2013年12月15日

コートを脱いで昼食を 24

「いっただきまーす!」
 古泉オーナーさんとシーナさまの元気なお声と共に、おふたりの右手がお目当てのサンドイッチに伸びました。
「ほら、直子も好きなの食べなさい。お腹空いているでしょ?」
「あ、はい・・・いただきます・・・」
 シーナさまにうながされて、自分の近くに置いてあった適当なサンドイッチに手を伸ばしました。
 自然に顔が下に向き、その視界に否応なしに、Tシャツに空けた穴から飛び出している、熱を帯びてコチコチに硬くなった自分の卑猥な乳首が飛び込んできます。
 いやん、私ったら、こんなところで、なんていうふしだらなものを晒しているのだろう・・・

 サンドイッチのお味なんて、ぜんぜんわかりませんでした。
 平日の真昼間、お外には通行人が行き交う営業中のセレクトショップの店内。
 下半身丸出しで腰掛けて、尖った乳首を空気に触れさせながら、サンドイッチをちびちびと口に運んでは、お紅茶で流し込みます。
 シーナさまは、このあいだのエステティックサロンでくりひろげた私の痴態のお話を、古泉オーナーさんに面白おかしくご披露されていました。
 古泉オーナーさんは、うわー、とか、すごーい、とか大げさなリアクションで、そのたびに対面に座る私の顔や胸をまじまじと見つめてきます。
 その遠慮の無い、肌を舐めまわすような好奇の視線に、顔もからだもどんどん火照ってきて、下半身のムズムズが止まりません。

「あらら、モリタさんはあんまり、食が進んでいないようね?」
 お紅茶を注ぎ足してくれながら、古泉オーナーさんがニッって笑いかけてきました。
「それはそうでしょう。今、直子の頭の中は食欲よりも性欲で、パンパンに腫れ上がっちゃってるでしょうから」
 ニヤニヤ笑うシーナさま。
「そう言えば純ちゃん?さっきからヘンにあらたまった感じで直子に話しかけているけれど、あなたたち、お互いに初対面じゃないのよ?」

 えっ!?
 シーナさまの意外なお言葉にびっくりして、思わず顔を上げました。
 はずみでTシャツにぴったりフィットなおっぱいが、布地ごとプルンと弾みました。

「あーーっ。やっぱりそうなんですか?モリタさんて、ひょっとしてあたしが駅ビルのお店にいたとき連れてきた、あのえっちな人?」
「ピンポーン!大正解でーす!」
 シーナさまがおどけておっしゃり、正解者には賞品でーす、と、古泉オーナーさんのお口にフライドポテトを1本、咥えさせました。

「・・・もぐもぐゴクン・・・あたし、さっきから、そうなのかもしれないなー?って思ってはいたんです」
 古泉オーナーさんがテーブル越しに身を乗り出して、私の顔をジーッと見つめながらつづけます。
「あのときのカノジョは、もうちょっとお顔が地味で年齢もいっていたようなにも思うのだけれど、さっきモリタさんの裸のお尻と前を見て、腰のラインとか肌の色とか、おへその形とか、どっかで見たことあったなー、って」
「あのときは、わたしが直子に渾身の老け顔メイクを施したからね。池袋はこの子の地元だから、もし知り合いに出会っちゃったときの用心のために」
 シーナさまのお言葉に古泉オーナーさんが、うんうん、ってうなずいています。

「あのときもすっごい恰好していましたしたよねー?ノーブラのおっぱいをロープで絞るみたいに縛ってて、下半身にはヘンな貝のオブジェくっつけて」
「そうだった!パンツをわざと腿までずり下げていませんでしたっけ?アレがすんごくいやらしかった!」
「ショーゲキだったなー!露出癖ってネットとかで目にはしていたけれど、そんな変態オンナって本当に実在するんだ、ってカンドーものでした」
「それでその正体は、こんなカワイラシイ子だったんですね!今日もけっこうショッキングです」

 心底感心した口ぶりの古泉オーナーさんを見ながら、私もビックリです。
 この、目の前の見るからに可愛らしい女性が、半年位前、目の周りを派手に染めて、まばたくと風が起きそうなエクステ睫毛だった、あのギャル店員さんらしいのです。
「そのお顔だと、モリタさんもあたしのこと、気がついていなかったみたいね?」
「あたしもかなり、あの頃はヤンチャしてたからねー。あの当時はちょうど、自分の中にブリッ子ギャルブームが来てたのよ」
 古泉オーナさんが照れ臭そうに笑われました。

「あの確か数日後に、シーナさんがひとりでお店に遊びに来て、そのとき、ショップをやる気ない?ってお誘いを受けたのでしたね」
「あの頃知り合いからちょうど、この物件の新規出店の相談を受けていたのよ」
「それで、直子と行ったときの対応がとてもユニークだったから、純ちゃんを鮮明に覚えてて、一度ゆっくり話してみたいな、って思ったの」
 シーナさまがお紅茶をひと口すすり、お手拭きで指先を拭いました。
 そう言われればシーナさま、あの直後にもスカウトとか、そんな謎なことをおっしゃっていたっけ。

「話してみたら外見に似合わず考え方もしっかりしているし、独立も考えていて資金も貯めているって言うじゃない。この人なら大丈夫、って思ったわ」
「ありがとうございます。おかげさまでなんとかうまくいっています。一日も早く雇われオーナーから 本当のオーナーになれるように、がんばります」
「シーナさんとお知り合いになれて、本当に良かったです。お仕事もだけれど、こうしてたまーに面白いもの見せてくれるし」
 古泉オーナーさんがシーナさまのほうに向いて、笑顔でペコリと頭をさげました。

「ああ美味しかった。ごちそうさまでしたっ」
 古泉オーナーさんがティーカップをテーブルに置いてフーッと一息。
 じーっと私の胸をしばらく見つめてから、シーナさまに向き直りました。

