2016年2月7日

オートクチュールのはずなのに 36

「うふふ。剃り残し発見。やっぱり自分では、お尻のほうまで丁寧に剃れないものね?お尻の穴の周りに縮れたヘアがポツポツ、チョロチョロって」
「あぁーーいやーっ、見ないでリナちゃん・・・」
「失敗したなー。カミソリ、持ってくればよかった。ま、いいや。イベント終わったらじっくり、キレイに剃ってあげるね」

「あんっ!痛ぁい!」
「才色兼備な部長さんは完璧じゃなくちゃ。これじゃあカッコ悪いもの。ほらー。こんなに長いのが肛門の縁に生えてたー」
「あぅぅぅ・・・」

 私もあわてて、自分のお尻の穴の周辺に指を滑らせました。
 幸か不幸かまったくのスベスベ。
 なので、早乙女部長さまの恥毛を抜いたのであろう絵理奈さまのイタズラは、再現できませんでした。

「ねえ、アヤ姉があたしのヘアを剃ったときのこと、憶えてる?」
「仰向けのまんぐり返しで、こーんなに脚を広げさせられて、アヤ姉がお尻にくっつくほど顔を近づけて」
「あうーーっ、いやーっ・・・」

 おそらく絵理奈さまが部長さまの両脚を無理矢理、思い切り押し広げられたのだろうと思い、私も両脚をMの字からVの字に変え、左右に150度くらい広げました。

「あのときのアヤ姉の顔、すごくいやらしかったわよ。目を爛々と光らせちゃって、口は半開きで、今にもよだれを垂らしそうな」
「あたしも仕事柄、ヘアのお手入れでサロンには通い慣れているけれど、あそこまで恥ずかしいことされたのは初めて」

「ピンセットで丁寧に、一本づつ抜いてくれたわよね?こんなふうに」
「あたしの前と後ろの穴に指を挿れたまま、動いちゃだめよ、って叱りつけて、こんなふうに」
「あたし、それをされながら、アヤ姉って、正真正銘のどスケベなヘンタイさんなんだって、確信したんだ」

 絵理奈さまがお話されているあいだ中、部長さまはアンアン喘いでいらっしゃいました。
 ときどき、痛いっ!っていう呻き声が混じるのは、きっと恥毛を抜かれているのでしょう。
 私も、前と後ろの穴に指を挿入し、部長さまが喘ぐお声にリズムを合わせました。

「初めて事務所で会ったときに、ピンときたの。あ、この人、あたしに興味持ったな、って」
「あたし、そういうとこ、鋭いのよ。自分が好かれたか嫌われたか、第一印象でわかっちゃうの」
「アヤ姉が初対面で、相手のからだのサイズを全部見破っちゃうのと同じね」

 部長さまがずっと、低く高くアンアン喘がれているのもおかまいなしに、絵理奈さまが冷静なお声でお話つづけます。
 部長さまの吐息が、着実に昂ぶっていくのがわかります。
 絵理奈さまの指は、お話のあいだも堅実にお仕事をされているようです。

「あたしたちって会って2回目で、もうしちゃったでしょう?あれは、言わばあたしの枕営業。ギャラ良かったから、アヤ姉の仕事、絶対獲りたかったの」
「あたしとしたがってるって、丸わかりだったもの。せっぱつまった顔であたしのことじーっと見て」
「だけど離れられなくなっちゃった。だって、アヤ姉、とても上手なんだもん、気持ちいいこと」

「アヤ姉のためなら、どんな恥ずかしい衣装だって着れるけれど、アヤ姉がいつも余裕綽々なのがニクタラシかった」
「だから、ちょっとゴネて交換条件出したの。アヤ姉にだって、絶対エムっぽい一面もあるはずだと思って」

「うふふ。いい格好。眉目秀麗で名高い部長さんのこんなにいやらしく歪んだ顔見れるのって、世界中であたしだけよね。いつもの、わたくしは何でもわかっています、みたいな上から目線は、どこにいっちゃったのかしら?」
「おっと、おあずけー。まだイカせてあげない。そんな顔したって、だめなものはだーめ。イキたかったらちゃんとあたしにお願いしなくちゃ」

「リナちゃんお願い、もっと、もっとして・・・もうちょっとなの、もうちょっとで・・・お願いぃぃ」
「うわー、お尻の穴がおねだりするみたいにヒクヒクしてる。指抜かれちゃって、そんなに寂しい?」
「もっとおねだりしていいのよ。ほら、自分で力入れて、開いて、すぼめて、開いて、すぼめて」

「肛門と一緒にラビアもウネウネ動くのね?こんな格好、いつも部長さんに叱られている他の社員や取引先の人が見たら、どう思うかしら」
「ほら、まだやめていいなんて言ってないわよ?やめたら金輪際、弄ってあげないから」
「あふぅぅ・・・」
 部長さまの、聞いているだけでゾクゾクしちゃうような、せつなげなため息。

「ふふん。株式会社イーアンドイーが誇るクールビューティも、こうなっちゃったらただのメス犬ね。乳首もこんなにおっ勃てちゃって」
「はぅっ!歯を立てないで・・・ううん、もっと立てて・・・ちぎれるくらいにぃ・・・」
「こう?すっごく固くなってるわよ?コリッコリ。こっちのおマメも」
「あぅっ!そう、そこぉ・・・そこよぉ・・・」
「仕方ないなあ、指も戻してあげる」
「あぅっ!そこ、そこ、そこそこぉ、もっと、もっとぉ・・・あああああーーーっ!!!」
  
 絵理奈さまの嗜虐的なお声と部長さまのあられもない懇願の果て、一際甲高い部長さまの悲鳴が響き、椅子の上の私の腰も、それに合わせて一段高く跳ね上がりました。

「ハアハア、あと、ねえリナちゃん、ハアハア、うちの社名は、イーアンドイーではなくて、ダブルイー、だから・・・」
 荒い息の中から振り絞るような、部長さまのお声が聞こえました。
「あれ?そうだったっけ?あたし、そういうのあんまり気にしないから」
 とぼけたような絵理奈さまのお声。
 その後すぐ、パッチーンという小気味良い打擲音がつづきました。

「はうぅっ!」
「アヤ姉ったら、こんなにされてもまだ、そんなことが指摘出来る余裕があるの?もー、ニクタラシイ。こうなったら徹底的に虐めちゃう。一切あたしに口答え出来ないくらいに。そこに四つん這いになって」
 もう一度パッチーンと音が響き、しばらくガサゴソする音が聞こえていました。
 ついさっきイッて間もないのに、早くも早乙女部長陵辱調教第2回戦の始まりのようです。

 私はと言えば、椅子の上では四つん這いになることが出来ません。
 かと言って、床の上でなるとイヤーフォンが届かなくなってしまいます。
 仕方がないので椅子を降り、デスクの上に上半身を伏せ、お尻を突き出すような格好になりました。
 デスクに押し付けたおっぱいがひしゃげ、尖った乳首がムズムズ疼きました。

 しばらくガサガサ、ジャラジャラが聞こえた後、絵理奈さまのお声。
「ほら、これ。見える?」
「あんっ、まさか、そ、それを、挿れるの?」
 怯えたような部長さまのお声。

