2021年6月27日

肌色休暇一日目~幕開け 20

 「夕方の大露天風呂でシヴォンヌさんだっけ?あのハリウッドおっぱいの人に引き止められてお願いされたのよ。半額以下、いえ四分の一の料金でいいから形だけでも今夜フリの宴会が入ったことにしてくれないか、って」

「四分の一っていうのは宿の取り分らしくて、でも臨時に宴会に呼ばれたっていう連絡が宿から行けば後日いくばくかのチャージバックと実績ポイントが貰えるらしいの。事務所での待遇も上がるし」

「あの子たちって日銭商売じゃない?そのくらいの額なら領収証貰っとけば福利厚生か接待の経費で落とせるし、まあいいかなって三分の一で手を打ったの」
「あの時点でも女将さんやキサラギさんには充分よくしてもらっていたし、ね?」

 準備しましょうか、とおっしゃるわりにソファーに腰掛けてワイングラスを傾けるだけのお姉さま。

「あちらお三人と私たちふたり、で宴会ですか?」

「ううん、昨夜大浴場で知り合った連泊OL四人組にも声かけるらしい。だから総勢…4たす3たす2…つまり九名の女子会」

 全裸でお姉さまの前に立った私を見上げつつ、わざとらしくコミカルにお姉さまがおっしゃいました。
 意外にお酒の酔いがまわられているのかもしれません。

「でもでも、私、この格好で行くのですか?」

 まったくもう、お姉さまのお考えはまったく予測不能と少々呆れながらも、女性九名での女子宴会とお聞きして邪な期待にムラムラしてくる私のふしだらなからだ。

「あ、そうだった。いいんじゃない?どうせ直子は虐められるんだし。あの子たちも温泉でのイジりじゃ不完全燃焼で、そのリベンジってとこもあるだろうし」
「あ、でも最初から全裸じゃ面白味に欠けるかな?イジられて辱められながら虐められてとんでもない痴態を晒すのが直子の真骨頂だし」

 ムラムラがゾクゾクへと進化してしまうようなお言葉をくださったお姉さまが立ち上がられ、壁際のご立派な総桐箪笥へと近寄られます。

「キサラギさんが確か、特別にここに、って…」

 真ん中辺の抽斗を開けられて何かビニール袋をふたつつまみ出されました。
 見ると、没収されちゃった浴衣と同じようなお色柄の浴衣?と赤いおふんどし?
 でもふたつとも以前のと何かが違う気も…
 お姉さまがビニール袋をお破りになられ、中の布地を引っ張り出されます。
 
 やっぱり赤いおふんどし…でも何か見た目の質感が…
 お姉さまが広げられた赤い布片は、明らかに先ほどのものとは違っていました。
 全体的にヒラヒラ頼りない感じ。
 薄っぺらくて透け感まで感じる、この素材はシルクかしら?

 浴衣のほうは広げてひと目で違いがわかりました。
 丈が短い、と言う生半可なものではなく、おそらく腿の付け根すぐ下ぐらいまでしか届かない短さです。
 浴衣と言うより半纏?ハッピ?
 帯も付いていて、お色柄も大露天風呂に行くまで着ていたものと同じではあるのですが…

「本当にここの人たちって至れり尽くせりね。キサラギさん、直子のこと、あたし以上にわかってらしゃる」

 上機嫌なお姉さまが私の顔を覗き込んできます。

「あたしが着せてあげるから、その前にトイレに行って出すもの出してきちゃいなさい。終わったらビデでちゃんとキレイに洗いなさいよ」

 背中を軽くポンと押されておトイレへ。
 出すもの出して、ってお浣腸もしておけっていうことかしら?
 でもお浣腸薬、持ってきていないし…

 訝りながら便座に座ります。
 ほどなくオシッコが、予想より随分長く出ていきました。
 お酒飲んだせいかな?

 一度流してから念の為、んっ、と力んでみましたが、固形物が出たがっている気配はありません。
 水流をビデに合わせ膣口を洗浄、右手を股間に潜り込ませて自分で陰唇を押し広げ念入りに洗いました。
 水流が時折クリットをヒットして、そのたびに小さくンゥッ。
 最後に強めの水流でお尻の穴と周辺も念の為の洗浄。

 おトイレから戻るとお姉さまはソファーでメイクの真っ最中。
 と言ってもファンデし直して眉と目元、口元をチョチョイと弄るくらい。
 それだけで艶っぽさ数倍増しなのですから、さすが私のお姉さま。

「じゃあ、あたしの前に立って」

 お姉さまがコンパクトミラーを覗き込んだままでおっしゃいます。
 お化粧中なお姉さまの前に全裸で立ちはだかる私。
 両手が自然に後頭部へ行ってしまうのは条件反射なのか、はたまた一種の刷り込み現象なのか。

 やっとお顔を上げてくださったお姉さま。
 すぐ目の前に私の剥き出しなアソコ。

「本当に直子って、見事な上付きよね?こうして明るいところで間近であらためて見ると、しみじみそう思うわ」

 今更なことを今更しみじみおっしゃるお姉さま。

「そんなふうにただ立っているだけで、割れ始めからクリの頭巾まで丸見え。その上、直子のクリはすぐ腫れちゃって、すぐ頭巾も脱いじゃうし」
「毛があればもうちょっとはマシなのでしょうけれど、自分の意志で失くしちゃったのでしょう?本当に恥ずかしいマンコ、って言うか、恥ずかしがりたいヘンタイのマゾマンコ、って感じよね?」

 イジワルい笑顔なお姉さまからの唐突なお言葉責め。
 ビデでせっかくさっぱりした粘膜がジワリと潤むのがわかります。

 お姉さまが赤い布片を手にゆっくり立ち上がられたので、私は一歩退きます。
 私のウエストがお姉さまの両手で挟まれて、赤くて細い紐が縛り付けられます。
 お尻のほうから股下をかいくぐってきた布片が下腹部の前に垂れ下がり、再度赤いおふんどし姿の完成。

 布の肌触りがさっきのものとは全然違います。
 薄くて軽くてしなやかで、逆に言えばとても頼りない感じ。
 更に今度のやつは前垂れ部分がとても短くて、赤い布地が作るVゾーンの先端までも届いていないみたい。
 その短い前垂れ部分をお姉さまがギュウギュウ引っ張られます。

「あんっ、あぁんっ」

 お尻の割れスジに沿って覆っている布片が絞られて紐状となり、割れスジにクイクイ食い込んできます。

「これはさっき、おっぱいを隠した罰。命令違反分のお仕置きね」

「えっ?私、フロントでもここでも、頑張っておっぱい隠しませんでしたよ?」

 とても恥ずかしくて何度も隠そうとは思ったけれど隠さなかったのは事実ですから、控えめに抗議してみます。

「何言ってるの?その前よ。正面玄関入って三和土で草履からスリッパに履き替えるとき。仲居さんの前で咄嗟におっぱい庇っていたじゃない?」

 冷たいお声のお姉さまが、やっと前垂れを引っ張るの止めてくださいました。
 お尻部分の布が完全にTバック状になっているのがわかります。
 たぶんお尻の穴さえ隠せない、か細い紐状に。
 剥き出しの尻たぶをペチンと軽く叩かれます。

「あんっ!」

「今の口答えもお仕置き対象ものね。後で何か考えるから」

 細めた瞳で冷たくおっしゃり、つづいて浴衣?を手に取られます。

 袖を通してすぐにわかりました。
 それはまさしくハッピでした。

 丈は両腿の付け根スレスレ。
 帯を締めるとその裾がもう数センチ上がり、前垂れで隠しきれない赤いVゾーンまで覗きそう。
 おまけに胸元のVゾーンも浴衣よりルーズなので、おっぱいの谷間がこれみよがしに見えています。

「あら、色っぽくていいじゃない?いかにも、the温泉街、って感じ。じゃあ最後の仕上げね」

 お姉さまが櫛で髪を梳かしてくださり、眉と目元をチョチョイ。
 唇にだけ幾分グロッシーな紅をさしていただき、おめかし終了。

 お姉さまが私のハート型ポシェットにご自分と私のスマホとカッパさまこけしを突っ込まれ、ご自分でお持ちになります。
 時刻は夜の8時40分。
 お姉さまに手を引かれお部屋を後にしました。

 お廊下には相変わらずジャズピアノの調べが低く流れています。
 やがて十字に交差したお廊下をそのまま真っすぐに進むとつきあたり。
 左側のお部屋の入り口に、個室宴会場、の木札。

「ああ、ここね」

 横開きの引き戸をスーッと開けるとそこは沓脱。
 お草履からスリッパに履き替え、一段上がった板の間の重そうな鉄製ぽいドアを開けます。

「ああ、やっと来たー。もう先に始めちゃってるからねー」

 黄色いお声にお出迎えされてお部屋の中を見ると…
 
 えんじ色の絨毯が敷き詰められた12帖くらいの洋間。
 壁際にシルバーグレイのソファーがLの字型に並び、その前に大きな楕円形のテーブル。
 お部屋奥がステージ状になっていて、大きなモニタースクリーンとカラオケの機械。

 宴会場とお聞きして、畳敷きのお座敷大広間を予想していた私はびっくり。
 まるで都心の大きめなカラオケルームと言うか、照明が少し薄暗いこともあって洒落たカラオケバーみたいな雰囲気。

「このおふたりが、さっきから話題になっているレズビアンカップルの、ですのちゃんとそのお姉さまね」

 金髪のカレンさまのハスキーなお声が私たちをご紹介してくださいます。

「それでこっちの4人組が隣の県で製薬会社の営業職をされてるOLさん傷心慰安旅行、卯月の間の御一行様。左からスズキさん、コガさん、ミドリカワさん、サノさん」
「うづきの間、ってなんかいやらしくね?」

「おお、よく名前覚えてるねぇ。さすがベテランお水っ!」

 OLさまのおひとりから混ぜ返されるカレンさま。
 Lの字型ソファーの一辺に、オレンジ色、黄色、ピンク色、赤色の旅荘ご用意な浴衣をそれぞれ召されたOLさま四名が並んで座られています。
 L字のコーナーにコンパニオンのカレンさま、サラさま、L字が曲がってシヴォンヌさまと座っていらっしゃるので、そのお隣にお姉さま、私の順で着席しました。

「それじゃあメンツも揃ったし、もう一度カンパーイっ!」

 カレンさまの音頭でみなさまそれぞれ飲み物を高く掲げます。
 シヴォンヌさまがワイングラスにおビールを注いで回してくださったので、それを持ってとりあえずカンパーイ!

