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2015年4月19日

面接ごっこは窓際で 10

 ハンガーに掛かったまま手渡されたのは、シックなワインレッド色のロングカーディガンでした。
 ふうわりとしたルーズなシルエットで、たぶんウールかな。
 太めの毛糸をざっくり手編みした感じが、とても素敵でした。

「昨シーズン、けっこう出た人気アイテムよ。これは素材を選ぶために作らせた試作品でウールだけれど、製品版はコットンになったの。クリーニングがラクだからね」」
「これ羽織っておけば監視カメラも問題ないでしょう?直子の大好きな裸コートのニット版よ。着てみて」
 お姉さまに促され、カーディガンを注意深くハンガーからはずし、袖に腕を通しました。

 丈は膝上5センチくらい、袖も一折すれば問題ありません。
 でも、それ以外は問題山積みでした。

 前合わせがおへそのちょっと上くらいの、かなり深めなVネックなので、胸元がほとんどはだけて覗いてしまいます。
 ボタンはふたつ、おへその少し上と腿の付け根あたり、だけ。
 透かし編み、と言うのでしょうか、隙間を多用したざっくりした編み方なので、全体にそこはかとなくシースルーな感じ。
 その上、ルーズフィットなだぶっとしたつくりなので、少しからだを屈めただけで生地と素肌に大きく隙間が出来、胸元からおっぱいが丸見えになってしまいます。

「あの、お姉さま、これ、少し私には大きいような・・・」
「あら、いい感じよ。甘えんぼ袖でかわいいじゃない」
「それに、胸元が開きすぎでは・・・」
「だってカーディガンって、本来何か着ている上に羽織るものだもの、仕方ないわ。チェーンネックレスが胸元を飾っているから、それはそれでセクシーな感じになっているわよ」
 確かに首からかけたチェーンが胸の谷間で三方に分かれ、左右の乳首へと繋がっているであろうことまでバッチリ丸わかりでした。

「安心なさい、ボタンは留めちゃダメ、なんてイジワルは言わないから。さ、行きましょう」
 ロッカーを閉じ、バーキンを肩に提げてモップ片手のお姉さまが、ツカツカとドアに向かいます。
 私もあわててショートジャケットとハンドバッグをショッパーに押し込み、もう片方の手に重いバケツを持って、お姉さまの後を追いました。
 からだを動かすと裏地が肌に擦れ、ウールのチクチクが尖った乳首を挑発してきて私はモヤモヤ。
 股下以降ボタンが無いスリット状態な裾は、歩くたびに大きく割れ、太股から付け根まで、大胆にキワドク覗いてしまいます。

「あっ!いっけなーい!」
 オフィスの電気を全部消して、あとは廊下に出るだけ、とドアノブに手をかけたお姉さまが、真っ暗な中で小さく叫びました。
「えっ!?」

「直子の履歴書、あたしの机の上に出しっ放しだったわ」
「えーーーっ!?」
「あたし、出張から帰るの火曜日の予定だから、そのあいだずっと置きっ放しになっちゃうわね」
「あの、そのあいだに誰か社長室に入ったりはしないのですか?」
 焦ってお姉さまに尋ねました。

「もちろん入るわよ。今はたまほのがあたしの仕事の補佐だから、あたしの代わりにね」
 何言っているの、この子は?みたいなニュアンスの笑いを含んだお声が、暗闇から聞こえました。
「でも、たまほのなら気を利かせて、黙って机の抽斗にでもしまってくれるだろうから、まっ、いっか?」

「いくないですっ!!」
 お姉さまの語尾が消えないうちに、覆いかぶせるように抗議の声をあげました。
 私のイキ顔が添付された、あんな破廉恥な履歴書を早々と社員のかたに見られちゃったら、私はどんな顔をして初出勤すればいいのでしょう。

「あんな履歴書、早くどっかにしまっちゃってください!いえ、会社に置いておかないで、お姉さまがお家へ持って帰ってください!」
 お姉さまとの面接ごっこで自分の恥ずかしい性癖をひとつひとつ、自筆で書き加えさせられたときの恥辱感が全身によみがえり、いてもたってもいられなくなって、強い調子で抗議してしまいました。
「おー怖い。でも直子って、怒ったときさえマゾっぽい感じなのね。嗜虐心をくすぐるって言うか。あたし、そういうのも好きよ」
 余裕のお姉さまが再び灯りを点けました。

「わかったわ。そんなに言うならしまってくる。可愛いスールからの切羽詰ったお願いだもの」
 社長室に向かうお姉さまを、私も追いかけます。
「でもね、社員の履歴書を持って帰ることは出来ない決まりなの。社外秘書類は持出禁止。これは会社のルールだから」

 ご自分のデスクの上に無造作に置いてあった履歴書をつまみ上げ、一瞥してからクスッと笑い、たくさんある抽斗のひとつに、これまた無造作に放り入れました。
「今は金庫の鍵持っていないから、とりあえずね。大丈夫よ。たまほのはこの抽斗、絶対に開けることはないから」

「あの・・・もしも社員のかたが、私の履歴書を見たい、っておっしゃってきたら、お姉さま、あ、いえ、チーフは、お見せになるおつもりですか?」
「そうねえ・・・取締役のアヤか雅が見たいって言ってきたら、断る理由は無いわね。もっとも今までそんなこと、ふたりとも言ってきたこと一度もないけれど」
 とりあえず少しだけホッとする私。
 だけど私のあの破廉恥な履歴書は、この会社の正式な社外秘書類になってしまったようでした。

 なんとなくモヤモヤしたままオフィスを出て、給湯室に用具を戻し、片手が空くとすぐにその手でカーディガンの大きく開いているVゾーンの襟端を両方握って隠しました。
 そのままエレベーターホールへ向かいます。

「こうしてあらためてよく見ると、全体にけっこう透けるのね、それ。でも色っぽくて、いい感じよ」
 お姉さまが私を振り返り、しげしげと見ながらおっしゃいました。
 手をどけなさいって叱られるかな、と思ったのですが、胸元Vゾーンを隠していることについては、とくに何も触れられませんでした。

 エレベーターの箱はみんな一階で待機しているようでした。
 お姉さまが呼び出しボタンを押し、やって来るのを黙って待ちます。
 ここには監視カメラがあるはずなので、お姉さまの陰に寄り添うようにくっつきました。

 やがて1基のエレベーターがやって来て、扉が開きました。
 正面に大きな鏡。
 そこに映った自分の姿に思わず息を呑みました。

 エレベーター内の明るい光に照らし出されたワインレッド色のストンとしたシルエット。
 その内側に私のからだのライン全体がハッキリわかるほど、白くクッキリ透けていました。
 その上、網目が詰まった部分と粗い部分で交互に、忙しくボーダー模様になっているデザイン。
 私が着るとちょうどバスト部分と土手部分が粗いほうの網目に当たっています。
 なので、バストに目を凝らせば、私の乳首の位置も色も、ちゃんとわかります。
 下半身も、両腿の付け根部分が、見事に透けています。

 お姉さまをにぴったり寄り添い、来るときに教えていただいた監視カメラに背を向けるように、横歩きで乗り込みました。
 お姉さまのおからだが監視カメラの盾になるような位置で背中を向け、じっとちぢこまります。
 この際、お尻ぐらいは映っちゃっても、仕方ありません。

「お姉さまの会社って、こういうえっちなお洋服ばかり作っているのですか?」
 ヒソヒソ声で少し嫌味っぽく愚痴ってしまいました。
「あら失礼ね。直子だからそうなるのよ。サイズがちょっと大きめだから。あたしが着たらちゃんと、見せたくないところは見えないデザインよ」
 愉快そうなお姉さまのご反論。
 お姉さまったらやっぱり、計算されてこのカーディガンを選ばれたんだ。

 エレベーターはどの階にも停止することなく、あっという間に地下の駐車場に到着しました。
 駐車場内は、フロアに較べればずいぶん暗めで一安心。
 人っ子一人いないようで、しんと静まり返っていました。
 コンクリートをカツカツ叩くお姉さまのヒールの音。
 私も早く自動車内に逃げ込みたい一心で、ショートブーツの底をパタパタ鳴らしました。

 やがて一台の乗用車の前で立ち止まったお姉さま。
 それがお姉さまの愛車のようです。
 薄暗いので紺色なのか青色なのかハッキリしませんが、割と大きめな車でした。
 ずっと昔からある美味しいサイダーのマークに似たエンブレムを、お顔に付けていました。
 自動車のことはほとんど何も知らない私でさえ、そのマークが付いた車は高級外国車であるということは知っていました。

「すごいですね。さすが社長さん、っていう感じです」
「それって皮肉?これ、実家から借りているのよ。こっちに出てきて借りっ放し。ナンバー見てごらん、横浜でしょ?」
「あ、本当だ。ご実家もすごいのですね」
「うーん、どうだかね。そんなことより、早く乗りなさい」
 お姉さまが運転席のドアを開けてローファーみたいなお靴を取り出し、履き替えられています。

 助手席のドアを開けて乗り込もうとしたとき、躊躇いが生じました。
 私は今ノーパン。
 そしてもちろん、今の自分の恥ずかし過ぎる格好で、充分に潤んでいます。
 このまま座ればカーディガンのお尻を汚してしまうし、生尻じか座り、するならタオルを敷かなくちゃ。
 懐かしい言葉を久しぶりに思い出して、ちょっと顔がほころびました。
 それから持っていたショッパーを覗き込んで、キレイめのタオルを探し始めました。

「どうしたの?早く乗りなさい」
 訝しげなお声でお姉さまが尋ねてきます。
「えっと、あのですね、私は今ノーパンで濡れているので、このまま座ったらカーディガンを汚してしまうし、お尻をまくって直に座ったらお車のシートを汚してしまうし・・・」

「へー。ずいぶんな気配りさんなのね。それで直子はどうしようとしているの?」
「なので、シートの上にタオルを敷いてから、生尻じか座りをすれば、カーディガンもシートも汚れないから・・・」
「生尻じか座り、って面白い表現ね。あたしは別に、そのカーディガンは直子にあげたつもりだし、助手席に直子のおツユが染み込んで車内が直子臭くなっちゃっても、別に構わないのだけれど」
 そこまでおっしゃって、少し考えるふうに視線を宙に向けるお姉さま。

「おっけー。決めたわ。生尻じか座り、っていう言葉が気に入ったから、それでいきましょう」
「タオルも敷かなくていいわ。どうせその中のタオルはみんな、直子の愛液がたっぷり染み込んでいるのだもの、敷いたって同じよ。文字通り、生尻じか座り、でいいわ」

「でも、これって本革では・・・」
「そうかもしれないけれど、いいわよ。どうせ乗ったら、ものの5分もしないうちに着いちゃうもの」
「それとも直子は、何か期待しているの?車に乗って家に着くまでに、車内中が直子臭くなっちゃうほどおツユが溢れちゃうような出来事を」
「いえ、そ、そんなことないです。わ、わかりました」
 お姉さまのイジワル口調にキュンとなってトロリ。

 車に乗り込んで腰を下ろす前に、お尻側の裾に両手を遣って思い切りまくり上げました。
 それからストンと、裸のお尻をシートに沈めました。
「ひゃぁっ」
 ひんやり冷たい感触と、ちょうど良い柔らかさの革の肌触りがお尻を包みました。
 お姉さまは、そんな私の一挙一動をじーっと見つめていました。

「直子?」
「あ、はい?」
「左のおっぱいが襟から全部零れ落ちていてよ。それともワザと?」
「あ、いえ!」
 からだを折り曲げた拍子におっぱいがはみ出てしまっていたようです。
 あわててカーディガンの前をかき合わせました。

「タオルを敷くとか、そんな気配りが出来る、っていうことは、似たような格好で誰かの車に乗ることが過去に何回かあったのよね?」
 私が座り終え、助手席側のドアをバタンと閉めても、お姉さまはまだエンジンをおかけにならず、私に質問してきました。

「はい。やよい、あ、いえ、百合草先生と、あとシーナさまのお車にも」
 かき合わせた胸元をギュッと握り締めてお答えしました。
「ふーん。そのときはいつも、生尻じか座りのタオル敷き、だったわけね?」
「はい・・・」
「ふーん」

 意味ありげに私の顔を覗き込んでから、やおら前を向き、車のエンジンをおかけになるお姉さま。
 車内を低くエンジン音が包み込み、その中を綺麗なバイオリン曲が小さく漂い始めました。

「直子?」
「はい?」
「シートベルトをしたら、そのニットのボタン、全部外しなさい」
「えっ?」

「直子さっき、そのニットに絡めて、あたしの会社に対して失礼なこと言ったわよね?それに、この車見たときも、何か皮肉っぽいことを」
「あ、いえ、決してそんなつもりでは・・・」
「ううん。言ったことは間違いないわ。あたしに馴れ過ぎて直子は、自分の立場を忘れかけているのよ。だからこれは躾。お仕置きよ」
「直子とあたしがどういう関係なのか二度と忘れないように、命令します。ボタンを外しなさい」
 私の顔をじっと見据えて、冷たいお声でおっしゃいました。

「は、はい・・・申し訳ございませんでした・・・」
 おずおずと右手を下腹部に伸ばし、ボタンを外し始めました。

 カーディガンの裾はまくり上げているのでお尻に敷かれていず、シートの背もたれと私の背中のあいだでクシャクシャになっています。
 そんな状態でボタンを外せば、前合わせはそこに留まっていることが出来ず、左右にハラリと簡単に割れてしまいます。
 一個外すと土手と割れ始めのスジが覗き、2個目で太腿から下腹部まで、完全に露になってしまいました。
 その影響は上半身にも及び、左側はシートベルトでも押さえられているので無事でしたが、右側は襟部分までペロリとめくれて、右おっぱいがチャームをぶら下げた乳首まで顔を出していました。

「そのまま、絶対直しちゃだめ。これはお仕置きなのだから」
 おっしゃりながらお姉さまの左手が背後から、私の左肩を抱くように伸びてきて、左おっぱいを覆っていた布地が肩先から引っ張られ、せっかく隠れていた左乳首も、こんにちは、してしまいました。
 左おっぱいの上部分を斜めにシートベルトが締め付け、少し歪んだ肌の先に、尖った乳首にチャームをぶら下げた左乳首。
 つまり、私の肌でニットに隠れているところは両袖だけ、という状態になってしまったのでした。

「そのまま夜のドライブよ。もう深夜だから、いくら土曜の夜でも、人も車もたいしていないでしょう。直子の家までなら大通りを通るわけでもないし」
「ずっとこのままで、ですか?」
「そう。おっぱいも下も丸出しで。と言っても外から下半身は見えないでしょうけれどね。どう?ドキドキしちゃう?シート、思う存分汚していいわよ」

「あの、あの、えっと、以前、やよい先生に教えていただいたのですけれど・・・あ、えっと百合草先生です」
 お姉さまご提案の大冒険にワクワクしつつも、万が一の危険性がどんどん脳内で膨らんできて、動揺と共に言い出せずにはいられませんでした。

「んっ?」
 お姉さまの眉がピクリと動いて、先を促す仕草。
「えっと、こういう車の中での露出では、みんな周りばかり気にするけれど、一番注意しなくちゃいけないのは前を走っている車だ、って」
「前?どういうこと?」
「あの、これ、えっとバックミラーでしたっけ?これで後ろの車の運転席のことは丸見えだから、もし前の車が覆面パトカーだったりしたら・・・」
 フロントグラスの上真ん中くらいに付いている小さな鏡を指さしながら、おずおずとご説明しました。

「ああ、なるほど。確かにね。あたしも以前、信号待ちのあいだキスしてるバカップルをルームミラー越しに見たことあるわ」
「さすが百合草女史ね。あたしそんなこと考えたこともなかったわよ」
 心底感心されたご様子のお姉さま。
「もっともあたしは今まで、助手席で裸になりたがるようなヘンタイを、自分の車に乗せたこともなかったけれどね」
 お姉さまの左手の指が、私の右乳首のチャームをチョンとつつきました。
「やんっ」

「おーけー。それならこうしましょう。前の車との車間距離が詰まっているときと、狭い道で対向車とすれ違うときは、直子は腕でバストを隠してもいいわ。腕組むみたいにして」
「車を降りるまで、それ以外の動作は一切禁止ね。まっすぐ前を見て、大人しく座っていること」
「それにせっかくのチャンスなのだから、まるべく隠さないように努力しなさい。視られたって一過性なのだから」
「直子だって誰かに視られたほうが興奮するのでしょう?あたしが隣にいるのだから、大丈夫よ」
「は、はい・・・」
 なんとなく覚悟が決まりました。

 ヘッドライトがパッと点いて、車が音も無く動き始めました。
 薄暗い駐車場に人がいる気配はまったく無く、音楽はクライスラーの愛の喜びに変わっていました。
 段差を乗り越えるたびに車が少し揺れて、私の剥き出しのおっぱいもチャームごとタプンと弾みました。
 長いスロープをゆっくり登りきると、駐車場の出口が見えました。

 駐車場出口で一旦停止。
 ここから先は、私が慣れ親しんだ生活圏内の一帯です。
 そんな場所を、車の中とは言え、おっぱい丸出しの上半身をガラス窓から覗かせて走っていくのです。
 喩えようのない恥ずかしさと背徳感が全身をつらぬきました。

 出口から出て左折したお姉さまの車は、数秒も走らないうちに最初の信号に捕まりました。
「ここは右折できないから、ビルをぐるっと一周することになるわね」
 幸い交差点には人も車もいません。
 と、思う間もなく対面からヘッドライト。
「大丈夫よ。もう信号変わるから」
 腕を組みたくてムズムズしている私を制するように、お姉さまのハンドルがゆっくりと左に切られました。

 片側二車線の右寄り路線をゆっくりと直進するお姉さま。
 そのあいだ、2台の対向車がけっこうなスピードですれ違っていきました。
 私は呆気に取られ、腕で隠すヒマもありませんでした。
 やがて見えてきたのは、通い慣れたアニメ関係のお店が立ち並ぶ通りです。
 お姉さまが車を左へ寄せていきます。
 この辺りははまだ少し人通りもあり、私の腕がまたムズムズし始めますが、今度は信号に捕まることも無く左折出来たので、隠すタイミングを失なっていました。

「そう言えば、さっきの信号の手前あたりに交番があったはずよね。もう通り過ぎちゃったけれど。ちょっとヤバかったかな」
 愉快そうにおっしゃるお姉さま。

 お姉さまのお言葉で、その交番の佇まいが瞬時に思い出せるほど、しょっちゅうその前を歩いていました。
 私、あの交番の前でも、おっぱい丸出しだったんだ・・・
 右に目を遣れば立ち並ぶ、見慣れたアニメショップ群。
 自分が今していることのあまりのヘンタイさに、からだがどんどん熱くなってきます。

 次の交差点も捕まらずに左折すると、今度は24時間スーパーがある通りです。
 スーパー側、つまり対向車線側の舗道には、けっこう人が行き来していますが、お姉さまが選んでくださったこちら側の舗道側路線は、照明も暗く、人もぜんぜんいません。
 この通りを抜ければ住宅街。
 人も車もガクンと減るはずです。

 その信号を抜ければ住宅街、という交差点で信号待ちに捕まりました。
 片側2車線道路の右寄りに車が一台信号待ち。
 お姉さまの車は左寄り車線を進んでいます。

「どうしよっか?後ろにつくか、隣に並ぶか」
 信号待ちをしている車は、黄色くて可愛らしい感じの車でした。
「あの車の感じだと、女性ドライバーぽいわね。それなら後ろについてみましょう。直子はまだ隠しちゃだめよ」
 お姉さまが右寄りに車線変更して、ゆっくりと黄色い車の後ろに近づいていきます。

「ああ、やっぱり女性みたい。それもけっこう若そう。初心者マークまで付けているし」
 お姉さまが身を乗り出すようにして、黄色い車のリアウインドウ越しの車内に目を凝らしています。
「これも何かの縁だわ。これは直子、見せてあげるしかないわね。いい?絶対隠してはだめよ」
 おっしゃりながら、黄色い車の後ろにゆっくりと、ご自分の車を停車させました。

「あ、なんだか気がついたみたい。ルームミラーを弄って角度変えている」
 気にはなりますが、私はそれどころではありませんでした。
 うつむいてギュッと目を閉じ、胸を庇いたい欲求と一生懸命戦っていました。
 自分の乳首にグングン血液が集まってきているのがわかります。
「視てる視てる、信号が変わったのも気づかないみたいね」

 パァッ!
 お姉さまが鳴らしたのであろう短く鋭いクラクションの音に、私もビクンとして顔を上げ、自然と前を見ました。
 なんだかあわてたみたいに黄色い車がよたよた発進して、交差点を渡りきったところでウインカーを左に出し、路側帯に停車しました。
 その脇をお姉さまがゆっくり通過していきます。
 通過するとき、黄色い車のドライバーさんと助手席の私とのあいだは1メートルも離れていませんでした。

 お姉さまがおっしゃった通り、まだお若そうな学生さんぽいボブカットの女性ドライバーさんは、運転席脇の窓ガラスに顔をくっつけるようにして、私を見送ってくださいました。
 私のバストに、目を皿のようにした好奇の視線が、2枚のガラスを隔ててまっすぐに浴びせられるのを肌に感じていました。

「やれやれ。あの黄色い車の彼女、びっくりし過ぎちゃって、このあと事故ったりしなきゃいいけれど・・・」
 黄色い車を追い越して住宅街の路地に入った頃、お姉さまが苦笑い気味にポツンとつぶやきました。

 いつの間にか車は、私のマンションの入口前に横付けされていました。
「ほら直子、着いたわよ?おっぱい出しっ放しでいいの?」

 私も黄色い車との一件でなんだか呆けてしまい、おっぱい丸出しのままボーっとしていました。
 お姉さまのお声で、あわてて前をかき合わせました。
 まわりをキョロキョロ見渡すと、さすがに住宅街、しんと静まり返って人影はありません。

「直子もずいぶん度胸が据わってきたのかしら、一度もおっぱい隠さなかったわね。偉かったわ」
 お姉さまが私のほうを向いて、ニッと笑いかけてくださいました。
「でも、あの女の子ドライバーだけではなくて、他にも舗道からとか、けっこう注目されていたみたいよ?こっちを二度見してくる人が数人いたもの」
「えーっ!?」
「その様子じゃ気づいていなかったみたいね。露出マゾの境地に達していたみたいだったし」
 うふふと笑ったお姉さまが、私のシートベルトをカチッと外してくださいました。

「少し腰を浮かせてごらんなさい?」
 おっしゃるままに従うと、股間は身悶えして逃げ出したいほどヌルヌルで、革のシートにもベッタリ垂れていました。
「うわー、予想以上の大洪水。これじゃあ拭き取ったくらいじゃ直子臭さは取れないかしら?」
 お姉さまが笑いながら私の頬を軽くつつきました。

「ああん、ごめんなさい、お姉さま・・・」
「いいのよ。それだけ気持ち良かったのでしょう?どう?車での露出の思い出で、あたしとのが一番になりそう?」
「もちろんです。こんなにすごかったの、初めてです」
 自分の生活圏内の街で、こんなに大胆なことが本当に出来るなんて、思ってもいませんでした。
 ああん、今すぐお姉さまに抱きつきたい!

