらくつづきました。
 私は、このシャンパン美味しいな、とチビチビ舐めつつ蚊帳の外。

「ところで先生は?」

 お話が一段落されたのか、お姉さまが投げかけられた素朴な疑問にかますびしくお応えになられる寺田さまと中村さま。

「昨夜遅くまで仕事されていたみたいで、さっき起きられて今はシャワーでも浴びてるんじゃないかな?」
「先週、百合草ママ御一行が来ていて凄かったのよ。酒池肉林。絵に描いて額に飾ったような酒池肉林」
「それで先生もご愉快が過ぎちゃって、お仕事がちょっと押しちゃった感じ?」

「えっ?百合草ママたちが来ていたんだ?誰と?何人で?メンツは?」

 お姉さまが喰い付かれます。

「総勢八名。ママとミイチャン以外見覚え無い顔ぶれだったから比較的新しいお知り合いとかお客様がたなんじゃないかな?」
「話したらアタシたちをお店で見たことある、って人がふたりいた」

「その中にマダムレイって呼ばれてるノリのいいマダムがいてね。本人がアラフォーにはまだ早い三十路って言ってたな。子供が一人いるけど実家に預けてきたって」
「そうそう、それでそのマダムが連れて来ていたM女を先生がえらく気に入っちゃって」

 愉しそうにご説明してくださる寺田さまと中村さま。

「そのM女、たぶんマダムと同じくらいの三十路だと思うんだけど、に先生がセーラー服着せたりスク水着せたり体操服着せたり」
「滞在中何度も呼び出していたよね?で、その三十路M女の場違いなコスプレがかなり似合うんだ、ヤバイ色気で。相方のマダムも嬉しそうにあっけらかんとはしていたけれど…」

「うん、ちょっと緊張したよね?マダム、実は密かに怒っているんじゃないかって。子供いるくらいだから両刀のバイだろうけど、マダムとM女は完全に主従の雰囲気だったから。人のドレイを好き勝手に、って思ってたりしないかなって」
「で、このM女がまたえらく芸達者でさ…」

 そのとき、大広間の振り子時計が、ボーンッ、とご遠慮がちな音を響かせました。

「あ、やばい。もうこんな時間じゃん。先生には三時見当って言ったよね?」
「だね。そろそろエミリーと直っちには準備してもらわなきゃ…」

 にわかに慌て出されるおふたり。
 お席をお立ちになられ、私たちも急かされるように立ち上がります。

「二階のお部屋に案内するから段取り通り、なるはやで用意してくれると助かる」

 寺田さまが真剣なお顔でおっしゃいました。


2021年7月31日

肌色休暇二日目~いけにえの賛美 03

 お弁当はサンドイッチでした。
 カリカリベーコンチーズ、ハムカツに薄焼き卵、ツナマヨ。
 どれも辛子バターがピリッと効いていて凄く美味しい。

 保冷剤に包まれていたので冷んやり口当たり良く、そんなにお腹空いていないと思っていたのですがついつい手が伸びてしまいます。
 甘いイチゴジャムサンドとオレンジマーマーレードサンド、ピーナッツバターサンドはデザート感覚。
 凍らせてくださっていたらしいペットボトルのお紅茶もほどよく溶けて、乾いた喉を冷たく湿らせてくださいます。

 そんなランチタイムを私は全裸の横座りで、お姉さまは着衣の女の子座りで堪能しました。
 私たちをじっと見据えているレンズに見守られながら。

 お食事中の会話です。

「ひょっとしてスタンディングキャットの方々も、今夜同じ別荘に泊まられるのですか?」

「まさか。タチネコは今日から社員旅行なのよ。同じ方向だったから車の運搬をお願いしたの。帰りは車で帰りたいから」
「この山下りたところの、もっと街中に近い旅館に現地集合二泊三日だそうよ。ゲイ御用達の男臭い旅館で、近くの繁華街にその手の飲み屋もあるんだって」

「こんな山の中だとクマさんヘビさんとか、出ないのですか?」

「それはあたしも初めて別荘に来たときに聞いたことがあるけれど、熊に関しては、この山全体のどこかにはいると思うけれど、こっち側に出た、っていう話は聞いたことがないって。こっち側には熊が好きそうな木の実とか食べ物があんまり無いんじゃないか、って言っていたわ」

「蛇でたちのわるい毒持っているのは熱帯の暑いところばっかのはずだから、見たことないけれど出ても怖がらなくていいんじゃない、ってさ」
「リスとか狐、あとアライグマなんかはたまに見るって。向こうがすぐ逃げちゃうらしいけれど」

「お花摘むっておっしゃっていましたけれど、草ばっかりであんまりお花は咲いていませんね?」

「あれ?知らなかった?お花摘んでくる、っていうのは登山家のあいだで昔からある、女性が草むらで用を足してくる、ことを奥床しく告げるための隠語よ。直子も、もししたかったら、その辺の草むらでしちゃっていいからね」

「そう言えばお姉さま昨日、別荘に着いたらあれこれヤられちゃうはず、っておっしゃっていましたけれど、別荘にもうどなたかいらっしゃっているのですか?」

「それはそうよ。誰もいない別荘に行って、あたしたちふたりだけで宿泊中の衣食住全部まかなえるワケないでしょ?シーズン中管理されていて、宿泊者に食事とか用意してくれる人たちがちゃんとスタンバっているわよ」

