2017年5月28日

三人のミストレス 06

 布地を幅5センチ位づつ、丁寧に折り返していきます。
 
 一度めくり上げたら自然には元に戻らないパツパツなチュニックの裾。
 そして、一度めくり上げたらパーティのあいだ中、元に戻すことは許されないであろうと覚悟していました。
 なので、少しでも見映えを良くしておきたくて、だらしなくズリ上げるよりキレイに折り返すことにしたのです。

「へー。あたしのときより、ずいぶんと大胆なローライズになったのね」
 おへその少し下くらいまで布地を折り返して両手を離しました。
 露になった私の生々しい下腹部に、絵理奈さまの刺すような視線を感じます。

「外性器の寸前までベルトラインを下げちゃったんだ。前貼りもしていないのね」
 その部分を表す名詞に堅苦しいお言葉をわざとらしく使われる絵理奈さま。
 呆れたような薄い笑みを浮かべたお顔とも相俟って、自分がとても非常識な格好をしていると思い知らされ、みじめな気分が増してしまいます。

「裾で隠れているとは言え、そんなジーンズ穿いて夕方の人混み歩いてきて、恥ずかしくなかったの?」
 絵理奈さまが、咎めるような口調でおっしゃいました。

「そ、それは、恥ずかしかった、です・・・」
 お答えしながら粘膜が蠢くのがわかりました。
 絵理奈さまのお言葉の侮蔑的なニュアンスに、あられもなく反応してしまう私のどうしようもないマゾ性。

「ふーん。やっぱり恥ずかしいんだ?そのわりには、今あなた、自分で裾を捲り上げたのよね?」
 薄く笑みを浮かべつつ、窓辺のほうへお顔を向けた絵理奈さま。
「ねえ、ちょっと。そこのメイドさん?」
 唐突にマツイさまにお声をかけられました。

「あ、はい?」
 飲み物のテーブル脇でこちらと、イベントショーでの私の痴態を延々と映し出している壁のディスプレイとを交互に気にされていたマツイさまは、ビクッと小さく肩を震わせてから、こちらを向きました。

 無言の笑顔で二度三度手招きされた絵理奈さまに従い、こちらに近づいてこられるマツイさま。
 そのあいだに絵理奈さまは私の正面から離れ、私が座っていた椅子を代わりに私の手前に置き、その脇にお立ちになりました。

 不安そうなお顔のマツイさまに艶然と微笑まれ、傍らの椅子を勧められる絵理奈さま。
「ちょっとここに座って」
「えっ?あ、はい・・・」
 勧められるまま戸惑いがちに腰を下ろされるマツイさま。

 私はと言えば、松井さまの髪を飾るメイドカチューシャを真上から見下ろす形。
 つまり、腰掛けたマツイさまのお顔の真正面に、私の下腹部があることになります。
 それも息がかかりそうなほどの至近距離。
 両膝が崩れ落ちそうなほどの羞恥が全身を駆け巡りました。

 正直言って、それまでオフィスで連日のように辱めを受けていましたから、会社のみなさまの前ではしたない姿になることに、段々と慣れっこになっていた感じもありました。
 でも今、目の前にいらっしゃるかたは、ついさっきまで一面識もなかった、このお店の可憐な従業員さま。
 それも、女子大生さんとご紹介されましたから、自分と同じくらいか歳下のかた。

 そんなおかたの目前に、スジの割れ始めさえ見えちゃいそうな、無毛剥き出しの恥丘をご命令されるままに突き出している、みじめ過ぎる私・・・
 絵理奈さまからのお言葉責めとも相俟って、単純な羞恥や屈辱、背徳とも言い難い、ある種、新鮮な被虐感にゾクゾクしていました。

 マツイさまは、目の遣り場にお困りのご様子で、うつむきがちながらもチラチラと、目前の赤裸々な素肌へと上目遣いの視線を送ってきます。
 その羞じらいを含んだ視線が却ってもの凄く気恥ずかしく、かろうじてジーンズ地で隠された部分の粘膜がキュンキュン熱を帯び、ヌルヌルの汗を分泌しているのがわかりました。

「どう思う?こんなジーンズ」
 絵理奈さまがマツイさまに尋ねます。
「どう、って言われましても・・・すごい、ですね」
 当惑されたお声のマツイさま。

「すごい、ってどんなふうに?」
「えーと、なんて言うか・・・セクシー、って言うか、えっち過ぎ、って言うか・・・とんでもないですね」
 ピッタリなお言葉がみつからない、という感じで考え込まれたマツイさまですが、もはやうつむきがちではなく、視線をしっかり私の下腹部に向けて、眩しそうに見つめてくるようになっていました。

「穿いてみたい?」
 さっきのお言葉通り、とんでもない、というふうに首を左右に振るマツイさま。
「まさか。こんなすごいの、どこで穿くんですか?下着を穿いたとしたって、下着が丸出しじゃないですか」

 冗談めかすように笑いながら否定されたマツイさま。
 ただ、笑ったことで何かがふっ切れたのか、さっきまでの羞じらいが嘘のように消え、まるで微生物の観察でもするような興味津々の瞳で、まじまじと私の無毛な丘を凝視し始めました。

