2014年7月6日

ランデブー 6:42 01

「あなたはあんなこと、しょっちゅうやっているの?」

 とある居酒屋さんの衝立で仕切られた小さな個室。
 私の対面に座っている絵美さまの唇が、そう問いかけてきました。

 あのランジェリーショップでの出来事から約ひと月後、桜の蕾もほころび始めた、3月がもう終わりそうな頃。
 私は、絵美さまと再会することが出来ました。

 もちろん、横浜から戻ったその日の夜、自宅から絵美さまにお電話しました。
 目を閉じればまぶたの裏にはっきりと浮かぶ、絵美さまの端正なお顔を思い出してドキドキしながら。
 ツーコールも鳴らないうちにつながりました。
「待っていたわ、電話」
 絵美さまは、私が名乗る前に、少し掠れ気味のハスキーなお声でそうおっしゃり、電話に出てくださいました。

「先日は、本当に失礼いたしました・・・」
 から始めて、緊張しつつ慎重に言葉を選びながら、もう一度お逢いしたい、という意味のことをなんとか伝えました。
 絵美さまは、つっかえつっかえな私の言葉にも気さくな感じで答えてくださり、ぜひ会おうということになりました。
 でも、絵美さまのお仕事のご都合や、私が卒業を控えた時期であったこともあり、ふたりのスケジュールが合う日は、ずいぶん先のことになってしまったのでした。

 絵美さまが待ち合わせに指定された場所は、意外なことに池袋でした。
 私は、当然またあの横浜のショップに伺うことになるのだろうと勝手に思い込んでいたので、思わず、えっ!?って聞き返してしまいました。

「あなたのおうちからは遠い?」
「いいえ。ぜんぜん逆です。私今、東池袋に住んでいるんです」
「あら、それならなおさら好都合じゃない?」
「あなたに会えるの、楽しみに待つことにするわ」
 電話を終えるとき、絵美さまは艶っぽいお声で、そうおっしゃってくださいました。

 ステキな絵美お姉さまにもう一度逢える・・・
 それからの毎日は、遠足の日を心待ちにしている子供みたいに、ルンルンワクワクな気分で過ごしました。
 絵美さまはもうすでに、私がどういう性癖を持つ人間なのかご存知です。
 だからお逢いしたらきっと、あのときみたいなえっちなアソビで、私を辱めてくれるはず・・・
 ルンルンとムラムラがごちゃ混ぜになったルラルラ気分。
 お約束の日を指折り数えながら私は、文字通り毎日、思い出しオナニーをくりかえす日々でした。

 ランジェリーショップでの出来事から日が経つにつれ、あの日のあれこれを客観的に考えることが出来るようになっていました。
 そして考えれば考えるほど、あの日、私がしでかした数々のはしたない行為は、どんなに言葉を繕ってみてもくつがえらない、あまりに異常でヘンタイな露出マゾそのものの痴態だったという事実と、それを行なったのが紛れもなく自分だった、という現実を確認することとなり、そのいてもたってもいられない恥ずかしさが、私を更にどんどん欲情させました。

 前の年の夏休み以降、やよい先生とシーナさまが、お仕事、プライベート共に一段とお忙しくなり、ほとんどお会い出来ない日々がつづいていました。
 そのあいだはずっとひとりアソビばかりだったので、誰かとリアルに会話しながら辱めを受けたのは、すごく久しぶりでした。
 そのせいもあってあの日の私は、自分でも信じられないくらい大胆になり、後先も考えられないほど発情していました。

 日曜日のお買い物客が大勢行き来しているファッションビルの、薄い壁で仕切られただけの試着室。
 そんな危うい場所で全裸になり、ほぼ初対面の絵美さまに視られ、虐められながら、声を押し殺して何度か絶頂を迎えた私。
 関係者しか入れないビルのスタジオに忍び込み、たくさんのいやらしいお道具を使って、性癖丸出しオナニーショーをご披露した私。

 現実にやってしまった、あまりにも破廉恥な行為の数々に今更ながら凄まじい羞恥を感じ、その恥ずかしさが、子供の頃から私のからだを蝕んでいる、自己制御不能な被虐心を強烈に疼かせました。
「あなたは正真正銘の露出マゾ。ヘンタイ性欲者なのよ、直子」
 自分で自分を蔑む心の声に支配された私の両手。
 からだをまさぐる10本の指は、いつまでも止まることがありませんでした。

 快感の余韻の中て少し気持ちが落ち着くと、今度は、絵美さまと再会出来る喜びが、みるみる心を満たしていきます。

 当日は何を着ていこうかな?
 あのお話もこのお話も聞いてもらおう。
 また手をつないでくれるかな?
 またキスしてくれるかな・・・

 自分にとって大きなイベントのはずな大学の卒業式当日も上の空、絵美さまのことばかりを考えていました。
 中でも大いに頭を悩ませたのが、当日どんな服装をしていくか、でした。

 本当に真剣に、すっごく迷いました。
 出会いのときは、駅ビルのおトイレでえっちめな下着に穿き替え、ファッションビルのおトイレでは、わざわざミニスカートをクロッチギリギリまで無理やり短かくしてからショップを訪れました。
 そんな服装が功を奏して、絵美さまもすんなり私の性癖に気づいてくれたような面があったような気もします。
 絵美さまは、そういう私を期待されているかもしれない。
 まだ街中では春物コートを着た女性も目立つ頃でしたから、いっそ裸コートで行っちゃおうか・・・
 確か絵美さま、あの日の別れ際、次回もあたしがびっくりするような格好でいらっしゃい、っておっしゃていたし・・・
 そんな大胆なことを考えてはドキドキ昂ぶるのですが、一方では、私の中に生まれたひとつの決意が、そのような浮わついた気持ちにブレーキをかけていました。