「そういう意味ではなくて、私にあれこれするっていう…そんなに、お姉さまでも一目置いてしまうくらい偉い、って言うか怖いかたなのですか?」

「怖いかどうかは知らないけれど、偉いって言えば偉いと思うわ。とくにあたしやうちのスタッフや直子みたいな人にとっては頼もしい人。直子も名前くらい聞いたことあるんじゃないかな」

「まあ行けばわかるわ。直子はお世話になる分カラダで払うお約束だから。着いてからのお愉しみ、だね」

 そんなふうにしてお弁当もふたりでキレイにたいらげました。
 食べ終えて出たゴミを手早くまとめられ、再度風呂敷に包まれたお姉さま。
 トートバッグから取り出されたご自分のスマホをチラッとご覧になられました。

「まだ一時前なんだ。あんまり早く戻るとモッチーハッシーのあられもない姿を目撃することになっちゃいそうだし、しばらく直子と遊んであげる。リンコたちにリクエストももらってきたし」

 謎なことをつぶやかれたお姉さまが、私にお言いつけされます。
 
 軽くなった風呂敷包みと緑色のバスタオルを東屋のテーブルの上に置いてくること、そのとき風に飛ばされないようにしっかり重しを置いておくこと。
 終わったら水道でよく手を洗って、潤んでいたらマゾマンコも洗って、飲み終わったお紅茶のペットボトル一本に水道のお水をいっぱいに詰めてキャップして持って帰ること。
 水色のバスタオルの上にはお姉さまのトートバックが残されています。

「ほら、行ってらっしゃい!」

 風呂敷包みとバスタオル、空のペットボトルを持たされ、裸の背中をパチンと叩かれた私。
 再び陽光が燦々と降り注ぐ日向へと全裸で送り出されます。
 汗なのか愛液なのか、内股がとくにヌルヌル潤んでいます。

 すべてお言いつけ通りに済ませて、お姉さまのもとへ。
 お陽さまの下でオールヌードで居ることにも段々と慣れたみたいで、ちょっぴり余裕が生まれます。
 木立沿いの草花をゆっくり観察しつつ歩を進めていたとき…

「あっ!痛いっ!」

 右の足首からふくらはぎにかけて、なんだかチクチクと何箇所か同時に刺されたような痛みを感じました。
 その強い痺れにも似た感覚はジワジワと広がり、我慢できないほどではないけれどジンジンシクシク痒みに近い、なんだかもどかしい痛み。
 左のふくらはぎにも同じ痛みを感じ、一目散にお姉さまのもとへと駆け戻ります。

「お姉さま、何かに足を刺されちゃったみたいですぅ」

「えっ?何?どうしたの?」

 面食らったお顔のお姉さまと至近距離で向き合います。

「ほら、ここなんです」

 大股開きになってしまうのも構わず、右足ふくらはぎをお姉さまのお顔まで近づける私。
 バレエのドゥバンに上げる要領で上げた足の膝を少し曲げた格好。
 突き出された私のふくらはぎを軽くお持ちになり、しげしげと見つめられるお姉さま。

「別に刺されたような傷もどこにも無いし腫れてもいないみたいよ。どこで刺されたの?」

 気のないお返事なお姉さまの手を引っ張って、さっきチクチクッとした場所までお連れします。
 剥げかかった芝生の中にちょっと背の高い草が群集している以外、地面に虫さんとかも見当たりません。

「ああ、これね。イラクサ。この辺には野生で生えているんだ」

 周囲を見渡されていたお姉さまが、そのちょっと背の高い草を指さされました。
 恐る恐る近づきながらも遠巻きに見つめます。
 お花屋さんの鉢植えで見たことがある青ジソに、葉っぱの形や生え方の感じが似ている気がします。

「茎や葉っぱに毛みたいなトゲがたくさんあるのよ。それでちょっと触っただけでもチクッとするの」
「昔の知り合いにプランターで栽培している人がいてね。その人のはセイヨウイラクサって言ってた。輸入物の種子から育てたんだって」

「こんなイジワルな草、なんで栽培なんてするんですかっ!?」

 まだけっこうジンジン痛痒いふくらはぎの疼きを感じながら、ご関係のないお姉さまに八つ当たり。

「薬草としては優秀らしいわよ。乾燥させてハーブティーにして飲むと花粉症の体質改善に効くらしいし、ビタミンや鉄分が豊富だからヨーロッパではサラダやスープにするらしいわ」
「あたしも不用意に触っちゃって手の指をジンジンさせちゃったことある。微妙な痛みと言うか痺れと言うか、不快感がけっこうしつこいのよね」

 私の隣に並ばれたお姉さまも、それ以上は近づきたくないご様子。

「大丈夫よ、直子の足は見た感じ腫れてもいないし、ちょっと掠めた程度でしょ。10分も経たないうちに不快感は消えちゃうはず」
「痒いからって掻いたりするのが一番良くないって。赤くかぶれたみたいになっちゃったらアロエのジェルを塗るといいらしいわ」

