2016年12月25日

非日常の王国で 10

 その手錠は、黒光りするスチール製の本格的なもので、両手にかけられると、ずっしりとした重みが両腕に伝わってきて拘束感を増幅させ、私の被虐心を徒に煽りたてました。

「同じ鍵で外せる南京錠や足枷と棒枷も、シリーズであるのよ」
 テーブルの上に置かれた凶々しい拘束具を、みなさまにお勧めになる里美さま。
 それらを手に取り、興味深そうにためつすがめつされるお三かた。
 里美さまは、両手が不自由となった私に何かイタズラを仕掛けてくるでもなく、やがてジーっと機械音が鳴り、ボックスのロックが解除されたようでした。

 里美さまが蓋を開き、手錠の鍵を取り出します。
「はい、これ」
 手錠のままの右手に鍵を渡された私は、左手首に嵌められた手錠の鍵穴を探し、自分で手錠を外しました。
 何かされちゃうかな、とドキドキしていた分、ちょっと拍子抜け。

「いいですね、これ」
 倉島さまが蓋の開いたボックスに手を伸ばしながらおっしゃいました。

「これ買って、ヨーコんちに置いておこうよ。いろいろ使えそうじゃない?」
「うん。試験期間中にマンガやゲーム封印するのにも重宝しそう」
「バイブや電マ入れてオナ禁とかね」
 ワイワイ盛り上がるお三かた。

「これ、輸入品でパテントものだから、定価はけっこうお高いのだけれど、サンプル品のこれでよかったら、値引き出来ますよ?今みたいにお客様にデモンストレーションを数回披露しただけのお品だから、ほぼ新品同様よ」
 ご商売上手な里美さま。

「うわー。ありがとうございます。ぜひお願いします。これはサークルの備品としてサークル費で落としちゃおうよ」
 倉島さまのお言葉の後半は、他のおふたかたへのご提案でした。

「他に何か、気になるものはあります?」
 里美さまがみなさまにお尋ねしました。
「あ、さっきの、輸入品、っていうワードで思い出したのですけれど・・・」
 倉島さまがノリノリな感じで手を挙げられました。

「ネットで見れる外国のボンデージものの動画とかでよく、何て言うのかな、機械仕掛けのえっち道具があるじゃないですか?棒の先端にバイブが付いていてピストン運動をくりかえす機械、みたいな・・・」
「ファッキングマシーン?」
 メグさまがポツリと語尾を上げた疑問形。

「そう!それ。ファッキングマシーン。でも、挿入するみたいな直接的なのじゃなくて、あたしが気になるのはスパンキングの機械なんです」
 倉島さまが若干照れたようなお顔でおっしゃいました。

「セルフボンデージして、自らお尻を突き出して機械仕掛けの鞭にお仕置きを受ける、っていう絵面にすごくウズウズしちゃうんです」
「スパンキングってひとりじゃ出来ないじゃないですか?出来ないこともないけれど、自分ですると打たれるタイミングわかっちゃうからいまいちつまらないし。だからああいう機械、欲しいなって」

「扇風機の羽根を外して自分で作ってみようかな、と思っちゃうくらい欲しいんです。でも扇風機だと一定速度の乱れ打ちしか出来なそうだし。改造しようにもあたし、機械関係、疎いし」
「打つ強さを調節出来たり、打つタイミングをランダムに設定出来たらいいですよねー」

 うっとりしたお顔の倉島さまの視線が、なぜだか同意を求めるように私を視ています。
 私も、そんな機械があったら、絶対欲しいな、とは思いますけれど・・・

「なんだ、そんなにお尻叩いて欲しいなら、言ってくれればいつでもやってあげるのに」
 ヨーコさまがニヤニヤしながら、倉島さまの肩を軽く小突きました。

「そういうんじゃないの。何て言うかな、えっちな妄想を巡らせて、その世界観の中で囚われの身となって拘束されて、延々とお仕置きされるのが気持ちいいと思うのよ。お赦しくださいー、って哀訴懇願しながら。それこそがセルフボンデージの醍醐味じゃない?」
 熱く語る倉島さま。

「生憎うちのラインアップは、まだそこまで充実していないの。ごめんなさいね」
 申し訳なさそうにおっしゃった里美さまのお顔が、すぐにほころびました。

「でも安心して。うちのショップはその辺もちゃんと視野に入っていて、今開発中だから。海外では市販しているメーカーもあるけれど、輸入ものはやっぱり値が張っちゃうのよね」
「仕組みは単純なものだし国内で作ったほうが、より使い勝手の良いものが安価で出来そうだから、今、ある精密機器メーカーと共同開発中なの。さっきおっしゃったファッキングマシーンみたいなのも含めて、その手のマシーン類全般をね」

「完成したらネットに載せるよりも早く、真っ先にお知らせするから、またここに遊びにいらっしゃい」
「はーい!」
 
 元気良く響いた、お三かたのお返事。
 私もそれは、とても愉しみ。
 ただ、このショップで売るのであれば、きっと試作段階から私が呼び出され、実験台にされることになるのでしょうけれど。

「それじゃあそろそろ、自縛の講義に移りましょうか。マゾ子ちゃん?よろしくね」
 唐突なバトンタッチに心臓がドキン。
 とうとう、このかたたちの前で全裸になるんだ・・・
 鼓動が口から飛び出しそう・・・

 でも、ずっとみなさまのお話をお聞きしていて、お三かたに性癖的な親近感も湧いていたので、同じくらいのワクワクゾクゾクを感じているのも事実でした。

「自縛の前に、まずお買い上げいただいた麻縄のメンテナンス方法から教えてあげて」
 里美さまのお言葉で、倉島さま以外のおふたりもそれぞれ、ご自分のバッグからノートとペンを取り出されました。

「へー。現役の学生さんはさすがに真面目ね。ノート取るほど真剣に聞いてもらえるなら、マゾ子ちゃんも講義のやり甲斐があるわよね」
 からかうみたいに私を見る里美さま。

 私は緊張しつつ、ご説明のために昨夜まとめておいた自分のノートをバッグから取り出しました。
 それと、愛用のロープを入れた大きな巾着袋。
 これは、中学校のとき母が作ってくれた麻布の体操服袋でした。

「そう言えばみなさんて今、何年生なの?」
 里美さまのお言葉に、すぐヨーコさまが応えました。
「アタシとメグは2年で、レイちゃんが3年。耽美研的には、もうひとりづつ2年生と3年生がいます」

「へー。みんなマゾ子ちゃんとそう歳が変わらないのね。むしろ歳下かも」
「えーーーっ!?」
 久しぶりのお三かたのユニゾン疑問形。

 私がもしも四大に行っていたら今3年生ですから、倉島さまとは同級生、他のおふたかたは一年歳下です。
 そっか、同級生や下級生の前で私はこれから、自分のヘンタイ性癖をひけらかすために、ひとりだけ全裸になるんだ。
 学生時代に果たせなかった妄想が現実になるような気分になり、その頃にひとり遊びしながら想像していた恥辱と被虐の感覚がまざまざと脳裏によみがえりました。

「どうしよっか?このまま始めてもいけれど、自縛の実演もするのだから、このままだとこのテーブルが邪魔になって、マゾ子ちゃんの下半身が見えにくいわよね?」
 里美さまがお三かたに問いかけました。

「うーん。そうかな・・・そうかも、ですね・・・」
 想定外のご質問だったらしく、戸惑ったようなご反応の倉島さま。

「あちらへ移動しましょう。せっかくいらしたのだから、かぶりつきで観ていただいたほうがいいもの。机が無い分、ノートが取りづらいかもしれないけれど」
 
 里美さまが指さされたのは、長方形のテーブルの短いほうの辺の先、マネキンの林とは反対側の壁際でした。
 そこだけショーケースの並びが途絶え、ヘンな形をした大きめの椅子以外何も置かれていない、ちょっとしたスペースになっていました。

「さあみなさん、ご自分の椅子とノートだけ持って集合!」
 里美さまが立ち上がりました。

「マゾ子ちゃんは、あそこの壁際、椅子の脇辺りで、悪いけれど立ったまま講義してね。荷物はあの椅子の上に乗せておけばいいわ」
 
 里美さまが指さされたヘンな形の椅子には、なんとなく見覚えがありました。
 ずっと以前、やよい先生とミイコさまに連れられてローソクプレイをするために訪れたSM専用ラブホテル。
 そこにあった、えっちな仕掛けがたくさんある椅子によく似ている気がしました。

 そんなことを考えてゾクゾクしているうちに、みなさまが私の前に集まってきました。
 テーブルを背に私を扇型に囲むように腰掛けたみなさまと私の距離は、ほんの2メートルに満たないくらい。
 こんな至近距離で・・・
 
おまけに私の右側は真ん中分けカーテンで可愛らしく飾られた素通しの窓。
 もう夕方5時近いのに、梅雨明けし夏に向かってどんどん伸びる明るい西日が射し込む中、路地を隔てた向かい側のビルの壁と窓が見えていました。

「さあ、これでいいわね。それではマゾ子先生、お願いしまーす」
 里美さまの茶化すようなお声に促され、ペコリとお辞儀をひとつ。

「えっと、麻縄っていうのは、普通の荷物を縛る用とか園芸用のを買うと、工業用のタールとかお肌に良くない成分を使って固めている場合があるので、一度煮詰めて洗い流し、再度なめす必要があります・・・」

 自宅でまとめてきた要件のメモをチラ見しながら、我ながらぎこちなくお話を始めました。
 私から見て、右から順番にメグさま、ヨーコさま、倉島さま、里美さま。
 至近距離から真剣な瞳たちがジーーっと私を見つめています。

「でも、今日お買い上げいただいたロープは、ちゃんと人間を縛る用に作ってありますから、この工程はいりません。すぐ使うことが出来ます・・・」
 私が、人間を縛る用、と言ったとき、みなさまクスクスと笑われました。
 それを聞いて私も幾分リラックス。

「麻縄は植物由来ですから、湿気でカビが生えたり腐ったりもしちゃいます。なので、もしも濡らしちゃった場合は、水分をよく拭き取ってから充分に陰干しします。直射日光で乾かすと縄が硬くなってしまうので、縛り心地が悪くなります・・・」
「縄が乾燥したら油を縄全体に塗りこんでなめします。ベトベトにするのではなくて、極少量を手に取って縄を滑らせて揉み込む程度で大丈夫です。これで縄がより柔らかくなります・・・」

「塗る油は、馬油とかオリーブオイルとか、人それぞれ違っているようですが、私は、動物性よりも植物性のほうがいいかな、と思ってホホバオイルを使っています。これならお化粧品でもありますし、お肌に悪いということは無さそうですから・・・」
「保管するときは、緩めにまとめて、通気性のいい布袋に入れておくのがいいです。ギュッと縛っておくと、その形のまま折れグセがついちゃいますし、ビニールの袋だと蒸れて湿気てカビることがあるらしいので・・・」

 私の説明を真剣にノートに書き取るお三かた。
 私とノートを交互に見つめ、ときどき視線がチラチラ股間に集まるのは、私のスカートが短か過ぎるためでしょう。
 お話の合間に姿勢を変える動きだけで、明るいグレイの裾からあっさり黒い下着が覗いちゃっているはずです。
 その視線が恥ずかしいのに気持ち良くて、クロッチ部分がべったり粘膜に貼り付いているのが自分でわかりました。

 その後、縄の表面が毛羽立ったときの処理の仕方や、短く切ったときの両端の処理の仕方、などをご説明して、まとめにかかりました。

「縛り終わった後は、縛られた人の汗やいろんな体液が縄に滲みついていますから、今ご説明したようなお手入れの工程を施してあげてくださいね」
 言いながら、自分の巾着袋から愛用の麻縄二束を取り出しました。

 いよいよです。
 いよいよ私は、みなさまの前で自縛ショーを行わなければならないのです。
 自分の麻縄を手に取った瞬間に、自分の中のマゾ性がジンワリと増殖し、頭の中の理性が隅っこに追いやられるイメージが見えました。

「ちょっと見せて」
 里美さまが右手を伸ばし、私の手の内から一束の麻縄を攫っていきました。
「うわー。ずいぶん年季が入っているのね。柔らかくってテラテラして。縛り心地良さそう」
 横並びのみなさまに私のロープを回して触らせる里美さま。
「やっぱり新品とは、かなり色合いが違うんですね。縄が生きているみたいに艶めかしい感じ。手触りもしなやか」
 倉島さまのご感想。

 里美さまが後を引き取ってつづけました。
「そうね。このテラテラどす黒い艶光りは、今までマゾ子ちゃんが自分でとか、お姉さまとかに緊縛された、その苦痛と快楽の証拠が蓄積されているんだよね。ほら、ここなんか赤い蠟が点々と滲みついてる」
 ワザととしか思えないあからさまに恥辱的なご指摘に、私のマゾ感度がグングン上昇しちゃいます。

 今日持ってきたロープは、やよい先生から高二の頃プレゼントしていただいて以来ずっと愛用してきたものでした。
 このロープでやよい先生に縛られ、シーナさまにいたぶられ、お姉さまに辱められ、もちろんそのあいだ数えきれないくらい自縛しました。
 私の汗とよだれと淫らな愛液がたっぷり滲み込んだロープ。
 そんなロープを同い年くらいのかたがたに、じっくりと見られている恥ずかしさと言ったら・・・

「さあ、それではマゾ子ちゃんご愛用の麻縄での熟練のロープ捌きを、じっくり見せていただきましょうか」
 ロープを返してくださった里美さまがからかうようにおっしゃり、ご自分の膝の上のハンディなビデオカメラを手に取られました。
 椅子に乗せたお尻を浮かし、一斉にグイッと身を乗り出してくるお三かた。

「あのう、ちょっとその前に、あそこの窓のカーテン、閉めませんか?」
 ずっと気になっていたことを、おずおずと懇願する私。
「えっ?ああ、あの窓?大丈夫よ。向かいのビルの窓、開いたことないもの。ここは2階だし。せっかく日当たりいいのにカーテン閉めたら暗くなって、お待ちかねの実演が見にくくなっちゃうじゃない?」
 にべもなく却下される里美さま。

 期待していなかった分、失望もありませんでした。
 私は言いなりの身。
 カーテンを閉じて欲しいなんて要求すること自体が分不相応なのです。
 窓から誰に視られてしまおうが、不服を言える立場ではないのです。
 被虐が極まって覚悟が決まりました。

「それではこれから、ご要望いただいた、菱縄縛り、の自縛の方法をご説明します」
 正面を向いてみなさまに告げました。
 それから、ロープを椅子の上に一旦置いて一呼吸ついて、つづけました。

「縄の走り具合がみなさまによくわかるように、失礼してここでお洋服を脱がさせていただきますね」
 考えていた科白がスラスラっと口をつきました。
 自分を追い詰め、逃げ道を塞ぐために自から口に出した自虐的な科白に、自分でキュンキュン感じてしまっています。

 私が人前で裸になるときは、ルールがありました。。
 イベント明けの次の日、多汗症のドSで男嫌いな裏生徒会副会長、のコスプレをされたミサさまが、キャラと同じ口調なのであろう、ドS全開でおっしゃったお言葉。

「視られて一番恥ずかしい部分を最初にさらけ出すのがマゾ女の作法ってものだろう?」
「今後貴様はいついかなるときでも、裸になれと言われたら真っ先に下半身から脱いで、貴様が言うところの、剥き出しマゾマンコ、をまっ先に世間様に露出するのだ」
「これは絶対服従の命令だ。わかったな?」

 そう、私が誰かに裸をお見せするためにお洋服を脱ぐときは、必ず下半身から露出しなければならないのでした。
 あの日以来私は、お家でひとり、お風呂に入るときでさえ、このルールを守っていました。
 理不尽なご命令を守り従うことが、マゾ的にとても気持ち良いのです。
 今は、お姉さまの会社から派遣されたマゾペットとしてのお勤め中ですから、当然、このご命令を守らなければいけません。

 みなさまに深々とお辞儀を一回してから、おもむろに両手をウエストへ持っていきました。
 里美さまも含めて、おやっ?というお顔になるみなさま。

 ミニスカートのホックを外し、ジッパーをジジジっと下げます。
 ストンと足元に落ちたグレイの布片。
 黒の小さなショーツが丸出しとなりました。

 つづいて上半身を屈め、両手をショーツの両サイドにかけます。
 チラッと上目遣いにみなさまを窺うと、揃って、えっ!?っていう驚いたお顔。
 被虐度フルの陶酔感と共に、一気にショーツをずり下ろしました。

「えーっ!?下着も?」
「なんで下から先に?」
「あっ、毛が無い」
「キレイなパイパン・・・」
「濡れてる・・・」
「もう濡れてる・・・」
「信じられない・・・」

 至近距離から聞こえてくるヒソヒソ声に辱められ、粘膜がキュンキュン疼くのがわかりました。
 マゾマンコからか細い糸を引いてしとどに汚れたクロッチを見せるショーツが、両足首のあいだで、一文字に伸びきっています。
 ゆっくりと両足首からショーツを抜き、濡れたクロッチ部分を表側にして折りたたみ、椅子の上に置きました。
 もう一度ゆっくり屈んでミニスカートを拾い上げてから、休め、の姿勢でまっすぐみなさまのほうを向きました。

 視線の束が私の恥丘に集中しています。
 里美さまのビデオカメラもそこに向いています。

 みなさまに向いたまま、今度はベストの袖から両腕を抜きます。
 首からベストを抜いた後、今度は右手をブラウスの胸元へ。
 上から順番にひとつづつ、ボタンを外していきます。
 きついブラウスの圧迫が緩み、押し潰されていたおっぱいがプルンと息を吹き返します。

 私、今、同い年くらいの女子大生のかたたちの前で、ストリップをしているんだ・・・
 全裸になったら、自分を縛り付けて淫らに身悶える様を、こんな至近距離から彼女たちに視られてしまうんだ・・・
 内腿を雫が滑り落ちる感触がありました。

 ブラウスを取ると、残ったのは黒いハーフカップブラジャーだけ。
 カップの内側で乳首が痛いほど背伸びしているのがわかりました。
 食い入るような視線のシャワーを浴びながら、背中のホックを外しました。

「乳首、すごく勃ってる・・・」
「やっぱりおっぱい大きい・・・」
「ちょっと垂れ気味・・・」
「全部脱いじゃうんだ・・・」
「水着とかレオタじゃなくて裸で縛るんだ・・・」
「まさか全裸になるなんて、思ってもいなかった・・・」

 驚嘆なのか愚弄なのか、ご遠慮の無いヒソヒソ声を浴びながら全裸で立ち尽くす私。
 右横の窓からかなり傾いた陽射しが、ちょうど私のおっぱいから太腿までを明るく照らしています。
 私、今日初めて訪れた他人様のお店で、今日初めて知り合った人たちの前で全裸になっている・・・
 正確に言うと、白い三つ折りソックスとスリッパだけは履いていましたが、ここにいる五人の女性の中、ひとりだけ裸の私。

「どう?マゾ子ちゃんのからだ、えっちでしょう?」
 呆然とされている風のお三かたをからかうみたいに、里美さまがお声をかけました。
「あ、はい。あんな見事なパイパン、見たことないっす。ひょっとして生まれつき?」
 ヨーコさまが上ずったお声でおっしゃいました。

「ううん。マゾ子ちゃんはマゾだから、オマンコを隠すものは必要ないの。スジもヒダヒダも中のピンク色まで全部、隅々までみんなに視てもらいたくて永久脱毛したそうよ」
「うへー。本当にドエムの露出狂さんなんですねえ。そんなのAVかエロマンガの中だけかと思ったら現実ににいるんだー!」
 ヨーコさまのお声に、好奇からくる嗜虐が混ざってきている感じがしました。

「こんな普通に日常的な公共の場で生身の裸を見せられちゃうと、見ているこっちのほうがなんだか照れちゃいますね」
 倉島さまがお言葉とは裏腹に、私のバスト付近をじっと凝視しながらおっしゃいました。

「マゾ子ちゃんはね、恥ずかしいのが快感なのよ。今日だって、下着姿とかレオタード着て縛ってもいいのよ、って言ったのに、自発的に全裸になっちゃったのだもの」
「見て分かる通り濡れてるわよね?乳首もビンビン。マゾ子ちゃんは、自分を辱めたいタイプのマゾなのよ」

「こんなところで裸になっていること、あなたたちに視られていること、これから自分で自分を縛ること、の全部に感じちゃって、発情しているのでしょうね」
 里美さまが、舌舐めずりまで聞こえてきそうなほどのワクワクなお声で、私を見つめつつおっしゃいました。

「ほら、あのエロく火照ったマゾ顔を見てごらんなさいな。あんな蕩けるような顔していたら、誰だって思わず、もっと虐めてあげたくなっちゃうでしょう?」


非日常の王国で 11


2016年12月18日

非日常の王国で 09

「さあ、どうぞどうぞ。ゆっくり見ていってくださいねー」
 満面笑顔の里美さまにつづいて、ドアの向こうからショールームへと入ってこられたお客様がた。

 最初にお顔が見えたのは、ショートカットで涼しげな目元が理知的な印象の和風美人さん。
 スレンダーな体躯に胸元が大きめに開いたざっくりしたワンピース姿が、アンニュイな色香を漂わせています。

 つづいて、ユルふわヘアーにボストン型メガネでTシャツにジーンズの、見るからに好奇心旺盛そうなキュート系メガネっ娘さん。

 最後に、なぜだか警戒されているような真剣な表情でしすしずと入ってこられた、前髪パッツンのゼミロングでハーフっぽいお人形さんみたいなお顔に、ロリータ系モノトーンの半袖レースワンピをお嬢様風に着こなしたお洒落さん。

 お三かたともお口を、うわー、という形にポッカリ開けて、お部屋を見渡しました。

 里美さまがこちらへ近づいてきて、テーブルの傍らに立っていた私の横に並びました。
 お三かたの視線が、ご遠慮がちながら訝しげに私へと集まります。
 私は、ドキドキしつつもお愛想笑いに努めて小さく会釈し、いらっしゃいませ、とご挨拶しました。

「この部屋にあるものは、どれでも手に取って、気になることがあったら何でもわたしに聞いてください。どうぞごゆっくり」
 里美さまがおっしゃると、はーい、という元気なお声とともに、お三かた共ダダッと壁際のマネキンとトルソーの林に駆け寄りました。

「うわーエロい!このマイクロビキニ、松井先輩とか、超似合いそう」
「こっちのボディスーツはぜひ、レイちゃんに着て欲しいな。ほら、バストとお股のところがジッパーで開くようになってる」
「絶対いやよ。第一あたし、こんなに胸ないもん」
「だったらこっちのアミアミボディスーツは?」

 思い思いにマネキンを指差して、かまびすしいお客様がた。
 そのお姿を背後からニコニコ笑顔で眺めている里美さま。
 私はと言えば、この人たちの前でこれから裸になるんだ、とドキドキとキュンキュンの二重奏。

 お客様がたはそれから、ショーケースを順番に吟味しながらお三かただけでキャッキャウフフと盛り上がっています。
 里美さまと私は、テーブルにお尻を預けて為す術なく見守るだけ。
 このままでは埒が明かないと思われたのでしょう、やがて里美さまが明るくお声をかけました。

「倉島さんご注文のロープは、こちらにご用意してありますよ。あと、スイッチレスバイブがご覧になりたいとおっしゃっていたかたはどなたかしら?」
「あ、はいはいアタシでーす」
 どなたかわからないお声とともにお三かたがテーブルに近づいてこられました。

 高級そうな和紙に包まれた生成りの麻縄をテーブルの上に置く里美さま。
 おずおずと手を伸ばされたのは、ショートカットの彼女でした。
 このかたが、倉島さま、のようです。
「8メートルを2束ね。使用前のなめし方とかメンテナンス方法は、後で説明するわね」
 恐る恐るという感じで和紙の包みに手を伸ばされる倉島さま。

「それで、バイブは?」
「あ、はい。アタシです」
 メガネっ娘さんが元気に手を挙げました。
「これがサンプルね。ご購入されるなら、新品が用意してありますから」
 ミニチュアの雪ダルマさんみたく大きさの違う球体が重なった形状をしたピンク色の物体を、里美さまがメガネっ娘さんに渡しました。

「ギュッと握ってみて」
 里美さまがイタズラっぽくおっしゃいました。
「キャッ!」
 小さな悲鳴をあげたメガネっ娘さんが、握りしめた右の掌をあわてて開きました。

「締め付けると震える仕組みなの。キツク締めるほど震えも激しくなるのよ」
 再び掌を閉じるメガネっ娘さん。
「あー、気持ちいいー」
 握った拳から低く、ヴゥーンという音が聞こえます。

 私は、イベントの最後のほうで着せられたCストリングを思い出していました。
 膣と肛門に突起を挿入して装着する、あの卑猥極まりない悪魔の下着。
 そのCストリングの膣へ挿入するほうの突起が、今メガネっ娘さんが握っているバイブレーターと同じ仕組みでした。

 そして私はステージ上で、実際にそのデモンストレーションをすることを命ぜられ、70名以上のお客様と関係者の方々が見守る前で、淫らに昇り詰める姿をご披露してしまったのです。
 あのときの被虐と恥辱と、それらを上回るほどのからだが消えてしまいそうな快感を全身が思い出し、しばしウットリしてしまいます。

「もしよろしければ、試してみていいですよ。挿入するのなら、この避妊ゴムを被せてね」
 メガネっ娘さんにおっしゃったのであろう、美里さまのお声で我に返りました。
「えっ!?ここでですか?いえ、ま、まさかっ、そんなこと出来ないっすよー」
 メガネっ娘さんが盛大にあわてふためいて、右手をブンブンお顔の前で左右に振っています。

「みんながいて恥ずかしいのなら、そこの右手がおトイレだから、その中でいかが?」
 里美さまがイタズラっぽくニコニコ顔でお薦めすると、他のおふたりも口々に、
「やってみなよ、ヨーコ。せっかく言ってくださるんだから」
「そうだよ。ここに来る途中、すごく楽しみって大騒ぎしていたじゃない?」
 からかうように囃し立てます。
 メガネっ娘さんは、ヨーコさまというお名前みたいです。

「いえいえ、買いますから。実物見て握って良いものだってわかりましたから、お試ししなくても大丈夫ですから」
 ずいぶんと焦ったご様子で弁解されるヨーコさまに、みなさま、あはは、って大笑い。

