2014年9月7日

ランデブー 6:42 10

 押入れとエアコン以外は何も無い和室六畳間の中央に、二組のお布団が並べて敷いてありました。
「わぁ、なんだか旅行に来たみたい。旅館みたいですね」
「ここは本当に寝るためだけの部屋だからね。余計な物は置いてないの」
 おっしゃりながら、お姉さまがバスローブの紐を解き、スルスルッと脱ぎ捨てて裸になりました。

「裸になると、また何かしたくなっちゃうけれど、あたし、明日のために寝ておかないとまずいから、ごめん、電気消すね」
 お姉さまが枕元に置いてあったリモコンで電気を消し、お布団の上に座っていた私を抱き寄せてチュッと頬にキスをくださってから、ドアに近い側に敷いたほうのお布団に潜り込みました。
 残念だけれどわがままは言えないので、私も隣のお布団に潜り込みます。

「直子はあたしが出て行った後も、好きなだけ寝ていていいからね。明日はうちの会社もお休みだから、ここにも誰も来ないはず」
 暗闇の中、私のほうを向いているらしいお姉さまのハスキーなお声が聞こえてきました。

「冷蔵庫に冷凍ピラフとか、いろいろあるがら遠慮しないで自由に食べていいわよ。シャワーもご自由に」
「あ、はい」
「そうそう、この部屋はオートロックだから、いったん外に出たらもう入れないからね」
「もしもうっかり裸のまま廊下に出てドア閉じちゃったら、大変なことになっちゃうわよ?」
 おそらく、そうなったときの私を想像しながらおっしゃったのでしょう、クスクス笑い混じりなお声でした。

「たぶん来ないとは思うけれど、宅配便とか、他の誰が来ても出なくていいから。インターフォンにもね」
「あと、明日もし晴れていたら、掛け布団だけ、ベランダに干してくれると嬉しいかな、午前中いっぱいくらい」
「出来たらでいいわ。用事があって午後まで居られないなら、そのまま押入れにしまってくれればいいから」
「はい。別に明日は用事ありませんから」

「ンンーーーッ」
 お姉さまがお布団の中で伸びをされたよう。
「おっけ。それじゃあ、おやすみー」
「おやすみなさい」

 お姉さまのお布団が束の間ゴソゴソ動いて、やがてしんとなりました。
 私も目をつぶりましたが、頭の中で今日の出来事のおさらいが始まり、なかなか寝つけません。
 4、5分くらいそうしていたら、再びお姉さまのお布団がゴソゴソしだしました。

「直子?」
 ひっそり声で問いかけられます。
「はい」
「起きてたの?」
「はい、なかなか眠れなくて」
「あたしもよ。気が昂ぶっているのか目が冴えちゃって」

「お姉さまは、明日何時に起きるおつもりなのですか?」
「5時半のバスだから、4時半くらいには起きないとね」
「あらら。もうあんまり時間がないですね」
 おそらくもう深夜2時近くになっているはずです。

「直子?」
「はい?」
「こっちおいで」
「え?」
「もういいや。バスや飛行機の中でも眠れるし、この昂ぶりを鎮めるほうが建設的みたいだから」
 お姉さまがご自分の掛け布団の端を開き、私は喜んで滑り込みました。

 お姉さまのスベスベなお肌に密着して、横向きに抱き合いました。
 唇を重ね、お布団の下でおっぱい同士を密着させ、脚を絡めます。
 お姉さまのしなやかな右の太腿を私の両脚で挟み、お姉さまの右腿が私の股間をスリスリ、私の左腿がお姉さまの股間をスリスリ。
 いやらしい声が出そうになると、お姉さまの舌が塞いできます。
 粘膜を互いの腿に擦りつけるように腰を振って、ふたり、じわじわと高まっていきました。

 そのうち、お互い左腕だけで抱き合う形となり、右手は互いの秘部へ。
 互いの指が互いの粘膜を執拗に責め立てます。
 上半身をクネクネくねらせて乳首を弾き合うあいだも、唇はずっと重ねたまま。
 掛け布団はすっかりはだけたようで、真っ暗闇の中、上と下の唇を貪り合うクチュクチュという音と、ハアハア荒い息遣いだけが響きました。

「んんんぅーうっ!」
「うっうぅーんっ!」
 クチュクチュのピッチが上がり、互いの背中が弓反ります。
「んはぁーっ!!!」
「あふぅーっ!!!」
 ふたり、ほぼ同時にイって、抱き合ったまま、ぐったり。
 そして、ぐっすり。

