2020年6月28日

肌色休暇一日目~幕開け 04

「そこに立って、あたしのほうを向いて、ワンピースを脱ぎなさい」

 窓際を指差し、ご自身は対面で優雅におみ脚を組み替えられるお姉さま。
 窓の外を日常の景色がビュンビュン過ぎ去っています。

 こんなところで裸になるんだ…
 背徳感がゾクゾクっと背筋を伝わり、脳内と股間が痺れるように疼いてきます。

「何その嬉しそうな顔は?個室とは言え、公共の電車の中で裸になろうとしているのに」
「直子、あなた、近ごろ羞恥心薄れていない?脱ぎたい、視せたいオーラ全開って感じ」

 呆れたお声でなじるようにおっしゃるお姉さま。

「そ、そんなことは……」

 口では即座に否定してしまいますが、実は自分でも最近同じように感じていました。

 オフィスのみなさま及び関係者の方々全員に私のどうしようもない性癖を大々的にご披露してしまったあのファッションショー以来、初対面の女子大生のみなさまへのセルフ緊縛レクチャー、やよい先生のお店での百合便器ご奉仕、年端も行かない男の子たちへの裸身提供などなどと、たくさんの方々に私の浅ましい痴態をご覧いただいてきました。
 見知ったお顔が傍らに付いていてくださりすれば、安心して性癖のおもむくまま。

 ただ、数々の恥辱プレイを経た今、自分の中で変わりつつある、とある感覚、に戸惑いと言うか、新しい不安と期待が生まれていました。
 お姉さまや見知っているお顔のかたたちの前で恥ずかしい姿を晒すことに慣れ過ぎてしまったのでしょうか、まったく見知らぬかたに視ていただきたい、という欲求が増してきているのです。

 私の素肌を舐め回すような、見ず知らずの不特定多数のみなさまからの視線。
 その瞳に映る、驚きだったり、好奇だったり、憐れみだったり、蔑みだったり。
 その瞳と私の視線が合わさるとき、性的興奮の度合いがグンと高まることに気づいてしまったのです。
 視ないで、でも視て、の視て、のほうの比重が自分の中でどんどん大きくなっているみたいなのです。

 もちろん見知らぬ男性の視線は怖いですし、一連のプレイが無事に出来たのもお姉さまやお仲間に守られていたからこそ、というのはわかっています。
 それでも、もっとたくさんのかたに淫らで恥ずかしい姿を視て欲しい、というはしたない願望は膨らむばかり。
 まして今日は最愛のお姉さまとご一緒プラスふたりきりなのですから、私の理性なんてマゾの沼奥深くに沈み込んだままなのです。

 電車の進行方向に背を向けた座席の窓際に立ち、ワンピースの袖を、それでも躊躇いがちに抜きました。
 対面のお姉さまが手を伸ばされ、ワンピースはお姉さまの座席側へと没収されました。

「もちろんパンツもね」

 ビデオカメラのレンズを向けたまま、お姉さまの冷ややかなお声。

「はい、お姉さま」

 レンズをじっと見つめつつ、前屈みになってショーツを脱ぎ去ります。
 クロッチ部分、と言ってもあて布は外されているのですが、は、お尻のほうまでじっとりと濡れそぼっていました。
 手渡したショーツと引き換えみたいに、お姉さまが青いバスタオルをテーブルの上に置きました。

「へー、こっちもキレイに焼けているじゃない?直子の柏餅マンコが美味しそうにぷっくり目立ってイイ感じよ」

 里美さまがタンニングサロンで私の下半身のためにご用意くださった着衣は、該当部分がハート型の真っ白いCストリング。
 なので、私の腰回りやお尻に紐状の日焼け跡は一切なく、恥丘から陰部にかけてだけ、クッキリ青白くハート型に焼け残っています。
 ここも乳首部分に負けず劣らず、否が応にも視る者の視線を惹きつけてしまう卑猥さです。

「おーけー。じゃあ後ろ向いて、お尻も見せて」

 私が服従ポーズのままからだを180度回転させて背中を向けると、一瞬の間を置いて、ププッと吹き出されたお姉さま。

「ふーん、なるほどねえ…里美ってば、そうきたかー…」

 お姉さまのお声は、堪らえようとしても抑えきれない失笑まじり。
 タンニングサロンで初めて背中を焼く前、里美さまが困ったようなお顔でこんなことをおっしゃっていたのを思い出します。

「チーフのたっての希望でね、直子のお尻の上くらいに日焼けで何か、落書きしといて、だって」
「ひとことで直子を顕わすような自己紹介的な言葉。でもAVやエロマンガによくある、肉便器とか性奴隷とかみたいな品の無いのじゃなくて、なんとなく優雅さというか気品も感じられる言葉3~5文字くらい、だって」

「わたし、一晩悩んじゃった。日焼け跡だから画数多い字だとちゃんとキレイに読めるようには焼けないだろうな、とか」
「で、ここはシンプルが一番、て開き直ったの」

 そうおっしゃって、里美さまがうつ伏せの私に、ボディペインティング用のラテックス塗料で書いてくださった文字列を今、お姉さまがお読みになられたのです。
 そのときは私も何て書かれたかはわからず、次のサロン予約日まで剥がしてはダメ、と厳命され、お家に帰ってからお仕置き部屋で裸になり、鏡に映してみました。

 お尻の割れ始めの少し上、フルバックのショーツならギリギリ隠せそうなところに、一文字3センチ四方くらいの大きさで5文字。
 中央寄りの横書きで、里美さまの女性らしい手書き文字が白い塗料で書いてありました。

 鏡文字になっているので、咄嗟には読めませんでした。
 頭の中で反転し読めた瞬間、先ほどのお姉さまのようにクスッと笑ってしまいました。
 でもそのすぐ後、今後このイタズラ書きがもたらすであろう、私の身に降りかかる恥辱に思いが至り、からだ中がカッと火照りました。
 
 この日焼け跡が完成してしまえば、それからずっと私が裸になるたびに、この文字が読まれてしまうのです。
 季節が過ぎて、日焼け色が肌から引いてくれるそのときまで。
 三度目のサロンのときにいったん塗料を剥がして慎重に書き直され、四度目が終わったときには、ハッキリクッキリと読めるように白く浮き上がっていました。