「でもシーナさんも人が悪いですね?あんなにショーゲキ的なアソビの現場を見せておきながら、あのあと一言もモリタさんのお話、出なかったじゃないですか?」
「妙に色っぽい感じの薄着なおばさまは何度かお連れになったけれど、モリタさんのことはまったく話題にしないから、あたしも忘れかけていましたよ」
「純ちゃんが聞いてこなかったから、わたしも言わなかっただけよ。わたしの趣味嗜好やドレイが何人もいることは、純ちゃんにもちゃんと教えたでしょ?」
「それはそうですけれど。あたしもシーナさんとのお仕事の話のほうに夢中になっていたから、聞きそびれてました」
「あたしは、シーナさんと違ってやっぱり、お年召したおばさまよりも若くてカワイイ子のほうが、虐め甲斐があるなー」
 古泉オーナーさんが私を見て、視線を落として乳首をじっと見て、またニッと笑いました。

「それでシーナさん?今日はあたしのお店で、モリタさんに何をさせるおつもりなんですか?」
「あたし、モリタさんがあの日の子だって聞いて、がぜんヤル気が出てきました。出来る限りご協力しますよ?」
「モリタさんがえっちな命令を受けたときの困ったような表情って、何て言うか、そそりますよね?もっと虐めて困らせてみたい、ってイジワル心を煽られちゃう、みたいな」
「あたしにとって、あの日の出来事は本当にショーゲキだったんです。あのあと帰ってから、思い出してひとりで慰めちゃったくらいに」
「人がたくさんいるお店の中であんな格好にさせられて、それでもあの子、感じていたみたいだなー、あんなことして嬉しいのかなー、なんて考えていたら、指が止まらなくなっちゃって・・・」
「あらあら・・・」
 シーナさまの苦笑い。

「何をする、って別に具体的に決めているわけじゃないのよね。ただ純ちゃんのお店なら、ほとんど女性しか来ないだろうし、試着とかも大胆に出来そうだし、っていうくらいで・・・」
 思案顔のシーナさまが、ふっと気づいたみたいに、古泉オーナーさんに向き直りました。
「そうそう。協力してくれるのなら徹底しておいたほうがいいわね。純ちゃん、直子みたいなマゾ女はね、常に身の程をわきまえさせておかなければいけないの。ドレイとしてのね」
「だから、一応お客さんと言えどもドレイはドレイ。モリタさん、なんて丁寧に呼ばないで、ナオコ、って呼び捨てにしてやってちょうだい」
「直子も純ちゃんのことは、純さま、ってお呼びなさい。いいわね!?」
「あ、はいっ!」
 急にお声をかけられて、ドキンと胸が弾みおっぱいがプルン。

「カーテン開けっ放しでとっかえひっかえ試着させるとか、この格好にエプロン一枚で接客させるとか、あと何かないかなー?」
「さすがにアソコ丸出しはちょっとヤバイわよね?あ、でも毛も無いからそんなに目立たないか」
「だけど今日は、あの日と違って老けメイクしていない素の顔ですよね?モリタさ、あ、いえ、ナオコは。いいんですか?そんな大胆なことさせて、もしお知り合いに目撃されたら」
「だってこんな格好で出歩くことを決めたのは、直子の意志だもの。素の顔のままでいいって判断したんでしょ?万が一知ってる人に見られたとしても自業自得よ」
 シーナさまのお言葉で、不安な気持ちが急速に広がりました。

「まあ、直子は西口初めてって言ってたし、大丈夫とは思うけれど・・・」
 シーナさまも少し不安になったのか、ちょっと考え込んでから、おもむろに店内を見回します。
 シーナさまの頭が、ある方向を向いたまま止まりました。
「純ちゃん、あのウイッグをいただくわ。後で会計してね」
 立ち上がったシーナさまは、レジカウンターの脇に飾られていた真っ黒髪のウイッグをひとつ手に取り、そのまま私に近づいてきました。

 そのウイッグは、前髪ぱっつんの典型的なおかっぱショートボブでした。
 両脇が内向きに軽くカールしているレトロ系。
 シーナさまは、座っている私の背後に立ち、私の髪を頭上にまとめ始めました。

「人から聞いた話だけれど、大昔のエロ本のモデルって、写真が出回っても身内に身元バレしないように、ほとんどがウイッグ着けて、顔の雰囲気変えて撮影していたんだって」
「中でも一番人気だったのが、このぱっつんボブらしいの。確かにこのヘアスタイルは雰囲気がガラッと変わるものね」
「だから、昔のヌード写真には、このヘアスタイルの人が多いらしいのよ。大昔の見せたがりスケベ女。直子の大先輩たちね」
 そんなことをおっしゃりながら、私の頭にウイッグがかぶされました。

「やっぱりね。妙に似合うわ。一気にいやらしさが増しちゃった。これでもう知り合いでも直子だってわからないわよ」
 鏡になるようなものが周りに見当たらないので、自分では確認出来ませんでしたが、そのお言葉でいくらかホッとしました。

 純さまは、テーブルの上を片付け始めていました。
「ほら、ボーっとしてないで直子も手伝いなさい。純ちゃん、ゴミはレジのほうへ持っていけばいい?」
「あ、いいわよ、あたしがやるから・・・」
 純さまは、そうおっしゃってからちょっと考え、つづけました。
「でもお言葉に甘えちゃおうっと。ナオコ、容器とかナプキンとかゴミをひとまとめにして、レジのところまで持ってきておいてちょうだい」
 純さまの口調が、上から気味になっていました。

 お食事中は座っていたのでテーブルで隠され、下半身のことはさほど気にしないで済みました。
 でも立ち上がって、歩き回れば当然のこと、私の裸のお尻と剥き出しのアソコが、おふたりの目に触れることになります。
「ほら直子?返事は?」
 私の正面に戻ったシーナさまから睨まれました。
「あ、はい。すぐにお持ちします・・・純さま」
 観念してよろよろ立ち上がると同時に、強烈な恥ずかしさが今更ながらに、全身に押し寄せました。
 やっぱりこんなのヘンタイです。
 白昼堂々営業中のお店の中でひとりだけ、性器剥き出しの、こんな格好をしているなんて・・・