「言ったでしょ?アヤ姉があたしにしたこと、全部やってあげる、って。言うなれば今日は、あたしがイベントでちゃんと気持ち良く仕事出来るように接待する、早乙女部長さんのアタシに対する枕営業なのよ。だから、どんな要求だって、部長さんはノーとは言えないの」

 絵理奈さまが部長さまに、何をお見せになったのかはわかりません。
 でも、お尻か性器をイタズラする何らかのお道具であることは確かだと思いました。

「もっと力抜かないと入らないわよ?段々太くなっていくんだから・・・」
 絵理奈さまのそのお言葉でお尻のほうだと思い、私も自分のお尻の穴に人差し指を挿入しようとあてがった刹那・・・
「トゥルルルルルッ・・・」
 電話機の呼び出し音が、びっくりするくらい大きく響きました。

 一瞬、頭の中が真っ白になってフリーズ。
 その後すぐ、あ、そうだ、お仕事なんだ、出なくちゃ、と理解し、あわててデスクから上半身を起こしました。
 その拍子にイヤーフォンが左右とも、両耳からスポンと抜け落ちました。

「は、はい。お待たせしました。お電話ありがとうございます。株式会社ダブルイーでございます・・・」

 全裸でお仕事のお電話に出るなんて、もちろん入社以来初めて。
 立ち上がって受話器を耳に押し付け、ふと視線を下に落とすと自分の尖った乳首が痛々しく背伸びしていました。
 私、なんて破廉恥なことをしているのだろう・・・
 今更ながらの強烈な背徳感と羞恥心が全身を駆け巡りました。

 そのお電話は予想通り、税理士の先生からのものでした。
 幸いなことに書類にも数字にも何の不備も無く、そのまま税務署に申告されるということで、納める税金の総額と明細を教えてくださいました。

 それをメモしながら、私はがっかりしていました。
 だって、その電話が終わってしまえば、私は帰宅しなければなりません。
 部長さまと絵理奈さまの淫靡なヒミツを、それ以上聞くことが出来なくなってしまうのですから。

 受話器を置いて壁の時計を見ると、まだ夕方の5時を少し過ぎたところでした。
 デザインルームにも電話機があるのは、今まで何度か部長さまやリンコさまに取り次いだ経験上、知っていました。

 今のお電話、気づいたかしら?
 おふたりがプレイに夢中になっていて、気づかなかった、ってこともありえるかも。
 部長さまには、7時くらいまでには、ってお教えしたから、もしも気づいていなければ、まだ帰るのを引き伸ばせるかもしれない。
 一縷の望みを託し、大急ぎで外れたイヤーフォンを両耳に挿し直しました。

「・・・だったのかしら?」
「あたしは、呼び出し音は聞こえなかったけれど、電話機のライトがピカピカしていたのは事実よ。この目ではっきり見たもの」
「そうね。音量は絞ってあるから。でも、通話は短かったわよね?ライト、すぐ消えたもの。あんっ!ちょっとお願い、動かさないでくれる?頭が働かないわ・・・あぁんっ」

「その、なんとかって子が帰ったら、堂々とフロアに出れるんでしょ?だったら早く帰しちゃいなさいよ」
「でも、今の電話がそうだったのか、わからないもの・・・」
 どうやら電話があったことには、気づかれたようでした。

「いっそのこと、こっちから内線しちゃえば?それで、そうだったら、さっさと帰れっ、って。違ってたら仕方ないし」
「あんっ。そ、それもそうね。違ったら、こちらからも一回、先生にかけてみなさい、って言うわ」
「うん。それがいい。ただし、そのオモチャは全部、挿したまんま電話するのよ。いつもみたいなお澄まし声で」
「えっ!?、そ、そんな・・・もしバレちゃったら・・・あんっ、どうするのぉ?うちの社員なのよ?」
「だったらバレないように、せいぜいガンバレばいいじゃないの?これもお仕置きの一環。さっきあたしに口答えした罰ね」
 心底楽しそうな絵理奈さまの弾んだお声。

「もたもたしていると、バイブのおかげで、もっともっと高まっちゃうんじゃない?それとも、イク寸前に電話して、いやらしい声を社員に聞かせたいのかしら?」
「わ、わかったわ。だから、あんっ、お願いだから、電話しているあいだ、それを、動かさないで・・・ああんっ」
「それって、これ?それともこっち?うーん。約束は出来ないなー」
 からかううような絵理奈さまのイジワル声の後、数秒して、こちらの内線が鳴りました。

 深呼吸して一呼吸置いてから、受話器を取りました。
 左耳にだけイヤーフォンを挿し、右耳に受話器を押し付けて耳を澄まします。
「はい・・・森下です」
「今、電話があったみたいだけれど、先生から?」
 部長さまの静かなお声が聞こえてきました。

 状況がわかっているためでしょうが、部長さまのお声はとても艶っぽく私の右耳に響きました。
 この電話の向こうで部長さまは、一糸纏わぬ姿で、パイパンにされた秘部と、おそらくお尻の穴にも異物を挿し込まれている状態。
 それなのに、極力平静を装う、わざとらしいくらいの事務的な口調。
 受話器の奥から、バイブレーターが唸るブーンという音まで、低く聞こえてくるような気がしました。
 そして、そんな電話を受ける私のほうも、マゾマンコをグショグショに濡らした全裸。
 数秒の沈黙が、何時間にも感じました。

 ・・・いいえ、違いました。保険の勧誘のお電話でした・・・
 ・・・だから私、まだ帰れません・・・
 
 帰りたくない言い訳が、まず頭に浮かびました。
 でも、この先ぜんぜん、誰からもお電話がかからなかったらどうしよう・・・
 帰るきっかけがつかめずに、あとで先生に直接確かめられたりしたら・・・
 嘘をつき通せる自信がありませんでした。

 ・・・そんなことより、おふたりは今そこで、何をされているのですか?・・・
 ・・・今、どんなお姿なのですか?・・・・
 ・・・私が今、何をしているのか、知りたくないですか?・・・
 
 つづいて、部長さまにお尋ねしたいことが次々と、頭の中を駆け巡りました。
 だけどそんなこと、言い出せるはずがありません。
 私が口にしようとしている言葉は、部長さまを裏切るような形、つまり盗聴と言う卑怯な手段で知ってしまったヒミツなのですから。

「はい。先生でした。何も問題は無かったそうです」
 ゆっくりと、正直にお答えしました。
「そう。よかった・・・」
「それで、今期の納税額は・・・」
「あっ、そ、それは後でいいわ。今聞いても忘れちゃうから、イベントが終わったらゆっくり報告してちょうだい」
 ホッとされた部長さまの一刻も早くお電話を切りたいご様子が、その焦ったような口ぶりでわかりました。

「はい。わかりました」
「ご苦労様。戸締りして帰っていいわよ。あ、帰るときはメインフロアの灯りと空調消して、外鍵も締めていってちょうだい。わたくしたちは、もうしばらく、ここにこもることになりそうだから」
「わかりました、それでは、お先に失礼させていただきます」
「はい。お疲れさま。ごきげんよう」
 プチッとお電話が切れました。