 マゾですの

 この5文字が私のお尻のすぐ上に書かれている自己紹介です。
 最初にサロンへ伺った次の出社日、当然のようにリンコさまたちにオフィスで裸にされ、これを読まれて思いっきり笑われました。

「確かに語尾に、の、を付けると少しだけ品が良くなるわね。可愛らしくて直子っぽい」

 リンコさまたちと同じようなご感想をつぶやかれたお姉さま。
 首だけひねってお姉さまのほうを窺うと、ご自分のバッグから簡易的な三脚を取り出され、私に向けてビデオカメラを固定されました。
 それから私のスマホを手に取ります。

「おーけー。じゃあ次は、そのバスタオルを座席に敷いて、窓際の席にこちら向きに座りなさい」

 服従ポーズを解き、自分でバスタオルを手に取り、ご命令通りに座ります。

「もっと深く座って両足も座席の上に乗せなさい。もちろん両膝は思い切り開いて」

 柔らかな背もたれに背を預け、両足もグイッと持ち上げ座席に乗せると、あられもないM字大開脚ポーズ。

「いい格好ね。それじゃあお仕置きを始めましょうか…って、おっとその前に、その格好にその白いチョーカーはお洒落過ぎてミスマッチ。もっとお似合いなのに変えておきましょう」

 お姉さまがバッグから取り出されたのは、くすんだ赤色で幅3センチくらいのごつい首輪。
 正真正銘ペットのワンちゃん用レザー首輪で、これまでのお姉さまとのあれこれのとき、ほとんどずっと私の首を飾ってくださっている首輪でした。
 お姉さまが近づいてきて、手早くチョーカーを外し、思い入れ深い首輪を嵌めてくださいます。

「チョーカーの日焼け跡も残してもらったんだ?良かったじゃない?外しても首輪しているみたいに見えて、マゾっぽいて言うか、とても直子っぽい」

 そんな軽口をたたきながら。
 首輪には真ん中にリードを付ける用のシルバーリングが下がり、全体的にシミやくすみが目立ちます。
 
 これはつまり、今まで私が味わった汗や涙やよだれや蝋、プラスどなたかの体液などで汚された結果なわけで、まさしくマゾ奴隷の証。
 おそらく旅行が終わるまで着けっ放しということになるのでしょう。

「じゃあお仕置きを始めましょう。その格好で自分の両手で直子のマゾマンコを目一杯押し広げて、こう言いなさい…」

 ご自分のお席にお戻りになったお姉さまが私のスマホをもてあそびつつおっしゃったとき、次の駅に到着間近という車内アナウンスが室内に響き渡りました。

「あら、もう大宮なの?さすがに速いのね」
「駅のどのホームに停車するかによっては、直子、凄く恥ずかしいことになるかもよ?」

 からかうようにおっしゃったお姉さまが、アナウンスで中断されたお仕置き内容のご説明をつづけます。

「自分の両手でラビアを目一杯押し広げて、そのイヤラシく濡れそぼった膣内を見せびらかしながら、こう言いなさい」
「直子のマゾマンコです。奥の奥まで、どうぞじっくり視てください」
「あたしを見ながら、ハッキリした口調で、お願いするみたいに、つづけて10回ね」

「わ、わかりました…」

 それのどこがお仕置きなのか、今ひとつ理解しかねています。
 お姉さまの前でなら、むしろ悦んでおねだりしたいようなセリフなのですが。

 自分の両手をMの字の真ん中に持っていき、人差し指と中指の腹をラビアに押し付けます。
 ヌプっとした感触を両指先に感じつつ、右手左手をそれぞれ腿側に引っ張ります。
 濡れた粘膜が外気に晒された途端、ゾワゾワっとした快感が背筋をつらぬきます。

「な、なおこの、マ、マゾマンコです…奥の奥まで、ど、どうぞじっくり、ご、ご覧くださいぃ、ああんっ!」

 教えられたセリフを実際に声に出したとき、得も言われぬ興奮が胸にせり上がりました。
 広げた膣内で粘膜がヒクヒクっと引き攣ったのが自分でわかりました。

「もっとはっきりと大きな声で。心の底からあたしにお願いする感じで言いなさい」

 お姉さまは私のスマホを構え、どうやら写真をお撮りになっているご様子。
 たてつづけにシャッター音が聞こえていました。

「直子のマゾマンコです。奥の奥まで、どうぞじっくり、み、視てくださいぃ…」

 今度はお姉さまが向けられたスマホのレンズをしっかり見つめ、悩ましげに、おねだりするみたいに言ってみました。
 自分で口にしている恥ずかし過ぎるセリフに、ムラムラ感じてしまっています。

「今のはイイ感じ。その調子でもう少しゆっくりハッキリ」

 お姉さまはフラッシュを光らせたり光らせなかったり、いろいろ試行錯誤されているご様子。
 私の指は溢れ出る自分の蜜で、早くもふやけ始めています。

「直子のマゾマンコです…奥の奥まで、どうぞ、じっくり、ご覧ください…」

 5回めを言い終えた頃、電車が減速を始めました。
 チラッと窓のほうに視線を走らせると、線路のレールが何本も並ぶ、よくあるターミナル駅周辺の風景。
 
 この電車、もう少しで駅に停まるんだ…
 思った瞬間、さっきよりも強い快感がゾクゾクっと背筋を駆け上がりました。

「ほら、まだ10回言っていないわよ?電車がホームに停車しても、10回言わないうちは許さないからね」

 お姉さまも窓の外を見遣り、あらためてスマホを構え直しました。

「さっきと違って、真ん中辺のホームに滑り込みそうね。スリル満点」

 ご愉快そうなお姉さまのお声。

「これが直子のマゾマンコです…奥の奥まで、どうぞ、じっくり、視てください…」

 みるみる電車はスピードを緩め、やがてホームへと滑り込んでいきます。
 少し視線を動かすだけで、大きな窓からお外の景色が視界に飛び込んできます。

 窓のすぐ横は線路、そのお隣にもうひとつ線路、そのすぐ横は別のホーム。
 電車が完全に停車しました。

 そのホームには、電車を待っている人影がたくさん見えます。
 残暑の中、所在無さげにこちらを見つめる人、人、人…
 紛れもない、ありふれた日常的風景が窓の外に広がっています。
 そんな中で、今している私の格好ときたら…
 