「さあ、名残惜しいけれど、今夜はここでお別れね。出張から帰ってきたら電話入れるから、そのとき初出勤の日時を決めましょう。無論、早いほうがいいからね」
「はいっ!」
「ほら、一応お股拭いて、自分の部屋に入るまではきちんとしておいたほうがいいのではなくて?もっとも、そのニットではあまりきちんとは出来ないけれど」

 お姉さまの笑顔に促され、ショッパーからタオルを取り出し、まず自分の股間を拭いて、それから裏返して車のシートを拭いて、再びショッパーにしまおうとしたら、お姉さまの手で阻まれました。
「それはまだ、しまわなくていいから、ボタンを留めて先に身繕いしちゃいなさい」
 背中の裏でくしゃくしゃになっていたカーディガンの裾を引っ張り出し、今度はその中にお尻を隠してから、ボタンをふたつ留めました。

「いいみたいね。忘れ物もないわね?」
「お姉さまったらなんだか、ママ、あ、いえお母さんみた・・・」
 いですね?って軽口を叩こうと思ったら、お姉さまに唇を塞がれました。
 お姉さまの唇で。
「むぅぐぅう・・・」

 お姉さまの両手が私を抱きしめ、お姉さまの舌が私の口腔すべてを舐め尽してくる、そんな情熱的なくちづけでした。
 もちろん私もお姉さまに縋りついてお応えし、お互いの舌をニュルニュル絡ませ合いました。
 長い長いくちづけでした。

「はぁー・・・気持ち良かった。これでスッキリ仕事モードに入れそうだわ。直子はどうせ部屋に着いたら、すぐに始めちゃうのでしょうけれど」
 ご自分のお口の周りをテカらしているふたり分のよだれを、タオル、私のおツユがたっぷり染み込んだタオルで拭いながら、笑顔のお姉さま。
 その後、私の口の周りも、そのタオルで丁寧に拭いてくださり、指で髪を軽く梳いてくださいました。
「このタオルはあたしが持って帰るわね。出張中に直子に会いたくなったら、クンクン嗅ぐの」
 冗談めかしておっしゃって、丁寧にたたんでからバーキンの中にしまい込みました。

「それじゃあごきげんよう。おやすみ。良い夢を」
「はい。おやすみなさい。くれぐれもお家までの運転、お気をつけてください」
「うん。わかっているわ。直子の初出勤、楽しみね」
「はいっ!」

 テールランプが見えなくなるまでお見送りしてから、マンションに入りました。
 幸いにも、そのあいだずっと路上に人影はありませんでした。
 今更ですが今の私は、知っている人に見られたら絶対に言い逃れ出来ない、ヘンタイ過ぎる格好なのです。

 エレベーターに乗り込むと監視カメラに背を向けてうつむきます。
 管理人さんがこんな時間まで起きていらっしゃるとは思わないけれど、たぶん録画もされているはずなので。

 エレベーターから降りて扉が閉じると同時に、カーディガンのボタンを外し始めました。
 お部屋のドアの前に立ったときは、カーディガンも脱ぎ去っていました。
 バッグから鍵を取り出すのももどかしく、ショートブーツを脱ぎ始めます。
 扉を開けたときには、両乳首から垂れ下がったチェーンのリングを左手で引っ張り始めていました。
 もう一方の右手は、ショッパーの中にあるはずのあるものを、一生懸命探しています。
 みつけて引っ張り出すと同時に、玄関ホールの上がり框に全裸で倒れ込みました。

 私がその夜、と言うかもはや朝方、何時頃に眠りに就いたのかは、ご想像にお任せします。


オートクチュールのはずなのに 01

2015年4月12日

面接ごっこは窓際で 09

 天井照明に煌々と照らし出されたオフィスビルの無機質なフロアを、お姉さまのお背中を追って歩き始めました。
 
 一歩踏み出すたびに、内腿のあいだを空気が直にスーッと撫ぜてきます。
 どうしてもうつむきがちになってしまう自分の視界で、今現在自分が置かれている状況が否応無しに思い知らされます。
 オフィスを出てここまで来るとき、あんなに頼りなく感じた一枚のバスタオルでさえ、有ると無いとでは大違いでした。

 だって今の私は、全身の素肌を一切隠せない、すべてを剥き出しにした生まれたままの姿。
 いいえ、もっと悪いことに、率先して隠さなければならない部位を目立たせるかのように飾り立てた、破廉恥極まる姿でした。

 左右のおっぱい先端に大きなチャームをぶら下げ、性器も粘膜部分を左右に押し開くようにクリップで留め、更に一番敏感な肉の芽をテグスで絞って露出させて。
 首から下げた細いチェーンがそれらをすべて繋いでいます。
 青いバケツを持った私の右手が小刻みに震えているのは、その中になみなみと満たされたお水の重さのせいだけではありませんでした。

「ここが給湯室。モップとかバケツは入ってすぐ右側の扉の用具入れだから」
 おトイレから出てすぐにある扉の前で、お姉さまが教えてくださいましたが、私の心は羞恥だけに満たされて上の空。

「普段見慣れたオフィスの廊下を、そんなふうに素っ裸の女の子が歩いているのを見るのって、なんだかシュールで不思議な感じ」
 あと少しでオフィスの入口、というところでお姉さまが振り返り、私のからだをまじまじと見つめながらおっしゃいました。
「ありえないっていう意味で非現実ぽいて言うか、見方を変えれば、ある種のアートっぽい感じさえするわね」
「これはぜひ、写真に残しておかなくちゃ。そこでちょっと待ってて。カメラ取って来る」
 
 お姉さまがオフィスへのドアを開けようとしてふと動きが止まり、もう一度振り返りました。
「そうだ。そのあいだ直子は、そこでバケツぶら下げて立っている、っていうのはどう?」
 オフィスのドアの少し右側、天井照明の真下の一際明るく照らし出された一画を指さされました。
「ほら、昔の子供向けマンガとかによくあるじゃない。学校でイタズラっ子が先生に叱られて、反省するまで廊下で立ってなさい!なんて。立たされ坊主」
 愉しそうに微笑むお姉さま。

「失敗したな。もう一個バケツ持って来るんだった。ああいうシーンはたいがい両手にバケツ持っているものよね?片手が手ぶらじゃサマにならないもの」
「給湯室戻って取ってくるのもめんどくさいし、まあいいや。そっちの手にはこれを持ってなさい」
 使用済みタオルを詰め込んだビニールのショッパーの持ち手を、左手に握らされました。

「森下直子さん、先生が戻るまで、そこでじっくり反省なさい!」
 お芝居っぽく言い捨ててオフィスのドアを開け、モップだけ持ってスタスタと中へ消えたお姉さま。
 ドアがバタンと閉じられました。

 しんと静まり返ったフロアに、ひとりぼっちで取り残されました。
 これはつまり、放置プレイ?
 壁を背にして右手には重いバケツ、左手には軽いショッパーをぶら下げ、休め、の足幅で立ち尽くします。

 うつむくと自分の尖った乳首と、剥き出しの股間へと消えていく三本の細いチェーンが目に飛び込んできます。
 私、なんでこんなところで、裸になっているのだろう?
 ここに来てから何度も思った被虐感溢れるそんな疑問が心をマゾ色一色に染め上げ、胸を締めつけるような恥辱感に全身が昂ぶります。

 先ほどお姉さまは、今このフロアにはあたしたちしかいない、って断言されていたけれど、それでもやっぱりここは、有名なオフィスビルのパブリックなスペースなのです。
 誰でも、ではないでしょうが、少なくともこの階のフロアにオフィスを構えている他の会社の方々やビル管理の警備員のかたなら、自由に出入り出来るはずです。
 それに、お姉さまの会社のスタッフのみなさまだって、急なご用事でいらっしゃるかもしれません。
 もし、万が一、私がこんな姿で立たされているのを、お姉さま以外のかたに目撃されてしまったら・・・
 私のこれからの人生は、どうなってしまうのでしょう。

 イジワルなお姉さまは、なかなか戻ってきてくれません。
 オフィスに入られて、もう4、5分経っているはずです。
 カメラを取ってくるだけのことに、こんなに時間がかかるワケありません。
 絶対ワザとです。

 心細さが募り、頭の中で勝手に始まった妄想の中では、エレベーターホールのほうからカツカツとヒールの音が近づいていました。
 誰か来る!誰かが来ちゃう!
 私のこんな、恥ずかしい性癖丸出しの姿を見られちゃう!
 その人がお姉さま以上にイジワルだったら、私はこの姿を写真に撮られ、それをネタに一生脅されて言いなりにならなければいけないんだ・・・

 近づいて来る人を、さっきのトイレでの妄想でご登場いただいたおばさまにするか、来てすぐに写真を見せていただいたお姉さまのお仲間の美貌デザイナー、早乙女部長さまにするか決めかねていたら、オフィスのドアがバタンと開きました。

「お待たせ。って、直子、また妄想に耽ってたわね?見事なマゾ顔になってる」
 右手に持った小さなデジタルカメラで私を正面から、パシャッとシャッターを切るお姉さま。

「今度はどんな妄想をしていたの?」
 お姉さまが角度を変えて何度もシャッターを切りながら、尋ねてきます。
「あの、えっと、エレベータホールのほうから足音が近づいて来る、ていう」
 立たされ坊主の姿勢のまま、顔だけお姉さまに向けてお答えします。
「へー。また例の薬局のお水おばさん?」
「あ、はい・・・」
 まだ配役は決めかねていましたが、早乙女部長さまのことを言うとややこしくなりそうなので、そうお答えしました。

「それで、その後直子はどうなっちゃうの?」
 ひっきりなしにシャッターを切りながらのお姉さまのお尋ね。
「えと、まだそこまで進んではいなかったのですが、たぶん、写真を撮られて、それを元に脅されて・・・」
「なるほど。そのおばさんの慰み者になっちゃうわけね?」

「いいわ。わかった。だったらあたしが、そのおばさんの役、やってあげる。バケツ下ろしていいわよ。ショッパーもね」
「あ、はい」
 膝だけ曲げてバケツとショッパーを床に下ろし、空いた両手は自然と後頭部へ。
「いい心がけ。マゾ女の鏡ね」
 おっしゃりながらお姉さまは、ショッパーの中をガサゴソされています。

「ここに来て四つん這いになりなさい」
 ショッパーの物色を終えたお姉さまが、ご自分の足元を指さしておっしゃいました。
「は、はい・・・」
 おずおずとお姉さまに近づき、両膝を床に落としてから両手も床に着き、お姉さまを見上げました。
「ううん。膝は着いちゃだめ。両手両足の四つん這い。お尻を高く突き上げて、両脚は開き気味に、お尻の穴まで丸出しになるようにね」
「は、はい・・・」

 両膝を浮かせ、足の裏を床に着くと腰の位置が上がり、自然とお尻を上に突き出すような格好になりました。
 徒競走のクラウチングスタート二段階目みたいな格好。
 乳首のチャームが床に垂直に垂れ下がり、重力で乳首を下へと引っ張ってきます。
「おーけー。お尻をこっちに向けて。いくわよ?」
 方向転換をすると、目の前には誰もいない廊下が広がり、突き出したお尻はお姉さまの眼下です。

「ほら、取ってきなさい!」
 ご命令と同時に、背後から何か黒いものが私の頭上をヒラヒラと超え、数メートル先にパサッと落ちました。
「直子の大好きな、お姉さまの汚れたパンツよ。はら、早く取ってきなさい」
 突き上げたお尻の右側の尻たぶをピシャリと叩かれました。
「はぅっ。はいぃっ」

 冷たいリノリュームを腰高の四つん這いでペタペタ進み始めます。
 まるで床を雑巾がけしているような格好です。
 乳首のチャームがブラブラ大げさに揺れています。
「うわー。凄い眺め。肛門も具も丸見えよ。おまけにおツユまでポタポタ滴らせちゃって」
 背後でカメラを構えているのであろうお姉さまのからかい声が、私の昂ぶりを煽ります。
 シャッターを切るカシャカシャと言う音が、喩えようの無い屈辱感となってマゾの炎に油を注いできます。

 目標にたどりつきました。
 目の前に転がっているのは紛れも無く、先ほどお姉さまがおトイレでお脱ぎ捨てになった黒いショーツでした。
 両サイドを軽く縛って丸めてあり、私の目前に、一目で湿っているとわかるクロッチ部分が表になって転がっていました。

「もちろん手なんて使ってはだめよ。口に咥えて持ってらっしゃい。ドエムな直子らしくサカったメス犬みたいにね」
 四つん這いのまま床に転がったショーツをじっと見つめている私に、お姉さまの嘲るようなお声が浴びせられました。
 躊躇無く丸めたショーツの真ん中を咥えました。
 じんわりと口腔に広がる、大好きなお姉さまのしょっぱ苦いようなジュースのお味。
 咥えたまま急いで方向転換すると、視線の先がカメラのレンズとぶつかりました。
「うん。いい表情だわ。さあ、さっさと戻ってらっしゃい」

 お姉さまに促され、来た道を戻ります。
 リノリュームの床には水滴が、ポツンポツンと元居た場所までつづいていました。
「こんな場所で、四つん這いの裸でパンツを咥えた女の子、なんて写真は滅多に撮れるもんじゃないわよね?」
 そんなことをおっしゃいながら、お姉さまが容赦なくシャッターのシャワーを浴びせてきました。

「はい、良く出来ました」
 お姉さまの傍らまで戻り、咥えてきたショーツを口からもぎ取られると、お姉さまが私の頭を撫ぜ撫ぜしてくださいました。
「いい写真が撮れたわ。確かにこんな恥ずかしすぎる写真撮られたら、もうその相手の慰み者になるしか生きていく道は無いわよね」
 愉快そうなお姉さまがショーツを再びショッパーに放り込み、まだ四つん這いの私を見下ろします。

「だけどあたしは優しいから、あなたにご褒美を上げるわ。呆れちゃうほどのヘンタイぶりを披露してくれた森下直子さんにね」
 お姉さまがニッと笑って、いったんお言葉を切りました。

「ここでオナニーしていいわよ」
「えっ!?」
「ここでイきなさい、って言ったの」
「えっと・・・いいのですか?」
「だって、直子の顔見たら、もう行き着くとこまで行かないと収まりつかない淫乱マゾ顔だもの。だったらいっそここでやってもらうのも面白いから」
 お姉さまがカメラを構えました。

「モップも雑巾もあるから、汚したって拭けばいいだけだし、この環境だと新鮮でしょ?」
「このビルが出来てどのくらい経つのかは知らないけれど、オフィスフロアの廊下で素っ裸でオナニーした女なんて、今までたぶんいないでしょうね」
「直子がその第一号になるの。ギネスものよ。そしてあたしはそれを記録に残す立会人」
 冗談とも本気ともつかないお姉さまのお声に、私は未だおっしゃる意味の真意がよく飲み込めていません。

「ただし、念のために声は極力抑えてよね。あ、そうじゃなくて、喘ぎ声は一切禁止。口を真一文字に結んで、歯を食いしばって、がまんしながらイキなさい」
「そういうときのほうが直子、いい顔するもの。試着室のとき、あたしそれですごく興奮したし」
「まあ、この状況なら、少し弄ればあっさりすぐにイっちゃうだろうから。さあ、始めて」
 カメラを構え直すお姉さま。
「ほら、早く!」

 お姉さまの促すお声に、さっきから自分のからだを弄りたくて仕方なかった右手が床を離れ、知らず知らず下半身に伸び始めます。
「四つん這いのままじゃだめよ!顔がよく見えないもの。こっち向いてしゃがんじゃいなさい」
 お姉さまからのダメ出しにビクンとして、右手が引っ込みました。

 あらためて、野球のキャッチャーさんみたいな姿勢にしゃがみました。
「いいわね。オマンコも適度に開いて何もかも丸見えで。その姿勢をキープして自分を慰めなさい。ただし声は絶対出さずに、ね」

 再び右手を股間に伸ばし、腫れ上がったクリトリスに指の腹を当てました。
「んふぅう」
 ぎゅっとつぐんだ唇から脱出できなかった熱い吐息が、仕方なく鼻のほうへと活路を見出したようです。
「くふうぅぅ」

 クリットに触れると同時に理性のたががはずれ、親指と人差し指でクリットをつまみながら残りの指は膣口へと、ジュブッと挿し込まれました。
 左手はおっぱいを揉みながら乳首を潰し、下半身へとつづくチェーンを引っ張ります。
 理性は失くしてもお姉さまからのお言いつけは絶対なので、悦びの声を一生懸命押し殺していると、そのぶん眉間のシワが深くなり、目尻に涙が浮かんできます。
「んふぅぅーっ!ん、ん、ん、ん、んーっ」

 ジュブジュブ音をたてる股間の真下の床に、ポタポタポタポタ、白濁したおツユの水溜りが広がっていきます。
「いい顔よ。そう、イキなさい、イッちゃいなさい」
 カシャカシャというシャッター音に混じって、お姉さまも押し殺したお声で、私の昂ぶりを応援してくださいます。
「んぐっ!んぅ、ぅぅぅ、んぬぅぅぅーーーっ!」
 ふんふん囀る鼻息がどんどん早くなってきます。
「んんんんんんーーーーっ、いぃぃぃぃっ!!!」

 床にペタンと裸のお尻を着いて、その周辺は粘液の水溜り。
 お姉さまの予言どおり、始めて数分で、あっさり強烈にイってしまいました。
 自分の意志とは関係なく、時折腰がヒクヒク痙攣しています。

「気がすんだ?」
「はぁ、はぁい・・・」
「よかった。声もずいぶんがまんして、偉かったわ。最後は、いいい、とか言っちゃってたけれど」
 笑いながら手を差し伸べてくださるお姉さま。
「さあ、いい写真もたくさん撮れたし、帰る支度をしましょう。そろそろ日付が変わりそうよ」
 お姉さまの手に縋って立ち上がり、よろよろとオフィスに入りました。

「さっき直子を廊下に放置していたときに、あらかた掃除しちゃったから、もうほとんどやることは無いの」
 社長室、すなわちお姉さまのお部屋に戻ると、私が汚した床もテーブルも、キレイに拭き取られていました。
「直子はバケツの水でその雑巾を濡らしてゆすいで、もう一度テーブルを拭いといてくれる?あたしはそのあいだに、廊下をモップで拭いてくる」
「あ、はい」

 お姉さまがお部屋を出ていき、私はお言いつけ通り、窓際のテーブルを丹念に拭き掃除しました。
 全身に纏っていたムラムラがさっきの廊下でのオナニーで一掃され、なんだか身軽になったようでした。
 ショッパーからおトイレで使ったタオルを引っ張り出してからだを拭いていると、お姉さまがお戻りになりました。

「とうとう日付が変わっちゃったわね。おはよう直子。今日は日曜日よ」
 お姉さまが苦笑いを浮かべ、ご自分のデスクらしき場所の、このお部屋で一番立派な椅子に、背もたれに背中を預けるようにドスンと腰掛けられました。

「もうここまで来ちゃったら、もう少しくらい遅くなっても同じよね。コンベンションは夕方からだから、昼頃までは眠れるし、新幹線で寝たっていいし」
 独り言みたいなお姉さまのつぶやき。
「だからここは、自分の欲求に素直になっていいと思うの。ねえ、直子もそう思わない?」
 急に尋ねられ、きょとんとする私。
「あの、えっと、そうですね・・・」

「そうよね?よし、決めた。直子、こっち来て」
 お姉さまが座ったまま手招き。
「は、はい」
 きょとんとしたままお姉さまの傍らに近づきました。

「あたしもだいぶ直子のスケベさに毒されちゃったみたい。自分のオフィスを初めてノーパンでうろうろして、直子の廊下オナニーを見て、また疼いちゃったみたいなのよ」
「ほんの数時間前に直子にスッキリさせてもらったばかりなのにね」
 自嘲気味な笑顔の後、お姉さまの瞳がトロンと蕩けました。
 
 お姉さまの両手が動いた、と思ったらタイトスカートの裾に指がかかり、そのまま自らその裾をたくし上げました。
 今はノーパンのお姉さまですから、白い下腹部とかっこよく揃えられたお姉さまのヘアが露になりました。

「舐めて、直子。今度は舐めてあたしを気持ち良くして」
 椅子の背もたれにそっくり返るように身を沈めるお姉さま。
 そのぶん下半身を前に突き出すような格好になり、緩く開いた両腿のあいだが濡れて光っているのまでわかりました。

「はい。お姉さま、よろこんで!」
 お姉さまの太腿のあいだにひざまずき、喜び勇んで顔を股間に埋めます。
 お姉さまの香り、お姉さまのお味、お姉さまのぬめり。

 ピチャピチャピチャ
「あん、そう、そこよ・・・」
 ピチャピチャピチャ
「そう、もっともっと、奥までぇ・・・」
 ピチャピチャピチャ
「そこそこそこ、もっと、もっとぉぉ・・・」
 ピチャピチャピチャ
「いいっ、いいっ、いいいーーっ!」
「あーーーーーーーーっ!!!」

 先ほどよりもたくさん濡れていたお姉さまは、私の廊下オナニーと同じように、ほんの数分で全身を震わせながら歓喜のお歌を高らかに謳いあげられました。

 しばらく背もたれに身を任せ、ぐったり横たわっていたお姉さまが、やがてむっくり起き上がりました。
「ああ気持ち良かった。直子って本当に上手よね、指も舌も。シーナさんが手放したくない気持ちもわかる気がするわ」
 スカートの裾を直して、立ち上がりました。
「これでスッキリ。帰ったらグッスリ眠れそうよ。ありがとね、直子」

「さあ、掃除用具を戻して、とっとと帰りましょう!」
 デスクに置いてあったバーキンを手に取り、ロッカーからスーツジャケットを取り出すお姉さま。
「直子は悪いけれどバケツとショッパー持ってね。お洗濯もお願いね。私物はある?忘れ物しないようにね」
 テキパキとご指示くださり、モップを手に取り、スタスタとお部屋を後にするお姉さま。