「それにしてもキレイなパイパン。ツルッツルなんですねぇ・・・」
 思わず零れてしまったような、マツイさまの独り言っぽいつぶやき。
「そうよね。毛穴のプツプツが全然見えないもの。これで生まれつきじゃなくて、脱毛エステなんだって」
 絵理奈さままで中腰になって、私の下腹部を容赦なく凝視してきます。

「あたしもイベントのモデルするためにずっと剃っていたんだけど、ハイジニーナって、してみるとけっこう気持ちいいのよね」
 絵理奈さまがおからだを起こしながらおっしゃいました。

「手術の後、担当のナースさんが笑いながら教えてくれたの、下半身見てびっくりしちゃったって。でも手間がひとつ省けてラクだったって」
「理由を話したら納得していたけれどね。あれからあたしもハイジニーナ派になって、今エンヴィに通っているのよ」

 エンヴィというのは、シーナさまのご紹介で私に脱毛施術してくださったエステサロンです。
 ということは、絵理奈さまも今、パイパン状態なのかな?
 施術のときに私がしたような格好にされている絵理奈さまを想像すると、キュンと疼いてしまいます。

 同時に、私を取り囲む人たちの中から、今の絵理奈さまのパートナー、綾音さまのお顔を探していました。
 綾音さまは、お酒のせいなのか頬をほんのりピンクに染めたとても艶っぽいお顔で、嬉しそうに私たちのほうを眺めていらっしゃいました。

「あたしみたいな仕事だとムダ毛の処理は必須。これから秋口まで水着の仕事も多くなるしね」
 絵理奈さまがマツイさまにご説明されるのを、他のかたたちも興味深そうに聞き入っておられます。
「ハイジニーナだと前貼りも貼りやすいから、夏のあいだはヘアーレスで通すつもりなんだ」

 そこで一呼吸置いた絵理奈さま。
 私を取り囲むように、立っていたり座っていたり、思い思いの格好でくつろいでいらっしゃるみなさまをグルっと見渡しました。
 マツイさまが私の目の前に来られてから、リンコさまたちの傍に退かれていたしほりさまに向けて手招きされ、しほりさまが私の近くに戻られました。

 それをご確認されてから、絵理奈さまがマツイさまに向けて、お話をつづけます。
「でもこの人はね、本業がモデルでもグラビアアイドルでも何でもなくて、普段は近くの高層ビルで働いている、アパレル会社のOLなの」

「なのにこんなにツルツルで、しかも、二度とヘアが生えてこない永久脱毛処理までしちゃったらしいのよ。なぜだと思う?」
 マツイさまに尋ねられる絵理奈さま。

「なぜって、わたしに聞かれましても・・・」
 私の下腹部を凝視しつつ、考え込まれるマツイさま。

「しほり?あなたが言っていた例のアレ、やってみせてよ」
 絵理奈さまが傍らのしほりさまにおっしゃり、しほりさまがニッコリうなずかれました。
「おーけー。わたしも久しぶりだから、なんかキンチョーしちゃう」
 とてもそうは思えないルンルンなお顔で、私の目の前に立たれたしほりさま。

「ナオコ?」
「はい?」
 真正面からじっと睨むように私を見据えたしほりさまのお顔が、クイッと顎を前に突き出すように動きました。

 その瞬間、心臓がビクッと跳ねて、ああやっぱり、と観念する私。
「あっ、はい・・・」
 それからおずおずと両手を上に挙げ始めます。

 決して逆らうことは出来ない、みなさまから私への決め事。
 両手のひらが後頭部で重なったとき、腕の動きにつられて折りたたんだチュニック裾もせり上がり、おへそまで剥き出しになりました。
 更にボレロの前合わせも大きく左右に割れ、薄布一枚越しのおっぱい先端までがみなさまの前で露になっていました。

「へー。本当に言っていた通りするのね。よく躾けられていること」
 からかうような絵理奈さまのお言葉。
 何が起こったのかわからない、というお顔で、瞳をまんまるにして私を見つめるマツイさま。

「今わたし、心の底からゾクゾクしちゃった。これすると、なんて言うか征服感?みたいな、得も言われぬサディスティックな感情が湧き上がってくるのよねー」
 しほりさまがとても愉しげにおっしゃり、私の全身を舐めるように見つめてきます。

「何て呼ぶのでしたっけ?そのポーズ」
 絵理奈さまが私に尋ねてきました。
「あ、はい。あの、えっと、マ、マゾの服従、ポーズ、です・・・」

 今日初めて会ったマツイさまの前で、自分の恥ずかしい性癖である、マゾ、という自己紹介の言葉を自ら口にしなくてはいけない、ほろ苦くも甘酸っぱい屈辱感。
 マツイさまのギョッとされたようなお顔が被虐を更に煽ります。

「ああ、そうだったわね。それであなたは、ここにいる人全員から、今の指示をされたらそのポーズを取ることになっているんですってね?」
 嘲笑混じりの冷やかすような絵理奈さまの口調。
「はい・・・」
 今すぐにでもここから逃げ出したいと思う一方で、これから更に何をされちゃうのか、淫らな期待にキュンキュン咽び泣く私のマゾマンコ。

