2021年7月31日

肌色休暇二日目~いけにえの賛美 03

 お弁当はサンドイッチでした。
 カリカリベーコンチーズ、ハムカツに薄焼き卵、ツナマヨ。
 どれも辛子バターがピリッと効いていて凄く美味しい。

 保冷剤に包まれていたので冷んやり口当たり良く、そんなにお腹空いていないと思っていたのですがついつい手が伸びてしまいます。
 甘いイチゴジャムサンドとオレンジマーマーレードサンド、ピーナッツバターサンドはデザート感覚。
 凍らせてくださっていたらしいペットボトルのお紅茶もほどよく溶けて、乾いた喉を冷たく湿らせてくださいます。

 そんなランチタイムを私は全裸の横座りで、お姉さまは着衣の女の子座りで堪能しました。
 私たちをじっと見据えているレンズに見守られながら。

 お食事中の会話です。

「ひょっとしてスタンディングキャットの方々も、今夜同じ別荘に泊まられるのですか?」

「まさか。タチネコは今日から社員旅行なのよ。同じ方向だったから車の運搬をお願いしたの。帰りは車で帰りたいから」
「この山下りたところの、もっと街中に近い旅館に現地集合二泊三日だそうよ。ゲイ御用達の男臭い旅館で、近くの繁華街にその手の飲み屋もあるんだって」

「こんな山の中だとクマさんヘビさんとか、出ないのですか?」

「それはあたしも初めて別荘に来たときに聞いたことがあるけれど、熊に関しては、この山全体のどこかにはいると思うけれど、こっち側に出た、っていう話は聞いたことがないって。こっち側には熊が好きそうな木の実とか食べ物があんまり無いんじゃないか、って言っていたわ」

「蛇でたちのわるい毒持っているのは熱帯の暑いところばっかのはずだから、見たことないけれど出ても怖がらなくていいんじゃない、ってさ」
「リスとか狐、あとアライグマなんかはたまに見るって。向こうがすぐ逃げちゃうらしいけれど」

「お花摘むっておっしゃっていましたけれど、草ばっかりであんまりお花は咲いていませんね?」

「あれ?知らなかった?お花摘んでくる、っていうのは登山家のあいだで昔からある、女性が草むらで用を足してくる、ことを奥床しく告げるための隠語よ。直子も、もししたかったら、その辺の草むらでしちゃっていいからね」

「そう言えばお姉さま昨日、別荘に着いたらあれこれヤられちゃうはず、っておっしゃっていましたけれど、別荘にもうどなたかいらっしゃっているのですか?」

「それはそうよ。誰もいない別荘に行って、あたしたちふたりだけで宿泊中の衣食住全部まかなえるワケないでしょ?シーズン中管理されていて、宿泊者に食事とか用意してくれる人たちがちゃんとスタンバっているわよ」

「そういう意味ではなくて、私にあれこれするっていう…そんなに、お姉さまでも一目置いてしまうくらい偉い、って言うか怖いかたなのですか?」

「怖いかどうかは知らないけれど、偉いって言えば偉いと思うわ。とくにあたしやうちのスタッフや直子みたいな人にとっては頼もしい人。直子も名前くらい聞いたことあるんじゃないかな」

「まあ行けばわかるわ。直子はお世話になる分カラダで払うお約束だから。着いてからのお愉しみ、だね」

 そんなふうにしてお弁当もふたりでキレイにたいらげました。
 食べ終えて出たゴミを手早くまとめられ、再度風呂敷に包まれたお姉さま。
 トートバッグから取り出されたご自分のスマホをチラッとご覧になられました。

「まだ一時前なんだ。あんまり早く戻るとモッチーハッシーのあられもない姿を目撃することになっちゃいそうだし、しばらく直子と遊んであげる。リンコたちにリクエストももらってきたし」

 謎なことをつぶやかれたお姉さまが、私にお言いつけされます。
 
 軽くなった風呂敷包みと緑色のバスタオルを東屋のテーブルの上に置いてくること、そのとき風に飛ばされないようにしっかり重しを置いておくこと。
 終わったら水道でよく手を洗って、潤んでいたらマゾマンコも洗って、飲み終わったお紅茶のペットボトル一本に水道のお水をいっぱいに詰めてキャップして持って帰ること。
 水色のバスタオルの上にはお姉さまのトートバックが残されています。

「ほら、行ってらっしゃい!」

 風呂敷包みとバスタオル、空のペットボトルを持たされ、裸の背中をパチンと叩かれた私。
 再び陽光が燦々と降り注ぐ日向へと全裸で送り出されます。
 汗なのか愛液なのか、内股がとくにヌルヌル潤んでいます。

 すべてお言いつけ通りに済ませて、お姉さまのもとへ。
 お陽さまの下でオールヌードで居ることにも段々と慣れたみたいで、ちょっぴり余裕が生まれます。
 木立沿いの草花をゆっくり観察しつつ歩を進めていたとき…

「あっ!痛いっ!」

 右の足首からふくらはぎにかけて、なんだかチクチクと何箇所か同時に刺されたような痛みを感じました。
 その強い痺れにも似た感覚はジワジワと広がり、我慢できないほどではないけれどジンジンシクシク痒みに近い、なんだかもどかしい痛み。
 左のふくらはぎにも同じ痛みを感じ、一目散にお姉さまのもとへと駆け戻ります。

「お姉さま、何かに足を刺されちゃったみたいですぅ」

「えっ?何?どうしたの?」

 面食らったお顔のお姉さまと至近距離で向き合います。

「ほら、ここなんです」

 大股開きになってしまうのも構わず、右足ふくらはぎをお姉さまのお顔まで近づける私。
 バレエのドゥバンに上げる要領で上げた足の膝を少し曲げた格好。
 突き出された私のふくらはぎを軽くお持ちになり、しげしげと見つめられるお姉さま。

「別に刺されたような傷もどこにも無いし腫れてもいないみたいよ。どこで刺されたの?」

 気のないお返事なお姉さまの手を引っ張って、さっきチクチクッとした場所までお連れします。
 剥げかかった芝生の中にちょっと背の高い草が群集している以外、地面に虫さんとかも見当たりません。

「ああ、これね。イラクサ。この辺には野生で生えているんだ」

 周囲を見渡されていたお姉さまが、そのちょっと背の高い草を指さされました。
 恐る恐る近づきながらも遠巻きに見つめます。
 お花屋さんの鉢植えで見たことがある青ジソに、葉っぱの形や生え方の感じが似ている気がします。

「茎や葉っぱに毛みたいなトゲがたくさんあるのよ。それでちょっと触っただけでもチクッとするの」
「昔の知り合いにプランターで栽培している人がいてね。その人のはセイヨウイラクサって言ってた。輸入物の種子から育てたんだって」

「こんなイジワルな草、なんで栽培なんてするんですかっ!?」

 まだけっこうジンジン痛痒いふくらはぎの疼きを感じながら、ご関係のないお姉さまに八つ当たり。

「薬草としては優秀らしいわよ。乾燥させてハーブティーにして飲むと花粉症の体質改善に効くらしいし、ビタミンや鉄分が豊富だからヨーロッパではサラダやスープにするらしいわ」
「あたしも不用意に触っちゃって手の指をジンジンさせちゃったことある。微妙な痛みと言うか痺れと言うか、不快感がけっこうしつこいのよね」