「やっぱり先生だったって。よかった。これでやっと、心置きなく愉しめるわ」
「さすがアヤ姉ね。とてもオマンコにバイブ突っ込まれて、アナルビーズ出し挿れされているようには思えない、名演技だったわよ?」
「あぁんっ、動かさないで、ってお願いしたのにもうっ!リナちゃんはイジワルなんだから」

「うふふ。その代わり名演技のご褒美に、ここからは全力でイカせてあげる。それで今度は、フロアに出て念願のオフィス陵辱プレイをするの」
「だ、だめよまだ。彼女がフロアに出たときに、わたくしが大声あげちゃったらどうするの?電気と空調を消すように指示したから、あの子が出て行くまで静かにしていましょう。空調消したら、そこのパネルでわかるから」

「そんなの、アヤ姉が声をがまんすればいいだけの話じゃない?イキたいんでしょう?あたしがイカせてあげるって言ってるんだから、大人しく従いなさいっ!」
「あっ、あっ、だめ、だめっ、そんな、激しく、あっ、あーーっ・・・」
 
 そこまで聞いたところで、私は静かにイヤーフォンを外しました。
 心の底から愉しそうな、和気藹々としたおふたりのご関係を、とても羨ましく思い始めていました。

 なんだか心身ともにすごくグッタリしていました。
 疲れとか驚きとか、そういうことだけではなく、ムラムラが溜まりに溜まり過ぎて、からだと気持ちが重くなっていたのだと思います。
 早くお家に帰って、心行くまで思う存分オナニーしたい。
 そんな心境になっていました。

 ウェットティッシュで自分のからだと汚した床や椅子の上を丁寧に拭き、モゾモゾと脱ぎ捨てたお洋服を着直しました。
 ブラジャーは着けましたがショーツは穿かず、ジーンズを素肌に直に穿きました。
 それからパソコンを消し電気を消し、わざと大きめな音がするように社長室のドアを閉じました。

 メインフロアに出て、そーっとデザインルームのドアまで近づき、聞き耳を立ててみましたが、何も聞こえてきませんでした。
 とてもしっかりした防音のようです。
 灯りを消してから空調を切り、デザインルームのドアに向かって、ごゆっくり、と一言つぶやいて一礼し、廊下に出ました。

 エレベーターでひとり階下へ降りているあいだ、忘れ物をしたフリをしてもう一度オフィスに戻ったら、どんなことになっちゃうのだろう?なんて妄想しました。
 もちろん実行に移すことは無くオフィスビルを出て、翳り始めた夕暮れの家路を急ぎました。

 もうすぐお家、というところまで歩いたところで立ち止まり、オフィスビルを振り返って見上げると、消したはずの明かりがまた、豆粒ほどの小さな窓に灯っていました。
 部長さまと絵理奈さまは、今もあの窓の中で淫靡な秘め事を、思う存分愉しんでいらっしゃるのだろうな・・・
 いいなあ、部長さまも、絵理奈さまも・・・
 
 今すぐにでもお姉さまにお逢いして、そのしなやかな腕で抱きしめて欲しくてたまらない・・・
 なぜだかそんな、人肌恋しいセンチメンタルな気分になっていました。


オートクチュールのはずなのに 37

2016年1月31日

オートクチュールのはずなのに 35

「自分でスカートめくり上げるの。今日はあたしの言うこと、何でも聞いてくれる約束でしょ?」
 しばらく沈黙がつづきました。
 監視カメラ、つまり、それに付随するマイクが天井に取り付けられているからでしょうか、お声がなくなると、空調の無機質な持続音がやけに大きく両耳に響いてきます。

「へー。奇麗になっているじゃない?ちゃんと約束守ってくれたんだ。嬉しい」
 また少し沈黙。
「いつやったの?」
「・・・ゆうべ・・・シャワーの後に・・・」
 やっと早乙女部長さまらしきお声が聞こえてきました。
 でも、いつもの余裕綽々なご様子ではぜんぜんなく、今にも消え入りそうなか細いお声。

「ねえリナちゃん?もう下ろしてもいいでしょう?こんなの恥ずかし過ぎるわ」
 切羽詰ったような部長さまのお声を、撥ねつけるように絵理奈さまの鋭いお声が遮りました。

「何言ってるの?あたしなんか誰かさんのせいで、イベント当日はその何十倍も恥ずかしい格好で人前に出るのよ?わかってるの?」
「あたしも着エロの仕事で、ずいぶんエロい衣装を着せられてはきたけれど、ここの会社のは次元が違い過ぎ。よくあんないやらしい、変態じみた衣装をいくつも考えられるものよね」
「それに、あたしがこの仕事を請ける条件、忘れちゃった?その代わり部長さんのからだを一日好きにさせて、って、あたしが提案したら、それにうなずいたのは、他でもない、部長さんでしたよね?」
 またしばらく沈黙。

「もっと近づいてよ。隅々までじっくり見せて」
「・・・ぁぅぅ・・・」
 部長さまの、小さく喘ぐようなお声が微かに聞こえました。

「それで、あたしとの約束通り、オフィスに誰もいなくなったら、すぐにノーパンになってあたしを待っていたのよね?パンツ脱ぐときは、窓際で外を向きながら、とも言っておいたはずよ」
「そ、それが、ちょっとアクシデントがあって・・・」
「しなかったの?」

「社員のひとりがどうしても残っていなければならない大事な仕事があって・・・だから今も社内にいるの・・・」
「だからさっき、どこかに電話をかけてたんだ。誰が残ってるの?」
「森下さんていう、新人の子」
「ああ、いつもお茶出してくれる、あの気の弱そうな子か」

「でも、それってスリリングで面白いんじゃない?部長さんのえっちな声が外に洩れて、その子にバレちゃったりして」
「・・・それはたぶん大丈夫。森下さんにはずっと社長室にいるように言ってあるし、ここと社長室は離れているから」
「それに、この部屋では、ミシンかけたり、けっこう大きな音を出す工具仕事もするから、防音を施してもあるの」
「ふーん。それであたしをこの部屋に連れ込んだんだ。でも、いくら防音だからって、過信はしないほうがいいと思うな。今日、あたし、部長さんのからだをとことん、思う存分愉しむつもりだから。それこそ、部長さんが、その奇麗な顔をクシャクシャにして泣き叫んじゃうくらいに」

「あ、それと、これも忘れないでね。今日という日付を指定したのも、オフィスでやりたい、って言い出したのも部長さんのほうなんだからね?社員が残っているのがアクシデントなら、それは部長さんのミス」
「もしも部長さんが、防音も役に立たないくらいのあられもない声をあげて、その新人の子に聞かれちゃって、社内での立場がおかしくなっちゃったとしても、それは全部、自己責任よ」

「部長さん、仕事のときは凄く凛々しくて社員にも厳しいものね?そんな部長さんが、自分でスカートめくり上げて、年下のあたしに、自分でパイパンにしたオマンコを見せつけているんだもの」
「森下さんとやらがこの光景を見たら、どう思うかしら?写真に撮って、持っていって見せてあげたいわ」
「いやっ。リナちゃん、写真だけはやめて」
 部長さまの悲痛なお声。