「そういうことなのよ」
 今度はマツイさまに語りかける絵理奈さま。

「この人はね、外で裸になったり、みんなが視ている前で恥ずかしい格好にされることが大好きな、根っからのヘンタイマゾ女なんだって」
「それが会社の人みんなにバレちゃったから、毎日このジーンズよりももっといやらしい格好にさせられて、嬉しそうにオフィスで勤務しているそうよ」
「バスト丸出しはあたりまえ、その姿で来客にお茶を出したりもしているんですって」

 呆気にとられたように私と絵理奈さまをキョロキョロ交互に見遣るマツイさま。
 確かに絵理奈さまのおっしゃる通りなのですが、こうしてマツイさまのオーバーなリアクションを見せられると、オフィスでの自分がしていることのアブノーマルさを、あらためて思い知らされます。

「それは、えっと、イジメ、とかではなくって、ご本人もご納得の上で、されているのですか?」
 絵理奈さまと私、どちらに聞けば、という感じで首を左右に振りながら尋ねられるマツイさま。

「もちろんイジメとかパワハラとか、そういう陰湿なものじゃないわ。みんなちゃんとしたオトナの社会人ですもの、そんな子供じみた真似はしないわよ」
 可笑しそうに微笑んだ絵理奈さまが、私の股間を指さしてつづけました。
「この人がそういう性癖で、それで嬉しがるのがわかるから、させてあげてるのよ。ほら、ここを見れば一目瞭然でしょ?」

 私の両腿付け根付近を僅かに覆っているジーンズ生地は、一目見てそれとわかるほどグッショリ濡れて、色落ち気味なインディゴブルーの布色が黒色に近い濃紺色へと変色していました。

「ね?こんなジーンズ穿かされているってだけで、こんなに濡らしちゃっているのよ?メイドさんが目の前に座ってからは、お漏らししたみたいに濡れシミがどんどん広がっていたわ」
「見られたがりのマゾだから、自慢の女性器を隅から隅までみんなに見せびらかせたくて、ヘアも全部取っちゃったんでしょ?おかげで愛液垂らしまくり」

 不意に背後からリンコさまがお口を挟んできました。
「本当、直子って濡れやすいよね。イベントのときのアイテムも、ボトムは全部、クロッチのところがベチョベチョに濡れそぼっていたもん」
 ミサさまと並んで椅子に腰掛けられたリンコさまがおっしゃった後、持っていたグラスのワインをクイッと飲み干されました。

「ウォーキングしながら濡らしちゃうなんて信じられない。歩きながら感じちゃっているわけでしょ?あたしには考えられない。そんなんじゃプロのモデルには到底なれないわね」
 絵理奈さまの蔑んだお声。

「うちらはそれを知っていたから、ショーのときに下着も前貼りもさせずに、ずっとノーパンでやらせたんだよ。前貼りに濡れジミが目立っちゃうと途端にエレガントさがなくなっちゃうから」
 リンコさまの嗜虐的な笑顔の横で、ウンウンうなずかれるミサさま。

「そういうわけで、今日はあたしと、こっちのしほりのために、こちらの社長さんが、じっくりこの人のニンフォマニアっぷりを愉しむ場を作ってくださったの。今日はそういうパーティなのよ」
 マツイさまに向けてニッコリ微笑まれた絵理奈さま。

「さっきも言ったみたいに、この森下直子っていう人は、その場にいるすべての人の命令に絶対服従することが一番の悦びだって躾けられている、みんなのおもちゃ、マゾペットなんだって」
「もちろん今夜はその中に、つまり命令する側の中にメイドさん、あなたも入っているの。あなた、そいうのって興味ない?」

「へっ?・・・いえ、あの、えっと・・・」
 突然、予想もされていなかったでしょうご提案を振られ、一瞬固まったマツイさま。
 でもすぐにお顔をお上げになり、高揚されたご様子でお言葉をつづけられました。

「でも面白そうですね、わたしも実は、こんなコスプレとかしちゃうくらい萌えアニメとか大好きで、学校でもその手のサークルに入っているんです」
「まさかそんな人と三次元で会えるなんて・・・露出癖のあるマゾペットなんて、えっちな妄想が膨らんじゃって、すっごく興味あります」
 つぶらな瞳が好奇心に爛々と光り始めるマツイさま。

「えっ、本当?うちらと話が合いそうじゃん」
 コスプレ、というお言葉にすかさず食いついた、我が社のコスプレ大好きユニット、リンコさまとミサさま。

「コスプレの話は後で好きなだけしてもらうとして、あなた、えーっと、ごめんなさい、お名前、何だっけ?」
「あ、はい、松井です。松井宏美」
「あーそうだった。松井ちゃんね。松井ちゃんは、このマゾ女に何させたい?」
「何させたい、ですか?うーん。急に言われても・・・」

 そのとき、階段のほうからチーンとベルのような音が鳴りました。
「あ、新しいお料理が上がってきたみたいです。ちょっとごめんなさい。持ってきますから」
 あわてて立ち上がろうとされた松井さまのお顔が、私の下腹部スレスレまで接近しました。

「あっ!」
 という松井さまのお声とともに吐息が恥丘にかかり、
「あぁんっ!」
 と感じてしまう、ふしだらな私。
 名残惜しそうに、お料理用エレベーターのほうへ駆け寄る松井さまのお背中。