「あたし以前、ネットで面白い動画を見たことあるんですよ」
 レジの向こうのお部屋で洗い物をされているらしい純さまの大きなお声。
「確かどこかヨーロッパの、ナオコみたいな性癖の女性を撮ったビデオらしくって」
 純さまが良く通る綺麗なお声でつづけます。

「人通りがけっこうある大通りに面したブティックのショーウインドウに、その女、ブロンドでかなりの美人でした、がマネキンのフリして立っているんです」
「ファッショナブルなブラウスにタイトスカートでポーズをとって」
「やがて店長さんらしき男性がショーウインドウの中へ入って来て、ブラウスのボタンをはずし始めるんです。マネキン役はじっと動かない」
「ブラウスを脱がせて、スカートを取って、下着も全部脱がせて裸でしばらく放置」
「通りには人や車がひっきりなしで、その裸マネキンに気がつく人もちらほらいるんです」
「その女も綺麗なパイパンだったなー。うっすら笑みを浮かべて愉しそうだった」
「再び店長がやって来て、今度は違う服を着せてはまた脱がせてって、何回か繰り返しているうちに、通りには人だかりが出来ちゃって」
「まあ、オチはなかったですけれど、最後のほうではマネキン役の女が開き直っちゃって、裸でさまざまなポーズとって、通行人に写真撮らせたりしてました」

「へー、それ、面白そうね、やらせてみよっか?」
 シーナさまは、ブラブラとお店のあちこちを見て回りつつ、純さまのお話に反応されていました。
「でもあんまり騒ぎになって、ケーサツのご厄介とかだとメンドーだわね。西欧人と違って、こっちだと口うるさいおばさんとかが、すぐ通報しちゃいそう」
 私は、純さまのお話を聞きながら、とてもじゃないけれど出来ない、っていう気持ちと、今ならご命令されればやっちゃいそう、っていう気持ちが鬩ぎあっていました。
 普通に考えたらもちろん絶対出来ないのですが、そのときは、そのくらい性的に昂ぶってしまっていたのです。

「そうそう。すっごくセクシーっていうかえっちぽい薄手シースルーのチャイナドレスが入荷したから、手始めにあれ着て接客してもらおっかな?」
「背中がお尻の割れ始めくらいまで大胆に開いているの。でもまあ、今のナオコの格好からしたらヘンタイ度が大幅後退だけれどねー」
 レジカウンターに戻られた純さまが、からかうようにおっしゃいます。
「いずれにしてもそろそろお店、開けるわね。もう2時前だし。そろそろ学生さんたちも放課後だから」
「ナオコは、お客様をギョッとさせないように、そこに座っているか、お客様が近づいてきそうだったらハンガースタンドの合間とかにでも隠れてね」
 純さまが、ギャル店員さんだったときの私に対する扱いのような、少し蔑み気味の口調を復活させていました。

 いよいよ、誰でも自由にお店に入って来れる状態になってしまうんだ・・・
 それでもおふたりとも、私の下半身をこのままの状態にしておくおつもりのようです。
 コートを返してくださいと、シーナさまや純さまに言えるはずも無く、下半身丸裸の私は、店内での逃げ場所をキョロキョロ探します。
 シーナさまは?と探すと、のんきに店内散策中。
 何かアクセサリーを胸に当てて、鏡を覗いていました。

 純さまが、休憩中のプレートをはずそうと入口のほうへ一歩踏み出したそのとき。
「おはようございまーす!」
 入口とは反対の方向から大きな声が聞こえ、間もなくひとりの女性がひょっこりと、レジ裏のお部屋のドアを開けてお顔を覗かせました。


コートを脱いで昼食を 25


2013年12月8日

コートを脱いで昼食を 23

 地上に出ると、広い大通り沿いの舗道でした。
 沿道にはビルが立ち並び、その一階はどこも何かしらのお店屋さんで、歩道も車道もひっきりなしの往来。
 地下道を歩いてきた感じだと、ずいぶん駅から離れたように思えましたが、そうでもないのかな?
 東口の大通りと同じくらいに賑わっていました。

 シーナさまは、私の手を引きながら大通りをさらに駅とは逆方向に少し歩いてから、一本の路地を左へ曲がりました。
 確かこっちのほうには有名な大学があるのではなかったかしら?
 お引越ししてきた頃に地図を眺めながら、この街に慣れたら一度訪れてみたいな、と思っていた一帯のようでした。

 その路地の左右にも小さなビルが立ち並び、何かのお店や飲食店がちらほら。
 シーナさまが、そのうちのひとつの前で立ち止まりました。

「ここよ」
 真っ白なビルの一階、全面ガラス張りのショーウインドウ一杯に飾ってあるカラフルなお洋服。
 見た感じ、お洒落なブティックでした。
「わたしの知り合いが最近開いたのよ。アパレルと輸入雑貨。いわゆるセレクトショップっていうやつね。海外の古着とかも置いていて、わたしも仕入れとかでお手伝いしているの」
 シーナさまが私に説明しつつ、外開きのドアを躊躇無く開きました。
 カランカランって軽やかにドアチャイムの音が響きました。

「ああ、シーナさん。いらっしゃいませ。お茶の用意してお待ちしてましたーっ!」
 すぐに奥のほうから元気のいいお声とともに女の人がひとり、こちらに近づいてきました。
「シーナさんのアドバイス、バッチリでしたよーっ!」
 ニコニコ顔で出てきたその人は、前髪だけ垂らしたポニーテイルでお目々パッチリ、両端がクイッと上がったイタズラっ子ぽい口許の、すっごく可愛らしい女性でした。