 えっと、着てきたショートジャケットとハンドバッグは応接のお部屋に置いたきりだったっけ?・・・
 そこまで考えたとき、もっと根本的な問題が残っていることに気がつきました。

「ちょ、ちょっと待ってくださいお姉さま!」
 あわててお部屋を飛び出し、のんきにカーテンや戸締りの確認をされていたお姉さまに詰め寄りました。
「あら、どしたの?はい、これが直子の上着とバッグね。これでもう忘れ物はない?」
 明らかに気がついているクセに、確信的にとぼけていらっしゃるお姉さま。
 目と唇が愉しそうに笑っています。

「わ、私に、こんな姿のまま何も着ないで帰れ、という、ご、ご命令なのですか?」
 自分で言った被虐的な科白に、性懲りも無くズキンと疼いてしまう自分のからだがうらめしい。
「そうねえ。直子が着てきたニットワンピはもうこのバッグにしまっちゃったし。そうなるかしらねえ」
 あくまでもイジワルなお姉さま。

「そのジャケットがあるじゃない。それを羽織れば、おっぱいだけは隠せるのじゃなくて?」
 確かにその通り。
 丈がウエストにも届かないこんなジャケットでは、おっぱいだけしか隠せません。
 下半身丸出しです。

「それにここからは、まずオフィスを出て、エレベーターに乗るでしょう?エレベーターは地下の駐車場まで直通だし、駐車場まで行っちゃえばあたしの車に乗るだけ。車に乗っちゃえば下半身は外から見えないわ」
「車に乗るまでに誰かに会う可能性は無いわよね?問題になるのは、エレベーターホールとエレベーターと、たぶん駐車場にもある監視カメラ」
「でも直子って、目立つヘアが無いツルツルパイパンだし、肌も白くてハリもあるから、ジャケット羽織っていれば下半身はベージュのレギンスとかスパッツ穿いているようにも見えなくはないんじゃないかしら。遠目なら」

「あと考えられる危険は、エレベーターに他の階から誰か乗って来ちゃったとき。そうなったら完全にアウトだわねえ。それと、直子が車を降りて、自分の部屋に入るまで。こっちはあたしの知ったことではないけれど、マンション入り口までは責任持って送ってあげるつもりよ」
「けっこうリスク低いと思わない?どう?やってみたくなってきたでしょう?露出狂ヘンタイマゾの森下直子さん?」
 私をからかうのが愉しくて仕方ないご様子のお姉さまは、饒舌です。

 私は、そんなお姉さまを半泣きのジト目でじっと見つめていました。
 どうかお許しください、という気持ちと、お姉さまと一緒なら、そんな大冒険も案外すんなり果たせそうという好奇心が小さく鬩ぎ合っていました。
 だけどやっぱり、ここから自分の家まで、ずっと下半身丸出しで帰る、という行為は無謀過ぎる、という臆病風が気持ちの大半を占めていました。

「そんな辛そうな目で見られると、直子の場合、ますます虐めたくなっちゃうけれど、あたしも無駄にそんな社会的にリスキー過ぎることを命令するほどバカな経営者じゃないわ」
「直子はうちの大切な社員だし、あたしのかわいいスールでもあるのだもの」
 お姉さまが私の顔を覗き込んで、ニコッと笑ってくださいました。
 あ、いえ、ニヤッだったかもしれません。

「さっきそのロッカーでいいものみつけたのよ。去年の秋もののサンプルなのだけれど」
「直子はこれを着て帰りなさい。もちろんチェーンは着けたままで」
 お姉さまが壁際のロッカーから何か取り出しました。
 

面接ごっこは窓際で 10


2015年4月5日

面接ごっこは窓際で 08

 お姉さまのおみあしを丁寧にお拭きした後、同じタオルで自分のからだを拭き始めました。
 テグスで絞られている敏感乳首がタオル地のザラッとした感触に擦れて性懲りも無く、いっそう硬く大きく、尖ってしまいます。

「拭き終わったらタオルちょうだい。持って帰って洗濯しておくから」
 お姉さまが窓辺のロールカーテンを降ろしながらおっしゃいました。
「あ、はい」
「もう11時過ぎていたのね。すっかり長居しちゃった。さくっと後片付けして帰りましょう」
 床やテーブルの上に視線を走らせるお姉さま。
 そこかしこに私のはしたない水溜りが残っていました。

「掃除用具を取ってこなくちゃ。ついてきて」
 お返ししたタオルを手にツカツカとお部屋の出口へ向かうお姉さまを、あわてて追いました。
 
 ドアを開けると、デスクやOA機器が整然と並ぶ明るく健全なオフィス。
 その日常的な光景を目にした途端、そんな場所で裸になっている自分の非常識さに、今更ながら立ち眩みしそうなほどの羞恥が襲い掛かってきました。

「あの、お姉さ、あ、いえ、チーフ・・・私、本当にこのまま、廊下に出なくてはいけないのですか?」
 水道やおトイレといった水周りは、オフィス外にある、というお話でした。
「最初に言ったじゃない?いくら汚してもいい代わりに、あなたが裸で用具を取ってくるのよ、って」
「はい。それはそうなのですけれど・・・でも、だいじょうぶ・・・なのですか?」

「種明かししちゃうと、ここのフロアって、うち以外どこも暇そうなの。平日でも人をあまり見かけないくらい」
「夕方の六時過ぎにはどこも電気が消えているし、土日祝日に誰か来ているの、見たことない。まるでお役所仕事」
「それでちゃんとお給料貰えるなら、羨ましい限りよね」
「だから100パーセント、今このフロアにはあたしたちしかいないって断言できるわ」
 お姉さまがなんだかフクザツそうに笑って、つづけました。

「まあ、リスクが無い分、スリルも無いけれどね。でも、このビルのフロアを真っ裸で歩くなんて、そうそう経験出来るものではないでしょう?」
「嬉しいのではなくて?露出狂ヘンタイマゾの森下直子さんにとっては」

 確かに今の種明かしを聞いて、やってみたい気持ちがグングン膨らんでいました。
 だけど、これだけお膳立てを整えていただいてもまだ一抹の不安を感じて、尻込みしてしまうのが私の臆病者たる所以です。

「でも、ひょっとしたら監視カメラとか、えっと防犯カメラかな、そんなようなのが廊下に設置されていたり・・・」
 オフィスの壁際に置かれたクロゼットみたいのを開けてゴソゴソやっていたお姉さまの動きが、ピタッと止まりました。

「それは一理あるわね。ここのセキュリティ、凄いから。一階に警備センターがあるのよ。監視モニターがずらっと並んだ」
 お姉さまが振り返りました。
「あそこに乳首からチェーンを垂らしただけの全裸の女が映ったりしたら、大騒ぎになりそうね」
 お姉さまったら、すっごく愉しそうなお顔。

「だけどやっぱり、めんどくさいことになったら困るから、一応何か一枚羽織って行くのが無難かな。何かあったかしら?」
 クロゼットに向き直ったお姉さまが、少しのあいだ中を物色されてから、扉を閉じました。

「ここには普通ぽい服しか入っていないわ。そんなのわざわざ着るのもつまんないし」
「それでしたら、あの、さっきまで着ていたニットワンピを・・・」
「あれはだめよ。持って帰って、直子専用にギリギリまで裾上げして、超ヘンタイエロワンピに魔改造するのだもの。もうあたしのバッグの中にしまっちゃったわ」
「えっ!?」
 そうなると私は、一体どんな姿でお家まで帰ることになるのでしょう・・・

「あ、なんだ。これでいいじゃない。とりあえずこれ巻いておきなさい」
 お姉さまが差し出してきたのは、さっきからだを拭いたキャラクター柄のバスタオルでした。
「これ、ですか?」
「そう。直子のいやらしいおツユがいっぱいしみ込んだバスタオル。あ。あたしのもついてるか」

 手渡された、全体にじっとり湿ったバスタオルを広げ、両腋の下から巻き付けました。
「お風呂上りみたいで、何かヘンじゃないですか?」
「ううん。ばっちりよ。監視カメラなんて、たいして画質良くないはずだし、きっとベアトップのワンピでも着ているみたいに見えるはずよ」
「夏場なら、うちにはもっとキワドいファッションでキメたモデルの子とか来ているからね。今までそれでビル管理側から何か言われたこともないわけだし」
「さ、行きましょう」
 数枚の新しいタオルをビニールの大きなショッパーに詰めて肩に提げたお姉さまが、私の右手を取りました。

 フロアの廊下にも煌々と電気が点いていました。
「ここって24時間、出入り出来るのですか?」
「それはそうよ、会社だもの。仕事したいときにオフィスに入れなかったら仕事にならないじゃない」
「電気代が大変ですね?」
「ああ、そういう意味ね。このフロア内にどこのオフィスの社員が残っているのか、ということは、さっきエレベーターでかざしたカードで警備センターに把握されているの。オフィスに入るときもかざしたでしょ」
「だから、その社員が帰ってオフィスが施錠されない限りは、周辺の通路にも電気が点いているっていうわけ」

 オフィスの出入り口からおトイレらしき一画までは、すぐでした。
 20歩も歩かないくらい。
 お風呂上りみたいなバスタオル一枚の裸足で、近代的なビルの明るく照らされたリノリュームをぺたぺた歩いていると、自分が何かとんでもない事件、たとえば誘拐とか人質とか、に巻き込まれて、犯人に無理矢理着衣を奪われ、従わされているような妄想が浮かび、ゾクゾクと興奮してしまいました。

「まずトイレ入って、もう一度かからだを拭いたほうがいいわね。タオル濡らして」
 お姉さまが女子トイレのドアを押しました。

「はい。このタオル濡らして拭いて。ブラシもあるから髪の毛もちゃんと直しなさい」
 ショッピングモールにあるのと同じくらい、いえ、それ以上に清潔でゴージャスな広いおトイレに唖然としている私を、洗面台と言うよりパウダールームと呼ぶべき大きな鏡の前に立たせたお姉さまは、当然のようにスルッと、私のバスタオルを剥ぎ取りました。
「ああん、いやんっ」

 大きなチャームをぶら下げて恥ずかしく尖りきった私の乳首を、曇りひとつ無いピカピカな鏡面が生々しく映し出しました。
「ここには絶対、監視カメラなんてあるはずないからね。もしあったら、それは別の意味で大問題だわ」
 ニヤニヤ笑いのお姉さまが、鏡の中の私をじっと見つめてきます。
「直子の裸って、本当にエロいわよね。またいたずらしたくなっちゃうけれど、そうやってると、いつまでたっても帰れないから、残念だけれど早く終わらせちゃいましょう。からだ拭いちゃって」

 鏡に映った全裸にチェーンだけ垂らした私と、ブラウスにタイトスカート姿のお姉さま。
 水道からお水を流してタオルを濡らし、おのおの顔やからだを拭き始めました

「そっちの乾いたタオルも使っていいからね。使い終わったらそのショッパーに入れといて。持って帰って洗濯してくるから」
「あ、そんなの私がやります。私が持って帰りますから」
「そう?なら頼んじゃおうかな。直子の家のほうがここから近いしね」
 お顔を洗い、髪を直し、おみあしも拭き終わったお姉さまがそうおっしゃって、それから少し思案顔。

「ああ、やっぱりもう我慢出来ない!」
 お姉さまがイヤイヤするみたいにお顔を振りながら突然おっしゃいました。
「えっ?どうされたのですか?」
 ひょっとして、私へのいたずらが我慢出来なくなったのかも、なんてえっちな期待を込めてお尋ねしました。

「さっきからずっとモヤモヤしていたのよ。ほら、あたしのパンツ、濡れたままじゃない?」
 お姉さまが眉をしかめて、本当にイヤそうなご様子でおっしゃいました。
「歩くと内股にまとわりついちゃって、本当に気持ち悪いの。おまけに直子にクロッチの脇から手を入れられたおかげで伸びちゃってるみたいだし」
「いっそ脱いじゃったほうがスッキリしそう。ノーパンになっちゃうけれど、真っ裸の直子よりはマシよね」
 おっしゃるなり、タイトスカートの裾を少しズリ上げ、両手でスルスルッと黒いショーツを下ろされました。

「うわー、ベットベトのよれよれ。これもみんな直子のせいなんだからね」
 サイド部分を右手の指先でつままれ、私の目前にぶら下げられた黒くて小さな布片。
「もう捨てちゃうしかないかな?気に入ってたんだけどなあ」
 お姉さまが薄く笑いながら私の顔の前で、その黒い布片をぶらぶら揺らしました。

「だめです!もったいないです。私がお洗濯してきます」
 ねこさんが目の前でねこじゃらしを振られたみたいに、反射的に手が出て、その布片を掴んでいました。
 クロッチのところをもろに掴んだので、手のひらがべっとり濡れました。

「うふふ。そんなこと言って、家に帰ったらあたしのパンツをおかずにしてまたオナニーする気でしょう?」
 お姉さまのショーツをそそくさとショッパーに仕舞い込む私の背中に、お姉さまのからかうようなお声が突き刺さりました。
 私はみるみる全身がカァーッ。

「ほんと直子って面白い。いいわ。お洗濯、頼んだわよ。ビデで洗ってくる」
 お姉さまが個室に向かいます。
「あ、それなら私も」
「あら直子、オシッコ?」
「はい」
「だったら、し終わったらラビアクリップも着け直しなさい。やっぱり3本繋がっていたほうがエレガントだもの」
「・・・はい」

 お姉さまとお隣同士の個室に篭り、まずはオシッコ。
 垂れ下がっているチェーンにかからないように手で持っていると、強く引っぱりたい衝動に駆られますが、じっと我慢。
 終わったらビデで洗浄、温風で乾燥。
 テグスに絞られたクリットをも温風が激しく撫ぜて、いつまででも浴びていたいほど。

 それから、便座に腰掛けたまま両脚をより大きく広げました。
 お姉さまからのお言いつけを守らなければなりません。

 股間を覗き込むと、表面はすっかり乾いたスジが楕円形にパックリ割れていました。
 中は相変わらずヌルヌル潤って、爆ぜた石榴みたい。
 最初にお姉さまが着けてくださった箇所と同じビラビラを指でつまみ、イヤーカフのような形状のラビアクリップに噛ませました。
「はうっ!」
 忘れかけていた疼痛がよみがえり、思わず声が出てしまいました。

「こら直子!中でヘンなことしているんじゃないでしょうね?」
 一足早く個室からお出になっていたお姉さまのお声が、私の個室のドア越しに聞こえてきました。
「あ、いえ、今、ラビアクリップを・・・」
「ああ。そうだったの。あたし、給湯室行ってバケツとモップ取ってくるから、戻るまで待ってて。クリップ着けたら余計なことしてないで、早く出てくるのよ」
「はーい」
 足音が遠ざかり、やがてバタンという音が聞こえました。

 ラビアクリップを左右着け終えると、体温が数度、上がった気がしました。
 ムラムラが懲りもせず盛大に込み上げてきました。
 大開脚したまま温風を当ててみます。
「はうんっ!」
 勢いのある温風がラビアに噛み付いたクリップとチェーンを揺らし、剥き出しの粘膜の奥まで風に煽られます。
「んんーっ」
 風がやんだとき、開いた粘膜から一滴、粘性の雫が糸を引いて便器の水溜りに落下し、水面にピチョンと波紋を広げました。

 個室から出ても、お姉さまはまだ戻られていませんでした。
 鏡の前で手を洗い、自分のからだを映してみます。
 鏡から2メートルくらい離れると下半身まで映りました。

 両乳首にチャーム、アソコのスジの中へ消えていく3本のチェーン。
 身に着けているものはそれだけ。
 昨日まで来たことも無かったオフィスビルのトイレに、ひとりぼっちで全裸の私。

 このままお姉さまが戻って来られなかったらどうしよう・・・
 そんな不安がふと頭をよぎります。
 放置プレイ・・・
 鏡の中の自分をじっと見つめていたら、無意識のうちに両手が動き、頭の後ろに組んでいました。

「あら、また鏡に見惚れていたの?森下ナルシス直子さん」
 このままここに放置されて出るに出られず、夜が明けてたまたま出社した他の会社のお局OLさまに発見され、根掘り葉掘りねちっこく言葉責めされる妄想は、お姉さまのその呼びかけで途切れました。

「あ、いえ、そんなんじゃ・・・」
 ポーズは崩さずにお姉さまのほうへ向きました。
 お姉さまは、片手に青いバケツ、もう片方にモップを持っていらっしゃいました。

「うわ。直子、あなた、また発情しちゃってるでしょ?顔に大きくマゾって書いてある。さてはまた、何かいやらしいことしていたわね?」
「あの、いえ、ちょっと妄想が・・・」
「へー。どんな?」

「あの、私がここに放置されて、知らない女性にみつけられて虐められるっていう・・・」
「呆れた。直子、そういうふうにして欲しいの?お望みならばしてあげるよ?」
「いえ、あくまでも妄想ですから。現実になったら怖過ぎます・・・」
「それで、その妄想のお相手は誰だったの?あたしの知っている人?」
「いいえ。ご中年のおばさまで・・・」

 そのとき思い浮かべたのは、大学一年の秋、初めて裸コートをした勢いで調子に乗り、お浣腸のお薬を対面で買う、という課題を自分に課して訪れた薬局のお優しげなおばさまとやりとりしているとき、お客様として来られた水商売らしきおばさまでした。
 そのおばさまは、なんて言うか、何でも見透かしているふうで、そのときも、私が裸コートなことにたぶん気づかれてしまった、と思わされたのでした。
 その印象が強烈だったので、それ以降も、被虐的な妄想に耽るときの一番非情な女性、言わばラスボスとして、頻繁にご登場いただいていました。

「ふうん。裸コートの話は聞いていたけれど、その薬局での話は初耳だわ」
「そうだと思います。今まで誰にもお話したことないですから。シーナさまにも」
「そうなんだ?百合草女史にも?」
 私の白状を聞いて、シーナさまにもお教えしなかったお話と知って、お姉さまが俄然、興味を持たれたようでした。

「・・・はい」
「なんで?」
「あの、えっと、何て言うか、シーナさまにお話したら、すぐにもう一度その薬局さんに連れて行かれると思ったので・・・」
「あの人ならそうするでしょうね。だから言わなかったんだ?それなら今度、あたしと行こうか?」
「あ、えっと・・・」
「うふふ。冗談よ。直子って、そんな感じでまだまだ自分の胸だけにしまっている秘密がありそうね」
 お姉さま、なんだか愉しそう。

「それに、今の話を聞いて直子ってやっぱり、心の奥底でもっともっと絶望的な、破滅的な状況を欲しているみたいにも感じたわ。取り返しのつかない事態に陥りたい、滅茶苦茶になってみたい、みたいな」
 私の目をじーっと覗き込んでくるお姉さま。

「あの、えっと、それは・・・」
「まあ、とりあえずあたしは、直子が百合草女史やシーナさんからされたことの記憶を、あたしの手でひとつひとつ丹念に上書きすることが当面の目標なの」
「縛られたり、鞭打たれたり、浣腸されたり、人前で裸になったり、そういうときに真っ先に思い出すのがあたしの顔になるように、直子を変えていくつもり」
「そうしているうちに、やがて直子が心の奥底で望んでいるような状況にもたどりつくはずだから、直子は安心して、ずっとあたしのそばにくっついていなさい」

 それって、いつかお姉さまが私を滅茶苦茶にするおつもり、ということなのでしょうか・・・
 お姉さまが淡く微笑みながら右腕を伸ばし、5点留めチェーンをクイッと引っぱりました。
「ああんっ、お姉さまぁぁ!」

「ま、それはそれとして、早く掃除しちゃいましょう。直子は重いけれどそれを持って」
 床に置かれた、お水をなみなみとたたえた青いバケツを指さしました。
 もう少しチェーンで虐められることを期待していた私は、渋々ショッパーを覗き込み、バスタオルを引っ張り出そうとしました。

「ううん。バスタオルはいらないわ。そのままオフィスに戻るの」
「えっ?でも・・・」
「さっき給湯室に行きがてら、監視カメラがあるかどうか、フロアをじっくり見てきたのよ」
 お姉さまがショッパーに突っ込んだ私の手を取って戻し、つづけました。

「結論から言うと、カメラがあるのはエレベーターホールと避難階段入口の二箇所だけ。ここからオフィスまで戻るだけなら映らないの」
「だから直子は、その破廉恥な格好でフロアを歩き回ってもぜんぜん大丈夫だったのよ」
 ニコッと微笑むお姉さま。
 右手でモップの柄を掴み、左手に使用済みタオル類の詰まったショッパーを持ちました。

「バケツ持ってね。さあ行きましょうか、露出狂ヘンタイマゾの森下直子さん?」
 お姉さまがおトイレのドアを勢い良く開けました。


面接ごっこは窓際で 09


2015年3月29日

面接ごっこは窓際で 07

 テーブルの上で横座りにへたりこみ、はあはあと肩を上下させている私。
 焦らしに焦らされた見返りは、めくるめく強烈なエクスタシーでした。

 テグスで絞られて敏感になり過ぎた3箇所の突起は、少し触れただけでもその瞬間に快感が全身を駆け巡り、からだ中の細胞が溶けて流れ出してしまいそうなほどの恍惚感。
 だからこそ、より強く、より激しく、より痛く。
 どんなに嬲っても淫らな悲鳴しかあげない貪欲なからだを夢中で甚振りつづけ、つづけざまに何度も何度も甘美な絶頂を味わいました。

 早鐘のようだった鼓動がようやく収まり、伏せていた顔を上げてみました。
 乳首とクリトリスを繋いでいるチェーンは、はずれずにそのまま私のからだを飾っていました。
 充血が落ち着いたからでしょう、3箇所ともテグスの絞る力が弱まっている気がしました。
 ラビアを抉じ開けていたクリップは、いつのまにかふたつともはずれ、だらしなくぶら下がっていました。
 テーブル上の私が腰を着けていた一帯が、粘性の液体でヌルヌルに濡れていました。

「いい写真が撮れたわよ」
 傍らにいらしていたお姉さまが、私の鼻先に履歴書を突きつけてきました
「ほら、いい顔でしょ?これこそ本当の、あなたらしい表情よね?」
 履歴書の写真の欄、リクルートスーツで心細そうな顔をした自分の写真が貼ってある場所のその上に、本来の写真を覆い隠すように、一枚のチェキがペーパークリップで留めてありました。

 眉間に悩ましくシワを寄せ、顎が上がってのけぞり気味な私の顔のどアップ。
 両目とも大きく見開かれ、半開きになった唇の端からはよだれが一筋垂れています。
 汗ばんだ額や頬に髪がまばらにへばりつき、顔全体が興奮で紅潮しています。
 荒くしているであろう鼻息、喉の奥から洩れているはずの喘ぎ声まで今にも聞こえてきそうなほど、生々しい写真でした。
 自分がイッている、まさにその最中の顔だということが一目でわかりました。

