2011年10月8日

ピアノにまつわるエトセトラ 02

 母は、もうとっくにフラのお教室には行かなくなっていましたが、あのときの3人、ミサコさんとタチバナさん、そして大貫さんとはずっと親しくおつきあいしているみたいでした。
 ミサコさんのご紹介で彫金を習い始めたり、4人で温泉旅行に出かけたり、いろいろしているようです。
 我が家に遊びに来たことも何度かあったみたいなのですが、私が学校に行っていたり外出中だったりで、大貫さんにお会いするのは、中2の夏休み以来でした。

 お約束の時間の少し前に、大貫さんが我が家にやって来ました。
 豊かな黒髪に軽くウエーブがかかった他は、あの頃とまったく変わらない、いえ、よりいっそうお美しくなられていました。
 
 シンプルだけれど肌触りの良さそうな真っ白いブラウスに、ツヤツヤした布質のベージュのロングスカートとジャケットを合わせた大貫さんの姿は、どこのご令嬢?って思うくらいお上品でお綺麗でした。

「直子さん、お久しぶりね」
 
 リビングでジャケットを脱ぎ、ソファーに優雅に腰掛けた大貫さんがニコッと笑いかけてきました。

「ご指導、よろしくお願いします!」
 
 ペコリとお辞儀を返した私は、その後上げた視線がどうしても、白いブラウス越しの大貫さんのバストに向いてしまいます。
 セクシーな形にカーブを描くブラウスの布。
 
 脳裏に浮かぶのは、あの夏の日に見た極小ビキニから盛大にはみ出していた形の良い、たわわなおっぱい。
 私は、あわてて脳内の画像を消し、お愛想笑いみたいにぎこちなく笑い返しました。

「私からもよろしくお願いするわね、ゆうこさん。直子をビシビシ鍛えちゃって」
 
 母が紅茶を煎れながら、茶化すみたいに私と大貫さんを見比べてニヤニヤしています。

「ううん。わたしも直子ちゃんにぜひもう一度会いたいと思っていたから、お話をいただいて、嬉しくなっちゃた。仲良くやっていきましょうね、直子ちゃん?」
 
 大貫さんが蕩けるような妖艶な笑顔を私に向けてくれました。
 私は、文字通り見蕩れてしまいます。
 こんなに綺麗でオトナな雰囲気の美人さんと、これから週一回は必ず会えるんだ。
 その上、この美人さんには、絶対に私と相通じるえっちな秘密があるはず…
 心がどんどんワクワクドキドキしてきました。

 少しの間、3人でお茶を飲みつつ世間話でまったりした後、私のお部屋に移動してピアノレッスンが始まりました。
 母も傍らで見学しています。

「幼稚園の先生になるためのピアノなら、バイエルがだいたい弾けて、簡単な楽譜が初見で弾けるっていうレベルまでもっていけばいいだけだから、直子ちゃんならすぐに体得出来るわよ」
「短期間でラフマニノフやリストを弾きこなしたい、なんて言われたら、わたしも考え込んじゃうけれど、ね?」
 
 まず最初に、私の指がどのくらい今動くのかを見た大貫さんが、やさしく言ってくれました。
 その後、大貫さんがバイエルの一番最初から順番に何曲か模範演奏してくれました。
 その演奏を聴いて、小学生の頃習った曲をどんどん思い出してきて、私も、なんとかなりそうだな、っていう自信というか、希望みたいなものを持つことが出来ました。

「直子ちゃんは、楽譜の読み方のルールもちゃんと覚えているみたいだし、意外と早く習得出来そうね」
「あとは、10本の指がちゃんと動くように日頃から訓練を積み重ねていけばいいだけ」
 
 最初のレッスンが終わった後、大貫さんはステキな笑顔で私の両手を取って、励ましてくれました。
 大貫さんの白くて長くて細くて綺麗な指。
 その感触にやっぱり、あの夏の日のことを思い出してしまい、ドキドキしてしまう私。
 お夕食を一緒に食べた後、母が車で大貫さんをご自宅へ送っているお留守番の間、私は自分のお部屋で大急ぎで久しぶりの思い出しオナニーをしてしまいました。

 大貫さんは、毎週金曜日の夕方に来てくれることになりました。
 夕方から1、2時間、集中してレッスンして、お夕食を食べて、それから母を交えてまったり世間話をして、たまには母とお酒を飲んで泊まっていかれることもありました。
 
 私は、大貫さんと会えることがすっごく楽しみになっていました。
 大貫さんは、やさしくて、優雅で、気さくで、いつしか私は親愛を込めて、ゆうこ先生、と呼ぶようになっていました。

 季節は秋が深まる頃でしたから、ゆうこ先生は毎週、長めのワンピースにフワフワのカーディガンとか、ゆったりしたジャケットにサブリナパンツとか、シックでエレガント系な服装で、ライトブルーな可愛らしい形の車に乗って我が家を訪れました。
 そのファッションがまたすっごく似合っていて、私は会うたびに見蕩れていました。
 
 レッスンも5回を数える頃になると、私もゆうこ先生みたいにオトナな雰囲気の女性になりたいなあ、っていう、まさに憧れの存在に変わっていました。
 私のもう一人の憧れ、やよい先生が動の魅力ならば、ゆうこ先生には静の魅力を感じていました。

