2015年7月6日

オートクチュールのはずなのに 10

 座ったまま、あらためてリビングルームを見回してみました。
 すっごく広い。
 確実に20帖以上ありそう。
 玄関からまっすぐ入って突き当たったドアが、リビングルームの横幅のちょうど真ん中あたりに位置して、その先に横長な長方形の空間が広がっています。

 お部屋の突き当たりは、横長な一面全体が白いカーテンで覆われているので、おそらく全面窓なのでしょう。
 だとしたらすごく陽当たり良さそう。
 窓を背にすると左側にダイニングテーブルセット。
 右側は、床にライトブラウンのふかふかそうなシャギーラグが敷かれたソファーコーナー。
 大きなモニターの壁掛けテレビが側面に掛かっていました。
 たとえば8帖のお部屋を横並びに三つ並べて、全部の仕切りを取り払った感じ。
 そのくらい広々とした空間でした。

 私は、そんなお部屋のほぼ中央、周りに何も無いフローリングの上に座っていました。
 私とお姉さまが転げまわったとおりに、床のあちこちに小さな水溜りが出来ていました。
 お姉さまと私の、欲情の落し物。
 大変!まずはお掃除しなくちゃ。
 立ち上がろうとしたとき、お姉さまが戻ってこられました。

「はい、これでとりあえず汗を拭くくらいで、しばらく我慢してね」
 ふかふかのバスタオルをくださいました。
「あと、お料理で油や熱湯を扱うときは、これだけは身に着けてもいいことにするわ」
 折りたたんだ真っ白い布を手渡されました。

「エプロンよ。飛沫が跳ねて、肌を火傷したりしちゃったら可哀相だからね」
 お姉さまが、そこまでおっしゃって、いたずらっぽくニッて微笑みました。
「もっとも、直子みたいな子なら、そういう痛ささえ愉しめるのかもしれないけれど」
「あの、いえ、お気遣い、ありがとうございます」
 まだ全裸のままのお姉さまの、形の良いバストに目が泳いで仕方ありません。

「さっき入ってきたドアを抜けて、左側の最初のドアが洗面所、その向かいのドアがトイレ。トイレ側にある別のドアはあたしの寝室だから開けちゃだめ」
「キッチンは、見れば分かると思うけれど、ダイニングの奥ね。掃除用具とかは洗面所に入ってすぐのロッカーにあるから」
「ということで、あたしはシャワーしてくるから、後はよろしくお願いね」
 左手にまだ何か持ったままの全裸なお姉さまが、今度は玄関のほうへつづくドアへとスタスタ歩いて行かれ、ドアの向こうへ消えました。

 いただいたタオルでざっとからを拭ってから、えいやっ、と家政婦モードに切り替えました。
 まずは、床に脱ぎ散らかしたお姉さまのお洋服一式を回収。
 お姉さまの残り香にアソコがキュン。
 玄関口に置きっ放しだったお買物のレジ袋やふたりの私物をリビングへと運び、片隅にひとまとめ。
 
 キッチンに移動して、お買い物の成果を所定の位置へ。
 キッチンも広々としていて使いやすそう。
 大きな冷蔵庫には、お姉さまがおっしゃった通り、数本の飲み物と調味料類しか入っていませんでした。

 教えていただいた洗面所へのドアを開けると、これまた広々。
 洗面所というより、パウダールームと呼びたいお洒落な内装でした。
 その奥がバスルームらしく、お姉さまがシャワーを使う音が微かに聞こえていました。

 ロッカーから拭き掃除のお道具一式をお借りし、玄関からずーっと廊下を雑巾がけ。
 確かにあまりお掃除していなかったみたいで、バケツに汲んでいたお水がみるみる汚れていきました。
 リビングに戻って、広大なフローリングを四つん這いで這い回りました。

 今日初めて訪れたお宅の床を、なぜだか全裸で雑巾がけしている私。
 自宅でしていた、妄想ごっこ、ではなくて、正真正銘、ご主人さまにお仕えする全裸家政婦状態。
 念願が叶っちゃった、なんて考えたら、四つん這いで垂れ下がったおっぱいの先端へと、血液がぐんぐん集まってきました。

 床のお掃除を終えてキッチンへ。
 お姉さまは軽くとおっしゃっていたけれど、冷凍ピザだけではさみしいので、簡単な野菜サラダを作ることにしました。
 レタスやキュウリを洗い、使いそうな食器類も念のため丁寧に水洗いしました。

 食器棚のガラスやステンレスに、自分の赤い首輪だけの全裸姿が映っています。
 使い慣れていないよそさまのシンクで、お腹の辺りの素肌を濡らしてくる水しぶきの飛沫に、ピクピク反応してしまいます。
 これから二日間、私はずっと裸のままお姉さまのお部屋で過ごすんだ・・・
 艶かしくも甘酸っぱい、エロティックな気分でレタスをちぎりました。