「何度目かにあなたが、イっちゃぅー、って叫んだときのものよ。これがベストショットね」
「どう?この表情。えっちとかすけべなんて次元はとっくに通り越して、まさに淫乱、卑猥そのものって感じよね」
 愉快そうにおっしゃりながら、私の顔を覗き込んでくるお姉さま。

 お姉さまと視線を合わせると、お姉さまの.瞳が爛々と輝いているのがわかりました。
 その妖しい輝きの意味を、まだ数回だけのお姉さまとの逢瀬でしたが、私はすでに理解していました。
 お姉さまも発情されている。
 ご自分の昂ぶりを発散したがっていらっしゃる。
 あたしも気持ち良くしなさいとご命令されている。

「これで履歴書も完璧。今の面接で、あなたがどんな女性なのかも充分わかったし、おーけーよ。あなた、採用してあげる」
 高飛車におっしゃて、お部屋の入口ドア近くまでゆっくり歩いていかれました。
 そこに置かれている、パソコンの大きなモニターが設置された立派なデスクの上に私の履歴書を置き、再び私が横たわるテーブルの傍らへ優雅な足取りで戻ってこられたお姉さま。
 私を見下ろして、お言葉をつづけました。
「最後に、あたしへの絶対の忠誠心を示してくれる?あたしのため、そして会社のためなら何でもやります、っていう覚悟のほど、みたいなのをね」

 唇の端だけで微笑んだお姉さまは、それまで座っていた椅子をテーブルから離すように後方へ移動させてから、その椅子にストンと腰を下ろされました。
 それから右脚だけ軽く跳ね上げ、ベージュのストッキングを優雅に脱ぎ始めました。
 濃茶のタイトスカートが割れて、お姉さまの股間が覗けそう。
 テグスの締め付けもさほど感じられないくらい大人しくなっていた私の3箇所に血流が戻り、テグスが突起に食い込み始めるのがわかりました。

 右脚のストッキングだけ脱ぎ去ったお姉さまは、そのスラッとした生美脚をまっすぐ私に向けてきました。
 左脚は床に下ろしたまま右脚だけを伸ばしているので、タイトスカートの奥の黒っぽい下着までうっすら見えていました。

「舐めなさい」
 足先を私に向けたままでの、はっきりとしたご命令口調。
「そこから降りて、床にひざまづいて、あたしの足をあなたの舌でキレイにしなさい」
 抑えたような低い声音のご命令に、私のマゾ性がゾクゾクっと完全復活しました。

「は、はいっ!よろこんで、精一杯ご奉仕させていただきます」
 あわてて上体を起こすと、乳首からぶら下がったチャームふたつが大げさに揺れ、じれったい疼痛がぶり返してきます。
 テーブルの端まで裸のお尻を滑らせて、慎重に床に降り立ちました。

 正座するようにお姉さまの足元にひざまずくと、お姉さまは私の口元まで、足先を下げてくださいました。
 目の前に突き出されたお姉さまの右足の親指に、口を大きく開けてむしゃぶりつきました。

 最初は少し酸っぱいような味が口中に広がり、すぐにしょっぱく感じるようになって、やがて甘くなりました。
 お姉さまの右足首に軽く手を添えて、親指から小指まで一本一本丁寧に頬張ります。
じゅる、じゅる、じゅる。
 ひと通りしゃぶり終えてから、今度は足の裏、踵、爪、足の甲まで、よだれを滴らせては舌でベロベロと舐め上げました。

 ご奉仕しながら目線を上げると、お姉さまはうっとり、気持ち良さそうに目を閉じていらっしゃいました。
 最初はピンと一直線に伸ばしていらしたおみあしも、私に足首を取られて膝が大きく折れています。
 その結果、タイトスカートの裾が腰のほうへとせり上がり、スカートの奥がハッキリ見えていました。
 私はもちろんご奉仕の舌は止めずに舐めまわしながら、お姉さまのスカートの奥に目を凝らしました。
 一見して分かるほど、黒いショーツのシースルーっぽい薄い布地が、肌に貼り付くようにベッタリと濡れていました。

「そのくらいでいいわ」
 お姉さまのその部分に、今すぐにでも手を伸ばしたい欲求と必死に戦っていた私の頭上から、お声が降ってきました。
「一度やってみたかったのよね、ひざまづいて足をお舐め、って。気持ち良かった」
「最後にあたしの右脚、好きなだけ貸してあげるわ。今日の面接で頑張ったご褒美よ。そこにしゃがみなさい」
 お姉さまの右足がクイクイっと、手招きならぬ足招きをしました。

 正座を解き、両足裏を床に着けてしゃがみました。
「もう少し前に来なさい。そう。それと両膝は思い切り広げておきなさい。あなたのご自慢のパイパン性器を見せびらかすみたいにね」
 右脚をぶらぶらさせて、からかうようにおっしゃるお姉さま。

「あら、ラビアチェーンは両方ともはずれちゃったんだ」
「あ、着け直したほうがよいですか?」
 しゃがむと同時に両手を後頭部で組んでしまう、根っからマゾな私。
「ううん。そのままでいいわ」
 おっしゃりながら、しゃがんだ私の股間と床とのあいだの20センチくらいの空間に、お姉さまの右足が侵入してきました。

「はぁうっ!」
 不意にお姉さまの足の甲が、私の股間にペタンと押し付けられました。
「うわ、熱い。それにヌルヌル。あなた、さっきあれだけイったのに、もうこんなに復活していたんだ。呆れた」
 お姉さまが足の甲で私の股間を軽く蹴り上げるみたいに、グイグイと圧し着けてきます。
 爪先が私のアナルの辺り、そして足の甲から足首までで私の性器全体を包み込むみたいに密着させ、小刻みに擦り付けてきます。
「あんっ、あんっ、あんっ」
 気持ち良さに堪えきれなくなった私は、後頭部の両手を解いて床に後ろ手を突き、下半身をグッと突き出す形になりました。

「ああぁーーっ!」
 股間に密着していた足がいったん引き、今度は私の膣穴めがけて、爪先が進入して来ました。
「ほら、あたしの足であなたの性器を犯してあげる。直子がジュルジュルしゃぶってキレイにしてくれた、あたしの足の指でね」
 お姉さまの足の親指から中指くらいまでが、私のアソコにズブリと挿さっています。

「直子の淫乱マンコでも、さすがに足の指全部は咥え込めないみたいね」
 わざとイジワルくお下品におっしゃって、足先を乱暴にぎゅうぎゅう押し込んでくるお姉さま。
「あ、いいっ、もっと、もっとぉ」
「ヌルヌルのジュブジュブね。ほら、直子も自分で腰動かして、もっと気持ち良くなれるように工夫なさい」
「はいぃ、あんっ、そこそこそこぉ」

 お姉さまの足先をもっと深く迎え挿れようと、お尻を上下させながら喘ぎます。
 からだを揺らすと乳首のチャームも揺れて、突起がますます硬くなり、テグスが食い込んできます。
「中がすっごく熱くなっているわね。どう?イキそう?」
 お姉さまの足がますます乱暴に粘膜を蹂躙してきました。
「もうちょっと、ああ、もっと、もっとぉー」
 両手を後ろ手に突いているので、思うように自分のからだをまさぐれないもどかしさ。

「ねえ直子?あたし、脚上げているの疲れちゃった。あとは自分で持ってやってよ。太腿まで自由に使っていいから」
「あ、はいっ!」
 そのお言葉を待っていました。
 急いでからだを起こし、しゃがみ姿勢に戻りました。

 お姉さまの足が私の性器から離れ、だらんと床に着地する寸前に、両手でそれを捕まえました。
「直子って、あたしの膝小僧、大好きよね?いつもオマンコ、グイグイ圧し付けてくるもの」
 ふたりで眠る前とか、普通にベッドで愛し合うときは、私が仰向けに寝そべり、お姉さまが覆いかぶさる形でからだを重ねていました。
 いつも最初にするのは、重なってキスをしながら、お姉さまの膝で私の両脚が割られ、私の性器をその膝頭でグイグイ虐めていただくことでした。

「それではお姉さま、おみあしを失礼させていただきます」
 お姉さまから私への呼びかけが、あなた、から、直子、に変わったことで、面接ごっこは終了し、プライベートタイムに入ったと判断した私は、思い切って、お姉さま、と呼びかけました。
 お姉さまからお咎めは無く、私を見つめて薄く笑っています。

 安心した私は、お姉さまの右足首を左手で持ち、ゆっくり立ち上がりました。
 お姉さまの右脚も上に上がって、大開脚状態になりました。
 お姉さまのタイトスカートは、すでにすっかり腰骨辺りまでせり上がり切り、白い内腿とその奥を隠す黒い布地全部が露になっています。
 それでもお姉さまは薄く笑っていらっしゃるだけ。
 これはもう、完全に誘っていらっしゃるのでしょう。

 脛に跨って股間に押し付けました。
「はうんっ」
 私が持っているお姉さまの足首は私の愛液でベトベト、お姉さまのスリムな脛はスベスベです。
 そのスベスベの脛に股間の唇を圧し付け、滑らせるように腰を前後に振り始めます。
「あん、あん、あーんっ」
 お姉さまの滑らかな脛に私のいやらしいラビアと粘膜をヌルヌル擦り付けます。
「あ、いいっ、あん、あん」
「いやらしいダンスだこと。腰をカクカクさせて、サカッたワンちゃんみたい」
 私をじっと見たまま、からかい口調のお姉さま。

 お姉さまの生脚に性器を擦りつけて感触を愉しみつつ、私はジリジリとお姉さまに近づいていきました。
 膝小僧まで進むと、その丸みが粘膜の奥まで圧迫してきて、その気持ち良さから離れ難く、少し長めに停泊してしまいました。
「あん、あん、あぁんっ」
 腰を前後するたびに、ラビアが摩擦されクリトリスが引っぱられ、どんどん昂ぶってきます。

 でも、ちゃんとお姉さまにも悦んでいただなくては。
 今度はお姉さまと一緒にイカなくちゃ。
 もうすぐ、もうすぐ手が届く。

 お姉さまの太腿に跨るような形になると、ふたりはもうくっついているといっても良いくらいの至近距離でした。
 お姉さまのお顔がすぐそこにあります。
 相変わらず私をまっすぐ見つめ、薄く微笑んでいらっしゃいます。
 私も見つめ返しながら、恐る恐る右手をお姉さまの股間に伸ばしていきました。

 もう触れる、というときに唇が塞がれました。
 もちろん、お姉さまの唇で。
「んふぅぅぅ」
 重ね合った唇の中で、お姉さまの一際熱い吐息を感じたのは、私の指がお姉さまの濡れたショーツに触れた瞬間でした。

 お姉さまのソコもグッショリでした。
 濡れた薄い布越しに、クリトリスが勃起しているのがわかりました。
 お姉さまの太腿の上で腰を小刻みに滑らせながら、しばらくは布の上から、お姉さまの性器を擦りました。
 指の腹でやさしく、慈しむように。
 お姉さまが両手を私の背中に回し、ぎゅっと抱きしめてきました。
 私も空いている左手を、お姉さまの背中に回します。
 唇はずっと重ねたまま。

「んんんーっ」
「んぐぅぅぅ」
 私がショーツのクロッチ脇から内部に指を侵入させると、お姉さまも右手をふたりのからだのあいだに潜り込ませて来ました。
「んぁうぅぅ」
「むむぅぅぅ」
 私の指が、濡れそぼったお姉さまの性器を直にまさぐって膣を割るのと、お姉さまの指が、私のテグスで絞られたクリットをつまむのとが、同時でした。
「あはぁぁーんっ」
「いいいぃぃぃ」
 さすがに互いに頭が後ろにのけぞって唇が離れ、思いがけないほど大きなふたりの喘ぎ声が室内に響きました。

「ああん、お姉さまぁ、もっと、もっとぉ」
「いい、直子、いいわ、そこ、そこよ」
「もっとぎゅっと、もっとぎゅーっとつぶしてぇ」
「あ、あ、いい、そこぉ、奥まで、奥までぇ」
 ふたりして、唇を離し何かを訴えては、すぐにまた相手の唇を求め、貪り合います。

「お姉さま、気持ちいいですか?、いいですか?」
「んんー、直子、かきまわして、もっともっと」
「あ、イキそうです、お姉さま、一緒に、一緒にぃ」
「いいわよ、一緒にイこぉ、一緒にぃ」

 ピチャピチャは上の唇、クチュクチュは下の唇。
 ブラウス越しに、お姉さまの体温がどんどん上がっていくのがわかります。
 それがすごくしあわせ。

「あっ、あっ、イクゥ、いくぅ、いっちゃうぅー・・・!!!」
「いい、いい、いい、の、いく、いくいくいくぅ・・・!!!」

「あーあ。やっぱり服を全部脱いでからすればよかったかな。ブラウスもスカートもよれよれのベトベト」
 抱き合ったまましばらくぐったり、昂ぶりの余韻がようやく引いた頃、お姉さまがお顔を上げて小さくつぶやきました。

 そのお声に、私があわててお姉さまの腿から降りると、お姉さまも立ち上がりました。
「あ、あの、ごめんなさい・・・」
 確かにお姉さまの純白のブラウスは、あちこちよだれに濡れて肌に貼り付いていました。
 濃茶のタイトスカートにも、飛び散ったふたりの愛液らしきシミがそこここに出来ています。
 申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。

「直子が謝ることではないわ。自分の職場でえっちなことするために自ら裸になることに、なんだかワケの分からない罪悪感を感じてそうしなかった、全部あたしのせいだもの」
「直子にはわからないでしょうけれど、自分が普段働いている見慣れたオフィスで全裸になるのって、けっこう勇気がいることなのよ。背徳感って言うか」
 苦笑いしながら、お姉さまが左脚のストッキングもお脱ぎになりました。
「片方だけ穿いてるのって、おかしいものね」
 今度は愉快そうな笑顔のお姉さま。

「直子はいいわよね。真っ裸だからタオルで拭くだけでいいんだもの。はい」
 お姉さまから、海沿いのレジャーランドのキャラクターが描かれた可愛らしいバスタオルを差し出されました。
 お姉さまも同じような柄のタオルで、ご自分の右脚を拭き始めます。
「あ、だめです。私がやります」
 私は急いでお姉さまの足元にひざまずき、自分に渡されたタオルでお姉さまの右脚を拭き始めました。

「あら、気が利くのね」
「いえ当然です。だって私はチーフのドレイ秘書ですから」
「今、この部屋って、すっごくいやらしいふたりの臭いが充満しているのでしょうね」
 お姉さまが久しぶりに、真夏の向日葵のようにニッコリ艶やかに微笑まれました。


面接ごっこは窓際で 08


2015年3月23日

面接ごっこは窓際で 06

 お姉さまのお姿が、見つめていた窓ガラスの端に映りました。
「持ってきたから、降りていいわよ」
 振り返るとお姉さまが、すぐそばまでいらっしゃっていました。

「あらら。ずいぶん垂らしちゃったのね。そんなに感じちゃったんだ?窓辺の裸マネキン」
 私の足元の水溜りに気がついて、苦笑いのお姉さま。
「これでそこ、軽く拭き取っておいて」
 ウェットティッシュが差し出されました。

 両脚をはしたなく開いて床に降りると、テーブルの上に藍色の大きめなビロードケースが置いてありました。
 可愛いハート型の、たぶんジュエリーケース。
 テーブルを挟んで立ったまま向かい合う形で、お姉さまがそのケースをパカッと開けられました。

「ほら、綺麗でしょ?」
 中には、ところどころに色とりどりの綺麗な宝石を散りばめた、ネックレスぽい太めシルバーチェーンがアバウトなハートの形状に横たわっていました。
 でも、ネックレスにしてはチェーンがかなり長すぎるような。

「何だかわかる?」
「えっと、アクセサリーですよね?だけど先ほど、お姉さ、あ、いえ、チーフが、使いようによっては痛かったり、とおっしゃったので・・・」
 私が思いついたそのものの名称を、正直に告げていいものか、一瞬迷いました。
「その答え方だと、もはや何なのかわかっているようね?言ってみなさい」
 お姉さまに促され、思い切ってお答えしました。
「ニップルチェーン・・・とか?」

「へー。そんな言葉まで、知っているんだ」
 感心したお声をあげたお姉さまでしたが、すぐに何か思いついたようで、お声のトーンがガクンと下がりました。
「ああ、シーナさんでしょう?着けたこともあるの?」
「あ、はい。以前シーナさまからチョーカーをいただいて、それに追加する形でニップルチェーンも・・・」
 
 エステに通い始めた年のシーナさま主催クリスマスパーティに、それを着けただけの裸サンタコートで出席させられ、恥ずかしいあれこれをみなさまの前でいろいろやらされたのでした。

「そっか・・・これもシーナさんの後追いになっちゃうのか。ちょっとがっかり」
 気落ちされたようなお姉さまに、私はあわてて言葉をつづけました。

「あ、でも、これはそれとも違うみたいです。挟むクリップが付いていないみたいだし、こっちのほうがデザインが断然綺麗でゴージャスぽいし、チェーンもキラキラ光っていて豪華だし」
「それに、シーナさまからいただいたものは、結局、外されたときシーナさまにまた取り上げられちゃったので、今は私の手元にはチョーカーしか無いですし・・・」
 目の前のアクセサリーを見て思った相違点を、そのまま一気にまくしたてました。

「うふふ。今の言いようだと、あなた、これを着ける気、満々みたいね?」
 お姉さまのご機嫌が少し戻ったみたいで、私もホッ。

「これはね、これからいろいろ微調整して、うちのラインナップに加えるつもりなの。今はまだ欧米の同じようなアイテムを真似た試作品段階だけれど」
「ピアスなら、日本でもそれなりに認知度があるみたいよね。でも、そういう場所にピアスって、やっぱり相当ハードル高いし」
「だから、あくまでもノンホールのお手軽ジュエリー。うちではこれをね、ヌーディティジュエリー、って呼んでいるの。アヤの造語だけれどね」
「着けてあげるから、こっちにいらっしゃい」
 手招きするお姉さま。

 お姉さまが手に取って吊り下げたヌーディティジュエリーというものは、ネックレスなんかよりもずっと長く下までチェーンが垂れ下がりました。
 これって、つまり・・・
 お姉さまが私の背後に回り、ネックレスを着ける要領でチェーンを私の胸元にあてがうと、途中からほぼ直線となったチェーンの束が、私の膝小僧近くまでぶら下がりました。

「まだ腕は下ろしていていいわ」
 私の首の後ろで、お姉さまが金具を留めました。
 シルバーチェーンのネックレスが私の胸元を飾ります。
 ペンダントトップにあたる部分にはハート型のピカピカ光った綺麗な赤い石が埋め込まれ、その下にもまだ、複数のチェーンと飾りのようなものがぶら下がっています。

「おーけー。こっちを向いて、いつものポーズになりなさい」
「はい」
 お姉さまと向き合って、両手を重ねて後頭部にあてがう私
 お姉さまのふたつの瞳が、私の尖った左乳首をじっと見つめて、爛々と輝いています。

「ちょっと触るわよ」
 お姉さまの右手が、ハート型の赤い石から垂れ下がっているチェーンを一本選んでつまみ、つづいて左手の指先で、私の左乳首をギュッとつまみました。
「はうっ!」
 左のおっぱいから全身へと、快感の波がジーンと伝わっていきます。

「あなたさっき、シーナさんのはクリップ、って言っていたわよね?それってたぶん洗濯バサミみたいに挟む形式だったのだろうけれど、うちのは違うの。これ」
 右手でつまんだチェーンを、私がよく見えるように顔のほうに掲げてくださいました。
「はうぅ、はいぃ」
 そのあいだもずっと、左の乳首はつままれたまま、ときどき指先でギュウギュウと捏ねられます。
 それが気持ち良くって・・・

 お姉さまが見せてくださったチェーンの先は、チェーンから繋がった太めのテグスが細長く丸まり、輪の形を作っていました。
 今は楕円形状の、人差し指の先くらいなら通りそうなそのテグスのリング根元には、直径5ミリくらいの小さな水晶珠が通してあります。
 その下にぶら下がっているのは、派手めなイヤリングチャームのように、細かい装飾を施したシルバーベースに大きくて赤い石を埋め込んだゴージャスなチャーム。

「もうわかったでしょ?」
 乳首虐めの指先が肌を離れ、代わってテグスの輪が、私の左乳首を緩く囲んでおっぱいに密着しました。
「うちのは挟むのではなくて、し、ぼ、る、のっ!」
 お姉さまの指先が、ご自分のお声のリズムに合わせて、テグス根元の水晶珠をスライドさせました。
 
 テグスのリングに乳首がギュッと絞られて、テグスが乳首側面に食い込んできました。
 乳首の下部に冷たい水晶珠が密着しているのもわかります。
「はうぅぅっ!」
 実家にいた頃、乳首をタコ糸でギュッと縛ったときに味わった感覚の再現。
 あれからしばらくやみつきになっちゃったっけ。

 懐かしい快感に酔い痴れていると、お姉さまの手が私の肌から離れ、今度は乳首が下へと乱暴に引っ張られました。
「はうっ!」
 予期せぬ快感の連続に、はしたない声をあげてしまう私。

 私の乳首からゴージャスなチャームがぶら下がっていました。
 尖るといつもツンと上向きになる私の乳首が、少しうなだれ気味になってしまうくらいの重さがかかっているようです。
 そのぶん、テグスが乳首により食い込んできて、痛いけれど気持ちいい。
「はぁぅぅっー」

「この方式なら、乳首の大小も問わないでしょう?それに、すぐ緩められるし」
「でも今回、ちょっとチャームに使った石が大きすぎて、重すぎるみたいなの。これじゃあ普段使いのアクセとしては使えないから、これは失敗作」
「もちろん商品化するときは、変えるつもりだけれど、あなたにはこれくらいのほうが嬉しいのではなくて?」
 私の淫らに歪んでいるであろう顔をまじまじと見つめながら、嬉しそうにご説明してくださるお姉さま。

「次はこっち側ね」
 右の乳首をつままれました。
「ああぁっ・・・」
「本当、いちいち反応がいやらしい子だことっ!」
 きついお言葉とは裏腹に、お姉さまは嬉々として、私の右乳首もギュウギュウ絞ってくださいました。

 左右の乳首への飾り付けが終わっても、行き場の無いチェーンがまだ垂れ下がっていました。
 おっぱいの谷間からおへそあたりまでは1本のチェーン。
 おへその下くらいに大き目のリングがあって、そのリングからは3本のチェーンがぶら下がっています。
「この3本がどこに繋げられるのか、あなたならすぐにわかるわよね?」
 お姉さまが薄く笑いました。