 そんな和気藹々のおしゃべりのあいだも頻繁に、お客様のお三かたと私で視線が合っていました。
 顔にお愛想笑いを貼り付けたままの私を、おしゃべりの合間合間にチラチラ盗み見見てくるお三かたからの視線。
 
 気がつくたびに視線を合わせ、ニコッと微笑みかけました。
 だってみなさま、会社にとって大切なお客様ですし、私は買っていただくほうの側ですから。
 でも、みなさま決まり悪そうに、ササッと目を逸らしてしまわれます。

 そのご様子に気づかれたのでしょう、里美さまが愉快そうにみなさまにおっしゃいました。
「みなさん、ずいぶんこの子が気になるみたいね?ごめんなさいね、紹介が遅れてしまって」
 テーブルのほうに一歩近づかれました。
「立ち話もなんだから、いったん座りましょうか。せっかくいらしたのだから、みなさんといろいろおしゃべりもしたいし」

 里美さま自ら椅子を引いて、立っている私の横の席にお座りになりました。
 テーブルの向こう側に集まっていたお三かたも、つられるように着席されました。
 2対3で向かい合う形になったのですが、先ほど里美さまが、紹介が遅れて、とおっしゃったので、これからみなさまに紹介されるのだろうと、座りそびれる私。

「この子はね、今日これからみなさんに麻縄での自縛を披露してくれる、名前は、うーんと、そうね、エム・・・マゾ子ちゃん」
 身も蓋もない名前で呼ばれ、カッと全身が熱くなる私。

「えーーっ!?」
「マジですか?それちょっと。ヤバイんじゃ・・・」
「うんうん。ハンザイの臭いが・・・」

 口々に驚きのお声をあげられるお三かたに、嬉しそうな里美さまがニッコリ笑ってつづけました。
「やっぱりそう見える?でも大丈夫。安心して。こう見えてもこの子、ちゃんと成人しているから」
「えーーっ!?うそぉ」
 再びあがる驚きのお声。
 年甲斐もないツインテールと学校の制服風衣装に、みなさますっかり騙されてくださったようでした。

「どう見てもJK、下手したらJCに見えますよぉ?」
 引いたお顔の倉島さま。
「そうそう。なんか今にも、ジャッジメントですのっ、とか言い出しそうな感じ」
 ヨーコさまが興味津々の瞳で私を見つめながらおっしゃいました。

「あ、やっぱりわかってくださったのね、コスプレ。同人活動されているってお聞きしたから、ウケるかなと思って、マゾ子ちゃんに頼んで着てもらったの。良かったー」
 悪戯が成功した子供みたいに、心底嬉しそうな笑顔の里美さま。

「でも、キャラよりもこの人のほうが、おムネに存在感が有り過ぎですよね?」
 ロリータさんが小声でポツンとおっしゃり、ウンウンとうなずかれるおふたかた。

「座っていいわよ、マゾ子ちゃん」
 里美さまに促され、里美さまの左隣の椅子に腰掛けました。
「それに、このマゾ子ちゃんにはね、すでにご主人様がいるの。エスとエムの関係のね。一日中裸でご主人様の身の回りのお世話したり、営業中のコインランドリーで全裸にされたり、いろいろ愉しんでいるみたい」

 私のヘンタイ性癖をあっさりみなさまに暴露しちゃう里美さま。
 里美さまが私の痴態をご覧になったのは、最初のランジェリーショップと先日のイベントのときだけでしたが、きっとお姉さまやスタッフのみなさまから、いろいろ聞いていらっしゃるのでしょう。

「そのご主人様がわたしの知り合いで、その人に頼んで今日、来てもらったの。まあ、マゾ子ちゃんにとっては、ご主人様と言うより、麗しのお姉さま、なのだけれど」
 里美さまのお言葉に、ざわつくお三かた。
「キマシタワー」
 ヨーコさまが嬉しそうにおっしゃると他のおふたりも、キマシ、キマシとつぶやかれました。

「あら?そこに反応するなんて、倉島さんたちは、レズビアンではないの?」
 里美さまが不思議そうなお顔で、お三かたにお尋ねしました。

「うーん、とくにそういう意識はないのですが・・・」
 倉島さまが代表するようにおっしゃると、
「ガチなのはメグだけだよね?松井先輩にぞっこん、だもんね?」
 ヨーコさまがからかうようにロリータさんを覗き込みました。
 ロリータさんは、メグさま、というお名前みたい。
 そのメグさまは、照れたように頬を染めてモジモジしていっらしゃいます。

「もちろん興味はあるのですが、そこまで踏み込んでいないと言うか・・・男に期待していないのは確かですけれど」
 倉島さまが、慎重にお言葉を選ぶようなお顔つきで語り始めました。

「あたし、高校の頃に俗に言う官能小説を読んで衝撃を受けて、それからエロいことに興味を持ったのですけれど、最初に読んだのが所謂、調教もの、だったので、緊縛とか拘束とかに憧れちゃって」
「それでネットとかでそういう創作物をこっそり調べたりしていたのですが、自分が興奮出来るものと、すごくドギツイ描写なのに全然濡れてこないような文章があるのがわかって」
「そういうのってほとんどが男性視点じゃないですか?とくにSMものは、女の子を本当に物扱いして男の性欲の捌け口にするだけ、みたいなのが多くて」

「たまに自分に合うシチュがみつかって、それでオナニーすると、すごく気持ち良くて。ただネットでも好みに合うシチュになかなか巡り会えなくて。それで、自分でもこっそり書き始めたんです」
「その頃、男性との経験もしてみたんですけれど、全然気持ち良くなかったんです。粗野だしひとりよがりだし厚かましいし、すぐにオマエはオレのもの、みたいな勘違いするし」

「それで女子大入って、ちゃんと文章の勉強もしておこうと思って文芸部に入ったんです。文章の創作系サークルで学校公認の部がそこしかなかったので」
「でも、文芸部って言うとお堅いイメージだと思うんですけれど、うちはチャラくて。それもヘンに理屈っぽいサブカルかぶれの、鼻につくチャラさなんです」

「たまにケータイ小説みたいなスカスカの文章書いて悦に入って、今度はどこどこの大学と合コン、とか、男の話ばっかりしてるような人が多くて、全然馴染めなくて」
「それで話の合いそうなメンバー誘って同人サークルを立ち上げたんです。非公認サークルってやつですね。それが今日のメンバー。この他にもうふたりいるんですが」

「無理やり連れて行かれた大規模合コンで、白けて先に抜け出したメンバーなんです。その合コン相手が勘違い野郎ばかりで、そこそこ偏差値高いガッコだったけど、誰でもいいからヤラセロオーラ全開って感じで。サイアクだったよねー」
 ヨーコさまがややお下品な注釈を入れてくださいました。

「そうそう。それで抜け出して女性5人だけで飲み直したら、官能小説の話から思春期のヰタ・セクスアリス話で妙に盛り上がっちゃったのよね。なんだ、みんなムッツリだったんだ、って」
 苦笑い気味の倉島さまが、お話を引き継がれました。

「この子」
 とおっしゃってヨーコさまを指差す倉島さま。
「ヨーコの部屋が学校から歩いて10分くらいなんですよ。そこを溜り場にして同人活動しているんです。耽美小説研究会、っていう名称で」

「大きな即売会にも参加して、結構売れるんです。文芸部にはもう幽霊部員状態。他の文芸部員たちからは、G研、なんて陰口叩かれているみたいですけれど」
「ジー研?」
 里美さまが可愛らしく小首を傾げられました。

「自分で慰める、の自慰ですよ。あたしたちの小説は、主人公がひたすら快楽を追求するような話が多いので、オカズ本だ、自慰研究会だって」
「オリジナルもアニメの二次創作も、BLもGLも、何でも書くんですけれどね。男の一方的な陵辱もの以外なら」

「まあ、女性が読んで気持ち良く濡れるような小説を載せたい、って思っているのは事実ですけれど」
「へー。面白そうね。わたしも読んでみたいわ。面白かったらうちのネットショップで扱ってあげてもよくってよ」
 興味津々のお顔でおっしゃる里美さま。

「あ、それは助かります。ありがとうございます。今度持ってきますね。ヨーコのところからここまでも、歩いて15分くらいですから。あ、もちろん、アポ取った上で伺います」
 倉島さまが嬉しそうにお辞儀されました。

「そんな感じなんで、あたしらはレズビアンて言うよりも、男の手を借りない快楽を追求している、っていう感じなんです」
「ヨーコの部屋で会員同士で、ふざけてちょっと縛ったり、愛撫しあったりもするんですけれど、それも同性の手のほうが繊細で気持ちいい、っていう感じですから、レズビアンていうよりも、相互オナニーと言うか、相手のオナニーのお手伝い、と言うか、みたいな感じなんです。仲の良い女子同士のイチャイチャの延長線上ですね」
 
 せっかく倉島さまが里美さまの疑問にお答えを出されたのに、すかさずヨーコさまが嬉しそうにまぜかえしました。
「ただしメグは除く、でしょ?」

 倉島さまのお話をお聞きして、私も学校時代に、このお三かたみたいに自分の性癖を素直に出せるお仲間が周りにいたら、どうなったかなー、なんて考えちゃいました。
 でもすぐ、今のお姉さまの会社での自分の立場が、同じようなものなことに気づきました。
 そのおかげでこれから私は、すっごく恥ずかしいメに遭うことができるのですし。

「なるほどね。それでセルフボンデージ、というわけなのね?」
 里美さまがご納得されたお顔で、倉島さまに微笑みかけました。

「はい。そういう小説も書きたくて、書くなら自分の身で体験してみたいなと思って、ネットで自縛の方法とかいろいろ調べたりもしたのですが、やっぱり動画では細かい所までわからないので、ここなら教えてもらえるかなー、と」
「もちろん、それは後でご披露しますよ。倉島さんは、拘束される側にご興味がお有りなの?」
「そうですね。するのもされるのもやってみたいですね。肌に縄をかけたまま街中を歩いたりも」

「へー、エス側にもエム側にも興味があるんだ。このマゾ子ちゃんは、野外露出もスペシャリストよ」
「そうなんですか!?」
 一斉に向けられた尊敬のような侮蔑のような、好奇心に満ち満ちたお三かたのまなざしが気恥ずかしいです。

「あと、セルボンデージでアイスタイマーってあるじゃないですか?氷が溶けて鍵がリリースされるまで拘束されたままっていう。身動き取れなかったり、すごく恥ずかしい格好のままだったり、バイブ挿れっ放しだったり。あれも一度してみたいですね。気持ちいいんだろうなー」
 うっとり妄想するかのように宙空を見つめる倉島さまに、同意するようにウンウンうなずかれるヨーコさまとメグさま。
 
 お三かたのご様子に私とかなり近い嗜好を感じ、自分のヘンタイ性癖が全面的に肯定されたような気がして、すっごく嬉しくなってきました。

「アイスタイマーもいいけれど、鍵を容器に入れて凍らせたり氷を沢山用意したり、手間がかかるわよね?まあ、その手間も含めて準備するワクワクソワソワまでもが愉しいとも言えるけれど」
 里美さまが、テーブルにあったスチール製の頑丈そうな手錠に手を伸ばしながらおっしゃいました。

「もっと手軽に、鍵を待ち侘びる方法を教えてあげましょう」
 お手に取った手錠を私の右手首にカチャンと嵌めて、ご自分の左手首にもカチャン。
 私の心臓がドキンと跳ねました。

「こういう、嵌めるときには鍵のいらない手錠ね。これを拘束の最後のカギにするの。自縛でもハーネスでも好きに自分を拘束して、最後に両手を使えないように手錠をするわけ」
 右手に持った小さな鍵をみなさまに見せる里美さま。
「あなたがたのお家の郵便受けは、玄関ドアに付いている?それとも外かしら?」

「うちはマンションの4階なので、ポストは1階のエントランスですね」
 と倉島さま。
 倉島さまは、ご自分のバッグからノートとペンを取り出してメモを取り始めました。
「ワタシは2階だけど、エントランスまで降ります」
 とメグさま。
「アタシんとこは建物が古くて2階建ての1階だから、それぞれ戸別にドアに受け口が付いてますね」
 と最後にヨーコさま。
 
「あら、ヨーコさんのところって、みなさんが溜り場にされているお家よね?それならセルフだけじゃなくて、みんなで集まって誰かひとりをえっちに虐めるときとかにもオススメよ」
 手錠の鍵をプラプラさせながら里美さまがつづけます。

「この鍵をね、ご自宅宛てのご住所を書いた封筒に入れて適当な郵便ポストに投函しちゃうの。ご近所のポストからでも翌日まで戻ってこないわよね」
「たとえば投函した日の夜に手錠を嵌めたとしたら、翌日、郵便物が配達されるまで、どう足掻いても絶対外せないわけ。外したくても手元に鍵は無いのだから。拘束の陶酔感と絶望感がたっぷり味わえるわよ」

「玄関の内側で郵便物を受け取れるヨーコさんのお家なら、足まで縛っちゃってもいいわね。心待ちにしていた郵便屋さんが来たら、這いつくばって玄関まで行って、封筒を破って鍵を取り出して開錠」
「みなさんでイチャイチャするときにも、イジワルに応用出来るでしょ?拘束する側もされる側も、ちょっとした拉致監禁気分が味わえるはず」

「あ、でもひとりのときに後ろ手に施錠しちゃうと、手探りで鍵穴に鍵を挿すことになって意外と手こずるから、事前にちゃんと練習しておいたほうがいいわよ。指で鍵穴の感触がわかるように」
「それと、後ろ手錠って思うよりもかなり不便なの。ものを食べるとか日常生活的にね。自分のからだもまさぐれないから、ひとりのときに自慰的にも愉しみたいならリモコンのバイブとか装着しておいたほうがいいわね」

「ポストが外にあるなら、そこに強制露出プレイが加わるの」
「外に出なくちゃならないから足は縛れないけれど、敢えて外に出るには恥ずかしい格好になって手錠をかけちゃうの。キワドイ水着とか、素肌にブラウス一枚だけとかね。もちろん勇気があるなら全裸でもいいけれど」

「それで、お部屋を出て郵便受けまで取りに行ってお部屋に戻る。途中誰かに会っちゃったら手錠もしていることだし、ハンザイに巻き込まれたのか、って大騒ぎになるかもしれないから、真夜中に取りに行くことをオススメするわ」
「もしも大騒ぎになっても、わたしに責任は無いからね?あくまでも自己責任で、覚悟してやってね」
 里美さまがみなさまを見渡し、イタズラっぽく微笑まれました。

「面白そう!」
 真っ先に倉島さまの弾んだお声。
「今度ヨーコんちでやってみよう。うちのマンション、世帯数多くて夜でも出入り多いから、エントランスに手錠姿で出るのヤバそうだし」

「レイちゃんがアタシんちで拘束姿だったら、アタシ、張り切っていっぱいイタズラしちゃうだろうなー」
 ヨーコさまも弾んだお声で、倉島さまに軽く肩をぶつけられています。
 レイちゃんというのが倉島さまのお名前みたい。

 それにしても里美さま、お見かけによらずそういうアソビにお詳しそう。
 そのお口ぶりは、どう聞いてもご経験者のおっしゃりかたでした。
 意外とSMアソビのベテランさんなのかもしれません。
 私もその、手錠の鍵を郵便で送ってしまう、というひとりSMアソビをすっごくやりたくなっていました。

「ポストが外にあって郵便タイマーが危険なら、もっと手軽に鍵を一定時間使えなくする便利アイテムもあるわよ」
 里美さまがご自分の手首の手錠だけを外して立ち上がり、ショーケースのほうへスタスタと向かって、隣の棚から大きめのダンボール箱を取り、すぐに戻られました。

「これ。タイマー付き収納ボックスゥー」
 青い猫型ロボットさんがひみつ道具を取り出すときのような声色と共に里美さまがダンボール箱から取り出されたのは、20センチ四方位のほぼ正方形なジップロックコンテナみたいな形状の、白い蓋以外透明なプラスティックの箱でした。
 ただし、ジップロックコンテナよりもだいぶ厚いプラスティック製で、かなり頑丈そうな感じです。

「本来は、普段生活する中で感じるちょっとした欲望のコントロールをしたい人たちのために考案されたボックスらしいの」
「たとえば禁煙したい人がタバコを入れたり、受験生が勉強すべき時間だけ、携帯電話とかゲームのコントローラーとか気が散りそうなものを遠ざけたり」

「この蓋のタイマーを合わせて封印すると、合わせた時間にならないと絶対蓋が開かない仕掛けなの。1分間から丸10日間まで、分刻みで好きな時間に合わせられるのよ」

 おっしゃってから不意に私の左手首を取り、さっきご自身で外されたもう片方の手錠を、私の左手首にカチャンと嵌めました。
「あっ!」
 文字通り、あっという間に両手を手錠拘束されてしまった私。

「それでこの鍵をボックスの中に入れるでしょう?」
 透明な箱の中に小さな鍵がチャリンと落下しました。
「で、蓋をしてタイマーを合わせるの。そうね、3分位でいいか」
 蓋の上のダイアルを回してデジタルの数字を 3:00min に合わせました。
「最後にここを押す、と」
 里美さまがダイアルを押すと、5,4,3,2,1のカウントダウンの後、蓋の側面のストッパーがジーっと機械音をたててボックスに嵌め込まれ、タイマーのデジタル数字が秒刻みで減り始めました。

「これでマゾ子ちゃんは、少なくともあと3分間は、この手錠を絶対外せない状況になった、というわけ」
 ニッと笑った里美さまの瞳に再び、妖しい光がより色濃く宿ったように見えました。


非日常の王国で 10


2016年12月11日

非日常の王国で 08

 とある日の昼下がり。
 綾音部長さまからお呼び出しがかかり、メインルームの綾音さまのデスクの前で対面していました。

 その日もお昼休み後にリンコさまからメールでご命令をいただき、すでにとても恥ずかしい格好にさせられていました。
 ちょうどその日はインターネットで盛り上がっているナショナルノーブラデーというノーブラ推奨の日だったらしく、ノーブラなことが一目でわかるお洋服ということで選んだそうです。
 私が着ることを命ぜられたのは、おっぱいのところだけまあるくふたつ、ポッカリとくり抜かれたピチピチのタンクトップ。

 ふたつの穴からおっぱい部分だけを放り出すように全部露出させているのですが、タンクトップが濃い紺色なので白い素肌とのコントラストが余計に際立ち、嫌がらせのように飛び出たおっぱいばかりが目立つ姿でした。
 歩くたびにおっぱいが無造作にプルンプルン暴れるのが、自分の視点で嫌というほど見えていました。
 
 おへそまでに満たないタンクトップの下は、当然スッポンポン。
 タンクトップと同じ色のニーハイソックスを穿いているので、おっぱい部分と同じように、剥き出しな下半身の白さも卑猥に目立っていることでしょう。

 全裸よりも恥ずかしい、そんな破廉恥極まりない姿を更に強調するアクセサリーも用意されていました。
 ネットショップの宣伝用にレビューを書かなくてはいけない、ボディジュエリーの新作商品たち。

 紺色のチョーカーからゴールドチェーンで左右の乳首まで繋がれたニップルクリップ。
 乳首を絞るリングの下にはキラキラ光る金色の小さな鈴がぶら下がっています。

 下半身には、裂け目を囲む左右のラビアに挟んで装着するラビアチェーン。
 股間に垂れ下がったチェーンの先端にも、乳首のと同じ鈴がぶら下がり、動くたびに3つの鈴が軽やかにチリンチリンと小さく音をたてていました。

 本来なら秘めておくべき私の敏感な三箇所の恥部、尖った乳首と潤んだ秘唇を、一際目立たせるようにキラキラ金色に輝くチェーンと3つの鈴。
 そんなニンフォマニアックな私の姿をジロリと一瞥した綾音さまは、とくにご感想をおっしゃることもなくフッと艶っぽく微笑まれてから、おもむろにご用件を切り出されました。

「うちのネットショップがショールーム制度を始めたのは、以前ミーティングで伝えたわよね?」
「はい」

 ネットショップ部門がこちらのオフィス近くにお引っ越ししてきてスペースが広くなったのを期に、実際にアイテム実物を見てみたいというお客様向けに予約制でショールームを開いた、というお話でした。
 予約出来るのは、ネットショップでのご購入履歴が一万円以上ある女性のお客様のみ。
 毎週木曜日と金曜日の午後2時以降であれば、メールかお電話で日時をご予約いただき、ご来店いただいてごゆっくりとアダルティなラブトイズをお選びいただけるという、女性限定のサービスです。

「おかげさまで、コンスタントにご予約もいただいて、順調に売上も伸びているのだけれど」
 綾音さまがパソコンのキーを叩きながらおっしゃいました。
「あるお客様からご来店に際してのちょっとしたリクエストをいただいて、愛川さんからわたくしに相談があったの」
 愛川さんというのは、ネットショップの責任者でイベントのときもお手伝いしてくださった里美さまのことです。

「なんでもそのお客様は、セルフボンデージにご興味がおありで、ショールームに行ったときにロープの扱い方や自縛、自分で自分を縛ることね、について詳しく教えて欲しい、っておっしゃっているのだって」
 綾音さまの視線が、私のタンクトップから飛び出している剥き出しのバストに注がれます。

「そのかたは、購入履歴も多い優良なお客様だから無下にお断りするのもなー、って思ったときに、あなたの顔が浮かんだのですって、愛川さんの頭の中に」
「それでわたくしに相談した、というわけ。チーフに聞いてみたらあなた、チーフに教えられるくらいロープ捌きが上手って言うじゃない。よくひとりで自分を縛って遊んでる、って」
「高校生の頃に、百合草女史に仕込まれたのですってね。エリートじゃない?」

 おっしゃってから私の目を、じーっと5秒間くらい見つめてきました。
 綾音さまのお口からやよい先生のお名前が出て、私はドキン。

「次の金曜日、午後3時にショールーム。4時にご来店の約束だから、愛川さんと段取り打ち合わせして。終わったらこちらへ戻らず、直帰していいわ」
 ハナから私の都合やイエスかノーかの返事など聞くつもりもない、決定事項の業務命令でした。

 お電話の呼び出し音が鳴り、ほのかさまがお出になるお声が背後から聞こえます。
 ほのかさまのお席は綾音さまと3メートルくらいの空間を挟んだ向かい合わせ。
 ほのかさまは、私の剥き出しのお尻と、両腿のあいだにキラキラ光るゴールドチェーンを眺めながらお電話のご対応をされていることでしょう。

「そうそう、当日は、自分で使っている緊縛用の麻縄を持ってくること。それと扱い方をわかりやすくレクチャー出来るように頭の中を整理しておくこと」
「いらっしゃるお客様は、沿線の女子大の学生さんだそうだから、そんなにかしこまる必要は無いと思うわ。すべて愛川さんに従いなさい」
 最後に綾音さまがご命令口調でおっしゃられ、開放されました。

 まったく見知らぬ初対面のかたの前で、緊縛のレクチャーをする・・・
 扱い方をお教えしたら、そのかたをちょっと縛ってみたりするのだろうか?
 ううん、セルフボンデージにご興味、っておっしゃったから自縛の方法が知りたいのでしょう。
 そうすると、私がそのかたの前で実演することになりそう。
 やっぱり裸になるのだろうな・・・

 その日までドキドキしっぱなし。
 お家に帰ると、ずっと昔、私がまだ高校生の頃にやよい先生からいただいた、やよい先生のパートナーであるミイコさま主演の自縛講座DVDを何度も見返し、実際に自分を縛りながら復習しました。
 縛っているうちに自虐オナニーが始まり、ついついキツく縛りすぎて二の腕やおっぱいに縄の痕が残ってしまい、翌日オフィスでリンコさまたちにからかわれました。

 いよいよ当日。
 トートバッグの一番下に愛用の麻縄の束をひっそりと詰め込み、出社しました。
 その日のオフィス勤務者は、綾音さま、リンコさま、ミサさま、ほのかさま。
 黒い首輪型チョーカーを着けているのにお昼過ぎになっても珍しく誰からもえっちなご命令は無く、みなさまから、がんばって、とからかうような激励を受けつつ、3時15分前にオフィスを出ました。

 里美さまのオフィスは歩いて10分くらい。
 大きな通り沿いの地下鉄出入口から裏道に入り、少し歩いた雑居ビルの2階。
 訪問するのは初めてでした。

 一階がセレクトショップの店舗になった小洒落た外観のビル2階に到着したのは3時4分前。
 River of LOVE と書かれた可愛らしい小さな看板が掛かったえんじ色の鉄製ドアの前でインターフォンを押しました。
「ダブルイーの森下です」
 はーい、というお声とともにドアが開き、里美さまがニッコリ、可愛らしいお顔を覗かせました。

「直子ちゃん。わざわざありがとうね。さ、入って入って」
 普通のお家みたく玄関は沓脱ぎになっていて、フワフワしたスリッパを勧められました。
「お客様にゆっくりくつろいでいただきたいと思って、靴を脱いでいただくようにしたの」
 短い廊下の向こうにもう一枚ドアがあり、それを開くとカラフルな空間が広がっていました。

 一見、ファンシーショップのようなポップでキュートな印象。
 明るい壁紙、アートなポスター、整然と並ぶガラスショーケース、ゴージャスなマネキン人形たち。
 ただし、ショーケースに並ぶ色とりどりのグッズたちは、よく見るとみんな卑猥な形状。
 マネキンたちが着ているのは、布面積が極端に少ない下着だったり、スケスケだったり、ラテックスだったり。
 お部屋の中央に6人掛けくらいの大きなテーブルが置いてあり、その上にもアダルティなラブトイズがいくつか並べてありました。

 それでも全体の雰囲気はファンシー側に踏みとどまっていました。
 スイーツの充実した女子向けのオシャレカフェテラスの感じ?
 通りに面した側に並ぶ窓を飾る、真ん中分けの花柄ドレープカーテンがメルヘンチックな雰囲気を盛り上げています。

「ここって、もともとはけっこう広い喫茶店だったの。ショールーム部分は、その雰囲気を残して、壁で区切った向こう側がオフィスと倉庫ね」
 マネキンやトルソーが並んだ壁を指さして、里美さまが教えてくださいました。
 マネキン人形たちの隙間に、そちらへつづくのであろうドアが見えました。

「今日は、バイトの子達には先に上がってもらったから、今ここにはわたしと直子ちゃんだけ。そのほうがリラックス出来ると思って」
 グラスに注いだ飲み物をテーブルの上に置いて、里美さまが微笑まれます。
 今から見ず知らずの人に自分の恥ずかしい性癖をご披露すると思うと、とてもリラックスどころではありませんが、そのお心遣いが嬉しいです。