 イラクサのお話はそれで終わり、お姉さまに右手を引かれて木陰のところに連れ戻されます。
 大木の根本から少し離れたところに敷きっぱなしな水色のバスタオル、その上にお姉さまのトートバッグ。
 そのバッグが倒れていて、見覚えある不穏なあれこれがこぼれ出ていました。

「これを両手首に嵌めて」

 渡されたのは黒いレザーベルト状の拘束具。
 両手首に巻き付けてリングを短い鎖で繋げば、あっという間に手錠拘束です。

 案の定、ベルトを巻き終え、祈るように胸の前に差し出した両手首を5センチにも満たない短い鎖で繋がれます。
 その鎖に長い麻縄を結びつけられたお姉さま。
 手錠に繋がった麻縄に引っ張られ、つんのめるように大木の下に連れて行かれる私はまるで囚人のよう。

「あの枝が頑丈そうでよさそうね」

 お姉さまの目線を追うと私の身長の一メートルくらい上、大木の幹がお空へ広がるように三つに枝分かれしたあたりのことみたい。
 お姉さまに視線を戻すと、麻縄のもう一方の先に、先ほどお水を入れてきたペットボトルを結び付けておられます。
 何をされるおつもりなのかしら?

「直子、もう少し木に近づいてくれる?」

 お姉さまからのご指示で大木に寄り添うように立ちます。
 手錠で繋がれた両手は胸の前。
 ペットボトルを持たれたお姉さまが近づいて来られました。
 私の手錠に繋がった麻縄は、まだずいぶん余って地面でトグロを巻いています。

 お姉さまがペットボトルを宙空高く放り投げられました。
 地面に落ちていた縄が、ヘビさんが這うようにシュルシュルっと動きます。
 やがてペットボトルは枝分かれをした幹の又を超え、地面に真っ逆さまに落下します。

「あっ!」

 縄に引っ張られて手錠ごと両手がクイッと上へ少し引っ張られました。

「いやんっ!」

 地面に戻ってきたペットボトルを拾われたお姉さまが、縄をグイっと引っ張られました。
 私の両手も飛び込みをするときの両手のように揃えたまま、頭上高く引っ張り上げられます。
 ピンと張り詰めた縄がもう一度グイっと上に引っ張られ、私は爪先立ちに。

 お姉さまが余っている縄を緩まないように力を込めて引っ張りながら、隣の大木の幹に縛り付けています。
 私は両手を揃えたバンザイの形の爪先立ちで、大木に寄り添うように吊るされてしまいました。
 何もかもが剥き出しな全裸の姿で。

「ふーん、なるほどねえ。確かにリンコたちが口々に言っていたみたいに猟奇的な絵面ではあるわね」

 お姉さまがスマホを構えられ、カシャカシャ写真を撮りながらおっしゃいます。

「リンコたちに頼まれたのよ。熱心だったのはミサのほうだけれど、あの広場の大木に全裸の直子を吊るして写真を撮ってきてくれって」
「大自然の緑と青空と直子のいやらしい肌色ヌードとのコントラストで絶対ゾクゾクする写真になるからって」

「あたしの技量じゃ縄だけで怪我しないように木に吊るすなんて芸当出来ないからね、これは苦肉の妥協策。本当はもっとSMっぽい凄惨な姿にしちゃいたい気もするのだけれど」

 そんなことおっしゃりつつ吊るされた私の前を行ったり来たりして、色々な角度から撮影されるお姉さま。
 お姉さまの背後の三脚ももちろん私に向けられていて、この撮影のご様子もライブ動画撮影されているみたい。

 撮影されたお写真を確認されているのでしょう、三脚の後ろへと下がられたお姉さまがうつむかれてスマホ画面に見入られています。
 そのうちにふとお空を見上げられ、日向を避けるように東屋のほうへと駆け出されるお姉さま。
 えっ!?私はこのまま放置ですか?

 吊るされた私から十数メートル離れてしまわれたお姉さまは東屋の、私に横顔をお見せになる位置のベンチにお座りになり、熱心にスマホの画面をなぞり始めます。
 どうやらメールを始められたみたい。
 おそらくリンコさまたちに写メを送られるのでしょう。

 かまってくださるかたがいなくなり、途端に心細くなってきます。
 今の私の為す術もない状態…

 全裸で手錠拘束された腕を上に引っ張られ、爪先立ちで足元も覚束ず。
 剥き出しのおっぱい、剥き出しの下腹部、剥き出しのお尻。
 本来お外では外気に触れさせては行けない秘部のすべてを、お陽さまの下に晒してしまっている自分。
 隠したくても隠せない生まれたままの姿。
 
 お姉さまはあり得ないとおっしゃっていましたが、もし不意にここに第三者が現われたら、私はどうなってしまうのでしょう…
 途端に思い出す幼い頃に映画やドラマ、小説で感情移入していた悲劇のヒロインたち…

 怪物に捕まったお姫様、悪人に拐われたご令嬢、敵に囚われた女スパイ…
 手足の自由を剥奪され恥ずかしい格好にさせられて、それから…
 彼女たちもきっと今の私の心境と同じだったことでしょう。
 