 ダイニングテーブルに食器やドレッシングを並べていたら、リビングのドアがバタンと開きました。
「ふぅー。いい気持ち。さっぱりしたぁー」
 頭にタオル、からだにバスタオルを巻きつけただけのお姉さま。
「サラダも作ったんだ、気が利くじゃん。洗面所で髪乾かしてくるから、もうピザ焼き始めていいわよ。あと、飲み物はビールね」
 それだけ言い残して、再びドアの向こうに消えました。

 ツヤツヤした布地、たぶんシルク、で薄いベージュ色のバスローブを羽織ったお姉さまがダイニングテーブルに着席するのと、二枚目のピザを入れたオーブンレンジがチーンと一声鳴いたのがほぼ同時でした。
 お風呂上りのほんのり上気した艶やかなお顔に、ついさっき、ふたりで貪り合ったときの、悩ましいお顔がオーバーラップします。

「カンパーイッ!」
 チンッ、とガラスが触れ合う音が響いた後、黄金色の液体がなみなみと注がれたくびれグラスをゴクゴク一気に飲み干したお姉さま。
「あーーっ美味しいっ!やっと休日が来た、っていう気分になれたわ」
 ピザをつまみ、サラダをつつき、楽しいおしゃべりタイムの始まりです。

「すごくステキなお部屋ですね。あんまり広いのでビックリしちゃいました」
「うん。西洋型1LDKっていう触れ込みだったの。最初はあたしもただっ広くていいな、って思ってたのだけれど、最近は持て余し気味かな。なんだか逆に寒々しい感じしない?」
「そんなことないです。うらやましいです」
「住み始めの頃は、こんな家具を置いてとか、いろいろ夢膨らませていたのにね。帰ってくるヒマがないから、ぜんぜん弄れなくて。結局今でも、ほとんど引っ越してきたときのまんまなの」
「だからあまり物が置いていないのですね?」
「たまに帰って来ても、結局寝室に閉じ籠っちゃうからね」
「ああ・・・」
「ここは誰かに貸しちゃって、会社のそば、って言うか直子んちのそばにでも引っ越そうかなって、最近は考えたりしてる」
「えーっ!?そんなのもったいないです、こんなにステキなお部屋なのに。あ、でもお姉さまが近くに住まわれたら、すっごく嬉しいですけれど」

「ところで直子、あのエプロンは着けてみた?」
「あ、いいえ。まだ・・・」
「あら残念。あれはなかなかの傑作なのよ。直子なら絶対気に入ると思う。もともとはアユミ用に作ったんだけれど」
「アユミさん?て?」
「忘れちゃった?あたしの学生の頃の友達」
「ああ、服飾部で、なんて言うか、私と同じような感じのかたっていう・・・」
「そう。思い出した?彼女のために作ったお下劣衣装のうちのひとつ。ほとんど彼女が持っていったはずだったのだけれど、なぜだかあれだけ、あたしの手許に残っていたの。捨てなくてよかった」
「へー。ちょっと着けてみましょうか?」
 席を立ち上がろうとして、お姉さまに止められました。
「いいわよ、焦らなくても。明日ゆっくり見せてもらうから」

「直子は、あっちのソファー周辺を陣地にして。一応ゲストテリトリー。背もたれ倒せばベッドになるから。毛布と枕は持ってきてあげる」
「あ、はい」
「ほとんどの電気製品は、あっちのテーブルのリモコンでオンオフ出来るから、勝手に使って」
「わかりました」

「明日起きたら、この部屋に直子が裸でいるのよね?なんだか不思議な感じ。いつの間にかあたしがマゾのメス犬ペットを飼うはめになっているのだもの、って、そうか!直子はゲストじゃなくてペットっだった」
「はい・・・それにそれは、私がお願いしたことですから・・・」
「うん。あたしもかなり愉しみではあるの、直子のマゾっぷり。明日はめいっぱい虐めちゃうつもりだから、覚悟しておきなさい。持ってきたグッズ類は全部出しておいてね」
「はいっ!お姉さま」

「モップもあったのに、わざわざ雑巾がけしてくれたのね?」
 リビングの隅に置きっぱなしの、雑巾を掛けたバケツをご覧になっての一言。
「やっぱりメス犬だから、四つん這いになりたがるのかしら?」
 愉しそうに笑って、グラスを飲み干すお姉さま。
「直子がこの部屋にいるあいだ、身に着けていいのは、さっきのエプロンと、拘束用にロープとかチェーン。あ、手錠と足枷もおっけー。あとは、そうね、洗濯バサミならいくつでもいいわよ」
「明日起きたとき、全裸家政婦直子がどんな姿で迎えてくれるか、今からとっても愉しみ」

 パクパク食べてビールもグイグイ飲んで、いっぱいしゃべる絶好調なお姉さまも、やがてだんだん、なんだかトロンとおねむさんなお顔になってきていました。
「ふぁーっ。なんだか気持ち良く酔ってきた。グッスリ眠れそう」
「少しのあいだ仕事は忘れて、直子をたくさん虐めなきゃ・・・」
 テーブルの上のお料理も、あらかたなくなっていました。