 当日、私は絵美さまに、ぜひ自分とおつきあいして欲しい、とお願いするつもりでした。
 私だけのパートナーになってください、と。
 私にとっては一大決心でした。

 思えば今まで私が好きになったり、実際に性的なお相手をしてくれた人たちは、そのときすでに私とは別の決まったお相手がいたり、私がぐずぐずしているうちに別のお相手をみつけてしまったりで、誰ともちゃんとした、と言うか、ステディなパートナー関係にはなれずじまいに、今まできていました。
 そういうのは終わりにしたい。
 もう一歩踏み込んだ、私と誰か、ふたりきりの親密な関係が欲しい、と切実に願っていました。
 
 そして何よりも私は、あの日の出来事を通して、絵美さまのこと以外考えられなくなっていました。

 私が絵美さまに、こんなにも恋焦がれてしまう最大の理由。
 ひと月近く、ずーっと絵美さまのことだけを考えて導き出された結論。
 それは、私のあられもない行為の一部始終を、まるでご自分の頭の中のビデオカメラで記録しているかのように、冷ややかに、かつ真剣に目撃されていた絵美さまの瞳でした。
 絵美さまが私をじっと見つめる、その視線・・・

 それは、やよい先生やシーナさまとのアソビでも感じられたものではあるのですが、絵美さまのそれは、もっともっと強力に私を惹きつけました。
 その視線に晒されているだけで、心の奥底からジンジン感じてしまう、絵美さまの瞳の光がちょっと変化しただけで性的興奮が異様に昂ぶってしまう、私にとって特別な視線でした。
 視姦、という言葉は、知識としては知っていましたが、あの日初めて身をもって体験した気がします。
 とにかく視ていて欲しい。
 一瞬でも視線が私からそれると、それだけで言いようも無い寂しさに襲われてしまう。
 そんな魔力を、絵美さまの視線は持っていました。

 哀れむような、呆れているような冷たい瞳の中に、チロチロとゆらめいていた絵美さまの官能。
 私が恥ずかしがれば恥ずかしがるほど大きくなっていく、絵美さまの愉悦の炎。
 私は、その炎をより燃え立たせたくて、絵美さまに悦んでいただきたくて、どんどん自らを恥辱の果てに追い込みたくなるのです。

 もう一度、あの視線で私のからだをつらぬいて欲しい。
 からだの隅々までを、あの視線で舐められたい、責められたい、嬲られたい・・・

 もちろん視線だけではなく、絵美さまのお声や振る舞いも、何もかもが私のマゾ心の琴線を激しく震わせてくださいました。
 絵美さまは私にとって、心から本当に理想的と思えるパートナー。
 いいえ、マゾな私がパートナーなんて、そんな生意気なことを言ってはいけません。
 主従関係、ご主人様と奴隷、飼い主とペット・・・
 絵美さまが悦ぶことであれば、なんでも、どんなに恥ずかしいことでも出来る。
 絵美さまが私を視ていてくださるなら、他には何もいらない。
 そのくらい私は、絵美さまに心を奪われていました。
 絵美さまにだけは嫌われたくない、と思いました。

 魅力的な絵美さまですから、すでに誰かとおつきあいしている可能性も大きいとは思いましたが、その場合は、その次のポジションでもいいから、私とも遊んで欲しい、と頼み込むつもりでした。
 そしていつか、私だけの絵美さまになれば・・・
 やよい先生にもシーナさまにも感じたことの無かった、私にしては珍しく、独占欲、までもが芽生えているみたい。

 そんなことをごちゃごちゃ考えているあいだも、私の粘膜は絵美さまの視線を思い出して疼き始めます。
 自分の指で疼きを鎮め、少し冷静になった頭でまた考えます。

 結局、臆病さゆえなのでしょう、嫌われたくない、という想いばかりがどんどん募っていきました。
 絵美さまは、社会人で教養もおありだろうし、普段はちゃんと常識をわきまえているかたのはず。
 今回お逢いするのはショップではなくて、人通り多い街中だし、あんまりだらしのない格好で行くと失望されちゃうかもしれない。
 それに、私がおつきあいをお願いする大事な日なのだし・・・
 そう考えるようになって、やっぱり普通に無難な格好で行くことに決めました。

 お約束の日は、金曜日でした。
 絵美さまは、お仕事を早めに終わらせて駆けつけてくださるということで、夕方6時40分の待ち合わせでした。

 当日は、4月間近にしては少し肌寒い曇り空。
 お出かけ前にウォークインクロゼットで、手持ちのお洋服をあれこれ引っ張り出し、長い時間悩みました。

 少し厚めな純白コットンのフリルブラウスにベージュのジャケットを羽織り、膝上丈の濃いブルーのボックスプリーツスカートに黒ニーソックス。
 悩んだワリには、普通の真面目な学生さん風になっちゃいました。。
 下着だけは、あの日絵美さまが選んでくださったピカピカピンクのストラップレスブラと紐パンにしました。

 すっかり薄暗くなった繁華街を抜け、灯りが煌々と灯るデパートのショーウインドウ前。
 待ち合わせ時間に少しだけ遅れて現われた絵美さまは、濃いグレーのパンツスーツ姿でした。
 仕立ての良いやわらかそうな生地に包まれたウエストからヒップのラインがすっごく綺麗。
 大きめに開けたシャツブラウスの襟元から覗く白い肌がセクシー。
 お仕事が出来そうなオトナの女性っていう感じ。
 ごあいさつも忘れてしばし見蕩れてしまうほどカッコイイお姿でした。

「こ、こんにちは。きょ、今日はわざわざおこしいただいて・・・」
 すっかりアガってしまい、ごにょごにょご挨拶する私に、ニッと笑いかけてくださる絵美さま。
 ズキューン!

