2011年2月12日

メールでロープ 03

机の上に、これから使おうと思っているお道具を並べました。

トルコ石のイヤリング、子猫ちゃんのマッサージ器、リモコンローター、お習字筆、ルレット、木製の洗濯バサミ、赤い輪っか付きロープ、そして、ポラロイド写真の入った封筒。
あと、私物の50センチのプラスティック定規と銀のバターナイフ、愛用のプラスティックの洗濯バサミ、電気の延長コードも出してきました。

お勉強机の上がなんだか禍々しい感じです。
置いてあるものすべてが、えっちな妄想を煽ります。
私は、ゾクゾクワクワクしてきて、乳首がピンピンに張ってきました。
おっと、その前に確認しておかなきゃ。

子猫ちゃんのマッサージ器を手に取って、スイッチになっている胴体をひねりました。
子猫ちゃんがブーンって震え始めます。
そんなに大きな振動音は、しないみたい。
ツマミを強までひねってもンーーーって音が少し聞こえるくらい。
お部屋のエアコンの音のほうが大きいくらいです。
これならあんまり心配することはないかなあ。

でも、あの日よりなんだか震えが弱い気も・・・
スイッチを止めてから胴のところを強くひねってはずし、電池を交換します。
単三電池一本でした。
新しい電池に変えて、もう一度強までひねります。
ンーーーー。
やっぱり電池が弱ってたみたいで、さっきより震えが強まりました。
だけど音は同じくらい。

子猫ちゃんを止めて、今度はリモコンローターのコントローラーを手に取ります。
スイッチを入れるといきなり二つのローターが震え始めました。
机の上だったのでカタカタカタって大げさな音をたてて、飛び跳ねるように転がって暴れだします。
きゃっ!
私は、あわててスイッチを切りました。

机から離れ、ベッドのお布団の上にローターを乗せてもう一度。
弱や中ならそうでもありませんが、強にするとブーーーーンて低い唸り声のような音がします。
こっちは少し要注意かな?
でも、使うときはアソコの中に入れてるワケだし・・・

スイッチを止めて、こっちも念のために電池を交換しておくことにします。
卵型のローターのほうには、単四電池が2本必要。
ピンクとブルーの両方に電池を入れておくと、スイッチを入れるたびに二つが動き出してしまうので、今はとりあえずピンクのほうだけに入れることにしました。

コントローラーのほうの電池は、私が今まで見たことの無い形の電池でした。
単四より短くてちょっと太いの。
こんな電池は買ってきてありません。
急いでネットで調べると、23Aっていう種類の力が強い電池のようです。
えっちなおもちゃのネット通販のページでは、リモコンプレイのファンにはおなじみの、なんて書いてあります。
普通のコンビニとかでは買えないみたい。
もしも私が電気屋さんでこの電池を買ったら、お店の人から、この子はリモコンローターで遊んでるんだな、なんて思われちゃうのかな?
そんなことを考えて一人で赤くなっています。

コントローラーの電池交換はあきらめて、子猫ちゃんとリモコンローターを強にセットし、お布団の上に置いたままコントローラーだけ持ってお部屋を出ました。
エアコンの効いていない廊下に出ると、夏の熱気がムッと裸の全身を包みます。
ドアを閉じて、廊下で耳を澄まします。
微かにウーーンって音が聞こえる気がします。
コントローラーでリモコンローターのスイッチを切ると、音はしなくなりました。
子猫ちゃんのほうだけなら、外に音が漏れる心配はまったくなさそうです。

なぜこんなことをしているのか?と言うと、私のお部屋が在る2階には、もう一つお部屋を隔てた向こうに篠原さん親娘が住んでいます。
篠原さん親娘の住居と我が家の2階は、鍵のかかる扉で仕切られていて、向こうからこちらへは自由に出入りはできません。
でも同じフロアですから、たとえば私が夜中にローターを使って遊んでいて、次の日に、昨夜何かブーンって音がしてた、なんて篠原さんに言われたらすっごく恥ずかしいので、どのくらい音が漏れるものなのか、確かめておきたかったんです。

