2014年9月28日

就職祝いは柘榴石 03


「この中のもの、全部使ったことあるのよね?」
「・・・はい」
「自分で買い揃えたの?」
「あ、いえ。日用品ぽいものはそうですけれど、オトナのオモチャ的なものはほとんど、シーナさまが置いていかれたものです」
「ふーん。これ全部試したら、一晩中かかりそうね。愉しみだわ」
 スーツケースから離れたお姉さまは、ソファーの上のご自分のバッグから何か取り出しました。

「これ敷いて。レジャーシート。直子んちの床を汚さないように一応持ってきたの。今日は直子に思う存分グズグズベトベトになってもらう予定だから」
 薄い笑みを浮かべたお姉さまから、銀色のレジャーシートを渡されました。
「ちなみに今後の直子の行動範囲は、あの固定カメラで追える範囲内ね。全編しっかり録画するつもりだから」
「あのカメラ、首は振れるのでしょ?」
「あ、はい、上下左右に」

 今現在カメラが映しているアングル、すなわち、鏡と化したマジックミラー窓の前、背後からのカメラが鏡に映る私をモニター画面の中央に映し出すような位置をまず確認して、シートを敷き始めました。
 シートは予想外にずいぶん大きくて、バルコニーに張り出したタイルの床全体を覆い、フローリングの室内まで、サンルームのほぼ全域をカバー出来ました。

 私がシートを敷いているあいだに、お姉さまはSDカードを録画装置にセット。
 つづいてソファーをベット状にしてから、監視カメラのリモコンと録画装置をしばらくいろいろ弄っていました。

 シートを敷き終わってお姉さまの傍らに戻ると、お姉さまは再びご自分のバッグから、今度は細長い金属の棒のようなものを何本が取り出されました。
 一本が30~40センチくらいの銀色に光る棒は、端がねじ式で連結出来るらしく、お姉さまが一本の棒をクルクル回して繋げると倍の長さの棒になりました。
 この棒にもいくつか銀色のリングが付いています。
 長い棒を2本作って、もう一度ご自分のバッグを覗き込むお姉さま。

「今日はバッグが重くて大変だったわ」
 苦笑いでおっしゃりながら、パンパンに膨れた巾着状の大きな布袋をバッグから取り出されました。
 巾着の紐を解き、中身をベッドの上に無造作にぶちまけました。
 ジャラジャラジャラ!
 巾着袋の中に詰まっていたのは、見るからに冷たそうな何本もの銀色の鎖でした。

 黒地の合皮ベッドの上にとぐろを巻いて、鈍く銀色に光るたくさんの鎖。
 アクセサリーで使われる鎖とは比べものにならない、自転車のチェーンくらいの太さの禍々しい鎖を見つめていると、からだがゾクゾク震えてきました。
 これからこの鎖で私は、両手両足を不自由に繋がれ、思い切りあられもない格好に拘束されて、散々いたぶられるんだ、大好きなお姉さまの手で・・・
 そう考えただけで、アソコのヒクヒクが止まりません。

「オシャレなバーキンにこんなもの入れて街中歩いてるのって、世界中であたしくらいでしょうね」
 お姉さまが自嘲気味にクスクス笑われました。
「でも今日は、直子がどのくらいマゾなのか、しっかり確かめたかったら、あたしなりにがんばって準備してきたのよ」
「さあ、ぼちぼち始めましょう。まずは直子にこの棒枷を付けてもらうわ。もっとそばにいらっしゃい」
 お姉さまが銀色の長い棒を手に持ち、私を手招きしました。

 ベッドに座るように指示され、鎖を少しどかして腰掛けました。
 鎖に触れたとき、そのひんやりとした感触にキュンキュン感じてしまいました。
「この棒枷を付け終わったとき、直子にとってのやさしいお姉さまは、いなくなるからね?」
 お姉さまのお顔から笑みが消えています。
「あたしの中のサディスティックな気持ちを総動員して、出来るだけサディストに成りきるつもりだから、覚悟してね」
 冷たい瞳でおっしゃりながら、腰掛けた私の足元にひざまづきました。

 私の左足首の足枷のリングにジョイントのようなものが繋がれ、5センチくらいの鎖のもう一方の端を、棒枷の左端のリングに繋がれました。
「足を大きく開いて」
 お姉さまのお言葉で左右の足の間隔を恐々少しずつ広げます。
「だめだめ、もっともっと」
 怒ったようなお言葉と共に、右足首が掴まれて、外側へ大きくグイッと広げられました。
「あっ、いやんっ!」
 両膝が大きく割れます。
 お姉さまはお構い無しに、右足首の足枷に棒の右端を繋ぎました。
 腰掛けている私の両足は、70センチくらいの幅に左右泣き別れになったまま棒枷で固定され、一生懸命内股にしても、まったくアソコが隠せない状態になっていました。

「立ちなさい」
 お姉さまに促され、ゆっくり立ち上がります。
 左右の足幅が固定されているので、すごく不自由でよろめきます。
 さっき強引に足幅を広げられたとき、腿の付け根の裂け目が割れてしまい、滴り出たはしたないヨダレが右の内腿をトロリと滑り落ちていきました。

「両手はどうしようかしら?」
 お姉さまの独り言。
「とりあえず後ろでいいか」
 5センチくらいの短い鎖を掴んだお姉さまに後ろ手にされ、左右の手枷を背中で繋がれました。

