2021年7月31日

肌色休暇二日目~いけにえの賛美 03

 お弁当はサンドイッチでした。
 カリカリベーコンチーズ、ハムカツに薄焼き卵、ツナマヨ。
 どれも辛子バターがピリッと効いていて凄く美味しい。

 保冷剤に包まれていたので冷んやり口当たり良く、そんなにお腹空いていないと思っていたのですがついつい手が伸びてしまいます。
 甘いイチゴジャムサンドとオレンジマーマーレードサンド、ピーナッツバターサンドはデザート感覚。
 凍らせてくださっていたらしいペットボトルのお紅茶もほどよく溶けて、乾いた喉を冷たく湿らせてくださいます。

 そんなランチタイムを私は全裸の横座りで、お姉さまは着衣の女の子座りで堪能しました。
 私たちをじっと見据えているレンズに見守られながら。

 お食事中の会話です。

「ひょっとしてスタンディングキャットの方々も、今夜同じ別荘に泊まられるのですか?」

「まさか。タチネコは今日から社員旅行なのよ。同じ方向だったから車の運搬をお願いしたの。帰りは車で帰りたいから」
「この山下りたところの、もっと街中に近い旅館に現地集合二泊三日だそうよ。ゲイ御用達の男臭い旅館で、近くの繁華街にその手の飲み屋もあるんだって」

「こんな山の中だとクマさんヘビさんとか、出ないのですか?」

「それはあたしも初めて別荘に来たときに聞いたことがあるけれど、熊に関しては、この山全体のどこかにはいると思うけれど、こっち側に出た、っていう話は聞いたことがないって。こっち側には熊が好きそうな木の実とか食べ物があんまり無いんじゃないか、って言っていたわ」

「蛇でたちのわるい毒持っているのは熱帯の暑いところばっかのはずだから、見たことないけれど出ても怖がらなくていいんじゃない、ってさ」
「リスとか狐、あとアライグマなんかはたまに見るって。向こうがすぐ逃げちゃうらしいけれど」

「お花摘むっておっしゃっていましたけれど、草ばっかりであんまりお花は咲いていませんね?」

「あれ?知らなかった?お花摘んでくる、っていうのは登山家のあいだで昔からある、女性が草むらで用を足してくる、ことを奥床しく告げるための隠語よ。直子も、もししたかったら、その辺の草むらでしちゃっていいからね」

「そう言えばお姉さま昨日、別荘に着いたらあれこれヤられちゃうはず、っておっしゃっていましたけれど、別荘にもうどなたかいらっしゃっているのですか?」

「それはそうよ。誰もいない別荘に行って、あたしたちふたりだけで宿泊中の衣食住全部まかなえるワケないでしょ?シーズン中管理されていて、宿泊者に食事とか用意してくれる人たちがちゃんとスタンバっているわよ」

「そういう意味ではなくて、私にあれこれするっていう…そんなに、お姉さまでも一目置いてしまうくらい偉い、って言うか怖いかたなのですか?」

「怖いかどうかは知らないけれど、偉いって言えば偉いと思うわ。とくにあたしやうちのスタッフや直子みたいな人にとっては頼もしい人。直子も名前くらい聞いたことあるんじゃないかな」

「まあ行けばわかるわ。直子はお世話になる分カラダで払うお約束だから。着いてからのお愉しみ、だね」

 そんなふうにしてお弁当もふたりでキレイにたいらげました。
 食べ終えて出たゴミを手早くまとめられ、再度風呂敷に包まれたお姉さま。
 トートバッグから取り出されたご自分のスマホをチラッとご覧になられました。

「まだ一時前なんだ。あんまり早く戻るとモッチーハッシーのあられもない姿を目撃することになっちゃいそうだし、しばらく直子と遊んであげる。リンコたちにリクエストももらってきたし」