 今日初めて訪れた名前も知らない山中で、首輪を嵌められた囚人として真っ昼間から素っ裸で磔に晒されている私。
 罪状はもちろん、街中や公共施設内での度重なる公然猥褻罪。
 そんなに見せたいのなら、ずっとそうして見世物になっていろ、と。

 屈辱的で、絶望的で、恥ずかしくて、みじめで、無力で。
 いつものマゾ性とはまた何か違う、せつなさと言うか悔しさと言うか、早くこの状況から解放されたいという祈りにも似た感情が湧き出てきます。
 
 もう5分以上は経っていると思うのですが、戻ってきてくださらないお姉さま。
 草木がそよぐほんの小さな物音にもビクンと怯えてしまう私。
 そんな状況なのに顕著に性的興奮の萌芽が露呈している、はしたな過ぎる自分のからだ…

 知らず知らずに爪先立ちの右足だけ少し膝を曲げて宙に浮かせ、内腿同士を擦り付けてしまいます。
 予想以上にヌルヌル過ぎて恥ずかし過ぎる…
 
「ミサから駄目出しくらっちゃった」

 ようやく戻ってこられたお姉さま。
 時間にして十分も経っていなかったでしょうか。
 私にとっては体感数時間にも思えた狂おしい放置責めでした。

「って直子、またよからぬ妄想していたでしょう?凄くエロやらしい顔になっているし全身汗みずく」
「でも汗だけでもないようね?下半身で一目瞭然」

 お姉さまの恥ずかし過ぎるご指摘に自分の両脚を見ると…
 確かに内腿から滑り落ちている愛液が明らかに白濁していました。

「ミサから指摘されたのもそこなのよ、恥ずかしく晒されているのに表情に余裕あり過ぎ、怯えが足りないって。あたしは一周回ってそのアンバランスさもシュールでアートな感じでいいかな、と思ったのだけれど」

 お姉さまが三脚を畳まれ、その支柱ごとレンズを私に向けてきます。

「放置したのが正解だったみたいね。直子はどんどん自分で自分を追い込むタイプの妄想力旺盛で貪欲なマゾだから」

「ていうことで、ここからはビデオで撮影ね。直子はあたしがいないあいだに没頭していたその妄想に全フリして、やめてください、とか、下ろしてください、とか実際に口に出して真剣に抵抗しなさい。このレンズが直子を拐った悪玉だと思って」

「本当に囚われの身になった気持ちになって絶望的な感じでね。うまく出来なかったら、本当に一晩ここに吊るしっ放しにするから」

 私は本当にそんなふうな気持ちになっていました。
 お姉さまのお言葉が終わるか終わらないうちに全身をくねらせていました。
 
 下ろしてください、許してください、虐めないでください、ロープを解いてください、と大きな声で懇願しながら、激しくジタバタして内股を擦らせ、顔を歪ませ髪を振り乱し…
 
 そんなふうにしているうちに、さっき放置されていたときに感じていた絶望感、恥辱感が快楽への甘い期待と一緒に舞い戻ってきます。
 呼応するようにますますダラダラ内腿を滑り落ちる私の恥ずかしい欲情の雫。

「おーけー。いい画が撮れた。アートから180度、扇情的って言うか生臭いほうへと振り切れちゃったけれど」

 お姉さまが三脚を地面に置かれました。

「グッジョブにご褒美を上げましょう」

 私に近づかれるお姉さま。
 見つめ合うふたり。
 マゾマンコにブスリと挿し込まれる二本の指。
 ロープに吊られてゆらゆら揺れる私を抱きすくめて重なる唇、蹂躙されるマゾマンコ。
 
 青空に私の断続的な淫ら声が溶けていきます。
 お姉さまの美しく火照られたお顔に、私のマゾ性が充足感を感じています。

 縄を解かれて東屋の水道でされるがままに素肌の汗や恥ずかしい分泌物を流されます。
 私もお姉さまもかなりグッタリ。
 でもそれは達成感、清々しさ多めなグッタリ。

 緑色バスタオルでからだを拭われると、まだからだのあちこちがビクンビクン。
 お姉さまがもう一度、ギュッと抱きしめてくださいました。

「さあ、車に戻りましょう。もう一時半回っているし、タチネコの連中も落ち着いている頃でしょう」
「ワンピのボタンは全部キッチリ留めていいわ。モッチーハッシーにこれ以上サービスする筋合いも無いし」

 私のハダカがおふたりへのサービスになっているのか、という点には疑問も残るのですが…
 お姉さまがとてもお愉しそうなので私も嬉しくなります。

 帰り道は広場の正面玄関から出て、整備された歩きやすい道をふたり、手を繋いで歩きました。
 車で通ったとき私は気づかなかった横道があったようで、ああ、こういうふうに繋がっていたんだ、と腑に落ちました。

 駐車場に戻ると本橋さまと橋本さまも、頬がくっつくくらいお互いにぴったり寄り添われ、ベンチでグッタリされていました。

「お待たせ。愉しめた?」

 お姉さまがからかうようにお声がけ。
 気怠そうなお顔で、んっ?、とご反応されるおふたり。

「男性の低い唸り声っていうのも雑音のない自然の中では意外に通るのよね。車の中ではシていないっていうことはわかったわ。さ、行きましょう」

 えっ?私、何も聞こえなかったのだけれど…
 気怠そうなまま立ち上がられるおふたり。
 でもおふたりともなんだかお顔がスッキリされているような。
 あ、手を繋いでいらっしゃるし…