念には念を入れて、階下への音漏れの有無の確認するため、再びローターを強にセットしてから、階段を下りました。
階下で私のお部屋の物音が一番響きそうな場所、すなわち私のお部屋の真下は、父の部屋です。
一階の廊下では、当然のことながらまったく音はしません。
父の部屋のドアを開けて、そーっと忍び込みます。
だいじょうぶ。
全然音は聞こえません。
私のお部屋のエアコンの音さえしません。

カーテンがひかれて薄暗く、しんと静まり返った父の部屋。
窓際にあるサイドボードのガラスに、私のツルツルな無毛の下半身が映りました。
私ったら、なんてはしたないことをしているんでしょう。
真夏の真っ昼間に真っ裸になって乳首尖らせてお家の中をウロウロして・・・
全身しっとり汗ばんだからだに、ジーンと恥ずかしさと快感が駆け巡りました。

父の部屋を出て、意味もなくリビングを一周してから、ふと思い立って廊下をまっすぐに玄関へ向かいました。
日当たりの良い明るい玄関。
壁に飾ってあるロココ調な装飾が施された大きな鏡にも、私の裸の上半身が映りました。
普段の生活の場に全裸でいるのって、なんだかすごく非日常的でエロい・・・
私は、普段はお出かけ前に髪型や襟元を確認するために覗く鏡に映った、何も着ていない自分の顔をまじまじと見つめてしまいます。
火照ってて、汗ばんでて、恥ずかしげで、でも嬉しそうで、なんとも言えない、いやらしい顔・・・

サンダルをつっかけて、そっと玄関ドアを開けてみます。
見事に晴れ渡った真夏の真昼の眩し過ぎる陽射しと熱気に、私の無防備な全身が晒されます。
このままお庭に出ちゃおうか・・・
その誘惑はとても魅力的でしたが、もしもお隣の家の2階やベランダに誰かいたら、見られちゃう・・・
と思い至って、残念ながらあきらめました。

もはや、いてもたってもいられません。
早くいろいろ気持ちいいことをしたい、恥ずかしいことをしたい、自分のからだを撫で回したい・・・
すでに乳首はツンツン、アソコの中もヌルヌルです。
「もう、本当になお子はすけべねぇ」
どこからか、やよい先生の声が聞こえてくるような気がしました。

もう一つ、試しておきたかったのは、このリモコンローターがどのくらいの距離まで電波が届くのか?っていうことだったのですが、それは後回しにすることにして、大急ぎで階段を駆け上がり自分のお部屋のドアを開けます。
エアコンの冷気が汗ばんだからだをひんやりと迎えてくれました。

CDプレイヤーにサティのなるべくたくさん曲の入っているCDを入れてエンドレスにセットします。
お部屋にジムノペディが低く流れ始めました。
それから床に大きなバスタオルを敷いて、用意したお道具を全部並べます。
その横に自分もたたんだバスタオルをお尻にあててぺったりM字気味に座り込みました。

まずは、ポラロイド写真の入った封筒を掴み、口を留めているセロテープを丁寧に剥がします。
トランプみたいに束ねた写真を床に置き、上から一枚ずつ右手で取って見つめます。
瞬時にあの日のコーフンが甦りました。
どの写真もあまりにもいやらしくて、アブノーマルで・・・
そして、その被写体は紛れもなく私・・・

アソコに子猫ちゃんが挿しこまれています。
このときはまだ、毛があったんだ・・・
だらしなく開いた口元から、よだれが垂れています。
歪んだ顔が媚びるようにレンズを見て微笑んでいます。
乳首からぶら下がったトルコ石が激しく揺れてブレています。
両手と両足首と両膝を赤いロープで縛られています。
三つ編みおさげ髪の女の子がM字開脚で座っています。
パイパンなワレメから短いヒモが覗いています。
泣きそうな顔で笑っています。
顎を突き出して、必死でイクのを耐えています。