「お手頃なお値段のセクシードレスを置いてみたら飛ぶように売れちゃって。ついでに雑貨とかも買っていってくれるから、ここのところ売り上げ大幅アップです!」
「それは良かったわ。このあたりって夜のお勤めの女性がけっこう住んでいるから、ひょっとしたら、と思ったのよね」
「外国人のかたがよく買ってくださるから、そっちのお菓子とかも置いてみたらいいかなーって」
「あら、それもいいわね。そういう業者なら、2、3心当たりあるわよ」

 シーナさまとその女性が親しげにお話しているのに耳を傾けつつ、私は店内を興味津々で見回していました。
 お洒落なお洋服、靴や帽子、カワイイ小物雑貨、ぬいぐるみやステッカー、アクセサリー類など、けっこう広めの店内に所狭しと並べられています。
 女の子が好きそうなものなら何でもある感じ。
 一番多いのはお洋服。
 ブラウスやワンピース、ニットに混じって本格的っぽいデコルテのドレスまでぶら下がっています。
 あっ、あのワンピ、かわいい!

「それで今日は何をご提案してくださるんですか?シーナさんのご推薦なら何でも、うちは無条件で置かせてもらいますよ」
「ううん。今日はビジネスの話じゃないんだ。近くに来たから思い出して、一緒にランチでもどうかな、と思ってさ」
「でもまあ、見てもらいたいものがあるのも、本当なんだけれどね」
 シーナさまが、目をつけたワンピースが飾られているハンガーラックに吸い寄せられかけていた私の手を取って、グイッと引っ張りました。

「直子、こちら古泉純ちゃん。こちらのお店のオーナーさん。わたしのビジネスパートナーでもあるの」
「あっ、はじめまして・・・」
 ペコリとお辞儀をして、自己紹介したほうがいいのかな、って考えていると、
「純ちゃん、これはわたしのドレイのひとりで、モリタナオコ。こんな顔して、マゾで露出狂でヘンタイなのよ」
 シーナさまのものすごい紹介の仕方に、私が顔を火照らせていると、古泉オーナーさんがアハハって笑いました。
「ああ。そっちのほうのアソビのお話でしたか。シーナさんもお好きですねえ。見てもらいたい、っていうのも、この人なんですね?」
 古泉オーナーさんがシーナさまと私の顔を半々に眺めつつニッと笑って、私にだけ、オシャレな名刺をくださいました。

「まあ、立ち話もアレですからあっちに移動しましょう、テーブルがありますから」
 古泉オーナーさんが先に立ち、お店の奥へ進むとレジカウンターの脇にアンティークな木のテーブルとベンチが置いてあるスペースがありました。
「あたしもちょうどお腹が空いてきた感じだったんです。何か店屋物でも取ろうかなと思ったとき、シーナさんから電話があって」
「今、お茶の用意をしますから、そこに腰掛けていてください」
 古泉オーナーさんはそう言い残し、レジのさらに奥にあるらしい別のお部屋へ入っていきました。

「直子、サンドイッチと荷物はそこらへんに置いて、直子は座らずに、そうね、そのへんに立っていなさい」
 シーナさまのご指図通り、サンドイッチをテーブルの上に、自分のバッグはベンチの上に置き、お店の入口方向を背にして、もう片方のベンチの対面に立ちました。
 私の背後にも、ハンガーに掛けられたたくさんのお洋服が飾られています。
 シーナさまは、サンドイッチの包みを開けてテーブルの上に容器ごと並べ始めました。
 ずいぶんたくさん買ったんだなー。
 切り口からいろいろな中身が覗いた美味しそうなサンドイッチが、テーブル一杯に置かれました。

 でも・・・
 私がここに立たされているということは、まずはあの古泉オーナーさんに、私のコートの中身をお見せすることになるのだろうな・・・
 そう思うと、美味しそうなサンドイッチを見て湧いていた食欲が、みるみるうちに性欲に取って代わられていきます。
 さっきのシーナさまとのお話しぶりから察するに、古泉オーナーさんは、シーナさまのそういうご趣味をすでにご存知のご様子。
 古泉オーナーさんも、あんなに可愛らしのにエスなのかな?
 古泉オーナーさん、私の格好を見て、どんな反応を示されるのだろう?
 ドキドキが最高潮です。

「うわー。美味しそう!モリタさんがお持ちになっていた袋が、あのサンドイッチ屋さんのだったから、ちょっと迷って紅茶にしたけれど、正解でしたね」
 古泉オーナさんがトレイの上にティーカップやポットなどを載せて、しずしずとお持ちになりながら大きな声をあげました。
「今、紅茶を淹れますね。今日は朝を抜いてきたから、もうお腹ペコペコなんです」
 ほどなくお紅茶のいい香りが漂ってきました。
「さ、いただきましょう。モリタさんはお座りにならないの?」

 古泉オーナーさんの私に向けたお言葉を引き取るように、シーナさまがお話し始めました。
「それがね純ちゃん。わたし、さっき道で偶然直子に会って、時間もちょうどいいからランチに誘ったのよ、ほら、あの有名なフレンチのお店」
「うわー。超高級店じゃないですか!リッチですねー!」
「だけどね、なぜだか直子が行きたがらないのよ。ヘンだなーと思ったら、どうもそのコートを脱げないような理由があるらしいの、ね?」
 シーナさまが私をチラッと見て、ニヤッと笑いました。
「だからフレンチあきらめて、ちょうど純ちゃんのこと思い出したから、ここに来たってわけ」
「だけどさ、フレンチじゃなくてテイクアウトのサンドイッチだけれど、ひとさまのお店を訪ねて、コートを着たままお食事、っていう作法は無いわよね?レディとして」
「だからさっき、せめてマナーとして食事中は、そのコートはお脱ぎなさい、って叱ったところなのよ」
 シーナさまがすっごく嬉しそうにニコニコして私を見つめてきます。