 ひと口飲み干してから、あらためて周囲を観察します。
 スピーカーからは私があまり詳しくないJポップの軽快な男声曲がうるさすぎずな音量で流れています。
 どうやらモニタースクリーンの画面と連動しているみたい。

 コンパニオンのお三かたは、さっきお部屋でお見かけしたサラさまがおっしゃった通り、半袖ミニスカートのセーラー服姿でメイクも派手めにバッチリ。
 お三かたとも胸元に赤いリボンを結ばれてキュートでもあるのですが、やっぱり何か異様な感じでもあります。
 何て言うか、行ったことはないけれど映画や写真で見る、夜のお酒のお店のオネーサマがた、という雰囲気。
 
 とくに比較的大柄なシヴォンヌさまにはサイズが小さ過ぎたのでしょう、布地がパツパツなボディコンシャスに貼り付いてしまっていて、そのグラマラスな曲線が乱暴なお色気を振り撒いています。
 テーブルに隠れて見えませんが、お三かたとも先ほどのサラさまみたく下にスウェットも穿いておられないでしょうし、テーブルの下では短すぎるスカートから下着が丸見えなことでしょう。

 大きな楕円テーブルの上にはクラッカーやチーズ、乾き物が乗ったオードブルの大皿二枚と、野菜ステイックのグラス、それにワインクーラーが3つ。
 アイスペールがいくつかとおそらく缶ビールや缶酎ハイが入っているのでしょう銀色のクーラーバッグが3つ、その脇に伏せられたジョッキやコップ、ワイングラスがたくさん。
 カラオケステージ前には早くも潰された500ミリの缶ビール缶酎ハイの空き缶が数個、大きめなコンビニ袋にまとめられています。

 サラさまカレンさまがOLさまがたのお相手を、シヴォンヌさまがお姉さまのお相手を賑やかにされ、お楽しげにご笑談。
 OLさまがたは色とりどりの酎ハイやカクテル、サラさまカレンさまはおビール、シヴォンヌさまは冷酒、お姉さまは白ワイン。
 みなさまお夕食を終えてすぐなのでしょう、テーブル上のおつまみには殆ど手をつけておられません。
 
 半開きになったクーラーボックスの中にシードルの小瓶をみつけ、私はそれに切り替えます。
 新しいグラスに注いでフーッとひと口飲み下してから、あらためて右斜めにおられるOLさまたちのほうを盗み見ます。

 ご年齢は…お姉さまよりちょっと下…かちょっと上くらい?
 メイクは申し訳程度だけれど、それは女子会と割り切られてのご油断だと思います。
 四名さま全員、見事に暖色系の浴衣を選ばれていて、その一角がとても華やか。

 目立つほど髪を明るめに染めておられるかたもおらず、カレンさまたちが醸し出されるギャル感とはあまり馴染みそうもない、意識高い系まではいかないまでもSNS映えにはこだわりを持たれておられそうな、トレンディなオフィスレディさまがた?
 黄色い浴衣のボーイッシュヘアな女性が一番落ち着いていらっしゃるぽくて、その座の中心的リーダー。
 ピンク色の浴衣のソバージュヘアの女性が何となくお元気が無い感じ。

 ときどきそこかしこから私へ盗み見の視線を感じつつ、何となくシラッとした雰囲気の女子会時間が過ぎていきます。
 ロリータなサラさまが幾度となく意味ありげな視線を私に投げてくださるのですが、かと言ってそれ以上の進展は無く、私にはどなたも話しかけてくださらず、時間とお酒だけが喉元と空間を過ぎていきました。

「ねえ?もうお酒も飽きちゃった。あんたたち宴会コンパニオンなんでしょ?なんか芸でもやって盛りゃ上げてよぅっ!」

 口火を切られたのは、私から視て一番右端のオレンジ色の浴衣の女性。
 ショートワンレングスの髪がカッコいい少しグラマラスな姉御肌ふう。
 少し呂律が怪しいのはご酩酊のせいでしょう。

「芸たって、うちらピンキー専門だしさ…んじゃあ、野球拳でもしてみる?あとはツイスターゲームとか」

 気づかないくらいの苦笑いを一瞬、浮かべられた金髪のカレンさまがお愛想笑いでお相手されます。

「えーっ、何言ってるの?女同士でハダカになって、くんずほぐれつして何が面白いのよ?」
「そうそう、うちらおたくらのハダカ、露天風呂でイヤっていうほど視たし視られたし」
「おっぱい自慢でもしたいの?そりゃあうちらはレーナ覗いて全員ヒンヌーですよーだ!」
「野球拳やるんなら板前の松ちゃん連れてきて。松ちゃん相手なら素っ裸にひん剥いてやるっ!」

 OLさまがた一斉の大ダメ出し。
 そっかー、オール女子同士だと一般的にはそういうご反応なんだ…
 と、妙にお勉強になっている私。
 シードルをグイッと飲み干します。

「んじゃあカラオケでもする?」

 OLさまがたのダウナーな勢いに若干引き気味なカレンさまからの二の矢。

「ここのカラオケ、さっき見たら有料じゃん。二曲5百円、五曲千円って、何?」
「わたしら昼間、町まで出てカラオケボックスでさんざ歌い倒してきたっつーの。もう声ガラガラ」
「女だけで温泉宿に二泊なんて、するもんじゃないわねー。一泊目は目新しくていいとしても、すること無さすぎて、とっくに繁華街のネオンが恋しいわ」
「町に出ても遊んでいるのはカップルか女子供ばっかりだったし、イイ男軍団なんてどこにも転がっていないしー」

 ネガティヴなブーイングをここぞとばかりに撒き散らされるOLさまがた。
 コンパニオンお三かたも、もはや苦笑いを隠されようともされず、お手上げなご様子。

「んじゃあ開き直って、みんなでパンスト相撲でもする?…」

 やれやれ顔なカレンさまが開き直られたご提案をされようとされた、そのとき…

「それならみなさんに、面白いものをご覧いただこうかしら」

 スクッと立ち上がられたお姉さまが、みなさまからよく見えるテーブルの中央に、あるものをお置きになられました。
 それは私のスマホ。
 あんっ!いやんっ!
 
 間髪入れずにご自分のスマホからコール。

 …これが直子のマゾマンコです…奥の奥まで、どうぞ、じっくり、視てください…

 恥ずかし過ぎる音声とともに浮かび上がる、私の恥ずかし過ぎるセルフくぱあ画像。
 いやらしい呼び出し音声は無情に三回繰り返され、ようやく留守電サービス音声に。
 私の中で被虐が、盛大に背筋を貫きました。

「ちょっと、今の声、何?この画像、何?」
「えっ?これが待受なの?この人の声とヌードだったの?」
「マゾですのってそういうこと?信じられないんですけど…」
「もう一回見せて、もう一回」

 にわかにお騒がしくなられたOLさま四名中三名さまとコンパニオンのお三かた。
 リクエストに快くお応えになられ、何度も私のスマホを鳴らされるお姉さま。

 …これが直子のマゾマンコです…奥の奥まで、どうぞ、じっくり、視てください…

 凄い、自分でマンコ拡げてる、正真正銘露出狂のヘンタイじゃん、と私のスマホをおのおのの手に回しつつ、画面をしげしげと眺められるみなさま。
 決まって最後に実物の私のほうへと、信じられないというふうな視線を向けられます。
 マゾマンコがキュンキュンわなないてしまう私。

 そんな中でピンクの浴衣のソバージュヘアの女性だけが、私の顔を射抜くような、挑戦的なお顔で睨まれていました。

「今、ナオコ、って言ったよね?」

「は、はい…」

 威嚇そのものな射すくめられる視線に気圧されて、ちょっと掠れたお返事。

「てめーっ!」

 黄色いお声とともにテーブル上の飲み物がこぼれる勢いで立ち上がられました。
 先ほどまであんなにお元気無さそうでしたのに…


2021年6月19日

肌色休暇一日目~幕開け 19

「どうぞー。お座敷に持っていってちょうだい」

 キサラギさまが凛としたお声でお呼びかけ。
 えっ、そんな…

 赤いおふんどしまで外されて、今の私は文字通りの一糸まとわぬ全裸。
 おまけにお部屋の入り口にからだの正面を向けてマゾの服従ポーズ。
 お姉さまからご命令されたばかりですし、いくら恥ずかしくても勝手にポーズは崩せません。

 ドアから入ればすぐにお部屋全体が見渡せます。
 て言うか、間の悪いことにドアから見て真正面の位置に真正面を向いて裸身を晒している私。

 まず、天ぷらを盛った器を乗せたお盆を捧げ持たれた三十代くらいに見える、細身で短髪の男性が入ってこられました。
 隠したい、という欲求が全身を駆け巡りますが、やっぱり両腕を動かせないのが私のマゾ性。
 そのすぐ後には、恰幅が良く角刈りの頭に白髪が交じる強面のご中年男性。

 おふたりとも最初に私の姿に気づかれたときは、唖然、というお顔。
 広間を進まれる足がピタリと止まりました。

 私はポーズは維持しつつ、うつむいたり、首ごと曲げて顔を逸らしたり。
 でも、おふたりのご反応も気になってしまい、上目遣いに視線をチラチラ送ってしまいます。

 おふたりのお顔が示し合わされたかのように、同時にお口元をほころばされ目尻をニヤリと下げられました。
 どうやら事前に私がそういう趣味の女だと聞かされてきたのでしょう、そこにご遠慮や照れの気配はまったくありません。
 私から2メートルくらいの距離を置いて立ち止まられたまま、真正面からしげしげと私のからだを視てきます。

 それはそうでしょう。
 私はと言えば、両手を重ねて後頭部に置き、両腋の下以下を全開にして、眼前の男性がたに裸のからだ全部をさらけ出して棒立ちしているのですから。
 視られているのがわかっているのに、剥き出しのおっぱいを隠そうともせずに。
 おっぱいはおろか下腹部から足の先まですべてを赤裸々に。
 どうぞ存分に御覧ください、と挑発しているのに等しいポーズなのですから。

 両足は休めの形に開いていますから、両内腿のあいだに芽吹く腫れ上がった肉の芽やジワジワ滲み出て襞を濡らす雫まで見えているかもしれません。
 至近距離の男性2名と視線を合わせて見つめ合うわけにもいかず、視線が泳ぎまくり。
 結局おふたりの足元あたりに目線を落として為す術も無く立ち尽くしています。
 心臓ドキドキ、背筋ゾクゾク、心はビクビク、アソコはヒクヒク。

 目線を逸らしたときに、もうひとつ別な恥辱にも気づいてしまいました。
 お部屋を出るときに、広間の座卓に充電のために置かれた私のスマホ…
 
 それが、出たときには絶対に敷いていなかった日本手ぬぐいの上に、あらためて置かれていました。
 ご丁寧に出たときと同じようにリモコンローターの本体と並べて。

 ということはどなたかが確実にスマホをお手に取られたということ。
 お手に取られて少しでも傾ければ、確実に私の恥ずかし過ぎる待受画像が浮かび上がる仕組みです。
 つまり確実にどなたかには、あの恥知らずな待受画像も視られてしまった、ということを意味していました。

 ご覧になられたのがキサラギさまであればまだマシですが、見ず知らずの仲居さまや各お部屋のお掃除を担当されているご従業員の男性とか…
 どなたに視られてしまったのか…いいえそれに、決しておひとりだけだとも限りません…
 
 お留守をいいことに、発見者が従業員のみなさまをお集めになり、口々にその画像のお下品さを蔑まされていたかも…
 疑心暗鬼が妄想を暴走させ、マゾ性大氾濫…

「おらっ、松っ!さっさとお座敷にお持ちしねえか!」

 突然ドスの利いた低いお声がハッキリ聞こえ、私と細身のほうの男性が同時にビクンと肩を震わせます。

「あ、へいっ!」

 私の顔から太腿くらいまでを矯めつ眇めつ舐めるように見つめていた細身男性が甲高いお声でお応えになられ、テヘッ、みたいなバツの悪そうな薄笑いを浮かべてから、両手で捧げ持ったお盆とともに小上がりのほうへ向かわれました。
 