私は、順番に一枚一枚念入りに写真を見ては、自分のまわりに並べていきました。
こんな恥ずかしいことをやったなんて、どうしても信じられない・・・
でも、この被写体は紛れもなく私・・・

写真を半分くらいまで見たとき、もうどうしてもこらえきれなくなり、左手で自分のからだを激しくまさぐり始めていました。
右手に写真を持って、その写真で苛められている場所を自分で苛めます。
乳首を指でギューッとつまんで押し潰します。
おっぱいを乱暴に鷲掴みます。
アソコに指を入れて掻き回します。
「あんっ、あっ、あっ、あーんっー」
写真を食い入るように見つめながら、その写真と同じ表情をしてみます。

写真が突きつけてくる、見るに耐えないくらい恥ずかしい自分の姿を見るという、いてもたってもいられないほどの恥ずかしさ。
その恥ずかしさを和らげたくて、それならいっそのこと、今の自分をもっともっと恥ずかしい状態に追い詰めようとする衝動が私の左手をつき動かし、容赦なく自分のからだを責めたてます。

ほとんどの写真を並べ終えた頃、私は、大きく左右に両膝を広げて上半身を屈め、左手親指と人差し指でツヤツヤに大きくなったクリトリスをつまんだり擦ったりして熱心に苛めていました。
「あん、あん、あん、あーんっ!」
もう少しでてっぺんです。
そして、床に残った最後の一枚・・・

それは、やよい先生と、とある有名女性タレントさんとのツーショット写真。
二人とも全裸。
女性タレントさんは、緊縛大股開きで悩ましげなお顔。
やよい先生は、女性タレントさんの少し後ろに立って、右手を座っている彼女の左肩に軽くかけてニヤッと笑っています。
「んんんんーーーーーーんんっ!!!」
私は、その写真のやよい先生のお顔と形の良いおっぱいを見た、その瞬間にのぼりつめていました。

「はあ、はあ、はあ・・・」
今日の第一ラウンドは、せっかく用意したお道具を何も使わず、左手一本だけであっさりイってしまいました。


メールでロープ 04

2011年2月6日

メールでロープ 02

やよい先生が渡してくれたヤバソウナモノを含むお土産の中身を確認したのは、日曜日でした。

やよい先生とお別れした土曜日の夜は、さすがにからだがとても疲れていたみたいで、母と少しおしゃべりした後ゆっくりお風呂に入ったら急激に眠くなってしまい、入浴後のお手入れもそこそこに早々とベッドに入って眠ってしまいました。
お風呂で見たら、おっぱい上下の縄の跡とやよい先生がくれたキスマークがまだ微かに残っていました。
洗面鏡に映るやよい先生に剃られてしまってツルツルになったアソコ。
今さらながら、すっごく恥ずかしい気持ちになりました。

翌朝も寝坊して10時くらいに目覚めました。
午前中は、とりあえず分けておいたやよい先生からのお土産健全編のお洋服袋をチェックしました。
最後に追加された赤いワンピースとレインコートを除いて、さまざまなワンピやトップス、スカートなどが11点も入っていました。
有名なブランドのお高そうなものばかり。
どれもカワイイと言うより、シャープでクールな大人っぽいデザインでサイズもだいたいぴったり。
自分で買うときは、こういうデザインや色はカッコイイけれど私には似合わないかも・・・って躊躇しちゃう種類のものも、着てみると私でも案外似合ったりして、すっごく嬉しくなりました。
着替えては階下に降りて、母に見せびらかしました。
「じゃーんっ!」
「あらー、ステキねー。百合草先生、やっぱりセンスいいわねー。私でも着れるかしら?」
「着てみて、着てみてっ」