 私の隣に並ばれたお姉さまも、それ以上は近づきたくないご様子。

「大丈夫よ、直子の足は見た感じ腫れてもいないし、ちょっと掠めた程度でしょ。10分も経たないうちに不快感は消えちゃうはず」
「痒いからって掻いたりするのが一番良くないって。赤くかぶれたみたいになっちゃったらアロエのジェルを塗るといいらしいわ」

 イラクサのお話はそれで終わり、お姉さまに右手を引かれて木陰のところに連れ戻されます。
 大木の根本から少し離れたところに敷きっぱなしな水色のバスタオル、その上にお姉さまのトートバッグ。
 そのバッグが倒れていて、見覚えある不穏なあれこれがこぼれ出ていました。

「これを両手首に嵌めて」

 渡されたのは黒いレザーベルト状の拘束具。
 両手首に巻き付けてリングを短い鎖で繋げば、あっという間に手錠拘束です。

 案の定、ベルトを巻き終え、祈るように胸の前に差し出した両手首を5センチにも満たない短い鎖で繋がれます。
 その鎖に長い麻縄を結びつけられたお姉さま。
 手錠に繋がった麻縄に引っ張られ、つんのめるように大木の下に連れて行かれる私はまるで囚人のよう。

「あの枝が頑丈そうでよさそうね」

 お姉さまの目線を追うと私の身長の一メートルくらい上、大木の幹がお空へ広がるように三つに枝分かれしたあたりのことみたい。
 お姉さまに視線を戻すと、麻縄のもう一方の先に、先ほどお水を入れてきたペットボトルを結び付けておられます。
 何をされるおつもりなのかしら?

「直子、もう少し木に近づいてくれる?」

 お姉さまからのご指示で大木に寄り添うように立ちます。
 手錠で繋がれた両手は胸の前。
 ペットボトルを持たれたお姉さまが近づいて来られました。
 私の手錠に繋がった麻縄は、まだずいぶん余って地面でトグロを巻いています。

 お姉さまがペットボトルを宙空高く放り投げられました。
 地面に落ちていた縄が、ヘビさんが這うようにシュルシュルっと動きます。
 やがてペットボトルは枝分かれをした幹の又を超え、地面に真っ逆さまに落下します。

「あっ!」

 縄に引っ張られて手錠ごと両手がクイッと上へ少し引っ張られました。

「いやんっ!」

 地面に戻ってきたペットボトルを拾われたお姉さまが、縄をグイっと引っ張られました。
 私の両手も飛び込みをするときの両手のように揃えたまま、頭上高く引っ張り上げられます。
 ピンと張り詰めた縄がもう一度グイっと上に引っ張られ、私は爪先立ちに。

 お姉さまが余っている縄を緩まないように力を込めて引っ張りながら、隣の大木の幹に縛り付けています。
 私は両手を揃えたバンザイの形の爪先立ちで、大木に寄り添うように吊るされてしまいました。
 何もかもが剥き出しな全裸の姿で。

「ふーん、なるほどねえ。確かにリンコたちが口々に言っていたみたいに猟奇的な絵面ではあるわね」

 お姉さまがスマホを構えられ、カシャカシャ写真を撮りながらおっしゃいます。

「リンコたちに頼まれたのよ。熱心だったのはミサのほうだけれど、あの広場の大木に全裸の直子を吊るして写真を撮ってきてくれって」
「大自然の緑と青空と直子のいやらしい肌色ヌードとのコントラストで絶対ゾクゾクする写真になるからって」

「あたしの技量じゃ縄だけで怪我しないように木に吊るすなんて芸当出来ないからね、これは苦肉の妥協策。本当はもっとSMっぽい凄惨な姿にしちゃいたい気もするのだけれど」

 そんなことおっしゃりつつ吊るされた私の前を行ったり来たりして、色々な角度から撮影されるお姉さま。
 お姉さまの背後の三脚ももちろん私に向けられていて、この撮影のご様子もライブ動画撮影されているみたい。

 撮影されたお写真を確認されているのでしょう、三脚の後ろへと下がられたお姉さまがうつむかれてスマホ画面に見入られています。
 そのうちにふとお空を見上げられ、日向を避けるように東屋のほうへと駆け出されるお姉さま。
 えっ!?私はこのまま放置ですか?

 吊るされた私から十数メートル離れてしまわれたお姉さまは東屋の、私に横顔をお見せになる位置のベンチにお座りになり、熱心にスマホの画面をなぞり始めます。
 どうやらメールを始められたみたい。
 おそらくリンコさまたちに写メを送られるのでしょう。

 かまってくださるかたがいなくなり、途端に心細くなってきます。
 今の私の為す術もない状態…

 全裸で手錠拘束された腕を上に引っ張られ、爪先立ちで足元も覚束ず。
 剥き出しのおっぱい、剥き出しの下腹部、剥き出しのお尻。
 本来お外では外気に触れさせては行けない秘部のすべてを、お陽さまの下に晒してしまっている自分。
 隠したくても隠せない生まれたままの姿。
 
 お姉さまはあり得ないとおっしゃっていましたが、もし不意にここに第三者が現われたら、私はどうなってしまうのでしょう…
 途端に思い出す幼い頃に映画やドラマ、小説で感情移入していた悲劇のヒロインたち…

 怪物に捕まったお姫様、悪人に拐われたご令嬢、敵に囚われた女スパイ…
 手足の自由を剥奪され恥ずかしい格好にさせられて、それから…
 彼女たちもきっと今の私の心境と同じだったことでしょう。
 
 今日初めて訪れた名前も知らない山中で、首輪を嵌められた囚人として真っ昼間から素っ裸で磔に晒されている私。
 罪状はもちろん、街中や公共施設内での度重なる公然猥褻罪。
 そんなに見せたいのなら、ずっとそうして見世物になっていろ、と。

 屈辱的で、絶望的で、恥ずかしくて、みじめで、無力で。
 いつものマゾ性とはまた何か違う、せつなさと言うか悔しさと言うか、早くこの状況から解放されたいという祈りにも似た感情が湧き出てきます。
 
 もう5分以上は経っていると思うのですが、戻ってきてくださらないお姉さま。
 草木がそよぐほんの小さな物音にもビクンと怯えてしまう私。
 そんな状況なのに顕著に性的興奮の萌芽が露呈している、はしたな過ぎる自分のからだ…