「ロープは持ってきた?おっけー。わたしも直子ちゃんの自縛レクチャー、楽しみだわ」
 やっぱり自縛を実演することになるようです。

「あの、えっと、縛るときは、やっぱり裸になったほうが、いいのでしょうか?」
 気になっていたことを恐る恐るお尋ねしてみました。
 里美さまは一瞬びっくりされたようなお顔になり、それからクスッと笑われました。

「そのへんは直子ちゃんに任せるわ。裸でも下着でも。なんならここにある衣装で気に入ったのがあったら、着てもいいわよ」
 そこでいったんお言葉を切り、私の顔をまじまじと見つめる里美さま。

「でも意外ね。そんなこと聞くなんて」
 少し苦笑いが混じったような笑顔を作って私に向け、里美さまがつづけました。
「直子ちゃんなら、こういう機会は喜び勇んで全裸に成りたがるんだろうと思っていたわ。ひょっとして何か常識的なしがらみかなにかで遠慮している?ショールームの運営に迷惑がかかるとか?責任者としてのわたし的にはぜんぜんかまわないのよ?」
 私の目を覗き込むような里美さまの視線。

 それまで里美さまとは、あまり親しくお話したことはありませんでした。
 出会いの場であったお姉さまのランジェリーショップでは、店員さんとお客さんの間柄でしたし、就職してからは、ネットショップのご担当者としてお仕事を通したおつきあい。
 イベントのときも、ミサさま指揮の元、パソコンのオペレーターとして楽屋で常にクールにお仕事されていました。

 ただし、それこそお姉さまとの出会いのときから、先日のイベントまで、里美さまは私のヘンタイ性癖の行状を間近でつぶさに目撃されていました。
 イベントの楽屋や打ち上げの席でのリンコさまたちの会話もすべてお耳に入っていたはず。
 私があの場でスタッフ、関係者全員のマゾペットとなったのは、ご存知のはずでした。
 
 それでも、今日も私のことを呼び捨てではなく、ちゃん、付けで呼んでくださったり、他のスタッフのかたたちみたいに、私を辱めて愉しもうとも思っていらっしゃらないようなご様子に見えました。
 そういうことには淡白なかたなのかな?
 でも、ランジェリーショップのときには、気絶した私の膣に指を挿れてイタズラされていたらしいですし・・・
 里美さまとは、あくまでも別々の会社の社員、という関係でもあり、どう接すれば良いのか、決めかねていました。

 出会ったときは、お姉さまと里美さまの店長と店員の関係を超えていそうな深い信頼関係に、お姉さまとの仲を疑ったりもしちゃったけれど、里美さまの品があって凛々しい佇まいは、ほのかさまと通ずるところもあり、大好きでした。
 里美さまもリンコさまたちのように、興味津々でエスっぽく振る舞ってくださったほうが、気持ち的には楽なのですが。

 まあ、いずれにせよ、綾音さまから今日は里美さまに従うように命ぜられていますので、先ほどの、わたし的にはぜんぜんかまわない、というお言葉が里美さまのご希望と解釈し、今日、お客様の前で裸になることは、私の中で決定しました。

「それでね、直子ちゃん、ちょっと変装しておいたほうがいいと思うのね」
 里美さまが真剣なお顔でおっしゃいました。
「今日来る3人の内のおひとりが、ご近所に住んでいらっしゃるらしくて、よくあのオフィスビルのモールにもお買い物に行かれるそうなの」
「今日のレクチャーの後で、そういうところでバッタリ出くわしてしまったら、お互いに気不味いでしょう?お客様も直子ちゃんも」

「えっ!?3人ですか?」
 びっくりして尋ねました。
「あれ?早乙女部長、教えてくださらなかったの?イジワルだなあ」
 苦笑いの里美さま。

「昨日メールが来たの。友達も連れて行っていいかって。同じ大学のサークルのお仲間らしいわ」
「調べてみたら、そのかたたちもうちで数回の購入履歴があったし、そのうちのおひとりは、どうしても欲しいものがあるっていうことだったからオッケーしたの。ちょうど在庫もあったから」

「倉島さん、っていうかたが予約を入れてくださったお客様ね。女子大で文芸系の同人サークルに所属されているみたい」
 
 唐突に里美さまが座っている私の背後に回り、私の髪を弄り始めました。
 私に変装を施してくださるみたい。
「直子ちゃんの髪って柔らかいのねえ。お手入れも行き届いてるからアレンジしやすそう」
 いつの間にかヘアスプレーまで持ち出してきて、左サイドの辺りをまとめ始めます。

「でーきたっと。うわー。すごく稚くなっちゃった」
 5分位の髪弄りの末にお声があがりました。
 コンパクトを目の前に差し出され、鏡を覗き込みました。

 両サイドの上の方で大きな赤いリボンに左右それぞれまとめられ、緩くウェーブのかかった髪が垂れ下がるツインテール。
 正面は真ん中分け。
 ツインテールなんて多分、小学校のとき以来でしょう。
 確かにずいぶん幼い感じの顔になっていました。

「このあいだの夕張小夜さんと比べたら、雰囲気に親子くらいの違いがあるわね。直子ちゃんて面白い、変幻自在。これなら普通の髪型に戻したら絶対別人」
 ご自分のお仕事にご満足気な里美さま。
「こんないたいけっぽい子が自縛するなんて、考えただけでゾクゾクしちゃう」
 嬉しそうに私をじーっと見つめています。

「そうだ。どうせなら徹底的に変身しちゃいましょう。今の直子ちゃんに、ピッタリのコスプレ衣装があったのを思い出したの」
 いそいそとマネキンの林を掻き分けてオフィスのお部屋へと入っていかれる里美さま。

 待つこと3分くらい。
 そのあいだ、テーブルの上に並んだグッズを眺めていました。
 レザーの首輪、スチールの手錠、棒枷に繋がった足枷、チェーン、ローソク、バイブレーター、ローション、クリップ・・・
 およそファンシーショップに似つかわしくないアブノーマルなものたちが、雑然と並べてあります。
 中には、私にも用途がわからないものも。

 この後、私はお客様の前で裸になって自縛して、それからどんなことをするのか、されるのか・・・
 マゾ気分がどんどん膨らんでいく中、里美さまがスーツカバーと紙袋を提げて戻られました。

「キャラ設定に合わせたサンプルだからサイズが小さいかもしれないけれど、まあ、どうせすぐ脱いじゃうのだし」
 テーブルの上にお洋服を並べながらおっしゃいます。

「同人活動をしているのならきっと、アニメもお好きなはずよね?これもお客様サービスの一環ということで」
「うちはコスプレ衣装のオーダーメイドも承っているから、ひょっとしたら何かオーダーもらえるかもしれないし」

 取り出された衣装は、一見して学校の制服風。
 白のシンプルな半袖ブラウス、茶系のベージュぽいニットベスト、グレイのプリーツミニスカート、そして白い三つ折りソックス。
「着てみて、着てみて」
 里美さまの楽しそうに弾んだお声。

 その日は、脱ぎやすいようにと前ボタン開きのゆったりしたワンピースを着てきました。
 下着は、濡れジミが目立たないように黒の上下。
 里美さまに促されて立ち上がり、ワンピースの前ボタンを外し始めます。

 里美さまの真っ直ぐな視線が注がれる中、ワンピースを脱いで下着姿に。
 今回はここまでで許されますが、お客様がいらっしゃったら、すべてを脱がなければいけないのです。
 乳首と肉芽にグングン血液が集まってくるのがわかりました。

 衣装は全体的に少し小さめでした。
 ブラウスとベストにおっぱいが押し潰される感じ。
 ミニスカートも付け根ギリギリで、少し伸びをしたら黒い股間が覗けそう。

 最後に三つ折りソックスを履いて鏡を覗くとわかりました。
 髪色こそ違いますが大きめな赤いリボンのツインテールに、学校の制服風衣装。
 少し前に流行ったラノベ原作近未来学園都市ものアニメの準主役級キャラクターでした。

「やっぱり似合うわよ直子ちゃん。作品設定通りに中学生って偽っても通っちゃいそう」
 いえいえ、それは絶対ナイです。
「マリみての衣装もあったのだけれど、こっちにして正解ね。マリみてだと今どきの女子大生は知らないかもしれないし」
「どっちのキャラも、お姉様にぞっこん、っていうところが直子ちゃんと一緒よね?」
 里美さま、意外と流行りの深夜アニメにお詳しいみたいです。

「そろそろいらっしゃる頃ね」
 時計を見ると午後4時まであと10分でした。

「いらしたら、接客はわたしがやるから、直子ちゃんはレクチャーまで、そこに座って適当にしていて」
「お客様のご希望を聞いて、アイテムを一通りご紹介したら声をかけるから、直子ちゃんの出番」
「わたしが聞いているのは、菱縄縛りの実演が見たい、っていうことだけなのだけれど、その他にも何かリクエストがあったら、出来る限り応えてあげてね」

「もちろん直子ちゃんの本名とかは教えないし、ダブルイーの社員ていうことも伏せておくわ。わたしの知り合いのドMの子、って紹介するつもり」
「ロープのお手入れの仕方とかも教えてあげて。けっこう高い本格的な麻縄のお買上げは決定しているから」

「それだけじゃなくて、わたしがお客様とセルフボンデージについてお話しているとき、何か気がついたことがあったらどんどん口出ししてきていいから。お客様も実践している人の言葉を聞きたいでしょうし」
「あ、それと、レクチャー中にわたしが写真を撮るけれど、御社の早乙女部長にご報告するためだから、気になさらないでね」
 慈愛に満ちた表情で、おやさしげに笑った里美さま。

 その笑顔を見て私は、里美さまに思い切り虐められたい、と強く思いました。
 こういうおやさしげなかたが、どのくらいイジワルに、残酷になれるのか、それを見てみたい。
 少し前にカフェでほのかさまに虐められたときに感じた、ビタースイートな被虐感が五感によみがえりました。
 そのためには、まずはマゾの私から、里美さまにかしずかなくては。
 
「わかりました。今日は綾音部長さまから、すべて里美さまに従うようにと言いつけられています。でも、そのお言いつけが無くても、私は素敵な里美さまにすべて従うつもりでここに来ました。何でもご遠慮なくご命令ください」
 自分の口から出る被虐的な言葉に、マゾ性がビンビン反応して粘膜が疼くのがわかりました。

「私はどうしようもない露出狂ヘンタイマゾ女ですから、里美さまと、本日いらっしゃるお客様がたのご要望に、どんなに恥ずかしいことでもすべて、お応えすることを誓います」
 里美さまの目をじっと見つめ、期待と不安にゾクゾクしながら、縋るようにそう宣誓しました。

「うふふ。可愛らしいマゾ子ちゃんだこと。愉しみだわ。期待しているわよ」
 里美さまの瞳にチラッと一瞬、妖しい光が宿ったように見えました。

 そのときチャイムがピンポーンと鳴り、インターフォンからお声が聞こえてきました。
「4時、あっと16時に予約を入れている倉島と申します。ちょっと早く着いちゃったのですけれど、大丈夫でしょうかー」
 緊張されて無理やりハキハキしているような、若い女性の上ずったお声が聞こえました。

「はいはーい。ようこそいらっしゃいませー」
 明るいお声でインターフォンに返し、いそいそと玄関へ向かわれる里美さま。

 私は立ち上がり、テーブルの傍らでお出迎えするべく、ドキドキしながらお客様が入ってこられるのを待ちました。


非日常の王国で 09


2016年12月4日

非日常の王国で 07

 オフィスに戻ると、綾音部長さまとリンコさまミサさまが、デスクの上に何枚ものデザイン画を広げ、打ち合わせの真っ最中でした。

「ただいまー。集めたサンプルや契約書類、間宮部長の分まで持ってきました。少しでも早いほうが良いかと思いまして」
 ほのかさまがツカツカと綾音さまたちに近づいていかれました。

「おお、たまほのー、おつかれー、お帰りなさい」
 ニコニコ手を振るリンコさまの横で、すごく嬉しそうなミサさま。
「ご苦労さま。今ちょうど、例のガールズバンドの衣装に取りかかったところだったから、ナイスタイミングよ。早速見せてくれる?」
 綾音さまがデスクの上を片付けながら、おっしゃいました。

 私は、おつかいを頼まれて買ってきた文房具類をお渡ししようと綾音さまに近づきました。
「ああ。ありがとう」
 受取りながら私を見た綾音さまのお顔が、おやっ?という感じに曇りました。

「あなた、出るときは確か、ブラジャーしていたわよね?」
 私の胸元を見つめつつの目ざといお尋ね。
「あ、はい・・・」
 やっぱり一目見てわかっちゃうほど、乳首のポッチ、目立ってるんだ・・・
 オフィスに戻るまでにすれ違った人たちの人数を考えて、ドキドキがぶり返してきます。

「わたしが命令してみたんです。お茶しているときに」
 カートから布地の束を取り出しながら、ほのかさまがおっしゃいました。
「たまほのがあ?」
 驚き顔のお三人を代表するみたいに、リンコさまがカン高いお声をあげました。
 傍らのミサさまは、信じられない、という感じで大きな瞳をまん丸くされています。

「チョーカーを着けているときは虐めて欲しいとき、というお話でしたし、直子さん、悦んでくれるかな、と思って・・・いけなかったですか?」
 不安げなお顔で、綾音さまたちのご様子を窺うほのかさま。
「ううん。ぜんぜんいけなくない、って言うか、むしろグッジョブ!」
 リンコさまのお返事で、お三人が一斉にお顔をほころばせました。

「そっかー。たまほのもナオコのヘンタイ性癖に興味津々なんだね。これからもどんどん、ナオコを悦ばせてあげるといいよ」
 リンコさまの明るいお言葉にほのかさまもホッと、笑顔が戻りました。

「その格好で、あのカフェからここまで戻ってきたんだ?」
 リンコさまが私に視線を移して尋ねてきます。
「あ、はい・・・」
「ジロジロ視られたでしょう?」
「・・・と、思います・・・」
 リンコさまの視線が私の下半身に移動しました。

「と、いうことは・・・」
 私ににじり寄ってきたリンコさまが素早く私のワンピースの裾に手をかけました。
「それーっ」
 掛け声とともにワンピの裾を盛大にずり上げられました。

「ああんっ」
 為す術もなく露になる私の下半身。
 腰にぴったりフィットしたタイトなニットですから、リンコさまが手を離しても元に戻りません。
 おへその下から下腹部全部が丸出しになりました。

「やっぱりねー。カフェの席で脱がせたの?」
 ほのかさまに振り向いたリンコさまのお声。
「あ、はい。先にショーツを脱いでもらって、写メを撮ったのですけれど、直子さん、まだつまらなそうだったから、ブラジャーも」
 ほのかさまが嬉しそうに私の恥ずかしい写真をみなさまにお見せしています。

「グッジョブ!グッジョブだよ、たまほの。そういう虐め方、いいなあ。今度アタシもやってみようっと」
 リンコさまのはしゃぎ声。
 ミサさまは、愛おしそうにほのかさまを見つめています。

「たまほのはよくやったけれど、リンちゃんはだめよ。バッドジョブね。せっかく直子がエロティックな姿をしているのに、そんな雑なめくり方ではエレガントではないわ」
 綾音さまからニヤニヤ笑いでクレームが入ります。
「あ、そうですね。失礼しました」
 リンコさまが手を伸ばし、私のワンピの裾を綺麗に折りたたむ形でまくり直してくださいました。

 ワンピースのスカート部分がおへそまで折りたたまれて固定されてしまいました。
 お尻丸出し。
 短かめなニットセーターだけを着ているような状態でした。

「お似合いよ直子。とてもエロティック。こういう普通の日常の場にひとりだけヌーディストがいるのって、西洋美術の名画みたいで、クリエイティヴなインスピレーションが湧いてくるわ」
 綾音さまの視線が艶かしく私の肌を撫ぜます。
「今日はその格好でお仕事なさい」
 決めつけるようにおっしゃいました。

 今日はお姉さまがお戻りになる日だというのに・・・
 みなさもそれはご存知のはずなのに・・・
 下半身丸出しノーブラニットの姿でお迎えすることになるんだ・・・
 あらためて、自分がオフィスの慰み者になってしまったことを思い知り、被虐感が全身を駆け巡ります。

「脱いだ下着はどうしたの?」
 リンコさまが私に尋ねました。
「あ、わたしが持っています」
 ご自分のバッグから私のブラとショーツを取り出すほのかさま。

「へー。これがナオコの勝負下着なんだ」
 ほのかさまから受け取って、みなさまに見えるように広げたリンコさま。
 やっぱりみなさま、私がお姉さまと会えるワクワク感を、見透かしていたみたい。

「フリルレースで可愛いけれど、もう汚しちゃってるじゃない。本当にスケベな子」
 イジワルくクロッチ部分を私に見せてくるリンコさま。
 純白の中そこだけ変色したシミに、カッと頬が熱くなりました。
「安心して。アタシらがもっとナオコらしく改造しといてあげる」
 何を安心すればいいのかわかりません。

 その後は、社長室にひとりこもり、お仕事をつづけました。
 もちろんご命令通り、下半身丸出しの姿で。
 綾音さまたちは、メインルームで打ち合わせをつづけられているご様子。
 途中1時過ぎに綾音さまがランチに行かれる、というご連絡があった以外、誰にも構われずに時間が過ぎて行きました。

 お姉さまが戻られたのは、午後2時を少し過ぎた頃でした。
 メインルームがざわつく気配を感じてわかったのですが、この姿でお出迎えに飛び出す勇気が出ませんでした。
 数分間の逡巡の後、やっぱりお出迎えしなくちゃ、と立ち上がったとき、コンコンとドアがノックされ、間髪を入れずに開かれました。

「あっ!」
 私の姿を一目見たときのお姉さまのお顔。
 ドアを閉めるのも忘れ、あ、の形でお口をポカンと開き、数秒間固まっていらっしゃいました。
「あはははは」
 つづいて弾ける哄笑。
 ドアの外からもクスクスというつられ笑いが聞こえてきました。

 私は、一瞬股間を隠しかけたのですが、お姉さまのとても嬉しそうなご様子と、久しぶりにお顔を見れた嬉しさに、自然と両手が後頭部へと上がっていました。

「あたしもさ、直子がすぐに出てこないから、すでに素っ裸にされていたりして、とか予想はしていたけれど、まさか、そんなに直子らしい姿で出迎えてくれるなんて」
 目尻に涙を浮かべるほど笑い疲れたふうのお姉さまが、ご自分のデスクにバッグを置いて、背中を投げ出すように椅子にお座りになりました。

「まったく。こういうことに対してのうちのスタッフの順応性と団結力は大したものよね」
 
 ドアを閉じてふたりきりになった後、お姉さまの出張中に他のみなさまからされたことを、ほのかさまにしたようにひとつひとつご説明しました。
 もちろん、つい数時間前のほのかさまのご命令も追加して。
 ご自分のバッグの中身を片付けながら聞いてくださっていたお姉さまが、聞き終えておっしゃったご感想が上のお言葉です。

「よかったじゃない?みんなで直子を虐めてくれて。直子がずっと思い描いていた理想のマゾ生活に今のこのオフィス、かなり近い状態じゃない?」
「それは、そうなのですけれど・・・でも、やっぱり恥ずかしいです・・・」

 お姉さまに服従ポーズをじーっと視られながら、ムラムラがどんどん昂ぶってくるのがわかりました。
 本当はワンピースなんか脱ぎ捨てて全裸になって、お姉さまに抱きしめて欲しい気持ちでいっぱいでした。

「あら?なんだか嫌々やっているような、うちのスタッフがガチ苛めしているような、可愛くないご感想ね?」
 私の気持ちを知ってか知らずか、お姉さまはイジワルモードに入りつつあるようです。
 
「何言ってるの?あたしたちは直子に、ちゃんと選択肢を残してあげているじゃない。チョーカーをしていないときは何もしない、って」
 お片付けが一段落されたらしいお姉さまは、椅子から私を非難するような険しい目つきで見上げておっしゃいました。
「それなのに直子は、ずっとチョーカーを着けて出社している。つまり全部、直子が望んだことでしょう?そうじゃない?」

 おっしゃる通りでした。
 イベント後ずっと朝起きると、今日は何をされちゃうのだろう、とドキドキしつつ、喜々として、どのチョーカーにしようかな、と選ぶのが日課となっていました。
 チョーカーを着けないで出社する、などという考えは、爪の先ほども浮かんだことはありませんでした。
 それくらい、今のオフィス生活にワクワクしているのは事実でした。

「言っておくけれど、あたしは直子とオフィスでは、シないわよ?」
 お姉さまが真面目なお顔でおっしゃいました。
「直子を虐めたり辱めたりすることはあっても、直子にシてもらったりベタベタしたりはしない。スタッフがいるオフィスで喘ぎ声あげるなんて、そんなはしたない真似、死んでも出来ない」

 ショックでした。
 久しぶりにお逢いしたのですから、抱き合ってキスのひとつくらいいただけると予想していましたから。
 ツンモードに入ったお姉さまが頑ななことは、経験上知っていました。

 私の落胆がわかったのでしょう、お姉さまはイジワルく目を細め、こうつづけました。
「でも直子は、あたし以外の誰かに頼まれたらちゃんとシてあげなさい。直子は我が社の秘書兼ご奉仕マゾペットなのだから」
 お姉さまの瞳は完全に、エス色に染まっていました。

「さあ、仕事をさっさと片付けちゃいましょう。さすがのあたしも今回の出張は疲れちゃった。幸い土日はゆっくり出来るから、早く帰って休みたいの」

 それから夕方まで、みなさまが取ってきた契約書や見積書の確認に時間を費やしました。
 お姉さまはスーツ姿、私は下半身丸出し姿で。
 資材の発注をしたり、工房にスケジュールの確認をしたり、お取引先に御礼のお電話をしたり、えっちな気分が顔を出すヒマもなく働きました。
 
 そのあいだずっと、お姉さまはこの週末をどう過ごされるおつもりなのだろう、と不安で仕方ありませんでした。
 お疲れのようだから、おひとりでゆっくりお休みしたいのかな・・・
 せっかく近くにいらっしゃるのに、私は放置プレイになっちゃうのかしら・・・
 お仕事が終わってしまうのが怖いと感じていました。

 午後5時前にお仕事がすべて終わり、お姉さまがんーーっと伸びをひとつ。
「ふぅー。これでやっと帰れるわね。お疲れさま」
 私の肩を軽くポンと叩いてねぎらってくださいました。

「ところで、出張中にずいぶん洗濯物が溜まってしまって、帰ってもあたしにそんな元気もないし、どこかにいい全裸家政婦さんはいないものかしら?」
 お姉さまがお芝居ぽくお道化た感じでおっしゃいました。

「はいっ!」
 元気よく真っ直ぐに挙手する私。
 お姉さまがデレモードに突入!
 お仕事の疲れが吹き飛ぶほどの嬉しいご提案でした。

「あら、あなた出来るの?うちは厳しいわよ?」
「はい。何でもします。どんなご命令にも従います」

「帰ってくるなりそんなエロい格好を見せつけられて、あたしもムラっとしちゃっているの。あなたはあたしを満足させることが出来る?」
「はい。必ず出来ます。全身全霊をかけてご奉仕させていただきます」

「出来なかったらキツーイお仕置きよ?」
「大丈夫です。私はマゾなので、お仕置きも大好物ですから」
「そう。それなら行きましょうか」

 お姉さまが私のまくり上げられたワンピースを直してくださり、そのまま、まだお仕事中の綾音さまやほのかさまに、良い週末をー、と冷やかされながら退社。
 お姉さまのお車で飯田橋のマンションに拉致監禁されました。

 それから丸二日間。
 生憎の雨模様だったので、ほとんど外出はしませんでしたが、全裸もしくはそれに近い格好のまま、お姉さまの言いなりとなり淫らに過ごしました。
 家事をして、虐められ、辱められ、晒されて、ご奉仕して、たっぷり愛し合いました。
 5月の連休のときに勝るとも劣らないほどの濃密な全裸家政婦生活でした。
 
 一週間分のお姉さま分を補給しても、私の旺盛な恥辱欲は衰えることを知らず、お姉さまが再び出張へと旅立たれた翌月曜日の朝からも、私は相変わらずチョーカーを着けて出勤しつづけました。

 オフィスでは、下半身裸が私のトレードマークのようになっていました。
 どんなに清楚な服装で出社したとしても、午後には少なくとも下半身はスッポンポンにされていました。
 生理が来ても、マゾマンコからタンポンの紐をプラプラ覗かせながら勤務していました。

 生理が去って私がレビューしたアダルティなラブトイズの数が二桁になった頃、綾音部長さまから私に、恥ずかし過ぎる業務命令が下されました。


非日常の王国で 08


2016年11月20日

非日常の王国で 06

「あの、えっと、つまり、今ここでショーツを脱ぐ、ということですか?」
 そんな卑俗なご命令が清楚なほのかさまのお口から出た、という事実が信じられない私。

「そうよ。そういうことをするのが、直子さんはお好きなのでしょう?」
「・・・はい」
 つぶらな瞳をワクワクに輝かせて問いかけられたら、私も正直にお答えするしかありません。

「そのワンピースの下は下着だけ?」
「はい」
「最近、雨が降らなくても蒸すものね。確実に夏に近づいている感じ。そのワンピース、からだのラインが綺麗に出て、とても似合っていてよ」
 たおやかな笑みを口許に浮かべ、イタズラっぽく私を見つめてくるほのかさま。

 私は首を後ろにをひねって、店内の様子を確認しました。
 私たちが座った場所はお店の突き当り奥、壁際の四人掛け席で、ほのかさまが壁側に、私がテーブルを挟んだ向かい側に座ったので、私は店内すべてを完全に背にしていました。

 そろそろお昼近くということで、広めな店内の七割方まで埋まっていました。
 男性六、女性四くらいの割合。
 おひとり客はケータイ、スマホや新聞に、グループ客はおしゃべりに夢中という感じで、みなさまそれぞれご自分の時間を楽しまれているご様子。

「あんまりキョロキョロ、不審な挙動をすると、却って目立っちゃうような気もするんだけどなあ」
 ほのかさまが可笑しそうにおっしゃいました。
「でも、直子さん的には、せっかく脱ぐのだから、誰かから注目されていないと面白くないのかしら?」
 無邪気な口調で、天然のお言葉責めを投げつけてくるほのかさま。