ハウスキーパーの篠原さん親娘が午後3時頃にご実家から戻ってきたので、それから夜にかけては、母と四人でおしゃべりしながらまったりゆったりと過ごしました。
ともちゃんももう小学三年生。
カワイク元気に成長しています。
まだ周囲に自然がたくさん残っているらしい篠原さんのご実家で、さんざん遊びまわってきたのでしょう、腕や脚が真っ黒に日焼けしていました。

夜の10時過ぎに一人でお風呂に入りました。
縄の跡もキスマークもすっかり消えていました。
一緒に暮らすようになってから、たまにともちゃんとも一緒にお風呂に入るのですが、さっきも、ともちゃんの日焼けした姿を見て、日に焼けていない部分とのコントラストが見てみたいな、なんて思ってつい、一緒にお風呂入る?って声かけようとして、あわてて思いとどまりました。
私、今アソコに毛が無いんでした。
あぶない、あぶない・・・
ともちゃんから質問責めされちゃうところでした。

今日はお風呂後のお手入れも入念にして、一息つくと11時になっていました。
お部屋のドアに鍵をかけてから、ベッドの下に押し込んでおいたヤバソウナモノ袋を引きずり出します。
ベッドの上にバスタオルを敷いて、その上に中身を出していきます。

大きなトルコ石が付いたイヤリング一対、子猫ちゃんのマッサージ器、マッサージ器を固定する用の細い糸が付いたリング、ワイヤレスのリモコンローター・・・これはピンク色のと水色のが二種類、アイマスク、太いお習字用の筆一本、ムダ毛処理用のカミソリと替え刃、薄いピンクのレンズのまん丸ファッショングラス、木製の洗濯バサミ8個。
ここまではあの日、やよい先生とのあれこれで使ったものでした。

リモコンローターは、ユマさんが入れていたのも私にくれちゃったみたい。
コントローラーは一つしか入っていません。
ユマさん、どうするんだろう?
思わずクスっと笑ってしまいます。

その他に、お裁縫のとき布に印をつけるために使うトゲトゲした丸い輪が付いているルレットが一本。
これはたぶん、肌の上をコロコロ転がして遊ぶのでしょう。
試しに左手の甲に軽く転がしてみます。
チクチクした感触が肌を転がっていきます。
これでおっぱいを刺激したら気持ち良さそう・・・

あと、短かめな赤いロープが一本。
よく見ると両方の先端が輪っかの形になっています。
左手を輪っかに入れてみました。
ロープを軽く引っぱると、輪を作っている結び目がスルスルと動き、輪っかのロープが右手首を絞り込んで締め付けてきます。
なるほどー。
右手も反対側の輪っかに入れて絞ってみます。
私の両手は、ちょうど私のウエストくらいの幅で拘束されてしまいました。
ロープの手錠っていうわけです。
これなら、はずすのも簡単だし、ロープは太くて柔らかい素材なので、跡がつく心配も無さそうです。

ロープ手錠をしたまま右手を袋に入れると、同じようなロープがもう一本。
両方の輪の間が少し長めです。
こっちは足首用なのでしょう。
私はワクワクが抑えられません。

そして、袋の一番底から出てきたのは、封筒に入った厚さ3センチくらいの何かの束。
これは、私のいやらしい姿を撮ったポラロイド写真のはず。
もちろん、すぐにでも見たかったのですが、これを今見てしまうと絶対、とことんオナニーをしなきゃ眠れなくなると思ったので、グッとがまんしました。
明日は、母も篠原さん親娘も出かける用事があって、午前中から夕方までお家にいないことがわかっていました。
私一人でお留守番です。
なので、私は明日の日中、思う存分思い出しオナニーをすることに決めていました。

