2010年12月18日

図書室で待ちぼうけ 10

土曜日の午前中。
私は、相原さんのお家へ行くのに何を着ていこうか、迷っていました。
相原さんは、火曜日の別れ際に、ジーンズではなくてスカートを穿いてきて、って指定してきました。
その言葉の裏には、二人でえっちなことをしようね、っていう意味が隠されているような気がします。

私にも、ある程度の覚悟は出来ていました。
相原さんのツルツルのアソコをさわらせてもらって、相原さんも私のからだをさわってくる・・・
私も裸にされちゃうのでしょうか?
いずれにせよ、くっつきあったりもつれあったりしちゃいそうです。
あまりヒラヒラしてるお洋服を着ていくと、しわくちゃになっちゃいそう。

いろいろ考えた末、薄めなデニムの膝丈フレアスカートに、ふんわりしたコットンの七分袖、前開きブラウスを合わせることにしました。
下着は、上下おそろいで水色のレース。
足元は、素足に裸足で低めのプラットフォームサンダル。
新しいお友達のお家に遊びに行く、と母に伝えたら用意してくれた、クッキーの詰合せが入った紙袋を持って、お気に入りの赤いショルダーポーチを肩からななめにかけて、お家を出ました。
6月にしては、カラリと晴れあがった青空が気持ちいい、過ごしやすそうなお天気です。
相原さんのショーツは、丁寧に手洗いしてから注意深くアイロンをかけて、きれいにたたんでポーチに入れてあります。

約束の時間の5分前にコンビニ前に着きました。
まだ相原さんは、来ていないみたい・・・
と思ったら、通りの反対側で信号待ちをしている相原さんをみつけました。
黒いセル縁のメガネをかけています。
あれ?相原さんって目が悪かったのかな?
なんて考えてると信号が変わり、相原さんが小走りに近づいてきます。
「お待たせー」
「ううん。私も今来たばっかり」
「あっ、ちゃんとスカート穿いてきてくれたんだ。そのブラウスと合ってる。森下さん、すっごくカワイイ」

相原さんは、浅いラウンドネックでなめらかそうなニットの、鮮やかなオレンジ色のワンピースを着ています。
半袖で、胸元から膝のちょっと上くらいの裾まで、10個くらいのボタンで留める前開きのワンピースです。
ウエストを同じ色の紐で縛っていて、腰から下はゆったりしていますが、上半身は、ややフィット気味。
胸元にだけ白くボーダーのラインが幾筋か入ったデザインなので、相原さんのたおやかなバストのふくらみが白いラインの凹凸で強調されています。

「相原さんて、目、悪かったの?」
私は、相原さんの胸のあたりにチラチラ視線を走らせながら、聞きます。
「ううん。これは度が入っていないファッショングラス」
そう答えてから、私の耳に顔を近づけてきました。
「わたし今、これの下は素肌なの。身に着けてるのはこのワンピ一枚だけ。ちょっと恥ずかしいから、ちょっと変装」
「このボタン、全部はずしたら即、オールヌード」
照れてるみたいに笑っています。
「こんな恰好で外に出るの初めて。すごくドキドキしてる」
そう言われて私は、どうしてもまた相原さんの胸のあたりに視線が戻ってしまいます。
「でもだいじょうぶ。私の家、ほんとすぐそこだから。さ、行こ」
相原さんが私の背中を軽く押して、さっき相原さんが渡ってきた横断歩道をまた戻りました。

相原さんのお家は、本当にすぐそばでした。
横断歩道を渡って、10メートルも歩かないところに建っている大きなマンション。
バレエ教室に行くとき、駅のホームからいつも見えている、駅前の高級マンションでした。
エントランスをカードキーで通過して、エレベーターに二人で乗り込みます。
相原さんがメガネをはずしました。
襟元のボタンを一つはずして、そこにメガネのつるをひっかけます。
相原さんの白い胸元が少し覗きます。
「あの監視カメラさえなければ、ここでもう脱いじゃって森下さんに見せちゃうのになあ」
エレべーターの天井に付いている防犯カメラを指さして、相原さんが冗談めかしてそんなことを言って、私を見て笑っています。
相原さんのお家は8階でした。

「誰もいないから、遠慮しないで。さ、どうぞ」
「おじゃましまーす」
玄関口で一応大きな声で言ってから、サンダルを脱ぎます。

玄関を入ると廊下がつづいています。
相原さんの先導でいくつかのドアを通り過ぎます。
うっすらとローズ系のいい香りがただよっています。
一番奥のベランダに面したところが広いリビングになっていました。
「広いお家ねえ。相原さんて、ご家族大勢いらっしゃるの?」
「ううん。うちはボシカテイ。母親とわたしだけ」
「えっ?あっ、ご、ごめんなさい」
「別にいいよ。気にしないで。ちょっとそこに座って待ってて」
リビングの中央にある柔らかそうなソファーを指さして、相原さんはダイニングのほうに消えました。

私は、ソファーに浅く腰掛けて、広いリビングを見回しました。
あまり物が置いてなくて、スッキリした感じの落ち着いた雰囲気です。
天井にある照明が豪華。
枠に複雑な模様が施してあって、金色にキラキラ輝いています。
窓が広く大きくとってあって、ここは8階ですから、少し開いたカーテンの向こうに見渡すばかりの青空が覗いています。
壁には何枚か、賞状のようなものが飾ってありました。