 絵美さまは気さくに、元気にしてた?みたいなお言葉をかけてくれながら、ズンズンと大股で歩き始めました。
 さすがにいきなり手をつないではくれないようなので、半歩くらい後ろを追いかけます。
 案内してくださったのは、雑居ビルの上のほうにあるオシャレな居酒屋さんでした。
 予約してあったらしく、すぐに通された場所は四方を和風な格子戸のような衝立で仕切った完全個室でした。
 真ん中に正方形のテーブルがあって、足元が掘りごたつみたく凹んでいて床にお座布団を敷いて座るタイプ。
 絵美さまは、私に奥を勧め、ご自分は入り口格子戸に背を向け、私と差し向かいにお座りになりました。

 ほどなく店員さんが来て、絵美さまが慣れた感じでお料理をいくつか注文され、私は梅酒のソーダ割を注文しました。
 絵美さまは白ワイン。
 しばらくは、お食事をいただきながら、絵美さまのお仕事についてのお話になりました。

 絵美さまは、その服装のせいか、ショップでお逢いしたときとはまた少し違った印象で、なんて言うか、知的できりりとした感じで、まさしくクールビューティという言葉がぴったり。
 私は、お話をお聞きしながらも、絵美さまの綺麗なお姿にうっとり見蕩れていました。

 絵美さまは、横浜のランジェリーショップの店長さんが本職というわけではなく、普段は、アパレル系のデザイン事務所を経営されているのだそうです。
「新作が出たときとか、お客様のニーズを調べたいときなんかに、懇意にしているお店に頼んでマヌカンの真似事させてもらったりしているの。いわゆる市場調査」
「そんなにしょっちゅうではないけれど、新宿とか渋谷、銀座、いろいろなところでね」
「あの横浜のお店は、うちも多少出資しているから、アンテナショップみたいなものかな」
 絵美さまが、生ハムを器用にフォークで丸めながら説明してくださいました。

「それはつまり、会社の社長さん、ということですか?」
「そうね。らしくないのだけれど、行きがかりでそうなっちゃったのよ」
 絵美さまが照れくさそうに笑いました。
 そのお顔がとてもコケティッシュで、キュンとしてしまいます。
「少人数だけれど、けっこう手広くやっているの、アパレル全般ね」

 美味しいお料理をいただきつつ、梅酒ソーダをちびちび飲みながら絵美さまのお話に耳を傾けていると、ふいにデジャヴを感じました。
 こんな感じの場面、ずっと前に体験したことがある・・・
 すぐに思い出しました。
 中学生のとき、私のトラウマとなった事件のことでやよい先生にご相談したとき、連れて行かれた居酒屋さん。
 あのときの感じにそっくり。

 私が少しのあいだ、遡った時間に思いを馳せていたとき、不意にお言葉を投げかけられました。

「ところであなたはあんなこと、しょっちゅうやっているの?」


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2014年6月16日

コートを脱いで昼食を 32

「ねえシーナさん?よかったらレジ裏の部屋、使います?」
 ショーウインドウの向こう側からの視線がもたらす、羞恥の愉楽に浸りきっていた私の頭の片隅に、純さまのくぐもったお声が侵入してきました。
「だってナオコったら、さっきからずっとだらしなく口開けっぱのアヘ顔で、サカリっぱなしですよ?」
「こんなんじゃいったんイかせてあげないと、おさまりつかないんじゃないかと思って・・・」
 純さまの呆れたようなお声が、私の後方から聞こえていました。

「そうねえ。だけどこの状態の直子はもはやケモノなのよねえ。下手にどっかまさぐったら凄い声あげるわよ?」
「ドア閉じたって絶対ヨガリ声が店内に響いちゃうだろうから、今以上にお店に迷惑かけちゃうわ」
 シーナさまの、多分に軽蔑を含んだ、でもなんだか愉しそうなお声が応えました。
「シール貼っているあいだ中、お尻の穴がヒクヒク蠢いているのだもの、なんだかこっちのほうが恥ずかしくなっちゃいましたよ」
 桜子さまも呆れ果てているご様子。
 私の意識が徐々に現実に引き戻されました。

「だからまあ、直子の後始末はわたしが責任もってどうにかするわ」
 シーナさまのお声が聞こえたと同時に、私のお尻がパチンと勢いの良い音をたてました。
「ああーんっ!」
「ほら直子、いつまでわたしたちにいやらしいお尻突き出している気なの?まだ視られ足りない?」
「シールはもうとっくに終わっているわよ?さっさとこっち向きなさい」
「あ、はいぃ」
 前屈み気味だった上体を起こしつつ、シーナさま、そしてギャラリーのみなさまのほうへ恐る恐る向き直りました。
 途端に、私の顔面めがけて、みなさまの好奇と侮蔑に満ち溢れた視線の束が襲いかかってきました。

「ほんとに、見事にどヘンタイ淫乱マゾ丸出しの顔になっているわねえ。ねえ直子、あなた今、一触即発でしょ?」
 薄ら笑いを浮かべたシーナさまの瞳がキラキラ輝いています。
「はい・・・」
「イきたくてイきたくて仕方ないでしょう?」
「はい・・・」
「たとえば今、どこを弄って欲しい?」
「あ、えっと、どこでもいいですけれど・・・おっぱいとか、ち、乳首・・・」
 シーナさまの誘導ではしたない言葉をスラスラ口走ってしまう私。
 シーナさまの背後で見守るギャラリーのみなさまが気にはなるのですが、それでも、いやらしい言葉を自ら口にしたくてたまりません。

「おっぱいだけでいいの?」
「あ、あとはえっと、こ、ここ・・・」
 両手は頭の後ろなので、顎を引いて自分の下半身を覗き込む私。
「ここじゃわからないわね。ちゃんと呼び名で教えてくれなくちゃ」
「あの、アソコ・・・せ、性器・・・です」
「あら?今日はずいぶんとお上品なのね。いつもと違う呼び方じゃない?」
「あの、えっと、ク、クリトリス・・・」
「そこだけ?」
「いえ、あの、お、オマン・・・」
 口に出しかけて、ギャラリーのみなさまを上目遣いで見た途端、下半身が電流に貫かれました。

「え?聞こえなかったわ、何?」
「だからあの・・・オマンコ、オマンコ全体を弄って欲しいんです!」
 ハッキリクッキリ言葉にした私。
 うわっ!てギャラリーのどなたかが呆れたお声をあげました。
 フフン、と満足気に笑われたシーナさまがつづけます。