それより今は、これらの隠し場所を決めることが先決です。
イヤリング、筆、アイマスク、ファッショングラス、カミソリ、ルレットは、別に誰に見られても不自然ではないので、アクセサリー箱や机の引き出しに普通にしまいました。
残りのものは、使わなくなった少し大きめの化粧ポーチに入れておくことだけは、決めていました。
問題は、その化粧ポーチをどこに隠すか、です。
母も父も私のお部屋に勝手に入って、いろいろ探し回るようなことは絶対しないので、そんなにナーバスになることでもないのかもしれませんが、万が一みつかっちゃったときは、すっごくややこしいことになっちゃうのは確実ですし・・・

クロゼットは、衣替えの頃とかに母が気を利かせて、クリーニング屋さんに出さなきゃいけないお洋服を私のいないときにお部屋に入って整理してくれていたことが何度かあったので、ちょっと危険かも。
本棚もCDラックも隠すようなスペースはないし。
やっぱり、お勉強机の鍵がかかる引き出しかな・・・

だんだん眠たくなってきたので、大急ぎで鍵がかかる引き出しの中を整理して、化粧ポーチを入れるスペースを作りました。
以前から隠していた父秘蔵のえっち写真集二冊に重ねて、化粧ポーチをなるべく平らにして奥に入れ、ポラロイド写真の入った封筒を日記帳に挟んで手前に置くと、ちょうど全部がスッポリ収まりました。
引き出しを閉めて、一応鍵をかけます。
ふぅー。
これで鍵のかかる引き出しには、えっちなものと私の日記帳しか入っていないことになりました。
なんだかなー・・・

次の日の朝、母と篠原さん親子を送り出すとすぐ、自転車を飛ばして近くのコンビニへ行き、単三と単四の電池をそれぞれ8本づつ買ってきました。
ダイニングで早めの昼食をとりつつ、これからのお楽しみ時間の計画を練ります。

一階の戸締りをきちんと確かめ、インターフォンの音量を最小に絞り、留守番電話に切り替えてからトイレも済まし、バスルームで軽くシャワーを浴びました。
からだを拭いたバスタオルを片手に持ち、裸のまま廊下に出ました。
今日は、夕方までずっと全裸で過ごすつもりです。

二階の自分のお部屋に戻って、昨夜しまいこんだ化粧ポーチとポラロイド写真の封筒を取り出し、お勉強机の上に置きました。
さて・・・
お楽しみを始める前に、試しておきたいことがいくつかありました。


メールでロープ 03

2011年2月5日

メールでロープ 01

結局、やよい先生が東京へ発つ日のお見送りはできませんでした。

やよい先生からは、あのお泊りの翌日別れて以来、連絡はありませんでした。
私が訪ねたとき、まだ家具類や日常品の荷造りなどがまったく手つかずでしたから、きっと、お引越しの準備で忙しいのだろうと思い、がまんしてがまんして、その5日後の夜遅くに、電話をしてみました。

「ごめんねー。全然電話できなくて。いろいろ忙しくてさー。でもおかげさまですっかり片付いたよ」
やよい先生のお元気そうな声が返ってきます。
「えっ?東京行く日?あさって。8月最初の日。引越し屋さんや現地での手配の関係で昼の1時には新居にいなきゃいけないから、朝の10時頃に出発かな?」
その日は、間の悪いことに高校の夏休み登校日で、午前中はつぶれてしまいます。
私は、半泣き声になっていました。

「いいよ、お見送りなんて。もう二度と逢えないワケじゃないんだから。あたしもヒマができたらこっちに来るよ。なお子の家に泊めてくれる?」
「・・・もちろんです。母もますます先生のファンになっちゃってるし・・・」
「それは光栄。だからその日、なお子は学校にちゃんと行きなさい。これは先生命令よ」
少し沈黙してから、やよい先生がつづけました。

「それになお子、その日もし逢ったら絶対泣くでしょう?あたし、そういうのちょー苦手だし。あっち行って落ち着いたらスグ電話入れるから。そしたらメール課題開始ね」
「・・・」
「あたしは、なお子のことずーっと好きだよ。今までも、これからもずーーーっと。だからなんかあったら、あたしを身内だと思っていつでも頼ってきてね」
「・・・」
「あ、ごめん。家電鳴ってる。たぶん引越し屋さん。それじゃあ切るからね。なお子、愛してるよ。ありがとね」
プチっと電話が切れました。
私は、ベッドに倒れこんでくすんくすん泣きました。