「冗談よ。あたしだって、別に部長さんを追い詰めたいわけじゃないもの。ただ、たまには変わったシチュエーションで愉しみたいだけ」
「はぅぅっ!」
 不意に部長さまの甲高い吐息。

「うわっ、ビッチャビチャ。いつもの倍くらい濡れてる。そんなにノーパン、気に入った?」
「あっ、あっ、あっぅん・・・」
「いつもはあたしに好き放題して悦んでいるのに、今日はすっかりしおらしいのね。ひょっとして部長さんも、マゾっ気、あるんじゃない?」
 部長さまの悩ましげなため息が、絶え間なく聞こえてきます。

「クチュクチュいってる。クリちゃんもフル勃起。早乙女部長さんって、いやらしーっ。指、増やしてあげよっか?」
 絵理奈さまのからかうみたいな、心底愉しそうななお声。

「さっきの話のつづきだけど、それならいつ、ノーパンになったの?」
「あんっ、か、彼女が帰れないことを知って、あぅ、あわててトイレへ行って・・・あっ、あっ・・・」
「約束を守ろうとする、その心がけはエライいじゃない?気づかれなかった?」
「あっ、い、いいっ、た、たぶん・・・」
 喘ぎながらも一生懸命お答えしようとしている部長さまのお声が、すっごくエロい。

「脱いだパンツ、見せてよ」
「あっ、あっ、あっ」
 喘ぎ声と共に、衣擦れのガサゴソ。
「脱いだパンツとパンストをスカートのポケットに入れとくなんて、エレガントな部長さんのすることではなくってよ」
「あん、だめ、あっ、ス、スカートが、汚れちゃうわ、ぁぅぅ・・・」
「こんなときでも、身だしなみには気を遣うのね。ご立派な部長さんだこと。汚したくなかったら、しっかりめくっていなさい」
「いい、いい、いいーっ・・・・」
「うわ。ちょうどオマンコのところがベチョベチョじゃない。パンツも、パンストにまで。パイパンにしたから感度上がったのかな?」
「ということは、部長さんたら、部下と仕事の話しながらも、ジワジワ、オマンコ濡らしていたんだ?」
「いやっ、あんっ、そんなイジワル、いぃぃ、言わないで・・・」

「それに、パイパンにすると、ただでさえ派手なラビアが丸出しになって、すごく卑猥。まるでブラックローズ。濃赤の薔薇の花みたい。ビラビラが指に絡み付いてきてるわよ?」
「あん、あん、いや、引っ張っちゃだめ、そこ、そこ、ああんっ・・・」
「でもあたし、部長さんのこのオマンコ、大好きだな。あったかくて、締め付けも良くて。部長さんて、ルックスはエレガントで品がいいのに、オマンコだけは思いっきりお下品なのよね?」
「・・・あふぅ、そこ、そこもっと、そこがいいのっ、リナちゃん・・・」

「たまには攻めと受けを変えてみるのも新鮮じゃない?いつも、あたしばっかりイカされてるから」
「あん、リナちゃん、もっともっとぉ・・・」
「ほら、そんなに腰をガクガクさせたら、おツユが飛び散って、それこそスカートが汚れちゃうわよ?」
「あうううっ、あーんっ、あーーーーーっ!」
 部長さまのお声がどんどん大きくなり、激しい衣擦れのような音と共に、ブチュブチュという淫靡な音まで聞こえてきました。
「今、3本よ。どう?イキそう?イクときは言うのよっ!」
「ああん、いいっ、いいっ、いいいいいぃぃぃっ・・・」

「はうぅんんんんぅぅぅ・・・」
 固唾を呑んで聴覚に集中していたら、突然、気の抜けたような部長さまのお声。
 やるせなさそうな、ハアハアという荒い息遣いがせわしなくつづきました。
「そんなにあっさりイカせてはあげないわよ。いつもあたしにしていること、そっくりそのままやってあげる。ほら、服、全部脱いで。早乙女部長さん?」
「そんな目で見たって駄目よ。今日は焦らしに焦らしまくってあげる」
 ガサゴソという衣擦れの音。

「・・・ねえ、リナちゃん?その、わたくしを、部長さん、て呼ぶのやめない?なんだかとても、気恥ずかしいわ」
「あら、なんで?せっかくアヤ姉のオフィスでの陵辱プレイなんだから、それっぽい雰囲気出るようにわざわざ呼んであげているのに」
「それは、そうなのだけれど、ここはわたくしの現実の職場だし、そこでこんなことをして・・・なんだかとてもイケナイことをしているような気になって・・・それに、社内に社員もまだいることだし・・・」
 途切れ途切れに弁明される部長さま。
 ときどきお声がくぐもるのは、お洋服を脱ぐためにうつむいたりされているせいでしょうか。

「そういうのを期待してアヤ姉は、今日、ここでしよう、って言ったんじゃないの?自分の職場っていう、何て言うか、背徳的なシチュエーション?」
「そうだけれど、まさか社員が残るとは思っていなかったのよ。ふたりだけになれると思って・・・」
「あたしだって心外だわ。本当は、早乙女部長さんの、あのご立派なデスクの上でM字開脚させて、パイパンオマンコをじっくり虐める心積りだったんだもの」
 絵理奈さまのお声もときどきくくぐもるので、おそらく絵理奈さまもお洋服を脱がれているのでしょう。

「それで、ビルの窓から外向かせて、アヤ姉のイキ顔を世間様に晒してもらおうと思っていたのに、とんだ計画倒れ。この部屋、窓がないんだもの」
「でも、まあいいわ。その、なんとかって子が帰ったらフロアに出ましょう、時間はたっぷりあるし。オモチャもたくさん持ってきたの。全部、部長さんがあたしに使ったものだから、それを部長さんに使ったって、文句を言われる筋合いはないわよね?」
「あっ!リナちゃん、ジーンズの下に、それを着てきたの?」
 突然、部長さまのびっくりしたようなお声が響きました。

「そうよ。部長さんたちが丹精込めてお作りになられた、この破廉恥なキャットスーツ。あたしのからだをさんざん撫で回しながら採寸して、あたしのボディラインが丸出しになるように仕立てられた、セクハラみたいなラテックススーツ」
「さすがに来るときはこの上に、Tシャツかぶってきたけどさ。通り歩いているだけで、なんだかムラムラしちゃったわよ」
「おまけに、ご丁寧に、おっぱいと股のとこだけジッパーでパカッと取り外して露出させるなんて、誰がこんな変態仕様を思いついたのよ?」
「それは・・・欧米のボンデージ界隈では普通のことなのよ。ラテックスフェティッシュはアートの世界でも一目置かれていて・・・」

「そんなこと聞いているんじゃないの。アヤ姉は3日後に、あたしにこれを着させて、大勢の人の前に晒すのでしょう?イベントのショーでは、ジッパーも外して、あたしのおっぱいとオマンコを見世物にするのでしょう?」
「ううん。もちろんちゃんとパスティーズと前貼りはするから」
「そういう問題じゃないのっ!」
 苛立ったような絵理奈さまの大きなお声が響き渡りました。