 目覚めたとき、自分がどこに居るのか一瞬わかりませんでした。
 すぐに思い出して上半身を起こします。
 私は、最初に寝たほうのお布団に戻っていて、お隣のお布団はもぬけの殻。
 掛け布団だけ、きれいにたたまれていました。

 今何時なのだろう?
 薄暗い寝室を見渡しても、どこにも時計は無いみたい。
 お姉さまったら、目覚ましもかけず時計も無しで、ちゃんと起きて出かけられたんだ。
 さすがお姉さま、って感心しながらも、フワーッとあくびをひとつ。
 えいやっ、て立ち上がり、お隣のリビングへ。

 壁の丸い時計は、朝の9時を少し回っていました。
 ターコイズブルーのカーテンを開くと、もう一枚真っ白なレースカーテン。
 大きな窓から眩しい陽射しがパーッとリビング内に射し込んで、お外は快晴のようでした。

 昨夜までお姉さまの上着を着ていたワイヤートルソーが、私のジャケットだけまとっています。
 テーブルの上に、旅行用のような歯磨きセットと白い紙と外国ブランドのショッパーがひとつ、そして私のバッグが置いてありました。
 白い紙は、お姉さまからの置き手紙でした。

 直子へ
 おはよう。よく寝ているようなので起こさずに行きます。
 火曜日に戻る予定なので、戻ったら連絡します。次に会う日を決めましょう。
 ブラウス、スカート、ソックスは汚れているのでクリーニングに出しておきます。
 代わりの服を置いておくので、帰りはそれを着て。直子にはニットが似合うと思う。
 下着は無しよ。ドレイだから(笑)
 ハブラシも持って帰ってね。
 次に会う日が楽しみです。それではよい一日を

 そのお手紙を二度読み返してからたたんで自分のバッグにしまいました。
 それからショッパーの中身を取り出します。
 真っ白なニットワンピース!
 生地がふわふわ軽くって、ひょっとしてカシミア?
 ラウンドネックの七分袖で、すっごく可愛い!

 すぐにでも着てみたかったのですが、まずは朝のおつとめをしなければ。
 歯磨きセットを手に取り洗面所へ。
 
 鏡を覗いたら、それに気づいてしまい、途端に全身が火照ってしまいました。
 私の首筋や胸元、二の腕にうっすらと残る淡い内出血。
 お姉さまからのキスマーク。
 数えたら、鏡で見えるだけでも5つありました。
 もう、たとえようもないくらい幸せな気持ちです。

 歯を磨いてから顔を洗おうと前髪を上げたとき、おでこにも赤っぽい痕があるのに気がつきました。
 こちらのは、ルージュの痕のよう。
 淡いながらも、はっきり唇の形に残っています。
 きっとお姉さまがお部屋を出る直前に、私のおでこにチュっとしてくださったのでしょう。
そう考えたら、鏡の中で自分の顔がだらしなく緩み、えへへ、って笑ってしまいました。

 おでこのマークを消さないように注意深く顔を洗っていたら、良いアイデアが浮かびました。
 
 今日は別に予定も無いし、ゆっくりしていけます。
 それに、このお部屋にいる限り、着ける下着が無いので、必然的に全裸でいることになります。
 だったら、いつも自分の家で妄想と共に実行している全裸家政婦を、実際に、このお部屋でやってみたらどうだろう、って。
 
 昨日のお姉さまとのあれこれを思い出して余韻に浸りつつ、お姉さまへの感謝の気持ちを込めて、このお部屋を綺麗にお掃除してから帰るのです。
 お姉さまのお願い通り、お布団を干して、ついでにバスタオルとかもお洗濯して、自分で汚した床やソファーももう一度綺麗にして・・・
 そう決めたら、ワクワクムラムラしてきました。

 おトイレの後、とりあえずリビングに戻って、段取りを考えることにします。
 ソファーにバスタオルを敷いて腰掛け、あらためてお部屋を見渡しました。
 昨日まで来たこともなかったよそさまのお部屋で、ひとりこうして全裸で居ることに、そこはかとなく興奮してきます。
 なんで私は今こんなところで、裸ん坊なのだろう?
 誰も訪ねて来ないことがわかっているとは言え、絶対非常識です。
 不安感、背徳感、罪悪感、倒錯感・・・
 そういうのがないまぜになって、あそこがキュンキュン疼きます。
 