「おっけー。その格好でカメラの前に戻りなさい」
 軽く背中をこずかれ、よたよたと歩き始めます。
 両足が大きく広げられたままなので、歩きにくいことこの上ありません。
 遠く離れた右足と左足を床に摺るように、ちまちま前進するしかありません。
 膝を大きく上げてガニマタっぽく歩を進めれば、いくらかマシに歩けそうですが、その姿はひどくお下品そう。
 出来の悪いロボットのような摺り足でズルズルと、なんとか窓際までたどり着きました。

 鏡に映った自分の姿は、とてもみじめなものでした。
 赤い首輪の全裸の女。
 両足に巻きつけられた赤い足枷を繋ぐ、銀色の無機質な長い金属棒。
 70センチくらいのその棒の長さより狭く閉じることを禁じられた両足が、すごく不自然に床に踏ん張っています。
 
 両手はほとんど動かす余裕無く、背中で拘束。
 必然的に、胸を張るような格好になり、痛いほど尖りきったふたつの乳首を誇示するように、おっぱいを無防備に前へ突き出す姿勢です。
 裂け目からヨダレがポタポタ、銀色のシートを汚していました。

「これから直子のマゾっぷりをひとつひとつチェックして記録していくから、聞かれたことにはすべて、正直に答えること。いいわね?」
 お姉さまがリモコンで、カメラの角度やズームを調整しながら、投げつけるような口調でおっしゃいました。
 右脇に見えるモニターには、私の全身が綺麗に収まっていました。
 少し遠目ですが、足元に置かれたオモチャ箱と、鏡に映る正面からの姿もしっかり見えています。
 お姉さまったらいつの間に、カメラとモニターの操作方法を把握しちゃったみたいです。

「まずは、直子が言うところの日用品ぽいものから、使い方を説明してもらうことにするわ。カメラのほうを向きなさい」
 私の背後に来たお姉さまのご命令。
 振り返ろうとしますが、強制足幅固定の両足では、180度回転するのも一苦労です。
 お姉さまがリモコンを使い、モニターに生身の私の膝から上の全身が入るように調整されました。

 私のオモチャ箱の傍らにしゃがみ込んだお姉さまが、中からいくつかのお道具を手に取りました。
「トング類ばっかりいくつもあるわね?アイストングにパスタトング、パントング。こんなの何に使うの?」
「あ、はい・・・私、金属類の感触が好きで、こういうので挟まれたり、からだを弄られると気持ちいいんです」
「なるほどね。こんな感じ?」
 お姉さまがパントングで、私の右おっぱいの下乳をいきなりムギュッと掴んできました。
「あぁんっ!」

「手で揉まれるより。こういうので掴まれるほうがいいんだ?」
 パントングをグリグリ動かしながら、お姉さまが聞いてきます。
「あんっ!い、いえ、お姉さまならば手でももちろんいいのですが、あぁんっ、オ、オナニーのときは、こういう無機質なものに虐められるほうが、被虐感に萌えるというか・・・」
「ふーん。金属フェチの気もあるのね」
「あふんっ!」
 今度はパスタトングで左乳首をつままれました。
「もっと強いほうがいい?」
「ああんっ、はいぃ・・・」
 パスタトングの先で乳首を挟まれたまま、グイッと引っ張られました。
「あはぁぅっ!ぃやぁん!」

「マゾなら当然、先がもっとチクチクしてたほうがいいのよね?これみたいに」
 お姉さまがアイストングに持ち替えて、カチカチ鳴らします。
 そのアイストングの先っちょの細かいギザギザは、私の一番のお気に入りでした。

「はいぃ。それで乳首をつままれると、いつもジンジン感じちゃうんですぅ」
「へー、そうなの?」
 イジワルな笑みを浮かべたお姉さまが、右乳首にアイストングの開いた先っちょをあてがいました。 
 火照った乳房にひんやりした感触。
「ひぃっ!」

「これをどうして欲しい?」
「閉じてください、ギュって閉じてくださいぃ」
「こう?」
「ひいぃーーっ!」
 お姉さまがおもむろにトングの先を閉じました。
「コチコチの乳首にトゲトゲが喰い込んでいるわよ?痛くないの?」
「痛いですぅ。でも気持ちいいんですぅぅぅ」
「ヘンな子」
「ううぅぅぅーっ!」
 お姉さまが操るアイストングで、私の両乳首がしばらくもてあそばれました。
 開きっぱなしの私の股間から、悦びのヨダレがダラダラ垂れ滴り落ちました。

「もう一箇所、これで挟んで欲しい場所があるのでしょう?」
 執拗な乳首虐めで、私の両乳首は破裂寸前、凄い熱を持っていました。
 もう少しつづけられたら、それだけでイっていたと思います。
 絶妙なタイミングでお姉さまのアイストングが肌を離れました。

「はいぃ・・・挟んで欲しいですぅぅぅ」
 息を荒くしてお答えします
「どこ?」
「あの、ここ、ここです、ク、クリトリスです、クリトリスを挟んでください!」
 下半身をお姉さまに突き出すように背中を反らして、懇願しました。
「はしたない子ね。女の子はそんなお下品なこと、大きな声で言うものではなくてよ?」
 すごくイジワルなお顔の、すごく愉しそうなお姉さま。
「ごめんなさい。でも、でもぅ」
 ますます背中を反らして、アソコを突き出す私。

「だって、そのえっちなおマメをこれでつまんだら、直子、あっさりイッちゃうでしょう?」
「はい。イッちゃいます。イかせてぇ、イかせてくださいぃ」
「だめよ。まだ始めたばかりだもの。そんなのつまらないわ」
 お姉さまは身を屈め、私の足元近くに使ったトング類を並べて置いて、また立ち上がりました。