「いえ、そんなことは・・・」
 お答えしながらほのかさまに向き直り、居住まいを正しました。
 
 椅子の背もたれもあるし、背後から誰かに見られても何をしているのかまではかわからないはず。
 そう自分に言い聞かせます。
 ただひとつ気にかかるのは、お帰りになったお客様のテーブルのお片付けのために、ときどき出てくるウェイトレスさんの動きですが、今なら大丈夫そう。
 こういうことは躊躇せずササッとやってしまったほうがいいことは、シーナさまやお姉さまとの露出アソビの経験上知っていました。

「・・・脱ぎます」
 小声で宣言して、ほのかさまのお顔に視線を向けたまま、両手をワンピースの裾に潜り込ませます。
 
 今日穿いているのは、純白レースのタンガショーツ。
 リンコさまたちが毎日、私の手持ちの下着類を着衣のまま脱ぎやすいように魔改造してくださっているのですが、私物の下着すべてリフォームするというお約束なので、手持ちのあるうちはそれを身に着けてこなければなりません。
 したがって、その日の下着も私物、脱ぎやすく改造はされていないものでした。

 椅子から少し腰を浮かし、左右の腿に貼り付いた布地にかけた両手を一気に引き下げます。
 ワンピースの裾から、一直線に白く伸びた布地が現われ、膝のところで一旦停止。
 前屈みになって右足、左足とヒールに引っかっからないように慎重にくぐらせました。

「・・・脱ぎました」
 左手の中に、まだホカホカ体温の残るジットリ湿った小さな布片を、隠すように丸めて持ったまま、ほのかさまを見ました。

「すごーい。本当に脱いだんだ。わたし、見ているだけなのにすごくドキドキしちゃった。脱いでいる最中、お店の喧騒が聞こえなくなっちゃうほど集中して見入っちゃっていたわ」
 興奮されているのか、少し赤味の差したお顔でほのかさまがおっしゃいました。

「下着、見せて」
 ほのかさまのお言葉で、握り締めた左手のこぶしをゆっくりとテーブルの上に差し出します。
 指のあいだから白い布地が少し飛び出ています。
 ほのかさまが右手を伸ばしてきて、そのしなやかな指先で私の握りこぶしをおやさしく開かせました。

「素敵なのを穿いてきたのね。あ、そっか。今日はチーフが出張からお戻りになる日でしたものね」
 ショーツを広げた形でテーブルの上に置かれました。
 そ、そんな大胆な・・・
 カフェのオシャレ木調なテーブルに、これみよがしに置かれた布地少なめの真っ白なショーツは、アートっぽいような、ただお下品なだけのような、場違いな猥褻さを醸し出していました。

「やっぱりクロッチのところが湿っている。これは、直子さんが悦んでいるから、って理解していいのよね?」
 指先でヌメっているクロッチ部分を撫でるほのかさま。
「・・・はい」
 私の左手のひらもベトついていました。
 顔から火が出るほど恥ずかしい。

「悦んでいるのは、わたしの命令に?それとも、今下着を脱いだ、っていう行為に対してかしら?」
「・・・どっちも、です」
 
 ほのかさまが私の性癖についてお話を始められた時点で、私のマゾマンコはジワジワとヌメり始めていましたから、正直な答えでした。
 ほのかさまは、その指先をご自分のお鼻のところに持っていき、クンと一度嗅いでから、傍らのおしぼりで丁寧に拭われました。

「今見ていて、直子さんのご趣味の醍醐味がわたしにもなんとなくわかった気がしたの。とてもスリリングよね。ハラハラドキドキ。こんなに人がいっぱいいるカフェでこっそり下着を脱ぐなんて、わたしには考えられないもの」

 ときどき背中の後ろを誰かが通るのを感じます。
 このテーブルは、奥のおトイレへつづく通路脇にあるのです。
 ショーツに気がつきませんように・・・
 私は、ワンピースの裾をひっぱるみたく股間の上に両手を置いて、テーブルのショーツを隠すように前屈み気味になり、自分が置かれた状況にゾクゾクキュンキュン感じていました。

 ほのかさまは、私が脱いだショーツを綺麗にハンカチのように折りたたみ、おしぼりの横に置きました。
「どう?自分が脱いだ下着がテーブルの上に置かれているのって」
「は、恥ずかしいです・・・」
「だけどそれが気持ちいいのでしょ?直子さん、ますますえっちなお顔になっているもの」
「・・・はい。その通りです。ごめんなさい」
 私の返答にご満足そうにうなずかれるほのかさま。

「せっかく脱いでも、ただ、そうして座っているだけでは、直子さんはつまらないわよね?」
 ほのかさまは、私をじっと見つめつつ、何かを考えられているご様子。
「片足、椅子の上に乗せてみて」
「えっ!?」

 小首をかしげての、ほのかさまの可愛らしいおねだりも、私にとっては絶対服従のご命令。
「直子さんがそのワンピースの下に何も身に着けていないっていうことを、実際にこの目で確かめたいの」
 ほのかさまのお言葉のイジワル度が、どんどん増している感じです。

 それ以上は何もおっしゃらず、期待に満ちたまなざしでじっと私を見つめてくるほのかさま。
 私は観念して、テーブルの下で右足のパンプスを脱ぎました。
 それからゆっくりと右膝だけを、テーブルの高さまで上げていきます。

 膝上20センチくらいのニットワンピースの裾が大きく割れ、それに従ってヌルみきった股間の亀裂が徐々に裂け始めるのがわかります。
 皮膚と皮膚が離れていく感覚はベトついていて、ヌチャっていう音さえ聞こえてきそう。
 やがて右足のかかとが椅子の縁に乗り、右の膝小僧がテーブルの上まで顔を出しました。

 お腹の方へとせり上がって大きく開いたワンピースの裾。
 無防備な下腹部の粘膜まで、外気に晒されているのがわかりました。
 テーブルに覆いかぶさるように身を乗り出し、その部分を覗き込んでくるほのかさま。

「すごい。全部見えちゃってる。ピンク色の中身まで全部。直子さん、とてもエロティックだわ」
 ほのかさまがケータイのレンズを私に向けながらおっしゃいました。
「でも周りを見渡すと、普通のオフィス街のカフェなのよね。そこのところがなんだかシュール」

「こっちを見て」
 ほのかさまのお言葉で、うつむいていた顔を向けました。
 カシャッとシャッターを切る音。
 同時に私はビクン。
「ずいぶんと辛そうなお顔なのね。イベントのときと同じ。でもそれがマゾの人の快感なのよね?」
 パックリ割れたマゾマンコからトロリと、淫液が椅子に滴りました。

「それにしても直子さんのハイジニーナ、いつ見ても惚れ惚れするほどツルンツルンで素敵」
 ケータイをかざしたままはしゃぐほのかさま。
 遠くのほうから、いらっしゃいませー、のお声。
 背後でガタンという、椅子を引くような音。
 眼下に剥き出しの自分のマゾマンコ。
 いやっ、もう許して・・・
 たまらず足を下ろそうとしてしまう私。

「だーめ。まだ足を下ろしてはだめよ。大丈夫。窓際のお客様が席を立っただけだから。もう一枚写真撮るから、足は上げたままよ」
 どんどんご命令口調が滑らかになってきたほのかさま。
 私は、片足を椅子に上げ直す、というそれだけの行為に、ハアハア息を荒げてしまいます。

「ほら、これが直子さんのえっちな姿」
 足を下ろしていい、というお許しをいただいてお水を一口。
 目の前にほのかさまのケータイが差し出されました。
 液晶に記録された私の浅ましい姿。

 頬を火照らせ唇は半開き、眉間を悩ましく寄せたいやらしい顔。
 顎の下に右の膝小僧。
 その下に白いワンピースの裾が大きく開かれて覗く肌色。
 その中心部に、顔と同じように下腹部の唇も半開きにして濡れそぼったピンクのヒダヒダを覗かせているマゾマンコ。
 唇の先端でこれみよがしに腫れ上がっている肉の芽までが鮮明に映っていました。

「シャッター切るときの音で、何人かがこちらに注目していたの。わたしは少し焦ったけれど、直子さんは、注目して欲しいのよね?」
「いえ、そ、そんなこと・・・」
「でも、その人たちからは直子さんの背中しか見えないから、こんな写真を撮っていたなんてわからないわよね。仲のいい女子が撮影ごっこしてるようにしか見えなかったかしら」
 ほのかさまがはんなりと微笑まれました。

「直子さん的にはちょっと物足りない?やっぱり恥ずかしい格好、誰かにちゃんと視られたいのでしょう?」
「いえ、今ので充分スリリングでした。こんな会社のご近所のお店で、自分のアソコを撮影されるなんて・・・それに、ほのかさまがじっくり視てくださいましたし・・・」
「本当に?ちゃんと興奮出来た?」
「は、はい・・・さっきもご覧になったように、私のマ、いえ、あの、性器は溢れるくらい濡れていますし、ち、乳首も、痛いほど尖っちゃってます。ほのかさまのおかげです」
 優雅なほのかさまがお相手だと、どうしてもお下品な言葉を使うのをためらってしまいます。

「そう・・・」
 ご納得されていないご様子のお顔で、しばし宙を仰ぐほのかさま。
 チラッと腕時計を覗いてから少し考え、パッと何か閃いたお顔になりました。

「それならこうしましょう。直子さん、ここでブラジャーも取ってしまうの。それで素肌にワンピース一枚だけになって、一緒にオフィスに戻りましょう」
「えっ!?」
「イベントのときも、裸に近い格好になればなるほど、どんどんえっちなお顔になっていったじゃない?辛そうなのに無理に無表情を作って。とてもエロティックだった」
「それに、わたしのせいで感じている直子さんのバストトップ、ブラを外せばワンピース越しでも、わたしにも実感出来るでしょう?わたし、直子さんのバストの形、とても好きよ」
 ご自分の思いつきに夢中なほのかさまが、無邪気に私を追い詰めてきます。

「で、でも、このワンピースってピッタリめですから、ブラを取ったら乳首が浮き出て、わ、私の乳首は大きめなのでとくに目立って、ノーブラが丸わかりになってしまいます・・・」
 とうとう私は、白昼に職場の周辺までもノーブラで闊歩することになるんだ、と、半ば観念しつつも、その行為に対する不安感から無駄な抵抗が口をついてしまいました。
「大丈夫よ。この時期にノーブラの女性なんて、街にいくらでもいるでしょう?誰もそんなに気にしないのではないかしら?」

 いいえ違います、ほのかさま。
 たとえ真夏にだって、ノーブラを誇示するように街を歩いている女性は、そんなに存在しません。
 ほのかさまだって、普段ノーブラで外出されないでしょう?
 それに、ノーブラの胸が他人の、とくに男性の視線を惹き付ける威力は、凄いんです。
 心の中で反論しつつ、どんどん疼いてきちゃってもいました。

「直子さんはスタイルいいし、ノーブラでなくたって注目を集める女性だと思うの。だから綺麗なからだは、より魅力的に視せてあげればいいのではなくて?」
「それに直子さん、視られたがり屋さんなのでしょう?欲望を我慢するのはからだに良くないわ」

 真剣なご表情でアドバイスしてくださるほのかさまを見ていて、ふと気づきました。
 ほのかさまは、こういうアソビに慣れていらっしゃらない。
 街中の露出行為に関しても、どこまでが安全で、どこからが危険なのか、その線引きがわかっていらっしゃらないんだ、と。

 お姉さまやシーナさまなら、こんな平日のお昼時に会社の近くをノーブラで歩かせるなんてことはしないでしょう。
 やらせるなら普段のテリトリー外、なるべくヘンな男性が出没しなそうなところ。
 私の身の安全を第一に考えてくださっていることを、経験上知っていました。
 でも、ほのかさまは、その加減がわかっていらっしゃらないので、無邪気に私を追い詰めてくるのです。
 それは、ほのかさまが私を悦ばせたい一心で、私の性癖に合うようなご命令を真剣に考え、私に接してくださっているからなのでしょう。

 新鮮でした。
 もちろん、怖い、という気持ちもあるのですが、お姉さまと一緒のプレイで感じているような、そこはかとない安心感を伴わない露出強要は、ひとりアソビばかりしていた頃、脳内ご主人様に従いながらビクビクしていた露出行為のときのスリルを思い出させました。

「わたしの命令、聞けない?」
 ほのかさまが私の顔を覗き込んできました。

 いずれにせよ、私に選択権は無いのです。
 チョーカーを着けて出社した以上、スタッフ全員のご命令に絶対服従の身なのですから。
 でも、や、だって、は絶対に許されない存在。
 ほのかさまが、脱げ、とおっしゃったら脱がなくてはいけないのです。
 それがいつであろうと、どこであろうと。
 ビタースイートな被虐感がゾクゾクっと背筋を走りました。

「口答えをしてしまい申し訳ありませんでした。ほのかさまがお望みなのですから、悦んでブラジャーも外します」
 マゾ度100パーセントでお詫びしました。

「よかった。直子さん、今日一番えっちなお顔になっている。悦んでもらえて嬉しいわ」
 ほのかさまが艶っぽくウフッと微笑みました。
 きっとほのかさまも今、両腿のあいだを熱くしていらっしゃる、となぜだか確信しました。

 こういった場でこっそりショーツを脱いだ経験は何度かありましたが、ブラジャーをこっそりひとりで外すのは初めてでした。
 えっと、どうすればいいのかな・・・
 ちょっと考えてからモゾモゾとからだを動かし始めました。

 ワンピースの両袖から内側に両腕を抜き、左手を背中に滑らせてブラジャーのホックを外しにかかります。
 リンコさまの改造ブラをしてこなかったことが悔やまれます。
 あれならワンピの上からでも後と肩のホックが外せてラクチンだったのに。

 それから左腕、右腕とストラップをくぐらせます。
 ワンピの中で両腕がおっぱいを無造作に愛撫して、声を我慢するのが大変。
 外側でもモゾモゾ動きに合わせてワンピの裾がどんどんせり上がってしまい、自分の視界に恥丘の白い肌が露わになっています。

「向こうの席のサラリーマン風の男性が怪訝そうにこちらを見ているわ」
 ほのかさまがヒソヒソ声で教えてくださいました。
 傍から見ても、布地がモゾモゾ動いているのや、中身が消えてダランと垂れ下がった両袖は不審に見えるでしょう。
「わたしが冷たく睨んだら、あわてて視線を外したけれど、急いだほうが良さそうね」
 ほのかさまの愉快そうなヒソヒソ声。

 やっと外れたブラを襟口から取り出そうか裾から取り出そうか、一瞬迷いましたが、襟口からだと動作が大きくなって目立ちぞうなので裾へ。
「あふっ!」
 ブラのカップの縁が尖った乳首を引っ掛けて、思わず小さく喘いでしまいました。
 テーブルの下に伸びてきたほのかさまの手で、私のブラジャーは人知れず回収されました。
 両袖に腕を急いで通し直します。

「うふ。まだ温かい」
 私から取り上げたブラジャーを、テーブルの上でたたみ直すほのかさま。
 うつむいて自分の胸元を見ると、やわらかい布地にうっすらとバストトップの位置が示されていました。
 うつむいてこうだと、胸を張ったら丸わかり確実・・・

「本当だ。わたしのために硬くしてくれているのね」
 私の素肌に貼り付く唯一の布地となった、ニットワンピースの胸元をじっと見つめてくるほのかさま。
「可愛い。ぴょこんと突き出ていて、思わずつまみたくなっちゃう」
 ほのかさまの右手が私のはしたないバストに伸びてきたとき・・・

「いらっしゃいませー」
 店員さんの元気のいいお声の後、ガヤガヤという一際大きいおしゃべり声が聞こえてきました。
 大人数のグループがご来店したみたい。

「もう少し楽しみたかったけれど、そろそろランチタイムだから混むでしょうし、長居しちゃ悪いから出ましょうか」
 さすがに社会人としての公共マナーはバッチリなほのかさま。
 ご自分のショルダーバッグに私のショーツとブラジャーを仕舞い込み、代わりに派手めのファッショングラスを差し出してきました。
 イベントの行き来のときに着けた、タレントさんがするような無駄に目立つ鼈甲縁。

「わたしがこんな格好だし、直子さんがそれしてふたりで歩けば、ファッションモデルとそのマネージャーっていう感じになるでしょ?モデルさんならノーブラだってファッションみたいなものよ」

 スーツ姿のほのかさまが立ち上がりました。
 やっぱりほのかさまも、少しは世間様の目のことを考えていらっしゃるんだ。
 ちょっぴり感心しつつ、私もあわててファッショングラスをかけ、つづきます。
「モデルウォークで颯爽とね。ランウェイのときみたいに」
 ほのかさまがイタズラっぽくウインクをくださいました。

「ごちそうさまー」
 少しわざとらしいくらいの、ほのかさまの明るいお声。
「ありがとうございましたー、したー」
 それを追いかける店員さんたちの元気なご唱和。
 お声にふとお顔を上げる他のお客様たち。
 その視線の幾つかが、吸い寄せられるように私の胸元に集中するのがわかりました。

 ほのかさまのカートの後ろを、背筋を伸ばして気取った感じで歩く私。
 その胸元にはふたつの突起がクッキリ、ボディコン気味な純白のやわらかいニット生地を押し上げ、私の勃起乳首の所在を公衆に知らしめていました。
 膝上20センチの裾下にもスースー風が入り込んできます。
 今の私は、素肌の上にボディライン通りのシルエットを描くワンピース一枚。

 そんな姿で、たくさんの人とすれ違いました。
 ちょうどランチタイムを迎えたオフィス街は、あちこちのビルからわらわらと人々が溢れ出てきていました。
 数え切れない視線が私のおっぱいや太腿付近を通り過ぎていくのがわかりました。
 そんな中をほのかさまと私は、小声でおしゃべりしながらゆっくり歩いていきました。

 話題は、イベント後から今日までのオフィスの様子。
 必然的に、私がリンコさまとミサさまからされた辱めのお話が主となってしまいます。

 いきなり全裸勤務を言い渡されたこと。
 コスプレ姿のミサさまに鞭打たれたこと。
 綾音部長さまのデスクの上で自慰行為を撮影されたこと。
 社長室に監視カメラを取り付けられたこと。
 裸白衣でお客様にお茶をお出したこと。
 下半身丸出しで綾音さまとお仕事の打ち合わせをしたこと、などなど。

 なるべくお下品にならないように言葉を選んで、ほのかさまにお話しました。
 ほのかさまは、びっくりしたり呆れられたり。
 ふたりで熱心に、まるで周りの人たちのことなんか気にもしていないそぶりでおしゃべりをつづけました。

 それでも信号待ちで立ち止まったりすると、四方八方から視線が飛んで来ているのがわかりました。
 信号の向こうからこちらを見て、何やらヒソヒソ話してい女子学生の集団。
 すれ違いざま露骨に振り向いて二度見してくる年配のサラリーマンさん。
 不躾にじーっと視つめてニコニコ笑いかけてくる外国人さん。
 おすまし顔を繕いながらも、私の無防備なマゾマンコはヒクヒク疼きっ放しでした。

 オフィスビルに入っても視線の洪水。
 ショッピングモールでは、ヤングミセスぽい女性たちからのあからさまな呆れ顔が目立ちました。
 オフィス棟では、スーツ姿のビジネスマンたちの好奇の視線。
 エレベーターホールでは、ちょうど降りてきたOLさんたちのグループが訝しげに私の全身をジロジロ眺めつつ散っていきました。
 唯一の救いは、ランチタイムの始まり時間だったからでしょう、上りエレベーター内はふたりきりだったこと。

 正面の大きな鏡に私の姿が映っています。
 ノーブラです、って宣言しているみたいにこれみよがしに浮き出ているバストの突起。
 ほんの10センチもずり上がったら、たちまち淫靡な亀裂まで露になってしまうニットワンピースの裾。
 背後から寄り添うように、スーツ姿のほのかさまの笑顔があります。
「直子さん、火照っちゃって、とてもえっちなお顔」

「すごく注目を集めちゃっていたわね。愉しかったでしょう?」
 屈託のないほのかさまの弾んだお声。
「わたし、来週も出張だけれど、次に戻るまでにまた、直子さんが悦ぶような命令、考えておくからね。楽しみにしていて」

 私は今すぐほのかさまにギュッと抱きついてキスしたい衝動を、必死に抑え込んでいました。


非日常の王国で 07


2016年11月13日

非日常の王国で 05

 おふたりのお背中がドアの向こうに消えたのを確認してから、自分のおっぱいに視線を落としました。
 乳首にガブッと噛み付いて銀色に輝くふたつの目玉クリップ。
 そのうち右のほうの持ち手をそっと指でつまみます。

「はうっぅぅ!」
 目尻に涙が滲みそうな激痛の後に訪れる疼痛をともなう甘い開放感。
 潰されていた皮膚がゆっくりと膨らんでいくのがわかります。
「あうっぅん!」
 2度めの激痛に身を捩らせると同時に、左右の手のひらでおっぱいをひとつづつ、ワシづかみで揉みしだいていました。

 リンコさまがデスクの上に残してくださったバスタオルで、とくにビショビショヌルヌルな股間を押さえつつ、社長室に戻りました。
 これからオフィス外の給湯室まで行ってお水を汲んできて、汚してしまった綾音部長さまのデスクや周辺の床をキレイに拭き掃除しなければいけません。
 バスタオルで軽く全身の汗を拭ってから、お外に出るとき私に唯一許された衣服、先ほど持ってきてくださった白衣をハンガーから外しました。

 手に取ってみると、クタッとした柔らかい生地で軽い感じ。
 そそくさと両腕を通しました。
 敏感になっている乳首や腫れたお尻を布地が滑り、ゾクゾク感じてしまいます。

 着丈は膝上で7分袖、ストンとしたAラインシルエットでちゃんとボタンが左前のレディース仕様。
 ボタンはおっぱいの谷間あたりから下腹くらいまでの4つ。

 ボタンをすべて留め終えると、我ながら妙に似合っている感じ。
 なんだか自分がインテリになって、何やら難しい分野の研究者にでもなったような錯覚を覚えちゃいます。

 ただし、よく見ると∨ゾーンが意外と空いていて、前屈みになったっら隙間からおっぱい全部が覗けちゃいそう。
 更に、柔らかい生地なので、少しでも胸を張ると、白衣上にバストトップの位置があからさまに明示されてしまいます。
 この格好で廊下に出るんだ・・・
 まさしく裸コートに臨むときと同じドキドキ感に全身が震えました。

 そっとオフィスのドアを開き、廊下を窺います。
 夕方5時前のオフィスビルはしんと静まり返り、人影はありません。
 リノリュームの床をカツカツと早足のヒールで蹴り、廊下の直線上右手にある給湯室へと急ぎました。

 給湯室に飛び込んでホッと一息。
 幸い誰にも会わず視られずに済みました。
 蛇口をひねってバケツにお水を汲みつつ、シンクの前の鏡を覗きます。
 白衣の胸元から覗く白い肌が少し汗ばんで、ほんのり上気しているのがわかります。

 せっかくお水を使えるのだから、ここでちゃんとからだを拭いていこうか。
 汗まみれ汁まみれになった後、乾いたバスタオルで拭いただけだったので、からだがベトベトしている気がしていました。
 この給湯室は我が社専用なので、知らない誰かが入ってくる心配はありません。

 そそくさと白衣を脱いで全裸になり、濡らしたタオルで全身を拭きました。
 ミサさまの鞭さばきで熱病のように疼くお尻に、冷たいタオルをあてがったときの気持ち良さと言ったら・・・
 思わず、あーーーっ、と深い溜め息を洩らしてしまったほど。

 この数ヶ月の勤務で見慣れた場所となった給湯室で全裸になったことで、入社する前にお姉さまに案内されて初めて訪れたオフィスでの面接のことを、唐突に思い出していました。
 
 あのときは土曜日でフロアが閑散としていたとは言え、バスタオル一枚で廊下を歩かされ、給湯室のすぐ隣のおトイレで全裸にされちゃったんだっけ。
 それで戻るときは、全裸で廊下に立たされ坊主みたいに放置され、お姉さまが放リ投げたショーツをワンちゃんみたく四つん這いで拾いに行かされて。
 そうそう、正確には全裸じゃなくて、首輪から繋がったチェーンで乳首にチャームをぶら下げ、ラビアクリップで粘膜を押し広げられ、クリットはテグスで絞られてるという破廉恥ドマゾな姿でした。
 あの日感じた、胸を締めつけるような恥辱感が鮮やかによみがえり、性懲りもなく股間が潤んできます。

 だめだめ。
 さっさとお片付けをしなくっちゃ。
 股間に伸びそうになる右手を諌めて再び白衣を着込み、片手にはお水をなみなみとたたえたバケツと雑巾、もう一方の手にはモップと数枚のタオルを持って、給湯室を出ました。

 出てすぐ、廊下の向こうに人影があるのに気づきました。
 淫らモードですっかり気が緩んでいたので、思わず、えっ!?と声をあげて立ちすくむほどびっくりしてしまいました。

 給湯室の脇にあるおトイレへ向かう、同じフロアの別会社の社員さんのようでした。
 白い半袖ワイシャツにストライプのネクタイ、髪をきっちりと七三に分けた30代くらいの男性がズンズンと私のほうに近づいてきました。

 私は、人影に気づいた瞬間にサッとうつむき、廊下の端を重いバケツのせいで幾分ヨタヨタという感じで歩を進めたので、その男性が私をみつけて、どんなリアクションをされたかはわかりません。
 でも、すれちがうときにちょっと会釈気味に頭を動かして窺った感じでは、困惑されているご様子でした。

 それはそうでしょう。
 お医者さまか研究員のような白衣を着た女性が、場違いなバケツとモップを持って廊下をトボトボ歩いているのですから。
 普通に考えてミスマッチ。
 すれ違った後も、振り返った男性からの怪訝そうな好奇の視線を背中に感じていました。

 それとももっと踏み込んで、この不自然に開いた胸元の谷間や、布を押し上げる突起まで気づかれちゃったのかも。
 白衣には合わない首輪型チョーカーまでしているし。
 そっちの方面に詳しい人なら、それだけで私がどんな女なのか、ピンときちゃったかもしれません。

 このフロアの廊下にときどきエロい女が出没する・・・なんて噂になっちゃったりして。
 心の中に得体の知れないどす黒い霧のようなものがモヤモヤと広がりました。
 すれ違った後も極力ゆっくりと歩き、いったん自分のオフィスのドアを通り越し、振り向いて廊下に男性の姿が無いのを確認してから、急いで後戻りしてオフィスのドアに飛び込みました。