 あちらからこちらが、どのくらい見えているのかはわかりません。
 でも、これだけ大きな窓ですし、ホームからの距離も電車の横幅二台分ですから5~6メートルくらい?
 座席の高さ的に、剥き出しなおっぱいまでは余裕で視認出来ることでしょう。
 乗降ドアが開いたらしく、ホームのアナウンスや喧騒が大きく聞こえてきました。

「ほら、あと3回。外に気を取られていないで早く言っちゃいなさい」

「あ、はい、ごめんなさい…こ、これが直子のマゾマンコです…奥の奥まで、どうぞ、じっくり、ご覧くださいぃ…」

 目の前のレンズに向けて言っているのですが、内心では窓の外のホームにいらっしゃる方々に向けてお願いしていました。
 レンズに向けている自分の目がキョロキョロと、落ち着き無くお外を気にしてしまっているのがわかります。

 あ、こっちをじーっと見つめている男性がいる…
 あの女子大生風のおふたり、こちらを指差してコソコソ話している…
 あ、あっちのご年配のおじさまにも気づかれたみたい…
 ああん、電車さま、早く出発して…

「直子のマゾマンコです…奥の奥まで、どうぞ、じっくり、視てください…」

 グングン昂ぶる背徳感。
 9回目のおねだり中に発車チャイムが重なり、やっと電車が動き始めました。

「けっこう視られちゃったみたいね、利用客の多いホームの近くだったから」
「これでツーホーとかされちゃったら、あたしたち次の駅で降ろされちゃうのかな?」

 お言葉とは裏腹に、そんなことまったく気にもされていないみたいに愉しげなお顔のお姉さま。
 構えていたスマホを下ろされ、シードルの飲み口を優雅に唇へと運ばれます。

「まだ9回だけれど、もういいわ。いい画がたくさん撮れたから」
「ここから次に停まる駅までは、かなり時間があるはずだから、しばし休憩。あたしの用事が終わるまで、直子はそこでオナニーでもしていなさい」

 私のスマホをテーブルに置いて私に近づいて来られ、どこから取り出されたのか木製の洗濯バサミを、私の尖りきったふたつの乳首にぶら下げてくださいました。

「はぁうんっ!」

「どうせ今のでサカリきっているのでしょう?せっかくの個室なのだから、思う存分、好きなだけイクがいいわ」

 投げつけるようにおっしゃり、再び私のスマホを手に取られるお姉さま。
 お言葉に甘えて、陰唇を押し広げていた両手を外し、ふやけきった指ですぐさま股間をまさぐり始める私。

 ジュブ…ジュブジュブ…ジュブ…
 恥ずかし過ぎる淫音が室内を満たして、バスタオルがみるみるぐっしょり。

「あんっ、うっ、いいっ、くぅぅぅ!!!」

 朝からのあれこれで、性感がいっぱいいっぱいだったのでしょう。
 ちょっとクリトリスに爪を立てただけで、全身にキツイ電流が駆け巡り、ものの数十秒で呆気なくイッてしまう私なのでした。


肌色休暇一日目~幕開け 05


2020年6月14日

肌色休暇一日目~幕開け 03

 ホームの行き止まり、その先はもう改札へとつづくのであろう上り階段、付近まで進まれたお姉さまが不意に立ち止まられます。
 おかしいな、という感じに少し小首をかしげてから回れ右。
 今度は、ようやく追いつきそうになっていた私目がけて戻っていらっしゃいました。

「新宿寄りの一番端、って聞いていたのだけれど、乗車位置のマークが見当たらないのよ」
「5号車のまではちゃんとあったのに、6号車のがさ…」

 お独り言モードで足下を見つめつつ、私に近づいてこられます。
 私は、と言えば左手で掴んだブラジャーの布片の、片方のカップとストラップをだらしなく垂らしたまま、その場に立ち尽くしています。
 
 そんな私の傍らを俯いたまま通り過ぎるお姉さま。
 地下への階段をコの字に囲む壁際で再度、立ち止まられました。

「あーっ!なんだ、ここかぁ、見過ごしてた。なんだか色々ごちゃごちゃ貼ってあるんだもん」
「考えてみれば六両編成って短いもんね。思い込みって怖いなあ」

 相変わらずお独り言モードのお姉さまですが、最初の、あーっ!のご発声が大きかったので、なにごと?とばかりにホームで電車を待っていた方々が訝しそうにお姉さまにご注目されています。
 平日の中途半端な時間帯なのでホームの人影はまばらなのですが、視線が2メートルくらい離れたところでボーッと立っている私にも注がれるのを感じ、あわててブラを両手で包み込むように持ち直しました。

 こんなところで、ノーブラを誇示するみたいに、外したブラを剥き出しで持っている私…
 さっき階段をあわてて駆け上がったとき、ワンピースの布の下で奔放に暴れていた乳房の重みと、布地に擦れる乳首の感触がよみがえり、股間の裂けめがキュンと疼きました。
 顔の火照りを隠すようにうつむいて、ゆっくりとお姉さまに近づきます。

「あの…これ…」

 中学生女子が憧れの先輩にバレンタインチョコを渡すときみたいに、モジモジおずおずと両手をお姉さまに突き出しました。

「あ、ごめん。あたし今両手塞がっているから、席に着くまでノーブラ直子が持ってて」

 からかうようにおっしゃるお姉さま。
 左肩にトートバッグを提げ、左手には先ほどのお買い物袋、右手には私のポシェットとご自身のであろうスマホを掴んでいらっしゃるので、確かに両手は塞がっています。
 差し出した両手をそのまま自分の胸の前まで戻すとワンピが素肌に押し付けられ、うつむいた視界に布地をクッキリと押し出す左右の突起がハッキリと見えました。

 不意にホームに響き渡る甲高いチャイム音。
 つづけて明瞭な女性のお声で、電車の到着が告げられます。
 私でも知っている有名な温泉地のお名前を冠した特急列車のようです。

「さ、いよいよね。あたしも乗るの初めてだから、楽しみー」

 お姉さまがニッコリ笑いかけてくださいます。
 私も車内でいったい何をされちゃうのか、ドキドキとワクワクが半分づつ。

 ほどなくして、見るからに速そうな流線型の電車がホームへゆっくりと滑り込んできました。
 オレンジ色のストライプに縁取られた大きな窓。
 座席もずいぶんとゆったり配置してあるみたい。