 左右のチェーンの先には、イヤーカフのような形状のクリップ。
 真ん中の1本には、乳首のと同じようなテグスのリング。
「はい・・・」
 それらが自分のからだに繋げられることを想像して、ゾクッとからだが震えました。
「こっち用のは、着けたことあるの?」
「あの、いえ、ないです・・・」

 正確に言うと、着けようとしたことはありました。
 ニップルチェーンと同じとき、クリットチェーンにも一応挑戦しました。
 でも、そのときのチェーンに付いていたクリップの挟む力があまりにも強すぎ、調節も出来なかったため、噛まれた瞬間すぐイってしまい、それを着けっ放しで歩いたり、何かをするなんていうことは、絶対に出来ないような代物だったのです。
 直子のクリットが大きすぎるのね、ってシーナさまも渋々諦めてくださり、その日はニップルチェーンだけとなりました。

 でも、このリングで締める式のチェーンであれば、クリトリスの根元がテグスで絞られるだけ。
 それはきっと、タコ糸で縛ったときの快感と同じようなものであるはずです。
 こちらも実家にいた頃に体験済みでした

 テグスで根元を絞られ卑猥に腫れた自分のクリトリス。
 その表皮を少し引っ掻いただけでも・・・
 妄想しただけで、全身がウズウズムラムラ疼きまくりました。

「ずいぶん嬉しそうね、あなた、全身からドMオーラが陽炎みたいに立ち上っていてよ?」
 お姉さまの呆れたようなお声。
「このチェーンを全部繋いだら、あなたのオナニーもさぞかし捗ることでしょう。愉しみだわ」
「さあ、あたしが繋いであげるから、そのテーブルの上にあがりなさい」
 お姉さまがテーブルを指さしました。

「えっ?いいのですか?お仕事のご接客でお使いになるのであろう神聖なテーブルを、私のスケベなおツユで汚してしまって・・・」
「だって、あなたが立ったままじゃ、やりにくいじゃない。まさかあたしに、その股の下に潜り込んで着けろ、って言うの? おツユがダラダラ垂れてくるのに。冗談じゃないわ」
「あ、いえ、ごめんなさい」
 お姉さまのお声にイジワルさが増して、私もますますマゾ度アップ。

「ほら、さっさと上がってM字大開脚!」
「はい。それでは失礼します」
 テーブルに手を掛け、まずお尻を乗せて腰掛け、そのままテーブルの中央へとお尻を滑らせました。
「はうん」
 チェーンの端はお姉さまがお持ちになっていたので、からだが奥へ行くとチェーンが張って、繋がった両乳首が引っぱられました。

「上がったら後ろ手突いて腰を浮かせて、あたしが作業しやすいように性器をこっちに突き出しなさい。ほら、もっと脚広げてっ」
 テーブルを見下ろすお姉さまの目線めがけて、だらしなく開いた両腿の付け根部分を、ブリッジの要領でグイッと差し出しました。
 もちろんスジはパックリ割れて、おツユがたらたら内腿を滑っています。

「うわー、びしょびしょね。これじゃあ話にならないわ」
 お姉さまがバッグからウェットティッシュを取り出しました。

「これからあなたの性器をしばらくのあいだ弄るけれど、あなた、絶対イってはだめだからね」
「イキそうになったら必ず教えること。そしたらあたしも、弄るのいったん止めるから」
「もし黙ってイったりしたら、そのとき、あたしたちの関係はすべて終わり。スールも就職も全部解消。その瞬間にあたしはこのオフィスからあなたを裸で叩き出すから、あなたは素っ裸のまま家に帰ることになるの。いいわね?わかった?」
「・・・」
「返事はっ!?」
「はいーっ!」
 私にはぜんぜん、そう出来る自信がありません。

「はうんっ!」
 突然、その部分が冷たいもので覆われました。
「わっ!すっごく熱くなってる。それに後から後から湧き出るから、一枚や二枚じゃとてもじゃないけど拭き取れなさそう」
「んーっ!」
 ウエットティッシュ越しに、開いたアソコの粘膜をゆるゆると撫ぜられました。
 薄い紙越しの愛撫がクリトリスにあたり、ラビアを擦り、私はそのたびにふんふん悶えます。

「きりがないから、こんなものでいいか。うわー。クリットがさっきよりもピンクに膨れてテラテラてかってる」
 アソコを覆う感触が去り、粘膜が空気に曝される気配が戻りました。
 顔を上げると、お姉さまが私のソコをまじまじと覗き込んでいました。

「あなたの性器って、外面は地味なのに中を開くとすごく卑猥よね。大陰唇は肉厚で、小陰唇は結構派手で敏感で、膣壁の粘膜はウネウネうねって」
「だけど何て言っても一番あなたらしいのが、このクリット。いかにも弄って欲しそうに全力アピールしちゃってる」
 おっしゃりながら、ときどき指でラビアを引っぱったりクリトリスの表面をスッと撫ぜたりしてきます。
 私の性器に対するお姉さまのストレートで生々しいご感想に、私のマゾ性が全身震わせて大悦び。

「んーっ!」
 クリトリスに痛痒い甘美な刺激を感じて、思わず大きな声が出ました。
「あら、どうしたの?感じた?これがいいの?」
 ビンカンな表皮を爪でこそっと掻いてくるお姉さま。
「んっ」
 こそっ。
「んんー」
 こそっ。
「あはぁん」
 こそっ。
「だめぇ」

「どうしたの?イキそう?イキたい?」
「ああん。はいぃ、でもだめです。イキたくないですぅ」
「あらどうして?もっと弄ってあげようか?」
「だめですぅ。イキたいけれど、イっちゃいけないんですぅ」
「あら残念」
 こそっと攻撃が止まりました。

「は、早くクリットチェーンを着けてください、着けて私に早くオナニーをさせてくださいぃ」
「あら?あなた、あたしに命令する気?」
「ちがいますぅ、ごめんなさいー、でも、でもぉー」
 こそっ。
「ああーんっ」
 快感がどんどん蓄積されて爆発寸前。

 そのとき突然、クリトリスをギューッと強い力で締め付けられました。
「ああーーーーぁぁっ!だめだめだめぇーーっ!!」
 真っ白になりそうになる頭で必死にブレーキをかけました。
 自分では到底コントロールできない力で、腰がビクンと跳ねました。

「あ、イったわね?今イったでしょう?」
「ちがいますぅ!イってませーんっ。がまんしましたーっ、ぜったいイってませぇん、信じてくださいぃぃ」
「中の粘膜がヒクヒク蠢いているわよ?イったんでしょう?」
「イてってませんーーっ。ほんとうですぅ、ほんとうですぅ」
 半ば泣き声になって訴えました。
 クリトリスがズキズキして、痛いほど腫れているのであろうことが、見えなくても自分でわかりました。

 お姉さまは、イったのでしょう?をくり返しながら、ラビアのあちこちを引っぱってきます。
 幸いクリトリスのほうはそのあいだ、放ったらかしにされたので、こそっと攻撃、ほどではありませんでしたが、それでも愛撫の快感は容赦なく、私を高みへと押し上げていきます。
 私は、違いますぅ、イってませんーっ、と喘ぎ声でお答えしながら、必死で快感に抗い、がまんしつづけました。

「あなたがそこまで言い張るのだから、きっとイってなかったのでしょう。からだ起こしていいわよ。装着完了したから」
 愉快そうなおやさしいお声がして、お姉さまの手が私のアソコから離れても、ソコには異物感?みたいなものが居座りつづけていました。

 浮かせていた腰をテーブルに落とし、クラクラする頭を上げて上半身を起こし、自分の股間を覗き込みました。
 おへその辺りのリングから垂れた3本のチェーンが、それぞれ撓んだ曲線を描いて私のアソコの中に消えていました。

「テーブルの上に立ち上がって、ガラスに映して見てみるといいわ。今の自分のえっちな姿を」
 ご命令通りよろよろと立ち上がり、西北向きのガラス窓に映してみました。
 テーブルは先ほど上ったカウンターよりもさらに高いので、窓ガラスのさらに高い位置に自分の全裸姿が映りました。
 お姉さまが私の股間を、真下から見上げています。

 首からさげたシルバーチェーンのネックレスの、そのハート型のペンダントトップが胸の谷間の始まりあたりを飾り、そこから三方にチェーンが繋がっていました。
 左右に別れたチェーンはそれぞれ、右と左の乳首へと優雅な曲線を描いて繋がれて、それぞれの乳首の下に大きな赤い石の装飾を施したゴージャスなチャームをぶら下げていました。

 ペンダントトップから、そのまま真下へと繋がるチェーンは、おへそのすぐ下で直径2センチくらいのリングに繋がり、そこから再び3本のチェーンに分かれています。
 その3本のチェーンは、わずかなたるみのある曲線を作って、同じ方向へと進んでいました。
 休めの形に開いた、私の股間へと。
 真ん中の1本は私のクリトリスへと繋がれています。
 左右に別れたチェーンも股間へと収束し、繋がれている場所は、映しただけでは見えませんでした。
 股下の空間に、撓んだ3本のチェーンが数センチ、垂れ下がって覗いていました。

「ラビアチェーンのクリップは小陰唇に挟んでおいたわ。だからよく見ると、性器がいつもより開きっぱなしになって、収まりきらない小陰唇が外に露出しているはずよ。もちろんクリットもね」
 お姉さまの愉しそうなお声。

 確かに今、その5箇所がズキズキと疼いています。
 すなわち、左右の乳首と左右のラビア、そしてクリトリス。
 私の五大性感帯、責められたらすぐに屈してしまう五大弱点。
 からだ中の弱点をチェーンで繋がれてしまった、自分の淫ら過ぎる姿をこの目で確かめて、そのズキズキがどんどん大きくなってきました。

「さあ、もういくらでもイッていいのよ?あなたの趣味であり特技っていう、淫らではしたないマゾヒストオナニー姿をたっぷりと見せてちょうだい」
「もう一度テーブルに座って、こっちを向いて」
 お姉さまのご指示で、再度テーブルに腰を下ろしました。
 関節を動かすたびに乳首の飾りがブラブラ揺れて、股間のチェーンもカサカサ揺れて、五箇所がますます疼いてきます。

「M字になったらいいことしてあげる。なった?その真ん中のリングを借りるわよ」
 私の目前にいらっしゃったお姉さまが、左手を伸ばしてチェーンに繋がったリングに指を掛けました。
「あたしが引っぱってあげるから、あなたは自分の手でどこでも好きな場所をまさぐればいいわ。きっとすぐイっちゃうはずよ」
「あたしも手伝うけれど、ここからはあなたのオナニーだから、あなたはいつでも遠慮なくイっていいのよ。何度でも」
「そして、あたしはその光景を写真に撮るの」
 お姉さまの右手には、可愛らしい形のカメラがありました。

「チェキよ。撮ってすぐ紙焼き写真になるやつ。これであなたのアヘ顔を撮って、履歴書の写真も差し替えるの。だってあの写真、ちっともあなたらしくないもの」
 お姉さまがフッと笑われた、と思った瞬間、5箇所同時に激痛が襲いました。

「はうんっ!!」
 乳首とラビアがちぎれそうな、クリトリストがはじけちゃいそうな、強烈な快感でした。
「あああーーーっううううぅーっ!」
「はら、イキなさい!イっちゃいなさい」
「いいいいーーーーーーっ!!」

 お姉さまはチェーンを弛ませては張りをくりかえし、私は左手でおっぱい右手で股間を夢中でまさぐり。
「イクイクイきますぅーーー!!!」
「イキなさい!どんどんイっちゃいなさいっ!」
「いい、いい、いいいーーーーーーくぅっ!!!」

 私がケダモノのように何度も何度もイクあいだ、私の顔面には、眩しすぎるフラッシュライトが容赦な無く浴びせられていました。


面接ごっこは窓際で 07

2015年3月15日

面接ごっこは窓際で 05

 両腕を頭まで挙げたので、また少しワンピースの裾がせり上がり、もはや私のプックリ無毛な土手部分全体が、お姉さまの目前で剥き出しになっていました。
「あら、面白いポーズになったわね。なあに?性器をじっくりご覧ください、っていうこと?」
 からかうようなお姉さまの愉しそうなお声。

「あの、それは・・・はい・・・」
 自分の恥ずかし過ぎる性癖を、自分の写真を貼り付けて印鑑まで押してある、ある意味公的な書類に書き加えてしまったことに、私は自分でも驚くほど興奮していました。
 
 まさかお姉さま、この履歴書を他の社員のみなさまにもお見せするつもりなのかしら?
 胸のドキドキが治まらず、休め、の形に開いた股間がムズムズと疼きまくっています。
 私の中のマゾ性が頭のてっぺんから爪先まで、すべての細胞に行き渡り、全身で更なる辱めを欲していました。

「そこのヘアーをツルツルにしちゃっているのも、わざとなのでしょう?エステサロンに通っていたのよね?」
 お姉さまが私の股間を指さして、その部分にお顔を近づけてきました。
「は、はい・・・」
 シーナさまご紹介のエステサロンに、一昨年の秋頃から2ヶ月に1回くらいのペースで通っていたことは、すでにお姉さまにお話していました。

「その部分の脱毛って、すごく痛いらしいじゃない?それに、いたたまれないほど恥ずかしい格好にならなければいけないのでしょう?」
「はい、その通りです」
 サロンに伺うたびに施された恥ずかし過ぎる仕打ちの数々を思い出し、全身を覆うマゾ熱がまた数度、上がってきました。

「顔がますます赤くなったわね。そのときされたことでも何か思い出したのかしら。それに、なんだか嬉しそうよ?あなた。目がトロンとしちゃって」
「いえ、あの、それは・・・」
「つまりあなたって、恥ずかしい格好をして、いろんな人に剥き出しの性器を見られて、おまけに痛いことされるのさえ悦んじゃう、そんな性格なのよね?」
 お姉さまの愉快そうなお声に、蔑みの冷たい響きが加わってきました。
 私のマゾ性がそれを目ざとくキャッチして、全力でその部分に縋りつきます。

「はい・・・おっしゃる通りです・・・」
「そうよね。性器から滲み出てくる愛液の量が一段と増えたみたいだもの。両腿の付け根が濡れそぼってテラテラ光っている」
 お姉さまのお顔がいっそう近づき、わざとらしく音をたてて、お鼻で息を吸われました。
「んーっ。それになんだかいやらしい臭い。あなた、こんな状況なのに性的に興奮しているでしょう?」
「は、はい・・・ごめんなさい・・・」

「そういう人は、なんて呼ばれるのだっけ?恥ずかしさや苦痛や屈辱感みたいなもので悦んじゃう種類の人たちは」
「はい・・・あの・・・マゾ・・・マゾヒスト、です」
「そうね。それも森下直子さんの特徴なのよね?だったら、それも書いておかなきゃ」
 再び履歴書と鉛筆が、私の目の前に突き出されました。

「あなたのそれって、永久脱毛なの?」
 マゾヒスト、を履歴書に書き加え、元のポーズに戻ってから尋ねられました。
「あ、いえ、よくはわかないのですが、去年の夏頃からは、ぜんぜん生えてこなくなっています。先生からは、はっきりと、永久脱毛、とはお聞きしていないのですが」

「へー。ずいぶん腕の良い先生なのね」
「あ、腋の下は、永久脱毛しておいた、っておっしゃっていました。何か強い光みたいのを当てられて」
 お姉さまのご質問の意図がわからず、戸惑いつつお答えします。

「ふーん。それであなたは、たとえばお友達と旅行とかには行かないの?」
「え?あ、えっと行きます。行ったことあります」
「行ったらお風呂一緒に入るでしょ?何て説明したの?そのツルツルな性器を」
 それがお知りになりたかったのか。
 思い当たった途端に、そのときのことを思い出し、懐かしい恥ずかしさが全身を駆け巡りました。

「生まれつき、ってお答えしました。一生懸命タオルで隠していたのですが、好奇心旺盛なお友達に無理矢理タオルを剥がされて・・・とても恥ずかしかったです」

 大学2年の夏に、仲の良いお友達数名と4泊5日の旅行をしたときのことでした。
 行く前はずいぶん悩んだのですが、パイパンを隠し通せるか、というスリルの誘惑と、知られてしまったときの恥辱への期待感もあって、思い切って参加したのでした。

 二泊目のお風呂で、一番ざっくばらんな性格のお友達に知られてしまいました。
 生まれつき、って告げると珍しがられ、一緒に入っていたお友達全員が集まってきて私を囲み、広い温泉の洗い場の片隅でジーッとその部分を、興味津々の瞳で見つめられました。
 そのときの、お友達からの痛いほどの視線は、その後しばらくのあいだ、私の思い出しオナニーの定番になったほどでした。

 当然、そのときもその場で濡れてしまったのですが、お風呂場だったので、なんとかバレずにすんだようでした。
 旅行の後も、からかわれたり苛められたりすることはほとんど無く、みんな普通に接してくれました。
 ただ、一度ある人に、森下さんて、顔の割にはえっちなからだしているんっだってね、と言われたことがあったので、私がいないところで、どうだったのかはわかりません。

「あら、嘘をついたのね。だめじゃない。ちゃんと正直に、マゾだから、性器を隅から隅までよーく見てもらいたくてツルツルにしています、って言わなくちゃ。これからはそうしなさい」

 お姉さまのイジワル声でのご命令。
 あのとき本当にそう告げたら、私の大学生活はどんなものになったのだろう。
 すぐに、いたたまれない妄想が広がり、いてもたってもいられないほどの被虐感に全身が痺れてきました。

「は、はい・・・ごめんなさい。こ、これからは、必ず、そ、そうお答えします」
 はしたな過ぎる自分の言葉に、アソコの奥がキュンキュンと疼きました。

「あなた、あたしに何か聞かれて答えるたびに、どんどん発情していない?」
 お姉さまが向かい側の椅子で座り直し、ベージュのストッキングに包まれたスラッとしたおみあしを優雅に組み替えられました。

「そんなにサカっちゃってたら、もう抑えきれないんじゃない?性欲」
「・・・はい・・・」
「今、何がしたい?」
「えっ?えっと・・・」
「正直に言っていいのよ。今一番したいこと」
 妙におやさしげなお姉さまの薄い笑顔が、かえって不気味でしたが、一刻も早く自分のからだをまさぐって欲しい私は調子に乗ってしまい、正直に告げてしまいました。

「あの、出来ることならお姉さまに、わたしのからだをいろいろ虐めて欲しいです・・・」
「お姉さま?ここがどこで、あたしが誰で、今何をしているのか、わかってないの?」
「ごめんなさいっ!あの、社長さま、あ、いえ、チーフさまに、私を虐めて・・・」

「だから、今は面接中なのよ?それに、まがりなりにもここは神聖なるあたしの会社のあたしの部屋。そんなところであなたと乳繰り合えるわけじゃない、けがらわしいっ!」
 本当に怒っているみたいな、お姉さまの語気鋭い一喝。
「ごめんなさいっ!」
 怯えてギュッと目をつぶった私は、お姉さまの次のお言葉を待ちました。

「面接というのは、対面して、相手の人となりを知るためにするの。今あなたは発情していて、それを鎮めるためにあなたはどういう方法を取りますか?って聞いたわけでしょう?その答えが、あたしに虐めて欲しい、って、わけがわからない」
「それに、チーフさま、っていうのも、わけがわからないわよ?さま、なんて付けられたら、逆になんだかバカにされているみたいだもの。呼ぶときはチーフ、だけでいいから」
 お姉さまのイジワル度が、どんどん上がっています。

「もう一度聞くわよ?今一番、あなたは何がしたいの?」
「あの、そういうことでしたら、えっと、あの、オ、オナニーです・・・」
「ふふん。ずいぶんストレートに言ったわね。ここで、これからあなたの職場になるこの部屋で、まだ入社前で社員でもないのに、オナニーがしたいんだ?」
「あの、ごめんなさい・・・したくないです、がまんします」

「あなたはオナニーが好きなの?」
「はい。好きです。ごめんなさい」
「いちいち謝らなくていいわよ、鬱陶しいから。それで、月にどれくらいしているの?」
「月に、と尋ねられるとよくわかりませんが、ほぼ毎日・・・」
「へー。それは凄いわね。つまり毎日、何かしらえっちなこと、いやらしいことを考えて自分を慰めているということよね?」
「・・・はい」
「そこまで行けば立派な特技だわ。ほら、それも書いておかなきゃ」
 私の前に履歴書と鉛筆が差し出されました。

 趣味・特技、クラシックバレエ、音楽鑑賞、映画鑑賞、読書、ノーブラ、ノーパン、野外露出行為、マゾヒスト、オナニー・・・
 履歴書がどんどん、本当の私らしくなっていきます。
「かっこして、ほぼ毎日、とも付け加えておきなさい。普通の女性とは著しく異なる、あなたのチャームポイントなのだから」
 呆れたような含み笑い混じりで、お姉さまがぞんざいに履歴書を突っ返してきました。

 趣味・特技、クラシックバレエ、音楽鑑賞、映画鑑賞、読書、ノーブラ、ノーパン、野外露出行為、マゾヒスト、オナニー(ほぼ毎日)・・・
「いいわよ。今日は特別に許してあげる。特技だものね。ここで思う存分オナニーなさい」
 履歴書を一瞥して満足そうなご様子のお姉さまが再び、おみあしを優雅に組み替えられました。

「そうだ。その前に、永久脱毛した腋の下、っていうのも、あたしに見せてくれない?」
「えっ?腋の下?」
 マゾの服従ポーズで後頭部に組んだ腕の、ニットの袖に包まれた自分の腋の下左右を、思わずキョロキョロ見てしまいました。

「えっと、それは・・・」
「ニブい子ね。そのワンピースもさっさと脱いじゃいなさい、っていうことよ。素っ裸になっちゃいなさい」
「そのほうがオナニーも捗るでしょ?どうせ見せたくてしょうがないのだろうし、あたしもあなたの裸が見たいのよ」
 その口ぶりから、お姉さまもだんだんと興奮されているように感じました。

「うちは、エロティックな水着や下着も扱っているからね。あなたには、そういうののモデルになってもらうっていう手もあるかな、ってふと思ったの。プロに頼むとそれなりにお金がかかるしさ」
「ほら、さっさと脱いでオナニーしなさい。見ててあげるから」
「はい・・・」