「はいはーい。松井ちゃんがリタイアだったら、ワタシがリクエストしていいかな?」
 松井さまがお席を外されたことで少し緩んだ空気の中、雅さまの明るいお声が響きました。

「ほら、ワタシあんまりオフィスにいないからさ、ナオちゃんのえっちな姿、ぜんぜん拝めてなかったんだよね。ほのかから話聞くだけでさ」
 ほのかさまと連れ立ってフラフラと近づいてこられる雅さま。
 お顔がほんのり火照って、けっこうご酩酊のご様子。

「みんなの前で裸でバレエ踊ったとか、ひとりえっちさせたとか、ランチタイムのカフェでブラとパンツ脱がさせた、とかさ。ワタシ、そういうの聞いてウズウズ羨ましくて仕方なかったんだ」
 ほのかさまったら、そんなことまで雅さまにご報告されていたんだ・・・

 マスキュリンなハンサムレディの雅さまと清楚を絵に描いたようなほのかさまが、どんなお顔で私の噂話をしていたのだろう、と想像すると、なぜだかとても淫靡な気持ちになってきます。

「アユミの頃以来、そんな遊びともずっとご無沙汰だったからさあ、ワタシもほのかと一緒にいろいろ考えてきたんだ、ナオちゃんの虐め方」
 もはや仲睦まじさを隠そうともせず、嬉しそうにおっしゃる雅さま。
「ナオちゃんは、アユミよりも羞じらいが強そうだからさ、虐め甲斐がありそうだよね」

 普段と変わらない明るくフレンドリーな雅さまの口調なのですが、視線やお言葉の端々に、仕留めた獲物をわざと指先でもてあそぶような嗜虐的なニュアンスが感じ取れました。
 ああん、雅さままで・・・

 マゾオーラ全開な直子を目前にすると、誰もが無性にエス心を駆り立てられて、もっともっと虐めたくなっちゃうみたいなのよね・・・
 以前、シーナさまがおっしゃっていたお言葉を思い出していました。

「間宮部長がそうおっしゃるのでしたら、メイドさんが何か思いつくまで、お任せしますわ」
 絵理奈さまが嬉しそうにおっしゃり、一歩退かれました。
 代わりに私の目前に立たれた雅さま。
 アルコールのせいなのでしょう、普段よりトロンとした艶っぽいまなざしで、私の全身を眺めてきます。

「最初から全部脱がせちゃっても面白くないから、ジワジワといきたいな。両手縛って抵抗出来ないようにして。何か紐かなんか、ないかな?」
 雅さまの問い掛けに逸早くお応えされたのは、お姉さまでした。

「そうくると思って、ちゃんと用意しておいたわよ」
 ソファーに置いたバッグの中からスチール製の手錠を取り出されるお姉さま。
「あれって、来るときに直子が提げていたバッグじゃない?」
 リンコさまのお声に、あっ、と驚く私。

「へー。ナオコって、自分を虐める道具をいつも肌身離さず持ち歩いているんだ。ずいぶんと意識高い系のマゾなのね」
 しほりさまのからかうようなお声に、みなさまがアハハと笑います。
 松井さままで、お料理をテーブルに並べながら、そのお背中が小刻みに震えていました。

「さんきゅ」
 お姉さまから手錠を渡された雅さまが、私の背後に回りました。

 後頭部で組んでいた両手に雅さまの手が触れ、そのまま背中側に下ろされて後ろ手にされます。
 手首にひんやりとした金属の感触。
 カチャン、カチャン。
 剥き出しのお尻のすぐ上あたりで、後ろ手のまま施錠されました。

「ふふーん。いい感じ。これでナオちゃんは、ワタシに何をされても抵抗出来ないのよ?」
 私の正面に戻られた雅さまのイジワルそうな薄い微笑み。
 おもむろに右手が私の胸元に伸びてきます。

「ああん、み、雅さま?・・・」
 チューブトップの胸元にかかった雅さまの右手が、そのまま無造作にズルッと布地を引き下げました。





2017年5月7日

三人のミストレス 05

 夕方6時過ぎでもお外はまだ充分明るく、昼間の真夏日で蓄えられた熱気が肌に絡みつくように漂う中を、大勢の人たちが行き交っていました。

 てんでバラバラな私服で着飾った妙齢の女性8名が一団となってゾロゾロワイワイ歩いていくと、やっぱりかなり人目を惹くみたい。
 すれ違う人や追い越していく人たちのうち、とくに男性から、首の動きがわかるほどの無遠慮な視線を投げかけられます。
 おそらく、お美しいお姉さまや綾音さまたちのお顔やスタイルに見蕩れて目で追っているのでしょうけれど、私にはどうしても、自分の赤い首輪と服装が、いかがわしく目立っているせい、と思えてしまいます。

 大通りを渡り、部室のあるマンションのほうへ。
 マンション前の公園を突っ切って住宅街のほうへ。
 やがて見えてきたのは、私がひとりで帰宅するときたまに使う、人通り少なめな住宅街の路地への入口。