 あの窓際で裸になったら、外から丸見えじゃない?
 あと、近くの座席の人たちにも。
 でもあまり座席は埋まっていないみたい…

 そんな、はしたない妄想に耽っていると、一番後ろの車両の連結部を少し超えたところで電車が完全に停止しました。
 目前のドアがスーッと開きます。
 優雅に乗り込むお姉さま、つづいて私。
 この乗車位置から乗り込むのは私たちだけみたいです。

 えっ!?
 最後尾の車両には座席がありませんでした。
 窓際にブルーの絨毯が敷かれた細い通路がまっすぐにつづくだけ。
 もう片側には、お部屋のドアっぽい金色の把手がいくつか見え隠れしていました。

「驚いた?奮発しちゃった。コンパートメント」

 先を行かれるお姉さまが振り向いて、いたずらっぽく微笑みながらおっしゃいました。

 コンパートメント?
 なんとなく聞き覚えのある単語…
 そうだ、海外の推理小説でよく密室殺人が起きちゃう場所だ…ていうことは、個室?

 私が小さな脳味噌をフル回転させているのも知らず、お姉さまがひとつのドアをくぐられました。
 突き当り一つ手前のドア。
 どうやらそこがお姉さまと私が過ごすコンパートメントのようです。

「へー、想像していたよりゴージャスじゃん」

 お姉さまがお部屋をグルっと見回してつぶやかれました。
 私もつられて見回します。

 品の良いワインレッドで統一された室内。
 絨毯が敷かれた床にゆったりした二人がけのソファーが向かい合い、あいだには大理石っぽいテーブル。
 ソファーに座った姿勢なら、壁一面、と言えるほどに大きな窓。
 確かに超ゴージャスな空間でした。

「ここなら直子も、誰に気兼ね無く、思いっきり恥ずかしい姿になれるでしょ?」

 すでに片方のソファーに腰掛けられ、トートバッグからハンディなビデオカメラらしき機器を取り出されたお姉さま。
 私に向かい側に座るよう顎をしゃくられ、レンズを私に向けてきます。

「最初は普通に指定席で向かうつもりだったのよ。それで、下着とかをこっそり脱ぐように命令したりしてアソぼうかな、って」
「でも指定席だとまわりに誰が来るか、座ってみるまでわからないじゃない?子供連れファミリーとか、尊大なおやじの団体とかだったら、イタズラしにくくなっちゃう」

 お姉さまには、私と普通に純粋に観光旅行を楽しむ、という選択肢は皆無のようです。
 それは私も同じなのですが…

「あの、でもいくら個室といっても、あまりえっちなことはしないほうがいいのではないですか?えっと、検札?の人、車掌さんが巡回にくるかもしれないですし…」

「あたしが聞いたところでは、検札は無いって。切符がオンライン化しているから必要ないらしいわ」

「あと、こっち側のドアもガラスだから、どなたかが通路を通ったら…」

 通路側のドアには、真ん中にほぼ等身大で素通しな長方形のガラス窓が嵌め込まれています。
 ちょっと覗けば、室内丸見えなはず。

「だからわざわざ端のほうの部屋にしたんじゃない?トイレはさっき入った乗降口のところだから、この部屋の前を通る可能性があるのは、一番端の部屋の人だけ。他の部屋の人がわざわざ戻ってこの前を通るわけないし、車内販売もその電話で呼ばない限り来ないわ」
「でも、まったく誰も通らないのも直子にはつまらなそうだから、敢えて一部屋だけ、ズラしてみたの」

 気がついた不安な点をお姉さまが一々打ち消してくださるたびに、私のドキドキがムラムラにすり替わっていきます。
 普通の座席よりも大胆なことが出来る個室を選んだ、イコール、お姉さまは私に凄く大胆なことをさせようと思っていらっしゃる…

「ほら、あたしたちのバカンスが愉しいものになることを祈って、まずは乾杯しましょう」

 テーブルの上にさっき買ったシードルのボトルを並べ、キャップをひねるお姉さま。
 私にも一本、手渡してくださいました。

「それじゃあ、露出癖どマゾ女直子の恥辱紀行・温泉編、クランクインを祝して、カンパーイっ!」

 恥ずかし過ぎるタイトルを口走られたお姉さまと、ボトルをカチンと合わせ、ごくごくっ。

「あーおいしーっ!午前中からお酒飲めるっていうのも旅行の醍醐味よね。車運転してるとこれが出来ないから、そういう意味でも初日電車にしたの、正解だった」

 早くも一本飲み干され、二本めに手を伸ばされるお姉さま。
 私は最初に半分まで飲んで、フーッと一息。
 喉と鼻を通過していく、よく冷えたリンゴの風味が気持ちいい…

「さてと、それじゃあ直子、ワンピのボタン、全部外しちゃいなさい」
「えっ!?」

 二本めを半分くらい飲んだところでテーブルに置いたお姉さまが、ビデオカメラを構え直して私に向けてきました。

「えっ、じゃないの。もう電車も走り始めたし、ここではふたりきり。視せたがりの直子がワンピ着ている理由もなくなったじゃない?早くあたしに生おっぱいを見せなさい」

 気がつけば電車は走り始めていました。
 大きな窓の外を都会の景色がビュンビュン過ぎ去っています。

「今回のバカンスではね、出来る限りビデオや写真を撮って、ミサとリンコに編集してもらって、直子の野外露出写真集決定版を作ってもらう約束なの。出来が良かったらうちの通販で売ってもいいかな、って」

「テーマは、日常のエロス。日常的なシチュエーションに異物としての肌色、ってミサが力説してた。だから直子には、いつでもすぐに裸になれる格好でいてもらいたいのよ」

「わ、わかりました…」

 少しトロンとされた目つきで艶っぽくご説明くださるお姉さまに、私もズッキュン。
 シードルをもう一口飲んでから立ち上がり、胸元からボタンを外し始めます。

 走っている電車の中でお洋服を脱ぐなんて行為、普通に生きていたら絶対ありえません。
 私が今しているのは、それだけヘンタイ的行為。
 あ、でも寝台車とかだったらパジャマに着替えるかな…あれ?でも今日本に寝台車ってあるのかしら?
 そんなとりとめのないことを考えつつ、ドキドキしながらボタンを外しました。

「外したら、あたしに向かって広げなさい」

 レンズ越しのお姉さまの目が、私をじっと見つめてきます。
 おずおずとワンピースの合わせを開く私。
 マンガでよく見る、露出狂、の格好。
 外気にさらされる私の勃起乳首。