その夜はよく眠れず、次の日も朝早くに目が覚めてしまいました。
東京に行ってしまう前にやよい先生のお顔をもう一度見るとしたら、今日がラストチャンスです。
どうにもいてもたってもいられなくなってしまい、母に、お友達のところに行って来る、と言って家を出て、やよい先生のマンションがある駅に降り立ちました。

あの日のような快晴でした。
駅に降り立ったものの、考えてみるとあの日はやよい先生の愛車で連れて行かれたので、マンションへの道順がまったくわかりません。
やよい先生やユマさんにも電話してみたのですが、両方とも電波が届かないと言われて通じませんでした。
電話が通じないとなると、たとえマンションの前にたどりつけても、逢えるかどうかもわかりません。
それでもいい、と思いました。
やよい先生とユマさんに、今の時刻と、このメールに気がついたらご連絡ください、ってメールを入れてから、記憶と勘を頼りに駅周辺をあちこちさまよいました。

ようやくやよい先生のマンションの前にたどりついたのは、午前10時前。
約一時間以上、炎天下の町中をさまよっていたことになります。
汗びっしょりで、着ているTシャツが肌にペッタリ貼りついていました。

たどりついたものの、今度はどうやってやよい先生を呼び出したらいいか、わかりません。
お部屋にいるのかどうかも。
ケータイも相変わらずつながらないし、メールの返信もありません。

でも、せっかく来たんです。
たとえやよい先生が今、お部屋で寝ていたり、どっかにお出かけ中だとしても、夕方までには起きてケータイをチェックするはずです。
私は覚悟を決めました。
やよい先生が姿を現わすまで、あの日、やよい先生がお話ししてくれたミーチャンさんのように、マンションの前で待つことにしました。

マンションの入口から少し離れた塀際に、マンションのお庭にある大きな木の葉っぱが道路にはみ出て日陰を作っている場所があって、その下にちょうど飲み物の自動販売機がありました。
お茶のペットボトルを一本買い、その日陰に入って涼をとりながら、自販機の脇にもたれてしばらくボーッとします。
ときどき、やよい先生のお部屋のあたりを見上げます。
正確にどれがやよい先生のお部屋の窓かはわからないのですが。
刑事ドラマの刑事さんの張り込みみたいだな・・・
一人でクスッと笑います。
って言うよりも、これってなんだか、今流行のストーカー?

マンション前の通りは、ほとんど人通りが無く、時おり、自転車に乗った子供たちがワイワイ通り過ぎたり、自動車がブーンと走り去っていったり。
真夏日にどこの窓もピッタリ閉ざされて、ジージジジジジとアブラゼミの声だけが遠く近く響いています。

20分くらいして、駅へつづく曲がり角のほうから4~5人の人影が現われました。
だんだんこちらに近づいてきます。
私は、自販機の陰から身を乗り出して目を凝らします。

全員女性で6人いました。
道一杯に広がっておしゃべりしながら近づいてきます。
みなさん、何て言うか、結婚式の二次会帰りみたいなセミフォーマルで肩や胸元が露出した服装をされていますが、なんだか疲れているようで、少しだらだらとした歩き方でした。

右手に大きな花束を持って真ん中を歩いているのが、やよい先生でした。
両耳と胸元のアクセサリーが陽射しを受けてキラキラ光っているのが、遠くからでもわかりました。
母がプレゼントしたネックレスと私があげたイヤリング、着けてくれてるんだ。
私は、すっごく嬉しくなりました。