 運転席にはラグジャーの本橋さま、エンジンをかけると流れ出るクイーンさんの厳かなバラード。
 ちょうどいいボリュームでエアコンの涼しさも気持ちいい。

「あなたたち、ちゃんと汗拭いた?何か微妙に車内がオトコ臭いんですけど」

 私もちょっと感じていました。

「水道が無かったから完璧とは言えないけれど、ちゃんとしたつもり…」
「あ、それからサンドイッチごちそうさま。美味しかった…」

 運転しながら本橋さまが少し早口でお応えになります。

「使ったタオルとかティッシュとかゴムとかは?」

 お姉さまってば、お声にSっ気滲み出てますってば。

「出たゴミは全部コンビニ袋で密閉して助手席の下に置いてあります。持ち帰ります。ぼくら、チーフが嫌がることはしませんから…」

 お姉さまの見透かしたようなおからかいが恥ずかしいのか、段々とお声が弱々しくなられる本橋さま。
 それとは関係なく車は再び木立の道を順調に進んでいます。

「んなこと言うなら、俺らにだってアンアン甲高いアヘ声が聞こえていたし、今だってなんとも言えないサカッた女臭さを嗅ぎ取っているんすけどっ!」

 助手席でグッタリされていたチャラ男系橋本さまが、こちらも甲高いお声で突然のご反撃。
 一瞬の沈黙の後、車内が爆笑で包まれました。
 その直後…

 車のウインドウ越しの風景がガラッと変わりました。
 突然木立が途切れ、目の前に平地が広大に開け、その奥にそびえ立つ荘厳な建物。
 さっきの広場から5分も走っていないと思います。

 えっ?何これ!?凄い…


2021年7月24日

肌色休暇二日目~いけにえの賛美 02

 紛うこと無き男性おふたり。

 おひとりは、がっしり筋肉質で短髪日焼けな体育会系、茶色と紺色のストライプなラグビージャージに濃茶のバミューダパンツ、すね毛ボーボー。
 もうおひとりは、細身で天パ気味茶髪にベースボールキャップとミラーサングラスというちょっとチャラ男系、白いTシャツの上に目眩ましみたいなカラフルな幾何学模様のアロハシャツを羽織られ、ボトムは短髪のかたとおそろいのデザインのバミューダパンツ、すね毛はそうでもない。

 短髪のかたのお顔には、確かに見覚えがありました。

「悪いねー、わざわざ遠回りさせて拾ってもらっちゃって」

 行きましょうか、とおっしゃったわりに敷地内で女将さまとしばらくキャッキャウフフされていたお姉さまが、やっとお車の傍までやって来られました。

「いえいえ、親愛なるチーフからのお頼みですし、俺ら普段、こんないい車運転出来ないっすから、なんの問題もないっす」
「来るときも交代で運転してきたんすけど、やっぱりドイツの高級車は違いますね。ちょっとアクセル踏むだけでスーッと加速して」
「高速空いてたもんで、ちょっと試したらあっさり自己最速更新ですわ。なのにエンジンすげえ静かだし」

 代わる代わる興奮気味にまくし立ててこられる男性がた。

「ちょっと、あんまりやんちゃして捕まんないでよ?別荘までは安全第一でね」

「はいはい。麗しきレディおふたりのエスコートですから仰せの通りにいたしますって。クライアントに寄り沿った仕事を、というのが弊社のモットーですので」

 釘を刺されるお姉さまのお言葉にお道化た感じで返されたのは細身のほうの男性。
 このおふたりは、お姉さまの会社と提携関係にある男性用アパレル法人、スタンディングキャット社の社員の方々でした。
 確かマッチョなかたが本橋さまで、チャラ男なかたが橋本さま。

「お世話になった宿の女将さんがお迎えのあなたたち見て、なんだ、やっぱりおふたりともカレシが居るんじゃない、なんて言うから、ノーノーってちゃんと教えてあげたの」
「いえいえ、あたしらGL、あちらはBL。あたしたちと同類の同性愛者、ダンショクカのつがいよ、って」
「そうしたら女将さんてば、あら、本物のゲイカップルなの?って凄く喜んじゃって興味津々、ぜひ今度泊まりにいらして、って伝えてって頼まれちゃった。これ名刺ね」

 後部座席のドアを開けてくださった橋本さまに、旅荘の女将さまのお名刺を渡されたお姉さま。
 それから私が先に乗るように促されます。
 どうやら男性がたが運転席側、私たちは後部座席に乗るようです。

 ラグジャーの本橋さまが運転席、助手席に橋本さま、後部座席に私とお姉さま。
 本橋さまがエンジンをかけた途端、ビートの効いたダンサブルな曲が車内に響き渡りました。

 あ、この曲って確か、レディ・ガガさんのヒット曲…おふたり、こういうサウンドを大音量で響かせながらドライブされてきたんだ…意外とミーハー?
 本橋さまが慌ててボリュームを絞られ、耳障りのない音量になりました。