 組んでいた両腕を解き、せり上がったワンピースの裾に手を掛けて、そろそろと捲り上げ始めました。
 ニット地に貼り付いていたおっぱいが弾力を取り戻し、プルンと息を吹き返すのがわかりました。
 押し潰されていた敏感乳首に布地が擦れ、それだけで下半身がいっそうジンワリ潤みました。
 顔を通過した布が取り除かれると、再び視界にガラス越しの夜空が見え、半ば鏡と化したそのガラス窓には、私の裸が映っていました。

 見ただけで硬さまで実感できるほどツンと尖りきったふたつの乳首が、虐めて欲しそうに宙を突いていました
 なんで私、こんなところで裸になっているのだろう。
 今日初めて訪れた、これからずっと働くことになる、世間的にも有名な高層ビルのオフィス窓際で。
 おっぱいもお尻も性器も全部、丸出しで。
 可哀相な私、ヘンタイの私・・・
 被虐感に酔い痴れ、自然に後頭部へ行ってしまう両手に自分で呆れながら、次のご命令をワクワクと待ちます。

「あなた、ガラスに映った自分のからだに見惚れているの?ひょっとしてナルシストのケもあるの?」
「あ、いえ、そういうのではなくて、ただひたすら、恥ずかしいなー、って」
 あわてて否定しつつも、心の奥底を見透かされた気もして、ビクッと震えました。

「まあ、自分の裸見せたい、なんて性癖の子は、多かれ少なかれナルシストよね。注目を浴びたい、っていう意味なら、すべての女性がそうかもしれないけれど」
「でも私は、注目を浴びて人気者になりたい、とかではないですから。蔑まされたい、辱められたいっていう、自虐マゾですから」
「そうだったわね。まあそれはいいわ。でもあなた、まだ途中よ」
「えっ?えーっと・・・」
「あたしは、素っ裸になりなさい、って言ったはずよ。まだ脱ぐもの、あるじゃない」
「あ、はい・・・でも・・・」

 お姉さまがおっしゃっているのは、ハイソックスと靴のことでしょう。
 だけど、これらを脱いでしまうと、困った問題が起きてしまいます。

「あの、ソックスと靴も脱ぎなさい、ということだと思うのですが、これを脱いでしまうと、このお部屋の床が、汚れてしまいます」
「なんで?」
「あの、私のアソコから、はしたないおツユが垂れてしまって・・・今は、腿を滑ってソックスの布で堰き止められて床までは落ちていきませんが、脱いでしまったら、かかとまで落ちて床に・・・」

「アソコ、ってどこ?」
「あの・・・性器です」
「性器?」
「えっと・・・オマンコ、です」
「ちょっと、あたしのオフィスでそんなお下品な言葉、使わないでくれる」
「あ、ごめんなさい。性器が濡れているんです」
「あなたのすけべな性器が弄って欲しくて愛液で濡れまくっている、ってわけね?」
「はい・・・」

「いいわよ。床なんて汚れちゃっても。リノリュームだから拭き取ればいいだけだもの」
 お姉さまが嬉しそうに、ニヤッと笑いました。
「掃除するのはもちろんあなた。ちなみにモップやらバケツは、部屋の外、フロア共通トイレ脇の給湯室にまとめて置いてあるから、帰る前にあなたが裸でフロアに出て、取ってくればいいだけ。だから、いくら汚してもかまわなくてよ」
 
 突然、お姉さまが立ち上がりました。
「ほら、さっさと靴を脱いで」
 私に近づいて来るお姉さま。
「は、はい・・・」

 お姉さま、私を裸でオフィスの外のフロアに行かせる気なんだ。
 来たときは他の会社の人、いなかったようだけれど、本当に大丈夫なのかな?
 そのときのことを想像して、不安と期待に胸を高鳴らせながら、ソックスを脱ぎ始めました。
 ハイソックスは左右とも、履き口のゴム部分から全体の三分の一くらいまで、じっとり湿っていました。
 粘性のある湿りで、指がヌルヌルしました。

「ちょっと貸して」
 脱ぎ終えたソックスがお姉さまの手で奪われました。
「へー。思っていた以上に湿っているのね。ずいぶん垂らしてたんだ。臭いもけっこうきついわね」
 ソックスを二本の指でつまんでぶら下げ、お鼻をクンクンさせているお姉さまに、私の顔は、耳たぶが燃えちゃいそうなくらい真っ赤なはずです。

「これはあなたの言う通り、かなり床が汚れちゃうかな?まあ、終わったらしっかり掃除していってね」
「・・・はい。わかりました・・・」
 いつものポーズになって小さくうなずきました。
 左脇のガラス窓には、正真正銘の全裸になってしまった私の、紅潮した横顔が映っています。

「そう言えばあなた、オナニーするとき、痛いのが欲しいタイプだったわよね?」
「あ、はい・・・」
「あなたのその、痛々しいくらいに背伸びして勃っている乳首を見て、思い出したの」
「最近サンプルでいただいたものの中に、誰も試そうとしない面白そうなものがあったのよ。それなりにファッショナブルで、見ようによってはエレガントなのに、誰も持って帰らなかったの」
 お姉さまが可笑しそうにクスッと笑いました。

「あなたならバッチリ似合うはず。それに、使いようによっては痛かったりもするはずだし。ちょっと待っててね」
 謎のようなお言葉とともに、お部屋の入口のほうへ向かおうとして、はたと立ち止まりました。

「ただボーっと待っててもらうのも芸が無いわね。あなた、そのあいだ、見世物になっていなさい」
「えっ?」
「マネキンよ。その姿勢で、その窓辺のカウンターのところに上がって、あなたのいやらしい裸を外の人たちに見せつけてやりなさい」

 このお部屋の窓辺は、窓の下のほう、だいたい私の膝のところくらいまでが壁部分で、そこから上が太い柱で挟まれた大きな窓になっています。
 柱の幅の分だけ外に張り出している窓の下部を埋めるスペースが、人が腰掛けられるくらいな幅の、壁や柱と同じ材質のカウンター状になっていました。
 一枚の窓の大きさは、2メートル弱四方くらい。
 したがって、そのカウンターの上に立てば、全身が窓枠の中にすっぽり収まります。
 もちろん、窓の外は、遥かに広がるお外の景色。

「あなた、そういうの好きでしょう?裸見せたがりの露出狂マゾ女なのだから」
 お姉さまがツカツカと私のほうへお戻りになり、窓辺からお外を覗きつつ、つづけました。
「まあ、夜だし、ここは下から見上げたからって、せいぜい見えるのは頭ぐらいだろうし、近くのビルからだって双眼鏡とか使わない限り、何だかわからないだろうから、あまり面白くは無いかもしれないけれど」

「でも、万が一、誰かに気づかれてしまったら、会社にご迷惑がかかりませんか?」
 私もお姉さまの隣でお外を覗き、この感じならそんなに心配はいらないかもとも思い、やってみたい気持ちになっていました。
「それは大丈夫。あなたも見た通り、ここには仕事柄、本物のマネキン人形がたくさん置いてあるからね。万が一、ここから裸の女が見えた、なんて噂になっても、ああ、それってマネキンですね、うち、アパレルだから。って笑い飛ばせるわ」

「ほら、早く上がって」
 お姉さまに促され、張り出した窓手前のカウンターによたよた上がりました。
 大きく両脚を広げ割ったので、早くも床に、はしたない雫がポタリ。
 上がるとお空がぐんと近くなりました。
「外を向いて、いつものポーズをしていなさい」
「はい」
 お外を向いて、後頭部に両手を遣りました。

 夜の闇で鏡と化したガラス窓に、私の全裸姿が頭から爪先まで、クッキリ映りました。
 半透明なその全裸姿の向こうには、果てしなく広がる幻想的な都会の夜景。
 私の目の前に視界を遮るものは何もありません。
 逆に言えば、お外からも、窓枠の中の私の全裸姿を隠すものは何も無い、という状況です。

「私が戻ってくるまで、しっかり下々の者たちに、あなた自慢の裸を見せつけてやりなさい」
 冗談めかしたお姉さまのお言葉。
「あとでマネキンっていう言い訳が出来るように、あまり動かないほうがいいかもね」
 お姉さまがクスッと笑って遠ざかる気配を、背後に感じました。

 私が向いているのは、自分が住んでいるマンションの方向です。
 こちらに出て来てから2年以上、毎日のように行き来してきた街です。
 その街に向かって私は今、乳首を尖らせ、性器から愛液を垂らしながら、全裸姿を晒していました。
 
 百数十メートル下を駆け抜けていく自動車のライトが幾筋も、ハッキリ見えました。
 目を凝らせば、暗い通りをどこかへと急ぐ、小さな人影も識別出来ました。
 こちらから見えるということは、あちらからも、その気になれば見えるということ。

 誰か私に気づいて欲しい。
 土曜日のオフィスビルの窓辺で、社長さまからのご命令により、全裸でマネキンの真似事をやらされている、可哀相な新入社員の姿に。
 縛られているわけでもないのに、自発的に両手を後頭部に当て、おっぱいも性器もさらけ出したままの、どうしようもないマゾ女の姿に。

 眼下の建物の灯りが瞬くたびに、遥か遠くに人影をみつけるたびに、そんなふうに懇願しては、私は足元に粘性な水溜りを広げていました。


面接ごっこは窓際で 06


2015年3月8日

面接ごっこは窓際で 04


「あたしの左隣でツンと澄まして写っているのがサオトメアヤネ=早乙女綾音。企画・開発の責任者兼デザイナーよ」
 
 お姉さまが指さした先には、ウエーブがかった長い髪をきっちり真ん中で分け、左側はふうわりと肩に垂らし、右側はぺったりと撫で付けて後ろ髪を左へと流した、意志の強そうな理知的なお顔立ちの美人さんが、私をまっすぐ見つめていました。
 
 シックなグレイのスレンダードレス姿で美しくスクッと立たれていて、見るからに自信たっぷりな感じが伝わってきます。
 デザイナーさんて言うより、むしろモデルさんみたい。

「うちのアイテムは、ほとんど彼女がデザインを決めているの。うちの大黒柱」
「彼女はね、採寸しなくても見ただけで、相手の身体的なスペック、つまりサイズとかがね、わかっちゃうのよ。身長とか体重、スリーサイズや股下まで」
「初対面で着衣でも八割がた、下着や水着になってくれれば誤差数ミリの世界。あれは神業だわ」

「へー。それって、なんだか怖いですね。少しでも太ったらすぐバレちゃう。でも、そう言えばお姉さまも、私がお店に買いに行ったとき、採寸なさらないでブラのサイズがぴったりでした」
「あたしなんかぜんぜんまだまだよ。アヤには絶対かなわない」
 お姉さまがとっても嬉しそうにおっしゃいました。

「それで、あたしの右隣がマミヤミヤビ=間宮雅。優雅のが、って書いてミヤビね。彼女は営業担当。とにかく顔が広いの」
 
 次にお姉さまが指さしたのは、西洋の写実的な貴婦人肖像画を思い出させるような、小顔で目鼻立ちクッキリなレイヤーカットの美人さん。
 グリーンがかった黒のストライプスーツをきっちり着こなされて、大きめに開いた胸元から覗くレースのインナーと白い肌のコントラストが女性らしくて超セクシーです。

「あっ、このかたがひょっとして、デヴィッドボウイさん?」
「あたり。今は髪も伸びちゃってけっこう女性ぽい感じだけれど、高校の頃はベリーショートでもっと痩せていて、まるで某歌劇団の男役みたいだったの」
「小売の取引先はもちろん、製縫をお願いしている工房や問屋さんにも彼女のファンは多くてね、ずいぶん助けられてる」
「アヤと雅、ふたりとあたしが学校の同期で会社の共同創業者。つまり取締役。ちなみにあたしは、生産管理ともろもろのディレクションが主な仕事」

「アヤの隣のボーイッシュな子はオオサワリンコ=大沢凜子。愛称はリンコ。超優秀なパタンナー」
 
 やや小柄なベリーショート、瞳が大きくて唇が小さくて、どこかネコさんを思わせるお顔立ちなそのかたは、とあるアニメでオトコの娘だったキャラの制服コスプレ姿でした。
「ちなみに彼女、一年中ノーブラだから。会ったら直子、彼女のこと羨ましく思うかも」
 お姉さまがクスッと笑いました。

「その隣がコモリミサキ=小森美咲。愛称はミサミサ。彼女はCADが使えるから、リンコが描いたパターンをパソコンに取り込んで3Dモデリングしたり、あと広告やリーフレットのデザインとか、デジタルデザイン全般をやってもらっているの」
 
 このかたも大沢凜子さんが着ているのと同じアニメの女子用制服コスプレ姿でしたが、制服の上からでも、ナイスバディなのがよくわかりました。
 出るべきところは見事に出ていて、引っ込むべきところはキュッとくびれて、短いスカートから覗く弾力のありそうな太腿が眩しいくらい。
 ふんわりロングへアーの小さくて可愛らしいお顔とグラマラスなからだとのアンバランスさが、妙に艶っぽいです。

「この子たちふたりは、あたしたちの部活の後輩で、今はアヤの部下。この3人でうちの商品開発を受け持っているの」
「そうそう、直子はこのふたりときっと気が合うはずよ。リンコもミサミサもマンガとアニメのものすごいオタクだから」

「ヒマをみつけてはコスプレイベントとかに参加して、それなりに人気もあるみたいよ。ヴィヴィアンガールズとか名乗って」
「でも、普段はたいていデザインルームにこもりきりだから、なかなか顔を合わす機会が無いかもしれないわね。このあいだ直子も泊まった部室に、一番泊まりこんでいるのもこのふたり。のめりこむと寝食忘れるタイプね」

「それで最後はこちら、雅の隣で微笑んでいるのがタマキホノカ=玉置穂花。愛称はたまほの。彼女が直子とは一番年齢が近いわね。四大卒で去年の春入社だから、直子の3つ上かな」
 
 このかたは、ごく普通な濃紺のビジネススーツ姿なのですが、背筋をスッと伸ばして立っているその佇まいがすっごく優雅と言うか、気品に溢れていました。
 柔らかそうな巻き毛にフランス人形を思わせる整ったお顔立ち、その唇にたおやかな笑みをたたえて私を見つめてきます。

「お綺麗なかたですね・・・」
 思わずポツンと、独り言みたくつぶやいてしまいました。
「でしょ?彼女は、雅が連れてきたの。たぶん雅がどこかで会って、惚れちゃったのじゃないかな」
 愉快そうなお声でおっしゃるお姉さま。

「雅に言われて会ってみたら、人目を惹く容姿に似合わず物腰はおっとり優雅な感じで、そのくせ頭の回転は早そうで、この子、出来る、って、ちょっと話しだけで即決しちゃったわ」
 お姉さまが宙を見据えて、何かを思い出すような感じでおっしゃいました。

「彼女は営業志望で、雅の部下になるはずだったのだけれど、その頃あたしが抱え込んでいた仕事を手伝ってもらったら、何でもテキパキこなしちゃったから、いつの間にかあたしの補佐みたいな立ち位置になっちゃたの」
「だから直子にはまず、今たまほのがやっている仕事を引き継いでもらって、たまほのを雅に返してあげるのが当面の目標ね」
「直子が入社したら、当分はたまほのと一緒に行動することになると思うから、しっかり仲良くなりなさい」 
 ニッコリ笑いかけてくるお姉さま。
「はい。がんばります」

「そう言えば、サトミさんは、同じ会社ではないのですね?」
 サトミさんというのは、私が横浜のランジェリーショップでお姉さまと出逢ったときに、いろいろお世話になったショップのマヌカンさんです。
 ふと思い出して、お尋ねしてみました。

「ええ。サトミはまた別の会社なの。うちとも深いおつきあいのある、別の会社」
「サトミは、派遣マヌカンで近郊のショップをまわったり、ウエッブの通販サイトを手がけたり、小売関連で手広くやっているの」
「うちのブランドのウエッブサイトも彼女の担当だから、いつか直子も再会することになると思うわ。会いたいでしょう?」
 
 お姉さまにイタズラっぽく尋ねられ、なぜだか頬が火照ってしまいます。
 だってサトミさんは、私とお姉さまの破廉恥過ぎる出会いの詳細をご存知な、唯一の生き証人なのですから。
「はい。ぜひお会いして、あの日のお詫びとお礼をしたいです」
 サトミさん、驚かれるだろうなあ。

「それで、前にも言ったけれど、うちのスタッフは全員、異性にはまったく興味が無いレズビアン。制服とか服装規定も無いし、細かい規則とかもほとんど無し」
「取引先も発注先も女性スタッフばかりのところだから、直子も絶対、居心地がいいはずよ」

「そうそう、社内でスタッフを呼ぶときは、役職名じゃなくて名前にさん付けが基本ね。まあ、実際に会って打ち解けたら、愛称でも呼び捨てでも、好きに呼べばいいわ」
「ただし、第三者が同席している場合は、あたしのことはチーフ。アヤと雅はそれぞれ早乙女部長、間宮部長って呼ぶのが無難だわね」

「みんなには直子のこと、シーナさんご推薦の有能新人秘書候補、って紹介するつもりだから。雅が仕事柄シーナさんと仲がいいから、たぶんすでにシーナさんから雅には話が行っていると思う。たまほのを営業に返すためだってね」
 パチンとウインクされるお姉さま。

「あと、あたしたちの仲は当分のあいだ伏せておくつもり。オフィスでのあたしたちは、あくまでもいわゆる社長と社長秘書の関係。まあ、いずれバレちゃうとは思うけれど」
「だから間違ってもオフィスであたしのこと、お姉さま、なんて呼ばないでね。勤務中はずっとチーフで通すこと。社長、って呼ぶのもダメだからね」
 照れ臭そうに笑ったお姉さまが、写真と会社の冊子を手に取り、その端をテーブルで軽くトントンと叩いて揃え、テーブルの一番右端に置きました。

「さあ、これでうちの会社の説明はひとまず終わりね。あとは初出勤のときのお楽しみ」
 そこでちょっと一息ついてから、お姉さまがあらためて姿勢を正し、まっすぐに私を見つめてきました。
「今度は直子個人のことについて、少し質問させてもらうことにするわ」
 テーブルの上、差し向かいのふたりのあいだには、私の提出した履歴書が置いてあります。
「はい?」
 何を今更、というニュアンスで、私は怪訝そうな顔をしたと思います。

「うちのスタッフは知り合いや、紹介ばっかりで、入社試験とか面接とかしたことないからさ、一回やってみたいと思ったんだ」
「つきあってよ、面接ごっこ。ほら、よく聞くじゃない?圧迫面接とかセクハラ面接とか」
 お姉さまの瞳が妖しく揺れているのに気づきました。
 
 セクハラ面接・・・
「あ、はい。わかりました。よろしくお願いいたします」
 お姉さまが虐めモードに入ったのを察知して、私の中のマゾ性が悦び勇んでムクムク起き上がってきました。

「さっきあなたの履歴書にざっと目を通したのだけれど、あなた、ずいぶん資格持っていらっしゃるのね」
「幼稚園教諭免許、図書館司書は知っていたけれど、英検2級とか簿記3級も持っていたのね?」
「あ、はい。幼稚園への就職に自信が無くなったときに、何か資格を取らなくちゃって、あわてて勉強しました」
「ふーん。簿記は使えるわね。あなたにやってもらいたことのひとつが、そっち関係だから。一から教えないで済むわ」

 私への呼びかけが直子からあなたに変わったお姉さまは、親密さ、と言うか馴れ合いっぽさがなくなり、お仕事されているときはきっとこんな感じなのだろうな、と思わせる、理知的で、どこか冷たい印象の事務的なお声になっていました。
 なんだか本当に面接を受けているみたい。

「学歴も資格も申し分無いのだけれど、一箇所だけひっかかるところがあるのよね。どこだかわかる?森下直子さん?」
 お姉さまが私の履歴書を鉛筆のお尻でコツコツ叩きながら、まっすぐ見つめてきます。
 その瞳はイジワルそうに細まっていました。

「あの、えーと、ごめんなさい。わかりません」
「ここよ、ここ」
 お姉さまが履歴書の右側の下のほうを鉛筆で指し示しました。
 そこは、趣味・特技、の欄でした。

「趣味・特技。クラシックバレエ、音楽鑑賞、映画鑑賞、読書。バレエ以外はありきたりなものが並んでいるけれど、あなたにはもっと、あなたらしい特殊な趣味がなかったっけ?」
 お姉さまのお声にイジワル度が増しています。
「あの、えっと・・・」
「紹介してくれたかたからのお話だと、こんなのよりもっと独特な、あなた以外にはあまり見かけない面白い趣味をお持ちのはずなのだけれど」
「そ、それは・・」
 お姉さまがすっごく愉しそうに、ニヤッと笑いました。

「森下直子さん。立ちなさい」
 有無を言わさぬ冷たいお声。
「は、はいっ!」
 あわてて立ち上がると、木製の椅子がガタンと大きな音をたてました。
「きをつけ!」
「は、はいっ!」
 両腕をからだ側面にピタッとつけて、直立不動になります。

「さっきから気になっていたのだけれど、あなた、ブラジャーを着けていないのね?バストの頂点がニットに浮き上がっていてよ?」
「あ、は、はい・・・」 
 お姉さまのお芝居がかったお声に、下半身がキュンキュン疼いちゃっています。

「それは、あなたが好きでそうしているの?つまり、何て言うか、見る人にこんなふうに、おっぱいの形とか、尖った乳首の形を見せびらかせたくて」
「いえ、そんなわけでは・・・」
「ふーん。それなら、その場で両手を真上に挙げて、うーんって伸びをしてみなさい、思いっきり」
「あ、えっと、は、はい」

 お姉さまの意図がわかってしまい、恐る恐る両手を上に挙げ、爪先立ちになるようにゆっくり伸びを始めました。
「んーーっ」
「もっともっと。思いっきりよ」
「は、はいっ!んーーーっ!」
 両手を挙げ始めたときから、ニットワンピースの裾が徐々に太腿をせりあがり始めていました。
 バレエのポワントのように伸びきったときには、裾はもはや、腿の付け根ギリギリまでせり上がっていました。
 お姉さまの視線が、その部分に張り付いています。

「ほらね、思ったとおり。あなた、下も着けてないじゃない?」
「あの、これは・・・」
「だめよ!そのままキープしてて!」
 私が伸びを解こうとすると、鋭い叱責がとんできました。
「あ、は、はいぃ」

「それじゃあもう一度聞くけれど、あなたは好きでそうしているの?」
「あ、あの、えっと・・・」
 両手の指を組んで頭上にまっすぐ上げたポワント姿勢のまま、どうお答えして良いのか戸惑いながらも、下着を着けていない下半身が今にも露になりそうな状況に、盛大な恥ずかしさで全身が小さく震えてきました。