 すぐに角刈りのほうの男性が細身男性が立たれていた位置までぐいっと一歩踏み出され、後ろ手を組まれてお顔をより突き出され、再び私をしげしげと見つめ始めます。

 その目線がゆっくりと私の顔、首筋、左腋の下、右腋の下、左乳首、右乳首、おへそ、下腹、恥丘と動いていくのを、うつむいた上目遣いで追っています。
 成人男性からこんなに近くでこんなにじっくり全裸を視られてしまうのは、生まれて初めてです。

 真っ白な作務衣というか甚平みたいなお着物を召されているので、厨房のかたなのでしょう。
 伏し目がちに窺うと、まったく悪びれるようなご様子はなく、お口を真一文字に結ばれた難しいお顔で、何かの美術品でもご鑑賞されているような雰囲気。
 
 だからと言って恥ずかしさが薄れるわけでもなく、それどころかそんなご様子が余計に、何か珍しい見世物にされている、裸体を吟味されている、という意識を生み、屈辱感が加算されてしまいます。

 いつの間に私の傍を離れられたのか、お姉さまが角刈り男性の背後にまわられ、視られている私を男性ごとスマートフォンで撮影されています。
 
 私いつまで、こんな見世物状態にされるのだろう…
 まさかこの後、次々に従業員さまたちが見物にいらっしゃったりして…
 どうしようもなく切なくなってきて、その切なさが被虐を呼び、内股の粘膜がヒクヒクわなないたとき…

「ご紹介します。うちの花板のヨシザワです。本日の夕餉の献立を担当させていただきました旨、ご挨拶に伺いました」

 キサラギさまのお声が真正面から聞こえたので思い切って顔を上げると、スマホ撮影をされていたお姉さまのすぐ横にキサラギさまが来ていらっしゃいました。
 そのお声は私にでは無く、すぐそばにいらっしゃるお姉さまに向けてでした。

 角刈り男性がお姉さまを振り返られご挨拶され、そのご様子をキサラギさまが見守られている状況。
 つまり、角刈りの男性が花板さまのヨシザワさま、ということなのでしょう。

 お座敷のご用意はすっかり終わられたらしく、サラさまと細身男性もお姉さまたちの傍らにいらっしゃいますがご挨拶の輪には加わられず、こちらを露骨に見遣りながら何やらコソコソお話をされています。
 
 サラさまたち、厨房のお手伝いもされたとおっしゃっていましたから、もはやお顔見知りになられていらっしゃるのでしょう。
 とても愉しげに、何かを耳打ち合いされては、私の裸体を視てクスクス笑っておられます。

 それにしてもお姉さま…
 せめて服従ポーズだけでも解かせていただけませんでしょうか?
 おっぱいもマゾマンコも決して隠しませんから、両手を下ろしてただ普通の立ち姿に変わるだけでも、とても救われるはずですから…

 そんな想いをお姉さまのお姿に焦点を絞って見つめ、必死にテレパシーを送ります。
 
 それでも私を一番真剣に視ていてくださるのは細身の男性。
 その次がサラさまで、ヨシザワさまとキサラギさまがときどき視線をくださり、お姉さまだけはお話に夢中なのか、頑なに私のほうをチラとも視てくださいません。
 
 男性から全裸をしっかり視られている、という状況がはっきり認識出来る今の状況が、これまでに味わったことのない緊張感含みの羞恥と戸惑いを生んでいました。

 やっとお姉さまがこちらを振り向いてくださった、と思ったら全員で私に近づいてこられます。

「この下帯は、わたくしどもで洗っておきますね」

 キサラギさまが私のすぐそばまで来られ、足元にまだ落としたままだった赤いおふんどしを拾い上げようとされています。
 私のはしたない愛液が広範囲にシミ付いた恥ずかし過ぎる一品を。

「あっ!」

 思わず阻止しようと手を動かしかけますが、ご命令の呪縛ゆえにどうしてもポーズを崩せない私。
 キサラギさまは、シミの付いていない乾いた部分を指先でご器用につまみ上げられ、素早くクルクルっと丸められました。

「わたくし、当旅荘の厨房で責任者を務めさせていただいております、ヨシザワアツヤと申します。精魂込めてお造りしましたので、どうぞごゆっくりお楽しみください」

 キサラギさまの挙動に集中していたら、すぐそばで野太いお声。
 気がつくと私のすぐ前で、花板さまが私に頭をお下げになられています。

「いやあ、お嬢さんみたいな別嬪さんのお若くてお綺麗なからだと弁天様を間近でたっぷり拝ませていただいて、今日は眼福ですわ。若返りました。おかげで寿命が十年くらい伸びた心持ちですわ」

 そうおっしゃって目尻を下げられる花板ヨシザワさまの笑顔は…あれ?意外に愛嬌が生まれてはにかんでおられるみたいで可愛いらしい?
 近づき過ぎたと思われたのか軽く一歩引かれた目線がしっかり、私の剥き出しな股間に注がれていました。

 結構長く股間に留まっていた視線がやがて、私の顔に戻りおっぱいからお腹をずーっと撫ぜていって、股間からまた顔に戻ってきます。
 そのときは、私もずーっとヨシザワさまの視線をドキドキしながら追っていました。

「それでは、どうぞごゆっくり」

 ヨシザワさまがニッコリ笑われた、と思ったらすぐに最初の強面にお戻りになり、会釈されておもむろにクルッとお背中を向けられました。
 そのまま悠々としたお足取りでお廊下へのドアへと向かわれます。

 ドアまで到達され、おら、松っ、戻るぞっ!と怒ったような凄みのあるお声で怒鳴られるヨシザワさま。
 名残惜しそうにまだ私の全裸を矯めつ眇めつ視姦していらっしゃった細身男性が、はいっ!という上ずったお答えをされ、あわててヨシザワさまの背中に追い縋ります。
 細身男性を追うようにサラさまも。

「それじゃあ八時半見当ね」

 というお言葉をお姉さまに投げかけられて。

 お姉さま、明朝にまたあの大露天風呂でコンパニオンのみなさまと落ち合うお約束でもされたのかしら?

 みなさまのお背中をお見送り、フッと気が緩んだのでしょう。
 深い洞穴からにじむように湧き出し、ラビアの縁に何とか留まっていた私の恥ずかしいマゾ蜜の雫がついに引力に逆らえなくり、ツツツーっと一筋、右内腿を滑り落ちました。
 
 いやっ、恥ずかしすぎるっ!
 カッと熱くなる全身。
 ただ視られているというだけでこんなに、愛液が溢れ出しちゃうほど感じていたんだ…
 ひとり恥じ入っている私を、そばでお姉さまとキサラギさまが冷ややかに眺められています。

 従業員でお部屋に残られたのはキサラギさまおひとりだけ。
 キサラギさまのお手元を見遣ると、いつの間にか丸められたおふんどしを巻物みたく腰紐で括られていて、その紐の先端をつまんでぶら下げていらっしゃいました。

「さてと、とりあえず直子はそのはしたないおツユでテラテラ痴女光りしている下半身を洗い流して来なさい。そんなんじゃお座敷に上がれないでしょ?」

 お姉さまが私の背中側のお部屋付き露天風呂に通じるガラス窓をスーッと開かれました。
 途端に背中を襲う、もう薄暗いというのにジットリ感を多分に含んだ残暑の熱気。

 今のお言葉で服従ポーズのご命令は解除されたと理解し、両手を下ろし今更おっぱいと股間を手で隠し、一目散に窓ガラスの向こう側へと身を躍らせます。
 お風呂があると言っても、ここも立派に屋外ではあるのですけれど。

 手早く柄杓で股間に掛け湯を丹念に施してから、半身を湯船に沈めます。
 ガラス窓は再びピタッと閉じられ、窓の向こうでお姉さまとキサラギさまが何やらご熱心にお話されています。

 私はお姉さまに少しでも不穏な動きがあれば見逃さないように、おふたりを凝視していました。
 窓に鍵を掛けてお外に全裸で締め出したままどこかへ行かれてしまう、なんてイタズラをこんな状況ならお姉さま、平気でおやりになりますから。

 やがてキサラギさまがお姉さまに深々とお辞儀をされ、それからガラス窓の向こう側の私にもご丁寧な会釈をくださり、お部屋のドアをバタンと閉ざされて出て行かれました。
 それをお見送りされてから、お姉さまがあっさりスーッとガラス窓を開けてくださいました。

「どう?ちゃんとマン汁キレイに洗い落とした?おーけーならこのバスタオル敷いて食卓につきましょう。ああ、もうお腹ペコペコ」

 お部屋に戻るとすぐにお姉さまが白いバスタオルを渡してくださり、まず全身を軽く拭った途端に、ササッと取り上げられました。
 それから右手を引かれお座敷へ。

 差し向かいで座るようにセッティングされた座卓の片方、床の間側に導かれ、そこのお座布団の上にほぼ正方形に畳まれたバスタオルを敷かれ、手を離されてご自身は対面へ。
 私から見て左側は大きな窓で、お外の風景、常夜灯に照らされた裏庭の木々の先端が覗けています。

 全裸のまま食卓に着くしかない私…
 て言うか私の着衣、ここに着くまでに着ていた私服は下着ごとすべてお洗濯で取り上げられ、旅荘さまでご用意された浴衣もおふんどしも持ち去られてしまいました。
 これから後、私が身に着けることが出来る着衣って、このお部屋にもう何も残っていないみたい…

 と言ってもこれから先、明日の朝までずっとお姉さまとふたりきりだろうし、お邪魔されるのはどなたか仲居さまがお夕食のお片付けとお布団を敷きに来られるくらいのはず。
 それならずっと全裸でもいいかな、なんて思ってしまう私。

 お夕食はとても豪華でした。
 山菜の天ぷらとしゃぶしゃぶ鍋がメインで、お刺身の盛り合わせに煮物やおひたしの小鉢がたくさん。
 お姉さまがお櫃からごはんをよそってくださり、よく冷えたスッキリしたお味の日本酒をちびちび舐めつつ堪能しました。

「直子、やっぱり宿中でウワサになっているみたいよ」

 お食事中、お姉さまがおそらくキサラギさまから仕入れられたのでしょう、私のことも含めていろいろお話してくださいました。

「お出迎えで直子の姿を見た仲居さんのひとりは、絶対仕込みのAV撮影だと思ったんだって。女将さんもグルになってスタッフを騙してるって。きっと朝礼をよく聞いていなかったのね」

「あのリストバンドにはやっぱり発信機が付いていて、大露天風呂での嬌声は、庭師の人には聞こえていたって。お掃除用具とか仕舞ってある倉庫があそこに近いんだって」
「その庭師の人には、階段が始まる広場でウロウロしている赤フン直子も、遠くからだけれど見えていたって」

「この天ぷらを誰が持っていくか、は厨房男性全員で大騒ぎだったらしいわよ。結局ジャンケンでさっきの人になったんだって。あ、花板さんのご挨拶は恒例だそう」

「あの人たち、超ラッキーだったわよね?あたしもふんどし取らせてキサラギさんたちにちょっと全裸晒してから、窓の向こう側の露天風呂に追い出すくらいしか考えていなかったもの。まさか花板さんがご挨拶に来るなんて」
「期せずして全裸を見知らぬ男性ふたりに、パイパンマゾマンコまでじっくりねっとり視られちゃうんだから、さすが露出マゾの星の下に生まれた直子だわ」