「今日は道が空いているみたいだし、二時間ちょっとくらいで行けそうですよ」

 助手席の橋本さまが上半身だけ捻られて、後部座席へ話しかけられてきます。

「お昼どきに着いたら先方にご迷惑だろうと思って、宿の人にランチのお弁当作ってもらったの。あなたたたちの分もあるから…ふわぁ…近づいたら途中休憩を取りましょう」

 お姉さまがあいだに小さな欠伸を挟まれ、お応えになりました。
 車は渋滞にも遭わず、快調に一般道を進んでいます。

 これから二時間、そのあいだずっとお姉さまが大人しくされているとは考えられません。
 おそらく高速道路に入ったら、私に何か恥ずかしいご命令やイタズラを仕掛けてくると思います。

 今日はまず、このかたたちの前で辱められてしまうんだ…
 ダンショクカの方々とは知っていても、密室で男性の目の前で、ということに不安と緊張を感じてしまいます。

 このおふたりはおそらく、私のはしたない性癖についてご存知のはずでした。
 お披露目は6月のファッションショー、私は破廉恥なモデルとして、彼らは裏方さんとしてご一緒。
 ステージ上でほぼ全裸な格好でイキ果てる姿までお見せしたのですが、そのときはウイッグも着けメイクも変えて別人、あくまでもショーの為に雇われたモデルという設定でした。

 その後、私がオフィスの慰み者ペットに成り果てた後も、何回かお顔を合わせていました。
 私は主にリンコさまのご命令により、全裸に短い白衣一枚だったり、極小ビキニ姿でお茶をお出ししたりしていました。

 お仕事仲間ということでイタズラ心もあったのでしょうリンコさまから、直子はもう少し男性の視線にも耐性をつけなきゃだめ、と両乳首と陰部のスジに絆創膏を貼り付けただけの全裸で応接室へ行くように命じられたときが一番恥ずかしかった。
 
 さすがにそのときは、私がお茶をお出しして立ち去った後に、あの新人の子、いつもエロい格好だけど何かの罰ゲームさせらてる?大丈夫?ってご心配いただいたそうです。
 ううん、彼女はああいうご趣味なの、って、ほのかさまがあっけらかんとお答えになられた、とお聞きしました。

 そんなふうに気心の知れたお仲間ではあるのですが、やっぱり、男性、というだけで気構えてはしまいます。
 お姉さまは橋本さまと、おそらく共通のお知り合いなのでしょうお取引先の男性のユニークなお噂話で盛り上がられています。

 お外はお陽さまギラギラ眩しいほどの快晴、車内はエアコンとバイブレーター微弱みたいな心地良い振動で快適。
 手持ち無沙汰な私は知らず知らずにふわーっと欠伸をひとつ…

 …

「んっ!」

 何かがゆっくり倒れるようなパタンという物音で目が覚めました。

「あっ、ごめん。やっぱり起こしちゃったか」

 助手席から本橋さまが覗き込まれます。

「高速に入るから運転交代したんだよ。ふたりとも運転したがりだから適当に交互に。そういう約束なんだ」

 大柄な体躯を縮こませて申し訳無さそうにおっしゃる本橋さま。
 まだぼんやりとしている頭で状況を把握しようと目だけで見回すと、私の左肩にお姉さまの右側頭部。
 どうやら高速道路に入る前に側道にいったん停車して運転手を交代したみたいで、さっきの物音はドアを閉じた音?

「チーフもぐっすり眠り込んでいるみたいだし、森下さんもそのまま、眠ってていいよ」
「どうせ、ゆうべはお楽しみだったんでしょ?遅くまで。睡眠不足はお肌の敵よ?安心して。ギリギリの安全運転で送り届けてあげるから」

 RPGの宿屋さんみたいなセリフをからかうみたいに散りばめつつ、口々におやさしくおっしゃってくださるおふたり。

 男性から、森下さん、なんて呼ばれたのいつぶりだろう?
 右肩におからだを預けてくださっているお姉さまの体温が愛おしい…
 あ、音楽がバラードに変わっている…これはジョージ・マイケルさんの…

 まだほとんど寝惚けた頭で受け取った情報に対して脈絡のないことばかり考えつつ、すぐにスブズブ眠気の沼へと引き摺り戻されたようでした。

 次に目覚めたのは、振動によってでした。
 なんだかお部屋全体がガタガタ揺れているな、と。

「んーっ!」

「あ、やっぱり起きちゃった。山道の上り坂だものね」
「さっきの凸凹がひどかったからね。誰でも起きちゃうよ」
「恨まないでね。ぼくはやめとこう可哀想だよ、ってとめたんだ…」

 男女入り混じったお声が聞こえてきます。
 寝惚けまなこを擦りつつ、周りを見ると車の後部座席。
 車は左右に高い木々が立ち並ぶ山道に入っていました。

 そこでふと自分のからだに視線を落としました。

「キャッ!」

 思わずあがる短い悲鳴、眠気も一気に吹っ飛びました。
 私のワンピースの前開きボタンがあらかた外され、はだけた胸元からおっぱいが左右とも完全にお外に露出していました。
 慌てて胸元を掻き合せると、今度は裾が大きく割れて…