「それからね、これから直子は、あたしの許可無しに、勝手にイってはいけないことにしましょう」
 私の顔をまっすぐ見つめておっしゃいました。
「イキたいとき、イキそうなときは、必ずあたしに言って許しを請わければいけないの、イってもいいですか?って」
「そうだ!プライベートでもそうしようか?オナニーもあたしの許可制。直子がオナニーしたくなったら、あたしに連絡して許可をもらわなくちゃいけないの」
「でもまあ、あたしも四六時中相手はしていられないから、メールでいいわ。オナニーしたくなったらあたしにメールを送ること。これからオナニーします、って」
 本気なのか冗談なのか、お姉さまは蔑むような笑みを浮かべて私を見つめています。

「決まりね。いい?わかった?」
「は、はい」
 お姉さまとのおつきあいが順調につづけば、きっとひとりでオナニーする回数も減ることでしょう。
 私は深く考えず、喜んで同意しました。

「無機質な感覚が好きなのかあ。そう言われてみれば金属製の道具が多いわね」
 オモチャ箱のスーツケースを覗き込んでいたお姉さまが、また何かを手に取って立ち上がりました。
「ルレットにバターナイフ。これはまあ、使い方はわかるわ」
 右手に持ったバターナイフで、私の下半身の裂け目をペタペタッと撫ぜてきました。

「あふんっ!」
「溢れ出たおツユがペタペタして蜂蜜みたいね。穴の中に戻してあげましょう」
 ワレメの縁に沿うように、無機質な金属の感触が私の粘膜をヌルヌル擦ってきます。
 腫れ上がったピンクの肉芽をギュッと押し潰されます。
「あっ、あっ、あー・・・」
 粘膜の中をなめらかにいたぶる硬い感触。
「いぃ、もっと、もっとぉ・・・」

「それで、ルレットは、こうよね?」
 お姉さまの左手に握られたルレットのギザギザ歯車が、私の右おっぱいに歯を食い込ませてグルグル走り回り始めました。
「いいっ、あっ、あぁんっ、いたぁいっ!」

「服飾部の頃、これでアユミのこと、よく虐めたものだわ。この感触ってマゾの子には、クセになるみたいね」
 刃先が乳首に乗り上げると、鼻先からおでこへツーンと、痛痒い快感が駆け抜けていきます。
「あんっ、はいぃ。よ、横浜で、スタジオのとき、ああんっ。お姉さまが用意してくださったお道具の中に、そ、それがあって・・・うぅんっ・・・」
「すっ、すごく、嬉しかったですぅ。お姉さまが、わ、私のこと、あんっ!わかってくださって、い、いるみたいで・・・あっ、あーっ!」
 バターナイフとルレットの絶え間ない陵辱に、私はたちまち、ぐんぐん昂ぶっていきました。

「お、お姉さまぁ・・・イ、イってもよろしい、うぅっ、よろしぃですかぁ?」
「だーめ。がまんしなさい」
 からかうようにおっしゃりながらも、手を止めないお姉さま。
「あうっ、イっちゃいますぅ、うっ、イかせてくださいぃぃ!」
「だーめ、まだよ」
「いぃ、いいぃ、イかせて、イかせてっ、あっ、もっと強くぅ、あぁぁぁぁっ・・・」
「だーーめ!」
 あともうちょっと、というところで、お姉さまの両手がススッと、私のからだから離れました。

「ハァハァハァハァ・・・」
 体内の昂ぶりが名残惜しそうに引いていくのがもどかしく、お姉さまをうらめしげに見つめました。
「そうそう。その顔。直子のその顔が見たかったのよ」
「欲求不満を募らせたそのふくれっ面。あたし直子のその顔が、一番ゾクゾクしちゃうの」

 とても愉しそうなお姉さまのニクタラシイお顔。
 何事も無かったみたいにルレットとバターナイフをシートの上のトング類の横に並べたお姉さまが、瞳を妖しく輝かせて、再びスーツケースを覗き込みました。


就職祝いは柘榴石 04


2014年9月23日

就職祝いは柘榴石 02

「へー、いいお部屋じゃない?」
 お姉さまをリビングにご案内して、私はお紅茶の用意。

「ずいぶんと落ち着いた感じなのね。直子のイメージだと、大きなクマさんのぬいぐるみとか、もっとメルヘンチックなお部屋を想像していたけれど」
 お姉さまは、リビング内をゆっくりと歩き回りながらスーツの上着を脱ぎ、テレビ周りやサイドボードの中を興味深げに眺めています。
「モノトーンにブラウンとグリーンが基調なのね?いいセンスだと思うわ」

「これは、地元にいた頃におじゃました、やよい先生、あ、いえ、百合草先生のお部屋の真似をしただけなんです」
 L字に並べたソファーの前のガラステーブルにティーカップを置いて、お姉さまの上着を預かりハンガーに吊るしました。
 
 上着を脱いだお姉さまは、シャープな白ブラウスと濃茶のタイトスカートにベージュのストッキング。
 ソファーに腰掛けると、膝上丈のタイトスカートから伸びたピカピカ光る美しいお膝とスラッとしたおみ足がすごくなまめかしい。
 そこばかりじーっと見入ってしまうほど。

「ふーん、百合草女史のねえ・・・」
 お姉さまがティカップに唇をつけてから、隣に座った私の顔を覗き込むように見つめてきました。

「こんなシックなお部屋で、いつもひとりで裸になって暮らしているんだ?全裸家政婦ごっこで」
「い、いつも、というわけではないですけれど・・・」
 お姉さまのいたずらっぽい瞳に悩ましく見つめられて、急激にドギマギしてしまいます。