 お料理と一緒にお酒も進んでいらっしゃるお姉さま、だんだんとお言葉に品格を失くされているご様子。

「フロントの男性は事情を本当に掴めていなかったみたい。あの出迎えてくれた仲居さんと新婚さんで、あたしたちが去った後、ひどく揉めたらしい」
「直子、女将さんに結構長いあいだいやらしくおっぱい揉まれていたじゃない?あれをフロント男性が間近で見ていてズボンの前をパンパンに膨らませていたんだって。それを新妻さんに見咎められて、って…あ、ごめん。直子にはこの手の話はNGだった…」

 あわててお酒のグラスをクイッと煽られるお姉さま。
 そのくらいのお話なら、もう大丈夫です、たぶん…

「露天風呂ありの温泉旅館て、行楽シーズン以外はやっぱりいろんなカップルが非日常的雰囲気求めてヤリに来るのが主流だから、家族連れとかの健全なお客さんといかに鉢合わせさせないかに、一番頭を悩ませるみたいよ」
「大露天風呂で始めちゃったり、部屋の窓全開にしてアンアン喘いでいる客とか普通にいるらしいから。そういう意味では、働いている人たちも下ネタに鷹揚というか慣れっこになっちゃている、って」

「まあ、実際この旅荘って、伝手でAV撮影に貸し出したりとかもしているって紹介してくれた人から聞いて、それで決めたんだけどね」
「もちろん撮影のあいだは旅荘ごと貸し切り状態にして一般客は入れないことにしている、って言ってたけれど」

「で、さっき聞いたら、確かにしてはいるんだけど、そういう撮影の人たちってやっぱり、何て言うか、あんまり品がよろしくないのが少なからずいて、若い仲居さんにちょっかい出したり、男性も全裸でそこいら出歩いたり、ありえない汚し方したり、酒席がえげつなかったり」
「それに比べたら、あたしたちはお行儀が良くて節度あるお色気だから大歓迎ですよ、ってキサラギさんに言われちゃった。今日のあたしたちって、節度、あったかな?」

 お料理もあらかた食べ終わり、お姉さまは白ワイン、私はシードルをチビチビと。

「ただ考えてみたら今日も、団体客がキャンセルにならなかったら、こんなに自由には遊ばせてもらえなかったのよね?」
「あらかじめコンパニオンまで予約していたくらいだから、下半身が脂ぎったスケベ男たちだったろうし。外国人の団体って言っていたけれど」

「もしその人たちも宿泊していたら、あたしたちもこのお部屋の中と部屋付き露天風呂くらいでしか愉しめなかったろうし、コンパニオンの子たちと知り合うこともなかったし、フロントで女将さんにおっぱいを揉んでもらえることもなかった…」

 お姉さまとずーっとふたりきりで過ごせたのなら、それはそれで良かった気もしますが…

「て言うか、行きのバスから直子大ピンチじゃん。あのときしていた服装憶えてる?」

 そうでした。
 乳首クッキリ乳房の形ハッキリ前結びシャツに土手まで丸出し超ローライズデニムショーパン、更にマゾの首輪と股間にリモコンローター。
 そんなふしだら痴女な格好で、男性だらけのバスに乗らなければいけなかったのでした…

「ま、そうなってたら、あたしたちはタクシーで追いますから、って乗車断ったろうな…」

 だから大好きなんです、お姉さまっ!

「でもバスで顔合わせしちゃっていたら宿でもその外国人たちにマークされちゃっただろうね。英語ネイティブだったかは知らないけど、ジャパニーズホーニープッシーキャットとか呼ばれて血眼でサーチアンドデストロイだろうから、ますます部屋から出れなくなっちゃうぅ」

 妙に艶っぽいお顔で私をからかって遊ばれるお姉さま。

「そういう意味でもさ、直子って露出と恥辱の神様に愛されているんだよ。マゾの星の下に生まれた森下くん」

 わけわからないおまとめ方をされたお姉さま。
 傍らに置かれたご自分のスマホをちらっと見遣り、ゆっくりと立ち上がられました。

「さてと、そろそろ準備しましょうか」

「えっ?準備って、何をですか?」

「あれ、言ってなかったけ?これから女子会よ。宴会場で宴会。あのパニオンの子たちと」

「えーっ!?」

 お姉さまがワイングラス片手にフラフラと広間のほうへ戻られ、壁際のソファーにおからだ全体を預けるようにドスンと腰掛けられました。
 私もあわてて後を追おうと歩き出し、あっ、と気づいてお座布団の上のバスタオルを取りに戻ります。
 
 食欲が落ち着いたせいか、お酒の酔いのせいか、ずっと全裸でいるせいか、酔われたお姉さまの挙動が妙に色っぽいせいか…
 性懲りもなくまたジワっと、マゾマンコが濡れ始めていたんです。


2021年6月13日

ピアノにまつわるエトセトラ 29

「さあ、少し遅くなってしまったけれど、ディナーにしましょ」

 拘束具を外してくださり、ぐったりな私を立たせて抱きかかえるようにお部屋へ連れて行ってくださいました。
 
 お部屋に入ると、とてもいい匂い。
 お醤油やケチャップが熱せられて漂う、食欲を思い出させる香り。
 途端に性欲から食欲に切り替わってしまうのですから、人間のからだって良く出来ていると思います。

 私だけ軽くぬるま湯シャワーを浴びてから、裸のままテーブルへ。
 お献立はニンニク風味なトマトスパゲティと何かお魚のソテーのクリームソースがけ、レタスサラダとコンソメスープ。
 さっき私が飲めなかったアルコール分ちょびっとのスパークリングワインが添えてありました。

「先生のお料理、みんな美味しいーっ!」

 ダイニングテーブルにふたりとも全裸で向かい合わせに座っています。
 ふたりともおっぱいを中心に太腿辺りまで、あちこちにつねられたような赤い痕。
 
 傍で見ていたら、何?この人たち…裸族?と思われちゃうディナータイム。
 ゆうこ先生も私も性欲はいったん引っ込んだみたいで、デザートのキウイのタルトまでシアワセに舌鼓を打ちました。

 お料理をたいらげて一段落の食休み沈黙タイム。
 向かい合わせに見つめ合い、相思相愛を感じさせてくれる、言葉に出来ない充足の時間。

「さてと…」

 先生がお片付けを始めようと席を立ちかけたとき私の口からこんな言葉が、ごく自然にこぼれ出ていました。

「ゆうこ先生には、ステディなお相手、パートナーはいらっしゃるのですか?」

 立ち上がりかけたゆうこ先生の剥き出しなお尻が、ペタンと椅子の座面に戻りました。

「パートナーかぁ…うーん、いないかなー…ずっといない気がするなー」

 美しいお顔で宙空を見つめられ、思案に耽られるゆうこ先生。

「あのあのあの、あのときうちにご一緒に来られたタチバナさんは?」

 ずっと心の隅に引っかかっていたお名前を思わず口にしてしまいます。
 これまで交わしたゆうこ先生の性癖遍歴に関する会話の中で、幾度となく口にされたお名前…

「ああ、レイカね。彼女とは腐れ縁で友達、と言うより天敵かな」

 ゆうこ先生が少し残っていた白ワインのグラスをクイッと煽られます。
 それから、なんともアンニュイなまなざしで私を見つめてきます。

「彼女とわたしの関係は、今日直子ちゃんとしたSMごっこのロールプレイングとまったく同じなの」

 ゆうこ先生のクリっとした瞳が昔を想うみたいに細まります。

「かいつまんで言うと、わたしたちが大学生の頃、構内でわたしがひとり露出プレイを愉しんでいたときに、たまたま遭遇しちゃったのがレイカなの」
「彼女もあの小説の愛読者だったから、一瞬にして察してわたしの特殊性癖を見破っちゃたみたい。ちょうどデジカメ持っていて、証拠写真もたくさん撮られちゃったし」

 スゴいお話なのにゆうこ先生、とても懐かしそう。

「それからはありきたりの展開。この画像を学内にバラまかれたくなかったら、って、言いなりになって、レイカから虐められ放題」
「ノーパンノーブラで講義を受けたり、ホテルのプールで水着剥ぎ取られたり。レイカ、被服科だったから人間着せ替えマネキンもずいぶんさせられたな」
「顔に紙袋だけかぶされた状態で美術サークルにヌードクロッキーのモデルとして貸し出されたこともあったっけ…」

「そのみつかっちゃった露出プレイって先生、何をされていたんですか?」

 ワクワクしながらの質問です。

「だからムラムラしているときならよくやるひとりアソビよ。講義時間中に使われていない教室に忍び込んで脳内セルフ調教妄想でストリップさせられて全裸になったところを、たまたま通りかかったレイカに目撃されちゃったっていう。直子ちゃんだって経験あるでしょう?」

 いえいえ。
 私、そんな大胆過ぎること、したことありません。

「それで、レイカに有無を言わせず連行されて飲みに連れて行かれて。写真撮られたのが痛恨のミスね。居酒屋で根掘り葉掘り取り調べられて、自分の性癖を洗いざらい告白しちゃったの、ピアノの先生のところから。レイカって、人の懐に飛び込むの上手だから」
「へー、大貫さんって普段は澄ました顔してるのにマゾの露出狂でレズ寄りの変態なんだ、ってニヤニヤ笑いながら言われて、何も言い返せなくてただただドキドキドキドキ感じてたな」

「それからはもう言いなりセイドレイ。ノーブラで来い、ノーンパンで来い、裸コートで来い、縄で縛って来い、リモコンバイブ、トイレで私を慰めろ…」
「でもそんなレイカに従えたのは彼女、決して男子を巻き込まなかったの。ほら、よくある話じゃない?そんなに淫乱なら男と寝て稼げとか、乱交用肉便器とか。そういうことは一切させなかったの」

 ゆうこ先生がワイングラスに注ぎ足して唇をつける頻度が上がっています。

「彼女の人生はずっと本当に女王様みたいな立ち位置。美人で気さくでノリがよくて学内でも目立つ存在。いろんな男とくっついた飽きて別れたとか噂になってたな」
「男でも女でも結局、従わせちゃうのね。根っからのエス気質。でも彼女もレズ寄りだと思う」
「実際わたしとスルの大好きで、さんざんわたしを辱めた後ふたりでベッドに入ると、わたしの指テクであられもないほど喘いでくれるんだ」

「それでお互い卒業して、わたしはレイカが段取ってくれた合コンで、音楽談義で意気投合した資産家の次男で自称起業家にコロっとやられちゃってね。まあまあイケメンで音楽の好みの波長がぴったり…な気がしたの」
「実際は、音楽の話も浅い知識の知ったかぶりで必死にわたしに合わせていただけで、自慢してたギターも下手くそだし、仕事も親の七光りで、自分の見た目と体裁だけに全人生を傾けている、みたいな人だった」