 知らず知らずに爪先立ちの右足だけ少し膝を曲げて宙に浮かせ、内腿同士を擦り付けてしまいます。
 予想以上にヌルヌル過ぎて恥ずかし過ぎる…
 
「ミサから駄目出しくらっちゃった」

 ようやく戻ってこられたお姉さま。
 時間にして十分も経っていなかったでしょうか。
 私にとっては体感数時間にも思えた狂おしい放置責めでした。

「って直子、またよからぬ妄想していたでしょう?凄くエロやらしい顔になっているし全身汗みずく」
「でも汗だけでもないようね?下半身で一目瞭然」

 お姉さまの恥ずかし過ぎるご指摘に自分の両脚を見ると…
 確かに内腿から滑り落ちている愛液が明らかに白濁していました。

「ミサから指摘されたのもそこなのよ、恥ずかしく晒されているのに表情に余裕あり過ぎ、怯えが足りないって。あたしは一周回ってそのアンバランスさもシュールでアートな感じでいいかな、と思ったのだけれど」

 お姉さまが三脚を畳まれ、その支柱ごとレンズを私に向けてきます。

「放置したのが正解だったみたいね。直子はどんどん自分で自分を追い込むタイプの妄想力旺盛で貪欲なマゾだから」

「ていうことで、ここからはビデオで撮影ね。直子はあたしがいないあいだに没頭していたその妄想に全フリして、やめてください、とか、下ろしてください、とか実際に口に出して真剣に抵抗しなさい。このレンズが直子を拐った悪玉だと思って」

「本当に囚われの身になった気持ちになって絶望的な感じでね。うまく出来なかったら、本当に一晩ここに吊るしっ放しにするから」

 私は本当にそんなふうな気持ちになっていました。
 お姉さまのお言葉が終わるか終わらないうちに全身をくねらせていました。
 
 下ろしてください、許してください、虐めないでください、ロープを解いてください、と大きな声で懇願しながら、激しくジタバタして内股を擦らせ、顔を歪ませ髪を振り乱し…
 
 そんなふうにしているうちに、さっき放置されていたときに感じていた絶望感、恥辱感が快楽への甘い期待と一緒に舞い戻ってきます。
 呼応するようにますますダラダラ内腿を滑り落ちる私の恥ずかしい欲情の雫。

「おーけー。いい画が撮れた。アートから180度、扇情的って言うか生臭いほうへと振り切れちゃったけれど」

 お姉さまが三脚を地面に置かれました。

「グッジョブにご褒美を上げましょう」

 私に近づかれるお姉さま。
 見つめ合うふたり。
 マゾマンコにブスリと挿し込まれる二本の指。
 ロープに吊られてゆらゆら揺れる私を抱きすくめて重なる唇、蹂躙されるマゾマンコ。
 
 青空に私の断続的な淫ら声が溶けていきます。
 お姉さまの美しく火照られたお顔に、私のマゾ性が充足感を感じています。

 縄を解かれて東屋の水道でされるがままに素肌の汗や恥ずかしい分泌物を流されます。
 私もお姉さまもかなりグッタリ。
 でもそれは達成感、清々しさ多めなグッタリ。

 緑色バスタオルでからだを拭われると、まだからだのあちこちがビクンビクン。
 お姉さまがもう一度、ギュッと抱きしめてくださいました。

「さあ、車に戻りましょう。もう一時半回っているし、タチネコの連中も落ち着いている頃でしょう」
「ワンピのボタンは全部キッチリ留めていいわ。モッチーハッシーにこれ以上サービスする筋合いも無いし」

 私のハダカがおふたりへのサービスになっているのか、という点には疑問も残るのですが…
 お姉さまがとてもお愉しそうなので私も嬉しくなります。

 帰り道は広場の正面玄関から出て、整備された歩きやすい道をふたり、手を繋いで歩きました。
 車で通ったとき私は気づかなかった横道があったようで、ああ、こういうふうに繋がっていたんだ、と腑に落ちました。

 駐車場に戻ると本橋さまと橋本さまも、頬がくっつくくらいお互いにぴったり寄り添われ、ベンチでグッタリされていました。

「お待たせ。愉しめた?」

 お姉さまがからかうようにお声がけ。
 気怠そうなお顔で、んっ?、とご反応されるおふたり。

「男性の低い唸り声っていうのも雑音のない自然の中では意外に通るのよね。車の中ではシていないっていうことはわかったわ。さ、行きましょう」

 えっ?私、何も聞こえなかったのだけれど…
 気怠そうなまま立ち上がられるおふたり。
 でもおふたりともなんだかお顔がスッキリされているような。
 あ、手を繋いでいらっしゃるし…

 運転席にはラグジャーの本橋さま、エンジンをかけると流れ出るクイーンさんの厳かなバラード。
 ちょうどいいボリュームでエアコンの涼しさも気持ちいい。

「あなたたち、ちゃんと汗拭いた?何か微妙に車内がオトコ臭いんですけど」

 私もちょっと感じていました。

「水道が無かったから完璧とは言えないけれど、ちゃんとしたつもり…」
「あ、それからサンドイッチごちそうさま。美味しかった…」

 運転しながら本橋さまが少し早口でお応えになります。

「使ったタオルとかティッシュとかゴムとかは?」

 お姉さまってば、お声にSっ気滲み出てますってば。

「出たゴミは全部コンビニ袋で密閉して助手席の下に置いてあります。持ち帰ります。ぼくら、チーフが嫌がることはしませんから…」

 お姉さまの見透かしたようなおからかいが恥ずかしいのか、段々とお声が弱々しくなられる本橋さま。
 それとは関係なく車は再び木立の道を順調に進んでいます。

「んなこと言うなら、俺らにだってアンアン甲高いアヘ声が聞こえていたし、今だってなんとも言えないサカッた女臭さを嗅ぎ取っているんすけどっ!」

 助手席でグッタリされていたチャラ男系橋本さまが、こちらも甲高いお声で突然のご反撃。
 一瞬の沈黙の後、車内が爆笑で包まれました。
 その直後…

 車のウインドウ越しの風景がガラッと変わりました。
 突然木立が途切れ、目の前に平地が広大に開け、その奥にそびえ立つ荘厳な建物。
 さっきの広場から5分も走っていないと思います。

 えっ?何これ!?凄い…


2021年7月24日

肌色休暇二日目~いけにえの賛美 02

 紛うこと無き男性おふたり。

 おひとりは、がっしり筋肉質で短髪日焼けな体育会系、茶色と紺色のストライプなラグビージャージに濃茶のバミューダパンツ、すね毛ボーボー。
 もうおひとりは、細身で天パ気味茶髪にベースボールキャップとミラーサングラスというちょっとチャラ男系、白いTシャツの上に目眩ましみたいなカラフルな幾何学模様のアロハシャツを羽織られ、ボトムは短髪のかたとおそろいのデザインのバミューダパンツ、すね毛はそうでもない。

 短髪のかたのお顔には、確かに見覚えがありました。

「悪いねー、わざわざ遠回りさせて拾ってもらっちゃって」

 行きましょうか、とおっしゃったわりに敷地内で女将さまとしばらくキャッキャウフフされていたお姉さまが、やっとお車の傍までやって来られました。

「いえいえ、親愛なるチーフからのお頼みですし、俺ら普段、こんないい車運転出来ないっすから、なんの問題もないっす」
「来るときも交代で運転してきたんすけど、やっぱりドイツの高級車は違いますね。ちょっとアクセル踏むだけでスーッと加速して」
「高速空いてたもんで、ちょっと試したらあっさり自己最速更新ですわ。なのにエンジンすげえ静かだし」