 もちろん、ピアノの練習も一生懸命やりましたが、ゆうこ先生に一番聞いてみたいことは、ピアノに関することではありませんでした。
 
 あの夏の日に、なぜあんな水着を着せられていたのか。
 どうして、あんなに恥ずかしがっていながら、それでも着つづけていたのか。
 ゆうこ先生は、ああいう格好をすることが好きなのか。
 まだまだ他にもいろいろ。
 私との共通項を確認したくて仕方ありませんでした。

 でも、ゆうこ先生とお話しするときは、たいてい母も傍らにいましたから、そんなえっち系な質問は出来るはずもありませんでした。
 それでも、母とゆうこ先生の他愛も無いおしゃべりを注意深く聞いていると、段々とゆうこ先生の私生活がわかってきました。

 ゆうこ先生は、普段はゲームやアニメやドラマなどのBGMを作曲するお仕事をされていること。
 そのお仕事は、今はあまり本格的にはやっていなくて、気が向いたときにやる程度なこと。
 有名な歌手のライヴやレコーディングにも、たまにキーボードで参加することがあること。
 そういうときは、ほとんどご自宅に戻れない生活になること。
 
 私の他にもう一人、ピアノを教えている生徒がいること。
 別れた旦那さまは、まったく音楽とは無関係なお仕事の人で、離婚の原因は旦那さまのたび重なる浮気だったこと。
 お金はけっこう貯まっているので、あまりお仕事をしなくても暮らせること。

 母とゆうこ先生がお酒を飲んでいて、ゆうこ先生が少しだらしなくなっているとき、カレシが欲しいって思わないの?って聞かれたことがありました。
 私は、母がいるのがちょっと気になりましたが、思い切って言ってしまいました。

「私、男の人ってなんだか怖い気がするんです…」
 
 母は、あはは、と笑ってから、

「うん。高校女子は、そのくらい臆病でちょうどいいのだよ」
 
 ってニコニコしながら私の頭を撫でてくれました。
 ゆうこ先生も便乗して手を伸ばしてきて、私の髪を撫でながら、

「うんうん。わたしももう男はこりごり。今は直子ちゃんみたいな可愛い女の子と一緒にいるのが一番楽しい」
 
 しみじみした感じでおっしゃいました。

 それを聞いて照れ笑いを浮かべるだけの私でしたが、内心ではズキンドキンと胸が激しく高鳴っていました。
 ゆうこ先生と私、ひょっとするとうまくいくかもしれない。
 理由も無くそんな予感が芽生えていました。

 その頃の私は、いつもとは少し違う種類のムラムラを抱えていました。
 一人で闇雲にいやらしいことをして欲求を満たす、という今までのやりかたでは解消されない厄介なムラムラ。
 
 それは、誰かにからだをさわってもらいたい、誰かに抱きしめられたい、誰かをさわりたい、誰かを抱きしめたい、っていう欲求でした。
 自分で自分を慰めるのではなく、誰かを気持ち良くして、誰かに気持ち良くしてもらう快楽。
 
 それは、約3ヶ月前にやよい先生から教え込まれてしまった、贅沢な快感でした。

 今までに私のからだの隅々までさわって気持ち良くしてくれたのは、中3のときの相原さんとこの間のやよい先生、そしてユマさんの3人だけ。
 涼しさが深まる季節のせいもあるのでしょうが、最近はオナニーしていると頻繁に、その3人からの感触を思い出していました。
 
 つまり俗に言う、人肌恋しい季節、なのかな。
 誰かと裸で抱き合ってぬくもりを感じて、思う存分お互いの肌を貪り合いたい、っていう気持ちが日に日に高まっていました。

 やよい先生が東京に行ってしまい、そういう遊びが出来るお相手の心当たりはユマさんだけでした。
 実際、何度かユマさんに連絡をとってもみたのですが、メジャーデビューCDが出たばっかりのユマさんは、すっごくお忙しい日々を送っているらしく、地方にツアーに出ていたり、レコーディングで缶詰になっていたりで、いつもゴメンネのメールにキスマークの写メを添えた返信が返ってくるばかりで、デートのお約束は延び延びになっていました。

 やよい先生からは、お約束どおり定期的に課題が送られてきていました。
 自分でパイパンに剃毛する過程をビデオ撮影して送りなさい、とか、ミーチャンさん作の輪っかに洗濯バサミをいくつかぶら下げた、アソコの穴をまあるく広げて固定する装置が送られてきて、これを装着してオナニーしているところを自画録りしなさい、などの刺激的な課題も、やっているときは大コーフンしているのですが、それでも頭の片隅に、人肌への願望、が燻りつづけていました。

 そんなせいもあってか、自虐的なオナニーをしていると、いつもよりたくさん洗濯バサミをつけたり、ロープを肌にきつく食い込ませたりと、自分虐めの度合いが増してしまう傾向になっていました。

 そんなときに親しくおつきあい出来るようになった、妖艶なオトナの美女、ゆうこ先生。
 おそらく私と共通する恥ずかしい性癖をお持ちのはずな、ゆうこ先生。
 私のゆうこ先生へのえっちな想いは、日に日に募るばかりでした。


ピアノにまつわるエトセトラ 03

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