「レイカはさすがでね、自分より三まわりくらい歳上の、わたしの元ダンナより数十倍大金持ちなおじいちゃんを虜にして、わたしの結婚半年後くらいにすんなり後妻におさまってた。晴れて名実ともに立花玲香女王様の誕生。凄く豪華な結婚式だった」

「で、わたしはそのややイケメンと一緒になったのだけれど、ひどかった。最初は気にしなかったけれど彼とのセックス、何も感じないの。ゴム着けてガバっと抱きついてきてさっさと射精しておやすみ」
「わたしのことなんて何も考えていないの。会社起こしたばかりだから子供もまだいいね、だって」
「わたしも男性相手だと普段の生活からエスっ気出ちゃうし、そのくせ夜の生活は淡白だしだから、彼も新婚二ヶ月くらいで飽きちゃったんじゃないかな。あまり求めてこなくなった」

「彼はただ単純に一回、わたしを抱きたかっただけなんじゃないかな。それで結婚して抱いてみて、ああ、こんなもんか。って」
「わたし、男性にはマゾ性見せないから。むしろ、抱きたい?いやよ、あなた魅力無いし下手そうだから、なんて虐めちゃう」

「それで彼はなんとかわたしを手篭めにしたかったんだろうけれど、わたし、男性のエスっ気では濡れないの。反発だけ」
「新婚当初は演技でも感じているフリしちゃってたな。だって彼が大切だと思いたいから。でもスるたびに欲求不満が募るばかりなの」

「そんな頃にレイカから久々に電話が来たの。どんな感じよ?って」
「レイカの嫁ぎ先がこの近隣の大富豪なのね。わたしはまだ東京に居て」

 ゆうこ先生が対面の椅子から、私の横へ移動されてきました。
 すぐ横に先生の体温を感じています。

「わたしは正直に、そろそろ耐えられない、って答えたの。籍入れてまだ一年ちょっとしか経っていないのに」
「レイカは、だろうね、って嬉しそう。だったらいい弁護士つけてあげるから離婚しちゃえば、って。旦那の財産、根こそぎ奪い取ってあげるよ、って」

「わたしも薄々、彼が他に女作ってるのはわかってたの。こっちが人肌恋しさに誘ってみても、疲れているから、って拒まれたこと何度もあったし」
「自分だけ腰振って自分だけ満足してガーガー寝ちゃうような男でしょ?こいつとずっと暮らしていたら、いくら世間体とかあっても、わたし自身が確実に駄目になる、って思ったの」

「レイカの人脈はやっぱり凄くって、瞬く間に浮気の証拠たくさん揃えてくれて、あっちの実家や複数の浮気相手も巻き込んでこちらの要求額満額以上の示談金もらえたの。ますますレイカに頭が上がらなくなっちゃうでしょ?」
「それで久しぶりに会ったときに凄いことしてくれたの。銀座の高級ブティックに連れて行かれて、信じられない露出度の水着を試着させられて」

「試着室のカーテン全開にして、わたしのそんな姿をお店にいた人みんなに晒したの。わたし、恥ずかしさと一緒になぜだか涙まで出てきて」
「その夜レイカの豪邸に泊まって、虐めやからかい一切無しでゆっくり抱いてもらって、ゆっこの人生はこれからよ、って」

 ゆうこ先生、何てお言葉をかければいいのかわかりません。

「旧姓に戻ったのを契機にここに引っ越して、ずっと趣味的にチマチマやっていた作編曲活動を本格的に始めて、ピアノの演奏技術も真剣におさらいして、少しづつ人に教えるようにもなって」
「一方では、腋とVIOを永久脱毛して、これもレイカが段取ってくれたの。ネット通販でSMグッズ集めて、街角での露出遊びもまたこっそり愉しむようになって」

「それでわたしがフラダンスのスクールに入ったのもレイカの発案なの」
「独身に戻って経済的にも落ち着いての再スタートなのだから、何か新しいことにチャレンジ!私もつきあうから、ってレイカに言われて」
「ゆっこはえっちな姿を誰かに視て欲しいヘンタイなんだから、やるならダンス系じゃない?音感いいんだし、だって」

「いわゆる流行りのエクササイズは老若男女混ざり過ぎてて面倒くさそうだし、バレエは今更無理、ヒップホップは激しすぎて無理だし、かと言って社交ダンスは、それこそ面倒くさそうな中年男性群が出ばってきそうだし」
「それで残ったのがフラ。南国の踊りだから肌露出も充分だし人前で踊るときに大胆な格好もできそう、ってレイカが選んだの」

「それでいざ最初のお試しレッスンに臨んだら、わたしたちが一番年下っぽくて、周りは見渡す限りたるんだ脂肪の展示会場…」
「て思ったら、直子ちゃんのお母様とミサコさんだけは、お歳は少し召していてもちゃんと女性的な艶やかさをご維持されているふうに見えたの」

「おふたり仲良いようだからお近づきになってグループになっちゃおう、ってレイカが決めてお友達になれたの」
「直子ちゃんのお家にあんな水着でお邪魔したのは、三回に分けて振り込まれた示談金の二回目もらったすぐ後」
「ミサコさん、わたしとレイカの格好に若干戸惑われていたけれど、素子さんは本当に楽しそうだった」

「それであの日、びしょ濡れのレオタードでバレエを踊ってくれた、まだ幼さの残るシャイな女の子が、わたしの心の片隅に棲み着いちゃったの」
「わたし、直子ちゃんに日焼け止めを塗ってあげたでしょ?そのときの反応見て、あ、この子、わたしだ、って」
「機会があれば、もう一度会いたいなって。フルートを吹いてくださった女性も素敵だと思ったけれど…」

 すっかり食べ尽くしてしまった空の食器の前で、ふたり静かに回想しています。
 念の為に言うとふたりともずっと全裸です。
 
 あのときすでに、ゆうこ先生も私と同じように感じてくれていたんだ…

「でもさっき、友達って言うよりも天敵とおっしゃった、天敵、って、どういう意味なのですか?」
 
 ゆうこ先生の人生はだいたい把握出来た気がしているのですが、立花レイカさんの立ち位置が今ひとつ理解出来ていません。
 つまり、私は立花さんの代わりになれるのでしょうか?

「ああ、レイカね…」

 言ったきり遠くを眺めるようなゆうこ先生。

「レイカね、って…レイカさまとか立花さまとか、ご主人さまポジションでは無いのですかっ?」

 一番お聞きしたいところなので、声が大きくなってしまいます。

「レイカがご主人さま?」

 両方の瞳をまん丸くされたゆうこ先生。

「そう思ったことは無い、な。さっきも言ったように彼女とわたしは脅し脅される、弱味を握り握られた関係だもの」
「たまに会って辱めプレイをさせられるときは、確かに主とセイドレイ的な主従関係みたいにはなるけれど…だからつまり天敵じゃない?」

「彼女には彼女なりの、そのときそのときの役割みたいなのがあって、男女に関係なくいろいろ関係持って遊んでいるみたい。その中のひとり、羞恥露出プレイとかちょっとハードなSMごっこにうってつけなのがわたしっていうだけ」
「レイカは本当、順風満帆だもの。生前贈与も凄い額もらっているし、ちゃんと男の子生んでいるし、夜遊びの浮気バレもまったくないみたいだし」

 その結論を聞かされて、私は失恋を自覚しました。
 どう考えてもゆうこ先生とレイカさんは相思相愛です。
 
 これまでのお話を聞く限り、レイカさんはゆうこ先生のことを凄く大切に想われているのでしょうし、先生もレイカさんと居るときが一番自分らしくいられると感じられているように思えます。
 たとえ四六時中一緒に居なくても、心の奥底でずっと強く惹かれ合っているおふたり、みたいな。
 私はつい最近、似たような関係性をやよい先生とミーチャンさんで教わったばかりでした。

 ある意味ホッとしてしまうと、弛緩して気怠くなってしまうまだまだ子供な私のからだ。
 その後すぐ、眠りに落ちてしまったようでした。
 夢の中で私はゆうこ先生に甘えまくって、ずっと裸で抱きしめてもらっていました。

 後日談。

 結局その後、私とゆうこ先生との蜜月は長くはつづきませんでした。

 年が明けて3月上旬くらいまで、ゆうこ先生のマンションを訪れての個人レッスンはつづきました。
 協議の上での相互マゾレッスン。
 ふたりともレッスン中ミスを犯したペナルティは脱衣。
 全裸になるまで剥くことが前提。

 私のレッスン中はゆうこ先生がエス。
 先生の模範演奏中は私がエス。
 容赦なくプラステイック定規を振るい合いました。

 ゆうこ先生は定規で恥丘からお尻の穴までのあいだ、とくに膨らんだクリトリスを潰すみたいにペチペチ叩かれるのが凄くお気に入りらしく、頻繁におねだりされました。
 全裸で大きく腰を落としたガニ股に立たせ、下から定規を股のあいだに潜り込ませて両脚の付け根そのものをペチペチするんです。

 ゆうこ先生が教わっていたピアノ講師の女性が好んでよくされていたお仕置きだそうですが、初日は私のマゾ程度がどのくらいなのかわからなかったし、性器をピンポイントでひっぱたくという、ヘンタイ度も行き過ぎ過ぎた行為ですから、ゆうこ先生もおねだりを躊躇われていたそうです。

 お美しいゆうこ先生が全裸でみっともないガニ股に腰を落とし、私は前から後ろから、定規で性器を打ち据えます。
 ゆうこ先生の両手はもちろん後頭部に充てていなければいけません。
 定規が当たるたびに、苦痛と歓喜半々で、あふうんっ!と淫らに哭かれるゆうこ先生。
 その惨めで哀れで無力過ぎる姿と背徳的な雰囲気はまさに、お仕置き、という呼び名がぴったりでした。

 もちろん私もしてもらって、すぐにお気に入りになりました。
 
 腫れて飛び出た肉の芽を叩かれていると途端にトロトロ恥ずかしい蜜が溢れ出し、プラスティックがヌルヌルに汚れました。
 陰唇と陰核と膣口と肛門と、全部が狂おしいほど熱く火照り、数発でその場にへたりこんでしまいそう。
 でもお仕置きですから姿勢を崩すことは許されません。
 鏡の前でやられると否が応でも見てしまう、みっともない自分の姿の屈辱感、服従感もたまりませんでした。

 レッスンの度に互いのお尻やおっぱいやオマンコをひっぱたき合い、拘束具で動けなくして蹂躙し合い、どちらがより苦痛に耐えられるかを競い合い、互いのオマンコを擦り付けて愛し合いました。
 マンションでエレベーターが7階に着いたら、もう着衣は不要。
 どうやって虐めようか、虐めてもらおうかしか考えていませんでした。

 エントランスの暗証番号はすでに教えてもらっていましたから、あらかじめ全裸でエレベーター前で待つように命令しておいて、到着を教えずに焦らして上がったり、逆にエレベーター下りたらお部屋に入る前に全裸になっているように命じられたり。
 鍵盤の音程当てブラインドテストで間違えるたびに洗濯バサミを全身に貰ったり、それに対抗してゆうこ先生に目隠しして私の全裸のからだを触らせてどこの部位かを答えさせ、間違えたら同じ部位に洗濯バサミを噛ませたり。
 ゆうこ先生が全裸でピアノを弾き、私も全裸でバレエの金平糖の踊り、ただしうろ覚え、を踊ったり。