「あたしだってプロだから、一度引き受けた仕事はちゃんとやるわよ。でも今日、アヤ姉が、たかがオフィスでノーパンになったくらいで、恥ずかしいとか言ってるのに、カチンときちゃっただけ。あたしはもっと恥ずかしいのに・・・」
「うん。わかっているわ。ごめんねリナちゃん。だから今日はわたくしに、どんなことをしてもいいから。それでリナちゃんの気が晴れるのなら」
「ふん。アヤ姉のそういうところがニクタラシイのよね。真っ裸でオマンコグショグショにしているクセに、なんか余裕があるところが」
 絵理奈さまの拗ねたような憎まれ口。

「それに、やっぱりアヤ姉のからだって、奇麗過ぎる。おっぱいの形も、お腹もお尻も全部。ズルイくらいに」
 絵理奈さまのお声から、さっきまでの苛立ったご様子はすっかり消え、どことなく甘えているような口調に変わっていました。

「ま、いいか。今日は、その奇麗なからだをめちゃくちゃに辱めてあげるんだから。ほら、ぼーっと立っていないで、そこに四つん這いになって、あたしの脚をキレイに舐めなさい。株式会社イーアンドイーのナンバーツー、早乙女綾音、企画・開発部長さん?」
 パチン、と大きな音がしたのは、部長さまの裸のお尻を、絵理奈さまがぶたれたのでしょう。
「ほら、アヤ姉御自慢の変態衣装のエクスポーズ仕様を外して、あたしのおっぱいとオマンコ晒してあげるから、あたしが満足するまで、しっかり舌でご奉仕するのよっ!」

 ジジーッとジッパーを開けるような音がいくつかした後、またパチンッ!
「ああんっ!」
 紛れもなく、部長さまが淫靡に呻かれるお声。
 私は、もはや限界でした。

 あの理知的で気品と自信に満ち溢れたお美しい早乙女部長さまが、同じフロアの一室で全裸になって、年下の女性に虐められている。
 お相手は、今度のイベントでモデルをされる、これまた華やかでお美しい、私と年齢も変わらない絵理奈さま。
 どうやらおふたりは、おつきあいされているようで、今日はこのオフィスで、おふたりだけで心ゆくまで愛し合うご予定だった。
 前からのお約束だったらしく、昨夜、部長さまは、ご自分で剃毛され、おトイレでノーパンになった。
 私とお話しされているとき、すでに下着を濡らされていた。
 
 そして今、真っ裸の部長さまは、キャットスーツのおっぱいと股間だけを剥き出しにした絵理奈さまの足元に四つん這いでひざまづき、お尻をぶたれながら絵理奈さまをご満足させるため、懸命にご奉仕されている。

 私は、デザインルームの中に入ったことがなかったので、その間取りを具体的に思い浮かべることは出来ませんでした。
 なんとなく、ミシンやトルソーや、パソコン類が雑然と並んだ一室で、絵理奈さまが椅子にお座りになり、部長さまがひざまづいている絵が浮かんでいました。
 そしてその情景は、眩暈がしちゃうくらい蠱惑的でした。

 イヤーフォンからは、ピチャピチャという舌なめずりのような音と、あっ、あっ、と強く弱く響く絵理奈さまらしき悩ましいため息、そして、ときどきパチンと皮膚をたたく音、その直後に部長さまのせつなげな呻き、が、延々とつづいていました。
 絵理奈さまも無駄口は叩かず、部長さまの愛撫に意識を集中されているみたい。
 今すぐにでもここを飛び出してデザインルームのドアを開け、お美しいおふたりの、その淫らな営みを直接見てみたい、という衝動を抑えるのは、並大抵のことではありませんでした。

 いつの間にかパソコンのボリュームアイコンは最大まで上げられ、右耳奥深くイヤホンモニターを挿し直してから右手が右耳を離れ、お腹とジーンズのジッパーフライのあいだに潜り込んでいました。
 
 例のアイドル衣装開発会議以来、私は用心深くなっていました。
 いつなんどき、またフィッティングモデルを唐突に頼まれ、みなさまの前で着替えなくてはならないときが来るかもしれないと思い、ジーンズのときでもノーパンで来ることは、やめていました。

 でも今は、ノーパンであろうがなかろうが、大した問題ではありませんでした。
 右手が潜り込んだ股間のショーツは、すでにグショグショでした。
 知らぬ間にオシッコをお漏らししちゃったのではないか、と思うくらい、ジーンズの表布にまで滲み出しちゃうくらい、ビショビショに濡れそぼっていました。
 ショーツの薄い生地なんて、濡れてしまえばあってもなくても同じようなもの。
 紐状になって何の役にも立たず、指先はすんなり、生身のマゾマンコに到達していました。

 ブラウスも、なぜだかおへそ近くまでボタンが外れ、ハーフカップのブラジャーが下にずり下がって、両乳首とも精一杯、宙空を突いていました。
 もはやオナニーする気マンマン、しないでいられるワケがありません。
 オフィス内で、チーフに断りもなくオナニーまでしちゃおうと思ったのは、そのときが初めてでした。
 早乙女部長さまだって今、神聖なオフィスで裸になって、アンアン喘いでいらっしゃるのだから・・・
 それが私のチーフ、いえお姉さまに対する言い訳でした。

「あーーっ、いいっ、いいっ!いいっっーーーーー!!!」
 一際甲高い絵理奈さまの嬌声が、イヤーフォンスピーカーを通って両耳の鼓膜を震わせ、しばらくは荒い吐息と、何かガサゴソする音。
 束の間の休息。
 私も自分を慰める指を止め、しばしイヤーフォンからの音に耳を澄ませました。

「ふう・・・ちょっとスッキリしたから、今度はアヤ姉の番ね。その机に上がってみて」
 ガタガタという音。
「あーあ。床がビショビショ。アヤ姉がひざまづいていたところもトロトロじゃない?あたしの舐めていただけなのに、そんなに感じちゃった?」
 俄然イジワルそうな口調になった絵理奈さまのお声。

「違う!腰掛けるのではなくて、上がっちゃうの。お尻を奥に滑らせて、両脚はもちろんM字開脚よ」
 またパチンという音。
 絵理奈さま、鞭か何かお持ちなのかしら。

「ここって、誰の机?ずいぶんキレイに整頓されていて好都合だわ。部長さんのお尻を乗っけても、まだぜんぜん余裕がある」
「ここは、パタンナーのリンコ・・・」
「ああ、あのオタクコンビの貧乳で、なれなれしいほうね。でも、あの子って確かにデザインセンスあるわよね。顔も猫みたいで可愛らしいし」
 ずいぶんなおっしゃりようですが、そのエスっぽい冷たく棘のある物言いに、私のマゾ性がビンビン反応しました。

「ふふん。いい眺めだわ。手始めにまず自分で、広げてもらおうかな、その熟した黒薔薇パイパンオマンコを」
「こ、こう?」
「もっとめいっぱい。うわーっ、濁ったスケベ汁がダラダラ垂れてくる。もう本気モードなの?あとでちゃんと拭いておかないと、リンコさんに怒られるわよ?」