「だけどね、純ちゃんのお店もいつまでも直子のヘンタイアソビにつきあっているワケにはいかないのよ?これから夕方はかきいれどきだし」
「だからそろそろわたしたちはおいとましましょう」
「でもその前に、直子は自分のしたことの後始末をしなければいけないわ」
 そこでシーナさまは一呼吸置き、ニッて笑いました。

「シャツを脱ぎなさい」
「え?」
「シャツ脱いで素っ裸になって、床にひざまずいて自分のいやらしいおツユで汚したお店の床を綺麗に拭き取りなさい。さあ早く!」
「は、はいっ!」
 語気の荒くなったシーナさまのご命令口調に、あわててシャツの裾を捲り上げ、Tシャツを脱ぎました。
 とうとうお店で全裸です。
 すぐに床にひざまずき、這いつくばってお尻を突き上げ、自分が立っていた足元の恥ずかしい水溜りを、たたんだシャツで丁寧に拭き始めました。
 
 小さなTシャツ全体がぐっしょりになるほどの量でした。
 そして、自分では嗅ぎ慣れている臭い。
 それがギャラリーのみなさまにまで届いていることを思うと、今更ながらの強烈な恥ずかしさ、みじめさ。
 純さまがコンビニ袋をくれたので、それにぐっしょりTシャツを入れると、横からシーナさまの手が伸びて奪われました。
「これは直子のバッグに入れておくわ。後で自分で洗って、もちろんまた着ること。ものは大切に、ね?」

「立ち上がったら、こちらを向きなさい」
 お言いつけ通り立ち上がり、みなさまと対面します。
 両足は休め、両手は自然と頭の後ろへ。
 さっきと今で違うのは、私が正真正銘の全裸なところ。

「これからわたしは純ちゃんとお会計してくるから、戻ってくるまでのあいだ、お客様に桜子さんのスキンアート作品の出来栄えを、近くでじっくり見ていただきなさい」
「あ、その前にまず、今まで見守っていただいたお礼をみなさんに言わなくてはね。そのおかげで直子がこんなに気持ち良くなれたのだから」
 シーナさまが細目で私を睨みつつ、顎でうながします。
「ほら、今日は、見てくださってありがとうございました、でしょ?」
「あ、はい、み、みなさま、今日は、見てくださいまして、本当にありがとうございました」
 マゾの服従ポーズのまま上体を前傾させ、ペコリと頭を下げました。
 剥き出しのおっぱいがプルンと揺れます。

「何を見てもらったのよ?」
「・・・わ、私の裸です・・・」
「ただの裸じゃないでしょう?」
「あ、えっと、いやらしいマゾ女の直子のからだです・・・」
「からだって、具体的にどことどこよ?直子のどこを見てもらったから嬉しかったのよ?」
「あ、っと・・・」
「ほら、よく考えて、わたしが満足できるように、正直なご挨拶をなさい!もう一度最初からやり直し!」
 シーナさまの苛立ったようなお声が、私のマゾ性をグングン煽ってくれます。

「み、みなさま、今日は、私・・・な、直子の、ヘンタイマゾ女の直子のいやらしい裸を・・・あの、つ、つまり、おっぱいやち、乳首・・・尖った乳首や、お、オマンコ、いやらしく濡らしたオマンコ、の穴と充血したクリトリスと、あとえっと、汚いお尻の穴も、見てくださって、本当に、あ、ありがとうございました・・・」
 
 理性のストッパーがはずれ、恥辱の洪水に溺れている私の唇からは、はしたなくえげつない言葉が次から次へとスラスラ湧き出ていました。
「私は、直子は、みなさまに恥ずかしい姿を視られて、虐められて辱められてえっちに興奮してしまう、いやらしいヘンタイのどマゾ女なんです・・・今日は、みなさまのおかげで、とても気持ち良くさせていただいて、本当にありがとうございました」
「ま、また機会がございましたら、そのときも存分に虐めてやってください・・・お願いいたします。ありがとうございました・・・」
 そこまで言ったとき、懲りもせず左内腿を愛液がドロリと滑り落ちていきました。

「あーあ、まーた床汚して!もう際限ないわね!」
 シーナさまが呆れたお声でコンビニ袋を投げつけてきました。
「拭いたらまたその姿勢に戻って、スキンアート作品の見本になること!」
「みなさんも遠慮せずに、近くでご覧になってくださいね。このお店の桜子さんの腕前は一流アーティスト並みだから」
「でも、あんまり近づくといやらしい臭いでクラクラしちゃうかもね。直子への質問もご自由に。直子はちゃんと正直に答えること」
「それに、ちょっとなら作品にさわってもいいわよ。ペイントは完全に定着しているらしいから。直子のいやらしい汗でも滲んでいないしね」
「でも直子は絶対ヘンな声をあげないこと。がまんするのよ。この後すぐ、わたしがいい所に連れて行って、存分に喘がせてあげるから」
 笑い混じりなシーナさまが言い捨てて、純さまと一緒にレジのほうへ消えました。
「ワタシもトイレ行ってくる」
 桜子さまが後を追いました。

 全裸で無防備に立ち尽くす私の前に残ったのは、今日初めて出会ったかたたちだけになっていました。
 試着のお客様、そのあといらっしゃったおふたかた、そのまたあと更に4名のお客様が見物に加われたようでした。
 シルヴィアさまとエレナさまは、残念ながらいつの間にか帰られてしまったようですが、それでも合計7名の初対面なかたたちの視線が私の裸身に注がれていました。
 全員、私とあまり年齢に開きの無さそうな学生さん風な女性ばかり。
 お名前も素性も知らない同年代の女の子たちの遠慮無い視線が、私の素肌を嘗め回していました。
 みなさまは先ほどより近い位置、桜子さまの作業デスクの脇、まで近づいてきて、裸の私を半円形に取り囲んでいました。