 その入口の角に、いい感じに古びた壁面に緑の草が這っている、小じんまりとした背の低いビルがあります。
 ビルの一階は、大きめな窓で室内を見通せる造りの、喫茶店なのかバーなのかレストランなのか。
 道路沿いにテラスっぽくテーブルが出ているスペースがあって、フランスのカフェみたいだな、と通るたびに思っていたのですが、そこが今夜のパーティ会場のお店でした。

 ウェルカムリースが掛かった扉を引いて、お姉さまたちがお店に入っていきます。
「あ、いらっしゃーい。待ってたわよー」

 数時間前にお聞きしたような、覚えのあるお声のするほうに目を向けると、お店の奥のほうに満面に笑みをたたえた、ややふくよかな体型の人懐っこそうなおばさま。
 お声からして、このかたが、さーこママさま、のようです。

 店内は小じんまりながら木調を生かしたオシャレな雰囲気で、長方形スペースに4人~6人掛けのテーブルが二組、通路を挟んで10人くらい並んで腰掛けられそうなカウンター、カウンターの向こう側は広めな厨房となっているようです。
 テーブル席にアフターファイブらしきOLさん3人組、あと、カウンターにはカップルさんなのでしょう、男女ともスーツ姿の先客様がいらっしゃいました。

 って、えっ!?
 今日は貸し切りではなかったの?
 一般のお客様もおられる中でパーティするのかしら。
 窓ガラス越しにお外からも丸見えな、こんな開放的な環境のお店で・・・

 パーティの席上でみなさまが私をどのように扱われるか定かではありませんが、今日させられた服装から言って、平穏無事に何事も無く終わるとは思えません。
 必ずや、良識ある世間一般のかたたちは普段人前で絶対お見せにならないであろう、公序良俗に反するからだの部分の露出を強要されることでしょう。

 夜が更けて客席に照明が灯れば、闇の中で店内が浮かび上がり、お外を歩く人たちからガラス窓越しに一層覗きやすくなることは必至。
 新規のお客様もご自由に出入りされる、そんなお店の中で私は、半裸か全裸か、はたしてどんな格好でお食事する羽目になるのでしょうか。
 ドキドキが急激に高まりました、

「準備はもう出来ているから、ちょっと時間早いけれど始めちゃっていいわよ。あ、お連れ様も別にいらっしゃるんだったわね?総勢10名様だからあとおふたり」
 おっしゃりながら、お部屋の片隅の階段を上がり始めるさーこママさま。
 その後ろをついて行くお姉さまがた。

 そっか、二階があるんだ。
 二階が貸し切りっていうことなのかな。
 ホッと胸を撫で下ろす私。

 二階に上がるとちょっとビックリ。
 一階の小じんまりとした印象とは真逆な、一階の厨房にあたるスペースまでを含んだ予想外に広々としたワンフロア。
 フローリングの床、壁際にはソファーや本棚、大きなビデオ用壁掛けディスプレイ、それにアップライトピアノまで設えてありました。

 窓際らしきところにはオリーブグリーンのカーテンがかかり、品の良い間接照明がお部屋をムーディに照らしています。
 飲食店と言うよりプライベートなパーティルームみたいで、まるで他所様のお家のリビングダイニングにお邪魔したみたい。

 スペースの中央に大きめなダイニングテーブルがふたつ置かれ、その上にたくさんのお皿と美味しそうなオードブルや中華の点心が並べられているのが、唯一レストランぽいところ。
 思い思いに寛げるよう、あちこちに小さめなラウンドテーブルとソファーも含めて椅子も人数分以上置いてありますが、なんだか立食パーティっぽい雰囲気になりそう。

「飲み物はあそこに、ビールサーバーとワインクーラーにご指名の銘柄を一通り揃えておいたから」
 お部屋の片隅のテーブルを指さされながらご説明してくださるさーこママさま。
 いろんな形のグラスも山ほど置いてありました。

「あ、カーテン開けようか。まだ外は明るいんだし、こっち側の窓からは緑がたくさん見えるから雰囲気いいのよ」
 さーこママさまがツカツカっと壁際に行き、道路沿いと路地沿いのカーテンを全開しました。

 ついでにオーディオもオンにされたのか、ドビュッシーのピアノ曲が低く流れ始めました。
 曇りひとつない路地側の素通しガラス窓から、黄昏どきの低く弱い陽射しが、お外の木々を抜けて木漏れ日となり、フローリングに淡い模様を落としました。

 自然光に満たされてお部屋がクラッシーな雰囲気になったのに、私は小さくドキン。
 一番大きな窓が面している道路沿い、公園側のほうには遮るものが何も無く、公園からちょっと見上げればこの素通しガラスの中、バッチリ覗けちゃうはず。
 夜になって辺りが暗くなったら、お部屋の灯りで一際目立っちゃうことでしょう。
 室内貸し切りだとしても、お外からは丸見え?