「見たところ、あなたはそのニットの下には何も身に着けていないようだけれど、そうやって、少しからだを動かしたら性器までも見えてしまうような、すぐに裸にされてしまうような、はしたなくてふしだらな格好を、あなたは、あなたの意志でしているのですか?って質問しているの。正直に答えなさい」
 お姉さまの丁寧過ぎるお言葉遣いが、私の恥辱感をぐんぐん煽り立ててきます。

「は、はい・・・そうです。わ、私は、こういう格好で、お、お外に出ることが、す、好きなんです・・・」
 私の声が途絶えがちなのは、苦しい姿勢のためだけではありません。
 からだをモジモジさせるたびに裾は更にせり上がり、アソコのスジの割れ始めまでもが露になっていました。
 指ひとつ触れられているわけでもないのに、座ったまま下からまじまじと見上げてくるお姉さまの舐めるような視線に、全身がグングン感じていました。

「つまり、あなたはそうやって、からだのラインや乳首の隆起、性器までもが見えてしまいそうな服装で外出することが好きなのね?そして、それを誰かに見られることも」
「は、はい・・・その通りです」
 腿の付け根を通り越し、プックリした土手のふくらみまで露になるくらいせり上がってしまったニットワンピの裾が、座っているお姉さまの目前にあります。
 スジの隙間から溢れ出した、恥ずかしい液体の滴りまで見えているはずです。

「そういう行為を何て呼ぶのだっけ?」
「え?えっと、ノーパンとかノーブラとか?・・・」
「うん。そういうのをまとめて、何て言うの?」
「えっと、視姦、あ、いえ、露出です。お外でえっちな格好になりたがるのは、や、野外露出行為です」
「そう。あなたはそれが、好きなのよね?」
「はい・・・好きです・・・」

「おーけー。腕を下ろしていいわ。でも裾を戻してはダメ。そのままにしておきなさい」
 お姉さまのお許しが出て、ポワントを解き、両腕を下ろしました。
 ボディコンシャスなニットは姿勢を戻しても、たわんだまま肌にピッタリと貼り付いて、腰近くまでせり上がったままの状態でした。

「好きなことなら、それは立派に趣味と呼べるものだわ。ほら、そこに自分で書き足しなさい」
 お姉さまがテーブルの上の履歴書と鉛筆を私の前に滑らせてきました。
「書き終わったらこちらに戻してね。まだ面接はつづくから」

 テーブルに向かって中腰になります。
 ニットのせり上がりで覆いきれなくなった裸のお尻を、夜空が見えるガラス窓に向けて、突き出すような姿勢です。
 鉛筆を握る手が小刻みに震えていました。
 
 リクルートスーツを着てうっすら微笑む、半年以上前の自分の写真が貼ってある履歴書。
 その趣味・特技の欄。
 読書、で終わっている空白部分にゆっくりと丁寧に、ノーブラ、ノーパン、野外露出行為、と書き加えました。
 一文字書くごとにヌルッと潤んで、内腿を透明な液体が一筋、滑り落ちていきました。

 書き終えた私は、元の位置に戻り、自発的に両手を頭の後ろで組みました。


面接ごっこは窓際で 05


2015年3月1日

面接ごっこは窓際で 03

 お店を出て、エスカレーターでもう一度、一階まで戻りました。
 ショッピングモールの営業時間は、すでに終わっていて、モール内はまだ明るいのですが、どのお店もシャッターを閉じていました。
 それでも、けっこうな数の人たちがブラブラ行き交っています。
「繁華街のほうへ抜ける地下道があるからね。閉店後でも普通に通り道として使われているのよ」
 ヒールの音をカツカツ響かせて颯爽と先を行くお姉さまが、教えてくださいました。

 高層ビルの階下、オフィス部分のエリアに入ると、雰囲気が変わりました。
 照明が少し暗めになって、人影もまばら。
 階数ごとに分けてあるエレベーターエントランスのうち、お姉さまは30台から40台の階数が示されているエリアに進みました。

「働き者は少ないみたいね、土曜日だから」
 お姉さまがニッと笑い、エレベーターの呼び出しボタンを押しました。
 私たちの他に、エレベーター待ちをしている人はいません。

「直子は、このビルの上のほうへ上がったことある?」
「あ、はい。こっちに来てしばらくしてから、学校のお友達と一番上の展望台に遊びに行きました」
「ふーん。眺めはどうだった?」
「夏の始めのお天気のいい日だったので、青空で、景色が遠くまで見えてすっごく綺麗でした。その後、水族館に行ってクリオネさんを見て・・・」
 そんな会話をしているあいだに、1基のエレベーターの扉が開きました。

 エレベーター内に一歩足を踏み出すと、正面に大きな鏡。
 からだのラインをクッキリ浮き上がらせた等身大の自分の姿に、ビクッと一瞬、怯えてしまいました。
「これからは、否が応でも毎日、下界を見下ろすことになるわよ」
 お姉さまが冗談ぽくおっしゃり、横の壁の操作盤みたいなのにカード状のものをかざしました。
 エレベーターの扉がスーッと閉じて、音も無く動き始めました。

「わかっているとは思うけれど、この中でヘンなことしちゃダメよ。あれが防犯カメラで、ずっと管理室で記録されているから」
 薄く笑って鏡の壁の左上隅に顎をしゃくるお姉さま。
 階数を示すデジタル数字が凄い勢いで変わっていくのを唖然として見上げている私。
 軽快な電子音と共に、本当にあっという間に、目的階に到着しました。

「うちは、西側奥の角部屋だから、あたしの部屋からなら西南も西北も見えるのよ」
 土曜日だからなのでしょう、フロア内はしんと静まり返り、人っ子一人いないようです。
 磨き上げられたリノリュームの通路を無言で歩き、やがてひとつの扉の前で、お姉さまが再びカード状のものをかざしました。

「やっぱり今日は、誰も来ていないようね。リンコくらい、いるかと思ったけれど」
 お姉さまが壁のスイッチを弄ると、室内がパッと明るくなりました。
「どうぞ。靴のままでいいから」
 目の前には、紛うこと無き、オフィス、の空間が広がっていました。

 今までそういう場に自分の身を置いたことが無かったので、ドラマや映画で目にしただけでしたが、机が整然と並び、机の上には電話とパソコン、壁には予定表のホワイトボード、さりげなく置かれた観葉植物・・・
 まさに大人がお仕事をする空間、つまりオフィスの風景でした。

 広い空間がいくつかに仕切られ、それぞれにドアがついています。
 いつの間にか、ショパンのピアノ曲、確か子犬のワルツ、がお部屋の中に小さく流れていました。
「勤務中はずっと、クラシックをBGMで流すようにしているの。まったくの静寂より雰囲気が良くなる気がするから」

「ここがオフィスのメインフロア。そこが更衣室で、こっちがゲスト用の応接。そっちのドアはデザインルームで、あっちのドアが社長室、つまりあたしの部屋」
「トイレは室外で共用。このフロアには他にも2、3社入っているけれど、あまり大人数の会社はないみたいだから、待たされたりはしないはずよ」
「給湯室とか水周りも外だから、その辺が不便と言えば不便ね。そのドア開ければすぐそこだけれど。だからウエットティッシュは欠かせないの」
 
 お姉さまがいちいち指をさして教えてくださりながら、窓際の応接ルームに案内してくださいました。
「ちょっとそこに座って待ってて。あ、それと上着はもう脱ぎなさい」
 濃いエンジ色のソファーを指示し、ウエットティッシュをひとつくださり、応接ルームのドアは開け放したまま、お姉さまはメインフロアに戻られました。

 窓と思われるところにはグレーのロールカーテンが下ろされていて、残念ながらお外は見えません。
 応接の隅には、フリージアらしき黄色いお花のアレンジメントが置かれ、良い香りを放っています。
 窓を挟むように、ブロンドで美しいお顔立ちな二体のマネキン人形さんが、片方は、私と同じようなビッタリフィットな黒のニットワンピースを、もう片方は、ハイウェストな花柄ノースリミニワンピに、可愛い麦藁帽子を頭にチョコンと乗せて、お澄まし顔で私を見ていました。

 座る前にショートジャケットを脱ぎました。
 バスト頂点の左右の突起は、相変わらず露骨な存在感でニットを押し上げていました。
 腰を下ろそうとからだを屈めると、ニットの裾がスススッと腿の皮膚を滑ってせり上がってきます。
 内腿のあいだがスースーする。
 これを一枚脱いだけで裸なんだ・・・
 今更ながら、現在の自分の服装の淫らな無防備さに、ゾクゾク感じてしまいました。

「お湯沸かすのもめんどいからさ、缶コーヒーでがまんしてね」
 お姉さまが私の対面にお座りになり、テーブルに小さな缶コーヒーを2本置きました。
「うん。やっぱり似合うね、そのニット。エロっぽいオーラがビンビン出てる」
 私の胸をじっと見つめてくるお姉さまの視線。
 私は思わず、両手を後頭部に組んでしまいそう。

「だけどお愉しみは後に残しておいて、まずは仕事、仕事っと。あたし、これから明日のこととかあれこれ、ちゃちゃっと片付けちゃうから、直子はそのあいだ、これでも見てヒマ潰していて」
 テーブルの上に厚めな冊子風の印刷物が置かれました。

「我が社の今シーズンのラインアップ資料。いずれイヤでも覚えなくちゃいけないものだけれど、まあ、予習を兼ねてね」
「オフィスの中も自由に歩き回っていからね。もちろんデスクの上のものとか抽斗の中はいじっちゃダメよ。常識だけれどね。あと、デザインルームにも入ってはダメ。それ以外は自由に見てていいから」
「30分くらいで終わると思うからさ、いい子で待っていてね」
 缶コーヒーを開けて一飲みしてから、お姉さまが立ち上がりました。

「あ、あのぅ・・・」
「ん?」
「お外、見ていいですか?カーテン開いて」
「あ。開けてなかったんだ。そんなの遠慮することないのに」
 お姉さまが手馴れた手つきで、ロールカーテンをスルスルッと巻き上げてくださいました。
「うわーっ!」
 思わず窓辺に駆け寄りました。
 窓の外に綺麗な夜景が広がっていました。

 思っていた以上に高い位置からの、地上に散らばった無数の小さな光の風景が見えました。
 幻想的で、すごく綺麗。
 まさに、地上の星座、っていう感じ。

「この位置の窓からだと見えるのは南西の方向ね。あのへん一帯の一際暗いのが護国寺の森。左のほうにある白丸が東京ドーム、明るいから今日は野球の日みたい」
「それ以上遠くは、もう暗くてよくわからないわね」
 後ろに立たれたお姉さまのお声が、私の左耳の後ろをくすぐります。

「それで多分、あの辺の光の中のどれかが、直子が住んでいるマンションのはずよ。住人の誰かが灯りを点けていればの話だけれど」
 背後から覆いかぶさるようにからだをくっつけてくる、お姉さまが指さす方向に目を向けると、確かに、光の配置的にそれっぽい一画がありました。
「こっちから見ると、あんなにちっちゃいんだ・・・」
 つぶやくと同時に、お姉さまがお泊りに来たとき、オフィスから私のお部屋を天体望遠鏡で覗くご計画をお話されたこと、を思い出しました。

「でも、サンルームの窓もこちら向きだから、きっと本当に、望遠鏡なら覗けちゃいそうですね?」
 その計画では、そのときに私はバルコニーに出て、お外を向いてオナニーをしなければいけない約束でした。
 考えただけでアソコの奥がヌルッと潤みました。

「そうね。愉しみだわ」
 夜の窓ガラスは半分鏡となり、私と、背後に立つお姉さまの姿もクッキリ映し出していました。
 お姉さまの視線がガラスに映った私のバストに注がれ、やがて両腕が背後から交差して、それぞれの手でひとつづつを包み込むように、バストを抱きしめてきました。

「あぁんっ!」
「直子のおっぱい。柔らかくて大好きよ」
 私の左肩に顎を乗せ、耳元でささやくお姉さま。
 両方の手のひらに、おっぱいがやさしく揉みしだかれます。
「ぅんんぅぅっ、お姉さまぁ・・・」
 ガラス窓に、私の淫らに歪んだ顔が映ります。

「あっ、いけないいけない。まずは仕事を終わらせなくちゃ。待っててね。さっさとやっつけてきちゃうから」
「あっ、はい・・・」
 
 唐突にからだを離したお姉さまが、そそくさとメインフロアのほうへ消えていきました。
 取り残された私は、すごすごとソファーに戻り、お言いつけの通り、テーブルの上のカタログのような冊子を、缶コーヒー片手にめくり始めました。

 そこにはブランド名別に、ブラウスやスカート、ワンピース、スーツ、ブランドロゴバッグやアクセサリーなど、あらゆる種類の女子向けファッションアイテムが、春・夏物、秋・冬物に分けて紹介されていました。
 私が買ったことのあるブランドもいくつかあって、デザインも好みなものが多く、モデルさんもみなさまお綺麗で、見始めたら夢中になり、じっくりと見入ってしまいました。

 ひと通り見た後、下にもう一冊、薄めの冊子があることに気づきました。
 こちらのほうは、インナーと水着がメインのようで、セクシーなのばかりが並んでいました。
 紐状のティアドロップス型マイクロビキニや、メッシュを大胆にあしらったワンピース水着などを身に着けた、すっごくプロポーションのいいモデルさんの唇から下にトリミングされた肌色ばかりの写真が、延々とつづいていました。
 こちらもさっきに負けず劣らず、うわー見えそう、とか思いながら、真剣に見入ってしまいました。

 こういう下着を作っているということは、私も社員になったら社内割引とかで普通よりお安く、こういう大胆なのを買えちゃうっていうことなのかな?
 て言うよりも、お姉さまからのご命令で、新作の大胆水着を試着させられて、プールとか海に連れて行かれたりして・・・
 ティアドロップス型マイクロビキニのページを食い入るように見つめながら、えっちな妄想に耽っていたとき、お姉さまからお声がかかりました。

「おっけー。仕事はやっつけたわよ。こっちへいらっしゃい」
 応接ルームのドアからお顔だけ覗かせたお姉さまに呼ばれて立ち上がり、メインルームに戻ります。
「あたしの部屋でゆっくりいろいろお話しましょう。これから直子のメインの仕事部屋になる場所だし」
 お姉さまは、応接ルームを片付けた後、私の手を引いて社長室へと連れ込みました。

 そのお部屋は、白を基調としたきわめてシンプルな内装の八帖くらいの空間で、大きめのデスクの上にデスクトップ型のパソコンと電話、脇の小さなデスクにラップトップパソコン、あとは大きな金庫がひとつと、窓際に会議テーブル風な楕円形の机を挟んだ応接セット、そしてロッカー数台だけしか置いてありませんでした。
 一般的に社長室、と言われて連想される、社訓の書かれた額とか、大理石の置物とか、お高そうな絵画とか、革張りのごついチェアーとか、は一切無し。
 電器製品と金庫以外はすべて木製で、シックな色合いに統一されていました。
 金庫の脇に置いてある、透明のビニールシートを掛けられた大きな天体望遠鏡の存在が、唯一異彩を放っていました。

 角部屋なので奥まった壁2面ほとんどが大きな窓になっていて、ロールカーテンもすべて上げられていたので、その窓一杯に夜空が見えていました。
 物があまり置いてないゆったりスペースとも相俟って、すごく開放感があります。

「うわーっ。いいお部屋ですね」
「でしょ?せっかくだから、なるべく窓を潰さないようにレイアウトしたの。社長室って言うよりラウンジっぽいイメージで」
「ここでする仕事は、ほとんど世知辛いお金勘定だけだから、せめて雰囲気はおおらかにしたいと思ってさ。実際、スタッフはここを社長室じゃなくて、金庫部屋って呼んでいるのよ」

「こっち側の窓からだと、西北方向、新宿や渋谷のほうも見えるわよ。ほら、あの辺が西新宿の高層ビル群。けっこう近いでしょう?」
 確かに、闇の中に一際輝いている一帯が、かなり近くに見えました。
 電車の光が走っていくのも目で追えます。
「夏になると窓の外が真っ青で、空に囲まれているみたいで気持ちいいわよ。さ、そこに掛けて」
 楕円テーブルの向こう側、西南向きの大きな窓を背にした椅子を勧められました。
 そこに腰掛けると、私の左側にも地上百数十メートルの夜空が窓から覗いています。

「さてと、その資料は見てくれた?」
 私の対面に腰掛けたお姉さまは、そうおっしゃってから、テーブルの上にさっきの冊子と、今日出かけるときにお渡しした、私の履歴書を置きました。
 右手に長い鉛筆を持たれています。

「はい。すごいですね。色々な有名ブランドさんとお取引されていて。私の好きなブランドさんもありました」
「うん。それはね、デザインを売っているの。大手のアパレルさんに売りこんだり、逆に企画をもらったりしてね」
 どうやらお姉さまはまず私に、この会社のお仕事の概要をレクチャーしてくださるおつもりのようです。

「たとえば、春物のミニワンピースっていうお題が出たとするでしょう?実際の発注は、もっと細々とした条件付きだけれど」
「そしたらうちのデザイナーがデザイン数種類出して、細部をクライアントといろいろどんどん煮詰めていくの」
「サイズごとのバターン起こして、希望があれば、素材の仕入先や縫製工場まで決めて、最終的にはその一切合財ひっくるめてを、発注元に売っちゃうわけ」
「だからもちろん、小売店に出るときはうちのブランド名にはならないけれど、デザインしたのは紛れも無く、うちなわけなのよ」
「会社始めた頃から細々とそうやっていたら、意外に評判良くてリピート多くて、今ではそれだけで会社がまわるくらいになっちゃったの」

「うちみたいな人数だと、何もかも自分たちで、とはいかないからね、分相応なのよ。マンネリにならないし、嫌な相手だったらこちらから切れるし」
「これはひとえに、うちの優秀なデザイナーとパタンナーの実力の賜物なの」

「そっちの薄いほうの資料のインナー関係も、その方式が多いけれど、ちょっと過激なやつは、自社ブランドにして、主にネットで売ってる。これも意外に動くのよ」
「下着って、布少なくて済むから原価は安いのよね。でもあまり安くするとかえって売れない」
「過激なデザインのやつほど上代高めに設定するの。もちろん布質とか縫製には拘って、それなりの付加価値を付けてね」
「そうすると驚くほど出たりするの。面白いわよ」
「直子も、着てみたいの、あったでしょう?えっちなやつ、遠慮しないで言ってね。どんどん着せてあげる」
 からかうようにおっしゃるお姉さま。

「あと、もうひとつの主軸が、一点物の受注生産。ドレスから和服まで、なんでもござれがモットー。こっちはかなり大きなお金が動くの」
「これはたとえば、テレビや映画、舞台での衣装とかの受注ね。もちろん予算さえ合えば個人の注文でも受けるし、それなりにファンも付いているの」

「うちの営業、顔が広いから、思いがけないところから仕事もらってくるのよ」
「このあいだは、イメージビデオのプロダクションから、かなりキワドイ感じなデザインの水着を数着頼まれて、みんなノリノリでやってた。ちょうどいい透け具合とか、真剣に考えて」
 お姉さまが思い出し笑いのようにクスクスされました。
 私は感心しきりで、ふんふん頷くばかり。

「それで、これがうちのスタッフ全員。直子がこれから一緒に働く仲間ね。一応会う前に、教えておく」
 冊子の下からB5判くらいの写真を一枚取り出して、私の目の前に置きました。
 何かの発表会ぽい明るいステージの上で、6人の女性が肩を並べてにこやかに映っていました。
「去年の6月にやった新作プレゼン開始前の集合写真。もうあれからそろそろ一年経つんだなあ」
 お姉さまがしみじみとした口調でおっしゃいました。


面接ごっこは窓際で 04

2015年2月22日

面接ごっこは窓際で 02

 濃茶のビジネススーツにペッタンコになったバーキンを肩に提げたお姉さまと、ピッタリフィットなニットワンピースにウエスト上までのショートジャケットだけ羽織った私が手をつないで歩き始めたとき、時計は夜の7時を半分近く過ぎていました。
 
 昨日のお姉さまとの待ち合わせが夕方の6時40分でしたから、すでに丸一日以上、片時も離れず、お姉さまと一緒に過ごしたことになります。
 お姉さまを我が家の玄関にお迎えしたのが昨夜の8時頃だったので、ほぼ24時間ぶりのお外の空気、ということにもなります。
 あ、でも着いてすぐに、全裸でバルコニーに出たっけ。
 それをきっかけに丸一日分、お姉さまとシーナさまからされたあれこれをどんどん思い出してきて、急に火照り始めたからだを、まだ少しだけ肌寒い春の夜風が心地よく撫ぜてくれます。

「直子ったら、手が少し汗ばんできてるわね?また何かいやらしいこと考えているの?」
 住宅街の薄暗い路地をゆっくり歩きながら、お姉さまがイジワルっぽく尋ねてきます。
「あ、いえ、あの、ちょっと、昨夜のことを思い出しちゃって・・・」
「すごかったわよね。昨日一日だけで、直子、何回くらい気持ち良くなったの?」
「えーと、わ、わかりません・・・たくさん過ぎて・・・」
「でしょうね。ひっきりなしにイっていた印象だもの」
 愉快そうに微笑むお姉さま。

「それで今、下着も着けずにニット一枚だけで素肌覆って、外を歩いているご感想は?」
 からかうように弾んだお声。
「も、もちろん、恥ずかしいです・・・」
「だけど気持ちいいんでしょ?見せたがりマゾだから」
「それは、いえ、は、はい・・・」
「丈がもっと短いほうが良かったわね、せっかくノーパンなのだから。ねえ?もう垂れてきた?」
「あん、いえ、大丈夫です・・・」
「今度、キワドイ長さに改造してあげる。あ、でも新しく作っちゃったほうが早いか」
 人通りが少ないのをよいことに、お姉さまのお言葉責め、絶好調です。

 住宅街が終わり、車が行き交う広い通りに出ると、お姉さまがつないでいた手をそっと解きました。
「ここらへんからは、あたしのビジネステリトリーだから、スール関係はいったん忘れて、チーフと新入社員の関係らしく振舞ってね。フリだけでいいから」
「ビル内にはそれなりに知っている顔が多いから、つまらないウワサとかたてられたくないの。ごめんね」

 お姉さまの背筋が心なしかシャキッとして、歩き方が変わった気がしました。
 颯爽と歩くお姉さまの半歩後ろくらいを追いかけながら、大人の女性って凄いな、って感心していました。
 一方で、外灯も歩行者も増えた明るい通りを、こんなボディコンニット姿で歩いている自分に、アソコがウズウズし始めるのも感じていました。