 私はゆうこ先生の衰えを知らない美貌と被虐への貪欲さを妬み、ゆうこ先生は私の若さゆえの持久力、回復力と常識外れな好奇心を妬み…
 エスとエムのあいだを行ったり来たりしながら、お互いのマゾ性を刺激し合いました。
 あの後にお泊りレッスンの機会は残念ながら無く、夜九時過ぎに母が迎えに来るまでの3~5時間くらいのあいだでしたが、ふたり必ず終了間際には数回イキ果てていました。

 あるとき迎えに来た母がピアノルームを覗いて、このお部屋何か臭うわね?と言ったとき、ゆうこ先生は慌てず騒がず、

「そうですか?きっとレッスンが盛り上がり過ぎてやっとついさっき食べた、世界のチーズたっぷりピザの残り香のせいかしら?」

 なんてシラッと答えていましたっけ。

 そんなかりそめの蜜月が崩れ始めたのは3月中旬から。
 そのあいだにゆうこ先生が作曲編曲プロデュースされたTVアニメの曲がかなりヒットしちゃったんです。

 あっ、ヒットしちゃったんです、なんて言い方はゆうこ先生に失礼でしたね。
 ヒットして注目を集められ、お仕事のご依頼が急増したんです。

 そのアニメの映画化まで決まり、ゆうこ先生もにわかにお忙しくなられました。
 今日は東京で打ち合わせ、東京で歌手さんと顔合わせ、東京でレコーディング、東京で関係者パーティ…

 レッスンでマンションに行ってもおられない日々がつづき、私の恋心は募るばかり…
 もちろんNGになってしまった日は事前にご連絡くださっていたのですが、もしかして、と思ってしまう私の一人芝居…

 結局お仕事のご都合に合わせる形でゆうこ先生が東京にも住居をお借りになられ、ピアノレッスンはやむなくフェイドアウト。
 私の手に残ったのは、いつでも来て練習に使っていいよ、わたしが仕事で使っているかオナニーしていないときなら、と笑いながらおっしゃって渡してくださった、スタジオ仕様のほうのお部屋=ピアノルームの合鍵一本だけでした。

 私が好きになった人、みんな東京に行ってしまうんです…


*これまでのお話を未読or忘れていたら ピアノにまつわるエトセトラ01
 ↑(全編加筆訂正更新済2021/06/12)
*できればカクレガの前にもひとつお話を挟みたいと思っています

2021年6月12日

ピアノにまつわるエトセトラ 28

  高まりつつあった自慰行為に水を差され、とてもサディステイックな気持ちでゆうこ先生のすぐ前に立ちました。

「ゆうこ先生、本当にいやらしくて浅ましくてお似合いの格好ですね。ワレメの穴の中がパンパンになりそうな太い瓶をしっかり咥え込んじゃって」

 ゆうこ先生が腰を振るたびにジャラジャラ揺れている、両乳首を繋ぐ鎖に右手を伸ばします。

「瓶の中に先生ご自慢のオマンコから滴るいやらしい愛液がポタポタ、ずいぶん溜まってきてますよ」

 ゆうこ先生の左右の乳首と私の右手指先で、鎖が空中に淫らな二等辺三角形を描きます。

「んっーうーんっ…」

 鎖を少し引っ張るだけで、いやらしくさえずってくれるゆうこ先生。
 上下運動に加えて腰全体を回転させるような動きが激しくなり、本当にピーク間近みたい。

「それじゃあ、いち、にー、さんでお望み通り思い切り引っ張ってあげますから、思う存分イッてください」

「ハァ、はいぃぃ…あんっ、ありがとう、ございますぅぅ…」

 息も絶え絶えなゆうこ先生のお顔をじっと見つめつつカウントダウンを始めます。

「いーち」

 鎖を引っ張る腕を少し手前に引くと鎖がピンと張り詰め、挾まれた乳首が乳暈もろともこちらに引き寄せられます。

「あーっ、いいっ、もっとぉ、もっとぉ…」

「にーぃ」

 手前に引く力をかなり強めてみます。
 外れまいと噛み付いているクリップのワニ口の抵抗がはっきりわかりました。
 ゆうこ先生のふたつの乳房全体がさっきのオナニーのときみたく、おのおの円錐状に尖ってきています。

「痛いですぅ、うぅぅっ、あー、でももう少し、もう少しでぇぇっ…」

 ゆうこ先生の綺麗なお顔が悩ましく苦痛に歪み、私も全身がゾクゾクしています。
 さあ、最後です。

「ハァハァハァ…外れるまで引っ張っちゃってくださいぃ…ゆっこ、耐えられるから、我慢出来るからぁぁ…」

 眉間を盛大に歪ませて今にも泣き出しそうに哀願してくるゆうこ先生のお顔。
 だけど腰は前にも増して忙しなく上下左右に暴れまくり、息遣いもまるでマラソン走者のラストスパートのよう。

「さーん」

 ラストカウントを告げたものの、本当にこれ以上引っ張っちゃっていいのでしょうか、クリップが外れないで乳首が取れちゃったら…
 そんな私の一瞬の躊躇を、ゆうこ先生はあっさり蹴散らしてしまいました。
 ご自分から後方に大きくのけ反ったんです。

「ああーーーっいったーーーーぃいいいいくぅぅーーーーーぅぅぅぅっ!!!」

 鎖越しに感じていた緊張がフッと消え、私の手元まで戻ってきた乳首クリップ。
 本能的に耳を塞ぎたくなるほど扇情的な苦痛と幸福感が入り混じった絶叫。
 ゆうこ先生は一番低いバーをくぐるリンボーダンサーみたいな膝立ちブリッジ姿で、瓶からも外れてしまったグショ濡れ半開きの女性器を私に向けて突き出していました。

 その蠱惑的な絶叫を聞いて、もう居ても立ってもいられなくなりました。
 狂おしい気持ちでバスローブを脱ぎ捨て、立ったまま自分のからだをまさぐり始めます。
 左手は股間へ直行、右手は洗濯バサミのぶら下がった乳首もろともおっぱいを乱暴に揉みしだきます。

 目の前には本当に湯気まで見えそうな、イッたばかりのゆうこ先生の半開きピンクの濡れそぼったオマンコ。
 まだヒクヒク蠢いているそれを凝視しながら、指三本で自分のそれを無我夢中に蹂躙します。

 クチュクチュクチュクチュクチュ…
 小さく何度もイッているのでしょうが、ぜんぜん満足出来ません。

 床に散らばっている洗濯バサミを目についた順に片っ端から自分のからだに噛ませます。
 おっぱい、脇腹、太もも、お尻…

 乳首の洗濯バサミも、ゆうこ先生を蹂躙したばかりの乳首クリップチェーンに交代です。
 今までで一番キツくて痛い挟み心地でしたが、今はそれも快感です。

 イキたい、ゆうこ先生みたいにイキたい…
 それしか考えていませんでした。

 半開きオマンコブリッジの向こう側で、ゆうこ先生のお顔がゆっくり起き上がるのが見えました。
 お風呂上がりみたいに上気したその色っぽいお顔を見つめながら、自分を慰める両手がスピードアップします。

 私はゆうこ先生に嫉妬していたのだと思います。
 私よりお綺麗で、私より快楽に貪欲で、私より苦痛に耐えられて、私より自分をいたぶる術をたくさんご存知なゆうこ先生に。

 ゆうこ先生の上半身がゆっくり起き上がり、まだ息は荒いながら驚いたようなお顔で私を見つめてきます。
 私はあえて目をつぶって自分の快感だけに集中しようとしています。

「どうしちゃったの直子さま?だから気持ち良くなりたいならセイドレイに任せなさいって…」

 ゆうこ先生が目の前に来て立っていました。
 マジックテープの拘束具は自ら外されたのでしょう。
 ゆうこ先生の全身はまだホカホカ火照っていて、汗ばんだ肌にポツポツ赤い噛まれ痕がいくつも浮かび、中には内出血らしい紫色の斑点もいくつか浮かんでいました。

「先生、ごめんなさい…私にはやっぱり、ずっとエスの人に成り切るのは無理みたいです…」

 自分を慰める手をようやく止めて、正直に告白しました。

「私、先生が羨ましいんです。先生にやらせたこと、全部私にもして欲しいんです…」
「先生に私の恥ずかしい姿を視て欲しいし、先生から恥ずかしいご命令されたいし、先生にイカせて欲しいんです…」
「本当にごめんなさい…私やっぱり虐めるだけじゃ満足出来ないみたいなんです…せっかく約束したのに…」

 本当に情けない気持ちで、ゆうこ先生の前でうなだれました。

「ううん、直子さま。わたしのほうこそごめんなさいね。こんなにマゾ性を解放出来るの久しぶりだったから、わたしも突っ走り過ぎちゃった」

 からだ中に洗濯バサミをぶら下げた私をそのまま、火照ったからだで抱きしめてくださいます。
 ああんっ、洗濯バサミが押し付けられて捻られて、あちこち痛い…
 でもたぶん、裸で抱き合う人肌が今私が一番欲しているものなのでしょう。
 少しづつ落ち着いてきました。

「直子さまの気持ちを考える余裕が無かったの、大人としてダメダメね」

 溶け合うみたいに固く抱きしめ合い、ゆうこ先生から唇を重ねてくださいます。
 熱い吐息が混じり合い、そのまましばらく抱き合っていました。

 唇を離したのもゆうこ先生が先で、肩を抱かれ促されソファーに並んで腰掛けました。
 激しい抱擁とくちづけのあいだに何個か落ちてしまいましたが、わたしのからだにはまだいくつかの洗濯ばさみと乳首チェーンがぶら下がっています。

「直子さまも洗濯バサミが大好きなのね。わたしが高二の頃は、乳首にそのクリップは無理だったな」

 言われた途端にズキズキンと疼痛がぶりかえします。

「でも直子さまの辱め方や追い込み方、言葉責めはマゾの琴線に凄くキたわよ。素養はあるはず」
「最後の責めでかなりスッキリ出来たの。日々のあれこれで溜め込んでいた被虐願望が」
「だから恩返ししなきゃね。マゾにはサドも出来る、って言ったの、わたしだしね」

 ゆうこ先生が私の両乳首からぶら下がる鎖に細長い中指を掛け、つんつん揺らします。

「あんっ、あんっ!」

「それで、マゾヒスト森下直子は、わたしに何をシて欲しいのかな?」

 ゆうこ先生がさっきまでとは打って変わって、嗜虐的なお顔になられています。
 あの日のやよい先生にも負けないくらいに。
 からだ中洗濯バサミの噛み痕だらけのくせに。