 代わる代わる興奮気味にまくし立ててこられる男性がた。

「ちょっと、あんまりやんちゃして捕まんないでよ?別荘までは安全第一でね」

「はいはい。麗しきレディおふたりのエスコートですから仰せの通りにいたしますって。クライアントに寄り沿った仕事を、というのが弊社のモットーですので」

 釘を刺されるお姉さまのお言葉にお道化た感じで返されたのは細身のほうの男性。
 このおふたりは、お姉さまの会社と提携関係にある男性用アパレル法人、スタンディングキャット社の社員の方々でした。
 確かマッチョなかたが本橋さまで、チャラ男なかたが橋本さま。

「お世話になった宿の女将さんがお迎えのあなたたち見て、なんだ、やっぱりおふたりともカレシが居るんじゃない、なんて言うから、ノーノーってちゃんと教えてあげたの」
「いえいえ、あたしらGL、あちらはBL。あたしたちと同類の同性愛者、ダンショクカのつがいよ、って」
「そうしたら女将さんてば、あら、本物のゲイカップルなの?って凄く喜んじゃって興味津々、ぜひ今度泊まりにいらして、って伝えてって頼まれちゃった。これ名刺ね」

 後部座席のドアを開けてくださった橋本さまに、旅荘の女将さまのお名刺を渡されたお姉さま。
 それから私が先に乗るように促されます。
 どうやら男性がたが運転席側、私たちは後部座席に乗るようです。

 ラグジャーの本橋さまが運転席、助手席に橋本さま、後部座席に私とお姉さま。
 本橋さまがエンジンをかけた途端、ビートの効いたダンサブルな曲が車内に響き渡りました。

 あ、この曲って確か、レディ・ガガさんのヒット曲…おふたり、こういうサウンドを大音量で響かせながらドライブされてきたんだ…意外とミーハー?
 本橋さまが慌ててボリュームを絞られ、耳障りのない音量になりました。

「今日は道が空いているみたいだし、二時間ちょっとくらいで行けそうですよ」

 助手席の橋本さまが上半身だけ捻られて、後部座席へ話しかけられてきます。

「お昼どきに着いたら先方にご迷惑だろうと思って、宿の人にランチのお弁当作ってもらったの。あなたたたちの分もあるから…ふわぁ…近づいたら途中休憩を取りましょう」

 お姉さまがあいだに小さな欠伸を挟まれ、お応えになりました。
 車は渋滞にも遭わず、快調に一般道を進んでいます。

 これから二時間、そのあいだずっとお姉さまが大人しくされているとは考えられません。
 おそらく高速道路に入ったら、私に何か恥ずかしいご命令やイタズラを仕掛けてくると思います。

 今日はまず、このかたたちの前で辱められてしまうんだ…
 ダンショクカの方々とは知っていても、密室で男性の目の前で、ということに不安と緊張を感じてしまいます。

 このおふたりはおそらく、私のはしたない性癖についてご存知のはずでした。
 お披露目は6月のファッションショー、私は破廉恥なモデルとして、彼らは裏方さんとしてご一緒。
 ステージ上でほぼ全裸な格好でイキ果てる姿までお見せしたのですが、そのときはウイッグも着けメイクも変えて別人、あくまでもショーの為に雇われたモデルという設定でした。

 その後、私がオフィスの慰み者ペットに成り果てた後も、何回かお顔を合わせていました。
 私は主にリンコさまのご命令により、全裸に短い白衣一枚だったり、極小ビキニ姿でお茶をお出ししたりしていました。

 お仕事仲間ということでイタズラ心もあったのでしょうリンコさまから、直子はもう少し男性の視線にも耐性をつけなきゃだめ、と両乳首と陰部のスジに絆創膏を貼り付けただけの全裸で応接室へ行くように命じられたときが一番恥ずかしかった。
 
 さすがにそのときは、私がお茶をお出しして立ち去った後に、あの新人の子、いつもエロい格好だけど何かの罰ゲームさせらてる?大丈夫?ってご心配いただいたそうです。
 ううん、彼女はああいうご趣味なの、って、ほのかさまがあっけらかんとお答えになられた、とお聞きしました。

 そんなふうに気心の知れたお仲間ではあるのですが、やっぱり、男性、というだけで気構えてはしまいます。
 お姉さまは橋本さまと、おそらく共通のお知り合いなのでしょうお取引先の男性のユニークなお噂話で盛り上がられています。

 お外はお陽さまギラギラ眩しいほどの快晴、車内はエアコンとバイブレーター微弱みたいな心地良い振動で快適。
 手持ち無沙汰な私は知らず知らずにふわーっと欠伸をひとつ…

 …

「んっ!」

 何かがゆっくり倒れるようなパタンという物音で目が覚めました。

「あっ、ごめん。やっぱり起こしちゃったか」

 助手席から本橋さまが覗き込まれます。

「高速に入るから運転交代したんだよ。ふたりとも運転したがりだから適当に交互に。そういう約束なんだ」

 大柄な体躯を縮こませて申し訳無さそうにおっしゃる本橋さま。
 まだぼんやりとしている頭で状況を把握しようと目だけで見回すと、私の左肩にお姉さまの右側頭部。
 どうやら高速道路に入る前に側道にいったん停車して運転手を交代したみたいで、さっきの物音はドアを閉じた音?

「チーフもぐっすり眠り込んでいるみたいだし、森下さんもそのまま、眠ってていいよ」
「どうせ、ゆうべはお楽しみだったんでしょ?遅くまで。睡眠不足はお肌の敵よ?安心して。ギリギリの安全運転で送り届けてあげるから」

 RPGの宿屋さんみたいなセリフをからかうみたいに散りばめつつ、口々におやさしくおっしゃってくださるおふたり。

 男性から、森下さん、なんて呼ばれたのいつぶりだろう?
 右肩におからだを預けてくださっているお姉さまの体温が愛おしい…
 あ、音楽がバラードに変わっている…これはジョージ・マイケルさんの…

 まだほとんど寝惚けた頭で受け取った情報に対して脈絡のないことばかり考えつつ、すぐにスブズブ眠気の沼へと引き摺り戻されたようでした。

 次に目覚めたのは、振動によってでした。
 なんだかお部屋全体がガタガタ揺れているな、と。

「んーっ!」

「あ、やっぱり起きちゃった。山道の上り坂だものね」
「さっきの凸凹がひどかったからね。誰でも起きちゃうよ」
「恨まないでね。ぼくはやめとこう可哀想だよ、ってとめたんだ…」

 男女入り混じったお声が聞こえてきます。
 寝惚けまなこを擦りつつ、周りを見ると車の後部座席。
 車は左右に高い木々が立ち並ぶ山道に入っていました。

 そこでふと自分のからだに視線を落としました。

「キャッ!」

 思わずあがる短い悲鳴、眠気も一気に吹っ飛びました。
 私のワンピースの前開きボタンがあらかた外され、はだけた胸元からおっぱいが左右とも完全にお外に露出していました。
 慌てて胸元を掻き合せると、今度は裾が大きく割れて…