 オフィスに戻ったら白衣は脱がなければなりません。
 全裸になって綾音部長さまのデスクを拭き始めます。

 廊下で他の会社の男性社員と出会ったことで、今自分がしている行為のアブノーマルさを今更ながらに思い知らされました。
 このオフィスの壁一枚向こうは普通の世界。
 健全な社会人のみなさまが健全に社会生活を営む公共の場所なのです。

 先ほどの男性がおトイレから戻るとき、まさか廊下沿いの壁の向こう側で、さっきすれ違った白衣の女が全裸になって床掃除をしているなんて、思いもしないでしょう。
 私がしていることは、それほど世間的に考えて異常、つまりヘンタイ的なことなんだ・・・
 被虐と恥辱と背徳に身悶えしながら、モップも使わず自ら四つん這いになり、精一杯の罪滅ぼしのつもりで一所懸命床の拭き掃除をしました。

 リンコさまとミサさまは、その日からほぼ毎日、オフィスで私を恥ずかしい格好にして愉しまれました。
 たいていは午後、綾音部長さまがお出かけになって3人になったとき。

 ある日は、イベントのときに着たシースルーのスーツ上下で勤務。
 ある日は、本当に全裸に白衣だけで、初めてのお客様にお茶出しをしました。
 お茶をお出しするときはどうしても前屈みになってしまうので、∨ゾーンから生おっぱいが丸見えになっていたと思います。
 リンコさまのお客様としていらしたアジア地域の生地のバイヤーだという妙齢のお綺麗な外国人女性のかたは、困ったような呆れたようなお顔で、アリガトと微笑んでくださいました。

 綾音部長さまがずっとオフィスにいらっしゃるときは、メールで指令が来ました。
 その日のご命令は、素肌に短いブラウスだけ着て、下半身は丸出しで勤務。
 綾音さまがいらっしゃるのに、とドギマギしながらもご命令に従って社長室でパソコンに向かっていると、綾音さまから呼び出しがかかりました。

 どうしよう!と思い、その日穿いてきたジーンズに思わず手が伸びたのですが、ブルルっとケータイが震え、そのまま行きなさい、というメール。
 私の行動はすべてリンコさまとミサさまに監視カメラでお見通しなのでした。
 おずおずとそのままの格好で綾音さまの前へ出ました。

 私の姿を視た綾音さまは、一瞬ギョッとされたようでしたが、すぐにニヤッと唇の端をお上げになりました。
 それから、まるで変わったことなんか何ひとつ無いかのようになお顔で、業務の打ち合わせを始められました。

 はい、はい、と綾音さまのお言いつけのメモを取りつつ私は、このオフィスで私がこんな破廉恥な格好をしていることもスタッフのみなさまには普通のことになってしまったんだなー、と、ひどくみじめなような、でも嬉しいような、フクザツな気持ちになっていました。

 そんなこんなの日々が過ぎて迎えた金曜日。
 お姉さまが出張からお戻りになる日なので、朝からルンルン気分。
お姉さまが似合うとおっしゃってくださった、ボディコン気味な白いニットのミニワンピを着て出社しました。
 もちろん首にはお姉さまからのプレゼントの首輪型チョーカーを嵌めて。

 オフィスには綾音部長さまと開発部のおふたり。
 綾音さまには午後、ご来客のご予定があるので、今日はお出かけされないのでしょう。
 お姉さまは午後2時頃出社予定なので、今日はリンコさまもミサさまもちょっかいをかけてこないのではないかな、と勝手に予想していました。

 午前中、いつものルーティーンワークで郵便局や銀行を回り、頼まれごとのおつかいなども済ませた11時過ぎ。
 オフィス最寄りの地下鉄の入口付近で、誰かに後ろからポンと肩を叩かれました。

「直子さん?」
 振り返るとほのかさまが人懐っこく、ニコッと笑っていらっしゃいました。
「あ、ほのかさま。お疲れさまです。今お戻りですか?」
 そう言えば今日は、ほのかさまも出張からお戻りになる日でした。

「そうなの。名古屋で間宮部長と別れて、わたしだけ一足お先にね」
 大きめ無機質なトラベルキャリーカートとシュッとした濃紺のビジネススーツ姿のほのかさまは、いかにも仕事の出来る営業ウーマン、という感じでカッコいい。

「直子さんは銀行?」
「はい。今日はどこも空いていて早く終わったので、これからオフィスに戻ろうかと」
 ほのかさまとお顔を合わせるのはイベント開けの月曜日以来なので、なんだか気恥ずかしい感じです。

「そうなんだ?それならちょっとお茶していかない?わたし、昨日の夜から何も食べていないから、はしたないのだけれど、とってもお腹空いちゃっているの」
 ほのかさまが、お綺麗なお顔を情けなさそうに少し歪め、可愛らしくおっしゃいました。
「直子さんとは、イベントの後ほとんどお話出来なかったし、お昼までに戻れば大丈夫よね?今オフィスには、どなたがいるの?」
 私がお答えするとほのかさまはすぐ、ご自分の携帯電話を取り出してかけました。

「早乙女部長からお許しをいただいたわ。ちょこっとお茶して、それからふたりでオフィスに戻りましょう」
 ニッコリ笑いかけてくるほのかさま。
 そのままカートを引っ張って颯爽と歩き始めました。

 腰を落ち着けたのは、オフィスビルにほど近い、あちこちでよく見かけるチェーン店のカフェテラス。
「お昼前だからあんまり混んでいなくてよかった」
 差し向かいのテーブル席で、ツナを挟んだイングリッシュマフィンとサラダの乗ったプレートとミルクティを前にしたほのかさまがおっしゃいました。
 ガラス張りの明るい店内は、半分くらいの入り。
 ご年配な男性おひとり客と、ショッピングらしきヤングミセスのグループが目立ちます。

「直子さんは、今日もおべんとなのね?」
 アイスレモンティだけ前にした私を見て微笑むほのかさま。
 大きなカートを引っ張っていたので、カートを脇に置ける一番奥壁際の席に通されました。

 お食事のあいだは、ほのかさまがご出張中にお相手されたユニークなクライアントさまの話題。
 マフィンを優雅に頬張りつつ、面白おかしくお話してくださるほのかさまに、何度もクスクス笑わされました。
 やがてお上品にお口許をナプキンで拭ったほのかさまがお紅茶で一口喉を湿らせてから、じっと私を見つめてきました。

「イベントのときの直子さん、凄かった。びっくりしちゃった」
 周りに聞かれてはいけない種類のおしゃべりをするときみたいに、グッとお声を沈めておっしゃいました。
 そのお言葉を聞いた瞬間、私は、来たっ!と思いました。

 実は、ほのかさまにお茶のお誘いいただいたときから、ほのかさまとふたりきりになることについて、そこはかとない居心地の悪さをずっと感じていました。
 その原因は、イベントのときのほのかさまのご様子でした。

 他のスタッフのみなさまは、私が破廉恥な格好をしてはしたない振る舞いをするたびに、何て言うか、好色な好奇心を露わにして愉しんでくださっているように感じました。
 だけど、ほのかさまだけは始終、当惑されているような、動揺されているような、俗な言葉で言えば、ドン引きされているようなご様子に見えました。

 ひょっとしたらほのかさま、こういうヘンタイ性癖には、まったくご理解をお持ちにならないかたなのかもしれない。
 プレイとしての虐めではなく、人間として本気で嫌悪されてしまったらどうしよう・・・
 いくらマゾで人から虐げられるのが好きな性癖と言っても、私が大好きで尊敬しているほのかさまから生理的に嫌われてしまうのは悲しいことでした。

 おそらくほのかさまは、イベントのときの私の浅ましい振る舞いに対して、何かご意見があって私を誘ったんっだ・・・
 あなたみたいな不潔な人は大嫌い。
 もしくは、今からでも遅くはないから、真っ当な人間に戻りなさい。
 面と向かって、そう言われたらどうしよう・・・
 ニコニコとフレンドリーな今のご様子も却って不気味に不安感を煽り、胸が張り裂けそうにドキドキし始めました。

「直子さんは、あんなふうに恥ずかしい服装を人に見せたり、辛い命令に従ったりすることが嬉しくて、気持ちいいのよね?」
 相変わらずヒソヒソ人目を憚るように尋ねてくるほのかさま。
「は、はい・・・ご、ごめんなさい・・・」
 私には小さな声で、そう正直に答えるしかありません。

「ううん。直子さんが謝ることではないの。わたし、そういうの疎くてよく知らなかったからびっくりしてしまって」
 ほのかさまのお声が幾分普通に戻り、ティーカップに一口、唇をつけられました。

「そういうご趣味の人がいるらしい、っていうことはなんとなく知っていたのだけれど、まさか自分のこんな間近にいるとは思っていなくて・・・正直、直子さんがみんなの目の前でオシッコし始めちゃったときは、心臓が止まるかと思うくらい、ショッキングだったわ」
 その場面を思い出すかのように、形の良い顎を少し上げて天を仰ぐほのかさま。

「あの、ごめんなさい。あのとき、ほのかさまがあのペットボトルを・・・」
「あはは。そうだったわね。でもいいのよ。あのときわたし、ドキドキし過ぎちゃって、あれ以上直子さんの前に居られそうになかっただけだから」
 おやさしく微笑まれるほのかさま。

「あの後、まだ生温かいペットボトルの中身をおトイレに流しながら、世の中っていろんな人がいるんだなー、って、しみじみ思っちゃった」
 ほのかさまのイタズラっぽいお声。

「出張中二日間、間宮部長と一緒だったから聞いちゃったの。直子さんのこと、どう思われますか?って」
 ほのかさまが優雅にポットからティーカップへおかわりのお紅茶を注ぎながらつづけました。
「そしたら間宮部長、すごく嬉しそうにいろいろ教えてくださったの」

「チーフたちと学校で服飾部の頃、同学年に亜弓さんていう、直子さんと同じご趣味をお持ちの同級生がいらしたのですってね」
「それで、風でめくれやすい軽いスカートとか、濡れたら見事に透けちゃうブラウスとかを着せて街に出て、いろいろ虐めて遊んでいたって愉しそうにおっしゃっていたの」

「そのかたと同じ匂いがするから直子さんだって、傍から見ると辛そうだけれど、あれで内心は絶対悦んでいる、って断言されていたわ。マゾってそういうものだ、って」
「だから直子さんが虐められている、って気に病むことはないし、ほのかも直子が悦ぶようなことをどんどんしてあげればいいって」
「そんなふうに諭されて、わたしもずいぶん気がラクになって、どんどん好奇心が湧いてきちゃったの」

 私の頭の中では、ほのかさまと雅部長さまが瀟洒なホテルの一室で、お互い裸に近い格好でからだを寄せ合い、私のことを楽しげに話題にしている妄想が浮かんでいました。
 それはとても耽美で美しく、うっとりするほど理想的な百合ップルの光景でした。

「・・・なのよね?」
 すっかり妄想に耽っていた私の耳に、ほのかさまが私へ問いかけるようなお声がぼんやり聞こえました。
「えっ、あっ、ごめんなさい・・・ほのかさまに私のはしたない性癖を知られてしまった恥ずかしさで、少しボーッとしてしまいました」
 訳の分からない言い訳を口走る私。

「ううん。気にしなくていいのよ。それが本当の直子さんなのだったら、わたしも協力したいなって」
「だから、わたしも何か命令したら、直子さんは従ってくれるの?、って聞いておこうと思ったの」
 私の首のチョーカーをじっと見つめつつ、相変わらずたおやかに微笑んでいるほのかさま。

「あ、はい、もちろんです。チョーカーをした私は、スタッフのみなさま全員のせ、性的なドレイ、ですから・・・」
 自分で言葉にしながらゾクゾクっと被虐感が背筋を駆け上ります。
 調子に乗って、こんなことまで付け加えてしまいました。
「大好きなほのかさまが虐めてくださるのなら・・・マ、マゾな私にとって、こんなに嬉しいことはありません」
 私のショーツのクロッチ部分は、もうグショグショでした。

「間宮部長が面白いことをおっしゃっていたの」
 ほのかさまが今まで見たことの無かった艶っぽい表情でおっしゃいました。
「SMっていうと、一般的にはMの人が虐められて可哀想っていうイメージだけれど、実はMの人のほうが愉しんでいる、って」
「虐める側の人は、マゾな人が悦ぶように工夫して虐めなくちゃならないから、SMのSはサービスのSで、Mはサービスを受けて満足のMなのですって」

「わたし、誰かを喜ばせることって大好きだから、直子さんがそういうご趣味なら、これからはそれに沿うように喜ばせてあげよう、って思ったの。わたし、直子さんのこと、好きだから」
 あくまでも生真面目に、じっと私を見つめて語りかけてくださるほのかさま。
「あ、ありがとうございます・・・」
 
 その真剣なご様子に、リンコさまたちとは違うエスっぽい迫力を感じて、タジタジとしてしまう私。
 でも心の中では、ほのかさまも私の本当の姿を受け入れてくださった、という嬉しい気持ちでときめいてもいました。

「わたしに命令されるの、嬉しい?」
「はい・・・」
「何でもわたしの言う通りにしてくれる?」
「はい。何でもします」
「それが直子さんにとっても、嬉しいことなのよね?」
「はい。そうです」
「うふっ。わたしも嬉しい」
 ほのかさまの無邪気な笑顔。

「それなら今、ここで下着をこっそり脱いで、どれだけ嬉しく思っているのか、その証拠を見せてもらっていいかしら?」
 ほのかさまの形良い唇の端が、ちょっぴりイジワルそうにクイッと吊り上がりました。


非日常の王国で 06


2016年10月30日

非日常の王国で 04

 先頭に立って社長室のドアを出て行く、コスプレ姿のミサさま。
 リンコさまの手で促されるように背中をこずかれ、ミサさまの背中につづく全裸の私。
 背後で何かガサゴソする音の後、少し遅れてリンコさまの足音がつづきました。

 昨日、今日と梅雨の晴れ間、何枚もの大きなガラス窓から夏へと向かう眩いくらいの陽射しが射し込む明るいメインルーム。
 整然と並んだデスクの中でも一際大きい、綾音部長さまのデスクを乗馬鞭で指し示されるミサさま。
 余計なものは何ひとつ出ていない広々としたデスクの上に体育座りを命ぜられた私。
 恥辱のショーの始まりでした。

「まずはさ、ミサミサにナオコの剥き出しマゾマンコ、じっくり視てもらいなよ。アタシはイベントの日にイヤって言うくらい見せられたけど、ミサミサはずっと会場でブタカンだったからね」
 右手にハンディなビデオカメラを持たれたリンコさまが、レンズを私に向けながらおっしゃいました。

「えっ!?さ、撮影されるのですか?」
 思わず自分の膝を抱え込むように体育座りを縮こまらせて、顔だけ向けて抗議しました。

「ナオコのお姉さまとの取り決めだもん。ナオコでアソぶときは、後からチーフも愉しめるように、出来る限り記録しといて欲しいんだってさ」
 ニヤニヤ笑いながらレンズを私の顔に近づけてくるリンコさま。

「ほら、そんなに丸まってちゃ、ナオコの剥き出しマゾマンコ、見えないじゃない?脚を開きなさい」
 おっしゃりながら少し後ろへと移動されるリンコさま。
 代わってミサさまが私の正面に来られました。

 ミサさまの乗馬鞭の柄が、ピッタリ閉じた私の両膝小僧のあいだに割り込んできました。
「開け」
 ドスの効いたアルトなお声とともに、乗馬鞭の柄で両膝を左右に割られます。
「は、はい・・・ど、どうぞ、ご覧ください」
 観念して両足を左右に大きく開きました。

 私の股間の目の前に、ミサさまのお顔。
 ミュールを履いたままなのでヒールの高さの分、腰を前方へ突き出す形になってしまいます。
 両脚をMの字に広げた中心部分の裂け目がパックリ開き、粘膜が空気に触れたのがわかります。

 その部分をメガネ越しにじーっと覗き込んでくるミサさまのつぶらな瞳。
 その様子を横から撮影されているリンコさま。
 視線を少し上に上げると見慣れたオフィス、大きな窓に広がる青い空。

 私、こんな真っ昼間に、こんなところで、こんな格好・・・
 喩えようもない背徳感が甘美な快楽信号へと姿を変え、全身をつらぬきました。

「貴様、どうしてこんなに性器を濡らしているんだ?」
 ミサさまが冷たくお芝居っぽく、尋ねてきました。
 息が内腿にかかるほど、お顔を近づけて。

「は、恥ずかしいからです・・・」
「なぜ恥ずかしい?」
「そんなにお近くから、直子のマゾマンコをご覧いただいているので・・・」
「ふん。だが恥ずかしいのと、愛液を垂らすのはイコールではないだろう?愛液とは、気持ちのいいときに分泌されるものではなかったか?」
「はい・・・直子は、恥ずかしいのが、気持ちいいんです・・・そういう、へ、ヘンタイ女なんです・・・」

「だったらさ、もっと恥ずかしくなれば、もっと気持ち良くなれるんだよね?」
 リンコさまがカメラを構えたまま、会話に割り込んでこられました。
「は、はい・・・」
 レンズに顔を向けてお答えする私。

「なら自分の指で押し広げて、ミサミサにナオコのマゾマンコ、奥の奥まで視てもらったら?」
「えっ?あ、は、はい・・・」

 もはや全身が被虐の塊と化していました。
 今、リンコさまが記録されているテープを、お姉さまがご覧になるんだ。
 それならお姉さまにいっぱい愉しんでいただけるよう、心の底からみじめなマゾドレイに成り切らなくちゃ、と。

 うつむいて、両手を自分の股間にあてがいました。
「そういうときは、何かお決まりのセリフがなかったっけ?」
 リンコさまがからかうようにおっしゃいました。
「あ、はい・・・」
 
 リンコさまのお言葉で、今まで妄想の中で何度も口にしてきた定番のセリフがパッと頭に浮かび、スラッと唇からこぼれ出ました。
「ミサさま、リンコさま。どうぞ、どうしようもないヘンタイ直子の淫らな剥き出しマゾマンコを奥の奥まで、じっくり存分に、ご覧くださいませ・・・」

 両手の指先を裂け目の左右にあてがい、思い切り引っ張りました。
 濡れそぼる粘膜がより広範囲、ヒヤッと外気に晒されたのわかりました。

「意外と小じんまりしているんだな、貴様のマゾマンコ」
 ミサさまが顕微鏡を覗く化学者さんみたいなご様子で、メガネを私が自ら押し広げているマゾマンコに近づけています。

「中の襞がときどきヒクヒクうごめいている。奥はけっこう深そうだ」
「触らなくても熱を持っているのがわかる。ホカホカ湯気さえ見えそうだ」
「愛液が白濁しかかっているぞ。それになんとも牝クサイ臭気を発してる」

 今のミサさまにこそ、あの白衣を着ていただきたい、と思うほど、お医者さまのように冷静沈着なご感想。
 それでも決して、そこに触れてはきませんでした。

「この裂け目の先端でテラテラ光っている豆のようなものは何だ?」
「・・・クリトリス、です」
「ずいぶん腫れ上がっているな?興奮しているのか?」
「は、はい・・・ミサさまの手で虐めていただきたくて、仕方ありません・・・」
 おねだりするような口調になってしまいます。

「ふん。貴様のようなヘンタイ女には、この鞭一本で充分だ。私が直接、手を出すまでもないこと」
 乗馬鞭の先のベロで、クリトリスをチョンとつつかれました。
「あうっ!」
その部分から全身へと電流がほとばしり、思わず腰が浮き、後ろへのけぞりました。

「ははっ、ケツの穴までヒクヒクしてるぞ?この淫乱女がっ!」
 ミサさまの乗馬鞭が左の内腿にパシッ!
「あうぅっ!」

 もはや我慢の限界でした。
 鞭打たれてからだがビクンと跳ねた拍子に、右手の人差指と中指がズブリとマゾマンコの中に挿し込まれていました。

「はうんっ!」
 すぐに二本の指が中でくの字に折り曲がってラビアを擦り始めます。
 同時に親指を上へと伸し、腹で膨らんだ肉の芽を捏ね回し始めます。
 空いた左手はおっぱいへ。
「あーんっ、うふぅーーっぅぅ」

「あーあ。勝手にマンズリ始めちゃったよ。こうなるともう、止まらないだろうねえ」
 呆れたようなリンコさまのお声。
「本当に不治のドマゾ女だな。まさにサカッたメス豚だ。まだ真っ昼間で勤務中だって言うのに」
 冷ややかに蔑みきったミサさまのお声。

 おふたりの嘲りの中、それでも私の指は止まりませんでした。
 おふたりに裸になるようにご命令されてから今まで、溜まりに溜まった発情が、闇雲に出口を求めていました。
「あーーっ、いいっ、いいっー」
 自分の指の動きに合わせて、背中がピクピク波打ちます。

「あれー?ナオコちゃん?イクときは、どうするんだっけ?」
 リンコさまのちっちゃな子に向かって諭すようなお声に、カメラのレンズを上目で見つめました。

「ああん、リンコさまぁ、イッテも、イッテもいいですかぁ?」
「違うでしょ。今ナオコが許しを乞うのは、アタシじゃなくてミサミサでしょ?」
「あうっ、ごめんなさいぃ、ミサさまぁ、イッテ、イッテいいですかぁぁ・・・」

 私の真正面で腕組みして私を眺めているミサさまに向けて懇願したとき、私が乗っているデスクの一番端に置いてあった電話機が突然、電子音を発し始めました。
 三人の肩が同時にビクンと震え、フリーズする中、鳴り響きつづける呼び出し音。

 最初にフリーズが解けたのはリンコさま。
「ちょっとこれ、持っていて」
 私に向けたままのビデオカメラをミサさまに託すと、電話機に駆け寄りました。

「はい。お待たせしました、ダブルイーです・・・はい、あ、ワタクシは大沢です。はい、早乙女は生憎出かけておりまして・・・はい・・・」

 リンコさまが急に丁寧な業務口調でご対応されているのを聞いて、今更ながらに、普段なら今がお仕事時間中なこと、そんな時間に自分があるまじき格好であるまじき行為をしていることを思い知り、せつなさとみじめさがこみあげてきました。
 
 追い討ちをかけるように、ミサさまのカメラのレンズが私のマゾマンコから離れ、今の状況をご説明でもするかのように、オフィス内をグルっと一周舐めた後に、私の顔へと戻りました。
 お電話に応対されるリンコさまのすぐ横で、大股開きのマゾマンコに右手を突っ込んでいる私の姿が記録されたはず。
 お姉さまはこの映像をご覧になって、どういうふうに思われるだろう・・・

「はい、携帯電話なら捕まると思います・・・はい・・・よろしくお願いいたします・・・」
 リンコさまが受話器を置き、私の前に戻ってこられました。

「いいところで邪魔が入っちゃったね、って言っても勤務中なんだから仕方ないか。ナオコ、イッた?」
「あ、いえ。お電話にびっくりしてしまって・・・」
 お電話中ずっと息を殺していたのですが、指はマゾマンコに潜り込ませたままでした。
 粘膜がつづきをおねだりするように、ときどきヒクヒク痙攣するのがわかりました。

「電話がくるたびにナオコがおあずけけ食らうのも面白いけど、アタシらもそろそろ仕事に戻らなくちゃいけないし、手っ取り早くイッちゃってもらおうかな」
 リンコさまが足元に置いていたショッパーから何か取り出しました。

「ほら、これ使いな」
 デスクの上に置かれたのは、先程見せられたイボイボの付いたバイブレーターでした。
「ナオコはこれのレビューも書かなきゃいけないんだから、しっかり感触を味わいながらイキなさい」
 見るからに膣壁をいたぶりそうなその凶々しい形状に、再び首筋がゾゾッ。

「それと、これも使うといい」
 ミサさまの手でデスク上に投げ出されたのは、金属製の小ぶりな事務用目玉クリップ2つ。
「マゾって奴は、苦痛も快楽なのだろう?これで貴様のあさましく勃起した乳首を虐めてもらうがいい」
 ミサさまが今にも舌なめずりしそうなほど嗜虐的なお顔でおっしゃいました。

 目玉クリップを手に取ってみると、かなりバネが強いタイプ。
 これで乳首を挟んで、あの凶々しいバイブを突っ込んで・・・
 考えただけで、イク寸前にまで昂りが蘇るよう。

「まず乳首にクリップを噛ませて、それからバイブを挿入しろ。その後バイブを咥え込んだまま四つん這いになって、ケツを私に向けろ。私が貴様に更なる苦痛を与えてやるから」

 ミサさまのはだけた白い胸元が、うっすら汗で光っていました。
 私も汗びっしょりですが、リンコさまを見れば空調は心地よく効いているはず。
 ミサさまも、私の恥辱にまみれた姿をご覧になって、興奮されているんだ・・・
 屈辱的な状況なのに、なんだか嬉しくなってしまいます。

 目玉クリップを手に取って先端を押し広げ、まずは右の乳首に。
「あうっ!」
 思った以上の挟む強さに思わず眉根が寄ってしまいます。

 激痛の後のジーンとした疼痛がからだを駆け巡る中で左乳首にも。
「あうぅぅっ!」
 痛みの源が2箇所となり、おっぱい全体がジンジンと痺れるような鈍痛の渦に包まれます。
「うわーエロい顔」
 リンコさまのレンズが歪みきった私の顔に近づきました。

 それからイボイボのバイブを手に取り、ゆっくりとMの字の中心へ。
 ミサさまのメガネ越しのまなざしと、リンコさまのレンズ越しの視線が、微動だにせず膣穴に集中しています。
 垂れるほど濡れそぼっていますから、膣壁をザラザラいたぶりながらもズルヅルっと侵入していきました。

「あーーーっ!」
 そのおぞましい感覚に思わず大きく淫ら声をあげる私。
 それにずいぶん奥まで届いている。
 こんなの二、三回ピストンしただけで、すぐイッちゃいそう。

 今すぐに動かしたい欲望を振り切って、お言いつけ通り四つん這いになるべく、からだをひねります。
 左手でバイブを押さえたまま右手をつき、からだを右に回転させて両膝をデスクに。
 お尻をおふたりに突き出した格好でバイブを右手に持ち替え、左腕の上に頭を乗せました。
 重力で垂れ下がったおっぱいの先の目玉クリップふたつが、デスクスレスレにプラプラ揺れています。

「うん。いい格好だ。貴様のケツの穴まで丸見えだぞ。ほら、バイブを動かせ」
 ミサさまの乗馬鞭のベロが左の尻タブをぺろんと舐めました。
「あ、は、はい・・・」
 右手で持ったバイブの根本をゆっくり前後に動かし始めます。