「へー。キレイに焼けているじゃない?想像していた以上に、エロいわよ?」

 すごく嬉しそうにおっしゃったお姉さま。

 そうなんです。
 お姉さまからのお電話でこのバカンスが決まった翌日のお昼時、突然、里美さまがオフィスに迎えに来てくださいました。
 
 お車で連れて行かれたのは、お隣駅近くの住宅街にある瀟洒なタンニングサロン。
 後でお聞きしたら、エステでお世話になったアンジェラさま系列のお店なのだそうです。

 そこで丸裸にされ、渡された衣装?を着て日焼けさせられたのです。
 お姉さまからのご依頼だそうで、これは絶対、7月にやよい先生のお店でご一緒したシーナさまのパートナー、ワカバヤシさまのお姿に影響を受けられたのでしょう。

 上半身には私の乳暈より一回りくらいだけ大きいティアドロップ型の白いマイクロ紐ビキニを着けさせられ、中三日間隔で4回、通わされました
 そのあいだ、私のお世話をしてくださったのも、里美さま。
 毎回、全裸な私の全身に丁寧にローションを塗ってくださり、帰りに気が向くと里美さまのオフィスに寄って、虐めてくださったりもしました。

 その結果を今、お姉さまに初めてご披露しています。
 こんがり、とまではいかないまでも、うっすら小麦色な私の素肌。
 おっぱいも横乳、下乳まで小麦色なのですが、その頂点付近だけ涙型に生々しく青白いまま。
 その生白さが、尖立した大きめ乳首を囲む濃ピンクの広め乳輪を露骨に際立たせていました。

 自分で見ても、イヤラしい、と思います。
 否が応にも、そこに目が行ってしまう、言い換えると、そんなに、そこまでしてそこに注目してもらいたいんだ?って呆れちゃうほど。
 まさしく、卑猥、という言葉がピッタリ。

 ちなみに、チョーカーも着けたまま日焼けさせられたので、首にもクッキリ、ラインが残っています。
 なので、日焼けが引くまで私は、人前でチョーカーを外すことが出来ません。
 もひとつちなみに下半身には、もっと卑猥な刻印を施されています。

「おーけー。ワンピから手を離していいわ」

 レンズを私に向けたまま、お姉さまがおっしゃいました。
 手を離すと前立てがパサッと戻りました。
 ただ、私の尖った乳首に布の端が引っかかり、おっぱいを完全に隠してはくれません。

「そろそろ浦和に着く頃ね。そのままの格好で窓際の席に座りなさい。前を直してはだめよ」

 お姉さまがおっしゃるのを待っていたかのように、女性声のアナウンスが停車駅のご案内を告げました。

「そうね、窓際に頬杖ついて、目を瞑って寝たフリしていなさい。駅に停車してから走り出すまでずっと、ね」
「は、はい…」

 ご命令通り窓際の席に座り、窓辺に寄り添うようにからだを寄せます。
 窓の外の景色はまだ、あまり旅行っぽくありません。
 民家や商店街など、見慣れた東京郊外の景色。

 お姉さまがカメラを構えたまま、私のほうに身を乗り出してきました。
 さっき座るときからだを前屈みにしたおかけで、おっぱいをスッポリ包み込む形になってくれたシャツワンピの前立てを、片手で片方づつ、不自然に押し開いてきます。

 再び丸出しとなった私の生おっぱい。
 おまけに下半身まで大げさに開かれ、白いショーツも丸出し姿です。

 タイミング良く電車が減速を始め、窓の外は東京と変わらないくらい都会な佇まい。
 こんなところで、こんな大きな窓際で、おっぱい丸出し?
 ショーツの奥がジュンと潤んできます。

「ほら、寝てるフリ寝てるフリ」

 相変わらずカメラを構えているお姉さまが、とても愉しそうにサジェスチョン。
 ドキドキ高鳴る心臓を押さえつけるみたいに、左手で頬杖をつき、窓に顔を向けて目を閉じました。

 やがて電車が停まる気配。
 乗降口ドアが開いたのでしょう、ホームの喧騒、アナウンス、そして発車チャイム音。
 目を開けて窓の外を確認したい衝動に駆られますが、反面、見てしまうのが怖い気持ちも。
 やがて喧騒が遠のき、電車が走り出す気配。

「目を開けていいわよ」

 お姉さまのお声で、恐る恐る姿勢を直します。

「何人くらいが視てくれたと思う?」

 イタズラっぽく尋ねるお姉さま。
 私の答えを待たずに、つづけられました。

「あたしが見たところでは、ホームで、おやっ?って感じで気づいたサラリーマン風男性が数人、ギョッとしたみたいに眉をしかめたおばさまがひとり。発車するまでジーッと見つめていた学生風男性がひとり、ってところかしら」
「そうそう、ケータイをこっちに向けていた男の子もひとりいたっけ」

 さも嬉しそうにおっしゃって、私の顔がみるみる羞恥に染まっていくのを眺めた後、フッと真顔に戻られました。

「なーんてね。乗降ホームがこっち側に変わってあたしも一瞬焦ったけど、この時間だし乗っているの一番後ろでしょ?近くには誰もいないの」
「せいぜい走り出したときにホームにちらほら人影が見えただけ。つまんない絵しか撮れなかった。せっかく至近距離で直子がおっぱい丸出しにしているのに」

 ふてくされ気味に、本日三本目のシードルに手を伸ばされるお姉さま。
 イタズラに失敗した子供みたい。

「でもまあそれはそれとして直子?あなた、あたしの命令に背いたわね?」
「あたし、直子が旅行に持ってきていいもの、ちゃんと指定したわよね?」

 お気を取り直すみたいに居ずまいを正されたお姉さまが、怖いお顔で、冷たい声音で私に告げました。

「えっ!何がですか?わ、私、全部お姉さまのおっしゃる通りにしてきたはずなのですけれど…」

 突然のお姉さまのお怒りに、おっぱい丸出しのまま、あたふた慄く私。
 服装はご命令通りだし、着替えだって持ってきていないし、お金もカードも持ってきていないし…

 「じゃあ、これは何?」

 お姉さまが私のポシェットをテーブルにお乗せになり、中を開いて取り出された私のスマホ。
 そのスマホのブックカバー型スマホケースのポケットから取り出されたのは、小さく折りたたまれた一万円札。