 絵理奈さまのお下品なお声にゾクゾク感じながら、ピンとひらめきました。
 そうだ、私も絵理奈さまに虐めていただこう。
 どうやらこれから部長さまにいろいろされるみたいだから、私もそのお言葉通りに従って、部長さまと一緒に辱めてもらおう。
 絵理奈さま、エス属性、強いみたいだし。

 我ながら良いアイデアだと、大急ぎでショーツもろともジーンズを脱ぎ捨て、まず下半身だけ裸になりました。
 おふたりの会話を一言も聞き漏らしたくないので、イヤーフォンが外れないように慎重に腕とからだを伸ばし、壁に掛かったチーフのピンクの乗馬鞭をどうにか手に取りました。
 絵理奈さまも鞭を手にされているようでしたから、必要だと思ったのです。

 それからちょっと考えて、やっぱり部長さまと同じ姿にならなくちゃと思い直し、ブラウスとブラジャーも脱ぎ捨てました。
 チーフのお許し無しに、オフィスで全裸になるのも初めてでした。
 アイドル衣装開発会議のときに、それに近い格好までにはなりましたが。
 
 見慣れた社長室で、勤務中にひそかに全裸になったことで、喩えようのない背徳感がジワジワッと背筋を駆け上がってきました。
 きっと普段、凛として気品溢れる部長さまも、ご自分の職場で裸にされて私と同じような気持ちになり、その感情を性的な快感として愉しんでいらっしゃるんだ。
 そう考えると、ある種、畏怖の念さえ抱いていた早乙女部長さまという存在が、身近なところまで降りてこられたような気持ちにもなりました。

 私の目の前にあるデスクにはデスクトップパソコンとモニターが乗って狭いですし、そのパソコンに繋がったイヤーフォンもしている状態なので、デスクの上に乗ることは出来ません。
 自分のデスクだと、イヤーフォンが届きそうもないし。
 
 仕方ないので、椅子に座ったまま両脚を引き上げてM字になりました。
 鞭はデスクの上に置き、絵理奈さまのお声が聞こえてくる方向、すなわち真っ暗なパソコンモニター画面に向き合って、絵理奈さまのご命令通り、両手で自分のマゾマンコを押し広げました。

 首には、今やオフィス内ですっかり私のトレードマークとなってしまった、マゾの証であるチョーカー。
 今日のは、首輪風エンジ色ので、これはシーナさまからいただいたもの。
 
 それ以外は全裸の私が、窮屈な椅子の上で両膝を立てて広げ、自らの性器を自らの両手で押し広げている浅ましい姿が、真っ暗なモニターに暗く、それでもハッキリと映っていました。
 乳首は、見ているほうが痛々しく感じるほどに尖りきり、広げた性器の穴からはドロドロと、粘性の液体が腿をつたい、茶色いビニールレザーの椅子の上に滴り落ちていました。
 
 部長さまも今、絵理奈さまの目前で、こんなお姿を晒されているんだ・・・

「ほら、もっと後ろにのけぞって、お尻の穴もあたしに見えるようにしなさい」
「はい・・・」
 
 早乙女部長さまの消え入りそうなお声にワンテンポ遅れて、私も小さく、はい、とお答えし、椅子の上でグイッと背中をのけぞらせました。
 真っ暗モニターに、私のお尻の穴まで映り込むように。


オートクチュールのはずなのに 36


2016年1月24日

オートクチュールのはずなのに 34

「あら。面白そうなものが映っているじゃない?」
 イベントまであと3日と差し迫った、その日の社長室。
 午前11時過ぎにリンコさまとミサさまが息抜きに訪ねてこられ、お部屋に入るなりパソコンのモニターに映し出された監視カメラの映像に気づかれたミサさまの一言です。

「たまほのがここを担当していた頃にも、こんな画面を見たことがあったな。たまほのに聞いたの?これ」
「あ、いえ。パソコン弄っていて偶然みつけて。あ、でも、ほのかさんに使っていいか、ご相談はしました」

「ふーん。そこの真っ暗な部分はアタシらの部屋なんだよね。アタシらはぜんぜん映されても構わないんだけどな。別に中でコソコソサボってるワケじゃないし」
「ほのかさんによると、来社されて中で着替えられるモデルさんのプライバシーにご配慮されたとか」
「うん。アヤ部長の方針でね。わざわざ外すのもめんどいから、カメラのレンズを黒い布で覆っただけだけど。ちょうど2年前くらいだったかな」
 思い思いの場所に腰を落ち着け、リラックスされたご様子でくつろがれるリンコさまとミサさま。

「でも、見ていてそんなに面白いものでもないでしょう?映っている場所、ずっと同じでしょ?それも見知ったオフィス内なんだし」
「確かにそうですね。でも、ドアのお外の通路が映るカメラだけは、重宝しています。ご来客さまがいらしたのが事前にわかるので。予定がある日は、そのカメラをメインにしています」
 
 そうお答えして、玄関先のカメラ画面だけに切り替えました。
「なるほどね。ナオっちはお茶とかの用意もしなくちゃだしね」
 うなずかれたリンコさまは、それきりモニター画面へのご興味は失われたようでした。

「アタシら今日は、早上がりしていいんだって。イベント準備でやるべき仕事はもうほとんど終わっているから。アヤ部長さまさまからの粋な計らいね」
 リンコさまが持参されたスナックお菓子を私にも勧めてくださいました。
 細長いプレッツェルにチョコレートがコーティングされた有名なお菓子。

「アヤ女史が来たら最終の打ち合わせしてお役御免。まあ、明日はアトリエでゲネプロだから、またコキ使われるんだけどね」
 ウサギさんが野菜スティックを食べるみたいに、前歯だけをしきりに動かしてお菓子をポリポリ齧るリンコさまがとても可愛らしいです。

「明日ゲネプロ、明後日は会場の設営、そんで当日本番。イベント前の雰囲気って浮き足立ってワクワクするよね。学生時代の文化祭前みたい」
 リンコさまのお言葉にミサさまもコクコクうなずいています。
「ボクら、今日の午後は、池袋と秋葉原を満喫してくるんだ」
 ピンクの乗馬鞭をヒュンヒュン振りながら、ミサさまが嬉しそうにおっしゃいました。

 ミサさまは、このお部屋に飾ってある、チーフのフランス製乗馬鞭がたいそうお気に入りのご様子で、ここにいらっしゃると必ず手に取り、もてあそびながらおしゃべりされます。
 ミサさまが乗馬鞭を振るたびに、豊かなお胸も一緒にブルンブルン。

「アタシら、先週もらった休みは、夏コミに向けてのコスプレ衣装の構想に費やしちゃったのよ。前半は、死んだようにひたすら寝てたし」
「だから、街にくりだしてアニメショップめぐりはすごい久しぶり。絶対ハンパなく散財しちゃいそうな予感」
 リンコさまが、ワクワクを抑えきれない表情でおっしゃいました。

「直子も、何か探しものあれば、みつけてきてあげる」
 ミサさまの乗馬鞭のベロが、私のジーンズの太腿を軽くペチペチ叩いてきます。
 うーん、何かあったかな・・・
 それからひとしきり、アニメの話題に花が咲きました。