「あっ、あっ、あ、いぃ、いぃ、いぃーっ」
 膣の中をザリザリ暴れる細かなイボイボたち。
 グチュグチュという卑猥な音とともに、右手はみるみる愛液まみれ。
「あっ、いいっ、きもちいいっ!あんっ、あっ、あーっ」
 右手のピストンの速度がどんどん上がってしまいます。

「こんな人前で、あさましい格好で自慰行為を見せつけて、貴様にはそれが、そんなに気持ちいいのか?」
 ミサさまが乗馬鞭のベロで私のお尻をスルスル撫でながら尋ねてきます。
「はいぃ。ごめんなさい・・・私は、直子は、こういうのに感じてしまうヘンタイなんですぅぅ」
 私を左横から撮影されているリンコさまに顔を向け、喘げ喘ぎにお答えします。

「ふん。とんだヘンタイ社員だな。こうされるともっと嬉しいんだろ?」
 パシッ!
 左の尻タブに小気味良い音の一撃。
「あうっ!!!」
 その鮮烈な刺激にお尻がクイッと跳ね上がった瞬間、頭が真っ白になってイッていました。

 それでも動きを止めない私の右手。
 おまけにイッた瞬間に右手がバイブの根本の何かのスイッチを押してしまったらしく、膣内でブインブイン暴れ始めました。
「あーーっ、いやーーっ、もっと、もっとーーーっ、ミサさまーーっ」
 頭で考える前に唇が懇願していました。

「何をもっとなんだ?」
「お尻にもっと、もっと、鞭をくださいーーっ、ぶってくださいーーーーっ」
 本能からの欲求でした。
 お尻を叩かれることで痛みと快感が重なり合って、上限だと思われたエクスタシーが、より濃密な高みへと導かれるように感じていました。

 ピシッ!バチッ!ピシャッ!
 ヒュンという身の毛もよだつ前奏を伴って奏でられる打擲音。
 その刺激がもたらす苦痛と膣内のバイブによる圧倒的な快感とのほろ苦くも甘美なハーモニー。

「もっとぉ、もっとぉ、もっとぉーっ!!!」
「ミサさま、リンコさま、イッてもいいですか?ィきます、ィきますぅ、イッちゃいますぅ・・・」
 私のからだは、乗馬鞭という指揮棒に従って奏でられる楽器のように、何度も何度もオーガズムという歓喜の旋律を歌い上げました。

「やれやれ、やっとお目覚めのようね」
 気がつくと私は、ベトベトに濡れそぽった台の上に突っ伏していました。
 ぼんやりとした視界に見えるリンコさまとミサさまのお姿。

 そうだ、ここはオフィスで、私はオフィスでオナニーショーをしていたんだ。
 ガバッと起き上がると、お尻がヒリヒリ。
 お尻の上には濡らしたタオルが掛けられていました。

「ごめんね。ちょっとやりすぎちゃったかな?」
 ミサさまがきまり悪そうなお顔で私の顔を覗き込んできました。
「そんなことないよ。ナオコが、もっともっと、っておねだりしてたんだから」
 リンコさまが相変わらずビデオカメラを構えたままおっしゃいました。

「ナオコはね、ミサミサに鞭で叩かれながら何度も何度もイッて、そのうちにパタッと動かなくなっちゃったんだ」
「ヤバイ、と思ったけれど肩やお腹はビクンビクン上下していたし、息もハアハアしていたから、しばらく様子を見ていたら、今復活したってわけ。3、4分くらいかな、ナオコの意識トンでたの」

「一部始終は全部、このビデオで撮ったから、ナオコのお姉さまに後で見せてもらうといいよ。それにしても凄かったね、ミサミサ?」
「うん。ボクの直子を見る目が180度変わった。聞いていた以上のドマゾぶりだったから、これからもいろいろ愉しめそうで、嬉しい」
 素に戻られたミサさまが、やっとカメラを降ろされたリンコさまをじっと見つめながらおっしゃいました。

 なんだかおふたり、やけにピトッと寄り添われている気がします。
 ひょっとすると私の痴態にアテられて、おふたりもムラムラされてきちゃったのかな?
 そんなことをふと思い、同時にお姉さまのお顔が頭に浮かびました。
 そう言えばお姉さまとの最初の出逢いでも、オナニーショーをご披露して、最後に気絶しちゃったんだっけ・・・

「それにしてもひどい有様だこと、床もアヤ姉のデスクも」
 リンコさまに促されてデスクを見ると、辺り一面ビチャビチャのベトベト。
 周辺の床にまで水溜りが出来ていました。

「なんで床にまで・・・」
 思わず口走った疑問にリンコさまが笑いながら応えてくださいました。
「あれ?シオ吹いたの憶えてないの?アタシら横にいたから直撃は免れたけど」

「アタシらは仕事に戻るから。ナオコが自分で汚したんだから、自分で後始末なさい」
「とくにアヤ姉のデスクは、念入りに拭いておかないと。あの人鼻もいいからね。ヘンな臭い残しておくと後から何言われても知らないよ」
「モップやバケツは給湯室ね。オフィス外に出るときは白衣のみ。オフィスに戻ったら当然脱いで全裸」
「アタシらは今日も遅くまで残るから、退社するとき内線ちょうだい。それまではずっと全裸厳守。監視カメラがあることを忘れないでね」
 リンコさまにキビキビと指図され、私はヨロヨロとデスクから降りました。

「ナオコのからだもベトベトだね。水汲んできて、よく拭いてから帰りなさい。クリップは外さなくていいの?」
 リンコさまのお言葉で自分の胸を見ると、ふたつのクリップがまだしっかり噛み付いていました。
 これを外すとき、すっごく痛いだろうな・・・
「あ、大丈夫です。後で外しますから」
 なぜだかおふたりにその姿を見せたくない気がして、そう答えてしまいました。

「ふーん。本当に痛いの、好きなんだねえ。ま、いいけどさ。あともうひとつ忠告しておく」
 リンコさまがイジワルそうに笑って私の下半身を指さしました。
「今夜のシャワーはぬるめにしたほうがいいよ。ナオコのお尻、まんべんなく真っ赤っ赤に腫れ上がってるから」
 そのお言葉を聞いた途端に、お尻全体がジンジンヒリヒリと熱く疼いてきました。
 
 おふたりでお顔を見合わせ愉快そうに笑い合い、肩寄せ合って仲良くデザインルームへと消えていくリンコさまとミサさま。
 時刻はそろそろ午後の4時半になろうとしていました。


非日常の王国で 05


2016年10月23日

非日常の王国で 03

「あ、私出ます」
 マゾの服従ポーズを解き、今度はフルヌードでデスクに駆け寄りました。
 丸出しのおっぱいがプルプル揺れました。

「お待たせいたしました。ダブルイーです、お電話ありがとうございます・・・あ、しほりさま。先日はお疲れさまでした・・・」
 受話器から聞こえてきたお声は、谷口しほりさま。
 イベントのとき、ヘアとメイクを担当してくださった女性です。

「あ、はい。少々お待ちください」
 お電話をいったん保留にして、おふたりのほうへ向き直りました。
「リンコさまにお電話です。しほりさまからです」
「あいよ。しほりん、何の用だろ?」
 リンコさまがツカツカと近づいて来られ、受話器をお渡ししました。

「ごきげんよう。先日はお疲れー・・・うん、うん・・・へー・・・」
 おしゃべりを始められたリンコさまに場所をお譲りし、ミサさまの前に戻ります。
 ミサさまが無言でじっと見つめてこられるので、間がもたない私は、対峙したまま自然と服従ポーズを取ってしまいます。

「へー、そっか、良かったじゃない。うん・・・不幸中の幸いってやつだね・・・」
 リンコさまの元気良いお声を背中に聞きながら、ミサさまの舐めるような視線を全身に浴びていました。
「そうだよ・・・うん・・・今ちょうどね、ナオコを裸にして、アソんでたとこなんだ・・・うん、ミサミサとふたりでさ・・・」

 リンコさまのお口から私の名前が聞こえギクッとした瞬間、ミサさまの乗馬鞭の先が私へと伸びてきて、おへそから下腹部までをベロでスルッと撫でられました。
「ひゃぁんっ!」
 不意を突かれて背筋をゾクゾクっと快感が駆け上がるとともに、淫らな声が洩れてしまいました。

「聞こえた?・・・あはは・・・相変わらずドマゾ全開でしょう?・・・うん、社長室で真っ裸。例のポーズでミサミサにイタズラされてる・・・」
 リンコさまが愉しそうにしほりさまにご報告されているあいだ、ミサさまの乗馬鞭の先は私のおっぱいへと移動し、柔らかいベロで固く尖った乳首を小刻みにプルプル、揺らすように愛撫されていました。

「んっ、むっ、んあっ、うっ、うっ・・・」
 くすぐるみたいに小刻みに震える乗馬鞭のベロが与えてくださる快感に、えっちな声を我慢しようと唇を噛み締めているのに、どうしても喉の奥が唸って息が洩れ、はしたない音声となってしまいます。
 ミサさまは乗馬鞭を動かしながら、薄い笑みを浮かべ、無言で私の顔を見つめています。

「大丈夫よ。チーフからもアヤ姉からもお墨付きもらったし。ナオコはここでは、そういう扱い、ってことに、社内的に決まったの・・・あはは、愉しみでしょ?・・・」
 ミサさまのベロは、私の両腿のあいだに移動していました。

 ベロでマゾマンコを覆うように押し付けられ、ベットリ濡れて滑りの良くなったベロが私の股間をいたぶり始めます。
 お尻の割れ目に、恥丘に、下腹部に、私の愛液を肌になすりつけるように乗馬鞭のベロが肌を這い回ります。
 鞭の柄をマゾマンコの裂け目に食い込ませるみたく、ギュウギュウ押し付けられます。
「あっ、あんっ、あうっ・・・」

 裂け目に食い込んだまま擦るように前後に動く乗馬鞭の柄が、腫れ上がったクリトリスをでたらめに潰してきます。
 踏ん張った両脚がプルプル震え始めました。
「あっ、いやっ、だめっ、あ、あっ、あーっ・・・」

「うん。近いうちに連絡するから。じゃあね、またねー、ごきげんようっ」
 リンコさまが受話器を置いた途端、ミサさまの乗馬鞭の動きが止まりました。
 スッと引かれた乗馬鞭を私の前に差し出すミサさま。
 グリップ以外、満遍なく濡れてテラテラ光っていました。

「だめじゃんナオコ、人が電話中に勝手にイこうとして。ミサミサも抜け駆けはずるいよ」
 リンコさまがニヤニヤ笑いながら、ソファーの前に戻って来られました。

「だいたいミサミサが、ボクもナオコのオナニー見たい、って言い出したのが今日の発端じゃん?計画通り今日はオナニーさせてイカせようよ」
「うん。ごめん。直子があまりにもエロいから、ボクも我を忘れた」
 素直に謝られたミサさまは、私のおツユで汚れた乗馬鞭を、私がさっき脱ぎ去ったピンクのショーツで丁寧に拭い始めました。

「まあ、こうやって寸止めで焦らしつづけるほど、どんどん乱れてヘンタイ度も増して面白いから、それもアリなんだけどね」
 快感の余韻が薄れていくのをもどかしく思っている今の私を、まさに見透かしたようなリンコさまのお言葉。

 私、これからおふたりの前でオナニーさせられるんだ・・・
 ソファーに転がったえっちなお道具にチラッと目を遣って、ゾクゾクっと震えがきました。

「今の電話はさ、絵理奈さんね、今週末にも退院出来そうなんだって。術後も順調で傷跡もほとんど残らなくて済むから、お仕事にも支障は無いって」
 本当に良かった、という感じで柔らかな表情のリンコさま。

「感謝している、って代役されたモデルさんに伝えてくれって言ってたってさ。それとしほりんが、約束忘れないでね、って」
 リンコさまが服従ポーズの私を真正面から眺めつつ、おっしゃいました。

「あ、はい。絵理奈さま、お元気になられてよかったです・・・」
 夥しい粘液の水溜りを足元にみつけ、羞恥に染まりながらもなんとか、そうお答えしました。

 リンコさまは、私とミサさまを交互に見て、それからふと時計に目を遣りました。
 時間は午後の3時ちょっと前。
 こんな平日の昼下がりに私ひとりだけ、なぜオフィスで全裸になっているのでしょう?
 背徳感がザワザワっと、背筋を駆け上がっていきました。

「さあ、電話で予定外に時間くっちゃたし、ナオコも疼いちゃって早くオナニーしたいだろうから、今日持ってきたプレゼントに関して、ちゃっちゃと説明しちゃうね」
 リンコさまが、とりあえず話題を切り替えよう、みたいな感じで、少し早口でおっしゃいました。
 
「半分は業務連絡みたいなもので、これからのナオコのオフィスライフにも大いに関わる大切なことばかりだから、ちゃんと聞いて」
 無理に作ったようなわざとらしく真面目なお顔のリンコさま。

「あ、はい・・・」
 でも、きっとひどく恥辱的なことばかりなのだろうなと予想してしまうドエムな私。

「まずは。これね」
 リンコさまがソファーからつまみ上げて差し出してきたのは、見覚えのあるブラジャーとショーツ。

 それらはイベント当日、私が自宅から身に着けてきて、お姉さまのご命令によりオフィスで自ら脱ぎ捨てて以来、ずっと行方不明となっていた下着類でした。
 イベント後に戻された荷物の中にも、スーツやブラウスはちゃんと入っていたのですが、パンストと下着類だけ無く、きっと私がずいぶん汚しちゃっていたから捨てられたかな、と思っていました。

「ナオコって、春先にチーフがマケリサでランジェリーショップに出てたときに、服を脱がずに外せる下着が欲しい、って相談したんでしょ?」
「アタシ、それ聞いて驚いちゃった。そういう発想がさ、思いつかないもん。シャイな露出願望マゾじゃなきゃ。目からウロコだったよ」
「そういう発想、大事だと思うから、敬意を表して改造してあげたんだ。今後うちのブランドでも作って売り出すことになったし」

 手渡された下着を広げてみました。
 ブラジャーは左右のストラップとカップをそれぞれつなぐ部分が、ショーツは左右の脇部分が、小さなホックで取り外し出来る式に改造されていました。

「それなら、ちょっと服の中に手を潜り込ませてモゾモゾするだけで、簡単に外すことが出来るでしょう?ボトムがパンツでも、わざわざ脱がないでショーツだけウエストから出せるし」
「いつでも好きなときにノーブラノーパンに早変わり。これ、意外と当たりそうな気がするんだ。世の中にシャイなヘンタイって多いから」
「あと、ナオコ用の特別サービスも付けといたんだ。ショーツのクロッチ」

 リンコさまの意味ありげな視線に促され、ショーツを裏返して見ました。
 クロッチ部分に当たるところが小さく二重になっていて、上部分だけ空いたポケット状になっていました。

「そこにローターを入れて穿くと、ローターがちょうどナオコのクリットの上に来るはず。振動直撃。嬉しいでしょ?」
 からかうように私の顔を覗き込んでくるリンコさま。

 私が今までしたことのあるローター遊びは、膣の中に入れてのお散歩とかばかりでした。
 それだってかなり辛かったのに、こんなクリトリスにピッタリ密着する形で振動を受けたら・・・
 おそらく震えだした瞬間に堪えきれず、しゃがみ込んでしまうことでしょう。

「エロい顔になってるねえ。試してみたいんでしょ?でもだめ。下着は帰るときに身に着けなさい。今日は退社までマッパのまま」
 リンコさまがイジワルクおっしゃいました。

「それで、今日脱いだナオコの下着はアタシらがまた、改造してあげる。それをくりかえして、ナオコの手持ちの下着全部、えっちに改造してあげるから」
 私の手から改造済みブラとショーツを取り上げたリンコさまは、壁にハンガーで掛けた私のリネンのジャケットのポケットにそれらを押し込みました。

「次は、ナオコにやってもらう新しい仕事のこと。うちのネットショップ、アダルティなラブトイズを本格的に扱い始めたのは知ってるよね」
「はい・・・」

 イベント前のある日のミーティングで綾音部長さまから、そんなお話がありました。
 このオフィスビルからも近い地下鉄の駅近くのお部屋を借りて、そこを通販部門のオフィス兼倉庫にすること。
 そこをネットショップの拠点として、里美さまが責任者として赴任されること。
 ゆくゆくはアンテナショップとして路面店での営業も視野に入れていること。
 などを聞かされていました。

「それでナオコにはね、ラブトイズのモニターをしてもらうことになったんだ。モニターってわかる?」
「あ、はい。なんとなく・・・」
「簡単に言うと、使い心地の感想とか、ここが良かったとかを言葉にしたレビューを書いて欲しいんだ。それをショップの商品ページに添えるから」

「ナオコなら、すでにいろんなオモチャの経験ありそうだからって、社内満場一致で決定したんだ。ナオコがいないあいだに」
「うちはレズビアン、もしくはバイ女性限定のショップだから、そういう視点で、ナオコが使った印象を書けばいいだけ。最初はこの3点」

 リンコさまに促されデスクのほうへ移動して、デスク上に並べられたえっち用オモチャ。
「こっちのふたつはバイブレーター。充電でも電池でも使えるうちのオリジナル」

 どちらも丸っこくて少し反り曲がったソーセージのような形状で、女子ウケの良さそうな可愛らしくポップな色をしています。
 でも、こういった類のオモチャを使った経験のある者なら、一見して頬が赤らんでしまうほど、外見が刺激的でもありました。

 明るいグリーンのほうのは、ゴーヤの表面のようなトゲトゲと言うかイボイボと言うかがびっしり根本まで施されていました。
 触ってみるとシリコンでぷよぷよ柔らかいのですが、これを挿れて、膣壁を擦られる感触を想像しただけで、首筋の裏がゾゾッとわなないてきちゃいます。

 もうひとつのパステルブルーのほうは、長めで先端がやや曲がっている形状で、いかにも奥まで届きそうな感じ。
 おまけに表面がゆったり波打つ感じに凹凸があって、いかにも膣内でピッタリとフィットしそうな感触。
 
「どっちも振動するだけじゃなくて、根本のスイッチでうねったり、上下にピストン運動とかもする仕様なんだ」
 こんなので奥まで突かれたら、間違いなく私はシオを吹いてしまうことでしょう。
 手でさすっているだけでも、なんだかマゾマンコが感じてきちゃう。
 思わずツバをゴクリと飲み込みました。

 あともうひとつは、リモコンローターみたい。
 見慣れた卵型のローターと、コントローラーらしき箱。

「このローターはね、電波モードが選べて、ノーマルならこのコントローラーで動かすのだけれど・・・」
 リンコさまがおっしゃりながら箱を取りスイッチを押すと、デスクに置いたタオルの上でローターがヴーンと唸り始めました。
 すぐにスイッチを切られるリンコさま。

「こっちのハプニングモードにすると、街中に溢れているあらゆる電波に反応しちゃうんだ」
「だから、これを装着して街に出たら、不意に震えだしちゃうことがままあるってわけ」
「たとえば自動ドアのセンサー電波とか、街中のワイファイ電波、近くにいる人の携帯電話の送信、着信電波にも反応するし、もちろん誰かが近くでリモコンローター遊びをしていたら、その電波にも」

「違う電波を受信するたびにオンとオフをくりかえして、震え方も変わるから、一度震えだしたら取り出して電池を外すまで、自分ではコントロール不能になっちゃう」
「街の中でそこら中の見知らぬ人からマゾマンコを陵辱されているみたいで、ナオコみたいなドエムにはたまらないでしょう?」
 リンコさまがまた、からかうようなお顔で私の顔を覗き込んできました。

「この3つのアイテムを使用してみた感想レビューを、200字以内で今週中に書き上げて、メールで里美さんに提出すること。あとの指示は里美さんに従って」
「ゆくゆくは、新アイテムの開発の仕事にも人柱として参加することになるから、今からえっちなアイデア、たくさん考えておくように、って、これはナオコのお姉さまからの伝言ね」
「もちろんこれは仕事だから、勤務中に試すのもおーけー。バイブもローターも。つまりナオコは今後、勤務中に堂々と仕事としてオナニーが出来る身分になったってわけ。嬉しいでしょ?」

 リンコさまがニッと笑って、ソファーのほうへと戻られます。
 私も後を追いました。

「それで最後に、これね」
 リンコさまのお言葉でミサさまが、ソファーの上に散らばっていた機械やコードなどを手際よく分け始めました。

「今日からこの部屋は、アタシたち開発ルームの管理下に入るの。これはウエッブカメラで、この室内の様子はナオコがいるときに限って、すべて開発室のモニターに映し出される仕組み。つまり監視カメラ」
「これはチーフも了承済み。チーフには、この部屋に取り付けたカメラをすべて無効にする操作方法を伝えてあるから、チーフのプライバシーは守られるけれど、ナオコには、この部屋でのプライバシーは、今日から無い」

 リンコさまがご説明してくださっているあいだ、ミサさまがテキパキとカメラを設置していました。
 デスク前のパソコンモニターの上に一台、お部屋の対角線上に窓際天井近くに一台、壁際天井近くに一台、そしてデスクを真横から映す形で一台。

「昨夜配線は済ましちゃったから、カメラ繋げるだけだし、すぐ終わるよ」
 リンコさまがショッパーの紙袋を丁寧にたたみながらおっしゃいました。
 ミサ様が最後にパソコンモニター上のカメラから伸びたコードをパソコンのUSBに繋いで、ニコッと嬉しそうに笑いました。

「ちょっとあっちのモニター確認してくる」
 ミサさまがタッタッタとドアを出て開発ルームに向かわられたよう。
 すぐに戻って来られました。
「おっけー。バッチリ」
 ニコニコ顔のミサさま。

「これでアタシらが開発ルームで作業しているときでも、ここでナオコが何をしているか、いつでも監視出来るようになったってわけ」
「アタシらが忙しくてこんなふうにアソんであげられないときでも、気が向いたらメールや電話で命令してあげるから、ちゃんと言いつけを守ること」
「は、はい・・・」
 
 つまり、おふたりが対面で虐められない状態のときでも、全裸になりなさい、って電話やメールで一言ご命令されたら、私はひとり、いそいそとお洋服を脱がなくちゃいけない、ってこと?
 それで、カメラで監視されているから、ご命令に背いて脱いだフリして嘘をつくことも、絶対に出来ない・・・
 
 私、なんてみじめな境遇になってしまったのだろう・・・
 まさしくオフィスの慰み者状態。
 私の被虐メーターが振り切れて、頭がクラクラするくらいの恥辱感が全身を火照らせました。
 
「それで、ナオコが好きそうな服、見繕って持ってきたから。このクロゼットに掛けておく」

 ひとつだけまだ膨らんでいたショッパーから次々とお洋服を取り出し、謎のクロゼットにせっせとしまい込むミサさまとリンコさま。
 どんなお洋服なのかはわかりませんが、きっとキワドイものばかりなのでしょう。

「アタシらに、今日はこれを着て過ごしなさい、って言われたら、必ず着替えること。ごまかそうとしても監視カメラでちゃんと見てるからね」
「それで、来客のとき、上に羽織っていいのは今のところ、その白衣だけ」
 イジワルくおっしゃるリンコさまに、黙ってうなずくしかない私。

「さあ、これで準備は整った、っと。ドマゾ女ナオコのオフィスセイドレイ生活のはじまりはじまりー」
 リンコさまが茶化すみたいなお芝居声で、高らかに宣言されました。
「記念すべき初日のフィナーレに、ミサミサリクエストのオナニーショーをじっくりと見せてもらいましょうか」

「せっかくだから、こんな狭い金庫部屋じゃなくて、広々としたメインルームでやってもらおうかな?アヤ姉のデスクの上なんかステージぽいじゃん、どう?」
 リンコさまがイタズラっぽくミサさまにお顔を向けました。

「いいアイデア。明るくてじっくり視れるし、鞭も振るいやすそうだ」
 
 ミサさまの表情からあどけなさが消え、お声が低くなり、乗馬鞭が宙空をヒュンと切り裂きました。
 リンコさまおっしゃるところの、多汗症のドSで男嫌いな裏生徒会副会長、というコスプレキャラが、ミサさまに再び憑依したようでした。


非日常の王国で 04

2016年10月16日

非日常の王国で 02

「やっと一息つけたからさ、息抜きしに来たよ」
 外国のロックバンドのロゴが大きく描かれたダボッとした黒いTシャツにジーンズ姿のリンコさまがニコッと笑いました。
「あっ、お疲れさまです」
 ご挨拶しつつお隣のミサさまのお姿を見てびっくり。

 高校の制服ぽいキャメル色のブレザーにチェック柄のミニスカート姿なのですが、Vゾーンをブラウスごと胸元を大きく開いて、その豊満なおムネの谷間を惜しげもなく大胆に露出されていました。
 ハーフカップらしき黒いブラジャーの縁まで見えています。
 足元はピンヒールのロングブーツ、赤いリボンを首に直接巻いて結び、髪はひっつめにして頭頂部でお団子にまとめ、フォックス型のメガネの奥から私を睨みつけるようにジッと見つめています。

 ミサさまのことですから、おそらく何かのマンガかアニメのコスプレなのでしょうけれど、私には元ネタが何なのかわかりませんでした。
 でも、ミサさまのダイナマイトボディ、そのたわわなおムネの真っ白な谷間を間近に見せつけられ、あまりの艶めかしさに思わず息を呑んでしまいした。

「あらためてイベント、お疲れさま。ナオコのおかげでアタシたち、休む暇無しの大繁盛で感謝してるよ」
 リンコさまがイタズラっぽく微笑まれながら、お部屋の奥へと進まれ、窓際のソファーにお荷物を置かれました。
 ミサさまも無言でリンコさまにつづかれます。

「で、今日はさ、そんなナオコへの感謝と労いの気持ちを込めて、いろいろプレゼントを持ってきたんだ。ナオコのこれからのオフィス勤務がより愉しくなるようなものばかり」
「あ、はい、それは、あ、ありがとうございます・・・あ、何かお飲み物でもお持ちしましょうか?」

 以前は、ナオっちとかナオちゃんとか、親しみを込めて呼んでくださっていたのに、ナオコ、という呼び捨てが定着してしまったリンコさま。
 そんなリンコさまの入口でのニコニコ顔が、お部屋に入った途端どんどんニヤニヤ笑いへと移行している気がして不穏な空気を感じている私。
 間がもたなくて冷蔵庫のほうへと一歩踏み出した私の肩を、リンコさまの右手ががっちり掴みました。