「本当にこういう趣味の人いるんだねー」
「露出狂、って言うんでしょ?」
「さっき、通行人もけっこうこっち、見てたよね?わたしのほうがドキドキしちゃった」
「乳首が飛び出てたの、気づいたのかしら?」
「ひとり、立ち止まって覗き込むようにガン見してたおにーちゃんがいたね」
「あれ?女の子じゃなかった?」
「ガイジンさんが笑いながらウインドウに近づいてったら、ササって逃げちゃったけど」
 みなさま、私に直接は話しかけずにヒソヒソ、好奇心丸出しのおしゃべりです。

「スキンアートって、意外とオシャレなもんなんだね」
「うん。けっこういい感じだよね」
「でもアタシ、こんなとこにしてもらう勇気ないわー」
「それって別に勇気じゃなくね?」
「やだ!よく見たらおっぱいにマゾヒストって描いてある!」
 私は曖昧な微笑を浮かべつつ、みなさまのおしゃべりを黙って聞いています。
 それなりに着飾っている同年代女子の中に、たったひとり全裸でいる屈辱を全身で感じながら。

「ねえあなた、あなた学生?ニート?OLさん?」
 不意に、それまで好奇心おしゃべりに加わっていなかった、あの試着のお客様が私に直接話しかけてきました。
 この中では一番最初から、私がくりひろげる痴態を目の当たりにしてきた彼女。
 私の真正面に立って、私をまっすぐ見つめて聞いてきました。

「あ、はい。一応大学生です」
「へー。それならわたしと年変わらないんだ。まさかこの近くのガッコ?」
「いえ、違います・・・」
「こんなことすると気持ちいいんだ?人前で裸になるのが」
「は、はい・・・あの・・・ごめんなさい・・・」
 彼女のお言葉には、明確な侮蔑が感じられました。
 私のような女に対する嘲笑と嫌悪みたいなものを、まったく隠そうともしない冷たい口調。
 今の私には、ゾクゾクしちゃう、心地よい罵倒。

「ふーん。さっきいろいろ命令していたお姉さんがあなたのご主人様なんだ?」
「はい・・・」
「でもさ、こういうのって普通、男とやるものでしょ?」
 桜子さまと同じ疑問をお持ちのよう。
「私は男性はダメなんです。同性じゃないと・・・」
「レズってこと?・・・」
「・・・はい」
「そうなんだ。じゃあ、あのご主人様は恋人でもあるの?」
「まさか・・・恋人だなんて・・・」
 自分が答えた言葉に、なぜだか胸がキュンと疼きました。

「同性に裸見られて興奮するんだ?」
「はい・・・あと、虐めらたり辱められたり・・・」
「ふーん。それなら今、こうして同性のわたしたちに見られているこの状況って、あなたにとっては天国みたいなものなんだ?」
「・・・はい、そうですね・・・」
 試着のお客様が代表インタビュアーみたいになって、その一問一答を他のみなさまが見守る形になっていました。

「そんな性癖だとあなた、クアハウスとかサウナの女湯、興奮して入れないんじゃない?」
 みなさまがドットと沸きます。
「そ、それは、あらかじめの心構えが違いますし、みなさんも裸ですから・・・」
「ああ、なるほど。こういうありえない場所で自分だけ裸になるのがいいのね?」
「・・・はい」
「はい、だってー!」
 再び沸くギャラリーのみなさま。

「あなたみたいな人を本当の、マゾ、っていうのね。わたし今まで、ドMだとかマゾいよねー、なんて言葉をなんとなく超テキトーに使っていたけれど、今日初めてわかった気がするわ」
 試着のお客様が、独り言みたいに、心底感心したご様子でつぶやきました。
 それから再び、私の顔をキッと睨みつけ、興奮気味につづけました。

「わたし、今日あなたのしていること見て、すっごく、心の底から、虐めてみたいーって思ったのよ。あなた見て、わたしの中のSッ気が目覚めちゃった感じ」
「あなたの顔、しっかり憶えたから、今度どこかで会えたら、そのときはわたしにつきあってよ?ご主人様には内緒で」
 彼女の冷たい瞳が、まっすぐに私を射抜いていました。
「は、はい・・・喜んで・・・」
 彼女の迫力に気圧された私は、従順にうなずきました。
「そう。ありがとう。嬉しいわ。あと、最後にひとつお願いしていいかしら?・・・」
「はい?」

 そのとき、シーナさまと純さま、桜子さまがお揃いで戻っていらっしゃいました。
「あら、盛り上がっているみたいね。直子、ちゃんとみなさんに見てもらった?」
「あ、はい・・・」
 シーナさまは私のコートとバッグを手にされていました。
「それじゃあわたしたちは失礼させていただくわ。直子、そのままコートだけ羽織りなさい」
「あ、はい」
 シーナさまが手渡してくれたコートに、全裸のまま、まず片手を通しました。
 コート着ちゃうの、ちょっと名残惜しい・・・

「みなさんも、お騒がせしちゃったわね。また、このお店でこの子のショーをするかもしれないから、ご縁があったら、そのときはまたよろしくね」
「純ちゃんも桜子さんもありがとね。また近いうち寄らせていただくわ」
「いえいえ、シーナさん、今日はたくさんのお買い上げ、ありがとうございました」
 純さまがおどけた感じでお辞儀をして、私にもニコッと笑いかけてくださいました。

「ほら、コート着たらとっとと行くわよ。ボタンなんて適当でいいから、どうせすぐ脱ぐんだし」
 シーナさまが私の右手を取り、お店のドアのほうへと引っ張っていきます。
 そのお顔は完全なドエス。
 つぶらな瞳が妖しく輝き、小さなからだ全体の温度が数度、上がっているような感じ。
 やる気マンマン、テンションマックス。

 ちょうどあのとき、アンジェラさまのワックス脱毛エステを受けての帰り道、のシーナさまも、こんな感じでした。
 自宅マンションに近づいていたシーナさま運転の車は、スーッとその脇を通り越し、そのまま少し走りつづけて池袋のラブホテルの地下駐車場に、当然のように滑り込んでいました。