 シーナさまには、そこに立っていなさいと言われただけでしたが、古泉オーナーさんにおっしゃった今のお言葉が、つまりは私へのご命令でした。
 とうとうシーナさま以外の人の前で、コートの前を開けなければならないときが来たのです。
 このコートを脱いだら、私の下半身は丸裸、上半身には一応Tシャツを着ていますが、ご丁寧に乳首のところだけ穴が空いて、乳首だけがこれ見よがしに飛び出しています。
 なんて破廉恥な格好。
 そんな格好を、今日初めて訪問したお洒落なセレクトショップの一角で、初対面の可愛らしいオーナーさんの目の前で、晒さなくてはいけないのです。

 その上、お店は営業時間中。
 大通りから一本路地に入ったので、さほど人通りが激しくはないみたいですが、それでも普通に人や車が行き来していました。
 2軒隣のラーメン屋さんには、短かい行列も出来ていました。
 このお店の外装は、ほとんどガラス張り。
 お洋服や雑貨でディスプレイされたショーウインドウだったので、店内丸見えというわけではありませんが、ちょっと真剣に覗けば、今も私の頭くらいは見えているはずです。
 それに、何と言っても、いつ別のお客さまが入って来るか、わからないんです。
 ドアを開けてお店に入り、奥まで来てちょこっと右側を向けば、レジ周辺は丸見えでした。

「ほら、せっかく淹れていただいたお紅茶が冷めてしまうじゃない?早くコートを脱いで席に着きなさい」
 シーナさまに冷たく言われて覚悟を決めます。
 これは私が望んでいたこと。
 シーナさまと出会ったおかげで、独り遊びでは絶対出来ない、こんな大胆な状況になったのだから。
 シーナさまのお言葉には、すべて従わなくちゃ。
 私の中のマゾメーターがグングン上がり、コートの一番上のボタンにゆっくりと手をかけました。

 そのとき、シーナさまの隣に腰掛けていた古泉オーナーさんがスクッと立ち上がりました。
「ちょっと入口に、休憩中、のプレートを掛けてきますね。いつもここでランチするときは、そうしているんです」
「この時間帯はいつも、ほとんどお客さん来ないけれど、邪魔されずにゆっくり食べたいし」
「それにきっと、これからあたしに、何かえっちなものを見せてくれるんでしょ?」
「それならなおさら、誰かに邪魔されたくないもの、ね?」
 古泉オーナーさんが私を見てまたニッと笑い、何かのプレートを持って入口のほうへ駆け出し、すぐに戻って元通りに着席しました。

「もう!純ちゃんたら、直子にそんな気配りはいらないのに。誰かお客さんが入ってきたら、それはそれで面白いのに」
 不満げなシーナさまを古泉オーナーさんが、まあまあ、ってなだめています。
 古泉オーナーさんのおやさしいお心遣いに幾分ホッとしつつ、コートの前ボタンをすっかりはずし終えました。

「ボタンはずしたら、まずコートの前を大きく開けて、純ちゃんにその中身をお見せしなさい。さっきデパートのトイレでしたのと同じ格好よ」
「はい・・・」
「わたしがいいと言うまで、その格好でいること」
「はい」
 シーナさまのご命令口調なお言葉が、私のマゾ性をグングン煽ります。
 こんなところで、こんな格好をお見せしなければばらない、みじめで可哀相な私。
 強烈な被虐感に酔い痴れつつ、ゆっくりとコートを左右に広げました。

「うわーっ!」
「どう?」
「どう、って、すごいですね。エロすぎ。これって、やっぱりシーナさんが命令してやらせているんですか?」
 私のからだを上から下まで矯めつ眇めつ眺めつつ、古泉オーナーさんがシーナさまに尋ねました。
「それがねー、違うのよ。この子が自発的にこの格好になって外出したところを捕まえたの」
 ニッコリ笑ったシーナさまったら、本当に愉快そう。

「なんでもね、この子が一生懸命考えた結論らしいの。真っ裸よりいやらしい恰好ってどういうのだろう?って」
「それで出た答えがこれ。下半身は丸裸で、上半身は乳首だけ出し。その上にコート一枚だけ羽織って、ひとりでショッピングに出かけるつもりだったのよ?考えられないわよね?」
「へー。確かにいやらしいですよね、普通の裸より。じゃあその穴も自分で空けたんだ」
 古泉オーナーさんが私に向かって尋ねてきました。
「は、はい・・・」
 うつむきがちに答える私。
「それってつまりその、乳首だけ見せたい、ってことなの?」
「あ、えっと、は、はい・・・」
「すごいねー。でも確かにいやらし過ぎて、逆にある意味ステキかも。モリタさんってお肌も綺麗だ しプロポーションもいいし、見せたがるのがわかる気もするかな」
 そうおっしゃる古泉オーナーさんの目は、私の下半身に釘付けです。

「あなたのソコって、天然なの?すっごく綺麗にツルツルなのね?」
 私の土手を指差して聞いてきます。
「あ、いえ、これは・・・」
 私が答えるより先に、次の質問が放たれました。
「そこに覗いているヒモは、タンポン?今、生理なの?」
「あ、そ、そうです。あ、でも・・・」
「ああ、これはね・・・」
 私が答えるのを制して、シーナさまが割り込んできました。

「この直子って子はね、すんごく濡れやすいの。ちょっとでも辱めるとすぐにダラダラよだれ垂らしちゃうのよ、ソコから。つまり淫乱なのね」
「だからタンポン挿れて、お店汚さないようにしたの。もし挿れてなかったらここの床、もう愛液でビチャビチャになっちゃてるわ」
「へー、こんな格好しているだけで、そんなに感じちゃうんだ?」
「常識では考えられない場所で、はしたない格好になって、それを視られている、っていうのが、直子がサカっちゃうキモみたいね」
「たぶん今なんか、純ちゃんに視られてイク寸前くらいになっているはずよ。今だったら純ちゃんの言うこと、何でも聞くはずだわ、ね?直子?」
 シーナさまの冷静な私の性癖分析に古泉オーナーさんも真剣にうなずいていらっしゃいます。
 私は恥ずかしさで、もう頭がクラクラ。