「飲み物なんていいから。それよりもとりあえず、裸になってくれる?」
 
 さも当然のことのように、あっけらかんとおっしゃったリンコさま。
 ハダカ、という単語が耳に届いた途端、全身がズキンと疼きました。

「えっ!?今ですか?なんで裸にならなくてはいけないのですか?」
 股間の粘膜がザワザワさざめき出したのを自覚しつつ、恐る恐るお尋ねしました。

「なんでって、ナオコ、今日もチョーカーしているじゃない?チョーカー着けて出社した日は、アタシらがどんなエロい命令をしても絶対服従、そういうルールじゃなかったっけ?」
 完全にニヤニヤ笑いで嗜虐的なまなざしとなったリンコさまが、とても愉しそうにおっしゃいました。

「プレゼント持ってきた、って言ったでしょ?ナオコが好きそうな衣装とかもあるから、着て見せて欲しいしさ」
 両腕を胸のところに組んで睥睨するように私を見つめてくるおふたりに気圧されて、私は観念しました。

「わ、わかりました・・・」

 やっぱり私はこれから、勤務中でもスタッフのみなさまの慰み者としてもてあそばれることになるんだ・・・
 自分の中に渦巻く被虐願望が勢いづき、常識的な理性の元で健全に保たれている日常的なオフィス空間がぐにゃっと歪んで、非常識な非日常的恥辱空間へと侵食されていく気がしました。

 その日の私の服装は、シンプルな白のシャツブラウスにグレイの膝丈タイトスカート、素足にチョーカーと同じえんじ色のアンクルストラップミュール。
 これからの私は、スタッフのどなたかが気が向いたとき、いつでもどこでも否応なく裸にされてしまう、そんなみじめで恥知らずな存在にならなくていけないんだ・・・
 そんなことを考えながら、少し震える指をシャツブラウスの一番上のボタンにかけたときでした。

「違うだろ?」
 お部屋にいらしてから一言もお口を開かなかったミサさまのお声でした。
 それも、普段とはまるで違う、咎めるような突き放すような、とても冷たいアルトなご発声。
 ミサさまは、いつの間にかお姉さまのピンクの乗馬鞭を片手に持たれていました。

「今日のミサミサはね、すっごく怒ってる。それで、すっごく張り切ってる」
 リンコさまが愉快そうにお口を挟んできました。

「怒ってるのはね、ほら、この子、イベント本番中はパソコンにつきっきりで司令塔状態だったじゃない?だからアタシらが部室や楽屋でナオコにオシッコさせたりオナニーさせたりしてアソんでだって聞いて、激おこなの。ボクも一緒にやりたかったー、って」
「だから今日はいっぱい虐めてやる、って張り切ってる。ミサミサってこう見えて、同人で書くSSとか、かなりのドS炸裂だから、覚悟しといたほうがいいよ?」

 嬉しそうに唇の両端を上げて忠告してくださるリンコさま。
「今日のこのコスプレだって、超レアものだよ。多汗症のドSで男嫌いな裏生徒会副会長。普段のコスプレイベじゃ、絶対ここまでしないもの」
「もしもレイヤーとしてのミサミサファンのオトコどもがこの姿見たら、大喜びでボタボタよだれ垂らしまくっちゃうはず」

 リンコさまのご説明が終わるのを待っていたかのように、ミサさまの、コスプレされているキャラの口調をおそらく真似されているのであろう、まさにSMの女王様のような冷たいお声がつづきました。

「貴様はマゾなんだろ?恥ずかしい姿を視られて悦ぶヘンタイ露出狂女なのだろう?」
 一歩前へと踏み込まれたミサさまの剥き出しの白い胸元が眼前に迫り、頭がクラクラしちゃう。

「あ、はい・・・その通りです・・・」
 履かれているブーツのヒールが高いので、小柄なミサさまでも私と同じくらいの目線となり、わざとなアルトのお声とも相俟っての凄い迫力な女王様ぷりにタジタジ。

「だったら視られて一番恥ずかしい部分を最初にさらけ出すのがマゾ女の作法ってものだろう?貴様の一番恥ずかしい部分はどこだ?」
 メガネ越しの冷たい視線に促され、私の目線はうなだれて自然とスカートの中央付近に。
「ふん。やっぱりそこなんだな。ならば下半身から脱ぎ捨てるのが貴様にはお似合いだ」
 ミサさまの乗馬鞭の先がタイトスカートの裾を揺らしています。

「は、はい・・・わかりました・・・」
 ブラウスの首元で止まっていた両手を下ろし、スカートの後ろホックを外しました。
ジッパーをジジジと下げるとウエストを締め付けていた感触が緩み、引力に引かれてストンとスカートが足元に落ちました。
 ピンク色のレースショーツが丸見えになります。

「し、下着も、ですよね?」
 更なる恥辱を味わいたくて、わざとお尋ねしてみました。
「あたりまえだろうっ!」
 間髪を入れずミサさまの怒声とともにヒュンと乗馬鞭がしなり、左太腿の側面を乗馬鞭のベロが痛打しました。

「あうっ!」
 パチーンと小気味よい音がした割にはそんなに痛くない、と思ったのも束の間、打たれた箇所が徐々にジンジンヒリヒリ疼いてきました。

 両手をショーツのゴムにかけます。
 ミサさまとリンコさまは腕組みして、じーっと私の下半身に注目されています。
 
 ショーツを膝まで一気にずり下ろしました。
 股間から短い糸がツツッと引いて、すぐ切れたのが見えた気がしました。
 膝上で引っかかったままの、だらしないピンクのショーツ。
 両膝を内股気味に閉じると、そのピンクの布片は足元までハラリと落下していきました。

「それを足元から抜いてこちらへ渡せ。靴は脱がなくていい」
 ミサさまからの、乗馬鞭の先で今脱いだショーツとスカートを指しながらのご命令。
 前屈みになってミュールのヒールにひっかからないようにショーツとスカートを足元から抜くと、リンコさまが素早く私の手からそれらを奪い去りました。

 恥丘の上10センチくらいまでにしか届かないブラウスの裾から下はスッポンポン。
 そんな中途半端な格好でオフィスのお部屋にいるという事実が、凄く淫靡に思えます。

「ああ、やっぱり濡らしてる。本当スケベなんだから」
 リンコさまが私から奪い去ったショーツを広げ、クロッチ部分をこちらに指し示されました。
 クロッチの穿いたらちょうど真下くらいに当たる部分に、濡れて濃いピンク色に変色したシミが数センチ出来ていました。

「ミサミサのドSっぷりにもう濡らしちゃってるんだ。ホント感度がいいと言うか、ドスケベって言うか」
 私が汚したショーツのシミを私の眼前に見せつけながら、呆れ声でおっしゃるリンコさま。
 喩えようもないみじめさ、恥ずかしさ・・・

 そのとき唐突に、私のデスクの上の電話が呼び出し音を奏で始めました。
 その場にいた誰もが一瞬、ビクンとたじろぎました。
 二回、三回と鳴り響く電子音。
 ふっと気づいたようにリンコさまが私を見ました。

「ナオコ、出なさい」
「は、はいっ」
 あわててデスクに駆け寄りました。
 剥き出しの両内腿のあいだをスースー風が抜けるのがわかりました。

「大変お待たせいたしました。ダブルイーです、お電話ありがとうございます」
 立ったまま受話器を取り、おふたりに裸のお尻を突き出してのご対応です。

「はい。生憎、早乙女も渡辺も出張中でして・・・はい、お電話のあったことを伝えておきますので・・・はい・・・」
 お電話はお取引先のひとつのご年配の女性からでした。
 綾音部長さまと至急にご連絡が取りたいとのことなので、お電話を終えた後、社のSNSに伝言メモの書き込みをしなければなりません。

 中腰になってパソコンを操作しながら、股間の奥がジンジンと痺れるように感じていました。
 普段何気なくこなしていた通常業務を、こんな破廉恥な姿で社の先輩かたに見守られながら行なっている、というアブノーマルな事実が私を凄く興奮させていました。

 お電話へのご対応中も、普段通り愛想の良い声を発しながらも、でも私今下半身丸出しなんです、剥き出しの女性器を空気に晒してご対応させていただいています、とお相手の女性に向かって心の中で何度も呟いていました。
 ミサさまたちに向けて突き出している裸のお尻の割れスジも、なぜだかジリジリと開いてしまう両足の足幅に比例して広がってしまうのです。

「下半身スッポンポンのクセに普通に仕事しているの見るのって、なんだかシュールでめちゃエロいね。アヌスまで丸見えだし」
 リンコさまも私と同じ気持ちになられたようです。
 そのお言葉にますます悶々と疼いてしまいます。

 パソコン操作を終え、おふたりのほうへと向き直ると、自然と両手が後頭部へと上がっていました。
「あーあ。ナオコ、完全にドマゾモードに入っちゃった」
 リンコさまがからかうようにおっしゃいました。

「よし。では脱衣をつづけろ。貴様のようなマゾ女には不要なその布っきれも、さっさと脱ぎ去れ」
 乗馬鞭が宙空をヒュンと一閃し、ミサさまのお芝居も再開です。

「はい・・・失礼します」
 後頭部に添えていた両手をゆっくり下ろし、ブラウスのボタンを外し始めます。
 ブラウスの両袖を抜いてから両手を背中へ回し、ブラジャーのホックも外しました。
 ブラのカップがハラリとずれて、見ているだけでも痛々しいほどに尖りきった両乳首が外気に晒されました。
 事実、私のふたつのバストトップはズキズキと、やるせない官能を股間と脳内に送り込んできていました。

「やっとマゾ女らしい格好になったな。いいか?貴様は今日一日退社まで、その姿で勤務しろ」
 首にえんじ色の首輪型チョーカー、足元にチョーカーと同じような色のアンクルストラップミュール以外全裸となり、後頭部に両手をあてがう私の裸身を、ミサさまが舐めるようにご覧になりながら冷たいお声をぶつけてきました。

 えっ、何か着せてくださるのではないの?
 たぶん破廉恥な衣装なのでしょうけれど、プレゼントを着せてくださるっておっしゃったのに・・・
 社長室のドアは開けっ放し。
 高層ビルとは言え、畳一枚よりも大きな何枚もの窓もカーテン全開でした。

「返事は?」
 ヒュンと一閃したミサさまの乗馬鞭のベロで、今度は右太腿の側面を痛打されました。
「あうっ!は、はいっ!」
「それから今後、貴様が服を脱ぐときは、今の順番を厳守。何があってもだ。守らなければ罰を与える」
「はいっ。わかりました」

「ところで貴様はその、一番視られたい恥ずかし場所のことを、自分で何と呼んでいる?」
 ミサさまの乗馬鞭の先が私の股間を指しました。
「えっ?えっと・・・」
 突然のあんまりなご質問に、口ごもる私。

「だからその、裂け目から牝クサイよだれを垂らしている貴様の恥知らずな女性器のことを、自分では何と呼ぶのか聞いている。二度も言わせるなっ!」
 バチンとまた右太腿を痛打されました。
「はうっ!」
 痛みとともに粘膜が痺れ、性懲りもなく恥知らずなよだれがトロリ。
 それにしてもミサさまってば、乗馬鞭の扱いがお上手。

「は、はい・・・ごめんなさい・・・マ、マゾマンコです・・・お姉さま、あ、いえ、チーフが名付けてくださいました」
「正確に言うと・・・な、直子の剥き出しマゾマンコ、とチーフが名付けてくださいました・・・わ、私も、気に入っています」

 マゾの服従ポーズのまま、ジンジンしている腿の痛打痕を意識しながらお答えしました。
 内腿をはしたないよだれがダラダラ垂れていきます。

「ふーん。剥き出しマゾマンコか。さすがチーフ。上手いこと名付けたものだ。貴様の無毛な恥知らず女性器にピッタリの名だな」
 ミサさまが乗馬鞭のベロで私の股間をさわるかさわらないかくらいにスリスリもてあそびながらおっしゃいました。
「あと、貴様はチーフのことを、私たちの前でも、お姉さま、と呼んでいいぞ。そのほうが萌える」
「あっ、ミサさま、そ、そこは・・・あんっ!」
 ベロの先が腫れて飛び出した肉芽にコソッと触れ、思わず淫ら声を洩らしてしまいました。

「神聖な職場でいやらしい声を出すな。がまんしろっ」
 すかさず左腿にバチンと乗馬鞭。
「あうっ!はいっ!申し訳ございません」
 内腿を滑るよだれが止まりません。

「今後貴様はいついかなるときでも、裸になれと言われたら真っ先に下半身から脱いで、貴様が言うところの、剥き出しマゾマンコ、をまっ先に世間様に露出するのだ」
「これは絶対服従の命令だ。わかったな?」
「は、はいっ」

 お答えしつつも、今はコスプレされているとはいえ、普段は童顔ロリ美少女のミサさまのお口から、剥き出しマゾマンコ、なんて、はしたな過ぎるお言葉が発せられるのをお聞きして、キュンキュン萌え死んでしまいそうでした。

 ミサさまとリンコさまがお互い目配せをされました。
「今日の来客の予定は?」
「あ、はい・・・今日はありません」
「そうか。もし貴様がマゾ女らしくふしだらな格好をしているときに来客がある場合のみ、この上着の着用を許す」
 ミサさまのお言葉につづいて、リンコさまがショッパーの中から白っぽい布地を取り出しました。

 広げてみるとそれは、お医者様などがよくお召しになっている、所謂白衣。
 ナース服のように柔らかなシルエットではなく、ストンとした、科学や化学関係の研究所員さんが羽織っていそうなドクターコートという感じの白衣でした。

「ニットのワンピとかも考えたんだけどさ、こういうオフィス空間で、すぐ着れてお客様にも失礼じゃない上着って、難しいんだよね」
 リンコさまが広げて見せてくださった白衣をハンガーに掛けながら、説明してくださいました。

「白衣ならなんかインテリっぽいし、高尚ぽいじゃん。ややこしそーなことしているムードも出て」
「理系の大学の教授の秘書にも、白衣着てるの多いって言うし。アカデミックって言うかさ。そんなに社内の雰囲気も崩れないかなーと思って」

「私が裸にされているときに、ご来客があったら、これを上に着てお茶を出したり、応対しなさい、ということなのですね?」
 そんなに私、オフィスで年中裸にされちゃうのだろうか、とゾクゾクしながらお尋ねしました。
「そう。室外のトイレにいくときとかもね。ナオコ、裸コートするの、好きなんでしょ?」
「は、はい、それはそうですけれど・・・」

 素肌に白衣一枚でご近所の郵便局までお使いに行く自分を想像してみます。
 背筋がゾクゾクっと震えました。

「ちゃんとナオコの好み考えて、軽めで上質のコットンで作ってあげたからさ。素肌に貼り付いたら、ちゃんと乳首も浮くはず」
 えーっ、そんな・・・
 そんなこと私、望んでいません。

「これはいつもここに掛けといて、マゾモードナオコの緊急時ユニフォームということで」
 リンコさまが、今日このお部屋に導入されたばかりの謎のスーツロッカーに、その白衣をさも当然のように掛けられました。
 私には一度も着せてくれずに。

 ふとソファーの上に目を遣ると、いつの間にかいろいろなものが散乱していました。
 おふたりがお持ちになったショッパーの中身なのでしょう。
 すなわち私へのプレゼントの数々。

 下着のような布きれ、何か機械のような器具と絡まったコードの塊、私ならどう使うか一目でわかってしまう形状をした卑猥なオモチャの数々。
 おふたりの肩越しにチラッと拝見しただけで、そういったものの存在が認められました。
 これから私、何をされちゃうんだろう?

「どう?ミサミサ。ナオコを虐めるのって、面白いでしょう?」
 リンコさまがミサさまに話しかけました。

「うん。凄く愉しい。直子がこんなにドスケベなマゾ女だとは思わなかった。虐めのアイデアがどんどん湧いてくる。いつものボクらしくなく、とても興奮している」
 素に戻られたミサさまが普段の口調でおっしゃり、メガネの奥から私の裸身をじーっと見つめてきます。

「でしょ?今日は来客もないって言うし、時間もまだあるから、もう少しアソんでいこっか?」
「うん。もちろん」

 おふたりがお顔を合わせてニヤッとうなずいたとき。
 再び電話の呼出音が唐突に鳴り響き始めました。


非日常の王国で 03


2016年10月2日

非日常の王国で 01

 イベント明けの月曜日。
 出勤前の朝、とてもドキドキしていました。

 お約束通り土曜日の午後に私のお部屋にいらしてくださったお姉さまから、私が帰った後のことをお聞きしました。
 
 凄い迫力のショーだった、とお客様がたにも大好評で、イベントでご披露したアイテムの売上も昨年の倍以上いきそうなこと。
 うちでもモデルで使いたい、とか、イメージビデオをぜひ撮らせてくれ、というご依頼も多く、ごまかすのが大変だったこと。
 夕張小夜の本業は学生で、現在イギリスの名門大学に留学中の身なので、日本で表立った活動は出来ない、と断ったそうです。

 お客様がたの中で夕張小夜を森下直子だと見破っていらしたのは、アンジェラさまたちとシーナさま御一行だけだったよう。
 でも、スタンディングキャット社の男性たちは、薄々勘付いていたかもしれない、とお姉さまはおっしゃいました。

「彼らって、同性でも異性でも、自分たちと同じような個性と言うか異端性を嗅ぎ分ける嗅覚、異常に鋭いからね」
 笑いながらおっしゃるお姉さま。

「あと、シーナさんの古いご友人、あ、残念ながら百合草女史ではなくてよ、も数名いらしていたわ。ひょっとしたら直子も知っている人たちかもね」
 どなたなのかすっごく知りたくてお姉さまにお尋ねしたのですが、そのうちわかるわよ、うちともつながりが出来たから、とイタズラっぽく微笑むだけで教えてくださいませんでした。

 そして私が一番気にかかる、社員スタッフのみなさまのご反応。
 これはもう絵に描いたような、興味津々、の一言だったそうです。

 パーティが終わって、それぞれお得意様がたとの二次会までのあいだ、スタッフ宿泊用に取ってあった隣接するホテルのお部屋でスタッフだけの軽い打ち上げをなさったそうなのですが、みなさま、お姉さまに対して、ご質問攻めだったそうです。

「あたしも気分良かったから、いろいろ包み隠さずしゃべっちゃった。あの子はこうしたら悦ぶとかこんな妄想しているとか」
「みんな真剣に聞いてくるから、つい言っちゃったのよね。これからも業務に支障がない程度になら、みんなも好きに虐めていい、って」

「ほら、あたしは忙しいからあまり直子をかまってあげられないでしょう?それで直子を放っておくと、無茶なひとり遊びとかしちゃいがちじゃない」
「だからどうせなら、安全なオフィス内で直子が適当にスタッフたちのオモチャになって発散するのもいいかな、って思ったの」
 
 バスタブに身を寄せ合って浸かり、私の股間をチャプチャプ弄りながらニヤニヤ笑いのお姉さまがおっしゃいました。

「オフィス内で裸にするくらいはぜんぜん構わない、って。それで直子のムラムラが幾分でも解消出来るのなら、あたしも安心だし」
「外に連れ出すときやお客様が来社されるときは、社のイメージを損なわない程度にほどほどに、とは言っておいたから、そんなにひどいことはされないと思うわ」
「まあ、取引先の中にもノリのいいかたいらっしゃるし、いつもお茶を出してくれるあの社長秘書の子はエロい、って評判になっても、あたしはかまわないって思っているのだけれど」

 そんなふうにして、私の扱いについて、社内的にいくつかのルールがみなさまのあいだですでに決められていました。

 私がムラムラして誰かにかまって欲しいときは、首にチョーカーを着けてくること。
 お姉さまとの秘密のお約束が、スタッフ全員とのお約束となっていました。
 逆に、お仕事が猛烈に忙しいとか集中したいとか、そういう気分になれないときはチョーカーを着けずに出社し、スタッフも手を出さない。

 チョーカーを着けて出社したからには、スタッフ全員が私のご主人様となり、性的なご命令には絶対服従すること。
 こういうのは慣れ過ぎてビッチぽくなってしまうと面白くないので、出勤時や退社時など、お外でひとりで行動するときは、きちんとした清楚な服装でお淑やかにしていること。
 当然、屋外での危ないひとり遊びは休日でも一切禁止、どうしてもしたいときはスタッフの誰かに必ず相談して同伴していただくこと。
 そのときはみんな気を配って、好色なドスケベ男性たちにつけいられる隙は、絶対に見せないこと。

「直子、あたしらがいなくなった部室や楽屋でも、いろいろしでかしたらしいじゃない?ルール決めるとき、リンコが一番ノリノリだった」
「それに、あの下ネタ耐性の低いアヤまで愉しそうにニヤニヤしていたのだから、直子が放つマゾオーラの魅力って相当なものよね」

 私が一所懸命に隠し通そうとしていた恥ずかしい性癖の数々は、あのイベントの日一日でスタッフのみなさま全員に知れ渡ってしまいました。

 モデルをすると決まったときから帰るときまで、どなたの前でもほとんど全裸で過ごし、おっぱいも無毛なマゾマンコも、お尻の穴までスタッフ全員にじっくり観察されました。
 初対面のしほりさまには、全身隅々までもてあそばれ、リンコさまの目前で強制的に自虐オナニーをさせられ、楽屋では、ほのかさまや里美さまにまでペットボトルに全裸で放尿する姿を目撃されました。
 
 そして本番では72名、お姉さまからお聞きしたお手伝いのスタッフさんがたも除いた、純粋なお客様としてイベント会場にお越しいただいた方々の数です、ものお客様がたの前で、キワドイ衣装に感極まってオーガズムに達してしまう姿を何度もご披露したのです。

 私という人間の淫乱さ、ヘンタイさ、ドマゾさは、その場にいらっしゃった全員の脳裏に深く刻み込まれたことでしょう。
 もはや後戻りは出来ません。
 私がこの会社に勤めつづける限り、夕張小夜が森下直子だとご存知なみなさま全員が私を、そういう目、で視つづけることでしょう。

 レッテルは貼られてしまいました。
 このレッテルから逃れたいのなら、お姉さまとのスール関係を解消して、この会社から離れるしかありません。
 そしてもちろん私は、お姉さまとお別れするくらいなら死んだほうがまし、とずっと思っています。

「そう言えば直子、しほりさんとも何か約束したんだって?絵理奈さんが退院されたら快気祝いに、どこかで一席設けなくちゃね」
 
 のんきにそんなことをおっしゃるお姉さまのしなやかなからだに、バスタブの中、無言でギュッとしがみつきました。
 月曜日から始まるオフィス勤務がどんなものになってしまうのか、不安六、期待四くらいの割合に胸を震わせながら。

「でもね、うちのスタッフ全員、直子にすっごく感謝しているのは事実よ。あんなアクシデントがあったのに、直子のおかげでイベント大成功だったのだから」
 お姉さまが私に負けないくらいの力で抱きしめ返してくださいました。

 月曜日の朝出社したら、お昼までには羽田へ行って九州行きの飛行機に乗らなければならないというお姉さまは、旅支度のために日曜日の夜9時頃、いったんご自宅に戻られました。

 玄関口まで全裸でお見送りした私にお姉さまは、今までで一番長かったかもしれない、くちづけをくださいました。
 玄関ドアを開け放したまま、全裸の私とスーツ姿のお姉さまは5分以上、互いの舌を絡ませ合いました。
 唇が離れると、したたるよだれを舌でベロっと舐めあげてから私の目を見つめ、ありがとう、と小さなお声でおっしゃり、最後にニッコリと素敵な笑顔をくださいました。

 玄関ドアが閉じるとひとりぼっち。
 でもタイミング良く急激な睡魔が襲ってきました。
 イベント当日から今日まで、張りつめつづけていたドキドキと、滾りつづけていた劣情が、まるで映画で観たことのある燃料切れの飛行機のように失速しつつありました。
 加えてこの三日のあいだ、数え切れないほどの回数昇りつめた、その体力の消耗も相当のものだったはずです。
 なんとか目覚まし時計をセットしてそのままベッドに倒れ込み、すぐに意識が失くなったようでした。

 そうして迎えた月曜日早朝、梅雨の晴れ間。
 朝9時集合を言い渡されていましたから、8時半までには行かなくちゃと7時に合わせていた目覚ましが鳴る前に、目が覚めていました。
 全裸のままシャワーへ直行、ゆっくりと全身を洗いました。
 
 二の腕にうっすらと縄の痕、鏡に映したらお尻にも鞭のミミズ腫れが薄く残っていました。
 その淫靡な痕跡を見て性懲りもなく疼き出すからだには、自分のことながら、その快楽に対する貪欲さに呆れてしまいます。

 丁寧にからだを拭き髪をまとめてから、下着を手に取ります。
 考えてみると、まともな下着を身に着けるのって丸四日ぶり?
 イベント当日からシーナさまと自宅に戻り土曜日にお姉さまと入れ替わりになって今朝目覚めるまで、ずっと裸で過ごしていましたから。
 
 そのあいだに身に着けたものと言えば、突起付きCストリングとか麻縄とか手錠とかハーネスとかバイブが落ちないように穿いたショーツとか洗濯バサミとかばかり。
 久しぶりの布地にやんわり包まれた乳首たちが、なんだかムズ痒い感じ。

 それからお気に入りの白いフリルブラウスに濃い目のベージュの膝丈フレアスカートを合わせます。
 これにリネンのショートジャケットを羽織って出勤するつもり。
 出勤ファッションはお淑やかに、がルールですから。

 鏡に向かってメイクを始めると、どんどんとありふれた日常生活へと戻っている感覚がありました。
 それと同時に昨日までの三日間のあれこれを思い出し、確実にこれまでとは変わるであろう今日からの自分のオフィス勤務に思いが至ります。

 いったい私はこれからどうなっちゃうのだろう。
 オフィスに入ったらすぐに、今日から直子には全裸で勤務してもらうことにします、なんて綾音部長さまからご命令されたりして。
 そこまではいかなくても、何かキワドイ制服を着せられたり、セクハラの慰み者にされたり。

 出勤時間が近づくにつれ、昨夜六対四だった不安と期待は、八対二くらいにまで不安のほうが勝ってきていました。
 しっかりなさい、小心者直子、お姉さまに逢いたくないの?
 そう自分を叱責して私は、オフィスへと向かいました。
 首には、お姉さまからいただいた涙型のチャームがぶら下がった白いレザーベルトのチョーカーを巻いて。