「直子はさんざんアンジーたちにイカせてもらったからいいでしょうけれど、わたしは直子のイキっぷり見てて、羨まし過ぎて、蘭子さんの超絶マッサの気持ち良さまで吹っ飛んじゃったわよ」
「これはみんな直子のせいなのだから、直子はわたしに奉仕する義務があるの。わたしがもういいって言うまで、わたしを気持ち良くさせる義務がね」
 その日、ふたりとも疲れ果て、裸で抱き合ったまま寝入ってしまうまであれこれしたので、結局マンションのお部屋に戻ったのは明け方でした。

 あのときと同じ、いいえ、それ以上のドエスオーラを発しているシーナさまは、お店の入口まで見送ってくれたみなさまが呆気に取られるほどの勢いで、私の手を引いてお外に飛び出しました。

「まったくあなたって子は、淫乱にもほどがあるわ」
「きっと今頃、お店ではあなたの話題でもちきりよ。本物のどヘンタイだって」
「ウイッグ着けて大正解だったわね。予想外にいろんな人に見られちゃった。直子は嬉しかったでしょうけれど」
「シルヴィアたちは今日撮った写真、絶対お店でお客に見せちゃうわね。直子の裸」
「まあ当分この界隈には近づかないほうがいいわね。ほとぼり冷めるまで」
「だから今日はSMホテルに行くからね。あなたを虐め倒したくてたまらないわ。覚悟なさい」
「もちろんわたしにもきちんと奉仕するのよ。わたしが満足するまでね」
 
 そんなことをブツブツおっしゃりながら、人波を切り開くように、夕暮れ近い雑踏をズンズン進むシーナさま。
 右手を引かれた私は、一番下を留め忘れたコートの裾がヒラヒラ大きく翻り、無毛の下半身にお外の風を直に感じていました。

 交差点の向こう側にお城のような外観の派手な建物が見えました。
 あそこかな?
 シーナさまがその入口を睨むように見つめています。
 発情されているシーナさま、大好きです。

 ああ、やっとイかせてもらえそう。
 そしてもちろん、今日も長い夜になるはずです。





2014年5月25日

コートを脱いで昼食を 31

 座っている桜子さまのお顔と私の股間との距離は50センチくらい。
 桜子さまは、さらに前のめりになって私の土手にお顔を近づけてきました。
「場所が場所なのに肌ツルツルなのねえ。毛穴のブツブツ、ほとんど無いじゃない?」
 桜子さまの鼻先に私のスジの割れ始めがあります。
 その状態で桜子さまがお話しされると、吐息が直に敏感な部分にかかります。
 シャツまくり上げのほぼ全裸な姿で桜子さまの後頭部を見下ろしながら、私のムラムラが下半身にグングン集まってきました。

「このへんに貼るからね」
「ぁぁんっ!」
 不意に土手麓のキワドイ場所を指でツツーッと撫ぜられ、そのはがゆい感触に私の両膝がガクンと崩れました。
「動かないでっ!」
 お顔を離した桜子さまがピシャリ。

「すぐに終わるから、ガマンしててよねっ!動かれたら失敗しちゃうじゃない?」
 デスクに向いてなにやら準備しながらの不機嫌そうなお声。
 でも、こちらに振り向いた桜子さまは、ニンマリ笑っていました。
「さっきナオがガクンとなったときにさ、スジがぱくって割れて中のピンクの具が丸見えだっわよ?濡れてヌメヌメ光ってて、ほんとにいやらしかった」
 ギャラリーのみなさまに呆れたようなクスクス笑いが広がりました。

「始めるからね」
 アーティストのそれに戻った桜子さまのお顔が再び、私の股間に近づいてきます。
「んぅぅ」
 濡れティッシュのようなもので下腹部右側の内腿近くを撫ぜられました。
 私は唇を真一文字に結び、こそばゆい愛撫で折れそうになる両膝を踏ん張って必死に耐えます。
「そんなに力入れてたら皮膚まで突っ張って、シールが歪んじゃうわよ?リラックスリラックス」
 生真面目な桜子さまのお声。
「は、はいっ・・」
 でも、濡れティッシュの水気にはアルコールのような成分が含まれているらしく、撫ぜられたところがスースーし始めて、もどかしい快感に拍車を掛けてくるんです。
 どんどんどんどんヘンな気分になってきて、もっと内側、もっと内側までさわってください、って、頭の中で叫んでいました。

 濡れティッシュで拭かれた部分に台紙ごとシールがあてがわれ、台紙の上からスースーする液体がさらに塗られました。
 液体を伸ばすために私の皮膚を撫ぜる桜子さまの指は、おっぱいのときとは違ってスムースではなく、なんて言うか、無駄に指先に力が入っている感じでした。
 その部分がへこむほどの力で、皮膚が外へ外へと引っ張られます。
 
 ワザとだと思いました。
 内腿すぐそばの皮膚を外向きに引っ張られれば、中央の亀裂部分の唇までつられて引っ張られ、お口が開いてしまいます。
 上からでは桜子さまの頭に遮られて見えませんが、私のアソコの唇が小さくパクパクしているのを感じていました。
 あぁんっ、桜子さまが私の中までじっくり視ているうぅ・・・
 恥ずかしさと嬉しさがごちゃまぜの、すっごく甘酸っぱい気分。

 だけどそれもすぐに終わり、ガーゼみたいなものでその上をポンポンと叩いてから、桜子さまのお顔が離れました。
 台紙がスルッと剥がされると、4センチ四方くらいの鮮やかな青色模様の綺麗な蝶々が現われました。
「はい!一丁上がり!」
 桜子さまの大きなお声が響いて、今まで桜子さまの頭で隠れていた私のソコに、ギャラリーのみなさまの視線が一斉に注がれるのを感じました。