きっと、やよい先生のさよならパーティをした朝帰りなんでしょう。
ユマさんとシーナさんの姿もわかります。
二人とも裾の長い綺麗なドレスを着て、見違えています。
やよい先生と腕を組んだ青いドレスの女性は、ミーチャンさんでしょう。
やよい先生が見せてくれたビデオの女性に髪型や雰囲気が似ています。
その他に知らない女性が二人。
そのうちの、やよい先生よりも背の高い女性が伸びをしながら口元も押さえずに大きな欠伸をしました。
誰もこちらには目を向けず、お互いの顔に視線を向けながらガヤガヤと親しげにおしゃべりしつつ、こちらにだんだんと近づいてきました。

私は、なぜだかもう一度、自販機の陰に身を隠しました。
6人の姿を見ていたら、急に怖気づいてしまいました。
知らない女性が二人いることもあったのでしょう。
私がまだ知らない、やよい先生たちの世界・・・

これからみんなで、やよい先生のお部屋でもう一騒ぎするのでしょうか?
それとも、みんなで眠るのでしょうか?
今、やよい先生のお部屋は何も無くてガランとした状態のはずです。
明日がお引越しの日なのですから。
どうするんだろ?
ひょっとすると、あの中にもう一人、このマンションに住んでいる人がいるのかもしれない・・・

自販機の裏でそんなことを考えているうちに、おしゃべりの声がはっきり聞こえるほど、やよい先生たちは近づいてきていました。
「ふぁーあっ、と。やっとついた、ついたー」
「今日はさすがに疲れましたねー」
「さ、はやくこんなドレス脱いで、寝るべ寝るべ・・・」
「悪いねー、クーコ・・・」

私は、またそーっと顔だけ出してやよい先生たちを窺い、すぐ引っ込めます。
やよい先生たちは、ワイワイ言いながらマンションの門をくぐるところでした。
やがて、足音がマンションのエントランスのほうへゆっくり遠ざかっていきます。
私は、もう一度そーっと門のほうを窺います。

目が合いました。
青いドレスの女性。
ビデオで見たのと同じお顔をしたミーチャンさんが一人だけ、門の前にポツンと立って私のほうを見ていました。
ニッコリやさしそうに微笑んで。
私がびっくりして固まっていると、ミーチャンさんが小さくおいでおいでをするように、右手をヒラヒラさせました。
深く切れ込んだ胸元の白い肌がセクシーに揺らぎます。
私は、一瞬迷いましたが、腰を90度曲げて深くお辞儀してから、踵を返してその場を逃げるように立ち去りました。
間近で見たミーチャンさんのお顔は、大人の女性の愁いと気品と色気がある上に小さく儚げで、アンティークなフランスの貴婦人のお人形のように、すっごく綺麗でした。

私は、やよい先生たちの前に姿を現わすことができませんでした。
やよい先生のお仲間さんたちは、みんなステキでした。
それぞれ、ちょっとセクシーなドレスを堂々と着こなして、全員が夏の陽射しの中でキラキラ輝いて見えました。
高校生の私とは、まったく違う世界の住人。
自分の仕事で自分で生活している自信と余裕、みたいなものに私は、今の自分とは決定的に違う何か、を感じていました。
みんなステキな大人の女性でした。
私がその輪の中に入るのは、まだまだおこがましいと思ったんです。

私ももっといろいろとしっかりして、やよい先生たちみたいなステキな大人の女性にならなきゃ・・・
電車に揺られながら、私の気持ちはすっかりスッキリしていました。
今度、やよい先生に会ったとき、びっくりさせちゃうほどステキな女性になれるように精一杯努力しよう・・・
そう決めました。

私が降りる駅に着いたとき、ケータイがブルブルっと震えました。
やよい先生からのメールでした。
近くに来ていたなら、一緒に来ればよかったのに、みたいなことの最後に、
「ずーーーっと愛してるよ」
って書かれていました。
私は、短かくこう返信しました。

「ありがとうございます。またお逢いしましょう。ずーーーーーーっと愛しています。」


メールでロープ 02