「このお部屋に入ったら、裸にならなければいけないルールなのでしょう?ムラムラ期のときは」
「直子、このあいだ教えてくれたじゃない。今はどう?ムラムラしていないの?」
「あの、えっと・・・」
 お姉さまの隣でモジモジする私を、お姉さまが薄い笑みと共に見つめてきます。
 不意にお姉さまのお顔が動き、私の唇にチュッと軽くキスをくださいました。

「遠慮しなくいいのよ?ルール通りに裸におなりなさい。あたしは気にしないから」
「あ、は、はい・・・」
 これはお姉さまからのご命令、と理解した私は、ソファーに腰掛けたままブラウスのボタンをはずし始めました。

「百合草女史とシーナさんにお会いしたとき、直子のえっちな性癖をいろいろたくさん、詳しく教えてもらったのよ」
「どういう悪戯が好みか、とか、どんなことをされると悦ぶのか、とか」
 お姉さまは、私がブラウスのボタンをはずしていくのを至近距離でじーっと見つめながら、ささやくように語りかけてきます。
「直子って、えっちな妄想物語とかも、ずいぶん書いているのね。愉しく読ませてもらったわ。面白かった」
「テキストデータを全部もらったわ」

 えっ!そんなものまで見られちゃったの!?
 ハイソックスを脱ごうとしていた私の手が、思わず止まりました。
 恥ずかしさで全身の血液が逆流しそう。

「今日はその下着を着けていたのね?ちょっと立ってみてくれる?」
 お姉さまに促され、両方の靴下を脱いでから立ち上がりました。
 すべてのボタンがはずれたブラウスと、ホックとジッパーをはずしていたので、立ち上がった途端に足元に落ちたスカート。
 お姉さまも立ち上がり、私の両腕からブラウスを抜いてくださいました。
 ランジェリーだけの姿で、自然とマゾの服従ポーズになる私。

「このブルーの上下も、あたしが見立てたやつだったわよね。やっぱりすごく似合っている」
 フロントホックでストラップレスのブラと、両サイドを紐で結ぶ式のハイレグフルバックショーツ。
 ソファーの前で、両足は、やすめ、両手は後頭部で組んでいる私の全身を、お姉さまがまじまじと見つめてきます。

「それでね、あたし考えたのよ。あ、さっきの話のつづきね」
 お姉さまが前屈みになり、私の左腰のショーツの紐をスルスルっと解きました。
 アソコに密着していた狭めな布がアソコを離れ、ダランとだらしなく右内腿のほうに垂れ下がりました。

「あらあら、もう濡らしちゃっているの?ほんと、いやらしい子」
 アソコの裂け目から布の内側へとか細く透明な糸が伸びて、切れました。
 奥はもう、キュンキュン疼いています。

「百合草女史もシーナさんも、今までずいぶんエグイ悪戯を直子にしてきたじゃない?それに直子が書いた妄想物語もすごくえげつなかったし」
「だから、あたしが直子のマゾ気質を満足させて、女史やシーナさんを忘れさせて、あたしだけの直子にするためには、かなりいろいろがんばらなければいけないぞ、って」
 
 おっしゃりつつお姉さまの手で右腰の紐も解かれ、ショーツが足元にパサリと落ちました。
 これで下半身は剥き出し。
 お姉さまからの嬉しい、がんばる宣言、にゾクゾク感じてしまい、右内腿を歓喜の涙がダラダラ滑り落ちていきます。

「だから今夜は、あたしも未知の領域までチャレンジして、自分がどのくらいサディスティックになれるか、試してみようと思っているの」
「直子が妄想物語で書いているようなことは、して欲しいことなのよね?あたしにとっては、けっこうエグイと思っちゃうことばかりなのだけれど、直子はそのぐらいでは、音を上げないのよね?真性マゾだから」
「あ、えっと、は、はい・・・だ、大丈夫です・・・」

 お姉さまの手でフロントホックもはずされた私は、全裸になってゾクゾク震えています。
 乳首が痛々しいほどの超背伸び。
「あたしもかなりワクワクしているの。新しい自分に出会えそうな気がして」
 うふふ、と笑ったお姉さまの瞳に妖しい官能の炎がユラユラと揺れていました。
 Mだけがわかる、Sな舌なめずりの音と共に。

 私が脱ぎ捨てたブラウスや下着を全部綺麗にたたんで、お部屋の片隅に片付けてくださったお姉さま。
 つづいてご自分のバッグの中をがさごそされていました。

「手始めにこれ、着けてくれる?」
 お姉さまがテーブルの上に並べられたのは、レザーらしき質感の短いベルト状のものたちでした。
「あたし、ロープはうまく扱えないから、手っ取り早く拘束するなら、こういうの使ったほうが早いと思ってね」
「これが首輪。そっちが手枷でこっちが足枷ね」

 鈍い赤色をしたそれらは、それぞれに大小のリングがいくつかぶら下がっていて、見るからに禍々しい感じでした。
 きっとこのリングに鎖をあれこれ繋いで、あられもない格好で拘束されてしまうのでしょう。
 やよい先生もシーナさまもロープの達人で、拘束はもっぱらローブでしたから、こういう器具での拘束は逆に新鮮、ワクワクウズウズです。

「手枷と足枷着け終わったら言って。首輪はあたしが着けてあげる」
「は、はい・・・」
 
 その場でしゃがんで足枷から着け始めます。
 裏地がフワフワしているので、きつく締めても想像していたより痛くはありません。
 両足首に赤いレザーを巻きつけたら、立ち上がって両手首。
 左手を終えて右手に移ったとき、お姉さまが私の背後に立ち、おもむろに首輪を巻きつけてくださいました。