「ワタシ、なんだか無性にチーズケーキ、食べたくなっちゃった。それもすっごくコッテリしたやつ」
 クルッと後ろを振り向いて、冗談っぽい口調でおっしゃった桜子さまのお言葉に、ギャラリーのみなさまがドッと湧きました。
「そんなに間近ならそれはそうでしょうねー。ここまでだってけっこう匂っているもの・・・」
 お気の毒に、とでもつづきそうな同情まじりのシーナさまの合の手に、私の全身がカッと火照りました。
 私の発情した性器の臭いが、このお店中に漂っているんだ・・・
 奥がキュンキュン、性懲りも無く蠢きます。

「でもやっぱりこれだけだとなんか物足りないなあ・・・」
 再び私の股間に向き直った桜子さまが、ソコを凝視してきます。
「やっぱり少し手を加えたいな・・・そうだ、鱗粉を散らしてみよっか。そうすれば蝶々にもっと躍動感が出るはず」
「ナオ、まだ動かないでね、もう少しだけ。それとちょっと反り気味になって、蝶々の部分をもっとこっちに近づけてくれる?」
 細いブラシを手にした桜子さまが、真剣なまなざしに戻っておっしゃいました。

「あ、は、はぃ・・・」
 私は、クラクラしちゃう甘美な疼きを感じながら、ご指示通り素直に、と言うよりむしろ悦んで、胸を張るように背中を反らしました。
 まるでギャラリーのみなさまに、自ら露出させているおっぱいを、さらにのけぞって見せつけるかのように。
 背中の弓なりに比例して腰がグイッと前に出て、桜子さまの眼前すぐにまでアソコを突き出す格好です。
 私の股間にお顔を埋めるようにして、桜子さまのブラシによるチロチロ愛撫が始まりました。

 この時点で、もはや私の中に理性や常識は、まったく残っていませんでした。
 この至福の時間がずーっとつづいて欲しい・・・
 そんなふうに思っていました。
 
 恥丘を思い切り前に突き出して桜子さまのブラシの愛撫を感じながら、私を取り囲んでいるみなさまのお顔を順番に盗み見ました。
 シーナさまのニヤニヤ笑い、純さまの呆れたような苦笑い、試着のお客様の軽蔑しきったまなざし、新しいギャラリーさまたちの好奇に爛々と輝くお顔・・・
 いつの間にかシルヴィアさまとエレナさまも輪に加わっていました。
 おふたかたともさっきよりももっと肌も露でキワドイ原色のドレス姿で、私に笑いかけていました。
 レジ側のハンガーラックのほうには、さらに新しいお客様が数人増えて、こちらを視ているみたいでした。

 みなさまからの視線のシャワーを浴びて、私のからだ全体いたるところが、ビクンビクンと淫らに反応していました。
 普通の女の子なら、絶対人前で外気に曝け出すようなことの無いはずな部分を、見せびらかすようにみなさまに晒している私。
 肌に突き刺さってくるすべての視線が、私のからだを容赦なく値踏みして嘲弄と共に陵辱してきます。
 そんな陵辱を例えようも無いほど心地よく感じている私は、もっともっと、さらなる恥辱をも望んでいました。

 今の私は、ここにいらっしゃるどなたの、どんなご命令にも、従順に従うことでしょう。
 脚をもっと開けと言われれば、思い切り大きく開きます。
 四つん這いになれと言われれば、即座に額突きます。
 そのままお店の外に出ろと言われたとしても、素直に歩き出すことでしょう。
 鞭でも洗濯バサミでもローソクでも、お浣腸だって喜んでいただきます。
 
 だから、その代わりに、私のこの、どうしようもないくらいに疼いているムラムラを解消して欲しい。
 昂ぶりきって今にも爆ぜそうな欲情を開放させてください。
 もっと虐めて、もっと辱めて、もっといたぶって。
 そのためなら何だってしますから。
 身も心も、私のすべてがマゾヒズム一色に染まっていました。

「うん、だいぶ良くなったわ!」
 爆発寸前の昂ぶりは、桜子さまの一言で現実に戻されました。
「ほら、こんな感じよ」
 桜子さまがまあるい手鏡をかざして、私のアソコ周辺を映してくださいました。
 
 青い蝶々は、私の割れ始め3センチくらい右側で、やや左斜め上に向いて綺麗な羽を広げていました。
 私の左おっぱいに描かれた山百合へと、キラキラした鱗粉を撒き散らして飛び立ったところ、といった感じの構図でした。
 
 下からかざされた手鏡には、私の内腿奥のほうまでもが映っていて、アソコ周辺が粘性の液体でヌメヌメ濡れそぼっているのが丸分かりでした。
 両内腿には下へ向かって、カタツムリさんが這ったような跡が幾筋も。
 私に向けて鏡をかざす桜子さまの嬉しそうなお顔が、ほら、ナオはこんなにオマンコ周辺をビチャビチャに濡らしたはしたないヘンタイ女なんだよ、っておっしゃっているように見えて、たちまち昂ぶりが戻ってきました。

「じゃあ最後にお尻ね。今度は背中向けてお尻を突き出しなさい」
 桜子さまのご命令。
 私は、もうすっかりその気でした。
 そのご命令をワクワク待っていました。
 もっとたくさんの人に視てもらいたい、見せたい。
 今の私のこんな恥ずかしい姿、こんな昼間にこんなお店でひとり裸になっているヘンタイな私の姿を、通りすがりの見知らぬ人たちにも気づいて欲しい、驚いて欲しい、笑って欲しい、蔑んで欲しい。
 もうどうなったってかまわない・・・

「ごめんナオコ!ちょっと待ってくれる?」
 桜子さまのご命令に頷いて回れ右をしようとしたとき、純さまからあわてたようなお声がかかりました。

「盛り上がっているところに水を差すみたいで申し訳ないのだけれど・・・」
 純さまが桜子さまの隣に歩み出て、主にシーナさまに向けて語りかけました。
「こんなオッパイ丸出しの子を、オッパイ丸出しのまんま外からバッチリ見えるように放置するのは、やっぱちょっとマズイかなーって、お店的に・・・」
「いえ、個人的には面白いと思うんですけど、ほぼマッパでしょ?外を誰が通るかわからないし・・・」
 今までに無く歯切れの悪い純さま。