「あっ!」

 目の前に差し出されて、ようやく思い出しました。
 夏真っ盛りの頃、お気に入りのアニメキャラがあしらわれたスマホケースを手に入れて入れ替えたとき、それまでずーっとそうしていたように、非常時緊急時用現金を新しいケースにも入れ直していたことを。

「直子がトイレに行っているあいだ、ヒマだからポシェットの中身を一応点検したときにみつけたの」
「まさか直子があたしの命令を破るはずが無いと思っていたから、最初は気づかなかったけれど、直子のスマホ、あたしのより新しいから使い方に慣れておこうと思って開いたとき、ケースの不自然な膨らみに気づいたの」

「あ、ごめんなさい。でもそれ、私もすっかり忘れていたんです。ずーっとそうしてきたので、入れ替えるときに習慣で…」

「言い訳はいらない。今重要なのは、直子が私の命令を破った、という事実だけ」
「池袋で気づいたのだけれど、この電車、大宮までは普通に副都心を走るから、大宮過ぎて人目が減ってから虐めようと思っていたけれど、気が変わったわ」

 お姉さまの瞳がどんどん嗜虐色に染まるのがわかります。
 同時に私のからだも、こうなったらもう何をされても仕方がない、全部私のせい、と被虐色に染まってきます。

「どマゾが命令に背いたら、お仕置きが必要なのは、わかるわよね?」

 お姉さまがやっと、愉しそうなお顔に戻ってくださいました。

「は、はい…」

 ごく自然にマゾの服従ポーズを取った私も、きっと凄く淫らなどマゾ顔になっていたと思います。


肌色休暇一日目~幕開け 04


2020年5月31日

肌色休暇一日目~幕開け 02

 そんなふうにひとりでドキドキハアハア感じていたら、いつの間にかお車は交差点を抜け、車道からも右側へと外れようとしています。
 目前に、えっ?トンネル?
 まさか、池袋駅前にトンネルなんてありません。
 あ、駐車場か。

 緩いスロープをゆっくり下って、地下駐車場へと吸い込まれていくお姉さまのお車。
 ここにお車を停めちゃうの?あ、デパ地下でお買い物でもしていくおつもりなのかな?
 それとも駅から電車で行くのかしら…
 頭の中をハテナマークで一杯にしているあいだにもお車は薄闇をゆっくり進み、ずいぶん奥の隅っこのスペースにそのまま駐車されました。

「さあ、いよいよ休暇の始まりね、仕事はひとまず全部忘れて、ゆっくり楽しみましょう」

 シートベルトをお外しになり、運転席で組んだ両手を前に伸ばし、んーっ、と伸びをされたお姉さま。
 それから素敵な笑顔でこちらをお向きになり、私の顔から下っていったお姉さまの視線が、剥き出しなショーツの一点で固定されました。

「あらあら、ずいぶん濡らしちゃっているじゃない?パッと見でもわかるくらい」

 お姉さまの左手が私の股間に伸び、人差し指でその部分をツン。
 すぐに離れるとその指先から、粘性を感じる透明なか細い糸がツーっと一筋伸びて切れました。

「車の中で下着見せるだけで、そんなに気持ち良かったんだ?ほんとにイヤらしい子」
「あっ、いやんっ!」

 不意の刺激に思わずからだがビクンと跳ね、のけぞった拍子にお尻がシートを滑りました。
 そんな私のはしたない姿を、ふふん、とお鼻でお笑いになってから、お姉さまがお車のダッシュボードの下のほうに目を移されました。

「あらら、早く着き過ぎちゃった。まだショッピング街、開いてないわね」

 お独り言のようにつぶやかれるお姉さま。

「ま、ちょうどいいか。あたし、ちょっと外に出て電話してくるね」

 私の返事は待たずにスッとドアを開けてバタン。
 閉じたドアのすぐ傍らでケータイ電話の画面をタップされています。

 私はと言えば、まだシートベルトをしたまま、両手でワンピの前立てを押し広げたまま。
 下半身も相変わらずめくりっ放し。
 だって、お赦しが出ないのですもの。

 地下駐車場の片隅のため周囲が薄暗くなったおかげで、お車のウインドウに自分の姿がはっきり映っています。
 誰も視てくださるかたなく、駐車場の壁に向かって下着を見せびらかしている間抜けな露出症女。
 首に細く巻き付いている純白のエナメルチョーカーが、暗いガラス鏡の中で妙に目立っています。

 視線を下へとずらすと、白いブラカップ、凹んだおへそ、そして白いビキニショーツ。
 さっきお尻が滑ったとき、ショーツの布地が股間に一層押し付けられてしまったのでしょう。
 布地にぽってり盛られているみたいに見えた私の恥ずかしい蜜の雫がベッタリと布地に広がり、その部分をより卑猥な状態にしていました。

 肌色が透けるほど張り付いた布地は、突起もスジもそのものの形通りに、やわらかな曲線を描き出しています。
 ああんっ、いつまでこんな姿でいなければならないのでしょう…

「お待たせっ。そろそろお店も開くだろうから、ぼちぼち出ましょうか」

 お車のあらゆる窓からギャラリーに覗き込まれ、見世物の辱めを受けている妄想に目を瞑って耽っていたら、不意にお姉さまが乗り込んでいらっしゃいました。

「あれ直子、まだその格好なんだ?」

 呆れたようなお姉さまのお声。

「だって、お姉さまからのお赦しがなかったから…」

 恥ずかしい妄想をしていたことを見透かされたような気がして、拗ねたようなお返事になってしまいます。

「そんなに気に入ってくれたんなら、ここを出るまでその格好で歩かせてもいいんだけどさ、どうもこの駐車場、警備員さんが働き者ばかりみたいでね、ひっきりなしに巡回してるみたい」
「さっきも電話してたら、こっちをすごく胡散臭そうに見ながら歩いていったわ。あんな短時間に違う警備員が入れ代わり立ち代わり二人も」
「だからとりあえず駅入って電車に乗るまでは、フツーにしてて」