 お姉さまとの初デートのとき、裸ブレザーにノーパンミニスカートで深夜バス待ちの団体さん前を横切った、あのターミナルから、今回はビル内へと入りました。
 お外とは比べものにならない眩しいくらいの明るさ。
 ショッピングモールは閉店間際とは言え、週末を楽しむ大勢のお客さまが行き交っていました。

 モールの左右にあるショップのショーウインドウに、私とお姉さまの姿が映ります。
 確かにこのコーディネートだと、ピッチリした私の白いお尻の丸さがすごく目立ちます。
 行き交う人、とくに男性がすれ違いざまに振り返り、私のお尻をじーっと見つめてくるのに気がつきました。
 下着を着けていない、ニットの下はモロに素肌な私のお尻。
 昨夜はそこに、柘榴石の珠を何個も埋め込まれた私のお尻。
 からだの奥がジンジン痺れてくるのがわかりました。

 エスカレーターを乗り継いでレストラン街へ。
 こちらは10時までなので、もっとたくさんの人たちが楽しげに行き交っていました。
 お姉さまは迷いの無いご様子で、スタスタとあるお店に入っていきます。
 昨日のイタリアンとは違うお店。
 店内に漂う香りから推測すると、どうやらエスニック系お料理のようです。

「あら?社長さん。いらっしゃいませ。珍しいわね、土曜日のこんな時間に」
 アジアンな民族衣装っぽいいでたちの、お顔立ち派手系美人なご中年のおばさまがニコニコ迎えてくれました。
「うん。今日はちょっとね。これから上に行くから、その前の腹ごしらえ」
「それとママさん、その、社長、っていうのやめてってば。ナベちゃんとかエミちゃんでいいからさ」
 お姉さまが笑いながら抗議されます。
「いいじゃない。だって本当に社長さんなのだもの。立派なものよ。知ったときはびっくりしたけれど」
 ママさんも笑顔で応酬です。

 入口から遠い、一番奥のテーブルに案内されました。
 他のテーブルは8割がた埋まっていて、女性だけのグループやカップルさんばかり。
 少し暗めの店内には、聞き慣れない言葉の軽快なポップスがうるさくない程度に流れていました。

「カオパットふたつとトートマンクンひとつ。あとソムタムを辛くしないでひとつ」
「こちらのお客さまは、パクチー、大丈夫?」
 注文を取りにいらしたママさんが、突然私に聞いてきました。
「えっ?あの、えっと・・・」
「パクチーよ。香菜。この手のお料理によく入っているエスニックな香りの」
「あ、はい。大丈夫です。て言うか、大好きです」
 以前、お友達に連れて行ってもらった台湾料理のお店で遭遇して、最初はなんだかヘンな感じでしたが、いつの間にかクセになっちゃう香りで、今では大好きになっていました。

「オーケー。お飲み物は?とりあえずシンハでいい?」
 ママさんがニコニコしながら、お姉さまに尋ねます。
「あ、ごめん。今日はこの後、上行ってちょっと仕事して、車で帰るから呑めないんだ。チャーイェンふたつちょうだい」
「オーケー。すぐに作るから、待っててね」
 ママさんが厨房のほうへ戻るすがら、現地語らしき言葉で注文を通していました。

「ここはね、うちの御用達みたいなお店なの。打ち上げや、ゲストや下請けさんとの打ち合わせでも使っているから」
 ママさんがアイスティのような飲み物のグラスをふたつ置いて去った後、お姉さまが教えてくださいました。
「へー。あのママさんは、そちらの国のかたなのですか?さっきそれっぽい言葉で流暢にお話されていましたよね?」
「ううん。彼女は日本人。顔立ちはエキゾチックだけれどね。旦那様兼料理長が現地の人なの」
「へー」

「なんかこうシャキッと刺激のあるものが食べたくなって、何も考えずにここを選んじゃったけれど」
 お姉さまがイタズラっぽく私を見つめてきました。
「よく考えると、直子は昨日、ずっとお尻を虐められつづけていたのよね」
 お姉さまがクスクス笑っています。

「えっと、どういう意味でしょう?」
「注文するときに、急に思い出して、急遽あんまり辛くないものに変更したの。これ以上虐めると直子のお尻が可哀想だから」
「ほら、あまりにも辛いものって、食べた後、お尻にくるじゃない?それ以上ヒリヒリしたくないでしょ?」
 笑いを堪えきれないご様子のお姉さま。
「あ、そ、それは、ありがとうございます」
 何とお答えしていいかわからず、とりあえずお礼を言って一口飲んだ飲み物は、とっても甘くて美味しいアイスティでした。

 やがてママさんが、大きなトレイにお料理を満載してやって来ました。
「はい、カオパット。これがトートマンクン。海老のすり身を揚げたもの。こっちがソムタム。パパイヤとライムのサラダね。そっちの赤いタレはかなり辛いから気をつけて」
 初対面の私にお気を遣われたのか、お料理の解説をしつつ、並べてくださいました。
 テーブルの上から立ち上るエスニックな香り。
「あと、これはわたしからのサービス。うちの一推し特製生春巻きね」
 美味しそうな生春巻きが1本づつ載った小さなお皿をお姉さまと私の前に置いてから、ママさんが私の顔をじっと見つめてきました。

「こちらは、やっぱりモデルさんとかされているかたなの?」
 私をじっとみつめつつ、お姉さまに尋ねるママさん。
「へっ?」
 思わず素っ頓狂な声を出してしまった私に苦笑いしながら、お姉さまがご説明してくださいました。
「この子はね、これからうちで働いてもらうことになった新入社員。これからちょくちょく、このお店にもお世話になると思うから、ママさん、今後ともよろしくしてあげて」
 おっしゃってから私の顔を見るお姉さま。

「あっ、あの森下直子といいます。よろしくお願いいたします」
 急いで立ち上がり、ぺこりとお辞儀をひとつ。
「あらあらそうだったの。可愛らしいお顔でスタイルもよろしくていらっしゃるから、てっきりモデルさんかな、って思ったのよ。それはそれは、どうぞこちらこそよろしくね」
 立ち上がった私のウエストから腰くらいまでに視線を走らせた後、ニッコリ微笑むママさん。

「社長さんが連れてこられる女の子は、みんな可愛くてお綺麗なのよね。女のわたしでも羨ましくなっちゃうほど」
「そういうかたたちがいらっしゃると、うちのお店も華やぐから、あなた、えっと森下さん?じゃんじゃん通ってちょうだいね。お金なくても社長さんのツケで食べさせてあげるから」
 冗談ぽくオホホホって笑いながら、厨房のほうへ戻っていかれました。

「新作のプレゼンやショーで頼んでいるモデルの娘たちも、たまに連れてくるからね」
 ハーブの香る美味しいエスニックチャーハンに舌鼓を打ちながら、お姉さまとの楽しいおしゃべり。
「ああいう娘たちはさ、見られることに慣れているし、目立ちたい欲求も強いからね。仕事絡みで会うとき、凄い格好で来るのとか、いるよ」
「夏場だと、胸元からバスト半分くらい出しちゃってたり、背中丸開きだったりね」
「ミニスカートだって、中が見えちゃう前提で当然、見せパン穿いているしね。ノーブラだって、むしろ誇らしげに見せているわ」
「そういう娘たちを、あのママさんも何度か見ているから、もし今、直子がそのジャケット脱いでワンピ一枚になっても、たいして驚かないと思うよ」
 そこまでおっしゃって、お姉さまがニッて笑いました。

「やってみる?」
「えっ?あの、いえ、それは・・・」

 お箸でつまんだ生春巻きを落としそうになり、あわてて口に運んで、もぐもぐしながらそっと周りを見回しました。
 着飾って幸せそうにお食事しているカップル、お酒のせいなのかキャッキャと嬌声をあげて盛り上がっているグループ。
 週末のお店は、相変わらずの大繁盛です。
 私に注目している人たちなんていないでしょうけれど、この場で恥ずかしいノーブラ突起を見せびらかせる勇気はありません。
 
 でも一方では、お姉さまのご命令でボディコンワンピ一枚になり、周りの人たちから、ふしだらとか露出狂とかヘンタイとか、蔑まされてみたい欲求もありました。
 だけどここは、これから何度も訪れることになりそうなお店だし、一度レッテルを貼られたら、ずっと私=見せたがりのヘンタイのままになっちゃいそうだし。
 頭の中は混乱し、胸はドキドキ脈打ち始め、せっかくのお料理のお味もわからなくなっちゃう。

「ほらね。直子の新鮮なところは、そうやって、モジモジ恥ずかしがるところなのよ」
 嬉しそうなお姉さまのお声で、我に返りました。

「モデルの娘たちだと、どう?わたしってキレイでしょ?セクシーでしょ?たまんないでしょ?って感じで、肌を出しても羞じらいがほとんど無いのよね。異性にも同性にも」
「それだけ自分の容姿に自信をもっているからこそだし、自分の肉体の商品価値を認識しているという意味でプロらしいとも言える」
「でもそれって、ある意味高慢だし、逆に媚びているとも言えるわよね。だからちっともエロティックに感じない。まあ、男性だったら、そんなことどうでもよくて、可愛い女の子がキワドイ格好していれば、それだけでラッキーって大喜びなのだろうけれどね」

「直子の場合は、少し過敏すぎる気もするけれど、あたしが辱めると、いちいち真剣に羞じらってくれるから、萌えちゃうのよね」
「今、あたしが直子に、ジャケット脱いでみる?って聞いてからの、直子の仕草や表情を見ているだけで、あたし疼いちゃったもの」
 確かにお姉さまの瞳に、妖しい炎が灯っているような気もしました。

「今日のところは、ここでは脱がないで、普通に食事して早くオフィスに行きましょう」
 お姉さまが少しだけ残っていたお料理を取り分けてくださいました。
「あたし今、直子のことしゃべっていて、自分でどんどん興奮してきちゃった。香辛料とかハーブのせいなのかな?からだがムズムズしちゃって、なんだかえっちな気分が再燃しちゃっている」
「直子の裸がすごく見たくなっちゃった。早くふたりきりになりましょう」
「は、はい」
 お姉さまのお言葉が嬉しくって、ひとつ残っていたトートマンクンを急いであんぐりと頬張りました。


面接ごっこは窓際で 03

2015年2月15日

面接ごっこは窓際で 01

 シーナさまをお見送りした後、ふたりでサンルームの片付けをしてから、ゆっくりとお風呂に入りました。
 私を虐めてくれたオモチャたちをキレイに洗い、お互いのからだの洗いっこもして、その後、バスタブの中でたっぷり愛し合いました。
 お道具類はまったく使わず、ふたりの指と唇と素肌だけで。

 ベッドに入るときには、時計は明け方の4時近くを示していました。
 ふたりとも裸のまま、抱き合うようにシーツに倒れこんで、おやすみのキス。
 さすがに疲れていたのでしょう、お姉さまも私も、すぐに寝入ってしまったようでした。

 目覚めると隣にお姉さま。
 だけどまだぐっすり夢の中なご様子。
 起こしてしまわないように、そっとベッドを抜け出しました。

 お姉さまが私のお部屋にお泊りして、今日もお姉さまとふたりで過ごせる。
 そのことだけでもう、嬉しくてたまりません。
 新しいガウンをお姉さまの枕元にご用意し、お姉さまのおでこにチュッとして時計を見ると、もうすぐお昼な11時25分。
 軽くシャワーして身繕いを済ませ、ブランチの用意をすることにしました。

 素肌に白のフリルエプロンだけ着けてキッチンへ。
 お湯を沸かして、パンケーキを焼いて、スクランブルエッグを作って。
 ルンルン気分でお料理を始めた頃、お姉さまがキッチンを覗きに来ました。

「おはよう。早起きなのね」
「あ、おはようございます。もうお昼近くですけれど。お姉さまよりは早起きしました」
 寝惚けたお顔で、んーって欠伸されるお姉さまも、とても色っぽい。
 私が用意したガウンを素肌に羽織っただけのようです。

「あと20分くらいで出来上がりますから、先にシャワーでもしていてください。新しい歯ブラシもご用意してありますから」
「んーっ。それは大丈夫。ちゃんとお泊りセット持ってきたから。それじゃあシャワー、お借りするわね」
 お姉さまが私に近づいてきて、チュッと頬に触れてから、キッチンを出て行きました。

「休日に誰かの家で手料理を食べるのなんて、すごく久しぶりな気がする」
 お姉さまがたっぷり蜂蜜を塗ったパンケーキを頬張りながらおっしゃいました。
「美味しい」

「手料理なんて呼べるものではないです。卵とパンケーキを焼いただけですから」
「ううん。こういうのがいいのよ。最近こういうの、忘れていたなーって」
「お姉さまはご自分でお料理、あまりされないのですか?」
「料理するのは嫌いではないけれど、最近ぜんぜんしてなかったなー。外食や出来合いのお惣菜ばっかりで」
「私もそうです。でも学校行かなくなって暇が増えたから、最近はちょくちょく自炊しています」
「あたしの場合、作るって決めると無駄に凝っちゃうのよ。ネット通販で珍しいスパイス取り寄せたりして」
「あ、それ、わかります。どこかのお店で美味しいもの食べて、自分でも作ってみよう、って始めると、ひとりで大騒ぎになっちゃいます」

 とりとめのない会話をしながらの楽しいお食事を終えて、まったりお紅茶タイム。
「お姉さまは今日一日、ゆっくり出来るのですか?」
 窓から差し込む春の陽射しは明るくて、ポカポカ暖かそうな土曜日です。

「そうね、大丈夫よ。夜まで直子と一緒にいれるわ」
「夜まで、ということは、日曜日には何かご用事がおありなのですね?」
 ちょっとがっかりして尋ねます。
「うん。業界のコンベンションが関西のほうであって、それに出席しなければならないのよ。だから着替えとか取りにいったん、自宅に帰らないと」
「ビルの駐車場にあたしの車が置いてあるから、帰るのは夜遅くでも大丈夫。だから今日は直子と、まだまだたっぷり遊べるわよ?」
 しょんぼり気味な私の心を見透かしたように、お姉さまが明るいお声で励ますみたくおっしゃいました。
「はいっ!嬉しいです。そうですよね」
 私も前向きに気持ちを切り替えます。

「飯田橋に帰るのは半月ぶりくらいかな。きっと今頃、御濠端の桜が綺麗でしょうね。そうだ、今日はお花見に行こっか?」
 食器を片付け始めた私の後ろをついてきて、私の背中で結んだエプロンの紐を解くお姉さま。
「あ、でも夜に車で帰るとなると、あまりお酒を飲めないから、お花見してもつまんないかも」
 ご自分で提案してご自分で却下されたお姉さまは、持ってきた食器をシンクに置いて、私の顔を覗き込んできました。

「それよりも今日は、直子の家を探検して、私生活の秘密を赤裸々に暴き出しちゃうほうが面白そうよね?」
 お姉さまの手が私の首の後ろに回り、そこに結ばれた紐も解かれ、エプロンが足元にパサリと落ちました。
「ふたりとも裸のまんまで、さ?」
 お姉さまもガウンをスルリと脱いで、同時にギューッと抱きしめられました。

「部屋で裸のまま過ごすのって、とても気持ちいいものだったのね。開放的で、エロティックで。クセになりそう」
 舌が喉の奥まで届きそうな、攻撃的な長いくちづけの後、お姉さまがハスキーなお声でおっしゃいました。
「直子といると、あたしまでどんどんスケベになっちゃう。こんなにえっちに貪欲になるのって、間違いなく生まれて初めてよ」

 お姉さまの指が私のアソコに侵入し、負けずに私もお姉さまの下半身に右手を滑らせます。
 左手だけでしっかり抱き合い、唇は重ねたまま、お互いの指がクチュクチュ音をたてています。
「んふぅ、お姉さまぁぁ・・・」
 互いの唇から糸をひき、切ないため息を頬に感じながらふたり、どんどん高まっていきました。

「直子のお尻、まだ叩かれた痣がうっすら残っているわね。昨夜虐められた場所の具合はどう?」
「まだちょっとヒリヒリしているけれど、大丈夫そうです」
「今日はお通じした?」
「はい、朝起きてすぐに・・・普通でした」
「ふーん」
 キッチンで互いにイカせあった後、洗い物を済ませてからリビングでちょっと休憩。
 ソファーで裸のからだをピッタリ寄せ合うと、すぐにまた疼いてきてしまいます。

 それからはふたり、家中のお部屋を全裸でうろうろ。
 やよい先生やシーナさまに撮られた過去の私の恥ずかしい写真やビデオをじっくり観られたり、ミイコさまのハウトゥ緊縛DVDを流して縛りの練習をしたり、ウォークインクロゼットに篭って私の手持ちのお洋服を下着から全部チェックして、えっちなコーディネートを研究したり。
 気がつくとお外は薄暗くなっていました。
 そのあいだ、私は数え切れないくらい、お姉さまも少なくとも3回はオーガズムを迎えたと思います。

 余韻の残るからだにシャワーを浴びて、湯船にゆったり浸かって、頭とからだにタオルを巻いたままふたり、リビングのソファーにドサッと腰を落ち着けたとき、時計はすでに夕方の6時になろうとしていました。

「ふー。気持ち良かった。ねえ、そろそろお腹が空いてこない?」
「あ、何かお作りしましょうか?パスタとか」
「うーん、直子の手料理も捨てがたいけれど、やっぱりどこか外に食べに出ましょう」
 お姉さまがニッコリ笑い、きっぱりおっしゃいました。
「だって、このままこの部屋にいたら、直子のえっちテクに翻弄されつづけて、帰るのさえ億劫になっちゃいそうだから」
 照れくさそうにおっしゃったお姉さまが、グラスに注いだアイスティーをゴクゴクッと一気に飲み干しました。

「そうだ。これからあたしのオフィスに行こう。下のレストラン街で食事してから、オフィスに連れていってあげる」
「え?いいのですか?」
「いいも悪いも、直子はあたしのとこで働くこと、決めたのでしょう?」
「は、はい・・・」
「だったら何も問題無いわ。会社訪問みたいなものよ。あたしも日曜のために確認しておきたい資料とかあるから好都合。オフィスを案内してあげる」

「あ、あの、入社試験とかは、しなくていいのですか?」
 私の髪をブラッシングしてくださるお姉さまの手が止まり、あはは、って大きく笑われました。
「面白いこと言うのね。うちはそんな大会社じゃないわよ」
「でも私、服飾関係のことなんてぜんぜん詳しくないし、ファッションセンスだって自信ないし」

「大丈夫。そのへんを期待して誘ったのではないから。直子には、あたしの仕事の手伝いをして欲しいだけ、事務関係の」
「それに、直子がそばにいると、きっといろいろ愉しそうだし」
 お姉さまの手が私の頭をやさしく撫ぜてくださいます。
 すっごく嬉しい気分です。
「でもまあ最初のうちは、雑用係みたいになっちゃうと思うけれどね」

「あ、でも一応、履歴書だけは提出してね。会社の決まりだから」
「それだったら、就職活動のときに書いたのが何通か残っています。幼稚園用に書いたものですけれど」
「それでぜんぜんおっけーよ。だったら今日それ、いただいていくわ」
「はい。わかりました」
「それじゃあ服着て、お出かけしましょう」

 お姉さまが下着を着け始めます。
 私もクロゼットへ行こうと立ち上がりました。
 お姉さまの右手が不意に伸びて、私のからだに巻いたバスタオルが剥がされました。
「あんっ、いやんっ」

「うふふ、可愛い声。ねえ、直子はあれ着て見せてよ。先週部室に来たとき置いておいた白のニットワンピ。あれ着た姿、あたしまだ見てないもの」
「あ。あれだったらクリーニングに出して、昨日お返ししようと思ってバッグにいれたままでした」
「え?あれは直子にあげたのよ?絶対似合うと思って。返さなくていいの」
「そうだったのですか。ありがとうございます」
「うん。だから着て見せて。もちろん素肌に直にね」

 あの、すっごくボディコンシャスでからだのラインがクッキリ出てしまう薄でのニットワンピース。
 あれを身に着けたえっちな姿を、週末で賑わうショッピングモールを行き交うみなさまに視てもらいなさい、というご命令なのでしょうか。
 そして、お姉さまの会社の方々にも。

「で、でもこれから伺うのは会社ですよね?」
「社員がいるのじゃないかって、心配しているの?大丈夫。あれ、うちのブランドだもの。もし会っても、似合ってるって褒められるはずよ」
「あ、そうだったのですか。とっても着心地良くてすっごく気に入ったのですが、サイズが小さいのかピッタリし過ぎて・・・とくにノーブラだと胸が・・・」
「ううん。あれはもともとそういうコンシャスなデザインなの。まあとにかく着て見せてよ」
「は、はい・・・」

 お姉さまに押し切られる形で、クリーニング屋さんのビニール袋を破り、ニットワンピを頭からかぶりました。
「ほら!ジャストフィットじゃない。超お似合いよ。とってもセクシー」
 お姉さまが、薄くてふわふわの生地が盛り上がった私のバスト部分をまじまじと見つめながら、感嘆のお声をあげました。
 じーっと視られているその先端には、これ見よがしな突起がクッキリふたつ。
 ああん、恥ずかしい・・・

「まるでキャットスーツみたい。いやらしいくらいピッタリフィットじゃない。それで街歩いたら絶対みんな振り返るわね」
 ビジネススーツを着終えてエレガントなキャリアレディに戻ったお姉さま。
 からかうようにおっしゃってから、ニッと笑いました。

「でもまあ確かに、バストトップはちょっと刺激が強すぎるかな。おっけー。あのコーヒーブラウンのショートジャケットを羽織るといいわ」
「同じような色合いでアーガイルのハイソックスがあったでしょう?あれ履いて、足元はあのショートブーツね」
 私の手持ち衣装を今日一日ですべて把握してしまったお姉さまが、てきぱきコーディネートしてくださいました。

「お尻のまあるくて卑猥なラインは隠せないけれど、行きはあたしと一緒だし、帰りは車でここまで送ってあげるから。それでいいでしょ?」
「は、はい・・・」
 ショートジャケットを羽織って、そそくさとボタンを留めて胸元を隠します。
 鏡に映す自分の姿は、我ながらなかなかオシャレな感じ。
 だけど、からだの内側がキュンキュン疼いて仕方ありません。

「顔が火照っているわね?なあに?もう濡れてきちゃった?その格好で外に出るんだ、って思って」
「はい・・・少し・・・」
「垂れちゃいそう?」
「え?あの、えっと・・・」
「パンツ穿きたい?」
「あ、はい、穿きたいです・・・」
「だーめ」
「あぁんっ」
「えっちな声。本当にスケベな子」
 お姉さまがメイクの手を止めて、満足そうにフフンて笑いました。


面接ごっこは窓際で 02