 謎なことをつぶやかれたお姉さまが、私にお言いつけされます。
 
 軽くなった風呂敷包みと緑色のバスタオルを東屋のテーブルの上に置いてくること、そのとき風に飛ばされないようにしっかり重しを置いておくこと。
 終わったら水道でよく手を洗って、潤んでいたらマゾマンコも洗って、飲み終わったお紅茶のペットボトル一本に水道のお水をいっぱいに詰めてキャップして持って帰ること。
 水色のバスタオルの上にはお姉さまのトートバックが残されています。

「ほら、行ってらっしゃい!」

 風呂敷包みとバスタオル、空のペットボトルを持たされ、裸の背中をパチンと叩かれた私。
 再び陽光が燦々と降り注ぐ日向へと全裸で送り出されます。
 汗なのか愛液なのか、内股がとくにヌルヌル潤んでいます。

 すべてお言いつけ通りに済ませて、お姉さまのもとへ。
 お陽さまの下でオールヌードで居ることにも段々と慣れたみたいで、ちょっぴり余裕が生まれます。
 木立沿いの草花をゆっくり観察しつつ歩を進めていたとき…

「あっ!痛いっ!」

 右の足首からふくらはぎにかけて、なんだかチクチクと何箇所か同時に刺されたような痛みを感じました。
 その強い痺れにも似た感覚はジワジワと広がり、我慢できないほどではないけれどジンジンシクシク痒みに近い、なんだかもどかしい痛み。
 左のふくらはぎにも同じ痛みを感じ、一目散にお姉さまのもとへと駆け戻ります。

「お姉さま、何かに足を刺されちゃったみたいですぅ」

「えっ?何?どうしたの?」

 面食らったお顔のお姉さまと至近距離で向き合います。

「ほら、ここなんです」

 大股開きになってしまうのも構わず、右足ふくらはぎをお姉さまのお顔まで近づける私。
 バレエのドゥバンに上げる要領で上げた足の膝を少し曲げた格好。
 突き出された私のふくらはぎを軽くお持ちになり、しげしげと見つめられるお姉さま。

「別に刺されたような傷もどこにも無いし腫れてもいないみたいよ。どこで刺されたの?」

 気のないお返事なお姉さまの手を引っ張って、さっきチクチクッとした場所までお連れします。
 剥げかかった芝生の中にちょっと背の高い草が群集している以外、地面に虫さんとかも見当たりません。

「ああ、これね。イラクサ。この辺には野生で生えているんだ」

 周囲を見渡されていたお姉さまが、そのちょっと背の高い草を指さされました。
 恐る恐る近づきながらも遠巻きに見つめます。
 お花屋さんの鉢植えで見たことがある青ジソに、葉っぱの形や生え方の感じが似ている気がします。

「茎や葉っぱに毛みたいなトゲがたくさんあるのよ。それでちょっと触っただけでもチクッとするの」
「昔の知り合いにプランターで栽培している人がいてね。その人のはセイヨウイラクサって言ってた。輸入物の種子から育てたんだって」

「こんなイジワルな草、なんで栽培なんてするんですかっ!?」

 まだけっこうジンジン痛痒いふくらはぎの疼きを感じながら、ご関係のないお姉さまに八つ当たり。

「薬草としては優秀らしいわよ。乾燥させてハーブティーにして飲むと花粉症の体質改善に効くらしいし、ビタミンや鉄分が豊富だからヨーロッパではサラダやスープにするらしいわ」
「あたしも不用意に触っちゃって手の指をジンジンさせちゃったことある。微妙な痛みと言うか痺れと言うか、不快感がけっこうしつこいのよね」

 私の隣に並ばれたお姉さまも、それ以上は近づきたくないご様子。

「大丈夫よ、直子の足は見た感じ腫れてもいないし、ちょっと掠めた程度でしょ。10分も経たないうちに不快感は消えちゃうはず」
「痒いからって掻いたりするのが一番良くないって。赤くかぶれたみたいになっちゃったらアロエのジェルを塗るといいらしいわ」

 イラクサのお話はそれで終わり、お姉さまに右手を引かれて木陰のところに連れ戻されます。
 大木の根本から少し離れたところに敷きっぱなしな水色のバスタオル、その上にお姉さまのトートバッグ。
 そのバッグが倒れていて、見覚えある不穏なあれこれがこぼれ出ていました。