 首輪の裏地が首に触れた瞬間、背筋を被虐的な官能がゾクゾクっと駆け上がりました。
 シーナさまからいただいたチョーカーより倍も太い無骨な首輪。
 この首輪を着けたら、私は一生お姉さまのペット。
 痛くない?とお姉さまに聞かれつつ、ギュッと首を締め上げられるだけで、アソコの中がヒクヒク騒ぎました。

「この拘束具、知り合いに頼んで、一番いいものを選んでもらったのよ。そのスジでは最高級品なんだって」
 お姉さまに手を引かれ、姿見の前に連れていかれました。

 白いブラウスに濃茶のタイトスカートなクールビューティさまの隣に立つ、赤い首輪の全裸女。
 首、と名の付くすべての部位に鈍い赤色のレザーを巻きつけておどおどしている、みじめな裸の女。
 銀色のリングが鏡の中でキラキラ光っています。
「ふふ。だいぶドレイらしくなったじゃない?可愛いわよ」
 鏡の中の私の全身を、お姉さまが舐めるように見つめていました。

「さてと、次は直子のお仕置き部屋とやらを、見せてくれる?」

 お仕置き部屋というのは、我が家のサンルームのことです。
 バルコニーに温室のように張り出した、窓全面がマジックミラー張りの畳6畳分くらいのスペース。
 主にお洗濯物干しに活用しているスペースなのですが、シーナさまが頻繁に訪れるようになって、やがてこのお部屋がメインのプレイルームとなっていました。

 マジックミラーなので夜になると、窓が全面鏡と化すこと。
 お洗濯ものを干すために物干し用パイプやポールが設えてあるので、私を恥ずかしい格好で縛りつけるのに好都合なこと。
 窓脇のドアからすぐにバルコニー、つまりお外に出られること。
 バルコニー側のお隣は広い駐車場なので、近くに建物が無く、バルコニー内を覗かれる危険が少ないこと。
 バルコニーに張り出した部分の床はタイル敷きでお外に排水できるため、汚してもお掃除が楽なこと。
 トイレとバスルームに隣接していること。

 などなどの理由でシーナさまが気に入って、いつしか私を虐めるときはいつも、このサンルームを使うようになっていたのでした。

 そしてシーナさまは、このスペースを、ご自分の好みに合うようにいろいろ改造されました。
 
 まずはパイプ式の簡易ソファーベッドを導入。
 それからインターフォンで使うような監視カメラを設置して、持ち込んだ大きなモニターでリアルタイムにお部屋の様子が映し出されるようにしました。
 もちろん録画も出来ます。
 カメラを何台か繋げて一度にモニターに映す装置まで置いてあります。
 さらに、本格的なバレエバー、バレエの練習のときに手でつかまる手摺りのこと、まで壁際に設えてしまいました。
 もちろん大家さんの許可をいただいて。
 私がバレエをやっていたことは、大家さんもご存知でしたので、お話はスムースだったそうです。

 こうしていつしかお仕置き部屋と呼ばれるようになったこのスペースで、私はシーナさまからさまざまなお仕置きを受けてきました。
 
 パイプとポールに磔のような格好で縛り付けられて全身を鞭打たれたり、タイルの上で蝋責めされたり、全裸のM字縛りでローターをアソコに挿れられたまま深夜のバルコニーに放置されたり、バレエバーに結び付けたコブつきロープで股間を嬲られたり、パイプベッドに大の字のままシーナさまの股間を舌だけでご奉仕したり・・・
 そんな恥ずかしいお仕置きの様子は、監視カメラやシーナさまの手持ちカメラで逐一記録され、シーナさまのライブラリーになっていました。

 サンルームに入って電気を全部点け、下がっていたブラインドをすべて上げました。
「うわー。ここは、すごいわね!」
 煌々と輝く光の中で窓ガラスがすべて鏡となり、着衣の美人さんと全裸に首輪のマゾ女を容赦無く映し出しました。

「こんな鏡張りの部屋でえっちなことしたら、かなり恥ずかしいわよね」
 おっしゃいつつ、窓横にあるバルコニーへの出口ドアを躊躇無く開いたお姉さま。
「見晴らしは広々としているんだ。これなら陽当たりいいわね。あ、ほんとだ、高層ビルがバッチリ見える」
 バルコニーに降りたお姉さまは、夜空を見上げているようです。

「直子、ちょっとこっち来てごらん。ほら、あのへんがあたしのオフィス」
「えっ?」
 全裸に首輪ですから一瞬、躊躇。
 でも、見られちゃう心配はほぼないことがわかっているので、意を決して、それでもやっぱり前屈み気味になって、バルコニーに降り立ちました。

「ほら、真ん中より少し上の左端のほう、電気の点いているフロアが縦に3つあるでしょう?その上の暗い窓があたしたちのオフィスよ」
「えっ?あ、あの、えっと・・・」
 
 お姉さまの背中から一歩下がった位置で、胸と股間を両腕で隠した中腰のまま、おずおずとお姉さまが指さす方向に目を向けました。
「シーナさんに教えてもらったのよ。直子んちのベランダからオフィスが見えるはずよ、って」
 遠くに見える高層ビルの一角に、ご指摘通りの箇所がありました。

「この感じなら、うちのオフィスからもここが覗けるかもね。オフィスの開業祝に天体望遠鏡いただいたのよ。とある業者さんから」
「高層ビルの窓からなら、きっと夜空が綺麗でしょうから、って。最初は面白がってみんなで覗いていたけれど、最近はぜんぜん使わずに埃かぶっているわ」
「今度ヒマなときに試してみるわね。あ、でも知ってる?天体望遠鏡って、景色が逆さまに見えるのよ・・・」
 