「お料理は、出来上がり次第どんどん上げるから、どんどん食べちゃってね」
「ここのお世話は、この、花の女子大生マツイちゃんがつきっきりで担当するから、何かあったら彼女に言って、お酒やおつまみのリクエストとか」

 さーこママさまのお隣でペコリと頭を下げられた、フリルの付いたモノトーンフレンチメイド姿の長身美女さま。
 笑うとエクボがクッキリな愛くるしいお顔から下は、フレンチメイド衣装ゆえ凹凸のメリハリが強調されたナイスクビレのわがままボディ。

「よろしくお願いしまーす」
 そのご容貌からはちょっぴり想定外のソプラノ気味アニメ寄りな可愛らしいお声でご挨拶されたマツイちゃんさまは、テキパキとグラスに飲み物を注ぎ始めました。

「あ、そうそう、それでミャビちゃん、アユミちゃんと同じご趣味のかたって、どなたなの?」
 さーこママさまが雅さまに尋ねられました。

「ふふーん、ママは誰だと思う?」
 イタズラっぽく笑われた雅さま。

 アユミさま、というかたは、お姉さまたちの服飾部時代のご学友で、私と同じような性的嗜好をお持ちだという女性。
 お姉さまたちが私の辱め方に手慣れていらっしゃるのは、アユミさまとご一緒していた頃のご経験があるからということですが、私はまだお会い出来ていません。
 今はモデルさんのお仕事でご活躍されているそうです。

 雅さまったら、そんなことまでお店にお伝えしちゃっていたんだ・・・
 いよいよ逃げ場が無くなった気がして、下半身がキュンキュン疼きました。

「誰?って聞かれてもクイズにならないわよ?わたし、たまほのちゃんまでは、御社の社員さん全員知っているもの」
 おっしゃりながら、さーこママさまを囲むように立っている全員のお顔を見回し、その視線が私の赤い首輪を通り過ぎたと思ったら、また戻りました。

「お名前をまだ存じ上げていないかたは、こちらとこちら、ね」
 正確に里美さまと私を指さされたさーこママさま。
 そのままじーっと、私を見つめてきました。

「あなた、ランチタイムにお弁当届けに行ったとき、窓際で裸でマネキンごっこしていたでしょう?」
 おやさしい声音でとても嬉しそうに、さーこママさまがおっしゃいました。
「あ、えっと、あの、それは・・・」

 完全にバレてた・・・
 抑えようのない羞じらいが一気に全身を駆け巡り、からだ中がカーッと火照りました。

「おおおー。大当たりー」
 ご愉快そうに拍手される雅さまとリンコさま。

「今思い出せば、その赤い首輪がチラッと髪のあいだから見えていたのよね。ガラス窓にもうっすらお顔が映っていたし」
 愉しそうにお言葉をつづけられるさーこママさま。
 ああん、顔まで視られていたんだ、オフィスで全裸の私の姿・・・
 今更ながら逃げ出したいほどの羞恥。

「形のいい綺麗なお尻だったわよね。あなたみたいな可愛い子なら大歓迎よ。遠慮しないでお好きなだけ脱いじゃって。どうせ今日二階は貸し切りだから」
 さーこママさまから、お店で脱ぐことのお墨付きまでいただいてしまいました。

「この子は、今年の春入社した森下直子。あたしの秘書なの。こっちは愛川里美。うちのネットショップ担当。直子はどこでも脱ぐけど里美は脱がないわ。ママさんマツイちゃん、今後ともよろしくね」
 真っ赤になっている私に代わって、お姉さまがご紹介くださいました。
 私は隣でペコリとお辞儀するのが精一杯。

「へー、直子ちゃんていうの。なんならさっきのマネキンごっこみたくスッポンポンになっちゃっても構わないわよ。わたしも後で見せてもらいに来ようっと」
 イタズラっぽくおっしゃったさーこママさまが、雅さまのほうへお顔を向けてお話をつづけました。
「ケータリングで伺った後、うちのケンちゃんが直子ちゃん視て大変だったのよ、すごく羨ましがっちゃって・・・」

 ケンちゃんさまというかたは、オフィスにお弁当を持ってきてくださったとき、一緒に来られたお店のスタッフさんと思われるお若そうなお声の男性です。
 私はお顔を拝見していないのですが、おそらく今も階下の厨房におられるのでしょう。

 私を視て、羨ましい?
 さーこさまのお話がどのように展開するのかドキドキしていると、お部屋の入口のほうからお声がかかりました。

「ごきげんよう。遅くなりましたー」
 お声のしたほうを見ると、絵理奈さまとしほりさまでした。
「あら、いらっしゃいませー」
 さーこママさまとマツイさまがユニゾンでお応えした後、みなさまが口々に、いらっしゃーい、と迎えます。

「お連れさまがお見えになられたようね。では、わたしは下にいるから、みなさん、今夜は楽しんでいってね。マツイちゃん、後はよろしくねー」
「はーい」
 メイド姿のマツイさまの可愛らしいご返事とともに、さーこママさまのお話は尻切れトンボで終わりました。

「あ、そうだった」
 階段を下りかけたさーこママさまが立ち止まり、こちらにお声をかけてきました。
「うちのお店、この階段上りきったところがおトイレだから、たまに一階のお客様が上がってくることもあるけれど、わたしがよく説明しておくから、とくに直子ちゃんは気兼ね無用よ、お好きなだけ愉しんでってね」

 明るくご冗談めかしたさーこママさまのお声に、みなさまが、あはは、と笑います。
 よく説明しておくって、どんなご説明を階下のお客様にされるおつもりなのでしょう・・・