 運転席に再度落ち着かれたお姉さまがおからだをひねり、後部座席に置いたお荷物を引き寄せながら、おっしゃいました。

「あの、お姉さま?私たち、これから電車に乗るのですか?このままお車で向かうのではなく…」

 まだ胸元は押し開いたまま、先程から一番気になっていたことをお尋ねしました。

「あれ?言ってなかったっけ?」

 お姉さまご愛用のバーキンバッグを回収され、中を覗き込みながらのお応え。

「バカンス一日目は温泉に泊まるって。ほら、他人様の別荘だと、自分たちでしなくちゃならないことも結構ありそうでしょ?初日くらいはゆっくり、上げ膳据え膳で過ごしたいじゃない」
「別荘にも管理人ていうか、お世話してくれる人たちを頼んではあるのだけど、仕事の知り合いでもあるしさ」

 お姉さまがやっと、私のほうを向いてくださいました。

「それに今日泊まる旅館、露天風呂が充実しているんだって。お部屋据え置きのから大きいのまで。森に囲まれた混浴のもあるみたい」
「だから直子も、誰に咎められることなく、心置きなく、合法的に、お外で全裸を晒せるってワケ。嬉しいでしょ?」
「そのスジの人からご紹介いただいた宿なのよ。多少やんちゃしちゃっても大丈夫なはず、だって」

 お姉さまにしては少々はしゃぎ過ぎな感じの、いつになく高揚したお声。
 やっぱりお姉さまもバカンスは嬉しいんだ…
 そのご様子に、私も今更ながらどんどん期待が膨らんできます。

「だからさっさと服を直して、電車の時間に遅れちゃったら元も子もないわよ?」
「あ、はいっ!」

 急いでシートベルトを外し、ワンピの裾を直してから胸元のボタンを留め直します。
 お姉さまはバーキンを肩から提げ、すでに車外に下り立たれています。

 えっ!?お姉さまのお荷物、それだけ?
 三泊四日の旅行にしては大して膨らんでもいない、まるで通勤途中のようなお姉さまのお姿。
 必要なものは現地調達されるのかな?
 訝しがりながら私も、車外に出ました。

 お姉さまに右手を掴まれ、手を繋いで駐車場内を歩き始めます。
 迷いの無い足取りでスタスタと進まれるお姉さま。
 繋いだ手で引かれるようにお姉さまのお背中を追う私。
 やがて重そうな扉を開くと、もうそこはさまざまな路線の各改札へとつづく地下通路でした。

 通勤通学ラッシュはとっくに終わって、もう午前10時になろうとしている頃なのに、右へ左へ忙しなく行き交う人、人、人。
 駐車場内がしんとしていたのもあり、突然迷い込んだ雑踏喧騒にちょっと気後れしてしまいます。

「おはようございます。いらっしゃいませ」

 ちょうど開店の時刻となったデパートの入口付近から、ご挨拶をされる店員のみなさまのお声が聞こえてきます。
 人混みをスルスルすり抜けて進むお姉さまはやがて、深々とお辞儀されているデパートガールさまたちの脇を通り抜け、いわゆるデパ地下と称される食品売り場に入られました。

「お昼時に現地到着予定だから、お弁当とかはいらないわね。向こうでご当地グルメランチと洒落込むのがバカンスの正道だもの」
「飲み物と、何か軽くツマめてお腹に溜まらないお菓子かなんか…」

 私に意見を求めるふうでも無い、お独り言モードなお姉さまは結局、飲みきりサイズのシードルを何本かと、一口サイズのクラッカーとチーズをお買い上げ。
 お買い物袋は当然私が持ち、空いたほうの手を再び繋いでデパ地下を出て、そのまま地下通路をJR改札口へ。
 私に切符をくださり、自動改札を入ったところで没収。

 無秩序な人の流れを器用にすり抜けて、やがて駅のホームへとつづく上り階段の麓に。
 傍らの壁際に女子トイレの入り口が見えています。

「まだ時間に余裕はあるわね。直子、トイレは大丈夫?」
「えっ?あっ、はい…えっと…」

 突然尋ねられてあたふたしてしまう私。
 オシッコのことなんて微塵も考えていなかったので、したいのかしたくないのかすぐにはわかりません。
 うーん、したいと言えばしたい気もするけど、でもやっぱりそんなにはしたくもないような…
 
「迷ってるなら、してきたほうがいいわよ。電車にもトイレはあるはずだけれど、直子は、行けないと思うから」

 煮え切らない私をニヤニヤ眺めながら、謎なお言葉をくださるお姉さま。
 とくに、直子は、のところを意味ありげに強調されました。

「あ、はい。では、お言葉に甘えて…」

 今も股間に張り付いているショーツのシミも拭っておきたかったので、おトイレを済ませておくことにしました。

「荷物は持っていてあげる。5分前にはホームで並んでいたいから、なるべく手早くチャッチャとね。この階段の周辺で待っているから」
「あ、お姉さまは、なさらないのですか?」
「あたし?あたしは大丈夫。いつでもしたいときに出来るから」

 ニッと微笑まれたお姉さまが、私の手から先程のお買い物袋を取り上げられました。
 ついで、という感じで、私が首から下げていたポシェットもなぜだか没収されます。
 更に、当然、という感じにポシェットが開けられ、中から持参したフェイスタオルを取り出して手渡されます。
 手渡されるとき、私の耳元にお姉さまの唇が寄せられ、くすぐったい吐息と一緒にこう囁かれました。

「トイレの個室でブラジャーを外してきなさい」

 ドキンッ、と心臓が跳ねました。

「は、はい…わかりました、お姉さま…」

 唐突に、私がまだお姉さまの会社に入りたての頃、お姉さまのマンションにお泊りをして連れ出された露出遊びのことを思い出していました。

 膣内にリモコンローターを仕込まれ、お昼下がりの地下鉄車内で弄ばれたこと。
 駅構内の証明写真ブースでおっぱい丸出し写真を撮るようにご命令され、その写真を透明バッグのみなさまに見えるほうへ表向きに入れて晒したまま、休日のオフィス街を歩かされたこと。
 途中のドラックストアで、女性店員さまにお浣腸のお薬の場所をお尋ねし、わざわざそこまで案内していただいたこと、などなど…

 あのときいただいた羞恥と恥辱の記憶がまざまざとよみがえります。
 そして、今回の旅行があのときの記憶を軽く凌駕してしまうだろうことも確信した瞬間でした。

 最初にお姉さまのお車で行くと聞かされ単純に、目的地に着くまでふたりだけの密室内であれこれされることだけを妄想していた私には、今の状況は青天の霹靂でした。
 そして先程のご命令は、電車内でいくら不特定多数の目があったとしても、あたしは容赦するつもりは毛頭無いわよ、という、お姉さまのご宣言、と捉えました。