相原さんが銀色のトレイを両手で持って、戻ってきました。
「はーい。今日はいらっしゃいませえ。とりあえずケーキ、食べよう、ね」
イチゴの乗った美味しそうなミルフィーユと紅茶が入ったカップをテーブルに置いて、私の向かい側のソファーに座りました。
「ありがとう。美味しそう」
「それでは、いっただきまーす」

「わたしが小学校二年のとき、両親が離婚したの」
相原さんがフォークで慎重にケーキを削り取りながら話し始めました。
「原因が父親の浮気だったから、慰謝料やわたしの養育費でずいぶんお金もらえたみたい。父親の実家もお金持ちみたいだったし」
「わたしにとっては、普通に優しくていい父親だったんだけど、ね」
「それで、うちの母親はなんでだか知らないけど突然、占いの勉強を始めたの。通信教育で」
「そのうち、デパートの催事場とかの仕事が入るようになって、それなりに人気も出たみたい」
「その間も何人かの男とつきあってたはず。ちゃんと聞いたことないけど、ときどき家に知らないおじさんが何人か遊びに来てた」

「で、わたしが小学校六年になりたての頃、あるパーティで母親が、とある政治家と知り合ったらしいの」
「母親に口止めされてるから、森下さんにも名前は教えてあげられないんだけど、このあたりでは有名な人。年齢はけっこういってる」
「それからうちの母親は、その人専属の占い師になったの。表向きは秘書って肩書きだけど、実際は愛人」
「それまで東京に住んでたのだけれど、その政治家の地元に近いこの町に引越しすることになった。中学進学と同時に」
「それ、私と同じだ」
「森下さんも中学校からこの町なの?」
「うん。最初はクラスの誰も知らないから、不安で仕方なかった」
「それ、すっごくわかる」

「その政治家のコネで、うちの母親、最近はテレビにも出てるみたい」
「ほんと?すごーいっ!」
相原さんが教えてくれた相原さんのお母さまの芸名は、テレビをほとんど見ない私には、聞いたことあるような・・・って感じでしたが、すごいことは事実です。
「相原さんのお母さまがそんなにスゴイ人だなんて、私全然知らなかった」
「それはそうよ。わたし、こんなこと今まで誰にも話したことないもの。今初めてしゃべった。あと、うちの母親は別に全然すごくないし」
相原さんは、私の顔を見つめてニコっと笑いました。

「来週の土曜日に、その政治家の後援会のパーティがあるの。沿線の大きな街で。有名なタレントとか歌手とかも集まるらしい」
「わたしも連れて行くって母親は言ってるんだけど、気が進まなくて・・・」
「えーーっ?なんで?芸能人と一緒のパーティでしょ?そんなチャンス、めったにないじゃない?」
「そうなんだけどさ・・・なんだか、そういう人たちって無駄にギラギラしてそうで、苦手って言うか・・・」
「きれいなドレスとか、着せてもらえるんでしょ?いいなあ。憧れちゃう。絶対行ったほうがいいよ」
「ふーん。森下さんて意外とミーハーなんだ、ね」
相原さんがまた、ニっと微笑みました。

「ねえ、相原さん?」
「なーに?」
「余計なお世話だとは思うんだけど、相原さんはお母さまのこと、あんまり好きじゃないの?」
「・・・なんでそう思うの?」
「ずっとお母さまのこと、母親、って他人事みたいに呼んでるし、お母さまのお話してても冷めてるって言うか・・・」
「うーんと・・・ある意味正解かな。うちは、お互いに干渉しない、って言うか、無関心なの。お互いに対して」
「母親は、家に帰ってこないこともよくあるし。そういうときは、食事も掃除も洗濯もわたし一人でやってる」
「でも、母親のこと嫌ってるわけじゃない。わたしも一人でいるの好きだし。母親と二人でいるときは、それなりに普通の親子っぽいと思う」
「それに、うちの母親は、一人の女としてエライと思う。ちゃんとわたしを女手一つで、占い師なんていう水商売でここまで育ててくれたんだから。そこは尊敬している」

少しの沈黙。
二人ともケーキを食べ終わり、紅茶も飲み干していました。
「さ、一息ついたし、そろそろわたしの部屋へ行こう、ね?」
相原さんが立ち上り、ワンピースの胸元のボタンをもう一つ、はずしました。


図書室で待ちぼうけ 11

2 件のコメント:

  1. 更新お待ちしていました。
    官能小説としてよく書く言葉に『裸』がありますが、それを表現する言葉として一糸まとわぬ、全裸、素っ裸などがありますが、『オールヌード』って言葉の響きもいいですね。
    女性が書くとゾクゾクしてきます。

    さて、ワンピ一枚の相原さん。
    お部屋に行って何をするのやら?
    続編を楽しみにしています♡

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  2. あおいさま
    いつもコメント、ありがとうございます。

    やっとえっちなムードになってきたところなのですが、
    今日は用事があって出かけなければならないので、推
    敲にゆっくり時間がとれないため、つづきの12話の更
    新は次のお休みの日、12月23日の予定です。

    また読みに来ていただけるとうれしいです。(≧∀≦)ノ 

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