 何はともあれ、絵理奈さまたちが合流されたところで、カンパイということになりました。
 窓辺のラウンドテーブルで、マツイさまが注いでくださった各自お好きな飲み物を手に、中央に置かれたふたつのダイニングテーブル周りに集まります。
 
 私はシャンパンのグラスを手に取り、隣には白ワイングラスのお姉さまと入口寄りのダイニングテーブルへ。
 その横にほのかさま、雅さま、里美さまが立たれました。
 もう一方のダイニングテーブルには、絵理奈さまを中心にしほりさま、綾音さま、リンコさまとミサさまの開発部チーム。
 
 絵理奈さまは、今日は幾分くだけたファッションで、生成りのカットソーに黒のショートパンツ、それにオリエンタルな刺繍の入ったシルク地のショートガウンを合わせたシンプルコーデなのですが、その華やかなお顔と瀟洒な仕草で充分過ぎるほどの芸能人オーラを放っています。
 しほりさまは、いつものイメージ通りの黒ずくめスレンダーコーデ。
 絵理奈さまのお隣に立たれた綾音さまのお顔が、いつになくだらしなくほころんでいらっしゃるのはご愛嬌。

 お姉さまの音頭で、絵理奈さまのご退院とイベントの成功を祝してカンパーイ。
 カンパイの後は、それぞれのフォークがお料理の大皿に伸びつつの雑談タイム。
 サラダ、オードブル、点心、どれも美味しくて、みなさまモグモグと食が進みます。

 お肉料理が出てきたと思ったらお刺身の盛り合わせ、キッシュに唐揚げ、オムレツとバラエティに富んだ美味しそうなお料理がどんどん、マツイさまの手によって運ばれてきます。
 みなさま、お酒のほうもクイクイ進んでいるようで、それにつれておしゃべり声も大きめに。

 お姉さまたちとのおしゃべりの中で雅さまが、さっき途中で終わってしまったケンちゃん氏のお話のつづきを教えてくださいました。

 ケンちゃん氏は、このお店のお料理ご担当の人で、まだ二十代半ばとお若いながら、フランスやスペインで修行されシェフ経験もある優秀なかた。
 そして、スペイン人のカレシさんをお持ちのゲイなかたなのだそうです。

 それでケンちゃん氏は、男性版の私、とも言えるような趣味嗜好もお持ちだとか。
 すなわち、露出願望のケがあるマゾ寄りのかたなので、とくに酔っ払われるとその傾向に拍車がかかり、何度か手痛いしくじりもされちゃっていらっしゃるとのこと。
 それが、オフィスで裸の私を見たときの、羨ましい、というご感想につながったみたいです。

「多分、直子が勤務先のオフィスっていう日常的な場所で同性に囲まれて、ひとりだけ裸にされているのを視て、見せたがりのマゾ心が疼いちゃったのでしょうね」
 お姉さまもケンちゃん氏のその性癖を詳しくはご存知なかったらしく、感心されたような呆れられたような、笑いを押し殺せないお声でご感想をおっしゃいました。

「ナオちゃんは、余計な心配しなくていいのよ。ケンちゃんが裸を見せたいのはあくまでも男性だけ、だから。女性相手だと縮こまっちゃうみたいだし」
 男性の露出狂か・・・男性の全裸は見せられたくないなー、なんて思っていた私の心を見透かしたみたいに、雅さまがご愉快そうにおっしゃいました。

「ただ、お肌のお手入れに何使ってるんですか?とか、熱心に相談されちゃうかもしれないけれどね、アユミみたいに」
 オチをつけるみたく雅さまが付け加えて、一同あはは。

 始まってからしばらくは、誰に何をされるでもなく穏やか健全に過ぎていきました。
 腹ごしらえも一通り落ち着いたみなさまが、グラス片手に思い思いの場所の椅子に腰掛けて、まったりムード。
 お姉さまと雅さまがソファーにゆったり腰掛けられ、私とほのかさまが、その傍に木製の椅子を持ってきて腰掛けました。

 もともと股下が極端に浅いシーンズですから、膝を折って腰を屈めるとお尻側の布地が大きく腿側に引っ張られて、ますますズリ下がりました。
 チュニックの中でお尻が、お尻の穴部分までお外に出ちゃっている生尻状態。
 その手前の穴はどうにかジーンズ地が覆っていますが、落ち着かないこと半端ありません。

「今回はご迷惑をおかけしてしまい、本当に申し訳ありませんでした」
 自分のお尻に気を取られたモジモジ状態からふと目を上げると、いつの間にいらしたのか、お姉さまの目前に絵理奈さまとしほりさまが立ち、深々とお辞儀をされていました。

「何よ今更あらたまっちゃって。いいのよ。盲腸炎なんて不可抗力で仕方ないもの。なんとか代役で乗り切れたしね」
 お姉さまが立ち上がり、傍らにあった白ワインのボトルをおふたりに差し出されました。

「絵理奈ちゃんもたいしたことなくて、早く退院出来て良かったじゃない。しほりさんにはずいぶんお手伝いしてもらったわね。お疲れさま」
 お姉さまが注いだワインでグラスをチンッと合わせ、お三かたで乾杯。