「これを両手首に嵌めて」

 渡されたのは黒いレザーベルト状の拘束具。
 両手首に巻き付けてリングを短い鎖で繋げば、あっという間に手錠拘束です。

 案の定、ベルトを巻き終え、祈るように胸の前に差し出した両手首を5センチにも満たない短い鎖で繋がれます。
 その鎖に長い麻縄を結びつけられたお姉さま。
 手錠に繋がった麻縄に引っ張られ、つんのめるように大木の下に連れて行かれる私はまるで囚人のよう。

「あの枝が頑丈そうでよさそうね」

 お姉さまの目線を追うと私の身長の一メートルくらい上、大木の幹がお空へ広がるように三つに枝分かれしたあたりのことみたい。
 お姉さまに視線を戻すと、麻縄のもう一方の先に、先ほどお水を入れてきたペットボトルを結び付けておられます。
 何をされるおつもりなのかしら?

「直子、もう少し木に近づいてくれる?」

 お姉さまからのご指示で大木に寄り添うように立ちます。
 手錠で繋がれた両手は胸の前。
 ペットボトルを持たれたお姉さまが近づいて来られました。
 私の手錠に繋がった麻縄は、まだずいぶん余って地面でトグロを巻いています。

 お姉さまがペットボトルを宙空高く放り投げられました。
 地面に落ちていた縄が、ヘビさんが這うようにシュルシュルっと動きます。
 やがてペットボトルは枝分かれをした幹の又を超え、地面に真っ逆さまに落下します。

「あっ!」

 縄に引っ張られて手錠ごと両手がクイッと上へ少し引っ張られました。

「いやんっ!」

 地面に戻ってきたペットボトルを拾われたお姉さまが、縄をグイっと引っ張られました。
 私の両手も飛び込みをするときの両手のように揃えたまま、頭上高く引っ張り上げられます。
 ピンと張り詰めた縄がもう一度グイっと上に引っ張られ、私は爪先立ちに。

 お姉さまが余っている縄を緩まないように力を込めて引っ張りながら、隣の大木の幹に縛り付けています。
 私は両手を揃えたバンザイの形の爪先立ちで、大木に寄り添うように吊るされてしまいました。
 何もかもが剥き出しな全裸の姿で。

「ふーん、なるほどねえ。確かにリンコたちが口々に言っていたみたいに猟奇的な絵面ではあるわね」

 お姉さまがスマホを構えられ、カシャカシャ写真を撮りながらおっしゃいます。

「リンコたちに頼まれたのよ。熱心だったのはミサのほうだけれど、あの広場の大木に全裸の直子を吊るして写真を撮ってきてくれって」
「大自然の緑と青空と直子のいやらしい肌色ヌードとのコントラストで絶対ゾクゾクする写真になるからって」

「あたしの技量じゃ縄だけで怪我しないように木に吊るすなんて芸当出来ないからね、これは苦肉の妥協策。本当はもっとSMっぽい凄惨な姿にしちゃいたい気もするのだけれど」

 そんなことおっしゃりつつ吊るされた私の前を行ったり来たりして、色々な角度から撮影されるお姉さま。
 お姉さまの背後の三脚ももちろん私に向けられていて、この撮影のご様子もライブ動画撮影されているみたい。

 撮影されたお写真を確認されているのでしょう、三脚の後ろへと下がられたお姉さまがうつむかれてスマホ画面に見入られています。
 そのうちにふとお空を見上げられ、日向を避けるように東屋のほうへと駆け出されるお姉さま。
 えっ!?私はこのまま放置ですか?