 電車内の座席でも私、ひょっとしたら全裸に剥かれちゃうのかも…
 駅で停まるたびにホームのみなさまに、私の恥ずかしい姿が晒されちゃったり…
 全裸で見知らぬ駅に置き去りにされちゃったらどうしよう…
 とめどなく暴走する妄想にゾクゾク感じながら女子トイレに入りました。

 ズラッと並んだ個室で空いているのは3つ。
 そのうち一番奥の端に陣取りました。

 まずはショーツを下ろして、股間と布地の湿りをトイレットペーパーで拭き取ることにします。
 うわーっ、ヌメヌメのぐしょぐしょ。
 湿りなどという生易し代物ではなく、布地のゴム付近、お尻の割れ始めのほうまで恥ずかしくも生臭いシミが広がっていました。
 私って、どうしてこんなに濡れちゃうんだろう…
 自分でも呆れるほど。

 スジを挟み込むオマンジュウはテラテラ光りながらぷっくり膨らみ、先端の恥ずかしい肉芽もすっかり脱皮してジンジンツヤツヤ輝いていました。
 不用意に刺激しないよう注意深く拭いてから、オシッコの態勢へ。

 便座に腰を下ろすと不思議なことに尿意が高まり、予想外にたくさん出ていきました。
 シャワー装置をビデにして中のヌメリまで洗浄。
 ついでにお尻にも切り替えて、まだ使ってはいないけれど念のため洗浄。

 フーッと一息つくと、心做しな爽快感。
 ゆっくり立ち上がり、ショーツをずり上げます。
 でもトイペで拭いただけですから、やっぱり火照った股間に濡れている布地がヒンヤリ。

 さて、これからはご命令の実行です。
 前開きワンピースのボタンを襟元から4つ外して、まず両腕を両半袖から引き抜きました。
 今日しているブラジャーはフロントホックですから着脱は楽チン。

 胸元のホックを外すと、カップに押さえ込まれていたおっぱいがぷるんと震えます。
 そのまま肩紐も外し、あっという間のトップレス。
 駅の公衆おトイレ個室の空間に、私の勃起乳首生おっぱいが晒されました。

 数年前の私だったら、こんな状況だけで膣内にいやらしいおツユが溢れ出していたことでしょう。
 でも最近頓にヘンタイ経験値が上がってしまった私。
 
 せっかく脱ぎやすいフロントホックを着てきたのだから、お姉さまもどうせなら電車内で、外すようにご命令してくださればいいのに…
 なんて不埒なことが頭をよぎる始末。

 外したブラジャーを閉じた便器の蓋の上に置き、ワンピのボタンを戻していきます。
 シャツワンピなので身幅もゆったりめで、割としっかりした麻混生地ですから、よほどのけぞったりしない限り、乳首位置も露骨に浮かないみたい。
 
 襟元ふたつだけボタンを開けた状態でワンピを着終え、便器の上のブラジャーを手に持ったとき、あっ!と気がつきました。
 お姉さまが私をおトイレに送り出すとき、ポシェットまで取り上げた理由を。

 外したブラジャーを収納する場所が無いんです。
 今私は手ぶら、
 ワンピースには左胸に小さな、とてもブラジャーを入れることは出来そうにない、ポケットがひとつあるだけ。
 お姉さまに持たせていただいたフェイスタオルも、広げたって20センチ四方くらい。
 とてもブラを包み込んで隠すことは出来ませんし、これから洗面所で手を洗い、それを拭ったタオルでブラを包むこともイヤでした。

 どうやら私は、自分が今脱いだブラジャーを剥き身で手に持って、お姉さまのもとに戻らなければいけないようです。
 おトイレを出て、見知らぬ人たちがたくさん行き交う駅構内の人混みを抜けて。

 さすがお姉さま、と思うと同時に、股間がヒクッと潤みました。
 カップとカップを合わせ、出来るだけ小さな塊にしてブラジャーを持ち、個室をそっと出ました。

 幸い洗面台にも誰もいません。
 小走りで近づき、フェイスタオルとブラの塊を台に置き、素早く両手を洗いました。
 フェイスタオルで手を拭いてから折りたたみ、少し迷った末に胸ポケットに押し込みます。
 真っ白なブラの塊を隠すように両手でふんわり握り、小走りに出口へ。
 おっと、出る前に入口脇の姿見で念の為、胸ポチのチェックも忘れずに。

 相変わらずひっきりなしに行き交う方々にぶつからないよう注意しながら、胸の前で揉み手しているみたいなポーズになって、お姉さまのもとへと急ぎます。
 両手から白い布が少しだけはみ出してはいますが、まさかこれがさっき自分で脱いだばかりのブラジャーだとは、誰も気づかない…はずです…

 お姉さまは送り出したときとほぼ同じ場所で、うつむいてケータイを弄りながら待っていてくださいました。

「お待たせしました」
「あ、おかえり。ちゃんと出した?」

 ケータイの画面からお顔を上げ、薄く微笑まれるお姉さま。

「あ、はい」
「そう。じゃあ、渡して」

 右手を私に差し出されるお姉さま。
 おずおずとやんわり握っていた両手を開き、白い布の塊を丸まったまま渡す私。

「あら、まだあったかいのね。直子の体温が残ってる」

 おっしゃりながら布片を広げ、わざわざブラジャーの形にお戻しになられたお姉さま。
 近くをお通りになっていたお若そうなサラリーマンスーツ姿の男性がお気づきになられたようで、一瞬ギョッとされたように足をお止めになられ、それから好奇に染まったお顔で私たちのほうをシゲシゲと見つめつつ、通り過ぎていかれました。

「おーけー。じゃあ行きましょう」

 完全にブラジャーの形に戻っている白い布を、またもやわざわざ私に返してくださってから、お姉さまはクルッと踵を返し、ホームへとつづく階段を上り始めます。

「あ、お姉さまっ!ちょっと待って…」
 
 持たされたブラジャーを、取り敢えずクシャクシャに丸めて片手に握り、お姉さまに追い縋ります。
 ホームに出ても振り向きもされないお姉さまは、そのままズンズンとホームの端の方へと進まれるのでした。


肌色休暇一日目~幕開け 03