「高速下りて山道に入って起きてきたチーフが、この子ぐっすり寝ていてヒマだからストリップしりとりやろう、って言いだしたんだ」

 助手席からマッチョな本橋さまのお声。

「ぼくらが負けたらぼくらのどちらかが一枚づつ服を脱ぐ、チーフが負けたら森下さんのワンピのボタンをひとつづつ外す、っていうルールで」
「ぼくは、森下さんは男性全般が苦手だって聞いていたから、やめておこうってとめたんだよ。起きたときにぼくらが裸だったらびっくりしちゃうだろうし」

 助手席の背もたれからはみ出している本橋さまの両肩が剥き出しなので、おそらくラグジャーは脱がされてしまったのでしょう。
 橋本さまのほうは無傷っぽい、と思ったら、かぶっていたはずのベースボールキャップが消えています。

「それでチーフ、いや森下さんのお姉さまは、とんでもなくイジワルなキチクだよ。どんどんわざと負けて、森下さんのワンピのボタンどんどん外しちゃうんだから」
「ほら、これが女のおっぱい、ほら、これがオマンコ、とか言いながら、森下さんのバスト揺らしたり、ラビア押し広げたり」

「勃った?」

 言い訳するみたいに懸命にご説明くださる本橋さまに、イジワルくお下品に混ぜ返されるお姉さま。

「勃ちませんよっ!女性の裸には。綺麗だな、とは思いましたけどっ!」

 子供のような反発声で嬉しいことをおっしゃってくださる本橋さま。

「しりとり始めたしょっぱなが一番笑ったよな?」

 運転席から橋本さまのお声が割り込んでいらっしゃいます。

「音楽家しりとりって決めて俺がバッハ、って言ったら、すぐにチーフがハイドン、だって」

 爆笑に包まれる車内。
 私はどうリアクションすればいいのかわからず、掻き合せた襟を握りしめつつお愛想笑い。

「さあ、直子のボタンも残すところあとひとつだし、さっさと素っ裸にしちゃいましょう」

 弾んだお姉さまのお言葉であらためて自分のからだを見遣ると、確かにおへそのとこらへんひとつしかボタンは留まっていません。
 さっきまで女神さまのように清らかな寝顔でおやすみになられていた人と同一人物とは思えない、イジワル魔法使いみたいなお姉さまの邪な笑顔。

「国名しりとりね。あたしからいくわよ、パラグアイ。次ハッシーね」

「イタリア。はいチーフ」

「ア?ア…アルゼンチン」

 お姉さまがあっさり負けられ、ついに私の前開きワンピースはフルオープン。
 ついでに左腕も組むみたいに捕まえられ、襟を合わせることも封じられました。
 運転席の橋本さまがルームミラー越しにニヤニヤ視線を注がれているのがわかります。

「あ、そこの二又、右に入って。左行くと別荘だけれど、ちょうどいい時間だしランチタイムにしましょう」
「突き当りが小さな駐車場になっているはずだから、そこに停めて。一時半くらいまで自由時間ね。二時前に着けばいいから」

 木立を抜けた先にポカンと開けた地面剥き出しのスペース。
 確かに車が三、四台くらい駐車出来そうな広さ。
 木立に沿って屋根付きのベンチも二台設えてありました。

「あたしたちは、ちょっと森の奥まで行ってお花摘んでくるから、あなたたちもこの周辺でくつろいでいて」
「はい、これあなたたちの分のお弁当」

 女将さまからいただいた風呂敷包みを広げ、上半分くらいを助手席に手渡されました。
 風呂敷を包み直され、私の右手に持たせます。

「さ、あたしたちは行きましょうか」

「えっ!?この格好でお外にですか?」

 右手に風呂敷包み、左手はお姉さまに掴まれ、私の前開きワンピは素肌全開見え放題なんです。

「大丈夫よ。ここはもう私有地なの。この山のこっちの面の森林、山全体の三分の一くらいは私有地なのよ。三名くらいの共同所有らしいけれど」
「だから部外者は立ち入れないように柵も囲ってあるはず。言わばちょっとした治外法権みたいなところなの」
「本当はここから全裸にしちゃってもいいんだけれど、森の中をちょっと歩くから。枝や葉っぱで素肌に傷つけちゃっても可哀想だから」

 さっさと車を降りられたお姉さまが後ろのトランクをお開けになり、なにやらゴソゴソと物色されています。
 やがてバーキンとは違う、それより少しだけ小ぶりなトートバッグを提げられて後部ドアまで戻ってこられました。

「さあ、行きましょう」

 強引に左手を引っ張られ車外へ出た途端、前開きワンピがマントみたいに風にひるがえります。
 全裸肢体が晩夏の陽射しのもとに丸出し。
 でも山に登って高度があるせいか、空気が澄んで陽射しのわりに嫌な暑さではありません。

「あなたたちも愉しむのはいいけれど、車の中ではやめてね」

 右手にハンディビデオカメラ、左手で私の手を握ったお姉さまが車中のおふたりにご通告。

「オトコ臭さがこもっちゃいそうだし、あたしの車にスケベな臭いを残していいのは直子だけだから」
「ヤるなら大空の下で思う存分にね。あと後始末。それだけはお願いよ」

 からかうようにおっしゃられてからグイッと手が引かれ、道があるのかないのか、木立の中の草むらを歩き始めます。
 
 背の高い木々が生い茂る木立に分け入ると太陽の光が薄れ、なんだか周囲が幻想的。
 緩い風にサワサワさざめく木々の葉っぱたち、時折チチチッとさえずる鳥さんの鳴き声。
 お伽噺の不思議の森にでも迷い込んだみたい。
 
 サクサクと踏みしめる草むらから立ち込める青臭い香り、草いきれって言うのかな?
 胸いっぱいに吸い込むとなんだか懐かしいような気持ちが込み上げてきます。
 五分も歩かないうちに周囲の木々がまばらになり、明るく開けた場所が見えてきました。

「よかったー、あってた。たぶんこっちの方角だと思ったけれど、かなり当てずっぽだったのよね」

 目の前に広がるのは広場と言うか公園と言うか、とにかく確実に人の手の入った草が生い茂るスペースでした。
 広さは、うーん、都心の小学校の校庭くらい?
 地面の基本は芝生で、ところどころ剥げて土が覗いていたり雑草が伸びていたりする、木々に囲まれたほぼ正方形の平地。
 
 真ん中らへんに太くて高くて四方に枝葉が生い茂った立派な樹木がお隣り合わせで二本あり、広めの木陰を作っています。
 私たちが出てきた位置からはずっと奥の木立沿いには、ベンチが並んだ屋根付き吹き抜けの東屋のような建物も見えます。