「まあ、そういうことで、純ちゃんへのお披露目も終わったことだし、ひとまずランチにしましょう。本当にお紅茶が冷めちゃうから」
 シーナさまが私を見ました。
「直子、もうコート広げてなくていいわよ。さっさと脱いで席につきなさい」
「えっ!脱ぐんですか?」
 私は、てっきりコートは羽織ったままで許されるかと思っていたので、真剣にびっくりしちゃいました。

「あたりまえでしょ?コート羽織ったままお食事なんて、そんなはしたないマナーは無い、って、何度同じことを言わせるのよっ!?」
 急速にイライラモードのシーナさま。
「だって・・・」
 私はお店をグルッと見回してお外のほうをじっと見てから、シーナさまに視線を戻しました。

「大丈夫よ。外からここは見えないし、純ちゃんが休憩中のサイン出してくれたから他のお客も入って来ないし」
「で、でも・・・」
「このお店はエアコンがよく効いているから、裸んぼでも寒くないはずよ。わたしも失礼して上着脱がせてもらおう」
「あたし寒がりだから、室内温度高めなんですよね。ごめんなさいね」
「・・・」
「あんまりグズグズしていると、わたし本気で怒るわよ。そのコートひん剥いて、Tシャツも破り捨てて、真っ裸で外に放り出すわよっ!」

 シーナさまの本気っぽいお怒り顔に気圧されて、渋々腕をコートの袖から抜き始めます。
 このコートを脱いでしまったら、私が身に着けているのは短かい破廉恥Tシャツ一枚だけ。
 何かあったとき、誰かが来たとき、私にはもう自分の恥ずかしい姿を覆い隠す術が、まったく無くなってしまいます。
 両腕を袖から抜くまではしたのですが、コートを両肩からはずせずにいました。

「それならコートは、あたしが大切にお預かりするわね」
「あっ!」
 いつの間にか私の背後に来ていた古泉オーナーさんが、私が羽織ったままのコートをそっと肩からはずしました。
「わー。いいコートね。ブランド物じゃない。センスいいわね?モリタさん」
 そんなお褒めの言葉にも私は上の空。
 コートがはずされると、私の下半身はセレクトショップの空間の中で、文字通り丸出しになってしまいました。
 裸のお尻に直に空気が当たり、剥き出しのアソコを思わず両手で隠しました。
 背後の古泉オーナーさんは、私の裸のお尻をじっと視ていたのでしょう、コートを取られてしばらくしてからゆっくりとレジに戻り、私のコートを丁寧にハンガーに掛けて、レジカウンターの後ろの壁に吊り下げてくださいました。

「まったく!何を今更隠しているのよ?こうなりたくて、していた格好でしょ?」
「それにしてもドレイの分際で、でも、とか、だって、とかよく言えるものね。まだまだ教育が足りないみたいね。帰ったらキツイお仕置きが必要だわっ!」
 不機嫌そうにブツブツおっしゃっているシーナさまを、古泉オーナーさんが笑いながらなだめます。
「まあまあ。せっかく楽しいランチタイムが始まるのだから、そんなに怒らないで。ほら、モリタさんもこちらへいらっしゃい」
 古泉オーナーさんは、冷めてしまった3人分のお紅茶をわざわざ淹れ直して、再度テーブルに並べてくださいました。

「あ、純ちゃん?バスタオルを一枚売ってくれる?どんなのでもいいわ。安いやつ」
「だったら確か・・・あったあった。これ、差し上げます。業者さんがサンプルでくれた子供向けキャラクターのタオル。カワイイでしょ?」
 古泉オーナーさんが差し出したカラフルなタオルを受け取ったシーナさまは、それを私に差し出してきました。

「ほら、これをお尻の下に敷いて、直子もさっさと座りなさい」
「裸のお尻で直子がそのベンチに座ったら、ベンチの表面と直子のお尻の穴が直に触れちゃうことになるものね。そんなの、次に座る人が可哀相すぎるわ。ヘンタイ菌が感染っちゃう」
 シーナさまのイジワルいお声。
「もう!これからお食事っていうのに、シーナさんたらお下品なんだからー。ほら、モリタさんも、早く」
 古泉オーナーさんの明るいお声に促されて、おふたりの対面のベンチの上にタオルを折って敷き、裸のお尻でおずおずと腰を掛けました。

「さっきシーナさんが、コートを羽織ってのお食事なんてはしたない、っておっしゃったけれど、お尻丸出しでのお食事とだったら、どっちがよりはしたないのかしらね?レディとしたら・・・」
 古泉オーナーさんが小さくクスクス笑いながら、独り言みたいにつぶやきました。


コートを脱いで昼食を 24


2013年12月1日

コートを脱いで昼食を 22

 包帯の戒めを解かれたのにも気づかないくらいの放心状態で、だらしなく両脚を広げたまま、私はしばらくベッドに仰向けのままでした。
 気を失なっていたというわけではなく、ただただ頭の中が真っ白になっていました。
 ときどき思い出したようにからだのあちこちで、自分の意志とは関係なく、ピクンピクンと筋肉が痙攣しているのがわかりました。
 そのたびに、甘美な快感の余韻が下腹部をくすぐりました。

「あら、気がついたみたいね。どう?立てる?」
 シーナさまのお声。
 えっと、立つ、っていうのは、どうすればいいのだっけ?
 からだを動かそうと力を入れるのですが、その意志をからだの該当部位に伝えることがうまくいかないみたい。
「ぐったりしているのはわかるけれど、いつまでもそこに寝ていられると、片付かないのよね」
 シーナさまがイジワルクおっしゃいます。
「いいのよ、ゆっくり休んでいらっしゃい。お疲れでしょう?わたくしたちも片付けや着替えがあるから、お気になさらずに」
 アンジェラさまのおやさしいお言葉。
「・・・ぁ、だ、大丈夫です。ありがとうございました」
 掠れた声でお答えして、なんとか上半身を起こしました。