「この感じが消えないうちに、今夜は休ませてもらうわね。あたしって、ホロ酔いが醒めちゃうと、一転して寝付けなくなっちゃうタチだから」
 お姉さまがユラリと立ち上がりました。

「明日は多分、お昼頃まで起きてこないと思って・・・ブランチはホットケーキがいいかな・・・バスルームにはあたしのシャンプーやらが置いてあるし、ドライヤーとかもご自由に」
「あたしが寝ているあいだは、何をしていてもいいから・・・寝室は防音してあるから掃除機でも洗濯機でも使って大丈夫・・・オナニーも許しちゃう・・・あ、もちろん疲れていたら寝ちゃってもいいけれど」
「直子、歯ブラシとか、お泊りセットは持っているわよね?・・・ああ、眠い・・・」
 心底眠たそうなお声で、ゆっくりゆっくり思い出すようにおっしゃるお姉さま。

「あと、あたしの下着とかタオルとかを、洗濯しておいてくれると嬉しいかな、明日でいいから・・・えっと、あたしの服は・・・」
「はい。あそこにまとめてあります」
 部屋の隅を指さす私。
「ああ。ありがとね・・・スーツはクリーニングに出さなきゃだめかな・・・洗濯機は洗面所の奥、洗剤もそのあたりにあるはず・・・ふわーぁ」
 ご自分のバッグと衣類を手にしたお姉さまがフラフラ、ドアの向こうへ消えていきました。

 テーブルを片付け食器類を洗っていると、ドアの開く音。
 あわててリビングに出ると、お姉さまが毛布類を抱えて、ドアの前に立っていらっしゃいました。
「あ。わざわざありがとうございます」
「うん・・・それじゃあ、おやすみー」
 お姉さまのからだが、ふうわりと私を包みました。
 シルクのなめらかな感触に包まれる、私の天使さまからのハグ。

「あー、直子、かなり臭うわよ・・・えっちな臭い・・・寝る前にこんなの嗅いだら、いやらしい夢見ちゃいそう・・・早くシャワーしなさい」
 からだを離したとき、お姉さまがからかうみたいにおっしゃって、ふわーっと大きな欠伸。
 いくら眠くても、イジワル口調を忘れないお姉さま、
「おやすみー」
「おやすみなさい、お姉さま。良い夢を」
「愛してるよ、直子」
「私もです」
 
 今にも崩れ落ちそうなくらい眠たげなご様子だったので、それ以上のわがままは言わず、ドア口でお姿が消えるまでお見送りしてから、キッチンに戻りました。

 洗い物を片付けてから、お姉さまのお言いつけ通りバスルームへ直行。
 赤い首輪は濡らさないように脱衣所で外し、今さっき嗅いだばかりの、お姉さまと同じ香りのローションやシャンプーをお借りして、全身を入念に洗いました。
 お姉さまの香りに包まれながら全身を撫ぜ回していると、自然と今日一日、お姉さまとお逢いしてからのあれこれを思い出してしまいます。

 ほのかさまもいる前でのリモコンローター責め。
 人前での首輪姿ご披露。
 後部座席での全裸オナニーと四つん這いお尻露出行為。
 スーパーでの前開きボタン外しと自発的露出。
 駐車場での下半身丸出し。
 
 どの行為でも、今まで感じたことの無いほどの強烈な羞恥と恥辱、喩えようもないほどの興奮と快感を感じていました。
 とくに、裾の一番下のボタンを外してから、レジカウンターのみなさまに向けての自発的なお尻露出、そして、そのままの格好で駐車場までの夜道を歩いていくときに味わった被虐と羞恥は、このまま世界が終わって欲しい、と思うほどの恥辱感とともに、私でもここまで出来るんだ、という、達成感を伴う淫靡な高揚感で気がヘンになりそうなほどでした。

 同時に思い出す、大好きなお姉さまの蠱惑的なお言葉とその口調、お顔や振る舞い、その愉しげな表情・・・
 そして最後にたどり着いた、ケダモノの交わり。
 私の両手は自然に敏感な場所へと伸び、そこを中心に泡まみれの全身を執拗に、いつまでもいつまでも責め立てつづけました。

 バスルームを出てリビングに戻り、横になったのは夜の11時過ぎ。
 いつもの私なら、まだ眠るには早い時間でした。
 精神的にはとても高揚していて、もう少し起きていたかったのですが、全身が心地良い疲労感でぐったりしきっていました。
 今夜は早く寝て、明日は早く起きて、お姉さまが起きてくるまで家政婦のお仕事をがんばろう!
 そう心に誓って、目をつぶりました。

 さっき脱衣所でからだを拭った後、ごく自然に、当然のように、お化粧台の上に置いておいた赤い首輪に手が伸びていました。 
 今は枕に押し付けられて首周りに当たるそのレザーの感触を、とても愛おしく感じ始めていました。


オートクチュールのはずなのに 11


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