「そうね。確かにちょっと、リスキーかもしれないわね」
 真面目なお顔でシーナさまが引き継ぎました。
「万が一ケーサツやら商店街の自治会みたいな人に見られたら、純ちゃんのお店に迷惑かかっちゃうものね」
「それに、こんな直子のしょうもないヘンタイ性癖のために、純ちゃんのお店にヘンな噂がたったり、営業停止とかなっちゃったら理不尽だし、割に合わないわよね」
 シーナさまが私を睨みつけるように見ながら、冷ややかにおっしゃいました。

「でもほら、直子はわかっていないようよ。視てもらう気マンマンのマゾ顔全開だもの」
 薄ら笑いを浮かべて私を見ながらシーナさまがつづけます。
「まったく、本当にはしたない子。わたしのほうが恥ずかしいわよ」
 ギャラリーのみなさまのクスクス笑いがさざ波みたいに広がりました。
 確かに私は、純さまのご提案を聞いて、がっかりした顔になっていたと思います。
 シーナさまには、全部お見通し。

「それならこうしましょう」
 シーナさまがギャラリーのみなさまに説明するみたく、少し大きなお声でおっしゃいました。
「桜子さん、直子の胸のペイントはもう乾いているわよね?」
「ええ。普通、描いて5分もすれば完全に乾いていますよ。だからナオは、ずっとそうやってシャツをたくし上げている必要なんて、ぜんぜん無かったんです、本当は」
 嘲るような桜子さまの口調。
「でもきっと、ナオはそうしていたいんだろうな、って思って何も言わなかったんです」
 再びギャラリーのみなさまの嘲笑のさざ波。

「おっけー。それじゃあ直子、そのシャツ下ろしていいわよ、残念でしょうけれど」
 シーナさまも冷ややかな嘲り口調。
「とりあえずそのはしたないおっぱいはしまいましょう。あ、でも直子が自分で空けたっていうシャツの穴から、そのいやらーしく尖りきっている乳首は露出させていいわよ」
「乳首だけなら、ショーウインドウ越しならたいして目立たないでしょう?その格好ならお店のリスクも減るし、直子の見せたがり願望も少しは満たされるんじゃない?どう?純ちゃん」
「そうですね。そのくらいなら大丈夫そう。それでいきましょう」
 純さまも同意されました。

 ここにいらっしゃるギャラリーのみなさまのうち、お店にお買い物にいらした見ず知らずのお客様のかたたち全員は、すでにおっぱい全体をはだけてほぼ全裸姿の私しか見ていません。
 このお店に来たときの、自ら破廉恥な細工を施した恥ずかしすぎる着衣、を、ここでみなさまに暴露されることになってしまいました。

「ほら、そうと決まったら早くシャツを下ろしなさい」
「は、はい・・・」
 私は、自らたくし上げていたTシャツの裾をズルズルと下ろし始めました。

「この子はね、東池袋の自宅からこんな格好して、その姿を誰かに見せたくってここまで来たのよ?」
「ピチピチTシャツの上にコート一枚だけ羽織って、下半身は裸。お股にはタンポン突っ込んでね。どうしようもないヘンタイでしょう?」
「全部自分で考えた、ヘンタイアッピールのためのコーディネートなのよ」
 ギャラリーのみなさまにシーナさまがわざわざご説明されるお言葉を聞きながら、ピチピチTシャツをゆっくりウエストまで下ろしました。
 とくに調節するまでも無く、大きな乳首は布地に擦れながらも自分で穴を探り当て、Tシャツ姿に戻ったときにも、2つの乳首だけは相変わらず外気に晒されていました。

「ね?いやらしい女でしょ?自分からすすんでシャツに穴空けたのよ?乳首穴」
 シーナさまはご丁寧にも、シルヴィアさまとエレナさまにも同じ内容を外国語で説明されているようです。
 チビT姿に戻った私も、今更ながらにそのいやらしさを実感していました。
 自分で考えたことながら、やっぱりこれってある意味、全裸より恥ずかしい・・・

「なにボーッとしてるの?桜子先生にお尻向けるのよ、お尻!」
 傍らに来たシーナさまが私の左の尻たぶを右手のひらでピシャリとはたきました。
 シーナさまもかなりコーフンされているみたい。
 完全にエスの目になっています。

「あうっ!はい!」
 あわてて回れ右すると、眼前に広がるお外の景色。
 数メートル先に素通しの大きなガラス。
 街路樹、標識、向かいの雑居ビルの入口。
 その向こうを自動車がゆっくり横切って行きました。
 ああん、見られる、見られちゃう!

「もうちょっとこっちにお尻突き出してよ」
 桜子さまのお声に上体を少し屈めて下腹部を引きます。
 両足は、休め、で40センチくらいに開いていますから、お尻を突き出すと間違いなく肛門まで見えちゃうことでしょう。
 両手は、誰にご命令されたのでもなく自然に、頭の後ろで組んでいました。

 お尻にシールを貼られているあいだ、私は異空間に旅立っていました。
 目の前に広がる街の日常の風景、通り過ぎる車と人々。
 私の背後でざわめくギャラリーのみなさま、時折鳴る来店を告げるチャイム。
 それらを皮膚で感じながら、頭の中には、ずっと同じ言葉が渦巻いていました。

 見て、見て、見て、見て、見て・・・
 直子のいやらしく歪んだ顔を、尖った乳首を、濡れた性器を、広げたアヌスを、膨れたクリトリスを・・・
 見て、見て、見て、見てください・・・
 どうしようもないヘンタイ女の恥ずかしい姿を・・・

 ショーウインドウの向こうでは、けっこうたくさんの人が通り過ぎて行きました。
 こちらを見る人もいれば素通りの人も。
そのすべての人たちに心の中でお願いしていました。
 見て、見て、見て、見てください・・・


コートを脱いで昼食を 32