 ハイテンションでおしゃべりされていたお姉さまが、私のほうを振り向いた途端にお口をつぐみました。
 薄暗闇の中、今更のように私の全身をしげしげと見てきます。

「直子ってすごいのね。自分ちのベランダに、まっ裸で出ちゃうんだ?」
「あ、こ、これはその、よ、夜ですし、周りからは覗けない、って知っていますから・・・」
「だとしたって、ヘンタイよ。ここだってれっきとした外、パブリックプレイスなのよ?見上げた露出狂っぷりだわ」
「そ、それに、今はお姉さまと一緒ですから・・・い、いつもより大胆になれる、って言うか・・・」

 私の本心でした。
 お姉さまが一緒にいてくださるなら、どんどん大胆になれる気がしていました。
 それを聞いたお姉さまは、ニコッと笑って裸の私をその場でギュッと抱き寄せ、唇を重ねてくださいました。
「んぐっ」
 少しだけ舌を絡め合います。
 お外の風がやさしく私の素肌にまとわりついてきます。

「そう言ってくれると、なんだか嬉しいわ。あたし、直子にそんなに信頼されているのね」
 唇を離してから、お姉さまが照れたように微笑みました。
 それからちょっとイジワルなお顔になって、
「もしもあたしのオフィスからここを覗けるようだったら、そのときは直子に、ここでオナニーしてもらうからね」
「それをあたしは、遠く離れたオフィスの窓から望遠鏡で覗き見るの」
 冗談ぽくそんなふうにつづけて、私の手を引いてお部屋の中に戻りました。

「そうそう、直子って、えっちなオモチャ箱を隠し持っているのでしょう?宝箱だっけ?それも見せてよ」
 ソファーベッドに腰掛けたお姉さまが、そんなことをおっしゃりながら、手許にあったリモコンのボタンを何気なく押しました。

 壁際の大画面モニターに一瞬閃光が走り、モニターに窓際の一帯が、右斜め後ろからのアングルで映し出されました。

「なるほどね。鏡の前でえっちなことをしていると、鏡に映った正面からの姿が横のモニターにも大画面で映るっていうしかけなのね」
「あ、はい。何台かカメラを繋げられるので、モニター画面を4分割にしてそれぞれを全部一度に映すことも出来ます」
「ふーん。それは愉しそう。録画も出来る?」
「はい。SDカードで」
「あたしちょうど未使用のカード持っているわ。今夜の様子が残せるわね」
 お姉さまが再び、ご自分のバッグをがさごそし始めました。
 
 そのあいだに私はお姉さまのお言いつけ通り、寝室にしている自分の部屋から、海外旅行に使うような大きなスーツケースを運び出しました。
 この中には、私のからだを虐めるために、自分で買ったり、やよい先生やシーナさまからいただいたえっちなお道具がぎっしり詰まっています。

「うわー。これまたすごいわね!」
 スーツケースを開くと、お姉さまが感嘆のお声をあげられました。


就職祝いは柘榴石 03

2014年9月14日

就職祝いは柘榴石 01

 その年の私は、卒業はしたもののお仕事が決まっていない、いわゆる、就職浪人、の身の上でした。
 希望だった幼稚園教諭免許は、なんとか取得出来たのですが、実習の過程でどんどん自信がなくなっていました。
 実習に伺った幼稚園の先生方もみなさまいい人たちでしたし、可愛い子供たちと遊ぶのもとても楽しかったのですが、ひとさまの大事な幼いお子様のお世話をする、というお仕事の責任の重大さに怖気づいてしまったのです。

 両親は、せっかく独り暮らしを始めたのだから、あと1、2年がんばって、自分がやりたいことをみつけてきなさい、と励ましてくれました。
 在学中に図書館司書の資格も取得出来たので、これから公務員試験のお勉強をして、どこかの公立図書館に入れたらな、と考えていました。
 なので、東京に来て3年目の私は、公務員試験の通信教育を受けつつ、何か他の資格、たとえばお料理とか薬剤師とか、にも挑戦してみよう、という、とても中途半端な状態で4月を迎えました。

 でも見方を変えれば、就職出来なかったからこそ、絵美お姉さまと出逢えた、とも言えます。
 もしも幼稚園などに就職が決まっていたら、3月中はその準備でてんてこまいで、絶対に、知らない街のランジェリーショップで破廉恥な冒険をしてみよう、なんていう心境にはならなかったでしょうから。

 絵美お姉さまと初めてのお泊りデートをした日の翌週、お約束通り火曜日にお姉さまからご連絡をいただき、その週末にまた、お姉さまとお逢い出来ることになりました。
 今度は、どんな展開になるのだろう?
 ふしだらな期待にドキドキしながら、指折り数えて当日を待ちました。

 4月の第一週目の金曜日、午後6時40分。
 待ちあわせ場所は、有名高層ビルの名前を冠したショッピングモール内のイタリアンレストランでした。
 
 例によって何を着ていくか迷いましたが、今回も無難に、ブラウス、スカート、ジャケットの学生風にしました。
 前回、最初は普通の格好だったのに、お姉さまのご命令によって、公の場所でどんどんみるみる恥ずかしい格好にさせられてしまった、あのめくるめく恥辱感が忘れられなくなっていました。
 それを再び期待しての選択でした。