「高速下りて山道に入って起きてきたチーフが、この子ぐっすり寝ていてヒマだからストリップしりとりやろう、って言いだしたんだ」

 助手席からマッチョな本橋さまのお声。

「ぼくらが負けたらぼくらのどちらかが一枚づつ服を脱ぐ、チーフが負けたら森下さんのワンピのボタンをひとつづつ外す、っていうルールで」
「ぼくは、森下さんは男性全般が苦手だって聞いていたから、やめておこうってとめたんだよ。起きたときにぼくらが裸だったらびっくりしちゃうだろうし」

 助手席の背もたれからはみ出している本橋さまの両肩が剥き出しなので、おそらくラグジャーは脱がされてしまったのでしょう。
 橋本さまのほうは無傷っぽい、と思ったら、かぶっていたはずのベースボールキャップが消えています。

「それでチーフ、いや森下さんのお姉さまは、とんでもなくイジワルなキチクだよ。どんどんわざと負けて、森下さんのワンピのボタンどんどん外しちゃうんだから」
「ほら、これが女のおっぱい、ほら、これがオマンコ、とか言いながら、森下さんのバスト揺らしたり、ラビア押し広げたり」

「勃った?」

 言い訳するみたいに懸命にご説明くださる本橋さまに、イジワルくお下品に混ぜ返されるお姉さま。

「勃ちませんよっ!女性の裸には。綺麗だな、とは思いましたけどっ!」

 子供のような反発声で嬉しいことをおっしゃってくださる本橋さま。

「しりとり始めたしょっぱなが一番笑ったよな?」

 運転席から橋本さまのお声が割り込んでいらっしゃいます。

「音楽家しりとりって決めて俺がバッハ、って言ったら、すぐにチーフがハイドン、だって」

 爆笑に包まれる車内。
 私はどうリアクションすればいいのかわからず、掻き合せた襟を握りしめつつお愛想笑い。

「さあ、直子のボタンも残すところあとひとつだし、さっさと素っ裸にしちゃいましょう」

 弾んだお姉さまのお言葉であらためて自分のからだを見遣ると、確かにおへそのとこらへんひとつしかボタンは留まっていません。
 さっきまで女神さまのように清らかな寝顔でおやすみになられていた人と同一人物とは思えない、イジワル魔法使いみたいなお姉さまの邪な笑顔。

「国名しりとりね。あたしからいくわよ、パラグアイ。次ハッシーね」

「イタリア。はいチーフ」

「ア?ア…アルゼンチン」

 お姉さまがあっさり負けられ、ついに私の前開きワンピースはフルオープン。
 ついでに左腕も組むみたいに捕まえられ、襟を合わせることも封じられました。
 運転席の橋本さまがルームミラー越しにニヤニヤ視線を注がれているのがわかります。

「あ、そこの二又、右に入って。左行くと別荘だけれど、ちょうどいい時間だしランチタイムにしましょう」
「突き当りが小さな駐車場になっているはずだから、そこに停めて。一時半くらいまで自由時間ね。二時前に着けばいいから」

 木立を抜けた先にポカンと開けた地面剥き出しのスペース。
 確かに車が三、四台くらい駐車出来そうな広さ。
 木立に沿って屋根付きのベンチも二台設えてありました。

「あたしたちは、ちょっと森の奥まで行ってお花摘んでくるから、あなたたちもこの周辺でくつろいでいて」
「はい、これあなたたちの分のお弁当」

 女将さまからいただいた風呂敷包みを広げ、上半分くらいを助手席に手渡されました。
 風呂敷を包み直され、私の右手に持たせます。

「さ、あたしたちは行きましょうか」

「えっ!?この格好でお外にですか?」

 右手に風呂敷包み、左手はお姉さまに掴まれ、私の前開きワンピは素肌全開見え放題なんです。

「大丈夫よ。ここはもう私有地なの。この山のこっちの面の森林、山全体の三分の一くらいは私有地なのよ。三名くらいの共同所有らしいけれど」
「だから部外者は立ち入れないように柵も囲ってあるはず。言わばちょっとした治外法権みたいなところなの」
「本当はここから全裸にしちゃってもいいんだけれど、森の中をちょっと歩くから。枝や葉っぱで素肌に傷つけちゃっても可哀想だから」

 さっさと車を降りられたお姉さまが後ろのトランクをお開けになり、なにやらゴソゴソと物色されています。
 やがてバーキンとは違う、それより少しだけ小ぶりなトートバッグを提げられて後部ドアまで戻ってこられました。

「さあ、行きましょう」

 強引に左手を引っ張られ車外へ出た途端、前開きワンピがマントみたいに風にひるがえります。
 全裸肢体が晩夏の陽射しのもとに丸出し。
 でも山に登って高度があるせいか、空気が澄んで陽射しのわりに嫌な暑さではありません。

「あなたたちも愉しむのはいいけれど、車の中ではやめてね」

 右手にハンディビデオカメラ、左手で私の手を握ったお姉さまが車中のおふたりにご通告。

「オトコ臭さがこもっちゃいそうだし、あたしの車にスケベな臭いを残していいのは直子だけだから」
「ヤるなら大空の下で思う存分にね。あと後始末。それだけはお願いよ」

 からかうようにおっしゃられてからグイッと手が引かれ、道があるのかないのか、木立の中の草むらを歩き始めます。
 
 背の高い木々が生い茂る木立に分け入ると太陽の光が薄れ、なんだか周囲が幻想的。
 緩い風にサワサワさざめく木々の葉っぱたち、時折チチチッとさえずる鳥さんの鳴き声。
 お伽噺の不思議の森にでも迷い込んだみたい。
 