 足元がおぼつかないからだをシーナさまと蘭子さまに支えていただいて、ゲスト用のドレッシングルームに戻りました。
 すぐにバスルームに入り、ローションと私のいろいろなおシルでヌルヌルベタベタになった全身を、ぬるいシャワーで洗い流しました。
 両膝の裏が包帯ロープに擦れたのか、少し赤くなっていました。

 シャワーの流れに沿ってお肌をさすっていると、何だかお肌が以前よりスベスベしている気がしました。
 マッサージしていただいて血行が良くなったせいでしょうか。
 アソコ周辺は、まるで生まれたての赤ちゃんみたいにツルツルのスッベスベ。
 からだ全体がふうわり軽くなったような気がして、意識もハッキリスッキリ、気持ちまで軽やかになっていました。
 シーナさまと蘭子様は、シャワーを浴びる私を眺めながら、楽しそうに談笑されていました。

 タオルで丁寧に水気を拭ってから、全裸のままバスルームを出ました。
 首のチョーカーが全体にしっとり濡れちゃったことだけが、ちょっと気がかりでした。
「なんだかずいぶん晴れ晴れとした顔をしているわね、直子」
 シーナさまが裸の私をマジマジと眺めながらニヤニヤ笑いでおっしゃいます。
「まあ、あれだけ何回も凄腕テクニシャンにイかせてもらったら、直子の底無しな性欲も、さすがに落ち着くわよねー。羨ましいこと!」
 シーナさまってば、本当に羨ましそうなご様子に見えました。

「それじゃあ、わたしたちも着替えてくるから、直子も帰る支度をして、さっきのゲストルームに戻ってらっしゃい」
「直子のバッグは、ゲストルームに置いてあるからね」
 そう言い残すとシーナさまは、テーブルの上にあった紙袋を掴んで、蘭子さまと一緒にドレッシングルームを出て行かれました。

 お洋服を着ようと思い、ハンガーにきちんと掛けられた自分のスーツを見て、ふと思い出しました。
 そう言えば、私の下着は?
 思えば私は、あのゴージャスなお部屋でストリップをさせられたので、ここに来るときはすでに全裸でした。
 脱いだ下着類は、小野寺さんがすべてまとめてどこかへお持ちなっちゃったのです。
 ブラジャーと、あと、私のいやらしいおツユで汚れたショーツとパンティストッキング・・・
 今更ながらに、赤面してしまいました。

 ドレッシングルームをひととおり見回してみましたが、それらしいものはありません。
 どこかにしまってあるのだろうか?
 でも、まさかチェストとかを無断で開けて見るわけにもいかないし、第一、しまい込む必要なんてまったく無いはずです。
 
 どうしよう?
 恥ずかしいけれど、小野寺さんに聞いてみようか・・・
 施術ルームの扉をそっと開けてみましたが、電気がすべて消されて真っ暗、誰もいらっしゃらないようでした。
 となると、おそらくあのゴージャスなお部屋に戻られたのでしょう。
 うーん・・・ま、いっか。
 とりあえず下着は着けずに身なりを整えて、あのお部屋に戻ろう。
 身も心もスッキリして楽観的になっていた私は、どうせあとは車でお家へ帰るだけなのだから、ノーブラノーパンもさほど大した問題ではないような気分になっていました。

 素肌にブラウスを着て、裸の腰にそのままスカートを履きました。
 生地が薄いブラウスですが、大人しくなった乳首ならぜんぜん目立ちません。
 いつもなら、こんな格好をすればすぐそれなりにムラムラくるのですが、さすがに今はそんな気持ちも湧いてきません。
 メイクを軽く整えてからジャケットを羽織り、裸足にスリッパでスタスタとゴージャスなお部屋に戻りました。

 ゲストルームでは、再びお洒落な私服に着替えられたみなさまが、おのおのソファーや椅子に腰掛けてお紅茶を召し上がっていらっしゃいました。
「失礼します」
 私が入っていくと一斉の拍手。
 どなたもにこやかで、最初の頃より私に対する親密さが増している感じがしました。
 シーナさまとアンジェラさまから、私のからだや最後のマッサージのときのことをいろいろからかわれ、他のみなさまも、もはや遠慮一切無しで楽しげに笑っていらっしゃいました。
 私も、自分を話題にされるのはやっぱり恥ずかしかったけれど、でもそれ以上に楽しい時間がおだやかに過ぎていきました。
 下着のことは自分でも忘れたまま、小一時間ほどみなさまとお茶を飲みながらおしゃべりをしました。

「ワックス脱毛すると、次に生えてくるヘアーはいっそう細くなっているの。ナオコのだったら、たぶん2~3週間はそのままで、その後だんだんチョロチョロって出てくるはずよ」
「だから、次に施術出来るようになるのはたぶん12月ね。今日くらいの濃さになったらまた、必ず来なさい」
 アンジェラさまが私の手を取って、ニコニコ笑いながらのご命令口調でおっしゃいました。
「ナオコのヘアーなら、あと数回通えば、ほとんど生えてこなくなるはずよ」
「だから必ずいらっしゃい、ね?」
 アンジェラさまに固くお約束させられて、サロンを後にしました。

 そんな恥辱まみれないわくつきのパイパンな土手を、シーナさまがスルスル撫ぜてきます。
 デパートのおトイレの狭い個室の中。
 私は必死に口をつぐんで、えっちな声をがまんします。