 先週お借りしたニットワンピースは、クリーニングに出して、戻ってきたビニール袋ごとバッグに入れ、お姉さまにお返しするつもりです。
 少し早く着いたのでレストランの入口前で待っていると、濃茶のビジネススーツに身を包まれたお姉さまが、大きなバーキンを肩に提げて現われました。

 席に案内され、オーダーを決めてホッと一息。
 このあいだみたく個室ではない、普通にたくさんテーブルが並んだレストランなので、秘密のアソビは出来なそう。
 ウェイターさんが立ち去ると、お姉さまが私を見てニッて笑い、会話の口火を切りました。

「一昨日にね、百合草女史とシーナさんにお会いしてきたのよ」
「えっ?」
 予期せぬ告白になぜだか少し動揺しちゃう私。

「あ、百合草先生のお店に行かれたのですか?」
「ううん。いろいろお聞きしたかったから、水野先輩に頼んで無理言って、お店始まる前に時間作ってもらったの」
 水野先輩というのは、通称ミイコさまのことで、やよい先生とご一緒にお店をやられているパートナーの女性です。
「結局夜まで居て、お店でも軽く呑んできちゃったけれどね」
 お姉さまが小さく笑いました。
 
「でもなぜ急に、百合草先生のところへ・・・?」
「直子とあたしがつきあうことになりました、っていうご報告を一応ちゃんとしておこうと思ってね」
 そのお答えを聞いて、すっごく嬉しい気持ちになりました。
 お姉さま、私とのこと、本当に真面目に考えてくださっているんだな、って。

「ほら、直子にとって百合草女史って、紫のバラのひと、みたいな感じじゃない?シーナさんは、うーんと、月影先生かな?」
 わかるようなわからないようなたとえでしたが、そう言われてみればそんな気もします。
「だから、これからは直子を気安く誘わないでくださいね、っていう軽い威嚇も込めてね」
 冗談めかしておっしゃって、クスッと笑いました。

 そう言えば私が、やよい先生やシーナさまとの過去を告白したとき、お姉さまが、ジェラシー感じちゃう、なんて感想をおっしゃっていたっけ。
 嬉しさがどんどん膨らんじゃう私。

「おふたりともお元気そうでしたか?」
「そうね。ふたりとも直子のこと、とても気にかけているみたいよ。いろいろ褒めていたわ。昔のえっちなアソビのこと、たくさん聞いちゃった」
「ほとんどは、このあいだ直子が話してくれたのと同じだったわね。あたしたちがつきあうって聞いて、シーナさんは少し残念そうだったわ」
 そんなお話をされても、私はどんな顔をすればいいのでしょうか。
「私、百合草先生のお店、一度も伺ったこと無いんです。だから先生には、ずいぶんお会いしていないんです」
「ああ、ぜひ今度ふたりでいらっしゃい、っておっしゃっていたわよ」

 そこでお料理が運ばれてきて、しばらくはそれを美味しくいただきながら、私の昔のえっちなあれこれで、お姉さまからいろいろからかわれました。
 食後のリモンチェッロが運ばれてきたとき、お姉さまが少し真面目なお顔つきになり、私を見つめてきました。

「これを飲む前に、素面なうちに、今日の一番大事な話をしておくわね」
 わー美味しそう、ってグラスに口をつけようと持ち上げていた私は、あわててグラスをテーブルに戻しました。
「あ、はい」

「直子って、今年卒業したけれど、就職していないんだって?」
「はい、そうです・・・」
「あたしてっきり、まだ学生さんだと思っていたのよ。だからそういう発想、無かったのだけれど」
「直子は、今後のビジョンとかあるの?将来こういう仕事につきたい、とか」
「いえ、これといって・・・とりあえず公務員試験を目指そうかな、くらいしか、今のところ・・・」

「だったらさ、うちで働いてみない?」
「うち、ってお姉さまの会社ですか?」
「そう」
「お仕事は、アパレル、でしたよね?」
「そう。デザイン主体だけれど、企画から製作、販売、いろいろやっているわ」
「私、そういう知識無いですし、センスもたぶん・・・」
「ううん、そういうのは関係ないの、あんまり。直子には、あたしの秘書的なお手伝いをして欲しいのよ」
「秘書、ですか?」

 お姉さまの秘書・・・
 秘書というお仕事の、なんとなくなイメージはあるのですが、具体的に何をするのかはぜんぜんわかりません。
 でも、漠然とカッコイイ感じだし、お姉さまといつでも一緒にいれそうだし・・・

「シーナさんが言い出したのよ。あの子、あ、つまり直子のことね、就職決まっていないから雇っちゃえば?って。そしたら女史も先輩も大賛成」
「あの子は、たぶん今までバイトもしたことないし、ああいう子だから就職するにもいろいろややこしいと思うのよね、って」
「男性ばかりの職場は絶対無理だろうし、お金にも困っていないから、放っておくとずっと働かなそうだし、って、これは全部シーナさんの発言だからね」
「だから、あたしが養ってあげるしかない、って、3人からさんざん売り込まれちゃった」
 お姉さまが嬉しそうにクスクス笑いながら、リモンチェッロのグラスに口をつけました。

「あたしのオフィスは、社員はあたしを含めて女性6名、全員男性不用のレズビアン。ペイはあまり出せないけれど、居心地は良いはずよ」
「コンセプトは、簡単に言うと、女性による女性のためのファッションブランド。だから、おつきあいしている会社もほとんど、女性主体なの」
「これがうちの会社概要資料ね。ひとりになってからゆっくり見て、じっくり考えてみて」
 オフィス・ダブルイー、というオシャレなレタリング文字が踊る厚めな白い封筒を手渡されました。

「ダブルイー、っていうのはWEではなくてEEって書いて、エレガントアンドエロティック。偶然あたしのイニシャルでもあるから、あたしが無理矢理社長にされっちゃったというワケ」
「ほんとですか!?」
「嘘みたいだけどほんと」
 お姉さまの色っぽい苦笑い。
「でも、私なんかでいいのですか?」
「私なんか、ってどういう意味?直子だから誘うんじゃない。何言ってるのよ?」
 少し怒ったようなお姉さまのお言葉がハートにズキュン!