「去年来たときには、夜にみんなでここでバーベキューしたのよ。満天の星が今にもこぼれ落ちてきそうなほどで、キレイだったなー」

 東屋を目指しつつ、お姉さまがおっしゃいます。
 今でも見上げると文字通り、抜けるような青空です。

 東屋のある一角は、正方形を形作る一辺の木立が途切れていて、そこからお外へと車が一台通れるくらいの道が伸びているので、そこがこの広場の正面玄関なのでしょう。
 東屋は、コンクリートの四角い足場を四本の太い木の柱で囲んだ六畳くらいの長方形スペースで、中央にがっしりした木製のテーブルが置かれ、囲む形で背もたれ無しな石のベンチ。
 隅っこには、運動場などでよく見かける無骨なコンクリ製の水道手洗い場まで設けてありました。

「ここは風が通って気持ちいいわね。まずはお弁当をいただいちゃいましょう。直子はワンピを脱ぎなさい」

 お言葉の前半と後半がまったく無関係なご命令をくださったお姉さま。
 今でも全開で風にヒラヒラそよいでいるぜんぜん役に立っていないマントのようなワンピースではあるのですが、完全にからだから離してしまうことには躊躇いと抵抗が…

「ほら、お尻にこれ敷いていいから。さっさと脱ぎなさい」

 トートバッグの中から折り畳まれた水色のバスタオルを手渡してくださるお姉さま。

「残念ながら本当にここには、せっかく直子が全裸になっても見に来てくれる人は誰も現われそうにないのよね。あ、ひょっとして、それがつまんなくて出し惜しみしてるの?」

 木立側の石のベンチの前で、お姉さまがからかうみたいにおっしゃいます。
 私はビクビク周囲を見渡し、何か物音がしないかと耳をそばだてています。
 だってここってどう見ても、どなたでも立ち寄れる広場にしか思えないのですもの。

「何よりあたしが全裸の直子とランチタイムしたいのよ。ほら、マネだっけモネだっけ?大昔の絵画で貴族みたいな人たちのピクニックだか知らないけれど、草原で食事している構図」
「女性だけなぜだか全裸なのよね。あの絵みるたびにエロいなー、って思ってたんだ。CMNFってやつ?あたしたちだとCFNFだけど」

 そこまでおっしゃってから、あ、そうだ!というお顔になられたお姉さま。
 私の手からバスタオルを取り上げると同時に、背中からスルスルっとワンピースが遠ざかっていきました。

「あっ、いやんっ」

 とうとう真っ昼間の芝生広場で、赤い首輪とベージュのフラットシューズだけ残したスッポンポン。
 両乳首がみるみる背伸びを始めます。

「せっかくだからこんな屋根の下じゃなくて、あの木陰でくつろぎましょう。バスタオルもう一枚あるから、それを敷けばいいし。直子はお弁当だけ持ってきて」

 おっしゃるなり私のワンピースと水色のバスタオルを掴み、トートバッグを提げ直された右腕を私の左腕に絡められ、日向へと駆け出されるお姉さま。
 引っ張られる私も駆け出さざるを得ず、包むもの何もない無防備なおっぱいがブルンブルン乱暴に揺れてしまいます。

 全身に満遍なく陽射しを浴びつつ木陰に到着。
 お姉さまが草の上に水色バスタオルを広げられ陣地の確保。
 もう一枚広げた緑色のバスタオルの上に風呂敷包みを置いて準備完了。

 私を水色バスタオル上に横座りに座らせてからトートバッグをガサゴソ。
 細い棒状の何かを持たれて数メートル離れられました。

 棒状のものは三脚に形を変え、ビデオカメラをセット。
 そのレンズは正しく私に向いています。
 どうやら私の、草上の昼食、はデジタル映像に残されてしまうみたいです。


2021年7月17日

肌色休暇二日目~いけにえの賛美 01

  シアワセな夢を見ていました。

 全裸のお姉さまと私が結婚式場みたいな華やかなメインステージ上で抱き合い、互いによだれが滴るほどの熱いくちづけ。
 青空と芝生も見えるのできっとお外でのお式なのでしょう、私たちを見守られるゴージャスな色とりどりのドレスで着飾られた見知ったみなさまからの温かい拍手。
 そのままお姉さまの右手が私のマゾマンコに潜り込み、壮麗なBGMと満場の拍手の中で絶頂を迎える私…

「…ほら、そろそろ起きなさい。お布団を片付けられなくてみなさん困っていらっしゃるじゃないっ…」

 頬をペチペチされる感触。
 お姉さまの手が気持ち良い場所から離れてしまった、と思わずその手を掴まえようとします。

「ああん、あ姉さまぁ、もっとっ、もっとぉぉっ!」

 掴まえた手を自分の下腹部に誘導しようとして振り払われ、ハッと目が覚めました。
 えっ!?私どこにいるのだっけ?あれ?今のは夢?

 慌てて両目を開けても寝起きなのでぼんやりぼやける視界。
 徐々に焦点が合ってくるうちに、理性も戻ってきました。

 私は全裸で、はだけた掛け布団に抱きつくみたいにしがみつき、グイグイ腰を押し付けていたみたい…
 完全に焦点が合った両目で辺りを見回すと…

 作務衣姿のキサラギさま、他にも見覚えのある仲居さまがおふたり、そしてサマーニットとサブリナパンツをスマートに着こなされたお姉さまが私をニヤニヤ笑いで見下されていました。

「あっ、はいっ!ごめんなさいっ!すぐ起きます、今すぐ起きますっ!」

「ほら、もう8時回っているのよ?直子もさっさと準備なさい!10時にはチェックアウトだからねっ!」

 お姉さまの右手が私の剥き出しな尻たぶをペチンと叩きます。

「あんっ!」

 上半身だけ起こすと、傍を通られた仲居さまと目が合いました。
 そこでまた、このお部屋でひとりだけ全裸なんだ、と思い至る私。
 手放していた掛け布団を慌てて引き寄せようとしたとき…

「ほらほら、さっさと内風呂で全身洗ってきちゃいなさい。ちゃんと髪まで洗うのよ。あと歯磨きもね」

 お姉さまのお声とともに掛け布団から引き剥がされ、両腋を持たれて強引に立ち上がらせられました。
 同じ目線の高さになって、あらためて着衣のみなさまから全裸の私へ注がれる視線。

「ああんっ、ごめんなさいっ」

 慌てて前屈みになり、一目散に内風呂へと逃げ込みます。
 寝起き早々、マゾ性がグングン膨れ上がってしまいます。

 とりあえず落ち着かなくちゃ、と冷たいシャワーをまず浴びることにします。
 素肌に当たる冷たい水滴のおかげで、眠気がサッパリ洗い流されます。

 全身がクールダウンすると共に、からだのところどころにムズムズ疼く箇所があることに気づきました。
 お尻とか乳暈とか下乳とか太腿とか、淡いピンク色に微熱を持って腫れている箇所が…

 途端に思い出されるのは、昨夜の恥辱の宴。
 コンパニオンのみなさまと何やら訳あり妙齢OLのみなさまとの女子会で、ひとりだけあっさり全裸にされ散々お尻をぶたれ、開脚ポーズでいたぶられてお姉さまの指でアヌスを貫かれ…