「そう言えば私・・・」
 何が、そう言えばなのか、自分でも分からないのですが、ふと思いついたことを口にしていました。
「今度のイベントのショーで、どんなお洋服がご披露されるのか、まったく知らないんです」
「ああ。ナオっちは、ずっと決算の仕事だったものね」
 リンコさまがすかさず、うなずいてくださいました。

「だけど、今まで知らないでいられたのなら、いっそ当日まで一切情報を入れないことをお勧めするわ。そのほうが絶対、びっくり出来るから」
 イタズラっぽいお顔になるリンコさまとミサさま。

「明日のアトリエでのゲネプロも、ナオっちはお留守番なのでしょう?」
「はい。ほのかさんとふたりで電話番です。ほのかさんは明日のお昼頃、出張からお戻りになるご予定で」
「そっか。そこまで情報が遮断されているなら、明日上がってくるパンフも敢えて見ないほうがいい。全部当日のお愉しみにしとけば、アタシらの何倍も楽しめると思うわ」
 それからリンコさまが、今回のイベントについての社内的な変遷を、簡単に説明してくださいました。

「今年のテーマは、エレガント・アンド・エクスポーズ。そのテーマに負けないだけの仰天アイテム揃いよ」
「うちの会社名のダブルイーにちなんで、毎年このイベントのテーマは頭文字Eで統一するのね。具体的には、エレガント・アンドなんとか」
「最初の年は、社名と同じエレガント・アンド・エロティック。次の年は、エンヴィ。イーエヌヴィワイ。羨望、みたいな意味ね」

「それで3回目の去年は、エレガント・アンド・エンバラスっていうテーマで、一歩踏み込んだキワドめのアイテムを投入してみたのね。エンバラスってわかる?」
「えっ?あのえっと・・・」
「イーエムビーエーアールアールエーエスエス。当惑、とか、恥ずかしい、っていう意味ね」
「それで、肌色多めになるローライズとかシースルーみたいなイロっぽいアイテムを多めに投入したら大好評だったの。それで今年は、更にもう一歩、踏み出しちゃったワケ」

「エクスポーズは、わかるよね?さらけ出す、とか、暴く、とか。まあ、えっちな意味での、露出、ってことね」
 ノーブラのリンコさまのお口から艶っぽく、露出、というお言葉が聞こえたとき、まるで私の性癖をを見透かされたかのように感じて、心臓がドキンと大きく跳ね上がりました。

「・・・そんなに、凄いのですか?」
「うん。企画して作ったアタシらがこんなことを言ったらアレだけど、着ているほうより見ているほうがいたたまれなくなっちゃうようなキワドイのが何点もある」

「そういう意味では、今回、モデルをしてくれる絵理奈って子も凄い。よくこんな仕事、引き受けたなー、って」
「あれを着て澄ましていられる、そのプロフェッショナルぶりには感心した。ちょっとタカビーなところが鼻についたけど、その点にだけは素直に脱帽」
「タカビーってリンコ、それ死語」
 ミサさまがポツンとおっしゃり、三人でうふふ。

「そういうことで、ナオっちは当日まで情報遮断して、愉しみに待っているといいわ。絶対驚くから。ナオっちのリアクションが今から楽しみ」
 リンコさまとミサさまが意味ありげに見つめあった後、リンコさまは、私にイタズラっぽくウインクされ、ミサさまはまた、私の太腿を乗馬鞭で軽くペチペチ叩かれました。

「あっ!アヤ姉、来たみたい。アタシら戻るね」
 モニターに映った通路の映像に目ざとく早乙女部長さまのお姿をみつけたリンコさまがおっしゃり、お菓子を置き去りに素早くおふたりとも社長室を飛び出していきました。

 出社された部長さまと小一時間くらい打ち合わせされた後、リンコさまとミサさまは笑顔で退社。
 そのあいだにお弁当を済ませた私は、社長室でチーフのドキュメントフォルダーの中味を眺めていました。
 
 今日は、この後ご来客の予定も無く、チーフ、間宮部長さま、ほのかさまは出張中で明日のお戻り。
 オフィス内には私と早乙女部長さまだけ。
 かかってきたお電話を部長さまにお繋ぎする以外、これといったお仕事も無く、なんとも手持ち無沙汰でした。

 そろそろ3時になろうとする頃、内線が鳴り、部長さまに呼び出されました。
「森下さん、決算書類一式はすでに、すべて先生にお送りしたのよね?」
「はい。先週末にすべて終わりました」
「ご苦労様。それなら今日は早めに上がってください。明々後日のイベントに向けて、ゆっくりからだを休めるといいわ」

 繊細な白レースでシースルー気味のシックなブラウスを召された部長さまが、私を見ながらおやさしく微笑まれました。
 肩と胸元が程よく抜けて白いブラのストラップが微妙に透けているそのお姿が、いつもよりいっそう艶やかに感じられたのは、私の気のせいだったのでしょうか。

「お気遣いありがとうございます。だけど私、まだ帰れないのです」
 私が恐縮しつつお答えすると、部長さまは一瞬、意表を突かれたようなご表情をされました。
 間単に言えば、えっ!?っていうご表情。
 それからちょっと宙空を見上げ、何か考えるようなそぶりをされた後、落ち着いたお声で尋ねられました。

「帰れない、とは?」
「あ、はい。あの、今日中に税理士の先生から、お電話をいただくことになっているのです。先日お送りした決算書類に関する最終確認ということで」

「ああ、そういうこと」
「はい。書類を吟味してご不明な点をまとめてご質問いただけるということで。もしも何か不足している数字があったら、それを追加したり・・・イベント前に片付けておいたほうが、あなたも気が楽でしょう、って先生がおっしゃってくださって」
「わかったわ。それは席を外すわけにはいかないわね。わたくしでは細かいところまでは答えられないでしょうし」
 部長さまが再び、何かを考えるように両目を閉じられました。

「それで、いつ電話がかかってくるかは、わからないのよね?」
「はい。遅くとも夜の7時頃までには、としか」
「そう。わかりました。お忙しい先生ですからね。それでは森下さんは、その仕事が終わるまでここにいてください」
 部長さまの口調が、なぜだかご自身に言い聞かせているみたいな、覚悟を決めた、みたいなニュアンスに聞こえました。

「はい。せっかくのお心遣いをお受け出来なくて、申し訳ございません・・・」
「何言ってるの?仕事が一番大事だし、その仕事は我が社にとってもとても重要な案件よ。先生としっかり打ち合わせしてください」
「はいっ」
 一礼して社長室に戻ろうとすると、背後から部長さまに呼び止められました。

「あ、それでね、森下さん」
「あ、はい」
 振り向くと部長さまが、何か思いつめたようなお顔で、まっすぐに私を見つめていました。
 大急ぎでデスクの前に戻りました。

「このあと、そうね、たぶん4時ごろまでに絵理奈さんが来社することになっているの。絵理奈さん、わかるわよね?」
「はい。今度のイベントのモデルをやってくださるという、お綺麗な・・・」
「そう。明日アトリエで通しリハーサルだから、その前の大事な最終打ち合わせをすることになっているの」
「はい」