 吊るされた私から十数メートル離れてしまわれたお姉さまは東屋の、私に横顔をお見せになる位置のベンチにお座りになり、熱心にスマホの画面をなぞり始めます。
 どうやらメールを始められたみたい。
 おそらくリンコさまたちに写メを送られるのでしょう。

 かまってくださるかたがいなくなり、途端に心細くなってきます。
 今の私の為す術もない状態…

 全裸で手錠拘束された腕を上に引っ張られ、爪先立ちで足元も覚束ず。
 剥き出しのおっぱい、剥き出しの下腹部、剥き出しのお尻。
 本来お外では外気に触れさせては行けない秘部のすべてを、お陽さまの下に晒してしまっている自分。
 隠したくても隠せない生まれたままの姿。
 
 お姉さまはあり得ないとおっしゃっていましたが、もし不意にここに第三者が現われたら、私はどうなってしまうのでしょう…
 途端に思い出す幼い頃に映画やドラマ、小説で感情移入していた悲劇のヒロインたち…

 怪物に捕まったお姫様、悪人に拐われたご令嬢、敵に囚われた女スパイ…
 手足の自由を剥奪され恥ずかしい格好にさせられて、それから…
 彼女たちもきっと今の私の心境と同じだったことでしょう。
 
 今日初めて訪れた名前も知らない山中で、首輪を嵌められた囚人として真っ昼間から素っ裸で磔に晒されている私。
 罪状はもちろん、街中や公共施設内での度重なる公然猥褻罪。
 そんなに見せたいのなら、ずっとそうして見世物になっていろ、と。

 屈辱的で、絶望的で、恥ずかしくて、みじめで、無力で。
 いつものマゾ性とはまた何か違う、せつなさと言うか悔しさと言うか、早くこの状況から解放されたいという祈りにも似た感情が湧き出てきます。
 
 もう5分以上は経っていると思うのですが、戻ってきてくださらないお姉さま。
 草木がそよぐほんの小さな物音にもビクンと怯えてしまう私。
 そんな状況なのに顕著に性的興奮の萌芽が露呈している、はしたな過ぎる自分のからだ…

 知らず知らずに爪先立ちの右足だけ少し膝を曲げて宙に浮かせ、内腿同士を擦り付けてしまいます。
 予想以上にヌルヌル過ぎて恥ずかし過ぎる…
 
「ミサから駄目出しくらっちゃった」

 ようやく戻ってこられたお姉さま。
 時間にして十分も経っていなかったでしょうか。
 私にとっては体感数時間にも思えた狂おしい放置責めでした。

「って直子、またよからぬ妄想していたでしょう?凄くエロやらしい顔になっているし全身汗みずく」
「でも汗だけでもないようね?下半身で一目瞭然」

 お姉さまの恥ずかし過ぎるご指摘に自分の両脚を見ると…
 確かに内腿から滑り落ちている愛液が明らかに白濁していました。

「ミサから指摘されたのもそこなのよ、恥ずかしく晒されているのに表情に余裕あり過ぎ、怯えが足りないって。あたしは一周回ってそのアンバランスさもシュールでアートな感じでいいかな、と思ったのだけれど」

 お姉さまが三脚を畳まれ、その支柱ごとレンズを私に向けてきます。

「放置したのが正解だったみたいね。直子はどんどん自分で自分を追い込むタイプの妄想力旺盛で貪欲なマゾだから」

「ていうことで、ここからはビデオで撮影ね。直子はあたしがいないあいだに没頭していたその妄想に全フリして、やめてください、とか、下ろしてください、とか実際に口に出して真剣に抵抗しなさい。このレンズが直子を拐った悪玉だと思って」

「本当に囚われの身になった気持ちになって絶望的な感じでね。うまく出来なかったら、本当に一晩ここに吊るしっ放しにするから」

 私は本当にそんなふうな気持ちになっていました。
 お姉さまのお言葉が終わるか終わらないうちに全身をくねらせていました。
 
 下ろしてください、許してください、虐めないでください、ロープを解いてください、と大きな声で懇願しながら、激しくジタバタして内股を擦らせ、顔を歪ませ髪を振り乱し…
 
 そんなふうにしているうちに、さっき放置されていたときに感じていた絶望感、恥辱感が快楽への甘い期待と一緒に舞い戻ってきます。
 呼応するようにますますダラダラ内腿を滑り落ちる私の恥ずかしい欲情の雫。