 あれ?その後どうしたのだっけ?
 ずっと気持ち良かったような記憶はあるのだけれど、つづきはさっきまで見ていた夢の顛末に置き換わっていました。

 すっ飛んでしまった記憶に一抹の不安は感じるのですが、それよりも今はお風呂です。
 ちょうどいいお湯加減の浴槽に浸かってから、本格的にからだを洗い始めます。
 
 ほぼ丸一日半ぶりのボディソープの洗礼は気持ち良く、お姉さまと同じシャンプーの香りと泡立ちですっきり爽やか。
 歯磨きも入念に行ない綺麗サッパリ生まれ変わった気分。

 脱衣籠にどなたかがご用意してくださった真っ白で真新しいバスタオルで入念に水気を拭い、さあ、と思ったところで…
 脱衣籠には、私が着けるべき衣服は下着も含め何ひとつ用意されていませんでした。

 仕方なくバスタオルを巻きつけてお部屋へと戻ります。
 お部屋では幾人かの仲居さまたちが、私たちの朝食の準備をしてくださっています。

 そんな中で、さも当然のように私のバスタオルを取り上げられ、全裸に戻して椅子に座らせるお姉さま。
 黙々と働かられる仲居さまがたが真正面に見える位置で私の背後に立たれ、私の髪を梳かしドライヤーを当ててくださるお姉さま。
 仲居さまがたもそこにハダカの女なんていないみたいに、敢えて目線を逸らされ粛々とご自分の責務を全うされていました。

 仲居さまがたが去り、着衣のお姉さまと全裸の私との差し向かい。
 小上がりにご用意してくださった瑞々しい季節のフルーツサラダとプレーンヨーグルトの朝食。
 フォークとスプーンを優雅に動かされつつ、お姉さまが昨夜私が気絶した後のことを教えてくださいました。

 お姉さまのアヌス責めでイッた後、すぐに始まったみなさまの愛撫でもイキまくり、やがて失神してしまったこと。
 大丈夫?死んじゃった?ってみなさまがご心配してくださっているあいだに、スヤスヤと寝息を立て始めたこと。
 大丈夫、この子よくこうなるの、とお姉さまがおっしゃり、再びみなさまのお手が私のからだへ伸びたこと。

 眠りながらもからだに感じているのであろう刺激で頻繁にアンアン喘いでいたこと。
 コンパニオンのサラさまとOLのトモミさまが避妊ゴムをもらって、私のお尻の穴に指を挿し込んでみたこと。
 眠り込んでる裸の女にイタズラするのって凄くセイハンザイっぽいよね、てみなさまで笑ったこと。

 11時頃にそろそろお開きで、とキサラギさまがいらしたこと。
 その後をぞろぞろと女将さま、他の仲居さまがた、花板さま、フロントさまと新妻さまのカップル、初めて見る男性従業員さま数名も現われ、とくに男性陣が眠る私の裸体を至近距離で舐めるように凝視されていたこと。
 テーブルの上は満遍なくびしょ濡れで、みなさま総出で拭き取られ、絨毯も含めてご入念に殺菌消毒されていたこと。

 シヴォンヌさまが私をお姫様抱っこしてくださり、お部屋まで運んでくださったこと。
 いろんな汁でベトベトな私のからだを、お姉さまとキサラギさま、黄色い浴衣のコガさまが濡れタオルで丁寧に拭いてくださったこと。
 別れ際にトモミさまから、なんかいろいろスッキリしちゃった、あなたの直子にありがとうって伝えておいて、ってお姉さまが言われたこと。

 みなさまが去られた後、おひとり残られたキサラギさまがそーっと私の膣に人差し指を挿れられていたのを、お姉さまが目撃されたこと。
 私はお布団にしどけなく横たわっているのに、そのとき、あぁんっ、て反応していたこと。
 キサラギさまも去られた後に目隠しを外して、お姉さまもなぜだか居ても立ってもいられなくなられ、眠る私を愛撫しながら自慰行為をされてから、すぐに眠りに落ちられたこと。

 聞けば聞くほどに身が縮こまる思いでした。
 穴があったらそこに潜り込んで、一生出てきたくありません。
 心の底からそう思うのに、性懲りもなくキュンキュン疼く私のマゾマンコ…

「昨夜の女子会出席者の何人かは、同性でするのも愉しいかもしれないな、なんて思ったのじゃないかしら?」
「たぶん昨夜それぞれの部屋に戻ってから、好奇心ゆえの淫靡な雰囲気で何らかの関係の変化があったんじゃないかな、って思うわ」

 そんなことをのんきにおっしゃるお姉さま。
 そのとき館内電話の呼び出しコールが鳴りました。

「はい…あ、そうですか。わかりました。わざわざありがとうございます」

 お姉さまが受話器を置かれ、急に慌てだされたご様子。

「あと30分くらいでお出迎えの車が着いちゃうってさ。直子もサクッと出かける用意をして」

 おっしゃるなりご自分のバーキンバッグからお化粧ポーチを引っ張り出されるお姉さま。
 えっ?お出迎えの車って…これからどなたかと合流するのかしら?

 出かける準備と言われても、もともと私はポシェットひとつの身でしたから慌てる必要はありません。
 それよりも、私の着衣…

「あ、あの、お姉さま?私は何を着て出かければいいのでしょう…」

 コンパクトミラーを覗き込まれアイメイク真っ最中なお姉さまに、恐る恐るお尋ねします。

「ああ、そうだったわね、そこの風呂敷の中にお洗濯から戻ってきた服がまとめてあるから」

 ミラーを覗き込まれたまま、右手に持たれたアイブラシで広間のテーブルを指さされるお姉さま。
 確かにその上に大きめな渋いちりめん柄の風呂敷包みが置かれています。

「下着類はまだ着けないでいいわ。取りあえず家から着てきた前開きワンピだけ羽織っておきなさい」

 風呂敷包みのところまで移動して、結び目を解こうとしていた私に背後からお声がかかりました。

「…はい」

 お答えして結び目を解きます。
 一番上にはビニール袋に包まれたカッパさまこけし。
 ご丁寧に、消毒済み、という紙片が貼ってあります。
 得も言われぬ気恥ずかしさ…

 その下に自宅から着けてきたブラとショーツ、以下、前開きワンピース、前結びTシャツ、ローライズデニムショーパン、ほとんどシースルーなお花柄ヘナヘナブラウス、赤いおふんどし、赤いシルクおふんどし、水色ハッピと帯、水色浴衣と帯。
 どれも一枚づつビニール袋で密閉されていて、まさにクリーニング屋さんから戻ってきたときみたい。

 お言いつけ通り前開きワンピースのビニールだけ破り、取り出しました。
 急いで袖を通します。
 素肌に触れる布地の感触が凄く久しぶり。
 ボタンを留めてもいいのかな?なんて考えてしまうところが私のはしたない露出マゾ性なのでしょう。

「あと、これも着けておきなさい」

 すっかりメイクを終えられて、より艶やかになられたお姉さまから手渡されたのは、お姉さまとの歴史が刻まれた、くすんだ赤色のごつい首輪。
 受け取った途端にゾゾゾっと被虐が背筋を駆け上りました。

「着け終えたらあたしがメイクして上げるから。すぐ出れる準備は出来ているわよね?」

「あ、はいっ…」

 えっと、ポシェットにはお泊りコスメミニセットと、あ、お風呂場に歯ブラシ置きっぱだった…
 あとは、フェイスタオルとスマホ…あ、そうだ、風呂敷包みも結び直さなきゃ…
 大急ぎで風呂敷を結び直してから、自分の首に首輪を巻き付けました。

 ああんっ!