「は、はい…私…大貫先生に、私のアソコのヘア、毛を剃り落として欲しいんです…先生とおそろいになりたいです…」

 ゆうこ先生のソコを視たときから渦巻いていた願望です。

「アソコの毛、って何?どこの毛?わたしを美容師さんか何かだと勘違いしているの?」

 ゆうこ先生のお顔が今まで見たことも無いイジワルいお顔になっています。
 やっぱり先生ってスゴい。

「あ、あの、だから下の毛です。お腹の下のほうの…」

「お腹の下のほうってアバウトね?おへそに毛でも生えているの?」

「あ、いえ、もっと下の、あの、恥ずかしいところの…」

「もっと下で恥ずかしい?ああ、直子は肛門に毛が生えているんだ?」

「いえ、もう少しだけ上で、オシッコが出る辺りの」

「ああ、性器の周りね。性器のこと、直子はいつも何て呼んでいるの?」

「せ、性器ですか…えっと、お、おま…あっ、その毛のことは陰毛って呼んでいます」

「インモーね。でも森下さん、嘘ついているでしょう?そんなかしこまった言い方、していないのではなくて?」

 やっぱり先生は役者が一枚上手です。
 ずんずんマゾモード沼に嵌ってしまう私。

「ごめんなさい、オマンコです。直子のいやらしいオマンコの周りに生えている恥ずかしい毛、マン毛を綺麗サッパリ剃り落として欲しいんです…」

 そんなセリフを口に出すだけで、私のオマンコはヒクヒクさんざめいてしまいます。

「森下直子は自分でマゾだって言うくせに、まだ恥毛、マン毛なんて生やしているの?マゾだったらマンコの周りはすっきりさせて、奥の奥まで覗いてもらうのが礼儀作法でしょう?」

「はい…ごめんなさい…おっしゃる通りです…覗いてもらいたいです…」

「で、それから何をされたいの?」

 ゆうこ先生、明らかに愉しんでいらっしゃいます。
 私では到底太刀打ちできないお言葉責めです。

「そ、それから、お尻とおっぱいを乱暴にぶって欲しいです。先生みたいに乳首がちぎれるほど虐められて、オマンコを掻き混ぜられて、イキそうになったら放って置かれて、手も足も拘束されて裸のまんま人目につくところに放置されて弄ばれて…」

「ふーん。それで?」

「それでも最後には先生の指でイかせていただいて、一生、大貫先生無しでは生きていけないからだにされたいんです…」

 心の底の本心から出たお願いでした。
 涙がボロボロ零れました。

 その後ゆうこ先生は、本当にその通りにしてくださいました。

 ふたり全裸でピアノのお部屋を出てリビングに戻り、バスルームで丁寧にマン毛を剃っていただきました。
 私をマンぐり返しにして天井に向けた私のオマンコに剃刀を当て、短い毛は毛抜きで丹念に抜いてくださいました。
 そのあいだずっと、ヒクヒク蠢く膣内に栄養ドリンクのガラス瓶が埋まっていました。

 それからふたたび全裸でスタジオに戻り、拘束具でガマガエルみたいな形になった私を定規や素手でたくさんひっぱたいてくださいました。
 乳首チェーンはいい具合に引っ張られ、先生の三本の指が私の膣壁とクリトリスを陵辱し尽くしました。

 その後、乳首チェーンガマガエル拘束のままお廊下に引きずり出され、エレベーターの前に仰向けで放置されました。
 性器の中にはグイングイン唸る円錐形のバイブレーターが突っ込まれていました。

 小さく大きく、幾度昇りつめたことでしょう。
 さすがにエレベーター前放置ではボールギャグを噛まされていましたが、ウンウン唸りながら何度も昇りつめました。

 エレベーター前に放置されてぐったりしているところに、ゆうこ先生が未だに全裸姿で現われました。
 焦点の合わない目でそちらを見遣ります。

 私がひとりウンウン喘いでいるあいだにシャワーを浴びられたのでしょう。
 熱が引いて白味が増した素肌にまだうっすら散りばめられたピンクの噛まれ痕が、痛々しくも、切ないマゾ性を浮かび上がらせてとてもエロティック。
 スキンローションの甘い香りが鼻腔をくすぐってきます。

 ゆうこ先生がしゃがみ込まれ、乳首クリップを外し、バイブレーターを抜き取ってくださいました。
 両乳首に最後の激痛が走り、バイブを抜かれた私の女性器も半開きでヒクヒク痙攣していました。



*これまでのお話を未読or忘れていたら ピアノにまつわるエトセトラ01
  ↑(全編加筆訂正済2021/06/11)

2021年6月6日

肌色休暇一日目~幕開け 18

 「ですのちゃんはこんなふうに、大胆な格好を誰かに視られちゃうのがたまらない、っていうご趣味なのですって」
「今日はお客様も少ないですし、そんな機会も滅多に無いでしょうから、ですのちゃんとお姉さまに心ゆくまで開放感を楽しんでいただくことにしたのよ」

 ユタカさまにご説明される女将さま。
 その視線も、ユタカさまと同じように私の半裸姿をまじまじと吟味されるよう。

「わたくしの思った通り、クラシックパンツがお似合い過ぎてとっても可憐」
「さっきの浴衣の着付けのときも思ったのだけれど、今ここであらためて見ても、ですのちゃんのおっぱい、凄く魅力的だわ」
「マシュマロみたいに柔らかいんだろうなあって思わずこう、腕を伸ばして触りたくなっちゃう」

 左側から女将さまとユタカさま、右側から仲居さまがしばらくのあいだ、じっと私に見入ります。
 真正面にはお姉さまが構えられるビデオカメラのレンズ。
 その沈黙の気不味さに、恥ずかしさの度合いも狂おしいほどにヒートアップ。

 あぁんっ、本当に触られているみたい…視線の圧が痛いくらい…乳首を摘まれて、おっぱいを潰されて、脇腹を撫ぜられて…
 とくにユタカさまからの視線は、性的欲求そのものが照射されているみたいで乱暴過ぎる…
 このいたたまれなさに比べたら、ヘンタイ露出狂と囃し立てられ、後ろ指をさされてあざ笑われているほうがまだラクかも…

 私には永遠にも思える数分間の無言の視姦…
 剥き出しのおっぱいを隠そうと思えば容易に隠せるのに、左右に力なく垂らしたままの両腕…
 ムズムズ疼く乳頭、ヒクヒク潤む内股の粘膜…
 ジンジン火照る全身をもう少しで閃光がつらぬきそう…

「さっきは、いきなり男性から声をかけられて、ですのちゃんもびっくりされたでしょう?殿方はお苦手だっておっしゃられていたものね?」

 不意に聞こえてきた女将さまのお声に、ビクンとからだを震わせた私。
 頭の中で一瞬、小さく火花が弾けました。

「は、はい…ごめんなさい…」

 お優しげな普通のお声なのに、五感すべてが敏感化し全身マゾ性の塊と化し、卑屈にお応えしてしまう私。
 女将さまに服従の意を表したくて、女将さまのほうへとからだを向けます。

 当然お隣にはユタカさまのお顔。
 私の丸出しトップレスを、至近距離正面からモロに見つめられます。

「でも安心して。彼は男性だけど、ですのちゃんの裸がいくら魅力的でも、絶対襲ったり不埒な真似は出来ないから」

 ユタカさまと私を弄ばれるように、艶っぽく謎めいた微笑みを浮かべられる女将さま。
 でも私は不思議と、ユタカさま=男性に襲われる、という恐れは微塵も感じていませんでした。

 なんなら同性からとはまた違う、そのねちっこく絡みつくような視線に新鮮な快感さえ覚えていました。
 もちろんそれは、お姉さまと女将さまが傍らに居てくださる、という安心感によってもたらされる心の余裕ゆえなのですけれど。

 それにしても、絶対襲わない、って断言出来る理由って何だろう?あっ!あの会社の方々みたいにダンショクカのかた?…
 女将さまのお言葉に動揺されたのか、急に伏し目がちとなったユタカさまのお顔を窺ってしまいます。

「彼は新婚ホヤホヤなの。それも惚れた腫れた、別れろ切れろ、すったもんだの大騒ぎな大恋愛の末」
「どんなにですのちゃんのヌードが魅力的でも、さんざん周囲を振り回してまで娶った最愛の新妻を裏切ることなんて、出来るはずもないの」

 女将さまの視線が私から逸れ、そのもっと向こうのほうへと流れます。
 その位置にいらっしゃるのはポニーテールの仲居さま=ムツキさま?でしょう。

 えっ、そういうこと?…ユタカさまとムツキさまが新婚ご夫婦ってことなのかな?…と訝しみつつ、ふと電車でのお姉さまとの会話を思い出しました。

 …そんな格好で屋外を闊歩する、誰とでもヤリそうなふしだら淫乱女なんて、カレシ持ち女性共通のエネミーじゃない…

 今の私、まさしくそれ…ですよね?
 ムツキさまから敵認定されていてもおかしくありません。
 そう思うと、これまで向けてくださっていた御愛想の良い笑顔も、侮蔑と嫌悪の込もったご冷笑に思えてきて、虐められたがりのマゾ性がよりムラムラ滾ってしまいます。

「それにしても殿方って、女性の裸を視ると本当にだらしのない顔になるわよね?」

 私に視線を戻された女将さまから、ご愉快そうに問いかけられます。

「は、はあ…」

 背中に感じるムツキさまが向けられているであろう敵意の視線が気になりすぎて、私は生返事。

「ご逗留中、ご自由にどこででも裸になって大丈夫だから、じゃんじゃんうちのスタッフ、とくに男性に、目の保養をさせてやってくださいね」

 いたずらっぽくおっしゃった女将さまに、それまでずっと無言だったお姉さまが初めてお口を挟まれます。

「ありがとうございます。ご厚意に甘えさせていただくお礼に、どうぞ、この子のおっぱいをお好きなだけ弄ってやってください。この子も悦びますから」

 ホームドラマのセレブっぽい奥様がたの会話みたいにお芝居っぽくおっしゃってから、ニッと口角を少し上げた薄い笑みをユタカさまに向けられます。

「申し訳ないのですけれどフロントさん、ユタカさんでしたっけ?は、ご遠慮くださいね。新婚さんというご事情を聞いてしまいましたし、いくらこの子が淫乱なヘンタイでも、奥様から恨まれてしまうのは本意ではありませんので」

 お姉さまってば、ユタカさまにまでSっ気が滲み出ちゃってる。
 それからレンズを私に向けたまま、微かに左上方へと顎をしゃくられました。
 女将さまのおそばにもっと近づきなさい、というご命令。

「あらー、本当におっぱい触らせてくれるの?やだっ!嬉しいっ!」

 フロントカウンターを挟んで30センチも離れていない眼前に女将さまのお美しいお顔。
 バニラっぽいほのかに甘い香りが鼻孔をくすぐってきます。

 そのすぐ右横には当然ながらユタカさまのお顔も。
 フロントカウンターの高さが私が着けているおふんどしの紐より少し上ですから、おふたりには私の剥き出しな上半身のみが視界を埋めているはず。
 つまり私は生おっぱいをおふたりに誇示しているも同然で、距離が縮まったぶん恥ずかしさも倍増。

「うふふ、では、失礼させていただこうかしら」

 欲しかったオモチャをやっと手に入れられた幼子のように無邪気な笑顔を見せられる女将さまが、お着物の袖からハンカチをお出しになられ、ご丁寧に両手を拭われます。
 ハンカチを優雅に袖にしまわれ妖しい笑みを浮かべられ、まっすぐ私の目を見つめてこられる女将さま。
 おもむろに両手を、私の左右おっぱいに押し付けてこられました。