「彼女が来ても、お茶とかは出さなくていいから。わたくしたちはすぐに、デザインルームに入ってしまうから」
「はい」
「それで、わたくしたちがデザインルームに入ったら、もうわたくし宛ての電話は取り次がなくていいわ。不在と言って、お名前とご用件だけ承って、わたくしのデスクの上にメモを残しておいてくれればいいから」
「はい。わかりました」
 部長さまは、時折宙を見つめて、ひとつひとつ念を押すように、丁寧にご指示くださいました。

「それで、森下さんは先生との用件が終り次第、そのまま帰っていいわ。わたくしたちに声をかけなくていいから。社長室だけきっちり片付けていってください」
「はい」
「たぶんわたくしたちのほうが遅くなると思うから、戸締りはわたくしがやっておきます」
「わかりました」
「では、絵理奈さんがいらっしゃったら内線で伝えるから、その後は今言った通りにしてちょうだい」
「はい。わかりました」

 部長さま、なんだか今日はご様子が違うな。
 社長室に戻り、モニター画面を四分割に戻してから、椅子に座って考えました。
 いつものように自信たっぷりの優雅さも残ってはいるものの、なんだかソワソワしていらっしゃると言うか。
 モニターの右上には、どこかへお電話されている部長さまの後頭部が映っていました。
 お電話を終えられるとお席をお立ちになり、そそくさとドアのほうへ向かわれました。

 あれ?
 部長さまのスカート、いつもより短い。
 いつも絶対膝丈以上なのに、今日は太腿が10センチくらい見えていました。
 お話しているときはずっと、部長さまが座ったままでしたので、今まで気がつきませんでした。
 
 ベージュのストッキングに覆われてピカピカ輝くお奇麗過ぎるスラッとしたおみあしが、モニター越しにもわかりました。
 ドアをお出になった部長さまを追ってモニターの左上に目を移すと、向かわれた方向から、どうやらおトイレっぽい。
 
 やっぱり早乙女部長って、お綺麗だなー。
 そのときは、それ以上深くは考えず、のんきにそんなことを思っていました。

 5分くらいして、部長さまが戻られました。
 そのときの映像を見て、再び、あれ?
 太腿の光沢が消えていました。
 ストッキングを脱がれた?
 解像度の粗い監視カメラの映像ですから、確かなことはわかりませんが、そう見えました。
 でも、なぜ?

 そうしているうちに今度は、左上の映像に見覚えのある大きなサングラスのお顔が見えました。
 絵理奈さまでした。

 いつもファッション誌のグラビアから抜け出してきたような華やかな装いで来社されていたのですが、今日はずいぶん地味めなお姿でした。
 両袖をむしり取ったようなラフなジージャンにインナーは柄物のTシャツかな?
 ボトムは、スリムなダメージジーンズにミュール。
 
 それでも、タレントさんぽさを隠せない特徴あるサングラスと、いつも引いていらっしゃるブランド物のカートで一目瞭然でした。
 絵理奈さまは、インターフォンも押さず無言でドアを開け、いきなりオフィスに入ってこられました。
 ガタンとお席から立ち上がる部長さま。

 その後の光景が信じられませんでした。
 歩み寄ったおふたりが、互いに両腕を広げギューッとハグ。
 それも、部長さまのほうが力が入っているみたいに見えました。
 部長さまのほうが背が高いですから、絵理奈さまが包み込まれている感じ。
 天井からのカメラなのでよくはわかりませんが、おふたりの髪の毛が絡み合うようにくっついていたので、ひょっとしたらキスを交わされていたかもしれません。

 えっ?えっ?えーっ???
 ひとしきり呆気に取られた後、今すぐメインフロアに飛び出して、実際のところを自分の目で確かめてみたくてたまらなくなりました。
 同時に早乙女部長さまが、この監視カメラの存在をすっかりお忘れになられていることも確信しました。
 だって憶えていれば、私が社長室にいることを知っていながらあんなこと、絶対に出来るはずないですもの。
 
 両目でモニターを食い入るように凝視したまま、そこまで考えて思考停止に陥いりました。
 モニターの中の絵面が何を顕わしているのか、理解出来なくなっていました。
 立ちくらみみたいなものを感じて、咄嗟に両目をギュッとつむりました。
 突然、甲高く内線を告げる呼び出し音が鳴り響きました。
 モニターの中では、すでにおふたりのからだは離れていました。

 内線の音に驚き過ぎて本当にキャッと一声鳴いてから、あわてて受話器を取りました。
「森下さん?絵理奈さんがいらっしゃいました。打ち合わせを始めますので、さっき説明した通りにお願いね」
 努めて冷静を装うような、落ち着いた中にもどこか上ずったような、部長さまのお声。

「は、はい。かしこまりましたっ!」
 ドキドキが収まらず、掠れ気味な声を振り絞り、妙にバカ丁寧な応答をしてしまう私。
 すぐに電話は切れ、ツーツーツーという音だけになりました。
 モニターには、部長さまが受話器を戻し、絵理奈さまに何か耳打ちされてから、寄り添うようにデザインルームへと向かうお姿が映し出されていました。

 部長さまと絵理奈さまって、そういうご関係だったの?
 この後、デザインルームで一体何が行なわれるのだろう・・・
 私は、好奇心の塊と化していました。

 モニターには、デザインルームのドアを開き、中へと消える絵理奈さまの後姿が、画面の端っこに辛うじて映っていました。
 でも、それもすぐに消え、ドアが閉じられました。
 ああん、デザインルームの中は見ることが出来ないんだ・・・
 部長さまがご提案されたという、カメラの目隠しを心底怨みました。

 ん?ちょっと待って。
 目隠し?
 そのとき、パッと光明が見えました。
 確かリンコさまは、カメラは外していない、とおっしゃっていたっけ。

 すぐに机の抽斗から、お仕事中に好きな音楽を聴くためにこっそり使っていたイヤーフォンを取り出し、パソコンのイヤーフォン端子に挿しました。
 それを両耳に詰めてからモニター画面を真っ暗闇に合わせ、コントロールパネルのヴォリュームアイコンを上げていきます。
 
 ザザザ、ガサガサ、ゴソゴソ、ザザザ、ガサゴソ・・・
 衣擦れのような物音がハッキリと聞こえてきました。
 やっぱり。
 カメラに付いているマイクが、音だけは拾っているのです。
 場面を見ることは出来ないけれど、音なら聞こえる。

 モニターいっぱいに大映しとなった真っ暗画面に、イヤーフォンを突っ込んだ両耳に両手をあてがい、縮こまるようにして固唾を呑んでいる、自分の浅ましい顔が映っていました。
 これって、立派な盗聴行為、盗み聞き、プライバシーの侵害。
 わかってはいるのですが、溢れ出る好奇心を抑えることは出来ませんでした。

 しばらくガサゴソ音がつづいた後、ふいに明瞭なお声が聞こえてきました。
「ほら、早く見せてよ。ちゃんと約束通りにしているのか、確認するから」
 
 最初に聞こえてきたのは、早乙女部長さまではないお声でした。


オートクチュールのはずなのに 35