 ほぼ丸一日ぶりの無骨な首輪の感触。
 別に首周りがキツイわけでもないのですが、そのほんの少しだけ重たい首枷に、お姉さまとの絆を感じます。
 私はやっぱりお姉さまからの束縛を欲しているんだ、とあらためて思い至ります。
 同時に内股がジュンと潤み…

「直子?何でワンピの前ボタン、ひとつも留めていないの?」

 お姉さまにメイクしていただくために差し向かいになったときの、お姉さまの第一声です。

「あ、はい、お姉さまがワンピだけ羽織っておきなさい、とおっしゃられたので、羽織るっていうのは、こういうことかな、って…」

「じゃあ直子は、ずっとその格好でいられるの?これからここを出て、車に乗って山谷超えて他の県にある別荘までドライブするのよ?ずっとそうしていられる?」

「…えっ、いえ、それは…」

「ここではいいでしょうよ、昨日一日で従業員も宿泊客もみんな直子のヘンタイぶりを知ったでしょうから。でもここを出たら、一般道通って高速乗って、途中サービスエリアで休憩するかもしれないし否が応でもいろんな人と出会うことになるの。そのあいだずっとおっぱいとマゾマンコ丸出しに出来るの?」

「あ、いえ、それは…」

「あたしはごめんだわ。公然猥褻幇助罪かなんかでケーサツに捕まったら一生の恥だもの」

 そのときは私が公然猥褻罪なのでしょうが、幇助罪なんてそんな罪もあるのでしょうか?

「ご、ごめんなさい…あ、あの、ボタンを留めてもよろしいでしょうか?」

「あたりまえよ。一番上から下までキッチリ留めなさい。そのほうがアブノーマルな首輪とのコントラストでギャップ萌えが際立つから」

 今朝のお姉さま、なんだかご機嫌ナナメ?
 それでもなぜだか凄くご丁寧にメイクしてくださり、自分でも写真に残したいほど可憐で儚げなメイクを施してくださいました。

「ま、こんなもんかな?最近じゃなかなかお目にかかれない清純派アイドルっぽいイメージ。ま、アイドルなんてしている時点で清純なはずはないのだけれど。どっちにしても昨夜の淫乱痴女直子とは別人だわね」

 おひとりでクスクス笑われるお姉さま。
 ご自分のスマホの画面をチラ見されてから立ち上がられます。

「それじゃあフロントロビーで待ちましょうか。直子の服一式が入った風呂敷は自分で持って出て。他に忘れ物無いわね?」

 お化粧ポーチをご自分のバッグにしまいつつ、中を覗き込まれています。
 お部屋の時計を見ると10時15分前。

「あ、これは直子のポーチに入れといて」

 手渡されたのは無線ローターの受信器のほう。
 渡された途端にキュンときて、大急ぎでポシェットにしまい込みました。

 お廊下に出ると、ワゴンを押した仲居さまがたと頻繁にすれ違いました。
 もちろん私たちの姿を認めるとその場で立ち止まられ、おはようございます、と深々お辞儀してくださるのですが。
 この仲居さまは昨夜の私をご覧になったのかな、とそのたびにドキドキしてしまいます。

 フロントロビーに降りるとロビーは無人。
 フロントカウンターには昨日の新婚旦那さまがおられ、お元気に朝のご挨拶をくださいました。

 昨夜の女子会の方々と鉢合わせしちゃうかな、とビクビクドキドキしていたのですが、大丈夫みたい。
 その他の未遭遇なご宿泊客さまがたらしき人影もありませんでした。
 
 お姉さまがカウンターでご精算を済まされているあいだ、私はソファーで手持ち無沙汰。
 するとそこへキサラギさまが、どこからともなくやって来られました。

「昨夜はよくおやすみになられましたか?」

「あ、はい…」

「本日はこれからどちらへ?」

「あ、はい、あの、お姉さまのお知り合いの別荘にお邪魔することになっていて、えっと、高速道路で、お隣のそのまた向こうの県まで行くみたいです…」

 到着したときと同じように物腰柔らかくご対応してくださるキサラギさまなのですが、昨夜のことがあったので気恥ずかしいと言うか照れくさいと言うか…
 お姉さまは?とカウンターのほうを見遣ると、いつの間にかいらっしゃった女将さま、本日のお着物は鮮やかなスカイブルー、と楽しそうに談笑されています。

「またぜひいらしてくださいね?渡辺さまと直子さまのようなお客様は、従業員一同大歓迎ですから」

「あ、ありがとうございます。ぜひ、また来たいです…ご迷惑でなければ…」

 キサラギさまからたおやかな笑顔で語りかけられ、慌てて御愛想笑顔に戻る私。
 ソファーに座っている私の前で中腰になられているキサラギさまの視線が頻繁に私の首輪に注がれているような気がして、やっぱりなんだか居心地が…
 助けをすがるようにもう一度お姉さまのほうを見ると、フロント男性さまが受話器を持たれていました。

「渡辺さまのお迎えのお車がご到着しました」

 ロビー中に凛と響き渡るフロント男性さまのお声。
 カウンター越しに女将さまと愉しげに笑い合われていたお姉さまが深いお辞儀の交換の後、私のほうへと戻っていらっしゃいます。

「さあ、行きましょうか」

 お姉さまに促され三和土に出て、自分のベージュピンクなフラットシューズに履き替えます。
 靴を履こうと屈もうとしたとき裾が大きく広がり、自分が今、裸ワンピ、ノーパン状態なのを思い出しました。
 履き替えて自動ドアが開いた途端ドッと押し寄せる残暑の熱気。

 ポシェットをパイスラ状に掛け、自分の衣類が入った風呂敷包みを抱えた私。
 右肩にバーキンを提げ、左手にキサラギさまから手渡された別の風呂敷包みを持たれたお姉さま。

 お見送りにお外まで出てくださったのは女将さま、キサラギさま、フロントさま、新妻の仲居さま、花板さま、バスの運転手さま、松ちゃんさま。
 どなたも昨夜の私の痴態をご存知なみなさまばかりでした。
 恥ずかしさにいたたまれなくなって前方を向くと、あれ?

 旅荘の門前に横付けされているのは、池袋の駐車場に置いてきたはずのお姉さまの愛車。
 その前に横並びで立たれている、おひとりのかたには見覚え有るような無いような、いかにもバカンス中とわかるくだけた服装で長身なシルエットなおふたりのお姿。
 おひとりはタレ目のミラーサングラスをかけておられます。
 
 よーく目を凝らして見たら…

 えーっ!?なんでここにこの方々が!?