 8時25分、オフィス到着。
 ドアキーを解除しようとしたら、もう開いていました。
 あれ?もうどなたかいらしているんだ・・・
 ほのかさまかな?
 ドアを開けて、そっと中を覗き込むと大きな拍手の音が。

 すでにお姉さま以下スタッフ全員が揃っていました。
 里美さまのお顔まで見えます。
 みなさま、私が出社するのを待ち構えていてくださったみたいでした。

「おつかれさまー」
「おつかれー」
「ナオコにはイベント当日、きちんと御礼と挨拶、出来なかったからね」
「イベント大成功の立役者、VIPだから、ちゃんと感謝の気持ちを伝えたかったの」

 みなさまニコニコ、口々に褒め称えてくださいました。
 なんだか気持ち悪いくらいに。
 みなさま一様に、私がチョーカーを首に巻いているのをご確認され、嬉しそうなご様子をされているような気もしましたが。

 それから全員応接ルームに移動して、お紅茶とケーキで、あらためてお疲れさまー。
 お紅茶も今日は、雅部長さまとほのかさまが淹れてくださいました。
 ひとしきり花咲く雑談も、イベントにいらしていたお取引先様やお客様がたに関することばかり。

 やがて始まった反省会議。
 反省会と言っても、ネガティヴなご発言は全く無く、どのアイテムがどのお客様とご商談成立したかのご報告が相次ぎ、ショーの個人的な感想などに言及するのも一切無し。
 最後に、各々の今週これからのご予定を確認して、終始和やかな雰囲気で終わりました。

 10時前に会議が終了すると、お姉さまと綾音部長さま、それに営業の雅部長さまとほのかさまは、イベントで商談成立したお客様がたとの打ち合わせのために、それぞれ東京駅や羽田へと旅立っていきました。
 里美さまもご自分のオフィスへとお戻りになられ、オフィスに残されたのは、私と開発部のリンコさまとミサさまの三人に。
 そのリンコさまとミサさまも、ご自分たちの開発ルームにこもりきりとなられました。

 私も、イベント中の経費の精算や売上見込の集計、小口現金の出し入れのために銀行へ行ったりと、一日中あわただしく過ごしました。
 
 いつの間にか退社時刻となり、リンコさまたちに内線でご連絡をしてみました。
 開発部もイベントの余波で、たくさんのパターンを大急ぎで引かなければならず、出来るだけ済ませちゃいたいので今日はおふたりとも部室にお泊りになるとのこと。

「先に上がっていいよー。お疲れさまー、また明日ねー」
 いつもと変わらないご様子で明るくおっしゃってくださいました。
 私、どうされちゃうのだろう、って緊張していた分、なんだか肩透かしの気分でした。

 今日されたえっちなことと言えば、雅さまがいつものようにハグしてきたとき、右腕だけふたりのからだのあいだに入れ、右手で私の左おっぱいを服の上から強くモミモミされたことくらいでした。
 雅さまがそんなことをなさるのは初めてでしたが、私はほのかさまの視線が気になって仕方ありませんでした。
 やられながらチラ見するとほのかさまは、背筋がゾクッとするような妖艶な笑みを薄く浮かべて私たちのことを見ていました。
 ほのかさまがそんな表情をお見せになったのも、初めてな気がしました。

 お家に帰ると早速全裸になり、イベントショーの思い出しオナニーをしました。
 数回イッて落ち着くと、自然とまた、これからのことを考え始めてしまいます。

 社員のかたたちはみなさまオトナだから、私を自由にしてもいい、って言われても、がっつくケダモノみたいに、すぐ虐めてきたりはしないのだろうな。
 何かを企んで、いつか仕掛けてくるのでは、とも思うけれど。
 意外とこのまま普通に、軽いセクハラ程度の平穏なオフィス勤務のままなのかもしれないな。
 そう考えると、被虐を期待していた分がっかりするのと同時に、心の奥底で大きく安堵のため息をついていることにも気づきました。

 お姉さまは今日から九州で、戻られるのは週末、早く逢いたいな。
 数日ぶりに穏やかな眠りにつきました。

 でもそれは俗に言う、嵐の前の静けさ、に過ぎなかったようです。

 次の日、出社すると社長室内の壁際に、見慣れない茶色いチェック柄の不織布に覆われたスーツロッカーが設えてありました。
 不審に思ってチャックを開けてみると、中に吊るされているのは紛れもなくイベントでご披露したアイテムの数々。

 光が当たるとシースルーになるワンピース、透明ビニールのように見事にスケスケなベージュのスーツ上下、ぴったりフィットのキャットスーツ、恥丘丸出しな超ウルトラローライズジーンズ・・・
 どれも、イベント会場でお客様がたにご披露したときの、身を切るような羞恥と甘美な昂りを思い出させる破廉恥アイテムばかり。
 
 でもなぜ、これをこのお部屋に・・・
 イベントの最中、ちょうどあのローライズジーンズをご披露するときにリンコさまがおっしゃった、あるお言葉に思い当たり、マゾマンコがキュンと疼きました。

 見なかったフリをして業務に戻りました。
 その日は、綾音部長さまが朝からデスクでお電話をかけまくり取りまくりなさっていて、お姉さまと営業部のおふたりは出張中、開発部のおふたりは相変わらず開発ルームにこもりきり、という状況でした。
 私も綾音さまが取り切れないお電話に対応したり、そろそろ迫ってきた月末に向けてご請求とお支払の再チェックをしたりと午前中は忙しく過ごしました。

 午後になり、綾音さまが、直帰するから、とお出かけされて少し経ったとき、それは始まりました。

 私のお仕事も一段落して、ネットでも見で息抜きしようかな、と立ち上がったとき。
 社長室のドアがコンコンとノックされ、ドアを開けるとリンコさまとミサさまがニコニコなお顔で立っていらっしゃいました。
 おふたりともそれぞれ片手にひとつづつ、大きくふくらんだショッパーの紙袋をお持ちになっていました。


非日常の王国で 02


2016年9月25日

オートクチュールのはずなのに 59

 楽屋に戻ると、すぐにマントを脱がされ、つづいて乳首の輪っかを緩められました。
「あふうっ」
 尖りきった乳首をぞんざいにつままれた上に血流の戻る痛さも加わり、昂りきった淫声がふしだらに漏れました。
 ゴージャスなチョーカーも外されましたが、一番下のチェーンに繋がる部分は、首周りもシルバーのチェーンつづきになっていて、そこだけチョ-カーと別物になっているようで、クリットに繋がったまま残されました。

 あれよあれよという間に、突起付きCストリングとクリットチェーン、それにミュールだけの丸裸にされていました。
 リンコさまが脇腹に両手をあて、学校の体育の先生みたいな姿勢で私の前に立ちました。

「ほら、もたもたしてて5時近くなったら、他の会場のお客様たちがフロアに溢れて、小夜ちんが思いっきり恥ずかしい思いをすることになるよ?」
 背後から、ほのかさまでしょうか、ペラペラのビニールみたいなのが肩に掛けられました。

「袖通して、ボタン留めて、急いで!」
 リンコさまの叱責声に両腕をもぞもぞ動かしました。
 駅の売店で売っているような乳白色で薄っすら透けているようなビニールの使い捨てレインコート。
 着終わると絵理奈さまのゲーノー人サングラスを渡されて、右手を掴まれました。

「さあ、行くよ」
「行くって、どこへですか?」
「どこへって、小夜ちんはこれでお役ご免。お疲れさん。だからお家に帰るのよ」
「お家に・・・私だけ、ですか?」

「そう。きょうのエロ過ぎモデル、夕張小夜は、お客様たちにはマボロシにしときたいの。だからアヤ姉たちが足止めのためにトークで時間を稼いでいる今のうちに、さっさと消えるの。お客様とエレベーターで鉢合わせ、なんてイヤでしょ?」
「それに、うちのスタッフの森下直子は、今日は家庭の事情で欠勤、っていうことになっているんだから、この後の商談会でナオコが登場するのおかしいでしょ?」
「大丈夫よ。お家まで車で送ってあげるから。お家でゆっくり、ショーのこと思い出しながら、存分に思い出しオナニーでも何でもするといいわ」

 からかうような笑みを浮かべておっしゃるリンコさまのお言葉で、つい数分前のランウェイでの快感がよみがえりました。
 ステージに出てから楽屋へ戻るまでの断片的な記憶がフラッシュバックのように現れては消えていきます。

 一歩進むたびに張りつめてはたわむシルバーチェーン。
 張りつめたときにクイッと上へ引っ張られるクリトリスへのもどかしい刺激。
 そのもどかしさに呼応して膣壁を震わせてくるCストリングの突起。
 何度も真っ白になりかける頭の中。
 ちゃんと歩かなきゃ、と快楽に溺れることを律する、ほんのひとかけらの理性。

 食い入るように私の顔とからだを見つめてくるお客様がたの視線。
 満足そうに嗜虐的な笑みを浮かべられたお姉さま、シーナさま、アンジェラさまのお顔。
 両脚をダラダラと滑り落ちつづける淫らなおツユの感触。
 スクリーンにアップで映し出された両乳首を紐で絞られた剥き出しのおっぱい。
 おっぱいが揺れるたびにユラユラ綺麗な波を作るドレープドレス。

 ステージ上で、夕張小夜でした、と大きなお声で紹介してくださった綾音部長さま。
 お声につづいて、みなさまお立ち上がりになり沸き起こった嵐のような大拍手。
 その喝采で今までになく激しく振動を始める股間のローター。
 ついに頭の中が真っ白になり、崩れ落ちるところをリンコさまの腕で抱きとめられた私。

 すべてが夢の中の出来事のようでした。
 そしてまだ、その白昼夢から醒め切れていないみたい。
 全身が快感の余韻に酔い痴れていました。

「ほら、行くよ。さっきも言ったけど、今ならフロアに誰も居ないと思うから」
 リンコさまに強く手を引かれ、出口のドアまでつんのめりました。

「たまほの、あとは頼んだよ。商談会の最中には戻れると思うから」
「はい。お気をつけていってらっしゃい」
「うん」
 ドアを開けてフロアの廊下に出ました。

 フロアは、相変わらず眠たげなストリングスミュージックの低いBGMが流れている以外、しんと静まり返っていました。
 ドアの横に、私をここまで運んで来たダンボール箱と台車が折りたたまれ、壁に立てかけてありました。

「あっ、雨やんだみたい」
 独り言のようにおっしゃったリンコさまにつられて窓を見ると、大きな白い雲の合間に青空が覗いていました。
 まだお外はこんなに明るかったんだ。
 そうよね、5時前っておっしゃっていたし、夏至を過ぎたばっかりだものね。

 そんなことをのんきに考えながらもう一度窓を見て、ビクンッと焦りました。
 お外が見える窓ガラスにうっすら映った自分の姿に。

 素肌の上にペラペラのビニールレインコート一枚の私。
 乳白色のビニール地は曇ってはいるのですが、やっぱりうっすら透けていました。
 からだの中でとくに色の濃いところ、つまりふたつの乳首と股間のCストリングの赤は、それが何なのか職別出来るくらいには透けていました。
 更に、丈が腿の半分くらいまでは来ているのですが、最後のボタンが恥丘の上くらいのところなので、腿が裾を蹴ると前が割れて太腿が付け根まで丸見えになりそうでした。

 まさかこんな格好で、ショッピングモールやお外のスーパーマーケット前をまた、歩かされるのかしら・・・
 夢見心地な気分が急激にフェイドアウトしていくにつれ、代わりに日常に戻ったという現実感と片隅に追いやられていた理性が働き始めていました。
 恥ずかしい、と思う気持ちが膨らむほど、さっきまでのイベント会場での恥辱的なあれこれを、たまらなく愛おしく懐かしく感じ始めていました。

 そんな私の葛藤などおかまいなしに、リンコさまは私の右手を引いて無言でズンズン歩いていました。
 廊下を過ぎてフロアの中央付近まで出ても、お言葉通り人っ子一人見当たりませんでした。
 どの会場のドアもピッタリ閉じられたまま。
 私とリンコさまのヒールの音だけ、カツカツとやけに大きく響きました。

「ふー。計画通り、誰にも視られずに脱出できそう」
 あと少しでエレベーターホール、とういうところまで来てリンコさまが振り返り、お声をかけてきました。
「あ、そうですね」
「ひとりふたりは覚悟してたけど、今のナオコの格好だって、一般常識的にかなりエロい・・・」

 歩調を緩めずに歩いていたリンコさまがエレベーターホールへの角を曲がってすぐ、おしゃべりと足が同時にピタッと止まりました。

 振り向いて、私に向かって唇に人差し指を1本立て、シーッのポーズ。
 繋いでいた手を解き、ヒソヒソ声で、モデルウォーク、と耳元にささやかれました。

 それからカツカツとおひとりでエレベーターホールのほうへ歩き出されたリンコさま。
 私も少し間を置いて、モデルウォークで後につづきます。
 久々のチェーンがクリットを引っ張る刺激に顔が歪みそう。

 エレベータードアの前では、見るからにOLさんという感じなお揃いのグレイのベストの制服を着た女性おふたりがエレベーターを待っていらっしゃいました。
 リンコさまは、そのOLさんたちから5メートルくらい離れたところで立ち止まり、OLさんたちに一度会釈をして、澄ましたお顔でエレベーター待ちの状態に入られました。
 OLさんたちも会釈を返してくださったので、私も会釈して、リンコさまの脇に立ちました。

 OLさんたちがこちらをチラチラ窺い視ているのがわかります。
 おふたりとも20代半ばくらいの髪を濃い目の茶に染めた今どきOLさん風。
 おひとりはキレイ系、もうひとりは可愛い系で仲良さそう。
 可愛い系のかたが社名の入った大きなバインダーをお持ちになっているので、今このフロアの別の会場でイベントか会議をやってらっしゃる会社のかたなのかな。

 おふたりは好奇の瞳でこちらを盗み視つつ、ときどきヒソヒソお話されています。
 タレント?モデルさん?ファッションショー、エロい、といった単語が途切れ途切れに聞こえてきました。
 何をおしゃっているのかすっごく気になりながらの居心地悪い時間が流れ、やっとエレベーターがやって来ました。

 空のエレベーターにOLさんたちが先に乗り込み、階数パネルの脇に陣取って、開、のボタンを押してくださっています。
 リンコさまと私は会釈をしつつ奥へ。

「何階ですか?」
 可愛い系のOLさんが可愛らしいお声で尋ねてくださいました。
「あっ、恐れ入ります。地下3階をお願いします。ありがとうございます」
 
 リンコさまがバカ丁寧に答えると、OLさんは1FとB3のボタンを押しました。
 そっか、駐車場はこのビルの地下なんだ。
 この格好でショッピングモールやお外を歩くことは回避されたようで、ホッとするような、ちょっぴり残念なような。

 奥に乗り込んだ私は、OLさんたちに背中を向けるために、必然的に正面奥に貼られた大きな鏡と向き合う形になりました。
 綺麗に磨かれた鏡には、私の破廉恥な姿がクッキリと映し出されていました。

 乳白色のビニールの下にうっすらと透ける私のボディライン。
 バストの頂点二箇所で目立つ薄紅色の乳輪と突起。
 両脚の付根を逆三角形に狭く隠す赤いCストリング。
 首から股間へと一着線に走る不自然なシルバーチェーン。
 誰が視ても、レインコートの下にはそれしか身に着けていないことが明白でした。
 セミロングボブのウイッグとタレントサングラスで素顔が窺い知れないことがせめてもの慰め。
 さっき、この格好でお外を歩けないのがちょっぴり残念と思った気持ちを、全面的に取り消しました。

 OLさんたちは、私が背を向けているのをいいことに、薄いビニール一枚越しの私の剥き出しなお尻をジロジロ眺めているのが鏡越しにわかりました。
 ひょっとすると、お尻の穴にまで何か挿入されているのもわかっちゃうかも。
 時々する上を見上げる仕草で、鏡に映った私の正面を、天井隅の凸面鏡で盗み視ているのもわかりました。
 リンコさまは、ツンとお澄まし顔で階数パネルをじっと視ていらっしゃました。

 恥ずかしさにどんどんからだが熱くなってくる中、頭の片隅ではショーでの極まりすぎた羞恥がもたらしてくれた快感がぶり返していました。
 私はモデルだから、こんな格好でもぜんぜん恥ずかしくないの。
 さあ、視て、じっくり視て、私のからだ・・・
 この状況でそんなふうに思っている自分自身に驚きました。

 ポーンという音がして一階に着きました。
 ドアが開くと、そこには10人くらいの見知らぬ人たちが待ち構えていました。
 大半はスーツ姿の男性たち、それに着飾ったおばさまがたが少々。
 ああん、いやんっ。
 来るときも通った見慣れた景色とも相俟って、白昼夢気分が掻き消え、一気に現実に引き戻されました。

 OLさんたちが降りると、我先にと乗り込んできたひとりのおばさま。
「まだ下に行きますよ?」
 やんわりと追い出して、閉、を押すグッジョブなリンコさま。
 扉が閉まる寸前に、露出狂か?と誰かに問うような男性のお声が聞こえた気がしました。
 ふたりきりになって更に下降をつづけるエレベーター。

「危機一髪だったみたいね。そろそろ他の会場で入れ替え時間だから」
 リンコさまがやっと、愉快そうにお口を開かれました。

「もう一本遅れていたら、フロアに今のサラリーマンたちがごちゃごちゃいたはずだから、ナオコのからだは、さっきのOLさんたちとは全く質の違うオトコどもの好色な視線の餌食になってたはず」
「もっとも、さっきのOLさんたちだって、自分たちのオフィスで、さっきエレベーターにスケスケの露出狂女が乗ってた、って言いふらすでしょうけどね」
 ニヤニヤ笑いのからかい口調。

 エレベーターのドアが開くと、今度は誰もいませんでした。
 明るいエレベーターホールを抜けると、冷たそうに静まり返ったコンクリートの広い駐車場。
 その薄暗さが妙に心地よく、ホッと息をつきました。

 幸い駐車場内にも誰もいないようでシンと静まり返った中、カンカンカンとリンコさまと私がヒールの音を響かせて駐車場を進みます。
 壁際に見覚えのある青っぽい色の自動車。
 有名なサイダーのマークに似たエンブレムの、お姉さまの愛車でした。

「ナオコは後ろね。ナオコが朝、持ってきたバッグとかも全部、もう積んであるから。脱がされたスーツもね」
 お姉さまのお車の両端のライトが電子音とともにピカッと光り、リンコさまが右側の後部座席を開けてくださいました。
 私が乗り込むのを見届けて、自らは運転席にお座りになるリンコさま。

「リンコさまが送ってくださるのですか?」
「うん。送り届けたら速攻で戻って、商談会やパーティ。まだまだ仕事は終わらないよ」
「そうですか・・・」
「パーティ、出たかった?」
「うう・・・微妙です、ね」
「だろうね。あんな格好をお客様に披露しちゃった後だしね」
 愉快そうに笑うリンコさま。

「連絡事項ね。そのチェーンとCストは、ナオコのものだから、私物として使っていいって。ナオコの穴の間隔に合わせた、まさにオートクチュールだしね。ただし、どちらもオフィスに置いておくこと」
「あ、では今、外したほうがいいのですか?」
「ううん。今日はいいの。今外されたら車のシートがベトベトになってクサくなっちゃうでしょ?」
「月曜日にオフィスに持ってきて、それからは着けるのもオフィス限定、っていうこと」
 私、今後これをオフィスで着けるようなこと、あるんだ・・・

「あ。それから、そのウイッグはチーフがしほりんから買い取ったから、それもナオコの私物にしていいってさ。これは別にプライベートでもご自由に」
「はい」
「それ、ほんと似合うよね。アタシ今度、そういう髪型のアニメキャラのコスプレ、作ってあげる。これがナオコに超合いそうなんだ」
 久々に見る、普段のリンコさまのオタクっぽい笑顔。

「あと、7時位にケータリングが届くから。パーティに出れないナオコのために、ご馳走のお裾分け」
「だから7時までに一段落しときなさいよ?オナニー真っ最中だったとか、お店の人にうちらまで笑われちゃうから」
 あはは、って屈託ない笑い声。

「それで月曜は朝9時集合で、イベントの反省会議してから通常業務に戻るから。いつもより早いけど遅れずに来ること」
「はい」
 そこでお話が途切れ、しばし沈黙。

 それでもリンコさまは、お車を発進させません。
 誰か待っているのかしら?
 あ、ひょっとしたらお姉さまが・・・

 お尋ねしようと思ったとき、リンコさまがお声をあげました。
「ああ、来た来た」
 ルームミラーで後方を覗かれていたのでしょう、ドアのロックが外される音が微かにしました。
 私はあえて窓から覗かず、ドキドキ。

 カタッと軽い音がして左側の後部座席のドアが開きました。
「お待たせー」
 お声と共に乗り込んで来られたのはシーナさま。
 その意外なお顔にびっくりと一緒にちょっとがっかり。

「あ、今ナオコ、あからさまにがっかりしたー。チーフじゃないかって期待してた?」
 すかさずツッコんでくるリンコさま。
「あ、いえ、そんなことは・・・」
 図星を突かれてうろたえる私。
「あら、せっかくクリュッグロゼの誘惑を振り切って抜け出してきてあげたのに、ずいぶんなご挨拶ねえ」
 いつも通りなシーナさま。

「それにしても今日の直子さん、すごかったー。あ、そうか、直子さんじゃなくて、何だっけ?えっと帯広サトコさん?」
 シーナさまがズズっとお尻を滑らせて私に寄り添い、私を視つめて勢い込んでトンチンカンなことをおっしゃってきました。
「帯広じゃなくて夕張です。夕張小夜さん」
 すかさずリンコさまがツッコミました。

「そう。その夕張さんが出てきたとき、わたし、あれ?って思ったんだ。このからだには見覚えあるな、って」
「それで暗くなってヌードが見えたとき、確信したの。絶対直子さんだって」
「それで、直子さんだって思いながら視ていたら、どんどんワクワクしてきちゃって」
 シーナさまにしては珍しく、ちょっと興奮気味の口調でたたみかけてきました。

「直子さんたら、あんなにキワドイ衣装取っ換え引っ換え着せられちゃって、内心恥ずかしくて仕方ないクセに、一生懸命ツンと取り澄ました顔して歩いているんですもの」
「もうマゾオーラ全開。そっと忍び寄って、ウイッグひっぺがしてやろうか、って思うくらいムラムラしちゃった」
「最後のほうでは、完全に歩きながらイッちゃっているし、本当、ヘンタイマゾ女として一皮も二皮も剥けちゃった、っていう感じ」
 
 シーナさまの指がビニールレインコートの上から、私のまだ尖りつづけている左乳首をピンと弾きました。
「あうっ」

「やっぱり、今だにサカっているのね?わたしの見た感じではショーのあいだにお客さんの前で5、6回はイッてるように見えたけれど」
「楽屋でも2、3回、イッてましたよ」
 リンコさまがお口を挟みます。

「でしょ?なのにまだこんなにサカっちゃっているドヘンタイマゾ女。それでね、考えたんだって、このまま直子さんをひとりで家に帰したら危険だって。直子さんのお姉さまが」
 おっしゃってから、私の顔をじっと覗き込むように見つめてくるシーナさま。

「さすが直子さんのお姉さまね?性癖をよくご存知でいらっしゃること。それでエミリーに頼まれたのよ、明日まで直子の面倒を見てくれって」
「エミリーは社長さんだから、この後も商談会だ、パーティだってお客さんたちのご機嫌伺いで大変なのよ。地方から出てきたお得意さんたちに連れ回されて、おやすみなさいは明け方になるのじゃないかしら」
「わたしは、クリュッグロゼは飲みたかったし、アンジーたちとゆっくりおしゃべりもしたかったけれど、大人数のパーティは苦手でさ。直子さん虐めるの久しぶりだし、二つ返事で引き受けちゃった」

「エミリー、すごく心配していたわよ?直子をひとりにしておいてムラムラが極まって、あられもない格好で週末の夜の街をフラフラされたりしたら取り返しがつかないから、見張っていてくれって」
「その代わり、今夜は直子さんに何してもかまわないとまで、言ってくれたの。たぶん今の直子は、激しく虐められることを望んでいるはずだからって。そうなの?」
 私の顔を覗き込んでくるシーナさま。

 確かに今の私は、誰かにめちゃくちゃに虐めて欲しい気持ちでした。
 麻縄でギチギチに縛られて、身動きの出来ない格好でマゾマンコをぐちゃぐちゃに掻き回されたい・・・
 熱い蝋をおっぱいにダラダラ垂らされて、お浣腸を我慢して、お尻にバチバチ鞭打たれて・・・

 たくさんの人たちの前であんなに破廉恥な姿をさらけ出してしまったどうしようもないヘンタイマゾ女には、そのくらいのお仕置きは当然でした。
 もちろん、出来ればお姉さまの手で、それらをしていただきたいのですが・・・
 シーナさまに言葉でお返事する代わりに、コクリと一回うなずいて、すがるように見つめました。

「部下思いのいい上司じゃない?直子さんのお姉さまは。それにドレイ思いのいいご主人様でもあるし」
 シーナさまがしんみりとおっしゃいました。
「エミリーは、明日の夕方には直子さんのお家に駆けつけるそうよ。よかったわね直子さん、いいパートナーとめぐり逢えて」
「はい・・・」
 私もなんだかしんみりしてしまい、視界がちょっぴりぼやけそう。

「おーけー。それじゃあ直子、今夜はわたしがエミリーの代わりだから。帰ったらまず何して欲しい?」
「あ、はい、M字開脚で両手両足動かせないように縛られて床に転がされて、鞭でバシバシお尻を叩かれたいです」
「わかったわ。やってあげる、覚悟しなさい、小生意気な夕張さん?」
 おっしゃると同時に、私の首からたわんで垂れていたシルバーチェーンをグイッと上へ引っ張ったシーナさま。
「あうっぅー!!」
 クリトリスが千切れそうなほど引っ張られ、膣の中でローターが大暴れ。

「あははは」
 乾いたお声で愉快そうに笑われたリンコさまがブルンとエンジンを掛け、キュルキュルキュルとタイヤを鳴らして、3人を乗せたお姉さまの愛車が薄暗い駐車場をゆっくり滑り出しました。

 そんなふうにして、降って沸いたような私のヘンタイ性癖お披露目イベントショーモデル体験は、幕を閉じたのでした。


非日常の王国で 01