「んんっ、ぅうんーっ!」

 思わず洩れてしまう歓喜の淫声。
 最初少し冷んやり感じた人肌は、すぐに私の火照った熱とひとつに溶け合います。

「うわー、やっぱり柔らかい。手のひらが埋もれて溶けちゃいそう」

 お美しいお顔を満遍なく綻ばせて、私のおっぱいを掴んでご満悦な女将さま。
 その一見無邪気なご表情とは裏腹に、両手のひらはかなりの手練手管。

 ときに優しくときに乱暴に、包み込むように揉まれたり爪を立てるようにわしづかまれたり。
 下乳のポッテリを持ち上げては、力を緩めてタプン。
 両乳首は当然のように人差し指と薬指のあいだに逃され、ギュッギュッと絞るように虐められています。

「んっ、んっ、はぁんっ、んふぅっー…」

 女将さまからのユタカさまムツキさまのお話でいったん落ち着きかけていた淫蕩なマゾの血が、みるみる息を吹き返します。

「んっ、あっ、はぁんっ、だめっ、もうだめっ、そんなっ、あぁっ…」

 止めようとしているのにダダ漏れてしまう私の淫ら声。
 ギュッと目を閉じて快感をもたらしてくださる刺激に身を任せている私。

 脱衣所を出て以来、積もりに積もった羞恥の蓄積が決壊寸前。
 あれ?ここはどこだっけ?どこにいるのだっけ?…んーっ、でも、でも絶対絶対、イッちゃ駄目な場所だったはず…

 それでも昂りは暴走の一途。
 弄られてもいないマゾマンコの粘膜がヒクヒク爆ぜているのがわかります。
 コリコリにしこった左右の乳首が同時に捻られ、ちぎれるくらいに引っ張られます。

「だめだめだめっ!んふぁぁーーーーっ!!!」

 イッてしまいました…
 めくるめく陶酔と心の奥底でチクチク痛む微かな自己嫌悪。
 気がつくと自由奔放におっぱいを蹂躙していた物理的刺激も去っていました。
 未だにジンジンと疼く血流だけを残して。

「ですのちゃん、色っぽいお顔。イッちゃったんだ?んーもうっ!可愛い過ぎるっ!」

 艶やかなお声に目を開けると、目の前に楚々とした和服美人さま。
 脳内細胞がグルンと動き出し、秒速で現実世界に引き戻されます。

 温泉旅荘のフロント大広間…私、こんなところでイッちゃったんだ…それで少なくとも3名の昨日まで他人だっだ方々にその一部始終を視られてしまったんだ…
 迷子の子供が必死に母親の姿を探すように、お姉さまのお姿を探します。

 相変わらずの位置にお姉さまの紫色寄りな青い浴衣。
 でもお姉さまのお顔は見えず、まあるいレンズが私を狙っているだけ。
 何倍にも膨れ上がった羞恥心が、熱病のように私の全身を駆け巡ります。

「そろそろ夕餉の準備も調う頃でしょう。どうぞこの後もごゆっくり、おくつろぎくださいね」

 何事もなかったように凛としたお澄まし顔を向けてくださった女将さま。
 ご悠然と小豆色の暖簾の向こう側へ消えていかれました。

 残されたユタカさまは、何度もングングと空唾を飲み込まれ、呆然自失に紅潮されたお顔。
 恐る恐る振り向いて窺い見たムツキさまは、能面のような無表情で私のほうをじっと見ています。

「予想外のイベントが始まっちゃったけれど、直子もスッキリ出来たみたいで良かったじゃん」

 お姉さまがビデオカメラを下ろして私に近づいてこられます。

「さあ、早くお部屋に戻って、夕餉とやらをご馳走になりましょう。もうお腹ペコペコ」

 私の右手を取り、引っ張るように歩き出されるお姉さま。
 大広間に掛かっている立派な柱時計を見ると、時計の針は一番下を指して二本重なっています。
 確かここに入ってきたのは6時ちょっと過ぎでしたから、このフロントで20分以上足止めされちゃったようです。

 …その20分くらいのあいだ、ずっと生おっぱい視られ放題で、その上、女将さまの両手で、おっぱいだけ弄られてイッちゃう瞬間まで目撃されちゃったんだ…
 今更ながら自分のしでかしたことの破廉恥さに頭がクラクラしてきます。

 お姉さまに手を引かれ、フロントの広間を抜けて、緩い傾斜で上へとつづく幅広な階段へ。
 ゆっくり上がっていくと途中、作務衣姿の仲居さまとすれ違いました。

 このかたも初めて拝見するお顔。
 私たちの姿を認めるや否やハッと驚いたご表情になられるも、すぐに接客用笑顔に豹変されて脇に退かれ、いらっしゃいませの姿勢で私たちに道を譲ってくださいます。
 お部屋へとつづくお廊下に出るまでに、もうあと2名ほど初顔の仲居さまと遭遇しましたが、みなさま同じようなリアクション。

「きっと仲居さんたちの詰所では直子の話題で持ちきりでしょうね。わたし見ちゃった、本当におっぱい丸出しで歩いてた、とか、露出狂ヘンタイ女って本当にいるんだね、とかクスクス笑われているはずよ」

 お姉さまからイジワルく耳打ちされ性懲りもなくグングン熱くなる股間。
 やっとお部屋の前までたどり着くとドアは開けっ放しで、中にはまた人影が。

 キサラギさまと、お部屋に着いたときに浴衣の風呂敷包みを持ってきてくださったお若い仲居さま、そして、先ほど大露天温泉でお会いしたコンパニオン三人組の中で一番小柄ロリータなサラさま。
 更にサラさまったら、他のおふたりの作務衣姿とは超なじまない、半袖ミニスカートのセーラー服姿でミニスカートの下にはピンクのスウェットパンツを穿いておられます。

 お姉さまとふたり、サラさまのお姿のインパクトに驚きの声を上げる寸前に、サラさまの容赦無いツッコミがお部屋に響き渡りました。

「何?マゾですのっ、そんな姿で露天風呂から帰ってきたのっ!?」

 お夕食の配膳のお手伝いなのでしょう、小上がりのお座敷に置かれた座卓の上にお料理の小皿を並べる手を止めて、大きな瞳をまん丸くされているサラさま。

「なんですかキノシタさん?お客様にそんな口の利き方をしてはいけません!今はあなたはうちの使用人なのですから!」

 キサラギさまからサラさまへのきつめなご叱責。
 サラさま、キノシタさまっていう名字なんだ。

「えーっ、だってあんな、おっぱい丸出しで廊下歩いてきたんだよ?」

 叱責が不服そうなサラさま。

「いいんですよキサラギさん。あたしたちさっき露天風呂でこの人たちとご一緒して、すっかりお友達になりましたから」

 お姉さまからご愉快そうに助け舟。

「さようでしたか。お客様がおよろしいのであればかまいませんが。あとは天ぷら盛りが厨房から到着すればお召し上がりいただけますから、今少し、そちらの広間でおくつろぎくださいませ」

 お綺麗な膝立ち姿で、テキパキと卓上の小鉢を整えられるキサラギさま。
 お廊下に置かれた配膳カートからお料理を乗せたお盆をお座敷へせっせと運ばれている、もうひとりのお若い仲居さまは、私の傍らを通るたびに、信じられないというご表情で、私の剥き出しおっぱいをチラチラ盗み見られていきます。

 お姉さまと私はなんとなくお邪魔にならないように、部屋付き露天風呂沿いの窓ガラスに背を向けて棒立ち。
 お姉さまが繋いだ手を離してくださらないので、丸出しおっぱいも隠せません。

「それよりも、サラさんだっけ?どうしたの?その格好」

 お退屈なのか、お姉さまがお座敷のサラさまにお声がけされました。

「それがさ、アタシら厨房で料理も手伝ったんだけど料理って意外に汚れるじゃん、油はねたりとかさ。で、汚してもいい服って、これしかなかったんだよね」
「これ、今夜の宴会用のコスチューム。セーラー服コスプレっていうリクエストだったんだよね。ちなみに明日の宴席は彼シャツ縛りでだぶだぶな男物Yシャツ」

「もひとつちなみに、昨夜は初っ端からランジェリー指定。あとは移動用の私服と寝るとき用のスウェットしか持ってきてなくてさ」
「このセーラー服、事務所が量販店で買ってきたやつ。ペラペラのポリエステルでスカートもすぐめくれちゃうからパジャマに使ってるスウェット穿いた」

 配膳し終えたらしいお三かたがお座敷から広間に下りられて、お若い仲居さまはペコリとお辞儀されそそくさと立ち去られました。
 キサラギさまがお部屋のお電話でどこかへご連絡しているあいだに、サラさまがこちらへ身を寄せてきます。

「ねえ、ですの、本当にそんな格好で露天風呂から戻ってきたの?」

 こそこそ声で私に聞いてくるサラさま。
 そのお声を無視されるように、お姉さまが私のほうを向かれ、イジワルく問い質し始めました。

「そういえばさっきフロントで、女将さんにおっぱい揉みしだかれてあなた、イッちゃってたわよね?」
「えっ!あっ、は、はい…」

 驚愕のご表情なサラさま。

「それまでにもずいぶんいろいろあったし、あなたのふんどしの中、凄いことになっているのではなくて?」
「あ、あの、ええと…そ、そうです…」

 呆れ顔に変わられるサラさま。

「どんな状態?」
「…あの、えっと…」

 ご興味津々のお顔を寄せてくるサラさま。

「黙っていてはわからないわ。どんな状態なの?」
「あの、えっと、ぬ、濡れています…」

「そう。濡れているの。どのくらい?」
「…はい、あの…グショグショ…」

 実際、赤いおふんどしの前垂れの裏側布地は恥丘からお尻の割れ始めあたりまで、ぐっしょり濡れそぼり肌にピッタリ貼り付いているのが自分でわかっていました。
 とくに大量に分泌されたのは、女将さまにイかされたときでした。

 いつの間にかキサラギさまもお電話を終えられ、少し離れたところから私たちを見ておられます。
 接客スマイルが心做しかぎこちない感じ。

 お姉さまの頤が微かに突き出され、服従ポーズのご命令。
 両手を後頭部へ持っていくと同時にお姉さまの左手がおふんどしの前垂れをおめくりになり、間髪入れずに右手が私の股間に挿し入れられます。

「あぁんっ!」
「うわっ、本当にグッショグショ、って言うよりヌルヌルビチャビチャじゃない」

 大げさに眉をしかめられるお姉さまと、プッと吹き出した苦笑を途中で噛み殺したようなお顔のサラさまとキサラギさま。
 お姉さまがもう一度、今度は乱暴に前垂れをめくり上げられ、隠れていた結び目の紐をシュルッと解かれてしまわれます。

「あっ、いやんっ!」
「いやんじゃないわよ。そんなヌルヌルのふんどしでお座敷に座ったら、お座布団や畳を汚しちゃうじゃないのっ!」

 いやんと口には出せますが、服従ポーズはお許しが出るまで崩せません。
 ハラリと足元に舞い落ちる赤布、股間から恥ずかしい粘性を帯びて伸びては切れる幾筋ものか細い糸。
 あっと言う間に全開全裸マゾの服従ポーズ御開帳。

「失礼します。お待たせしました。当旅荘自慢の揚げたて山菜天ぷら、お持ちいたしましたぁ!」

 そのとき入り口ドアのほうから、紛うことなき男性の、威勢のよいお声が聞こえてきました。