 サクサクと踏みしめる草むらから立ち込める青臭い香り、草いきれって言うのかな?
 胸いっぱいに吸い込むとなんだか懐かしいような気持ちが込み上げてきます。
 五分も歩かないうちに周囲の木々がまばらになり、明るく開けた場所が見えてきました。

「よかったー、あってた。たぶんこっちの方角だと思ったけれど、かなり当てずっぽだったのよね」

 目の前に広がるのは広場と言うか公園と言うか、とにかく確実に人の手の入った草が生い茂るスペースでした。
 広さは、うーん、都心の小学校の校庭くらい?
 地面の基本は芝生で、ところどころ剥げて土が覗いていたり雑草が伸びていたりする、木々に囲まれたほぼ正方形の平地。
 
 真ん中らへんに太くて高くて四方に枝葉が生い茂った立派な樹木がお隣り合わせで二本あり、広めの木陰を作っています。
 私たちが出てきた位置からはずっと奥の木立沿いには、ベンチが並んだ屋根付き吹き抜けの東屋のような建物も見えます。

「去年来たときには、夜にみんなでここでバーベキューしたのよ。満天の星が今にもこぼれ落ちてきそうなほどで、キレイだったなー」

 東屋を目指しつつ、お姉さまがおっしゃいます。
 今でも見上げると文字通り、抜けるような青空です。

 東屋のある一角は、正方形を形作る一辺の木立が途切れていて、そこからお外へと車が一台通れるくらいの道が伸びているので、そこがこの広場の正面玄関なのでしょう。
 東屋は、コンクリートの四角い足場を四本の太い木の柱で囲んだ六畳くらいの長方形スペースで、中央にがっしりした木製のテーブルが置かれ、囲む形で背もたれ無しな石のベンチ。
 隅っこには、運動場などでよく見かける無骨なコンクリ製の水道手洗い場まで設けてありました。

「ここは風が通って気持ちいいわね。まずはお弁当をいただいちゃいましょう。直子はワンピを脱ぎなさい」

 お言葉の前半と後半がまったく無関係なご命令をくださったお姉さま。
 今でも全開で風にヒラヒラそよいでいるぜんぜん役に立っていないマントのようなワンピースではあるのですが、完全にからだから離してしまうことには躊躇いと抵抗が…

「ほら、お尻にこれ敷いていいから。さっさと脱ぎなさい」

 トートバッグの中から折り畳まれた水色のバスタオルを手渡してくださるお姉さま。

「残念ながら本当にここには、せっかく直子が全裸になっても見に来てくれる人は誰も現われそうにないのよね。あ、ひょっとして、それがつまんなくて出し惜しみしてるの?」

 木立側の石のベンチの前で、お姉さまがからかうみたいにおっしゃいます。
 私はビクビク周囲を見渡し、何か物音がしないかと耳をそばだてています。
 だってここってどう見ても、どなたでも立ち寄れる広場にしか思えないのですもの。

「何よりあたしが全裸の直子とランチタイムしたいのよ。ほら、マネだっけモネだっけ?大昔の絵画で貴族みたいな人たちのピクニックだか知らないけれど、草原で食事している構図」
「女性だけなぜだか全裸なのよね。あの絵みるたびにエロいなー、って思ってたんだ。CMNFってやつ?あたしたちだとCFNFだけど」

 そこまでおっしゃってから、あ、そうだ!というお顔になられたお姉さま。
 私の手からバスタオルを取り上げると同時に、背中からスルスルっとワンピースが遠ざかっていきました。

「あっ、いやんっ」

 とうとう真っ昼間の芝生広場で、赤い首輪とベージュのフラットシューズだけ残したスッポンポン。
 両乳首がみるみる背伸びを始めます。

「せっかくだからこんな屋根の下じゃなくて、あの木陰でくつろぎましょう。バスタオルもう一枚あるから、それを敷けばいいし。直子はお弁当だけ持ってきて」

 おっしゃるなり私のワンピースと水色のバスタオルを掴み、トートバッグを提げ直された右腕を私の左腕に絡められ、日向へと駆け出されるお姉さま。
 引っ張られる私も駆け出さざるを得ず、包むもの何もない無防備なおっぱいがブルンブルン乱暴に揺れてしまいます。

 全身に満遍なく陽射しを浴びつつ木陰に到着。
 お姉さまが草の上に水色バスタオルを広げられ陣地の確保。
 もう一枚広げた緑色のバスタオルの上に風呂敷包みを置いて準備完了。

 私を水色バスタオル上に横座りに座らせてからトートバッグをガサゴソ。
 細い棒状の何かを持たれて数メートル離れられました。

 棒状のものは三脚に形を変え、ビデオカメラをセット。
 そのレンズは正しく私に向いています。
 どうやら私の、草上の昼食、はデジタル映像に残されてしまうみたいです。