「さあ、これで直子への勧誘はいったん終わりね。これからは、スールとしてのデートを楽しみましょう」
 ふたりのグラスをチンとして、私は封筒を自分のバッグにしまいました。
「これ飲んだら、今夜は直子の部屋へ行くからね。百合草女史やシーナさんにいろいろ教えられて、試してみたいことがたくさんあるの。いいわよね?」
 お姉さまのお顔が、えっちぽく笑っています。
「はい。それはもちろん」
 なんとなく予感がして、お部屋は綺麗にお掃除してきました。

「ところでお姉さま?お姉さまのオフィスって、この近くにあるのですよね?」
 お誘いに耳を傾けながら、ずっと気になっていたことを聞いてみました。
「どのあたりなのですか?」
「あれ?まだ教えていなかったけ?」
「はい。聞いていません」
「そうね、ここからだと、一階まで降りて少し歩いてからエレベーターに乗って1分くらいかしら」
「えっ?ひょっとして・・・」
「このビルの高層階、真ん中より少し上」

 うわー、こんな有名なビルのすごーく高いフロアでお仕事が出来るんだ。
 見晴らし良さそう。
「お外見えます?」
「もちろん。夜景とか、すっごく綺麗よ」
 私の中で、お姉さまの会社への就職は、完全に決まりました。

 それからお外へ出て、すっかり陽の落ちた薄暗い道を私が住むマンションへと、おしゃべりしながらぷらぷら歩き始めました。

「お姉さまの会社って、高校のときの服飾部のお友達が集まって作られた、っておっしゃっていましたよね?」
「そうよ。あたしと同学年のあとふたりが主要メンバー。デザイン部門と営業部門」
「それでその服飾部の頃、私みたいな人がいて、その人をよく虐めていたって、このあいだ・・・」
「ああ、アユミのことね。でも虐めていたんじゃないってば。悪ふざけみたいなもの。彼女だってキャッキャ悦んでいたもの」
「どんなことをされていたのですか?すごく知りたいです」

「よくある悪戯よ。授業中にこっそりパンツ脱げ、って命令したり、ノーブラで体育の授業受けさせたり」
「ああ」
「仲間にそういうオモチャが手に入る子がいたから、授業中にリモコンローターで虐めたりね」
「すごいですね」
「あら、直子だって、友達にそういう子がいたって言っていたじゃない?ヌードモデルさせたとか。美術部の子だっけ?」
 私の高校時代のお友達、しーちゃんとクリスさんのことです。
「はい。でもお姉さまたちのほうがもっとすごそう」
「アユミも美術部に貸し出したことあるわよ。ヌードデッサンのモデルとして」

「女子高はね、けっこうそういうの、えげつないよね。休み時間にトイレにこもってイかせ合ったりしていたもの」
「うわー。うちの学校では、そこまではなかったと思いますよ?たぶん」
「そうなの?まあ、あたしたちもノリの良さそうな子としかしなかったけれどね」

「服飾部ならではで言うと、スクール水着の裏地こっそり取っちゃったり、胸と腰周りだけメッシュのワンピース作って着せてみたり」
「服飾部だと、採寸や試着で着たり脱いだりを部室で頻繁にするから、肌を見せることには抵抗が薄れちゃうのよね、まわりみんな同性だし。うちの学校、教師もほとんど女だったし」
「でも、そんな中でひどく恥ずかしがる子がいると、一気に愉しくなっちゃうのよ。いろいろ悪戯考えて」

「一番傑作だったのは、制服のとそっくりな色合いでもっと軽くて薄い布地でスカート作って、風の強い日にアユミに穿かせて街に遊びに出たの」
「一緒に歩いていると、もう面白いくらい、アユミのスカートだけフワフワめくれちゃって、凄かったわよ」
「ちゃんと膝丈で、一見みんな同じスカートなのにね。道行く人も呆気にとられていたわ。ずっとついてくる男子とかいたし」
「卒業してから昔話したとき、アユミも、あれが一番恥ずかしかった、って言ってたな」
「でも彼女、そのわりには気に入ったらしくて、その後もよく好んで穿いていたのよ。下にTバックのパンツとか着けて」

「そのアユミさんていうかたは、お姉さまの会社には入らなかったのですか?」
「うん。彼女はその後、モデルになったの。いわゆるグラビアアイドルってやつ?けっこうその世界では有名みたい」
 お名前をお聞きしましたが、聞いたことあるような無いような。
「今でもDVD出してがんばっているわよ。やっぱり視られるのが好きなのよね。うちでたまにコスチュームのデザインもしているから、うちに入れば、そのうち会えると思うわ、アユミに」
「へー。まだおつきあいがあるのですね?」
「もちろん。だからぜんぜんイジメじゃないでしょ?」

「直子にもそのうち、いろいろ恥ずかしい衣装を作ってあげるわ。嬉しいでしょ?」
「・・・はい・・・愉しみです」

 そんなおしゃべりを楽しくしつつ、夜8時ちょっと過ぎに私のマンションに到着しました。


就職祝いは柘榴石 02