 だめだめ、そういうのはあと。
 お仕事が終わってから。

「全裸家政婦直子、絵美お姉さまのために、精一杯ご奉仕、がんばります!」
 マゾの服従ポーズになって、実際に口に出して言ってみて、自分で照れてしまいました。

 お布団やお洗濯ものは、お日様がある早いうちにお外に干さなければいけません。
 まずはお布団を干してしまいましょう。
 
 リビングの突き当たりのレースのカーテンが掛かった大きな窓。
 その向こう側がベランダのようです。
 あの窓を開けると、お外の様子がどうなっているのか?
 全裸家政婦にとっては、最初から難問でした。

 立ち上がって窓際へ。
 レースカーテンを開けると全面曇りガラスの窓。
 窓の鍵をはずしてから、向かって右側のターコイズブルーのカーテンに裸身をくるみ、窓をそっと開けてみました。
 もあーっとした街の喧騒音と共に、春の陽射しとそよ風がお部屋に舞い込んで来ます。
 いいお天気。

 カーテンの陰からお外を覗くと、一段低くなっているベランダ自体は意外に狭く、幅は畳一畳分くらい、細長いスペースでした。
 目隠しフェンスはコンクリート製ぽくて、隙間も無くかなり高め。
 ベランダの向こう側は青空で、見える範囲に建物は見えません。

 これなら裸のまま出ても大丈夫かな?
 でも、ここはお姉さまの会社のお部屋だし、万が一誰かに見られちゃって変な噂になったらご迷惑だし・・・
 目隠しフェンスが高めなことはわかったので、カーテンの陰から出て、その場にしゃがみました。
 片方の窓を全開にして、しゃがんだままベランダに降りてみます。
 両脇のお部屋のベランダとは上まできっちり目隠しされているので、しゃがんでいる分には、どこからも見られちゃう心配は無いみたい。

 お外側の目隠しフェンスは、1メートル3~40センチくらい?
 私が立ち上がったら、バストギリギリかな。
 ステンレスの物干し竿が、そのフェンスより高い位置に二段あるので、そこにお布団を掛けるとしたら、背伸びしなければ無理。
 だからやっぱり、最低バストだけは何かで隠さないと。
 バスタオルでも巻こうか・・・

 しゃがんだままフェンス際まで寄って、恐る恐る少しづつ腰を上げ、顔だけフェンスを超えるように外へ向けると、眼下に緑の木々が見えました。
 ベランダの対面は広めな公園のようです。
 子供たちのはしゃぐ声が聞こえてきます。
 中腰のまま急いでリビングに戻りました。

 全裸のままベランダに出て、お布団を干すのは無謀のようです。
 さあどうしましょう?
 考えながらも、私の下半身は今の冒険でヌルヌルでした。
 だって、しゃがんだままとは言え、全裸でよそのお家のベランダに出ちゃったのですから。
 お外の空気が、文字通り全身をやさしく包んで愛撫してくれたのですから。

 ああんっ、今すぐオナニーしたいぃ!
 だめよ!お仕事が終わってから!
 
 心の中のふたりの私の鬩ぎ合いは、お外が公園、と知ったとき、すでに答えを出していました。
 ベランダ下の景色を見て、公園、という言葉が浮かんだ瞬間、昨夜の裸ブレザーのスリル、恥ずかしさ、興奮をまざまざと思い出していました。

 この状況なら、こうするしかありません。
 寝室に戻り、掛け布団を2枚とも窓際に運びました。
 それから、お姉さまのトルソーに駆け寄り、自分のジャケットを取って素肌の上に羽織りました。
 ジャケットの裏地が素肌を包む感触で、昨夜の性的高揚が鮮やかに蘇ります。
 上のボタンひとつだけ留めて、窓際に戻りました。

 掛け布団を一枚持ってベランダへ。
 上半身は裸ブレザー、下半身は丸裸。
 ベランダとは言え立派にお外なのに、私ってば、なんていう格好。
 破裂しそうなドキドキを感じつつ、何食わぬ顔で背伸びしてお布団を物干しに掛けます。
 背伸びするとジャケットの胸元が浮いてたわみ、自分の胸元を見下ろすとたわんだVラインの中で、おっぱいが乳首まで丸見えになっていました。
 
 二段ある物干しの高いほうにお布団を掛けると、お布団がいっそう高い目隠しとなり、私の全身をすっぽり隠してしまうようです。
 ということは、干したお布団の裏側なら・・・
 淫らに歪む自分の顔を自覚しながら、まだ何も干していないほうのフェンスに寄って眼下の公園を見下ろしました。

 公園では何組かのママさんと小さい子供たちが甲高い声を上げて遊んでいました。
 フェンスに両手を乗せて公園を眺めながら自分の淫らさに酔っていると、こちらを見上げている女の子に気づきました。
 ずいぶん遠くだったけれど、目が合った気がしました。