「あの日の帰り、直子は平気でノーパンノーブラで車に乗っていたわよね?」
「あの頃から、裸でコートなんて破廉恥なアソビを計画していたのじゃないの?」
 シーナさまが私の土手を軽くさすりながら聞いてきます。
「あ、はぃ・・・」
「やっぱりねー。あれだけイかせてもらってまだ10日ちょっとでしょ?本当、ヘンタイ性欲のかたまりなのね、直子って」
「夏休みは全裸生活、エステサロンでみんなの前で死ぬほどイって、懲りもせずに今度は裸コート。呆れた女子大生がいたものだこと」

 結局あの日、私が身に着けていた下着類はすべて小野寺さんがお洗濯してくれて、施術後にはキレイにたたまれた状態でドレッシングルームのテーブルの上に置いてあったのだそうです。
 シーナさまが私のシャワー中にそれを隠し、お部屋からの去り際に手にした紙袋の中身がそれだったのでした。
 車の中でシーナさまに渡されて、あんなに辱めを受けたのに性懲りも無くまだノーブラノーパンでいたいのね、なんてさんざん虐められました。

「今日は自分の意志でそんな格好しているのだから、それなりの覚悟は出来ているのよね?」
 シーナさまがタンポンの紐を引っ張って、一気に引き抜きました。
「うぐっ!」
「わたしと一緒なんだもの、もうこんなものいらないわ。スケベ汁だらだら垂らしながら街中をお散歩しましょ?」
 私から抜き取ったタンポンをポイッと汚物入れに投げ捨てました。
 シーナさまの瞳が、どんどんエス色に染まってきていました。

「まずはどこへ行こうかしら?コートのボタンはずしたまま繁華街を歩いてみる?その後、公園にでも行ってオナニーとかしてみよっか?」
「あのう、シーナさま?私、誰にでも視られたい、っていうわけでは・・・」
「わかっているわよ。男子禁制でしょ?それを破るとわたしがゆりさまから叱られちゃうもの。だから悩んでいるの!」
 怒ったようなシーナさまのお声。
 シーナさまが私の股間から手を離し、腕を組んで考え込みます。

「直子の計画は、ブティックでお買い物して逆ストリップ、だっけ?」
「はい・・・」
「ブティック街でのショッピングは比較的安全だけれど、なんだかマンネリだわね。確かこっちで最初に会ったときもやったわよね?」
 おっぱいを縛られて、貝殻ローターをアソコに挿れたまま試着させられたっけ・・・
「あ、はい・・・」
 あの初夏の日の恥ずかしさを思い出しながら私が答えると同時に、シーナさまのお顔がパッとほころびました。

「そうだった!あの子がいたわ!」
 シーナさまのすっごく嬉しそうなお声。
「うふふ、直子、いいこと思いついちゃったー」
 シーナさまは、ご自分のケータイを開けて何か確認されています。
「たぶん大丈夫と思うわ。この時間帯なら。わたしこれからちょっと電話してくるから、直子はコートをきちんと直して、メイク整えてから出てきて」
 おっしゃりながら個室から出て行こうとされます。

 今のシーナさまのご様子だと、あの日のブティックのノリのいいギャル店員さんに、もう一度会いに行くのかもしれません。
 それはそれで、なんだか懐かしいかも・・・
 でもそれなら、別に電話することもないような・・・
 あっ、ご出勤されているかの確認なのかな?
 そんなことを考えていたら、個室を出かけていたシーナさまが振り向きました。

「あっ、そうだ。直子、代わりのタンポン持ってる?」
「え?いいえ、生憎・・・」
「もう使えない子ね。ならわたしのあげるから、それ突っ込んでおきなさい。まだ新しいお店、汚しちゃったら可哀相だから」
「あのう、これから誰かとお会いするのですか?」
「そうよ。お会いって言うか、お見せって言うか」
 くくっと笑うシーナさま。
「せっかく直子が一生懸命考えた晴れ姿ですもの、わたし一人で愉しむだけじゃもったいないわ。そう思わない?」
 ご自分のバッグからタンポンを一つ出して私に握らせ、そそくさと個室から出て行きました。

 お言いつけ通りに真新しいタンポンを挿入し、コートのボタンをきっちり留めてメイクを直し、女子トイレを出ると、シーナさまは廊下でまだ電話中でした。
 新しいお店?
 ていうことは、このデパートのブティックではないっていうことだよね。
 だとすると、これからいったい、私はどこへ連れて行かれるのだろう?
 こんなに恥ずかしすぎる私の姿を、誰にお視せになるつもりなのだろう?
 エステサロンに連れて行かれたときと同じような、不安7期待3くらいのフクザツな思いが胸に渦巻いていました。

「おっけー。それじゃあ行きましょう」
 シーナさまは、私の右手を取って一直線にエレベーターに向かいました。
 手を引かれておたおたとついていく私。
 エレベーターで地下まで降りると、私鉄とJRの地下連絡通路を進みます。
 これでもう、あのギャル店員さんのお店ではないことが決まりました。
 
 平日の昼間だというのにちょっとびっくりするくらい大勢の老若男女が地下通路を行き来していました。
 裸コート姿でこんなに大勢の人の前に出るのは、もちろん初めてです。
 すごい緊張感が全身に走ります。
 普通にしていればバレるはずないのに、ヘンタイな行為をしているという負い目が背徳感を煽り、ゾクゾク感じてしまいます。
 私ひとりでは、こんなに人がいるところに、この格好で出てくることなんて絶対出来そうもありません。
 シーナさまはずっと無言で、私の手を引いたままスタスタと人混みを優雅にすり抜けていかれます。
 私はシーナさまの左手を命綱のようにギューッと握って、一生懸命ついていきました。

 途中の地下街で、有名なサンドイッチショップのサンドイッチをシーナさまがたくさん買って私に持たせ、さらに地下通路を進んでいきました。
 ここまで来ちゃうと確かもう西口のはず。
 こっちに来て半年以上経ちますが、西口に来るのは初めてでした。
 地下通路が突き当たりになる頃、シーナさまがようやく地上への階段を上り始めました。


コートを脱いで昼食を 23