「秋にやるバイヤー向けのショーモデルは、頼んだわよ?うちのお得意様、絵理奈ちゃんファン、多いんだから」
「はいっ!精一杯がんばります」
 元気の良いお返事にニコッと微笑まれたお姉さまの視線が、私に向きました。
 つられてこちらを振り向かれる絵理奈さま。

「あなたがあたしの代役をしてくださったのよね?えーっと、夕張小夜さんでしたっけ?本名は森下直子さん。今回はありがとうございました」
 絵理奈さまに深々とお辞儀をされ、私もあわてて立ち上がります。
 さりげなく腰に手を遣り、ずり下がった股上をチュニックごとグイグイッとズリ上げました。

「あ、あの、えっと、ご退院おめでとうございます・・・はじめまして、じゃないのかな、何度かオフィスでお見かけしてましたし・・・」
 お顔を上げられた絵理奈さまが、しどろもどろでうろたえている私の全身を、お姉さまに対するフレンドリーな雰囲気から一転、値踏みするような冷ややかな瞳でじっと見つめてきました。

「へー、聞いてはいたけれど、確かにあたしと同じような体型ね。あたしは病院で少し痩せちゃったけれど」
 私の赤い首輪からボレロに隠れたバスト、ピチピチチュニックのウェストを経て、ジーンズの足先まで上下する視線。
 その振る舞いに、何か挑戦的と言うか、一方的な敵意みたいなものを感じました。

「直子さんのご活躍は、いろいろと教えてもらったわ。アレも観せてもらったし、しほりからもいろいろ聞かされたしね」
 アレ、とおっしゃりながら絵理奈さまが指さした壁掛けディスプレイには、いつの間にかあの日のイベントショーの模様が映し出されていました。

 そこには、アオザイ風のボディコンマキシワンピースを身に着けた私がライトを浴び、バスト周りと下腹部周りだけを鮮やかに透けさせて歩いていました。
 ワインクーラーが置かれたテーブルの傍らで待機されているマツイさまが、そのディスプレイの映像を食い入るように視つめていらっしゃいました。

「モデルがあなたに代わったことで、急遽エロティック強め路線に変更して押し切ったらしいじゃない?あたしも映像や写真見せられてびっくりしちゃった」
「で、おかげで大好評だったって聞いて、二度びっくり」
 絵理奈さまが幾分大げさ気味に眉をしかめられました。

「それにあなた、ニプレスも前貼りもしなかったのでしょう?あたしだったら到底考えられない」
 今度は蔑むような口調。

「でも、しほりやリンコさん、早乙女部長さんたちから、あなたが根っからの見せたがりドマゾなんだって、控室や楽屋でのあれこれを聞かせてもらって、なるほどな、とも思ったのよ」
「さすがのあたしも、ヘンタイが相手じゃ勝てないな、って」
 
 最後に憐れむようなお顔を一瞬お見せになってから、私に向けてご自分のワイングラスを差し出してきました。
「あ、はい・・・」
 私もあわてて自分のシャンパングラスを手に取りました。

「ま、何はともあれ、代役、ありがとうね」
 チンとグラスを合わせて一口飲みました。
 絵理奈さまの私を視る瞳がひどく嗜虐的に見えて、胸がドキドキして仕方ありません。

 いつの間にか私たちの周りにみなさまが集まってこられていました。
 私たちの会話を興味津々で見守られていたご様子。
 その中から、心底愉しそうにお顔をほろばせたリンコさまが私に近づいてこられました。

「今日直子はね、ショーのときのローライズを穿いて来てるんだ。リナちゃんのときより股上をもう2センチ浅くすることになって、ショーの直前に急遽アタシが仕立て直したんだよ」
 得意満面なお顔が可愛らしいリンコさま。

「悪いけど、リナちゃんなら穿くのをためらっちゃうような破廉恥さなんだ。アタシの自信作。ほら直子、絵理奈さまに直子ご自慢のパイパンマゾマンコをお見せしなさい」
 
 お酒ですっかりご機嫌になられた、ほろ酔いリンコさまのお下品なお言葉でのご命令。
 その横で黙ってうなずかれるミサさま。
 一斉に起こる、けしかけるような拍手。

「は、はい・・・」
 どうやらみなさまパーティの余興として、私を虐めて遊ぶモード、に入られてしまったようでした。

 ご出張ばかりで滅多にオフィスにおられず、こういう場が初めてな雅さまが、ほのかさまと肩を寄せ合い、ワクワクなお顔で私を見ています。
 綾音さまはトロンとした瞳で頼もしそうに絵理奈さまを見つめ、里美さまとしほりさまは、待ってました、と期待感に溢れた野次馬さん的なお顔。
 マツイさままでが、壁のディスプレイとこちらを交互に気にされていました。

 気がつくとお外もいつの間にか宵闇。
 正面の道路沿いの窓から、公園の外灯がポツリポツリと灯っているのが見えました。
 お部屋に低く流れているピアノ曲は、私の大好きなサティのグノシエンヌの3番。
 
 シャンパングラスをテーブルに置き、おずおずとチュニックの裾に両手を掛けました。


三人のミストレス 06