「おねえーさーん、おはよーございまーすっ」
 5、6才くらいの可愛らしい女の子が私を見上げて手をぶんぶん振ってきました。
 傍らに居たママさんらしき人も、娘につられて私を見上げ、こちらに小さく会釈をしてから、ニコニコと女の子に何か語りかけています。
 私も会釈を返し、小さく手を振り返しました。
 それを見た女の子は、ますます喜んで手を振りつづけます。
 しばらく手を振り合っていたら、もうどうにもがまん出来なくなって、リビングに戻りました。

 もう一枚のお布団を、お外を見ないようにして大急ぎで干し終え、リビングに戻るなりジャケットのボタンをはずし、フローリングに寝転びました。

 なんてはしたない女なのよ、直子!
 裸ブレザーに下半身丸出しで、よそのお家のベランダに出て、いたいけな女の子にニコニコ手を振ったりして・・・
 こんなによく晴れた土曜日の午前中なのよ?普通の人は健全に親子で公園を楽しんでいるのよ?
 それなのに直子はえっちなことばっかり考えて、ヘンタイなことしか頭になくて、オマンコからおツユをだらだら垂らしながら嬉しそうに微笑んで・・・

 乳首とおマメをぎゅうぎゅう潰して自分を虐め、しばらくふしだらな快楽に耽ってしまいました。

 やっとムラムラが落ち着いてからは、真剣に全裸家政婦にいそしみました。
 昨夜ふたりが使ったバスタオルとシーツをお洗濯。
 干すときは、掛け布団2枚が目隠ししてくれているので、思い切って全裸のまま、ベランダに出ちゃいました。
 お布団をあげて仕舞って和室のお掃除。
 リビング全体の床とソファーをもう一度念入りに拭き掃除。
 おトイレとバスルームも水浸しになりながら入念に磨きました。

 気がつくともう午後2時近く。
 さすがにお腹が減ったので、お姉さまのお言葉に甘えて、冷凍ピラフとインスタントのスープをご馳走になりました。
 食休みはファッション雑誌をめくって、しばしまったり。

 3時前にベランダに出ると、バスタオルもシーツもポカポカに乾いていました。
 シーツは寝室の押入れへ、バスタオルは脱衣場の籠の中にしまいました。
 ここまでは全裸。
 あとはお布団です。
 これを取り込んだら、もう帰るだけ。
 なので、お姉さまがご用意してくださったニットワンピースを着てみることにしました。

 すっごくいい感じ。
 布地表面はスベスベで、とっても軽くて、素肌でもチクチクしなくて、それでいてあったかい。
 ただひとつ。
 サイズが小さいのか、もともとそういうデザインなのか・・・
 すっごくボディコンシャス。

 完全に私のからだのライン通りのシルエットなんです。
 丈は膝のちょっと上くらいなので、下半身はノーパンでも良いのですが、問題は上半身。
 バストのふくらみが、わたしのおっぱいの形通りに布に包まれ、その左右の先端にまさに、これ見よがし、と言う感じで、恥ずかしい突起がポチポチッと浮き出ていました。
 うわー、なんだかすごくえっちぃ。
 洗面所の鏡に映して、ひとり赤面してしまうほど。
 だけど、これはお姉さまのお見立て。
 そう考えたら、この姿が自分らしいのかな、とも思えてきました。

 その姿でベランダに出て、お布団を取り込みました。
 お外は少し陽が翳ってきていますが、公園内にはまだ、けっこう人がいました。
 みなさんベンチに座ってまったりされているご様子。
 取り込んだお布団を寝室の押入れにしまい、窓に鍵をかけてカーテンを2枚とも閉じました。

 さあ、そろそろおいとましましょう。
 ジャケットを羽織ってボタンを留めたらバストのポッチも隠れ、コーディネート的な色合いもおシャレ。
 昨夜の裸ブレザーノーパンミニスカに較べたら、ぜんぜんファッショナブル。
 
 このままショッピングモールにお買い物にでも行きたいような気もするけれど、やっぱり今日はまっすぐ帰ります。
 お姉さまとの昨日からのあれこれを反芻して、もう一度思い切り身悶えたい気分だから。
 戸締りをしっかり確認して、忘れ物をチェックして、お部屋の玄関ドアを出たのは、午後3時42分。

 そんなふうにして、私と絵美お姉さまとのおつきあいは、始まりました。


就職祝いは柘榴石 01

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