「おーけー。いい画が撮れた。アートから180度、扇情的って言うか生臭いほうへと振り切れちゃったけれど」

 お姉さまが三脚を地面に置かれました。

「グッジョブにご褒美を上げましょう」

 私に近づかれるお姉さま。
 見つめ合うふたり。
 マゾマンコにブスリと挿し込まれる二本の指。
 ロープに吊られてゆらゆら揺れる私を抱きすくめて重なる唇、蹂躙されるマゾマンコ。
 
 青空に私の断続的な淫ら声が溶けていきます。
 お姉さまの美しく火照られたお顔に、私のマゾ性が充足感を感じています。

 縄を解かれて東屋の水道でされるがままに素肌の汗や恥ずかしい分泌物を流されます。
 私もお姉さまもかなりグッタリ。
 でもそれは達成感、清々しさ多めなグッタリ。

 緑色バスタオルでからだを拭われると、まだからだのあちこちがビクンビクン。
 お姉さまがもう一度、ギュッと抱きしめてくださいました。

「さあ、車に戻りましょう。もう一時半回っているし、タチネコの連中も落ち着いている頃でしょう」
「ワンピのボタンは全部キッチリ留めていいわ。モッチーハッシーにこれ以上サービスする筋合いも無いし」

 私のハダカがおふたりへのサービスになっているのか、という点には疑問も残るのですが…
 お姉さまがとてもお愉しそうなので私も嬉しくなります。

 帰り道は広場の正面玄関から出て、整備された歩きやすい道をふたり、手を繋いで歩きました。
 車で通ったとき私は気づかなかった横道があったようで、ああ、こういうふうに繋がっていたんだ、と腑に落ちました。

 駐車場に戻ると本橋さまと橋本さまも、頬がくっつくくらいお互いにぴったり寄り添われ、ベンチでグッタリされていました。

「お待たせ。愉しめた?」

 お姉さまがからかうようにお声がけ。
 気怠そうなお顔で、んっ?、とご反応されるおふたり。

「男性の低い唸り声っていうのも雑音のない自然の中では意外に通るのよね。車の中ではシていないっていうことはわかったわ。さ、行きましょう」

 えっ?私、何も聞こえなかったのだけれど…
 気怠そうなまま立ち上がられるおふたり。
 でもおふたりともなんだかお顔がスッキリされているような。
 あ、手を繋いでいらっしゃるし…

 運転席にはラグジャーの本橋さま、エンジンをかけると流れ出るクイーンさんの厳かなバラード。
 ちょうどいいボリュームでエアコンの涼しさも気持ちいい。

「あなたたち、ちゃんと汗拭いた?何か微妙に車内がオトコ臭いんですけど」

 私もちょっと感じていました。

「水道が無かったから完璧とは言えないけれど、ちゃんとしたつもり…」
「あ、それからサンドイッチごちそうさま。美味しかった…」

 運転しながら本橋さまが少し早口でお応えになります。

「使ったタオルとかティッシュとかゴムとかは?」

 お姉さまってば、お声にSっ気滲み出てますってば。

「出たゴミは全部コンビニ袋で密閉して助手席の下に置いてあります。持ち帰ります。ぼくら、チーフが嫌がることはしませんから…」

 お姉さまの見透かしたようなおからかいが恥ずかしいのか、段々とお声が弱々しくなられる本橋さま。
 それとは関係なく車は再び木立の道を順調に進んでいます。

「んなこと言うなら、俺らにだってアンアン甲高いアヘ声が聞こえていたし、今だってなんとも言えないサカッた女臭さを嗅ぎ取っているんすけどっ!」

 助手席でグッタリされていたチャラ男系橋本さまが、こちらも甲高いお声で突然のご反撃。
 一瞬の沈黙の後、車内が爆笑で包まれました。
 その直後…

 車のウインドウ越しの風景がガラッと変わりました。
 突然木立が途切れ、目の前に平地が広大に開け、その奥にそびえ立つ荘厳な建物。
 さっきの広場から5分も走っていないと思います。

 えっ?何これ!?凄い…


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